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平成29年7月31日
中国の独立系石油精製企業と民営企業の製油所建設プロジェクト
今年7月、中国の浙江石油化工有限
公司(ZPC)は、浙江省舟山において大
型石油精製・石油化学プロジェクトの
第 1期建設に着手した。2 期に分けて
建設する製油所の原油処理能力は、
4,000万トン/年(80万bpd)という大
規模なもので、民営化学繊維企業であ
る浙江栄盛控股集団有限公司が中心と
なって進めている。民営化学繊維関連
企業としては、すでに江蘇恒力集団公司が傘下の恒力石化(大連)煉化有限公司を通じて、
大連市で原油処理能力2,000万トン/年の製油所建設計画を進め、盛虹集団公司傘下の盛虹
煉化連雲港有限公司も、連雲港で1,600万トン/年の製油所を計画している。さらに海外事
業として、浙江恒逸集団有限公司は今年 3月、ブルネイで計画している原油処理能力 800
万トン/年の製油所建設に関してブルネイ政府と正式契約した。
また、今年5月には、民営製鉄企業である河北新華聯合冶金控股集団有限公司傘下の河
北新華聯合石油化工有限公司が、唐山市における2,000万トン/年の製油所建設に関する環
境影響報告書の公示を行い、事業推進に向けて大きく動き出した。
中国では、山東省を中心とする独立系石油精製企業に対して、輸入原油使用権や石油製
品輸出権が付与され、多くの独立系精製企業が増強・近代化計画を打ち出しているが、グ
ラスルーツの大型プロジェクトは、独立系精製企業以外の民営企業の計画も目立っている。
独立系では河北浅海化工集団有限公司が、子会社の河北一泓石油化工有限公司を実施企業
として、曹妃甸で1,500万トン/年の新規製油所を建設する。
新常態に入ったとされるなか、石油製品の国内需要は頭打ちとなっており、中国は、2015
年をもって 24年ぶりに石油製品の純輸出国となった。2016年に多くの独立系精製企業が
輸入原油使用権を取得し、原油処理量・石油製品生産量は全体として拡大基調を続け、石
油製品の純輸出量が2,000万トンを上回った。こうしたなか、政府は2017年に入り、独立
系精製企業に対する石油製品輸出割当の交付を停止した。さらに5月5日からは、輸入原
油使用申請の受理を停止した。 6月には 2017年第 2次原油非国営貿易輸入割当が発表さ
れ、独立系精製企業に対する2017年通期の輸入割当は合計6,141万トンで、独立系19社
の持つ輸入原油使用権の合計7,377万トンに対して83.2%に留まった。
これらの状況を踏まえ、中国の独立系精製企業を取り巻く環境の変化と民営企業を加え
た精製能力増強の動きを紹介する。
2017年度 第 2回
1.独立系石油精製企業を取り巻く環境の変化
1-1.独立系石油精製企業の足取り
1-2.輸入原油使用権と原油輸入権
2.製油所建設プロジェクト
2-1.次期建設の中心はケミカルリファイナリーか
2-2.河北浅海化工集団の製油所計画
2-3.浙江石油化工の製油所計画
2-4.江蘇恒力集団の製油所計画
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1. 独立系石油精製企業を取り巻く環境の変化
中国の地方独立系石油精製企業は、地煉と称され、山東省を中心に115社あるといわれ
ている。国有大手(三桶油)に比べ、厳しい制約のなかで生き延びてきたが、2015年を境
にその経営環境は大きく変化した。
1-1.独立系石油精製企業の足取り
かつて独立系企業の多くは、山東省の勝利油田などから出る「落地油」や「散井油」と
いった低品質の原油を処理する零細事業者であった。ちなみに、中国は1999年に老朽化し
た違法な小規模製油所を取り締まる大規模なキャンペーンを展開したが、当時の記録によ
れば、閉鎖の対象となった小規模製油所は166とされており、山東と遼寧の両省が最多の
35、次いで広東省12、吉林省9、河北省8、江蘇省7、陝西省5などとなっている。閉鎖対
象製油所の合計原油処理能力は3,080万トン/年(つまり1基あたり平均で18万トン/年)、
1998年の原油処理量は1,410万トンで、稼働率は平均45.8%でしかなかった。そのうち、
