産業生態系を激変させる...
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AICOS2020(オンライン AICOS) 「産業パラダイムの動向について考える」シリーズ 第 2 回
2020/08/26(水)1830--2030
@Zoom ウェビナー
1 © Ken SENOH 2020
「イノベーションを企画しろ!」と言われて困っている皆様へ
産業生態系を激変させる
イノベーションの加速度的連鎖を俯瞰する ~イノベーション基礎論と技術・制度・社会文化で起こっていること~
産学連携推進機構 理事長
妹尾堅一郎(せのお けんいちろう)
本日は、このアジェンダの内容を全てお話しするわけではありません。
また、お話することが全てここに含まれているわけでもありません。
ご参考として、今回お話する内容にかかわる議論の一部をメモとしてご紹介するものです。ご承知・ご海容ください。
AICOS2020(オンライン AICOS) 第1回〜第3回 セミナー
【3回連続の共通テーマ】
「次世代産業生態系の動向について考える」
【日時とテーマ】 (18:30~20:30 受付開始は1800)
第1回 7 月 22 日 (水)
「“モノが売れる時代・モノを売る時代”だと思うなよ!?
~消費主導経済の終焉とサーキュラーエコノミーの台頭〜」
第2回 8 月 26 日 (水)
「イノベーションを企画しろ!」と言われて困っている皆様へ
産業生態系を激変させるイノベーションの加速度的連鎖を俯瞰する
~イノベーション基礎論と技術・制度・社会文化で起こっていること~」
第3回 9 月 16 日 (水)
「コロナ禍とDX渦が導く “ニューノーマル”とは何か?
~次世代社会とビジネスで起こる“図と地”の反転
本⽇のお話
Ⅰ.はじめに(軽い復習)
Ⅱ.イノベーションの基礎論(概要)
イノベーション教祖
妹尾の「実践的イノベーション論」
Ⅲ. 「技術・制度・社会文化論」(概要)
技術(CPS)
制度(SDGs)
社会文化(SSSC)
Ⅳ.むすび(&予告)
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イノベーション基礎論 ★イノベーションの教祖 Guru たち
Joseph Schumpeter (1909〜2005) イノベーション ⇐新結合(new combination)
Peter F. Drucker(1909〜2005) 7つのイノベーションシーズ(種・起点)
Clayton M. Christensen (1952〜2020) 破壊的イノベーション、持続的イノベーション
Henry W. Chesbrough (1956〜) オープンイノベーション、クローズドイノベーション
★イノベーションリソース
リソーシング
インソース 自前開発、既存蓄積技術の活用の
アウトソース① 新規開発の外部委託
アウトソース② 既存技術の購入、ライセンスイン
ジョイントソース 共同開発
クロスソース 相互調達(クロスライセンス)
コモンソース 共同調達(パテントプール)
オープンソース 公開調達
★シェアドビジネス
N:オープン領域での協調・共闘
多くによるナンバーワンビジネス
→市場形成の加速化
1:クローズド領域でのオンリーワンビジネス
→収益の安定化と産業生態系の主導権確保
→方法論としての「Open & Close 戦略」の
事前設計(商品形態・事業業態)
“1” をとり、“N”を仕掛け、「N×1×N」を形成
「逆ハンバーガー」モデル「ドラ焼き」
★(AICOS 関係者にお馴染み)日本におけるイノベーションGURU
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★産業パラダイムとイノベーション(1)
アイの三段活用 Imitation(模倣)Improvement(改善)Innovation(創新)
★産業パラダイムとイノベーション(2)
「イノベーション」の加速度的連鎖が産業パラダイムを移行させる
★イノベーション価値形成/提供のドミナントモデルの転換
価値形成≒商品形態
価値提供≒事業業態
★イノベーション?
◎Innovation(創新)⇒主価値を創造(旧来の主価値からの転換)
社会・生活・産業の価値を創造・普及・定着
×Invention(発明) ⇒価値ある技術の創造
×Improvement(改善) ⇒付加価値を創造
★「イノベーション」=新しい「価値のドミナントモデル」への転換(創出・普及・定着) モデル創新
社会・生活・産業で実装され、経済的効果を生むこと
従来価値との置き換え(既存モデルの脱構築)
従来にないカテゴリーの創出(無法・未法地帯の創出)
★イノベーション、やられたら「倍返し」
★産業パラダイムの変換とイノベーションは既存産業を崩壊させる/脱構築させる
そもそも「ニーズ」とは?
