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固相抽出—LC-MS/MS法による食品中の甘味料12種およ び保存料9種の一斉分析 誌名 誌名 食品衛生学雑誌 ISSN ISSN 00156426 著者 著者 鶴田, 小百合 坂本, 智徳 赤木, 浩一 巻/号 巻/号 54巻3号 掲載ページ 掲載ページ p. 204-212 発行年月 発行年月 2013年6月 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター Tsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat

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Page 1: 固相抽出—LC-MS/MS法による食品中の甘味料12種およ び保存 … · A rapid and simple method for the simultaneous determination of twelve sweeteners and nine preservatives

固相抽出—LC-MS/MS法による食品中の甘味料12種および保存料9種の一斉分析

誌名誌名 食品衛生学雑誌

ISSNISSN 00156426

著者著者鶴田, 小百合坂本, 智徳赤木, 浩一

巻/号巻/号 54巻3号

掲載ページ掲載ページ p. 204-212

発行年月発行年月 2013年6月

農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センターTsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research CouncilSecretariat

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204 食衛誌 Vol.54, No. 3

報文

固相抽出-LC-MS/MS法による食品中の

甘味料12種および保存料9種の一斉分析

(平成24年9月24日受理)

鶴田小百合ネ 坂本智徳 赤木浩一

8imultaneous Determination of Twelve 8weeteners and Nine Preservatives in Foods by 801id-Phase Extraction and LC・M8瓜18

Sa戸rriTsURUDA*ラ TomonoriSAKAMOTO and Kouichi AKAKI

Fukuoka City Institute for Hygiene and the Environment: 2-1-34 Jigyohama, Chuo-ku, Fukuoka 810-0065, Japan; * Corresponding author

A rapid and simple method for the simultaneous determination of twelve sweeteners and nine preservatives in various foods by liquid chromatography-tandem mass spectrometry (LC・MS瓜ilS)was developed. The sweeteners and preservatives were extracted from solid samples with 80% and 50% methanol and from liquid samples with 80% methanol, followed by Oasis WAX cartridge cleanup. The LC separation was performed on a XSelect CSH Phenyl-Hexyl column (5μm,2.1mm x 150 mm) with a mobile phase of 10 mmolJL acetate buffer (pH 4.0)-acetonitrile and MS detec-tion with negative ion electrospray ionization. The quantification limits of acesulfame K (AK), ali-tame (AL), aspartame (ASP) , cyclamic acid (CYC), neotame (NEO), saccharin Na (SAC) , p-hy-droxybenzoic acid methyl (PHBA-Me), p-hydroxybenzoic acid ethyl (PHBA-Et), p-hydroxybenzoic acid isopropyl (PHBA-iPr), p-hydroxybenzoic acid propyl (PHBA-Pr), p-hydroxybenzoic acid isobu-tyl (PHBA-iBu) and p-hydroxybenzoic acid butyl (PHBA司Bu)were 0.001 g/kg, those of dulcin (DU), glycyrrhizic acid (GLY), neohesperidin dihydrochalcone (NHDC), rebaudioside A (REB) , stevioside (STV) , sucralose (SUC) and benzoic acid (BA) were 0.005 g/kg, and those of sorbic acid (SOA) and dehydroacetic acid (DHA) were 0.02 g/kg. The mean recoveries from ten kinds of foods forti五edat the levels of 0.02 and 0.2 g/kg were 70.9-119.0%, and their relative standard deviations were 0.1-11.7%.

(Received September 24, 2012)

Key words:液体クロマトグラフータンデム質量分析計 LC-MSIMS;間中目抽出 solid-phase extraction; 甘味料 sweetener;保存料 preservative

= Eコ

食品添加物の甘味料および保存料は,輸入および国産の

多種類の加工食品に使用されている.囲内においては,甘

味料であるアセスルファムカリウム (AK),アスバルテー

ム (ASP),ネオテーム (NEO),サッカリンナトリウム

(SAC) ,スクラロース (SUC)および、D-ソルピトールや

キシリトールなどの糖アルコールと,保存料である安息

香酸 (BA),デヒドロ酢酸ナトリウム,パラオキシ安息香

酸エステル類 (PHBA-Es,パラオキシ安息香酸エチル

(PHBA-Et),パラオキシ安息香酸プロピル (PHBA♂r),

パラオキシ安息香酸イソプロピル (PHBA-iPr),パラオ

キシ安息香酸ブチル (PHBA-Bu),パラオキシ安息香酸

イソブチル (PHBA-iBu)),ソルビン酸 (SOA),ナイシ

ン,プロピオン酸および二酸化硫黄などが食品添加物とし

て指定されている.その他の甘味料としては,既存添加物

のステピア抽出物(主成分はステピオシド (STV)および

レパウデイオシドA (REB))やカンゾウ抽出物(主成分

はグリチルリチン酸 (GLY))などが圏内で使用されてい

る.このように圏内で使用できる甘射斗と保存料の選択肢

が多様化し複数の組み合わせで使用される場合もある.

また, 日本では指定外であるが世界的には使用されてい

る食品添加物もあり.輸入食品において指定外添加物の違

反事例が多発している.主な指定外添加物として,合成甘

味料ではアリテーム (AL) (オーストラリア,ニュージー

ランド,メキシコおよび中固などで使用許可),サイクラ

ミン酸ナトリウム (CYC) (EU,中国および台湾などで

*連絡先 [email protected]抱.JP福岡市保健環境研究所:〒810-0065福岡市中央区地行浜2-1-34

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June 2013 固相抽出拘LC-M8瓜1:8法による甘味料12種と保存料9種の一斉分析 205

使用許可),ネオヘスベリジンジヒドロカルコン

(NHDC) (EUなどで使用許可, 日本では着香の目的以外

に使用不可),合成保存料ではパラオキシ安息香酸メチル

(PHBA-Me) (EU,カナダおよびインドなどで使用許可)

などが挙げられる 1),2) さらに,過去には日本で使用され

ていたが,現在では日本および諸外国において使用不可で

ある甘味料のズルチン (DU)が輸入品で検出される事例

があった.