接触分解設備を持たない製油所が61.4%の102ヶ所となっており、70%以上がRON90以下の
ガソリンか有鉛ガソリンしか生産できなかったという。また、政府は小規模製油所に対し
て570万トンの原油の処理割当を行っていたが、実際には、約3倍の1,410万トンの原油
を処理しており、840万トンの原油は違法な小規模生産井などと指摘されていた。
結局、2000年末までに111の製油所が閉鎖された。その時点で、存続することになった
製油所は、石油精製が52社、 アスファルトプラントが20社、 溶剤および潤滑油製造が
5社、そのほか3社となっている。最も多い地域は山東省で、20社(製油所15社、アスフ
ァルト4社、溶剤・潤滑油1社)、ついで遼寧省14社(製油所4社、アスファルト10社)で
あった。
当時、小規模製油所の閉鎖は中国の石油当局者の悲願ともいうべきもので、2003年1月
には、国家経済貿易委員会が第1次および第2次の閉鎖製油所を発表した。第1次は小規
模製油所を60カ所、第2次は1998年の国家原油分配計画の規則違反、製品の低品質、汚
染対策不十分、原油分配停止などによるものが 50 カ所となっていた。また、2003年に山
東省で浮上した青島製油所建設計画に関して国家発展・改革委員会は、山東省の21の小規
模製油所の閉鎖が前提になるとの条件を示すなど、ことあるごとに閉鎖の方針を持ち出し
ていた。なお、この時期の第10次5カ年計画の石油精製・石油化学工業の発展方針には、
「一部の立ち遅れた精製設備を淘汰あるいは削減する。(略)年間処理能力100万トン以下
の小規模煉油廠では、製品品質と環境保護管理を強化し、市場の経済原則に応じて、特定
条件下にある小規模製油所は特色のある製品を発展させるよう経営の転換を実現する」と
謳われていた。
中国では1998年の国務院機構改革に伴いCNPCとSinopecの2大統合型国営石油企業が
再編され、2000–2001年にはCNOOCを含む国有3社が上場を果たした。そして2002年の世
界貿易機関(WTO)加盟を経て、燃料油(重油)の非国家貿易輸入が認められるようになり、
2004年頃から独立系企業は輸入重油の処理を中心にするようになっていった。
また、この頃からCNOOCなど精製事業の後発グループは、一定規模の独立系企業を買収
する動きを強めた。代表的な例をあげると次のようなものがある。CNOOCは2004年に浙江
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省の寧波利万石化公司を買収、道路用アスファルト事業の強化を図った。CNOOCは2007年
に河北省の中捷石化集団公司、2009年に山東省の海科化工集団公司を傘下に収め、精製事
業を強化している。中国化工集団公司(ChemChina)は2007年に山東省の青島広源発集団
公司を買収し、山東省の精製事業や流通事業を強化した。2011年には、中国中化集団公司
(Sinochem)が、山東省の濰坊弘潤石化助剤有限公司を買収して傘下に収めた。さらに、
欧州の精製事業不振で中国に活路を求めようとした Totalが、2009年から 2010年頃にか
けて山東東明石化集団との提携や山東省の独立系企業の買収に向けて動いたこともある。
このほか、独立系企業の大手は、CNPC グループの中国聯合石油有限責任公司(ChinaOil)
などとの委託精製を進めるなど大手3社との提携に動いた。大手3社にとっては、石油製
品販売のシェア拡大につながり、独立系企業にとっては原油の融通を受けることが可能に
なるというメリットがあった。
ちなみに、原油輸入割当は山東省の製油所を買収したChemChinaやSinochemが、先頭を
切り2013年に申請している。
2010年代になると、独立系製油所のなかでも比較的大規模な企業が誕生していた。2010
年に中国石油・化学工業協会が中国国家統計局調べとして発表したところによれば、統計
の対象となっている製油所は264カ所で、うち、独立系は177カ所。独立系は、中規模製
油所も幾つかあるが、アスファルト加工や重油処理名目の精製企業が数多い。中規模製油
所としては、山東省の原油処理能力 500万トン/年の山東利華益集団公司、300万トン/年