イノベーション 馬から自動車へ
この事例から分かることは(1)
この事例から分かることは(2)
この事例から分かることは(3)
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★提供価値に注目せよ
イノベーション原則
(1) 従来モデルの改善をいくら突き進めても、イノベーションは起こらない。
(2) イノベーションは従来モデルを駆逐し、その生産性向上努力を無にする。
(3) システム的な階層構造上、下位より上位モデルのモデル創新が衝撃となる。
モデル転換 上位レイヤーでモデル転換が起これば、下位レイヤーは壊滅しかねない
(上位)メタベーション・マクロベーション
(同位)イノベーション
(下位)ミニベーション・ミクロベーション
⇒システムとしてレイヤー構造を検討することは、イノベーションデザインにとって、極めて重要
★イノベーション=技術×制度×社会文化×ビジネスモデル
★イノベーションを仕掛ける
「技術王道」テクノロジー・プロジェクションモデル(技術シーズ起点・知的創造サイクル)
「事業覇道」イノベーションシナリオ・リフレクションモデル(価値起点・事業創造サイクルモデル)
★「イノベーション」はビジネスモデルの工夫にかかっている
★事業開発・技術開発・用途開発
★イノベーションは産業生態系を撹乱し、次の動的平衡を導く
自然生態系にとってウイルスは生態系撹乱要因
産業生態系にとってイノベーティブなビジネスは生態系撹乱要因
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技術=CPS(サイバーフィジカルシステム) CPS: サイバーフィジカルシステム
次世代の産業世界観として、価値形成はサイバーとフィジカルの相互関連により創発される CPSは、ドイツ政府の提唱するインダストリー4.0 や米国GE等が標榜するインダストリアル・インターネット
革命、さらには日本政府によるソサエティ 5.0 等の基本概念であり、AIの活用等を前提にして産業生態系に
おける価値形成の仕方を劇的変容させるだろう。特にその中核概念である「デジタルツイン」「プレディクティ
ビティ」「マスカスタマイゼーション」等は、ビジネス価値の形成に大きなインパクトとなる。そして、ここで用い
られるAI等の画期的技術は次世代の「基本ツール」となるに違いない。
★産業の生態系化・循環構造の到来!
ロボット化(アクチュエータ、コンピュータ、センサー) リッチの移行と複数リッチの相互関連化 HW→SW→IoT→BD→AIアナリティクス→サービス→ロボット⇒生態系化・循環構造化
★「デジタルツイン」 CPS の中核概念:フィジカルの双子をサイバー側に作成
(1) Predictivity productivity solutions から predictivity solutions へ
⇒ あらゆる産業で Predictivity が価値化する
(2) Mass-customization mass production or customization から mass-customization へ ⇒ あらゆる産業で mass-customization が価値化する
ただし、サイバーとフィジカルの関係性は多様
例えば サービスやコンテンツにおいても、広義の CPS 化
★「アナログツイン」デジタルデザインをフィジカルに体現 例:Dry Bio と Wet Bio ★次世代イノベーションは「AND」から生まれる
「AND」の時代はさらに進展 OR 発想から AND 発想へ Analog & Digital Real & Virtual Vender & User Goods(HW) & Service
Open & Close Cloud & Edge Cyber & Physical Wet & DRY
★産業の生態系化は何を意味するか?
同一分野のレイヤー内の競争関係から
分野横断・異業主領域融合を前提にしたレイヤー間の主導権争いに
競合関係が変わってきた!
★いかなる/あらゆる産業においても…
相互に関係する多様なテクノロジーのプラットフォーム化が進展
相互に関係する多様な価値により新たな価値が創出される
→ 新たな価値はC×Pによって創出される
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制度=SDGs(持続可能な開発⽬標) SDGs ((Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)
SDGsは、国連において決定された持続可能な開発に関する 17 の目標群と 169 のターゲット群
であり、それらに方向づけられて現在グローバルな制度形成が着々と進んでいる。これらの目標群
は、社会・生活・産業のあり方に大きな機会と脅威をもたらしうるし、これらは次世代の「常識」と
なるかもしれない。産業的には、多くのイノベーションを触発する指針になる。
しかしその一方で、日本企業へのリスク要因となりうるだろう。なぜならば、おそらく 169 のター
ゲット群の先に、国際標準化と認定・認証ビジネスの展開が待ち受けているからである。対応が遅
れれば、グルーバルサプライチェーンから外されかねないのだ。
★SDGsはイノベーションのチャンスであるが、同時に日本企業にとってのリスク。
SDGs as ルールメイキングリソース ESG投資、レギュラトリーサイエンス等の流れと通底。
17の開発目標、169のターゲット:
マナーで対応できないとしたらルール化される。
ルール化の一つとして、国際標準化と認定・認証ビジネスへ向かうとしたら…!