そのため,食品中の保存料や甘味料を測定する際には,

指定添加物に加え,海外で使用されている指定外添加物な

ど多項目を分析することが求められている.また,指定添

加物の保存料と甘味料の多くは食品衛生法により対象食品

および使用量について使用基準が定められていることか

ら,多くの検査機関で行政検査が行われており,これらの

検査の簡便,省力化が望まれている.

一方,甘味料の分析法として透析-HPLC法3),4) 溶媒

抽出法3) 固相抽出幽LC-MS法5)など,保存料の分析法と

して水蒸気蒸留法3),4) 溶媒抽出法4),6) なと個別にまた

は複数同時に食品添加物を測定する方法が報告されてい

る.しかし甘味料と保存料両方の多項目を一斉分析する

方法は報告されておらず¥これらの検査では複数種類の分

析法を実施するため,操作が煩雑で、時間を要する.

そこで今回は,上記の保存料と甘味料のうち,対象物質

との同時分析が困難であった糖アルコール類,ナイシン,

二酸化硫黄およびプロピオン酸を除いた甘味料12種およ

び保存料9種について,食品からの同時抽出・精製法およ

びLC-MSIMSによる一斉分析法を検討したので報告する.

実験方法

1 .試薬等

1)標準品:AK (純度99.0%以上,高速液体クロマト

グラフ用), GLY (純度99.0%以上,生薬試験用), REB

(純度99.0%以上,食品分析用), SAC (二水和物,純度

99.0%以上,食品分析用), STV (純度99.4%,ステピオ

シド定量用), SUC (純度98.0%以上,高速液体クロマト

グラフ用), PHBA-Me (純度99.0%以上,特級), PHBA-

Et (純度99.0%以上,特級), PHBA-Pr (純度95.0%以

上一級)および、PHBA-Bu(純度98.0%以上,特級)は

和光純薬工業(株)製を使用した. ASP (純度99.5%,食

品分析用), DU (純度99.8%,食品分析用), BA (純度

99.5%以上,特級)およびSOA(純度98.0%以上,鹿特

級)は関東化学(株)製を使用したデヒドロ酢酸 (DHA)

(純度98.0%以上,特級), PHBA-iPr (純度99.0%以上,

特級)および~PHBA-iBu (純度99.0%以上,特級)は東京

化成工業(株)製を使用した AL(純度99.2%) はAPAC

Pharmatech社製, CYC (純度98.0%におよびNHDC

(純度95.0%以上)はSigmaAldrich社製, NEO (純度

95.4%)はUnitedStates Pharmacopeial Convention社

製を使用した

2)標準原液.各標準品20mg (SAC標準品(二水和

物)は23.5mg) を精秤し甘味料は80%メタノ}ル

(STVおよびDU) または50%メタノール,保存料はメタ

ノールで溶解し, 20mLに定容した (1,000μg/mL). 各

標準原液は遮光,密閉して冷蔵保存し作製後1か月内に

使用することとした.

3)標準溶液:各標準原液を 1mLずつ混合し, 50%メ

タノールで100mLに定容した (10μg/mL).

4)逆相一弱アニオン交換ミックスモードカラム:Wa-

ters社製Oasis-WAX(150 mg/6 mL,粒径30ドm)

5) メタノ}ル:特級(純度99.8%以上),関東化学

(株)製

6) アセトニトリル:HPLC用(純度99.8%以上),関

東化学(株)製

7)酢酸:特級(純度99.7%以上),和光純薬工業(株)

8) ギ酸:特級(純度98.0%以上),和光純薬工業(株)

9)酢酸アンモニウム:特級(純度97.0%以上),和光

純薬工業(株)製

10) 10 mmolι酢酸緩衝液 (pH4.0): 10 mmol/L酢酸

と10mmol/L酢酸アンモニウムを混和し, pH 4.0に調整

した.

11)水:蒸留水を用いた.

12)ろ紙:No.5A. 5C,アドパンテック東洋(株)製

13) 0.20μmフィルター:DISMIC-13HP,アドバン

テック東洋(株)製

2.試料

しょうゆ (3検体),みそ,ストロペリージャム,アイス

クリーム (2検体),パタ-クリーム入りピスケット,

白菜漬,あんこ入り鰻頭,ウインナーソーセージ (2検

体),かまぼこ (2検体),ウスターソース,魚介乾製品,

さきいか,砂糖代替品,清涼飲料水, しょうゆ漬, ミック

スペリージャム,ゼリー,たくあん漬,ちくわおよび福神

漬は,平成23年4月から平成24年3月に購入した圏内で

流通する食品を用いた.

3.装置

ホモジナイザー:QIAGEN社製TissueRuptor

高速冷却遠心機:久保田商事(株)製6200

液体クロマトグラフ:Agilent Technologies社製1100

シリーズ

質量分析計:AB Sciex社製API4000

4.測定条件

1) LC条件

カラム:XSelect CSH Phenyl-Hexyl Column (5μm,

2.1 mm X 150 mm, Waters社製),移動相 A;10mmol/L

酢酸緩衝液 (pH4.0), B; アセトニトリル,グラジエン

ト条件:A:B (分)→95:5 (0-1)→45: 55 (40)→5: 95

(40.1-50)→ 95:5 (50.1-65),流速:0.2 mL/min,注入

量:5ドL,カラム温度:400

C

2) MS瓜1S条件

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206 食衛誌 Vol. 54, No.3

Table 1. MSふ1Sconditions and monitoring ions for the 21 target compounds

Quantitative ion Qualitative ion

Precursor ion Declustering

Analytes Additive use Formula potential Product Collision Product Collision (mlz)

(V) 10n energy 10n energy (mlz) (eV) (mlz) (eV)

AK Sweetener C4H404NSK 161.9 [M-K]- 40 82.0 -20 78.0 -42 AL Sweetener C'4H2S04N3S 330.2 [M-H]一 -95 295.2 -30 167.1 -30

