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1 筑波大学大学院システム情報工学研究科 京藤敏達 微細気泡発生装置の課題について 1

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筑波大学大学院システム情報工学研究科京藤敏達

微細気泡発生装置の課題について

1

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微細気泡の利用

1. 気泡は水質保全や建設材料に関する自然共生型技術にとって有用である.

2. マイクロバブルは固有の物理化学的性質を有し、工業的に重要である?

3. 気泡は自然界に一般的に存在し、様々な自然現象に関わっている(ナノバブル)?

多孔体、ポーラス

接触面積の増加浮上時間遅延による接触時間の増加

吸着・凝縮効果浮上効果

剥離効果気泡崩壊時のラジカルの発生

液中への気体溶解

液中懸濁物質除去、洗浄

洗浄

軽量化、地盤・コンクリート内の圧力の吸収

2

• 水域の浄化、排水処理• AEコンクリート(建設会社)• 液状化対策(200年住宅) (建設会社)• 泥水処理(建設会社)• 殺菌・洗浄(オゾンマイクロバブル)• 水栓品(洗浄器)

+高価な気体エネルギー効率?

オゾンを使用

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セメントペースト導入実験

グラウトポンプを用いた実験

AE(エントレインドエア)コンクリート

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コンクリートの施工性、凍結膨張破壊抵抗性の向上

圧力変動の緩和

数百ミクロン→数十ミクロン

3空隙率が3パーセント程度必要

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泥水処理

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建設工事に伴う泥水を処理し(懸濁物質(SS)が20mg/L程度)、河川に放流する。

泡沫浮上

数十ミクロン

成功:マイクロバブルを包含したフロックの生成

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液状化防止(200年住宅)

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圧力変動の緩和

液状化実験ビデオ

空隙率が10パーセント程度必要

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http://j-parc.jp/MatLife/ja/index.html

大強度陽子加速器施設(水銀ターゲット容器)

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圧力変動の緩和

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水と水銀中における発生気泡の最小径

ee

e

e

H

rLvu

r

v

L

u

d

,

,3.1

33

5/1

32

3

γ:surface tension coefficient

450

udRe

(J. Fluid Mech., vol. 401, pp. 157-182(1999))

Ligament

breakup

(Fan & Tsuchiya(1990))

water mercury

・Hinze scale(Inertia dominated) ?

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マイクロバブル発生ポンプ(30W)

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旋回流を利用した機器

旋回流の持つ特性の1つに遠心力による圧力勾配がある。強い旋回流を発生させることで旋回流の中心から放射方向に向かって圧力を急激に増大させることができる。

この放射方向の圧力差を利用して空気を断熱圧縮および膨張し暖気と冷気に分離する機器

としてvortex tube(1933年)がある。この装置の特徴としては、1.フロン等、冷媒を使わ

ないクーラー、2.駆動部がなくメンテナンスフリー、3.コンパクトで取付簡単であることが挙げられる。

同様に大成(1995年)によって考案された旋回型マイクロバブル発生器も、液体の旋回流中心部に気体を注入し遠心分離を利用して微細気泡を放出する装置である。

また、燃焼器においては旋回流が強い乱流を生成することを利用して窒素酸化物の生成が尐ないバーナが開発されている(例えば、Tangirala(1987))。

このような先人の知識を利用すると共に流体力学的な視点からマイクロバブルの発生を分析することで、様々な機器に組み込むことができる設計可能なマイクロバブル装置の開発を

行った。微細気泡を生成するために利用する流体力学的現象としては、コアンダ効果による渦崩壊である。渦崩壊によって生じた旋回流ジェットがコアンダ効果により壁面に付着し、その際の強いせん断と圧力変動により気柱が微粒化され微細気泡が生成する。

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Ranque-Hilsch vortex tube(1)

http://www.phys.tue.nl/lt/projects/vortex.html

断熱膨張・圧縮過程を利用して暖気と冷気に分離する。

1933, 1947年

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www.mech.kuleuven.be/dept/resources/docs/vanoverberghe.pdf

旋回流を利用した燃焼器:NOxの発生の尐ないバーナの開発

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燃焼器

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マイクロバブル発生装置(大成氏)

http://www.nanoplanet.co.jp/NP_coinfo.html

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翼型マイクロバブル発生ノズル

旋回流発生翼型ノズル 渦崩壊ノズル

hD eD

f

特 徴1. 装置の小型化および大型化が可能である。(装置配列が直線的)

