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No.15-3-4 RPP-MT-1063 原子炉格納容器漏えい箇所の補修・止水技術の開発(D/Wシェルの止水装置の概念検討) 1 1. 件名 原子炉格納容器漏えい箇所の補修・止水技術の開発(D/Wシェルの止水装置の概念 検討) 2. 概要・目的 平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震により引き起こされた東京電 力福島第一原子力発電所事故については、現在、事故を収束させるために、安定した炉 心冷却システムを構築し、安全な停止状態を継続する努力が行われている。 これらが達成された後は、使用済燃料を取り出すことに始まり、発生する放射性物質 を管理しつつ、炉心燃料を取り出した後、廃止措置に係る取組みに着手することが予定 されている。福島第一原子力発電所1~3号機では、炉心溶融が発生し、核燃料が炉内 構造物の一部と溶融した上で再度固化した状態(以下、「燃料デブリ」とする)となって 原子炉圧力容器(以下、「RPV」とする)下部及び格納容器(以下、「PCV」とする) 内に存在すると考えられる。現状、燃料デブリの位置・性状、RPV・PCVの損傷箇 所等の詳細は不明であるが、燃料デブリ取出し作業は、作業被曝低減・放射性物質の飛 散防止等の観点から、スリーマイルアイランド原子力発電所2号機と同様に、燃料デブ リを冠水させた状態で取り出す方法(以下、「冠水工法」とする)が最も確実な方法であ ると考えられている。 燃料デブリを冠水させて冠水工法の実現するためには、PCVの漏えい箇所の補修・ 止水を行うことが必要である。特に、福島第一原発1号機ではドライウェル(以下、「D /W」とする)シェルが損傷している可能性が否定できないことから、損傷箇所を止水 する技術の開発が必要である。 本業務の目的は、上記技術開発のうち、D/Wシェルの損傷箇所の止水を行う装置の 概念検討を行うことである。

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No.15-3-4

RPP-MT-1063

原子炉格納容器漏えい箇所の補修・止水技術の開発(D/Wシェルの止水装置の概念検討)

1

1. 件名

原子炉格納容器漏えい箇所の補修・止水技術の開発(D/Wシェルの止水装置の概念

検討)

2. 概要・目的

平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震により引き起こされた東京電

力福島第一原子力発電所事故については、現在、事故を収束させるために、安定した炉

心冷却システムを構築し、安全な停止状態を継続する努力が行われている。

これらが達成された後は、使用済燃料を取り出すことに始まり、発生する放射性物質

を管理しつつ、炉心燃料を取り出した後、廃止措置に係る取組みに着手することが予定

されている。福島第一原子力発電所1~3号機では、炉心溶融が発生し、核燃料が炉内

構造物の一部と溶融した上で再度固化した状態(以下、「燃料デブリ」とする)となって

原子炉圧力容器(以下、「RPV」とする)下部及び格納容器(以下、「PCV」とする)

内に存在すると考えられる。現状、燃料デブリの位置・性状、RPV・PCVの損傷箇

所等の詳細は不明であるが、燃料デブリ取出し作業は、作業被曝低減・放射性物質の飛

散防止等の観点から、スリーマイルアイランド原子力発電所2号機と同様に、燃料デブ

リを冠水させた状態で取り出す方法(以下、「冠水工法」とする)が最も確実な方法であ

ると考えられている。

燃料デブリを冠水させて冠水工法の実現するためには、PCVの漏えい箇所の補修・

止水を行うことが必要である。特に、福島第一原発1号機ではドライウェル(以下、「D

/W」とする)シェルが損傷している可能性が否定できないことから、損傷箇所を止水

する技術の開発が必要である。

本業務の目的は、上記技術開発のうち、D/Wシェルの損傷箇所の止水を行う装置の

概念検討を行うことである。

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原子炉格納容器漏えい箇所の補修・止水技術の開発(D/Wシェルの止水装置の概念検討)