ASP Sweetener C'4HISOsN2 293.1 [M-H]一 65 260.9 -14 199.9 20

CYC Sweetener C6HI203NSNa 177.9 [M-Na]一 -65 79.9 一32 95.9 -28

DU Sweetener C9HI202N2 179.0 [M-H]一 -50 107.1 -26 149.8 -16

GLY Sweetener C42H620'6 821.3 同;I-H]一 -145 351.0 -54 113.0 -74

NHDC Sweetener C2sH360lS 611.2 [M-H]一 120 303.0 -44 125.1 70

NEO Sweetener C却H300sN2 377.1 [M-H]一 100 200.0 -26 345.0 -18

REB Sweetener C44H700羽 965.4 [M-H] 125 803.3 -34 317.3 92

SAC Sweetener C7H403NSNa 181.9 [M-Na]一 -65 106.0 -26 41.9 -50

STV Sweetener C3sH印 018 803.3 [M-H]一 -80 641.3 一24 317.3 -84

395.0 [M-H] 358.7 -16 SUC Sweetener C,2H,gC1308 一τ。

397.0 [M-H] 360.7 16

BA Preservative C7H602 120.9 [M-H]一 35 77.0 -20

DHA Preservative CSHS04 166.9 [M-H]一 35 83.1 14 122.9 -12

PHBA-Me Preservative CSHS03 151.0 [M-H]一 一60 91.9 -32 136.0 -20

PHBA-Et Preservative C9Hlu03 165.0 [M-H]一 -60 91.9 -20 136.0 -30

PHBA-iPr Preservative CluHI203 178.9 [M-H]一 -60 91.9 -24 136.9 -30

PHBA-Pr Preservative CluHI203 178.9 [M-H]一 65 91.9 -36 136.1 24

PHBA-iBu Preservative CllHI403 192.9 [M-H]一 60 91.9 -22 136.1 -32

PHBA-Bu Preservative CllH,403 192.9 [M-H] -95 91.9 -30 136.1 -30

SOA Preservative C6Hs02 110.9 [M-H]一 -60 67.0 -18

イオン化モード:E81, negative (MRM) ,データ取り込

み時間 30msec,イオンスプレー電圧 (18):-4,500 V,イ

オン源温度 (TEM):500oC,カーテンガス (CUR):

j青をあわせ50%メタノールで50mLに定容したものを抽

出液とした.

液体試料:試料5gに80%メタノーJレ30mLを加え混合

後,5,000Xgで5分間遠心分離した上清をろ紙ろ過

(No.5C) し, 80%メタノールでろ紙を洗浄するとともに

液量を 50mLに定容したものを抽出液とした

30 psi,コリジョンガス (CAD):5 psi,イオンソースガ

ス1(Gas 1): 40 psi,イオンソースガス 2(Gas 2): 70 psi

対象物質ごとの測定条件はTable1に示した.

5. 試験溶液の調製

5.1 抽出

固体試料:フードプロセッサーで細切均一化した試料

5gを量り採り, 80%メタノール(高脂肪食品は95%メタ

ノール)20mLを加え,ホモジナイズした(バターやアイ

スクリームは湯浴で、溶解).振とう機で10分間振とう後,

5,000Xgで5分間遠心分離し上清を No.5C(ろ紙が詰

まりやすいジャムやアイスクリームなどの食品ではNo.

5A)のろ紙で吸引ろ過した.さらに 80%メタノール(高

脂肪食品は95%メタノール)でろ紙を洗浄するとともに

液量を 25mLとした.残さに 50%メタノール20mLを加

え,同様の操作(ホモジナイズを除く)を行ったのち,上

5.2 精製

抽出液を水で5倍(高脂肪食品および液体試料は6倍)

に希釈しその5mL(高脂肪食品および液体試料は

6mL) をメタノール5mLおよび水5mLでコンデイシヨ

ニングしたOasis-WAXに負荷したのち,国相カラムを

10%メタノール 10mLで洗浄した. 5%ギ酸-0.1mol江」酢

酸アンモニウム含有85%メタノ}ル 10mLを固相カラム

に負荷し,自然落下により通液させた溶出液を 5%ギ酸

-0.1 mol/L酢酸アンモニウム含有85%メタノールで

10mLに定容後, 0.20μmフィルターでろ過したものを試

験溶液とした

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June 2013 国相抽出-LC-MS瓜,fS法による甘味料12種と保存料9種の一斉分析 207

6_定量

標準溶液を 5%ギ酸一0.1mol/L酢酸アンモニウム含有

85% メタノールで希釈し 0.005~2μg/mLの範囲で検量

線用標準溶液を調製した検量線は各対象物質の濃度範囲

において,クロマトグラムのピーク面積から,絶対検量線

法により作成した.

結果および考察

1. MSIMS条件の検討

各標準原液を 50%アセトニトリルで適宜希釈し,イン

フュージョンによりポジテイブおよびネガティブモードで

分析を試みた.ポジテイブモードでは, AK, CYC, SAC

の強酸性物質は感度が低く,測定が困難であった. SOA

については, 0.05%ギ酸含有50%アセトニトリルを希釈

液とした場合ではネガテイブモードよりポジティブモード

は約 100倍感度が高かったが, 50%アセトニトリルを希釈

液とした場合では感度に大きな差はなかった.ネガテイブ

モードではすべての対象物質を一斉に測定できることか

ら,測定はネガテイブモードで行うこととした.保存料と

甘味料はプロトン,ナトリウムイオンまたはカリウムイオ

ンが脱離したイオンをプレカーサーイオンとしその感度

が最大になるように,オリフイスプレート電圧等の条件を

最適化した.そののち,プロダクトイオンスキャンを行

い,コリジョンエネルギ一等を最適化して最も高い強度が

得られたイオンを定量イオンに,次に高い強度が得られた

イオンを確認イオンに用いることとした (Table1).移動

相組成の決定後に,移動相で各標準原液を希釈して同様の

操作を行い,生成するイオンが同一であり,強度に大きな

差異がないことを確認した. BAとSOAはプロダクトイオ

ンが1つしか得られなかったため,定量イオンのみとし

た.

2. LC条件の検討

今回検討した甘味料および保存料の分析には, AKおよ

びSACを除いてODSカラムが用いられており 4) これら

すべてを一斉に分析するには, ODSカラムをはじめとす

る逆相カラムを用いることが適当と考えられた強酸性物

質であるAKやSACについてはODSカラムでは良好な保

持が得られず,分析には移動相にイオンベア試薬を添加す

る5) もしくは分離カラムにアミノプロピルカラム 3),7) を

用いる方法が報告されている.しかしイオンベア試薬の

使用は試薬の機器への残存が懸念され,アミノプロピルカ

ラムでは固定棺の耐久性に問題がある 8)

一方,フェニルカラムはAKとSACが分子内にπ電子共

役系を有していることから, π電子の相互作用によって保

持することができると考えられ,疎水性相互作用による保

持も起こることが期待できる.