の山東東明石化集団公司、200万トン/年の山東恒源石油化工公司、遼寧省の 250万トン/
年の瀋陽新民ワックス化学品廠、寧夏回族自治区の350万トン/年の寧夏宝塔石化集団公司
があげられていた。
この頃には、独立系精製企業も中国の石油産業の中で確固たる位置を占めるようになり、
2012年に商務部が発表した「民間資本の商業・貿易流通分野への参入奨励に関する実施意
見」においては、民間資本が国内の石油製品市場に秩序正しく参入することを支持すると
明確に述べ、民間資本が原油と石油製品の貯蔵・輸送および小売ネットワークの構築に秩
序正しく参入するよう導き、条件のある民営企業が石油製品の販売市場に参入するのを助
成するとした。さらに、民営石油企業が多様な形態を採用し、安定した原油供給源、技術・
管理サービスを得ることを支持するとも述べた。
1-2.輸入原油使用権と原油輸入権
こうした流れのなか、2015 年 2月、国家発展・改革委員会が発表した「輸入原油使用管
理の問題に関する通知(于関口原油使用管理有関関問題的通知)」により、独立系精製企業
も条件を満足すれば輸入原油の使用が可能になった。同通知では、輸入原油の使用を認め
る基本条件として、以下の7項目があげられた。1)単系列の原油精製能力年間200万トン
以上の常減圧蒸留ユニットを保有している 2)1トンあたりの精製の総合エネルギー消費
が 66kgoe(標準石油換算 kg)未満、1トンあたりのエネルギー消費原単位が 11.5kgoe以
下、精製ロスが0.6%未満、1トン当たりの工業用水消費が0.5トン未満、原油貯蔵タンク
容量が関連条件を満たす 3)石油製品の完全な品質管理システムを持ち、国や地方政府の
定めた製品規準を満たしていること 4)国の定めた環境保全および事故対応能力があり、
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過去3年間に大きな環境汚染事故が発生していないこと 5)安全管理システムと良好な安
全操業を維持しており、過去3年間に重大な事故が発生していないこと 6)国家基準を満
足する消防上の安全管理システムが整備され、過去3年間に重大な火災事故が発生してい
ないこと 7)対象企業は保有する原油精製能力年間200万トン以下の常減圧蒸留ユニット
は淘汰する。
表-1.輸入原油使用権取得企業と使用枠
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同通知の第1号として2015年7月7日付けで山東東明石化集団に年間750万トンの輸入
原油使用権が付与された。東明石化は当時、1,300万トン/年の原油処理能力を持っていた
が、200万トン/年以下の常減圧蒸留ユニットは淘汰するとの規定に基づき、老朽化してい
る200万トン/年、100万トン/年、50万トン/年、および、統合した250万トン/年のトッ
パーを廃棄し、500万トン/年と250万トン/年を残して計750万トン/年体制となった。ま
た、5,000万m3のLNG貯蔵施設の建設および、製品の国五規格への品質向上についても承
諾した。これ以降、寧夏宝塔石化公司、盤錦北方瀝青公司、東営亜通石化公司、中化弘潤
石化公司、山東墾利石化公司などが続々と取得し、これまでに25社が輸入原油使用権を取
得している(表-1参照)。
発展・改革委員会の輸入原油使用に続いて、商務部は2015年7月、「原油処理企業の非国
営貿易輸入資格申請に関する工作通知(関于原油加工企業申請非国営貿易進口資格有関工
作的通知)」を発表し、輸入原油使用権を有する企業に原油輸入資格を付与することになっ
た。これにより多くの独立系精製企業が原油輸入ライセンスを取得した。
中国はWTO加盟にあたり、石油分野においても、関税障壁の段階的撤廃、割当制廃止、
流通・小売の自由化を確約、原油の輸入関税は 2002年 1月 1日に廃止された。2002年か
らは、国営貿易以外(非国営貿易)の原油輸入が認められ、割当量は2002年の828万トン
から毎年15%ずつ引き上げられて、2007年は1,668万トン、2008年は1,915万トン、2009
年は2,200万トン、2010年は2,530万トンとした。その後、2011年から2014年までは2,910