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3. 事業内容

以下に示す検討条件を元に、真空破壊ラインからアクセスし、D/W地下階の調査及

びD/Wシェルの損傷箇所を止水する装置の概念検討を実施すること。

3.1 対象号機

福島第一原子力発電所1号機

3.2 概念検討内容

装置の概念検討内容を以下に示す。

① D/W シェルの損傷箇所の調査

図1に調査対象箇所を示す。

D/W 地下階のペデスタル外周部にアクセスし、デブリの広がり状態及び D/W シェルの

損傷箇所を調査し、止水対象範囲を決定する。

② D/W シェルの損傷箇所の止水

図 2 に止水工法の概要を示す。

D/W 地下階のペデスタル外周部にアクセスし、損傷箇所上に止水材を塗布し、止水を

行う。

適用が想定される止水材として、KEMICA 社のスプレタン5N もしくはスプレタン5NCOR

の供給方法を含めて概念検討を行う。

3.3 アクセスルート

検討するアクセスルートを以下に示す。

① 真空破壊ラインからのアクセス

真空破壊ラインにガイドパイプを設置し、ドライウェル地下階までアクセスする場合のアクセ

スルートを図 3~6 に示す。

調査・止水対象箇所までのアクセスルートとして、X-5A、X-5B、を想定する。

② X-6 からのアクセス

X-6 から D/W 地下階までアクセスする場合のアクセスルートの例を図 7~13 に示す。

X-6 ペネから CRD レールを通り、ペデスタル外側のグレーチングの開口部から地下階へア

クセスする方法や、X-6 ペネから CRD レールを通り、ペデスタル内側からアクセスする方法に

ついて検討を行う。

なお、ペデスタル外側のグレーチング開口部及びペデスタル内側からアクセスが困難なこ

とが予想される場合は、ペデスタル外側のグレーチングに開口部を設定する方法の検討を行

う。

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図 1 調査対象箇所

図 2 止水工法概要

D/W地下階

ジェットデフ

ペデスタル

D/Wシェル

調査対象範囲

ペデスタル開口部

90°

180°

270°

ガイドパイプ

ベント管

真空破壊ライン

S/C

ドライウェル

D/W想定損傷箇所

サンドクッションドレンライン

燃料デブリ

止水材真空破壊ラインから

のアクセスルート

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図 3 真空破壊ラインからのアクセスルート(PCV下部断面及びジェットデフレクタ開口部詳細)

図 4 真空破壊ラインからのアクセスルートの例(D/W 地下階)

PCV下部断面図

約320㎜

約550㎜

1FL

ガイドパイプ

ジェットデフレクタ

真空破壊ライン

アクセスルートPCV

ベント管

ジェットデフレクタ開口部詳細アクセスルート

X-5A

X-5E

ジェットデフ

開口部

ペデスタル

X-5B

アクセスルート

アクセスルート

最大約50m

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図 5 PCV 下部の寸法とルート距離

φ380

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図 6 真空破壊ラインからのアクセス時のアクセスルートと制約及び環境条件

図 7 X-6 ペネ穿孔寸法概要

制約サイズ[mm] 環境条件

原子炉建屋1階床面 - 気中

ガイトパイプ 内径φ380 気中→水中

真空破壊ライン 内径φ457.2 水中

ベント管 内径φ1750 水中

ジェットデフ開口部(X-5A,又はX-5B) 550x320 水中

↓ 50m,5回ケーブル干渉を想定

- 水中

ペデスタル内側 - 水中

アクセスルート

ペデスタル外側開口部周辺(調査・止水対象箇所)

X-6ペネ

穿孔径φ400

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図 8 X-6 ペネからのアクセスルートの例(D/W 1 階)

図 9 X-6 ペネからのアクセスルートの例(D/W 地下階)

180°

90°

270°

250°X-6

グレーチング上

開口部

CRDレールグレーチング

ブリッジ

ペデスタル

内側アクセスルート

外側アクセスルート

X-5E

180°

90°

270°

250°

内側アクセスルート

外側アクセスルート

グレーチング開口部直下

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図 10 D/W 1 階グレーチング上開口部周辺の寸法概要

開閉可能

開口

アクセスルート

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図 11 ペデスタル内側 CRD 搬入ブリッジ開口部の概要

開口部

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図 12 X-6 ペネからのアクセス時のアクセスルート、制約及び環境条件

(D/W1 階ペデスタル外側のグレーチングからアクセスする場合の例)

図 13 X-6 ペネからのアクセス時のアクセスルート、制約及び環境条件

(D/W1 階ペデスタル内側のグレーチングからアクセスする場合の例)

制約サイズ[mm] 環境条件

原子炉建屋1階床面 - 気中

X-6ペネ 穿孔径φ400 気中

CRDレーン - 気中

D/W1階(ペデスタル外)グレーチング - 気中

グレーチング開口部 図10参照 気中

- 水中

ペデスタル内側 - 水中

アクセスルート

ペデスタル外側開口部周辺(調査・止水対象箇所)