移動相には,酸性化合物をフェニルカラムに保持させる

ため,ギ酸または酢酸緩衝液ーアセトニトリル系を検討

しすべての対象物質を保持して, SOAの感度がより高

かった酢酸緩衝液 (pH4.0)ーアセトニトリルを使用した.

カラムには,フェニルカラムである GLサイエンス社製

Inertsil Ph-3, InertSustain phenylおよび、Waters社製

XSELECT CSH Phenyl-Hexylを比較検討し, Inertsil

Ph-3および、InertSustainphenylより DHAのテーリング

が大きいものの, AKおよびSACの保持がより良好であっ

たXSELECTCSH Phenyl-Hexylを選択した. PHBA-

iBuとPHBA同Buは,検討したカラムでは同程度の分離で

あり,完全な分離は困難で、あったが,後述の添加回収試験

では回収率および相対標準偏差 (RSD)は良好であった

(Table 2). ODSカラムを用いた他のPHBA類の分析法で

は,異性体の完全な分離は難しいことから,定量イオンと

確認イオンのアパンダンス比により同定する方法が報告さ

れている 9) 本法による比率(確認イオン/定量イオン)は

PHBA-iBuは0.4, PHBA-Buは0.3であった.

3.精製条件の検討

対象物質は極性の低い物質と酸性物質であるので,逆相

弱アニオン交換ミックスモードカラムである Oasis-WAX

を用いた精製条件を検討した.

Oasis-WAXに対象物質21種を負荷させ, 0~100% メタ

ノール溶液を低い濃度から順次通液させたところ, SUC

が15%メタノールで溶出され始め,極性の比較的低い物

質問種は85%メタノールですべて溶出された.これらの

結果から,固相カラムに負荷する抽出液は,メタノール濃

度が15%以下となるように蒸留水で希釈し洗浄液は

10%メタノールとし,溶出液は85%メタノールとした.

酸性物質の溶出は, ASPがアルカリ性条件下で速やか

に加水分解することから,酸性の溶出液で溶出させること

を検討した.ギ酸または塩酸含有85%メタノールにより

検討を行ったところ,ギ、酸は5%の濃度でAKとSAC以外

のすべての物質が溶出され,塩酸は0.1mol/Lの濃度です

べての物質が溶出された. しかし GLYは強酸性下で溶

解性が低下し, 0.1 mol/L塩酸含有85%メタノール中では

経時的な濃度減少が観察されたことから,溶出液にはギ酸

を選択した.

AKとSACは揮発性塩である酢酸アンモニウムにより溶

出することを検討し 0.1mol/Lの濃度により溶出された

これらの結果から,溶出液は5%ギ酸 0.1mol/L酢酸ア

ンモニウム含有85%メタノールとした.

4.抽出条件の検討

4.1 固体試料

甘味料と保存料の抽出には水とメタノールの混合溶液

(50%メタノール等)による抽出法が報告されており 10),*1

本研究においてもこの抽出法を検討した Table2に示し

た10種類の試料に対象物質21種を0.02g/kg添加し, 50%

メタノール20mLで1回抽出後50mLに定容し添加回収

率を求めたところ,脂肪分またはタンパク質が多い食品で

PHBA-Es類, SOA等の保存料の回収率が低い傾向があっ

*1 厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課長通知“食品中

のパラオキシ安息香酸メチルの分析法について"平成17年12月7日,食安監発第1207003号 (2005).