万トン、2015年は3,760万トンと推移していたが、独立系企業への原油輸入資格付与に伴
い、2016年は前年の2倍以上に相当する8,760万トンに引き上げた(図-1参照)。2017年
も8,760万トンとしている。これは、原油輸入量に対して2014年は10%、2015年は11%
程度であったが、2016年は一挙に25%に拡大した。
図-1.中国の非国家貿易による原油輸入枠
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割当は毎年11月に申請受付が行われ、申請企業の実績、生産能力、規模、申請数量など
に基づいて決定される。申請には、輸入実績をもつか輸入原油使用権を持ち、5 万トン以
上の原油輸入埠頭と20万m3以上の原油タンクを保有していることなどの条件を満たして
いる必要がある。
中国は年間1,620万トンの燃料油非国家貿易輸入量を設定しているが、こうした原油の
供給拡大により、独立系精製企業は重油輸入の必要がなくなり、その効果は、非国家貿易
の重油輸入枠を巡る資格取得の企業数にも明白に表れている。
表-2.2014年以降の非国家貿易燃料油輸入資格取得企業の推移
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山東省を例にとると、2014年には15社、2015年は11社が燃料油輸入枠を取得したが、
2016年には 1社に激減し、2017年は第 1次割当てでは皆無である。また、2010年まで、
製油所への投入は重油が原油を上回っていたが、2016年には原油が97%とほとんどを占め
た(表-2中の図参照)。
原油の共同輸入組織
独立系精製各社は、原油の一括購入により価格交渉を有利に進めること、さらに原油輸入
における物流、通関、貯蔵などの業務を一括して行なうことで輸入コストの削減を目指し、
東明石化集団を中心に原油輸入団体として、中国(独立煉廠)石油採購聯盟(China Petroleum
Purchase Federation of Independent Refinery)を設立した。2016年2月の設立と同時に参
加したのは、輸入原油使用権/原油輸入権を取得した山東省の14社と河北および、江蘇から
各1社の計16社が参加。その後4社が加わり、参加企業は計20社となった。
2016年9月、東明石化はシンガポールに太平洋商業控股有限公司(Pacific Commerce)を
設立、Sinopec傘下のトレーダーである中国国際聯合石油化工公司(Unipec)やBP、Shellと
原油売買契約に調印している。2017年には、加盟企業が輸入する原油のうち60%程度をター
ム契約で調達したいとしている。2016年上期に東明石化が購入した原油の平均CIF価格は、
トンあたり200ドルで、青島港の平均価格より40.1ドル、16.7%低かったという。
このほか、東明石化は香港にも貿易子会社の香港恒豊貿易有限公司(Hong Kong Hengfeng
Oil Trading)を置いており、低利の資金を調達することができる。
また、東明石化は今年3月、中国華信能源有限公司(CEFC China Energy)傘下の日照華
信石油儲備基地有限公司および日照港油品碼頭有限公司と共同で、山東省日照に原油ター
ミナルを建設する合弁契約に署名した。投資額は 39億元(5億 6,600万ドル)で、30万
DWTの原油ターミナル、15万DWT・2基の原油バース、980万bbl(156万m3)の貯蔵設備を
建設する。これにより、輸入原油使用権/原油輸入権を獲得した独立系精製企業の原油ロジ
ステックスのボトルネック解消につなげる。すでに東明石化は、総延長 446km、年間輸送
能力1,000万トンの日照−東明原油パイプライン(日東原油管道)の建設・コミッショニン
グを完了している。
華信能源は、日本も懸命に追求した UAEアブダビの巨大油田(生産量 160万 bpd)であ
るADCO鉱区の権益4%をニューカマーとして取得し衝撃を与えたが、独立系のリーダー格
である東明石化と連携したことで、独立系企業の再編の起爆剤になる可能性が出ている。
かつて、東明石化の幹部は、近隣の製油所の買収を進めるという方針を明らかにしていた
