第2節 乳幼児の発育と発達 - achmc.pref.aichi.jp ·...

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1. 発育とその評価 第2節 乳幼児の発育と発達 (1) 身体計測の手技 <乳  児> 眼窩点(A)と耳珠点(B)とを結んだ直線が台板(水平面)に垂直になるように 頭を固定する。図では頭部を保持するための手を省略している。 前方は左右の眉の直上、後方は後頭部の一番突出しているところを通る周径を計測 する。前方はひたいの最突出部を通らないことに注意する。 測定条件・部位 感度10g以下の体重計を使用し、全裸(おむ つを使用する場合はその重量を後で差し引 く)で仰向けか、坐位。10g単位まで読む。 ミリ目盛仰臥式身長計を用い、頭頂と足底を 板に密着させ(耳眼面が台板と垂直、足底面も 垂直)股・膝関節を伸展させ、1㎜単位まで読む。 巻尺(ガラス繊維入りの合成樹脂製、JIS規格) を用い、仰臥位で、前方は眉間点 (左右の眉の 中間点)、後方は後頭点(後頭部の一番突出して いる点)を通る周径を1㎜単位まで読む。 手技・注意事項 体重計0位確認 針静止時判読 哺乳、排便を考慮 補助者に頭部を固定させ、測定者は乳児の右 手に立ち、乳児が力を抜いた時、左手で下肢 を伸展させ、右手で移動板をすべらせる。 測定者は、巻尺の0点を確認して持ち、他手 で後頭点を確認してあて、左右高に注意して 巻尺を眉間点を通らせて、その周径を測定す る。 (g) (㎝) (㎝) 31

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1. 発育とその評価

第2節 乳幼児の発育と発達

(1) 身体計測の手技

<乳  児>

眼窩点(A)と耳珠点(B)とを結んだ直線が台板(水平面)に垂直になるように頭を固定する。図では頭部を保持するための手を省略している。

前方は左右の眉の直上、後方は後頭部の一番突出しているところを通る周径を計測する。前方はひたいの最突出部を通らないことに注意する。

体重

測定条件・部位

感度10g以下の体重計を使用し、全裸(おむつを使用する場合はその重量を後で差し引く)で仰向けか、坐位。10g単位まで読む。

ミリ目盛仰臥式身長計を用い、頭頂と足底を板に密着させ(耳眼面が台板と垂直、足底面も垂直)股・膝関節を伸展させ、1㎜単位まで読む。

巻尺(ガラス繊維入りの合成樹脂製、JIS規格)を用い、仰臥位で、前方は眉間点 (左右の眉の中間点)、後方は後頭点(後頭部の一番突出している点)を通る周径を1㎜単位まで読む。  

手技・注意事項

体重計0位確認針静止時判読哺乳、排便を考慮

補助者に頭部を固定させ、測定者は乳児の右手に立ち、乳児が力を抜いた時、左手で下肢を伸展させ、右手で移動板をすべらせる。

測定者は、巻尺の0点を確認して持ち、他手で後頭点を確認してあて、左右高に注意して巻尺を眉間点を通らせて、その周径を測定する。

(g)

(㎝)

(㎝)

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巻尺が左右の乳頭点(A)を通り、体軸に垂直な平面内にあるようにする。

測定条件・部位

巻尺 (ガラス繊維入りの合成樹脂製、JIS規格)を用い、全裸で仰臥位にし、両肩甲骨下角の直下で、前方は乳頭点を通る周径を1㎜単位まで読む。

手技・注意事項

強くしめずに呼気と吸気の中間で測定する。泣いている時は避ける。

(㎝)

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<幼  児>

体重

測定条件・部位

パンツ1枚で立位で100g単位まで読む。排便・排尿がすんだ状態がよい。

原則、足先を30゜位開かせ、踵、臀部、背部を直線状に尺柱に接しさせ、顎をひかせ眼は水平正面を向かせ(耳眼面が水平)、1㎜単位まで読む。

巻尺 (ガラス繊維入りの合成樹脂製、JIS規格) を用い、坐位または立位で、前方は眉間点 (左右の眉の中間点)、後方は後頭点 (後頭部の一番突出している点)を通る周径を1㎜単位まで読む。

巻尺 (ガラス繊維入りの合成樹脂製、JIS規格) を用い、上半身裸で立位をとらせ、両肩甲骨下角の直下で、前方は乳頭点を通る周径を1㎜単位まで読む。

手技・注意事項

測定不能の場合は抱いて測定し、後で抱いた人の体重を引く。

補助者が顔の位置を同じ位の高さにして話しかけ、両手を下げた形で持ってやる。測定者は児の左側に立ち、可動水平桿を右手で持ち、軽く頭頂部まで下げる。2歳未満は仰臥位、2歳以上は立位で計測する。