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凶。∞

Recoveries of仕le21target compounds in 10 sampl巴S

Recovery (%) (n=3) Spiked level Biscuit Butter Ice cream Kamaboko Manju Miso Pickles Wiener sausage

~~~~~~~~~~~~~~~~~

Table 2.

Strawberry jam

Mean RSD

Soy sauce

AL

持論暗部

〈。-印品

-zoω

ASP

CYC

GLY

NHDC

PHBA-Me

PHBA-iBu

ω一um-2一UM-ωω一幻

M一M

M一初日一凶山一幻山一日制一話一幻

M-MU一M凶-μ日一

MM-引-U一ω幻一幻

ω一日“

AK 附則一時一向則一則

M-mm一m

m一お一即断一お一山側一則

m-m則一

mm-mm一um-出一剛山-川町一問山

-M肌一郎

RSD

M

M一MM-Mω一2-MM一幻

M一日山一

M

M一ω日一

MU-m

…ω↑叫町一日幻

-UM一MM-um一目引・↑

Mω一MM一MM一日凶

Ew-約一即断-お一位一部一川型都一お一都一

mm

Mean

MM-MM一日口一幻日一

MM-M幻-um一初日一日目一

mm-mm一山

ω一MM一一山口一

MM一Uω一MM一MM一幻

μ一日目一日幻

m

m一郎一側側一部一都一

m

m一蹴剛一町制一則則一肌則一郎問↑剛山一制

m-M山一

mm-州側一部-抑制一部

-m剛一

mm

ω口一

μ口一

Mω一ω引一

ωM一ωω一日

μ一日幻一

M

M一日

μ一M幻一

MM一Mm一MM一ωM一幻幻一口幻一口口一

M幻一初日一口市

102.5 94.9

96.2 95.2

89.5 91.5

97.5 83.0

93.0 96.7

81.8

80.8

86.3

82.4

91.8 95.0

86.3

90.7

95.0 93.8

99.8 88.8

89.7 82.4

97.7 85.8

98.3 83.3

98.8 96.3

95.3 98.7

94.5 96.8

98.5 92.3

93.2 96.8

96.7 92.3

103.2 79.6

抗日一

MM一日日一

ω日一

MM一引け一

M

M一M

M一一MM一UMM一則

μ一幻幻一

ωω一ωω一MM一幻

M一引い一日同一切幻一

μ同一

MM

山側一印刷

-m則一部一鉛一

m

m一m

m一お一川則一剛山一則問一都一部一剛山一出一お一部一部一部一部一川飢

M

M一MM一ωM一灯山一日口一日

ω一ωμ一ωM-m引-UM一M

U一一日

M-uu一μu-“日一

MM一MM一日

ω一MM一一MM一UMM

出一部一紘一紘一則則一則

m-即断一

m

m一山側一郎一山側一郎

-m則一部-ぷ一

wm-お

ω一MM一UM一山口一

ω印一日日幻

-mm-日

-Mω-MM一町幻一幻似一

MU一回幻一

UM一日凶一幻

ω一幻凶一幻日

-UM一MM

mm-約一郎一部一新一蹴削↑削則一

mm-即

-m則一町山一出-町山一郎

m-山町一抑制一知一抑制一部一然一則削

凶初一一日制一日

ω一MM一日目一日幻一幻

ω一日目

-MM一M

M一即日一州日一

MM-MU一MU-UM一MM一幻

ω一幻

M一幻日一印凶

川町一向山一針一部一加盟側則一削則一忠一抑制

-mm一忠一都一即断一総一郎一川町一則川十郎一

mm一山側一川町

M

M一日日一一切削一

MM-日初一

U町一

U

M一口

U一M

M一日幻一

ωω-目的一凶

M↑UM一MM21U一MM-MU一幻幻一幻

M一ω日

町町一則則一

mm一部一線-川町-削仰-町些附則一川町一部一説-抑制一則山一部一部-訟一川則一

mm一抑制一加川

凶幻一日目一

UM一MM一MM一ω

M一旧日一

ω

M一一山口一

ω日一

U

M一MM一MM一UM一日川一

UM一凶日一日目一

MM一日目一

MM

m

m一mm一部一則則一銭一町制一則則一附則一制町一則則一加山一則町一部一則則一抑制一則則一紘一則則一

mm一都一即断

0.02 0.2

0.02 0.2

0.02 0.2

0.02 0.2

0.02 0.2

0.02

0.2

0.02

0.2

0.02

0.2

0.02

0.2

0.02 0.2

0.02 0.2

0.02 0.2

0.02 0.2

0.02 0.2

0.02 0.2

0.02 0.2

0.02 0.2

0.02 0.2

0.02 0.2

0.02 0.2

0.02 0.2

PHBA-iPr

PHBA句Bu

PHBA-Et

PHBA-Pr

DHA

NEO

REB

SUC

SAC

STV

SOA

Compounds

DU

BA

Page 7: 固相抽出—LC-MS/MS法による食品中の甘味料12種およ び保存 … · A rapid and simple method for the simultaneous determination of twelve sweeteners and nine preservatives

果, ASPのみ特に65%メタノール中において濃度が経時

的に減少し (Fig.1),その他の対象物質ではすべての溶

液中で40時間後も安定的に存在した.ASPはpH3~5 で

安定に存在するが4) GLYは酸性条件下では抽出されにく

いため,抽出液のpHは調製 しないこととした.ASPは

65%メタノール中では24時間後に濃度が約 10%減少した

ため (Fig.1), 24時間程度で抽出から溶出まで行うこと

が望ましいと考えられた.

6.検量線

Table 1に示した定量イオンを用いて検量線を作成した

ところ, AK, CYCおよび~PHBA-Es類は標準液0.002~

0.2μg/mL, ALおよびSAC は 0.005~0.5μg/mL, ASPお

よびNEO は 0.005~2μg/mL, DUおよびBAは 0.01~2μg/

mL, GLY, NHDC, REB, STV, SUC は 0 . 02~2 ドg/

mL, DHAおよびSOAは 0.1~4 同ImLの範囲で相関係数

0.999以上であり, 21種すべてで良好な直線性を示した

7.添加回収試験

10種の食品に対象物質21種を 0.02g/kgおよび0.2g/kg

となるように添加し 30分間紋置後に本法に従い添加回

収試験 (n=3)を行ったその結果, 0.02 g/kgおよび

0.2 g/kg添加した 10検体すべてにおいて,対象物質21種

の添加回収率が70.9~ 1l9.0% と良好な結果を示し 相対

標準偏差は0.1~1l.7% であった (Table 2). 検討したす

べての試料において分析の支障となるピークは認められな

かった (Fig.2). また,添加回収試験における添加濃度

0.02 g/kg相当となるようにブランク試料の試験溶液で調

製した標準溶液(マトリックス添加標準溶液)および溶出

液で調製した標準溶液(溶出液標準溶液)を調製し,マト

リックス添加標準溶液の溶出液と標準溶液に対するピーク

面積比を求めて,試料マトリックスの測定値への影響を検