が、これは、中国政府の考えている独立系企業統合の方針と合致するものとみられる。
続いて、商務部は2016年12月、2017年原油非国営貿易輸入認可総量と申請プログラム
を公布した。2017年の輸入割当量は2016年と同じ8,760万トンであるが、2016年と異な
り、各社に付与される輸入枠が 1年間通期ではなくなり、2回に分けて付与されることに
なった。具体的には、輸入枠を申請する企業の 2016 年 1 月–10 月の実績に基づき、2017
年の第1次の輸入枠を決定する。2017年第2次の輸入枠は、対象企業が第1次輸入枠を適
正に処理しているかどうかを確認してから決定される。輸入枠が消化できない場合は、残
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る輸入枠を、商務部門か中央企業集団公司を通じて返上する必要があると規定されている。
こうした方法を採用した背景には、原油価格低迷を利用して、独立系精製企業が精製計
画を上回る原油を輸入し、他の製油所に転売するという行為が横行したためといわれる。
表-3 2017年第1次および第2次の非国営貿易原油輸入枠
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第1次輸入枠は6,881万トンで、6月に発表された第2次と合わせ2017年通期では、計
9,173 万トンの輸入枠が認められた。元々の計画では、2017 年の輸入枠は 2016 年と同じ
8,760万トンとされており、413万トン増加することになった。また、独立系に対する輸入
枠は通期で6,141万トンとなった。これは、独立系19社の取得している輸入原油使用権の
合計7,377万トンに対して83.2%に相当する。
輸入原油使用権申請の受付を停止
発展・改革委員会は今年4月、発改運行〔2017〕791号「関于有関原油加工企業申報使用
進口原油問題的通知(原油処理企業の輸入原油使用権申請問題に関する通知)」を公布、
5 月 5日から原油処理企業の輸入原油使用権申請の受付を停止すると発表した。それまで
に申請されたものについては評価作業を継続する。すでに認可を得た企業は、原油処理設
備の新設、拡張、改造を進め、規定に基づき原油の輸入、処理、主要石油製品の情況など
を報告するとしている。
今回、NDRCが輸入原油使用権の審査を停止したのは、申請中のものを含め輸入原油使用
権が1億トン近くに達しているにもかかわらず、2016年の輸入原油処理量は認められた輸
入原油の72%に過ぎなかったためで、輸入原油使用の適正化を狙ったものとみられている。
中国では新常態下で石油製品需要の伸びが鈍化するなか、石油製品、特に軽油は国内供
給が過剰になっており、中国商務部と海関総署は2016年から独立系精製製企業に石油製品
輸出のライセンスを付与して、国内の供給過剰緩和を進めてきた。2016 年に独立系は 12
社が計167.5万トンの輸出枠を取得した。
さらに財政部は、2016年 11月 1日から石油製品、機械設備、電力設備など 418製品の
輸出増値税(VAT)の還付率を17%に引上げた。石油製品では、ガソリン、ジェット燃料、
軽油が対象となった。これにより石油製品輸出に対する増値税の全額還付が実現したこと
になるが、これは、安定した輸出拡大と輸出競争力の強化を狙ったものだとみられている。
しかし、今年1月、中国商務部と海関総署が発表した2017年第1次加工貿易石油製品輸
出割当量には、独立系精製企業の割当が完全に消え去った。2016年に独立系が獲得した計
167.5万トンの輸出枠のうち、輸出ノウハウの不足などで実際の輸出量は 100万トンに満
たず、達成率は 60%程度に終わったという。このため、独立系の輸出枠が凍結されたもの
とみられている。2017年は6月までに3次の石油製品輸出枠が通知されているが、独立系
の輸出枠は復活していない。2017年の輸出割当(1-3次合計)は、2479.5万トン。内訳は
PetroChinaが670万トン、Sinopecが1,380万トン、CNOOCが159.5万トン、Sinochemが
270万トンである。
中国経済は新常態に入ったと謂われて久しいが、原油処理量は減少していない。今年 5
