相対的貧困率の長期的動向: 1985-2015...年齢3階層別の貧困率の推移:...

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相対的貧困率の長期的動向: 1985-2015 阿部 首都大学東京 子ども・若者貧困研究センター 20201月公表 子ども・若者貧困研究センター

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Page 1: 相対的貧困率の長期的動向: 1985-2015...年齢3階層別の貧困率の推移: 1985-2015 • 20歳未満については、2012年まで急増。その後、2015年にて若干減少したものの、1985年に比べると、まだ高い。•

相対的貧困率の長期的動向:1985-2015

阿部 彩首都大学東京 子ども・若者貧困研究センター

2020年1月公表

子ども・若者貧困研究センター

Page 2: 相対的貧困率の長期的動向: 1985-2015...年齢3階層別の貧困率の推移: 1985-2015 • 20歳未満については、2012年まで急増。その後、2015年にて若干減少したものの、1985年に比べると、まだ高い。•

• 本報告は、厚生労働省の許可を受けて、厚生労働省「平成25年、28年国民生活基礎調査」の個票を用いて推計されたものです。(承認番号:平成29年9月25日厚生労働省発政統0925第3号)。

• 本報告は科学研究費助成事業(科学研究費補助金)(基盤研究(B))「「貧困学」のフロンティアを構築する研究」(平成29~32年度、代表者:阿部彩)の一環として行っています。

• 本報告の数値を引用する場合は、必ず、以下の引用元を明記してください。:阿部彩(2018)「相対的貧困率の長期的動向:1985-2015」科学研究費助成事業(科学研究費補助金)(基盤研究(B))「「貧困学」のフロンティアを構築する研究」報告書

【問い合わせ】首都大学東京 人文社会学部 人間社会学科 社会福祉学教室〒192-0397 東京都八王子市南大沢1-1 5号館255号室

阿部彩研究室 Tel: 042-677-2126E-mail : [email protected]

子ども・若者貧困研究センター 5号館358号室Tel: 042-677-2065

Page 3: 相対的貧困率の長期的動向: 1985-2015...年齢3階層別の貧困率の推移: 1985-2015 • 20歳未満については、2012年まで急増。その後、2015年にて若干減少したものの、1985年に比べると、まだ高い。•

日本の相対的貧困率(厚労省の公式発表)

このグラフは、厚生労働省が『国民生活基礎調査』の大調査年(3年毎)のデータを用いて相対的貧困率を公表しているものです。本報告においては、同調査の1985年から2015年までのデータを使って、30年間の属性(年齢、性別等)別の推移を見ていきます。

3

出所:厚生労働省(2017)『平成28年国民生活基礎調査 結果の概況』

12.0

13.2 13.5 13.8 14.6

15.3 14.9 15.7 16.0 16.1

15.7

10.9

12.9 12.8

12.2

13.4

14.4 13.7

14.2

15.7 16.3

13.9

8.0

10.0

12.0

14.0

16.0

18.0

1985 1988 1991 1994 1997 2000 2003 2006 2009 2012 2015

相対的貧困率の推移:1985-2015

相対的貧困率

子どもの貧困率

%

Page 4: 相対的貧困率の長期的動向: 1985-2015...年齢3階層別の貧困率の推移: 1985-2015 • 20歳未満については、2012年まで急増。その後、2015年にて若干減少したものの、1985年に比べると、まだ高い。•

年齢3階層別の貧困率の推移:1985-2015

• 20歳未満については、2012年まで急増。その後、2015年にて若干減少したものの、1985年に比べると、まだ高い。

• 20-64歳については、1985年から2015年にかけて、景気による増減はあるものの、概ね上昇。

• 65歳以上については、特に男性において2012年まで大きく減少。その後、若干上昇。女性の減少は男性ほど大きくない。

9.6%10.8% 11.3%

13.6%12.6%

11.5%12.7% 12.9%

15.0%14.3%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

1985 1994 2003 2012 2015

20-64歳

20-64歳(男)

20-64歳(女) 20.8%

19.8%18.4%

15.1%16.3%

24.4%25.4%

24.6%

22.1% 22.3%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

1985 1994 2003 2012 2015

65歳以上

65歳以上(男)

65歳以上(女)

11.3%

13.0%

14.8%

16.4%

14.8%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

1985 1994 2003 2012 2015

20歳未満

20歳未満(男)

20歳未満(女)

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年齢層別の貧困率の推移:男性

• 1985年から2012年にかけて、20-24歳をピークとする「山」が出現。逆に、55歳後半から上昇していた貧困率の「山」が徐々に減少。

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30% 男性1985 1994 2003 2012 2015