討した.その結果, 0.84~ 1. 15 の範囲であり,マトリック

スによる測定値への影響は少ないと考えられた.定量下限

は, AK. AL, ASP, CYC, NEO, SACおよび、PHBA-Es

類は0.001g/kg, DHAおよびSOAは0.02g/kg,それ以外

の対象物質は0.005g/kgで、あった. SOAは本法がネガ

ティブモードを用いることから 報告されている試験法の

ポジテイブモードより感度が劣ることや *2 DHAはピー

クがテーリングすることから,定量下限値が他の物質より

高くなったと考えられる.

8.従来法との比較検討

AK, ASP, SAC, SUC, SOAおよび~PHBA-Es類は,各食

品添加物の表示がある食品を用いて従来法と本法との比較

検討を行った.従来法として, AKおよびSACは厚生労働

省通知食基発第58号叫, ASPは衛生試験法注解20104),

209

た一方,上述と同様に80%メタノールにより抽出したと

ころ,バタ ーを除いてすべての対象物質で70~120%の良

好な回収率を示したが,高濃度 (0.2g/kg)添加した場合

ではスクラロースの回収率が低い場合があった

これらの結果から,バター等の高脂肪食品を除く固体試

料については,すべての対象物質において良好な添加回収

率を得るために, 1回目は80%メタノ ール, 2回目は50%

メタノールで抽出を行うこととした.

バターは上述の方法においても BA,DHAおよびSOAの

回収率が低く,この理由としてこれらの保存料は80%メ

タノールより油脂との親和性が高いためと考えられた.そ

こで,バター等の高脂肪食品は1回目の抽出を 95%メタ

ノールにより行い,バターおよびドレッシングによる添加

回収試験 (0.02および0.2g/kg添加)を行ったところ,す

べての対象物質で70~120%の回収率を得た

4.2 液体試料

0.02 g/kgおよび0.2g/kg添加した試料(しよう油,ウ

スタ ーソース,清涼飲料水)を蒸留水で10倍希釈 し直

接固相カラムに負荷して精製したところ, AKの回収率が

120%以上と高くなる傾向があった未添加の液体試料の

抽出液に標準溶液を添加した場合においても, AKの回収

率は 120%以上となった.このことから, AKはHPLCカ

ラムからの溶出が最も速い物質であるため,除去されな

かった爽雑物質と分離できず マトリックス効果により回

収率が高くなったと推測されたそこで,液体試料は

80%メタノ ールを加えて除タンパク操作を行い,本法に

従いカラム精製を行ったところ,すべての対象物質で70

~120%の良好な回収率を得た

5.抽出液および溶出液中での対象物質の安定性

対象物質の抽出液または溶出液中の安定性を検討するた

め,標準溶液10μg/mLを抽出液 (65%,72.5%および

80%メタノール溶液)と洛出液 (5%ギ酸一0.1mo旧」酢酸

アンモニウム含有85%メタノール)で希釈して0.1μg/mL

とし,経時的にLC-MS瓜ilSで測定した (n=3). その結

国棺抽出-LC-MS爪ilS法による甘味料12穫と保存料9種の一斉分析June 2013

90

60

50 0

ハUA

U

n

U

2

1

0

噌・A

噌EA

・8A

(ぷ)E。3E冨8ESE-=苦悩

80

70

40 20 30

Time (h)

10

叫厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課長通知“「食品中の食品添加物分析法」の改正について"平成22年5月28日,食安基発0528第3号 (2010).

吋厚生労働省医薬局食品保健部基準課長通知“食品中のアセスルファムカリウム分析法について"平成13年12月28日,食基発第58号 (2001).

Stability of aspartame in extraction solutions and elution buffer

Data show means of triplicate determinations. Er-ror bars show standard deviation from the mean

---一:65 % methanol, ~・一 : 72.5% methanol, 一合一:80% methanol,一*ー:elution buffer

Fig.1.

Page 8: 固相抽出—LC-MS/MS法による食品中の甘味料12種およ び保存 … · A rapid and simple method for the simultaneous determination of twelve sweeteners and nine preservatives

210

4.0e5

2.005

0.0

2.白色4

1.0e4

O.口

3.004

2.0e4

1.0e4

。。

6.0e4

4.0e4

2.0e4

0.0

1.00e白

5.00e5

0.00

4000

200口

9.51

AK

8 1口 12Time (min)

16.12

DU

14 16 18 Time(min)

26.05

REB

24 26 28 Time(min)

16.34

BA

14 16 18 Time(min)

28 3日

Time(min)

16.66

ISOA

1 .. '向、判句帆仲掴且............... ./1/'>.-

16 18

Time(min)

15.84 13.48

6.0e4 2.005

1.0e5

4.0e4 AL 5.0e4

ASP 1.0e5

2.0e4

口.0 ロー口 。。14 16 18 12 14

Time(min) Time(min)

29.87 23.85

3.0e4 2.0e5

2.0e5 2.0e4

1.004 GLY 1.0e5 NHDC 1.0e5

0.0 。。 0.0 28 30 32 22 24 26

Time(min) Time(min)

11.45 26.06 6000

4.0e4 ~・ 1 .0e4 4000

SAC 1 ISTV 2.0e4~ ・ 5000 .0 2000

0.0 ~ ' 一一.__ 0.0 。

10 12 24 26 28 Time(min) Time (min)

19.62 20.14 4.0e5

1.0e6 5日日日

PHBA 2.口e55.0e5

-Me

。』ーーァ=.... I I 0.0 0.0 18 20 22 18 20 22

Time (min) Time (min)

29.99

1.00e6

4.0e5 HBA HBA

5.00e5 -Pr 2.0e5

。。 日.口口 0.0

食衛誌 Vol. 54, No.3

11.62

CYC

10 12 14 Time(min)

27.08

NEO

26 28 Time(min)

14.15

SUC

12 14 16 Time (min)

25.14

PHBA

-Et

24 2白Time(min)

34.33

-Bu

32 34

Time(min)

3白 28 30 32 32 34 Time(min)

36 Time (min)

Fig.2. MRM chromatograms ofbutter fortified with 21 compounds at 0.02 g/kg

SOAおよびtpHBA-Es類は厚生労働省通知食安基発0528