月までの 12カ月のうち減少したのは 3カ月で、減少比も最大が 0.7%でそれほど高くはな
い。増加した9カ月のうち最大値は5.9%と大きい。
原油処理量が増加している背景には、石油製品の輸出拡大と輸入減少がある。石油製品
は 1992年頃から純輸入となったが、精製設備の増強が進み、純輸入量は 2004年の 2,642
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万トンから増減を繰り返しながらも減少し、2009年以降は1,000万–1,600万トンで推移し
ていた。しかし、2014年頃から軽油を中心に余剰製品の輸出が急増し、2015年は24年ぶ
りに石油製品の輸出が輸入を上回って622万トンの純輸出となった。2016年はさらに進ん
で、輸入が2,784万トンに対して輸出が4,831万トンとなり、純輸出は2,047万トンに拡
大した。2017年に入ってもこの傾向は続き、1–5月の石油製品の輸入は1,269万トンで前
年同期比4.3%減、輸出は1,947万トンで同12.9%増となった。これにより1–5月の純輸出
は1,072万トンになり、通年では2,500万トン前後に達する可能性がある。
図-2 中国の石油製品の輸出入推移
図-3 軽油の生産と輸出入推移
図-4 中国の軽油の主要輸出先5カ国の推移
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2-1.次期建設の中心はケミカルリファイナリーか
今年6月、上海で第3回中国石油・化学工業持続的発展フォーラムが開催され、石油化学
工業規画院は、中国の石油精製能力について次のように指摘したという。世界の製油所の
平均稼動率 83%に基づいて計算すると、中国の過剰精製能力は年間 1億トン規模に達して
いる。中国の石油製品消費量は年間3.15億トンであり、石油製品得率を65%、製油所稼動
率を80%として試算すると、合理的な精製能力は6.1億トン/年になる、これに対して、現
在の中国の精製能力は 7.48億トン/年あり、1.38 億トン/年が過剰になる。これは精製能
力の 18%に達する。2020年時点の適正な精製能力は 7.1億トン/年だが、2020年の全精製
能力は8.2億トン/年に達すると予想され、依然として過剰な状態が続く。
ただ、中国の石油製品需要の伸びは大幅に鈍化するものの、芳香族やオレフィンなどの
化学原料は依然として大きな不足があると指摘。石油精製企業に対して、従来の燃料型精
製事業から化学型精製事業(ケミカルリファイナリー)へ転換するよう提言した。
こうした提言を裏付けるように、ここ数年、計画が具体化してきた民間資本が手がける
製油所プロジェクトは、燃料型よりもパラキシレンやエチレン生産に重点を置いたものが
突出している。その代表的な例として、前述した河北浅海化工集団と浙江石油化工有限公
司および江蘇恒力集団公司の計画を見ていくことにする。
2-2.河北浅海化工集団の製油所計画
河北省黄驊市の独立系石油精製企業である河北浅海化工集団有限公司が、子会社の河北
一泓石油化工有限公司を実施企業として唐山市の曹妃甸工業区で進めている1,500万トン
/年の製油所には、連続触媒再生式接触改質設備(CCRU)からパラキシレン設備までの統合
設備が建設される。1,500万トン/年の常減圧蒸留設備(CDU/VDU)、350万トン/年の残油流
動接触分解設備(RFCCU)、250万トン/年の連続触媒再生式接触改質設備(CCRU)、230万ト
ン/年の水素化分解設備(HCU)、210万トン/年の残油水素化脱硫設備(HDU)、170万トン/
年の FCCガソリン HTU、150万トン/年のジェット燃料 HTU、400万トン/年の軽油 HTU、80
万トン/年のガス分離設備、12万トン/年のMTBE設備、50万トン/年の硫黄回収設備(SRU)、
25万トン/年のポリプロピレン(PP)設備、150万トン/年の芳香族抽出設備、120万トン/
年のm-キシレン異性化設備、45万トン/年のトルエン脱アルキル設備、150万トン/年のパ
ラキシレン(PX)設備などが建設される。
曹妃甸工業区は、中国の 7大石油精製・石化基地(表-4参照)の 1つで、大型港湾や物