Page 6: 相対的貧困率の長期的動向: 1985-2015...年齢3階層別の貧困率の推移: 1985-2015 • 20歳未満については、2012年まで急増。その後、2015年にて若干減少したものの、1985年に比べると、まだ高い。•

年齢層別の貧困率の推移:女性

• 男性と同様に、1985年から2012年にかけて、20-24歳をピークとする「山」が出現。• 高齢期の貧困率は、2015年にも存在するが、1985年よりも高い年齢層で上昇する。

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%女性

1985 1994 2003 2012 2015

Page 7: 相対的貧困率の長期的動向: 1985-2015...年齢3階層別の貧困率の推移: 1985-2015 • 20歳未満については、2012年まで急増。その後、2015年にて若干減少したものの、1985年に比べると、まだ高い。•

世帯構造別の貧困率:長期動向

Page 8: 相対的貧困率の長期的動向: 1985-2015...年齢3階層別の貧困率の推移: 1985-2015 • 20歳未満については、2012年まで急増。その後、2015年にて若干減少したものの、1985年に比べると、まだ高い。•

男性(20-64歳)の貧困率の推移:世帯構造別

1985年に比べ、2010年代は:• 勤労世代の男性の貧困率は、ひとり親と未婚子のみ世帯(*)、その他世帯で大きく上昇。

• 単独世帯、夫婦と未婚子のみ、といった割合が増えている世帯でも上昇傾向。

19.0%

10.6%8.0%

14.7%9.7%

12.4%

23.5%

10.8%

8.5%

24.0%

9.3%

15.3%

23.2%

10.8% 10.7%

29.4%

11.0%

16.1%21.1%

8.9%10.2%

25.2%

8.8%

17.9%

0%5%

10%15%20%25%30%35%

単独世帯

夫婦のみ

夫婦と未婚子の

ひとり親と未婚

子のみ

三世代世帯

その他世帯

男性(20-64歳)の貧困率:世帯構造別1985 2004 2012 2015

(*)ここでいう「ひとり親と未婚子」は年齢を区切っていないので、子が成人している場合も含む

Page 9: 相対的貧困率の長期的動向: 1985-2015...年齢3階層別の貧困率の推移: 1985-2015 • 20歳未満については、2012年まで急増。その後、2015年にて若干減少したものの、1985年に比べると、まだ高い。•

女性(20-64歳)の貧困率の推移:世帯構造別

1985年に比べ、2010年代は:単独世帯の貧困率は下降しているものの、未だに約3割。子どものいる世帯(ひとり親と未婚子のみ、夫婦と未婚子のみ、三世代世帯)は、上昇傾向。

ひとり親と未婚子のみ世帯の貧困率は、貧困率がさらに高くなっている。

37.5%

12.6%

8.0%

27.7%

10.1%14.5%

33.3%

12.3%8.1%

33.2%

10.4%

17.8%

33.3%

11.0%9.7%

35.1%

12.3%

20.4%29.0%

10.3% 10.0%

31.6%

10.8%

21.0%

0%5%

10%15%20%25%30%35%40%

単独世帯

夫婦のみ

夫婦と未婚子のみ

ひとり親と未婚子

のみ

三世代世帯

その他世帯

女性(20-64歳)の貧困率:世帯構造別

1985 20042012 2015

(*)ここでいう「ひとり親と未婚子」は年齢を区切っていないので、子が成人している場合も含む

Page 10: 相対的貧困率の長期的動向: 1985-2015...年齢3階層別の貧困率の推移: 1985-2015 • 20歳未満については、2012年まで急増。その後、2015年にて若干減少したものの、1985年に比べると、まだ高い。•

子ども(20歳未満)の貧困率の推移:世帯構造別

1985年に比べ2010年代は:• 「夫婦と未婚子のみ」「三世代世帯」「その他世帯」にて、貧困率が上昇。• 「ひとり親と未婚子のみ」は下降したものの、その差は3%ほどにすぎず、この世帯タイプの貧困率が突出して高い構造は変わらない。

8.7%

46.9%

11.8%18.6%

10.3%

57.9%

11.1%

31.5%

11.4%

53.1%

15.2%

32.6%

9.7%

43.6%

12.8%

43.3%

0%10%20%30%40%50%60%70%

夫婦と未婚子のみ ひとり親と未婚子のみ 三世代世帯 その他世帯

子どもの貧困率:世帯タイプ別

1985 2004 2012 2015

Page 11: 相対的貧困率の長期的動向: 1985-2015...年齢3階層別の貧困率の推移: 1985-2015 • 20歳未満については、2012年まで急増。その後、2015年にて若干減少したものの、1985年に比べると、まだ高い。•