第3号*2に従った SUCは,試験溶液の調製は衛生試験

法注解20104),定量は Strokaらの方法叫 に従った AK

は4食品 (ちくわ,清涼飲料水,ゼリーおよび福神漬),

ASPは4食品(清涼飲料水,砂糖代替品,ゼリーおよび福

神漬), SACは4食品(しょうゆ,ウスターソース, しょ

うゆ漬, 魚介乾製品),SUCは3食品 (アイスクリーム,

ゼリーおよび福神漬), PHBA-Es類は2食品 (しょうゆ2

検体)およびSOAは5食品 (たくあん漬,かまぼこ,

ミックスペリージャム,ウインナーソーセージおよびさき

いか)を用いて試験し結果を Table3に示したすべて

の食品において,本法と従来法の両方で,表示どおりに各

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June 2013 国相抽出ーLC-MS瓜日法による甘味料12種と保存料9種の一斉分析 211

Table 3. Comparison of conventional and newly developed methods for estimating contents of target components in samples

Conventional New Ratios of Compounds Samples methods ① method ② contents

(g/kg) (g/kg) (②/①%) .•••..••••. ‘・ ・‘晶‘・‘晶‘晶 晶晶晶 晶晶 .. ーーFish sausage (tikuwa) 0.031 0.031 100

AK Jelly 0.078 0.070 90

Pickles (hukujinzuke) 0.11 0.11 99 Soft drink (calpis) 0.041 0.039 95

ASP

Jelly

Pickles (hukujinzuke) Soft drink (calpis)

0.17 0.073

0.074

0.18 106 0.070 96 0.072 97 6.9 103

ー恒圃圃a ・‘晶‘・‘晶‘轟轟轟轟轟 轟轟 轟轟0.22 147 0.58 97 0.28 108 0.16 107

-・・・・・ ・・“‘・‘轟轟轟轟轟 轟 ・ ・ ‘・.“‘・‘・“‘轟轟轟轟轟轟轟0.033 100 0.023 92 0.076 97

Sugar substitute 6.7

SAC

Dried fish Pickles (shoyuzuke)

Soy sauce

Worcestershire sauce

Ice cream

SUC Jelly

Pickles (hukujinzuke)

PHBA

r

u

u

♂也

3

Soy sauce

-Es -iPr

-iBu

-Bu

0.15

0.60 0.26

0.15

0.033

0.025

0.078

0.065

0.046 0.043

0.071

0.056

0.054

円,

aoムnU

9

8

8

0.045 0.050 90 Soy sauce 0.034 0.039 87

0.032 0.039 82 ーー .‘ーー .‘ー ー晶晶‘晶晶晶 晶晶 ー.‘ー・.‘‘・‘轟轟轟轟轟a 晶晶a 晶晶 ・ー・ ・‘‘晶‘晶‘晶a 晶晶a晶晶....‘ ......・ ー・ .‘ー ‘晶a晶晶晶晶晶晶a晶'ーーー・』恒 圃』恒.‘・‘‘‘晶‘晶a轟轟轟轟轟轟 .‘, ・ー・・‘晶‘晶‘晶a晶a晶晶晶晶a

Dried fish (sakiika) 0.50 0.42 84 Kamaboko 0.33 0.32 97

Mixed berry jam 0.29 0.28 97 Pickle (takuan) 0.69 0.63 91 Wiener sausage 1.24 1.27 102

SOA

食品添加物が検出された.従来法の測定値に対して本法は 択性も高いことから,甘味料および保存料の一斉分析のた

魚介乾製品の SACの測定値を除いて 80~108%の測定値 めのスクリーニング試験法または同定のための確認試験法

となり,従来法とほぼ同等の結果が得られることが示され として有用と考えられる.

た.

魚介乾製品のSACは従来法に対して 147%の測定値で

あったが,透析法は魚介乾製品において低回収傾向である

ことが報告されておりの この試験溶液で調製したマト

リックス添加標準溶液において正のマトリックス効果は認

められなかったため,本法での回収率の改善を反映した結

果と推測された.

結論

食品中の 12種甘味料および9種保存料を固相抽出一LC

MSIMS法により分析する方法を開発した固体試料は

80%メタノール(高脂肪食品は95%メタノール)と 50%

メタノールによる 2回抽出,液体試料は80%メタノ}ル

による抽出を行い,逆相一弱アニオン交換ミックスモード

カラムで、精製を行った.対象物質21種を 10食品に添加し

回収試験を行った結果,良好な回収率が得られた今回開

発した分析法は,甘味料12種および保存料9種を簡便か

っ迅速に一斉分析することが可能で、あり,定量性および選

文 献

1) 日本食品添加物協会,食品添加物マニュアル編集委員会

編集.新食品添加物マニュアル 第2版.東京,日本食品

添加物協会, 2007, 543 p.

2) 日本食品添加物協会,国際専門委員会編集 世界の食品

添加物概説 東京,日本食品添加物協会, 2004, 451 p.

3) Ministry of Health, Labour and Welfare ed. Shokuhin

Eisei Kensa Shishin 2003. Tokyo, Japan Food Hygiene

Association, 2003, p. 12-30, p. 216-220, p. 228-239

4) The Pharmaceutical Society of Japan ed. Eiseishikenho

Chukai 2010. (Methods of Analysis in Health Science

2010.) Tokyo, Kanehara Shuppan, 2010, p. 317-326, p.

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212

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Page 11: 固相抽出—LC-MS/MS法による食品中の甘味料12種およ び保存 … · A rapid and simple method for the simultaneous determination of twelve sweeteners and nine preservatives

直接溶媒抽出と GPCによる放射線照射された食肉,チーズおよびサーモン中のふアルキルブタノン類の迅速分析法(報文,英文)

高橋邦彦*石井里枝松本隆二食衛誌 54(3), 173~177 (2013)