流基地の建設をはじめ、製鉄、石油・化学、発電、設備製造などといった大型プロジェクト
が計画され、すでにCNPCのLNG輸入ターミナルが稼働している。石油精製・石油化学分野
では、Sinopec北京燕山分公司が、1,200万トン/年の製油所建設プロジェクトを進めてい
るほか、中東海湾投資集団香港華通投資控股有限公司と、サウジアラビアAramco、サウジ
アラビア基礎産業公社(SABIC)が、1,500 万トン/年の製油所とともにエチレンコンプレ
ックスを建設し、パラキシレン(PX)や高純度テレフタル酸(PTA)も生産することに合意
している。こうした計画が実施されれば、曹妃甸は世界有数の石油精製・石化産業の集積地
となる。
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表-4 中国の7大石油精製・石化基地プロジェクト状況
2-3.浙江石油化工の製油所計画
浙江石油化工有限公司が浙江省の舟山緑色石化基地で計画している大型製油所は、石油
化学との統合プロジェクトである。2期に分けて4,000万トン/年(80万 bpd)の製油所と
280 万トン/年のエチレンコンプレックスを建設する計画で、ナフサおよびパラキシレン
(PX)生産の最適化のために、重質軽油や残油の有効利用を図る構成となっている。重質
軽油、常減圧残油を大型の水素化分解設備(HCU)、残油接触流動分解設備(RFCC)で処理
し、生産した軽質ナフサ(LN)を連続触媒再生式接触改質設備(CCRU)から芳香族抽出を
経て PX 生産を行なう。さらに、化学部門ではナフサクラッカーのほかにプロパン脱水素
(PDH)プラントも建設され、精製部門のプロパンは、化学原料としてPDHで使用される。
処理原油は、サウジアラビアの中質原油25%、イランの軽質原油25%、重質原油35%、ブラ
ジルのFrade原油15%を想定している。
1期分の設備は、常圧蒸留設備(1,000万トン/年)2基、減圧蒸留設備(計 950万トン/
年で 350 万トン/年と 600 万トン/年)を各 2 基、RFCCU(420 万トン/年、UOP の RCD
Unionfining と RFCC)、CCRU(420 万トン/年、UOP の Platforming)2 基、軽油 HCU(400
万トン/年、Chevron)2基、重質軽油 HCU(380万トン/年、UOPの Unicracking)、残油水
素化脱硫設備(500万トン/年、UOP のRCD Unionfining)、ナフサHTU(320万トン/年、UOP
の Unionfining)、芳香族抽出設備(260万トン/年、UOPの LD Parex芳香族プロセスで、
UOP Sulfolane、Isomar、Tatorayを含む)2基、DCU(300万トン/年、中国)、ガス分離設
備(90万トン/年)、オレフィン回収設備(30万トン/年)、硫黄回収設備(60万トン/年)、
アルキレート設備(45 万トン/年、CB&I Lummus)、MTBE設備(18万トン/年)となってい
る。ほかに C3/C4留分分離設備(110万トン/年)、C5留分異性化設備(150万トン/年)、
水素製造設備(8万m3/hを1基と14万m3/hを2基)を建設する。
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エチレンコンプレックスは、中国最大級の140万トン/年のエチレン(Technip/S&Wプロ
セス)と 60万トン/年の PDH、ブタジエン抽出、分解ガソリン水素化精製(HTU)、エチレ
ンオキサイド(EO)/エチレングリコール(EG)、スチレンモノマー(SM)、ビスフェノール
A(BPA)、全密度ポリエチレン(FDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、
ブテン–1、MTBE、フェノール、アセトン、アクリロニトリル(AN)、メチルメタクリル酸(MMA)、
高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)エチレン酢酸ビニルコポリマー
(EVA)などからなる。
浙江石油化工の資本金は10億元で、浙江の大型民営繊維企業である浙江栄盛控股集団有