高齢男性(65歳以上)の貧困率の推移:世帯構造別

1985年に比べ2010年代は:• 高齢男性については、「ひとり親と未婚子のみ」以外は概ね貧困率が減少。

54.5%

32.5%

17.8%10.1% 10.3%

17.0%

34.6%

20.2%13.4%

27.9%

9.1%16.1%

29.3%

14.2%

12.7%23.1%

8.4%13.4%

29.1%15.3% 13.4% 21.3%

8.5%14.7%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

単独世帯

夫婦のみ

夫婦と未婚子のみ

ひとり親と未婚子の

三世代世帯

その他世帯

高齢男性(65歳以上) 世帯構造別

1985 2003 2012 2015

Page 12: 相対的貧困率の長期的動向: 1985-2015...年齢3階層別の貧困率の推移: 1985-2015 • 20歳未満については、2012年まで急増。その後、2015年にて若干減少したものの、1985年に比べると、まだ高い。•

高齢女性(65歳以上)の貧困率の推移:世帯構造別

1985年に比べ2010年代は:• 高齢女性については、「単独世帯」、「夫婦のみ世帯」では、大きく貧困率が減少した。• しかし、「ひとり親と未婚子のみ」「三世代」世帯では殆ど変わらず。

70.1%

38.2%

19.8%25.5%

10.7%

20.0%

50.9%

20.6%15.6%

29.2%

9.8%

17.2%

44.6%

14.8% 12.7%

30.2%

12.5%15.3%

46.2%

15.4% 12.8%

24.8%

10.6%15.6%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

単独世帯

夫婦のみ

夫婦と

未婚子のみ

ひとり親と

未婚子のみ

三世代世帯

その他世帯

高齢女性(65歳以上) 世帯構造別

1985 2003 2012 2015

Page 13: 相対的貧困率の長期的動向: 1985-2015...年齢3階層別の貧困率の推移: 1985-2015 • 20歳未満については、2012年まで急増。その後、2015年にて若干減少したものの、1985年に比べると、まだ高い。•

男女格差は縮小したか:勤労世代

• 1985年から2015年の30年間において、単独世帯においては、主に女性の貧困率の減少により男女格差が縮小。しかし、依然として女性の貧困率が男性よりも高い。

• ひとり親世帯、その他世帯では、男女ともに貧困率が上昇したが、男性の上昇の方が大きいため、男女格差は縮小。

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

40%

単独世帯 夫婦のみ 夫婦と未婚子のみ

ひとり親と未婚子のみ

三世代世帯 その他世帯

勤労世代(男女比較)

1985 男性 1985 女性 2015 男性 2015 女性

Page 14: 相対的貧困率の長期的動向: 1985-2015...年齢3階層別の貧困率の推移: 1985-2015 • 20歳未満については、2012年まで急増。その後、2015年にて若干減少したものの、1985年に比べると、まだ高い。•

男女格差は縮小したか:高齢者

• 1985年から2015年の30年間において、単独世帯においては、男女ともに貧困率が減少したが、男女格差は若干拡大。

• ひとり親世帯では、男女ともに貧困率が上昇したが、男性の上昇の方が大きいため、男女格差は縮小。

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

単独世帯 夫婦のみ 夫婦と未婚子のみ

ひとり親と未婚子のみ

三世代世帯 その他世帯

高齢者

1985 男性 1985 女性 2015 男性 2015 女性

Page 15: 相対的貧困率の長期的動向: 1985-2015...年齢3階層別の貧困率の推移: 1985-2015 • 20歳未満については、2012年まで急増。その後、2015年にて若干減少したものの、1985年に比べると、まだ高い。•

母子世帯の貧困率

2015年の母子世帯(※)の再分配後貧困率は、再分配効果が若干上昇したことにより、1985年に比べると低くなっているが、再分配前の貧困率は30年間で殆ど変わらない。->就労による母子世帯の生活保障には限界がある。

61.8%66.3%

57.9%60.4%51.9%

47.6%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

1985 2012 2015

母子世帯(*)の再分配前後の貧困率

再分配前 再分配後

※ 母子世帯とは、死別・離別・その他の理由(未婚の場合を含む)で、現に配偶者のいない65歳未満の女と20歳未満のその子のみで構成している世帯。

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【問い合わせ】首都大学東京 人文社会学部 人間社会学科 社会福祉学教室〒192-0397 東京都八王子市南大沢1-1 5号館255号室

阿部彩研究室 Tel: 042-677-2126E-mail : [email protected]

子ども・若者貧困研究センター 5号館358号室Tel: 042-677-2065

【厚生労働省「平成28年国民生活基礎調査」を用いた貧困率の推計】(パート1)「相対的貧困率の動向:2012-2015」(2018年11月公表)(パート2)「子どもの貧困率の動向:2012-2015」(2019年2月公表)(パート3)「相対的貧困率の長期的動向:1985-2015」(2020年1月予定)