制約サイズ[mm] 環境条件

原子炉建屋1階床面 - 気中

X-6ペネ 穿孔径φ400 気中

CRDレーン - 気中

D/W1階(ペデスタル内)グレーチング - 気中

CRD搬入ブリッジ開口部 図11参照 気中

ペデスタル内側 - 水中

- 水中

アクセスルート

ペデスタル外側開口部周辺(調査・止水対象箇所)

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3.4 止水装置の基本条件

調査、止水装置の基本条件を表1に示す。

表1 調査及び止水装置の基本性能

必須オプション(※1)

1 形状 検討したアクセスルートを通過可能なこと。 ○ - -

2 移動機構水中を遊泳かつ走行可能な推進器を有すること。グレーチング上を走行可能なこと。(X-6からアクセスする場合)

○ - -

3 浮遊機構 浮力調整機構を有すること。 - ○ -

4 ケーブル 中性浮力、低摩擦タイプであること。 ○ - -

5カメラ等の各種芯線も含めた1本の複合ケーブルであること。各アクセスルートにおける必要ケーブル長を検討すること。

○ -No.11の支援装置のケーブルは別扱いとする。

6 カメラ 調査用カメラを搭載すること。 ○ - -

7 温度計・線量計 温度計・線量計を搭載すること。 - ○ -

8 耐放射線性 線量率1000Gy/h,集積線量10000Gy以上であること。 ○ - デブリ接近時を想定

9 耐水性保護等級IP68(JIS C0920)とし、水深10m,10hとすること。

○ - -

10 耐熱性能 40℃以上とすること。 ○ - -

11 支援装置必要に応じてアクセスルート上に支援装置又は治具(※2)を設置するシステム構成とすること。※2)ケーブルを送るための機能等を有するもの。

- ○ -

12 止水材塗布機構

D/Wシェルの損傷箇所を止水するため、止水材を塗布するための機能を有すること。適用を想定している止水材として、KEMICA社のスプレタン5Nもしくはスプレタン5NCORについて、止水材の供給方法を含めて概要検討を行う。

○ - -

※1) 装置構成を検討する上で重度の厳しい条件となる場合は除いても良い。

No. 項 目 内 容

検討区分

備 考

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4. 実施期間

委託契約締結日から平成 28年1月29日まで

5. 納入物

(1)提出図書 :各2部(以下に示す図書)

図書分類 種類 部数 提出期限

実施計画書 受領用 2 契約後 2 週間以内

工程表 受領用 2 契約後 2 週間以内

体制表 受領用 2 契約後 2 週間以内

打合せ議事録 参考用 2 打合せ後 2週間以内

月報 参考用 2当該月末から2週間以内

(ただし最終月分は納入時)

構造図 受領用 2 納期2週間前

機器設計仕様書 受領用 2 納期2週間前

成果報告書 参考用 2 納入時

(2) 上記提出図書の電子データ一括を収めたCD-ROM2枚。

6. 納入場所

名称: 日立 GE ニュークリア・エナジー(株)

係宛名: 日立事業所 原子力資材調達部 原子力調達グループ

住所:茨城県日立市幸町3-1-1

7. 検収条件

作業完了証明書の受領をもって検収とする。

8. その他条件

(1)本事業は、国からの委託事業であることから、支払いに当たっての記録を保管す

る。

(2)受注者は、発注者から提示する検討資料、情報を本契約以外の目的で第三者に提

供してはならない。

(3)本仕様に関して疑義が生じた場合は、双方協議の上、発注者が指示するものとす

る。

(4)本案件の適用先は、東京電力福島第一原子力発電所である。

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(5)重要情報の取り扱い

受注者は、基本仕様書および、本仕様書に基づき行われる調達活動に伴い発注者

と授受を行う図書、情報の保管、取扱いおよび使用については、漏えい、紛失等の

ないよう注意する。

また、図書、情報のうち「重要情報」※に該当するものついては、原則としてそ

の媒体に応じて以下の取扱いとする。なお、「重要情報」に該当するかどうかの判断

に迷った場合は「重要情報」として取り扱う。

・電子媒体:暗号化、パスワード保護、もしくは両方を組み合わせたセキュリ

ティ上の処置を施した状態で送受信を行う。

・紙媒体:直接授受もしくは送受信者間でトレーサビリティが確保できる手段

(書留等)を利用する。

※重要情報:紛失や漏えいが発生した場合に当社の社会的責任を問われる情報、

当社の企業経営に深刻な影響を与える情報をいう(例:個人情報、

ノウハウ等)。