限公司が51%、浙江桐昆控股集団有限公司が20%、国営企業の巨化集団公司が20%、舟山市
の開発投資会社である舟山海洋綜合開発投資有限公司が9%を出資した。
ちなみに、栄盛集団は、国有石油企業にも参加を呼びかけたが、Sinopec などは、舟山
で大型製油所が稼働すれば、華東市場での精製能力過剰は一層拡大するとして、参加を断
ったという。これに対し栄盛集団は、同製油所はガソリンなど石油製品を生産するための
ものではなく、PX生産などのためのケミカルリファイナリィーだと反論したという。
2-4.江蘇恒力集団の製油所計画
大連長興島経済区で計画している2,000万トン/年(40万bpd)の大型製油所も、同様に
民営企業大手の江蘇恒力集団公司が、傘下の恒力石化(大連)煉化有限公司を通じて石油
化学製品の生産を目指したものである。
特に、Axens との間で、1)未転換残油を処理する溶剤脱れき(Solvahl)技術(脱れき
後のアスファルトはガス化設備に供給)および脱れき設備と組み合わせた減圧残油の沸騰
床技術を用いた水素化分解(H-Oil RC)技術、2)ナフサ生産を最大化するために常圧軽油
を処理する水素化分解技術、3)溶剤脱れき設備からの脱れき油と直留減圧油を処理する2
基の水素化分解(HyK)技術、4)ナフサ水素化精製(HCU)技術、5)3 系列の連続触媒再
生式接触改質(CCR)技術、6)2系列のメタキシレン(MX)の異性化技術(Oparis)およびPX
精製(Eluxyl 1.15)技術、7)MTBE技術を導入した。
また、CB&Iからはプロパンとイソブタンを脱水素してプロピレンおよびイソブチレンを
生産する Catofin技術のライセンスを導入した。1 トレインとしては世界最大の脱水素プ
ラントである。
このほか、潤滑油基油異性化脱ろう設備に関して、CLG との間でライセンス契約に調印
した。CLGの異性化脱ろうプロセスは、IsodewaxingおよびIsofinishingで、グループII・
III オイルを生産するとともに、付加価値の高いホワイトオイル(流動パラフィン)の生
産も行うことができる。
同プロジェクトの投下資金は740億元で、サウジ中質原油と重質原油およびカタール原
油を処理する。UOPとChevron Lummus Technology(CLG)が基本設計を担当した。
二次処理設備は、いずれも中国最大級で、1,000万トン/年級の大型のナフサHTU(Axens)、
200万トン/年の灯油 HTU(Sinopec)、3系列からなる 450万トン/年の PX生産に対応した
CCRU および芳香族抽出設備(Axens)、50 万トン/年の MX 異性化から 450 万トン/年の PX
精製プラントまでの統合設備(Axens)、常圧軽油を処理する600万トン/年のHTU(Axens)、
重質軽油、常圧残油、減圧軽油、溶剤脱れき油を処理する575万トン/年のHCU(Axens)
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2基、2系列からなる溶剤脱れき設備(Axens)、68万3,000トン/年の潤滑油基油異性化脱
ろう設備(CLG/Sinopec)、65万4,000トン/年の硫黄回収設備、450万トン/年のガス分離
設備(中国)、82万トン/年のMTBE設備(Axens)、100万トン/年のプロパン/イソブタン脱
水素設備(Lummus)、30万トン/年のポリプロピレン(PP)設備からなる。
生産したPXは、2012年に完成した240万トン/年と 2015年3月完成の240万トン/年の
高純度テレフタル酸(PTA)プラントで使用する。これにより、世界最大の.PX–PTA生産基
地が誕生する。また、国五規格対応のガソリンや軽油、ジェット燃料は外販する。
表-5 2020年までに中国で竣工予定の大型製油所建設プロジェクト
<参考資料>
中国の石油産業と石油化学工業 各年版(東西貿易通信社)
East & West Report各号(東西貿易通信社)
以上
本資料は、一般財団法人 石油エネルギー技術センターの情報探査で得られた情報を、整理、分析
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