測定者は巻尺の0点を確認して持ち、他手で後頭点を確認してあて、左右高に注意して巻尺を眉間点を通らせて、その周径を測定する。

両腕を軽く開かせ、測定者は巻尺の0点を確認して左記の周径を測定するが、巻尺は強くしめず、皮膚面からずり落ちない程度とし、呼気と吸気の中間で測定する。

眼窩点(A) と耳珠点(B) とを結んだ直線が水平になるように頭を固定する。

(kg)

(cm)

(cm)

(cm)

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(2) 発育の評価 測定した体重、身長、頭囲の測定値をパーセンタイル発育曲線上にプロットして一定期間の増加量で判断する。測定値の評価に際しては、在胎週数、生下時体重、親・兄弟の身体状況などを参考にして判断する。早期産児の場合に修正月齢を用いることは評価に有用である。 一応の基準として10%タイル以下、90%タイル以上は指導または観察対象として検討する。3%タイル以下、97%タイル以上は観察または精検対象として考慮する。 ただし、パーセンタイル発育曲線に沿った変化であるかどうかがより重要である。経過観察中に、パーセンタイル値の所属が2階級以上、上下した場合は注意する。 報告すべき評価基準は以下に掲載(巻末参照) 4.2.1 体重の評価、4.2.2 身長の評価、4.2.3 頭囲の評価、4.2.5 低身長、4.2.6 身体発育不良パーセント発育曲線は以下に掲載 パーセンタイル発育曲線(体重、身長、頭囲、胸囲)平成12年乳幼児身体発育調査

 生後1か月児健診や3~4か月健診では、1日平均増加量を計算し、個人的条件(在胎週数、生下時体重など) も加味して判断することもできる。

(参考)  1日平均体重増加量  1~3か月 30~25g/日  3~6か月 25~20g/日  6~9か月 20~10g/日  9~12か月 10~7g/日出典 系統看護学講座 小児看護学[1]

(注) 1か月児健診では20g/日未満 (2~3週前の測定日から計算)、3~4か月児健診では15g/日以下 (1~2か月前の測定日から計算) の増加の場合は注意を要する。

【例】体重減少:1階級~2階級 【例】体重減少:2階級を超えた減少

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(3) 幼児の肥満とやせの判定肥満とやせの判定には、肥満度(%)を用いる。肥満度は、体重と身長から幼児の身長体重曲線または以下の計算式により判定する。

 肥満度(%)=(実測体重-標準体重)÷標準体重×100

  ・標準体重(男児) = 0.00206×実測身長(cm)2 -0.1166×実測身長(cm) + 6.5273  ・標準体重(女児) = 0.00249×実測身長(cm)2 -0.1858×実測身長(cm)+ 9.0360

報告すべき評価基準は以下に掲載(巻末参照) 4.2.4 肥満度幼児の身長体重曲線は以下に掲載(巻末参照) 幼児の標準身長体重曲線 平成12年乳幼児身体発育調査

区   分

1:    肥満度≧30%2: 30%>肥満度≧20%3: 20%>肥満度≧15%4: 15%>肥満度>-15%5: -15%≧肥満度>-20%6: -20%≧肥満度

呼   称

ふとりすぎややふとりすぎふとりぎみふつうやせやせすぎ

低出生体重児の分類

低出生体重児(2,500g 未満)

極低出生体重児(1,500g 未満)

超低出生体重児(1,000g 未満)

報告に用いる肥満とやせの区分と呼称

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2. 発達とその評価(1) 乳幼児健診での正常発達の評価ア) 身体計測による評価

 身長、体重、頭囲の測定も発達評価の基本となる。当該月齢の正常範囲に達していれば正常と考える。また、身長、体重のバランス(Kaup指数、Rohrer指数など)、身長と頭囲の相関も評価に役立つ。早産児、SFD(small for date)児では、頭囲の増加が発達と関連することがあるので、これに注意する。

イ) 運動発達 運動発達の評価は乳幼児健診においてたいへん重要である。それは、評価が容易であること、乳幼児期では運動発達と精神発達がほぼ比例することによる。まず運動発達を評価することで、発達全体のおおよその評価ができるが、両者が一致しない場合、言語発達と社会性の発達が相関しない場合なども起こりえることに留意すべきである。 運動発達は、粗大運動発達と微細運動発達に分けて観察する。また、発達の評価には必ず個人差のあること、遅れが認められても経過を見るうちにキャッチアップすることもまれでないことなどを念頭におく。

ウ) 精神発達 乳児期の精神発達は、周囲に対する関心、反応などでチェックされる。乳児は、1か月半頃で物を見る、2か月過ぎから物を目で追う、反応笑いがみられる。3か月ではガラガラなどを持たせるとほんのわずか手に持って遊び、4か月では偶然触れた物をつかみ、5か月では近くの物をつかむ。6か月では手を伸ばして欲しい物をつかみ、つかんだ物をもう一方に持ちかえることができる。 7か月頃の人見知り、9~10か月頃のものまね行動も精神発達の指標となる。