SDGsへ対応できないと、グローバルなサプライチェーンから外される。
すなわち、SDGsはリスク。
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<参考> SDGs (Sustainable Development Goals)
◎ 2015年 国際連合「持続可能な開発サミット」
◎ 持続可能な開発の3つの側面
持続可能な開発は、将来の世代がそのニーズを充足する能力を損なわずに、現世代のニーズを充足する
開発と定義
持続可能な開発を達成するためには、経済成長、社会的包摂、環境保護という3つの主要素を調和させる
ことが不可欠
◎ SDGsの5P(People、Prosperity、Planet、Peace、Partnership)
<17の開発目標>
目標1:貧困をなくそう:あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ
目標2:飢餓をゼロに:飢餓に終止符を打ち、食料の安定確保と栄養状態の改善を達成するとともに、持続可能な農業を推
進する
目標3:すべての人に健康と福祉を:あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し福祉を推進する
目標4:質の高い教育をみんなに:すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、 生涯学習の機会を促進す
る
目標5:ジェンダーの平等を実現しよう:ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る
目標6:安全な水を世界中に:すべての人々に水と衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保する
目標7:エネルギーをみんなに、そしてクリーンに:すべての人々に手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギ
ーへのアクセスを確保する
目標8:働きがいも経済成長も:すべての人々のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およ
びディーセント・ワークを推進する
目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう:レジリエントなインフラを整備し、包摂的で持続可能な産業化を推進するととも
に、イノベーションの拡大を図る
目標10:人と国の不平等をなくそう:国内および国家間の不平等を是正する
目標11:住み続けられるまちづくりを:都市と人間の居住地を包摂的、安全、レジリエントかつ持続可能にする
目標12:つくる責任、つかう責任:持続可能な消費と生産のパターンを確保する
目標13:気候変動に具体的な対策を:気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る
目標14:海の豊かさを守ろう:海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する
目標15:陸の豊かさも守ろう:陸上生態系の保護、回復および持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、砂漠化
への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る
目標16:平和と公正をすべての人に:持続可能な開発に向けて平和で包摂的な社会を推進し、すべての人々に司法への
アクセスを提供するとともに、あらゆるレベルにおいて効果的で責任ある包摂的な制度を構築する
目標17:パートナーシップで目標を達成しよう:持続可能な開発に向けて実施手段を強化し、グローバル・パートナーシ
ップを活性化する
SDGs 17の開発目標 ⇒169のターゲット その先は、国際標準化と認定・認証ビジネスへ?!
SDGs ポジティブ:ビジネスチャンス、ネガティブ:ビジネスリスク
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社会⽂化=SSSC(サービス&サブスクリプション、シェアリング&サーキュラー) ★社会文化=SSSC(「私共」領域における所有から使用への文化的転換)
・サービス化
・サブスクリプション化
・シェアリングエコノミー
・サーキュラーエコノミー
SSSCは、従来の「モノ所有」を基本とした生活文化を「サービスの使用・利用」に転換させるだろう。
また、ビジネスモデルでは、「モノづくり・モノ売り」から「モノづくり・モノ使わせ」「モノづくり・モノ使い」が進
展している。それは、「製造業のサービス化」「サービスのサブスクリプション化」等を加速する。
他方、サービス業では「分散する未利用資源をネットワーク化してビジネス価値化」する流れが強まりつつ
ある。
そして、若い世代を中心にした社会文化は、シェアリング・サービスやサーキュラーの流れが加速して、大
きく社会生態系を変えていくだろう。
そればかりではない。この変容に連動して、「モノのサービス武装」「サービスのモノ武装」と共に「パイプラ
インのプラットフォーム武装」と「プラットフォームのパイプライン武装」等、ビジネスモデルのあり方にも多大な
影響を与えるに違いない。
「プラットフォーム」に関して、
詳しくは『プラットフォームレボリューション』の
「監訳者解説」を参照ください。
★若い世代の価値感の特徴
• 「“公共vs私個”への“私共”の付加」という社会観の変化
• 「“モノの所有”から“サービスの利用”へ」の消費文化観の移行
• 「昭和の“損得”」、「平成の“忖度”」から「令和の“人徳(社会的正義の共有と”義“)」の社会文化的価値
観の台頭
★ユーザーを社会的加害者にするな!
★ユーザーに後ろめたい思いをさせるな!
★前世代は、次の世代に負債を残すな!
★ 特に「消費主導経済の終焉」と「サーキュラーエコノミーの台頭」を注視すべき