2. 翼型ノズルのベーン枚数,吹き出し角,溝深さにより,旋回流の強さおよび流量を調整することができる。

3. ポンプの性能に応じて装置の設計を行なうことができる。4. 水道水圧でも十分にマイクロバブルの生成が可能である。

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pump

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微細気泡の生成

1cm

渦崩壊の発生

微細気泡の生成

音波の発生

4cm 14

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渦崩壊による気柱のせん断破砕

ベーン直径8cm、ノズル口径1.5cm、流量700cc/sec

1 frame/1ms

cm4

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気柱の形状(側面)コアンダ効果により気柱が屈曲

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技術的課題

・ノズル形状と渦崩壊現象・コアンダ効果の関係(リム曲率の影響)・微細気泡とその生成メカニズムの解明・音波の発生

高速旋回流が不安定となる流速場を生成させることにより、渦を崩壊させる。

渦崩壊部に気泡を混入し破壊し、微細気泡を生成する。

マイクロバブル発生ノズル

渦崩壊

研究項目

渦崩壊現象を利用した微細気泡発生ノズルの開発(発生原理が明確)

コアンダ効果

・装置の大型or 小型化、通常ポンプからの微細気泡生成 (汎用性)

・設計可能にする(数値計算)。

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高速度ビデオカメラ、パーティクルカウンター、ハイドロホーン

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本マイクロバブル発生器の設計法

1.亜臨界流れとなるように旋回流発生ノズルおよび渦崩壊ノズルを設計する。また、コアンダ効果が発生するように渦崩壊ノズルの形状を与える。

2.コアンダ効果による渦崩壊は上記ノズルの幾何学的形状のみで決定されるため、大型化および小型化はノズル形状が相似となるように大きさを変えれば良い。ただし、生成気泡の大きさは流量などに依存する。

3.ポンプの流量と揚程が与えられたとき、そのポンプの効率が最適に近い流量で運転できるように、先ず旋回流ノズルの形状(旋回流の強さ)を決定し、次いで渦崩壊するように渦崩壊ノズルの形状を与える。例えば水道水圧では、旋回流ノズルのベーン角を60度程度にして抵抗を小さくし、この旋回流で渦崩壊およびコアンダ効果が生じるように渦崩壊ノズルを設計すればよい。

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研究は役に立ったか?

1. 渦崩壊現象は50年来研究されているが、まだ未解明(理論的な興味が必要)。

2. 渦崩壊現象やコアンダ効果に関する定性的な理解(理論)は、ノズルを設計する上で必要。

3. 気泡が破砕される流れ場を創造することができれば、さらに有用。数値計算

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0

0.05

0.1

0.15

0.2

0.25

0.3

0 5 10 15 20 25 30 35 40

Γ

z(mm)

no_cut(Γ )

cut(Γ )

no_cut_side(Γ )

cut_side(Γ )

循環の流れ方向変化

ノズル出口

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現在の展開-マイクロバブル発生ポンプの製作

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1. 旋回流を生成するために圧力が必要2. 流量の連続性からスワール数に限界がある

3. 気体溶解のエネルギー効率(消費電力)を比較するとバッキポンプのおよそ20分の1

1. 同じ流量を出すための消費電力が小さい?2. スワール数に限界がない3. 小さくしても高圧にする必要がない?4. 気泡の径を小さくするよりも、数百ミクロンの気泡を大量(体積)に生成することが、気体溶解の効率化にとって重要

インペラーで旋回流を生成するポンプ

ノズル:

解決法: 2e

e

eu

vS

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マイクロバブル発生ポンプ

MBノズルVane swirler

Air supply tube

Vortex breakdown nozzle

Oute

r face o

f the V

B-n

ozzle

L

i

q

u

i

d

h

θ

f

Gas

D D

e

δ

e

Rim

流量に限界気泡の微粒化に適している

揚程に限界大流量に適している

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P

P

P

P

P

P0

P0

P0

N

N

N

N N

N

0 5 10 15 20 25 30

150

160

170

180

190

200

210

Time min

DO

25

500W

100×100×水深180cmの水槽

純酸素の溶解実験

マイクロバブル発生ポンプ

マイクロバブル発生ノズル純酸素1000cc/min 純酸素500cc/min

純酸素500cc/min

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マイクロバブル生成技術と産業への応用(加圧溶解後の減圧、ベンチェリー管、旋回流型、細孔)

気体溶解

・水域の水質改善(溶存酸素供給)エネルギー効率(消費電力)を比較するとバッキポンプのおよそ20分の1大量の気体を液体中で攪拌・加圧する方がエネルギー効率が良い

・液体中での滞留時間が長いことが重要な場合 → 容器が小さい、高価な気体(オゾンの利用)

泡沫浮上

・気泡よりも大きなフロックを浮上分離する→ 気泡が小さくなるほど浮上時間が長くなる→ フロックが破壊されないように整流する必要がある

圧力変動の緩和

・液状化防止 → 空隙率が10パーセント程度必要・AE(エントレインドエア)コンクリート → 空隙率が3パーセント程度必要・大強度陽子加速器施設(水銀ターゲット容器) → 圧力欠損が大きい

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