2・アルキルブタノン類 (2・ACBs) は含脂質食品の放射線照射により生成することが知られている.今回,直接溶媒抽出による放射線照射食品からの 2・ドデシルシクロブタノン (2-DCB)と2-テトラデシルシクロブタノン (2・TCB)の抽出法を開発し, EUの標準分析法 (EN1785)であるソックスレー抽出との抽出効率を比較した.放射線照射した試料はヘキサンでソックスレ}もしくは直接抽出した.抽出脂質は GPCおよびシリカゲルミニカラムにより精製し, 2-DCBと2-TCBをGC-MSIMSで測定した.直接抽出法はソックスレー抽出と同等の抽出効率が得られた.牛肉,豚肉,鶏肉,チーズおよびサーモンの脂質抽出物に50 ng/gの濃度となるように 2・DCBおよび2-TCBを添加したときの本法の真度は,それぞれ 76.6~9L6%および8L3~109.0% であった. 2-DCBおよび2-TCBの検出限界はそれぞれ 15ng/gおよび20ng/gであった.

*埼玉県衛生研究所

赤色 102号中に微量存在するアゾ化合物の構造解析(報文)

合田麻美*堀川学岩下孝津田元充塚寄大輔橘津義菅根克己原田雅己

食衛誌 54(3),188~197 (2013) 赤色 102号 (R102)から,これまでに報告されていな

い3種類の微量不純物色素 (A1,A2およびA3)を検出しその化学構造を解析した.A1はLC-MSおよびNMRスベクトルから,圏内の指定外着色料であるアゾルビン(AZO)であった A2は指定外着色料であり R102の不純物として知られるファストレッド E(FRE)の構造異性体であった.A3はR102の骨格を有する過剰反応物であると推測されたこれら 3種の赤色不純物色素はいずれもR102の製造工程における副生成物と推定された.また,製造工程で閉じジアゾニウム塩を使用する赤色 2号 (R2)においても AZOが含有されることを確認したが,いずれの不純物とも色素粉末中に数十~l,OOOppm レベルの検出であった.

*サントリービジネスエキスパート株式会社 品質保証本部安全性科学センター

固相抽出-LC-MSIMS法による食晶中の甘昧料 12種お

よび保存料 9種の一斉分析(報文)

鶴田小百合*坂本智徳赤木浩一

食衛誌 54(3), 204~212 (2013)

食品中の甘味料 12種および保存料9種の固相抽出-

LC-MS瓜日法による分析法を開発した固体試料は 80%

メタノール(高脂肪食品は 95%メタノール)と 50%メタ

ノールによる 2回抽出,液体試料は 80%メタノールによ

る抽出を行い,逆相一弱アニオン交換ミックスモードカラ

ムで精製を行った.対象物質 21種を 10食品に添加し試

験した結果, 70.9~119.0% の良好な添加回収率が得られ

た.今回開発した分析法は,甘味料 12種と保存料9種を

簡便かつ迅速に一斉分析でき,定量性および選択性も高い

ことから,甘味料と保存料の一斉試験法として有用と考え

られる.

*福岡市保健環境研究所

京都市に流通する食品中の放射性物質の実態調査 (1991~2011 年)一福島第一原子力発電所事故前後の比較一(報文,英文)

伴埜行則並河幹夫三輪真理子伴創一郎折戸太一瀬村俊亮川上雅弘

土井直也三宅司郎*石川和弘食衛誌 54(3),178~187 (2013)

チェルノブイリ原子力発電所事故以後,京都市内に流通する食品中の放射性ヨウ索(l31I)およぴ放射性セシウム(l37csおよび山Cs)のモニタリングを実施してきたが, 2011年3月の福島原子力発電所の事故は,調査の重要性を改めて認識させることとなった.福島原子力発電所事故前後において検出した核種と検出率,および濃度について検討した 検査にはゲルマニウム半導体検出器を用いたー福島原発事故以前は,輸入品,国産品をモニタリングの対象とした.核種としては 137CSのみが検出された.魚介類からの検出頻度は約 70%であり,濃度は最高でも1.7Bqlkgであった 乾燥キノコを除くキノコ類からの検出頻度は,83%と高く,濃度の最高値は 7.5Bqlkgであった.野菜類は, 207検体のうち 2件のみ(根菜を除く)で検出したが濃度も明らかに低かった 福島原発事故以降は,東北・関東地方産の流通食品を検査した 3月23日に中央卸売市場から採取したミズ莱から 3,400Bqlkgの 1311.280 Bq/kgの山Cs,および280Bqlkg の 137CSを検出したのをはじめ, 3月と 4月に検査したすべての葉菜類でこれらの放射性物質を検出した しかし 11月以降はすべてが不検出となった.魚介類から検出された 137CSは,平均で 7.9Bqlkg だった 肉類では, トレーサピリティーによって汚染稲わらを与えられたことが判明したウシの肉からのみ瞥定規制値を超える 137CSが検出されたまた,甲状腺に対するリスクが懸念される山Iは, 5月以降すべての試料で不検出となった.基準値を超える食品が京都市内を流通する恐れは,すでにほとんどないと考えられた.*京都高度技術研究所

馬肉中に含まれる住肉胞子虫の危害性消失条件の検討による生食用馬肉を共通食とする食中毒事例の発生防止対策に関する研究(報文)

原田誠也古川真斗徳岡英亮松本一俊八尋俊輔宮坂次郎斉藤守弘鎌田洋一

渡辺麻衣子入倉大祐松本博小西良子*食衛誌 54(3),198~203 (2013)

熊本県では,馬刺しを共通食とする原因不明の一過性恒吐下痢症事例が最近 3年間で毎年 27件以上発生していた同事例の原因は Sarcocystisfayeri住肉胞子虫で,本研究では一定時間の冷凍処理で住肉胞子虫のシストがペプシンにより消化されその毒性を失うことを見いだした.同胞子虫シストを含んだ、馬肉を-20

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Cで48時間以上冷凍したところ,シスト由来の毒性タンパク質の消失も確認された本研究で確立した冷凍条件を用いての冷凍処理の普及により,平成 23年 10月以降,馬刺しが原因と考えられる食中毒の発生報告はなく,この冷凍処理基準が,馬刺しによる食中毒防止対策として有効であることが示唆され?こ.*国立医薬品食品衛生研究所

とうもろとし含有飼料および飼料原料における卜リコテセン7種類の汚染実態調査(報文,英文)

小木曾基樹*伊藤志保美木村彩子斎藤真希佐々木彩子木船信行渡井正俊食衛誌 54(3), 213~218 (2013)

配合飼料の主要原料であるとうもろこしはデオキシニバレノール(DON) による汚染が報告されており,その他のトリコテセン類の複合汚染も危倶されるー一方, とうもろこしの安価な代替品として利用されるとうもろこし蒸留かす (DDGS) などのとうもろこし加工副産物は,近年輸入量が大幅に増加しているが,これらのトリコテセン類の汚染実態は十分に明らかにされていない そこで本研究では, DDGS,コーングルテンミール,コーングルテンフィードおよびとうもろこし加工副産物を配合した飼料を収集し, DONおよび6稜のトリコテセン類 (3回アセチルデオキシニパレノール (3AcDON),15アセチルデオキシニパレノール(15AcDON), T.2トキシン, HT.2トキシン,ニバレノールおよびフザレノンーxlについて測定を行った.その結果,これらのサンプルにおける主要汚染物質は DON,3AcDONおよび 15AcDONであったー DDGSおよびコーングルテンフィードではほとんどのサンプルから DON,3AcDONおよび 15AcDONが検出されたまた,配合飼料では 30サンプルすべてでDONが検出され, 15AcDONも1つを除いてすべて検出された しかしながら, 3AcDONは1つのサンプルから検出されたのみであった 一方,コーングルテンミールは他のサンプルと比較して汚染が低レベルで, 36サンプル中 24サンプルで DONが, 20サンプルで 15AcDONが検出され,3AcDONは検出されなかった.

*日本食品分析センター