エ) 反射の発達 脳性まひや精神遅滞の運動発達の遅れ、ミオパチーの運動発達の遅れが疑われる場合には、反射の発達を確認する。

オ) 疾病の有無 乳幼児では、神経筋疾患以外の疾患でも発達が障害される。例えば、股関節脱臼でギブスをはめている子どもは歩くのが遅れるし、心臓病や消化器外科疾患などの先天疾患などで長期に入院している場合、身体の発育が不良な場合にも発達は影響を受ける。

カ) 養育環境 乳幼児が発達するのに適切な環境で養育されているかとの視点もたいせつである。これは単純に養育環境が適切かどうかと判断するのではなく、その乳幼児の持っている能力が十分発揮されるにはどうしたらよいかについて、家庭環境や親子のかかわりなどに対する支援を考えるということである。

(2) 1か月児のチェックポイント この時期の姿勢としては、上下肢を半屈曲し、両手を上にあげている姿勢、不完全な緊張性頚反射(Tonic Neck Reflex; TNR)の姿勢、両手を下におろしている姿勢を認める。正常では、決して手を固く握りしめていることはなく、手を半ば開いているか、軽く握っている。自発運動はまだ分節的で、全体的な運動である。頭囲が平均より2.5cm以上大きいか小さい時には、フォローアップが必要である。 顔を一方に曲げた時の反応は、丸太棒のようにくるりと体を回転する形と緊張性頚反射の姿勢をとるもの、まったく反応せずにそのままの姿勢でいるものがある。 引き起こし反射では、引き起こす時に頭は背屈し、上肢は伸展し、下肢はそのままである。 腋下を支えて垂直抱きすると、下肢は半屈曲か、半ば伸展する。決して完全に進展したり、逆に屈曲したままのことはない。 足裏を床につけて、陽性支持反応をみると約半数が陽性となる。陽性支持反応の姿勢で、体を前に傾けると歩行するかのように足を前に出す(歩行反射)。原始反射のひとつで、生後1か月を境に急速に消失するが、生後30日過ぎでは50~60%に認められる。 水平抱きでは、頭、体幹、四肢ともに軽度に屈曲する場合(Landau反射第1相)と、肩の高さまで頚部が伸展し、体幹、四肢ともに軽度に屈曲している姿勢(Landau反射第2相)とがみられる。 腹臥位では、顔を一方に向けたままで挙上しようとしないものから、正中位でベッドから45度近くまで挙上する

ものもある。上肢は屈曲位、下肢は半屈曲位か半ば伸展位である。

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2. 発達とその評価(1) 乳幼児健診での正常発達の評価ア) 身体計測による評価

 身長、体重、頭囲の測定も発達評価の基本となる。当該月齢の正常範囲に達していれば正常と考える。また、身長、体重のバランス(Kaup指数、Rohrer指数など)、身長と頭囲の相関も評価に役立つ。早産児、SFD(small for date)児では、頭囲の増加が発達と関連することがあるので、これに注意する。

イ) 運動発達 運動発達の評価は乳幼児健診においてたいへん重要である。それは、評価が容易であること、乳幼児期では運動発達と精神発達がほぼ比例することによる。まず運動発達を評価することで、発達全体のおおよその評価ができるが、両者が一致しない場合、言語発達と社会性の発達が相関しない場合なども起こりえることに留意すべきである。 運動発達は、粗大運動発達と微細運動発達に分けて観察する。また、発達の評価には必ず個人差のあること、遅れが認められても経過を見るうちにキャッチアップすることもまれでないことなどを念頭におく。

ウ) 精神発達 乳児期の精神発達は、周囲に対する関心、反応などでチェックされる。乳児は、1か月半頃で物を見る、2か月過ぎから物を目で追う、反応笑いがみられる。3か月ではガラガラなどを持たせるとほんのわずか手に持って遊び、4か月では偶然触れた物をつかみ、5か月では近くの物をつかむ。6か月では手を伸ばして欲しい物をつかみ、つかんだ物をもう一方に持ちかえることができる。 7か月頃の人見知り、9~10か月頃のものまね行動も精神発達の指標となる。

エ) 反射の発達 脳性まひや精神遅滞の運動発達の遅れ、ミオパチーの運動発達の遅れが疑われる場合には、反射の発達を確認する。

オ) 疾病の有無 乳幼児では、神経筋疾患以外の疾患でも発達が障害される。例えば、股関節脱臼でギブスをはめている子どもは歩くのが遅れるし、心臓病や消化器外科疾患などの先天疾患などで長期に入院している場合、身体の発育が不良な場合にも発達は影響を受ける。

カ) 養育環境 乳幼児が発達するのに適切な環境で養育されているかとの視点もたいせつである。これは単純に養育環境が適切かどうかと判断するのではなく、その乳幼児の持っている能力が十分発揮されるにはどうしたらよいかについて、家庭環境や親子のかかわりなどに対する支援を考えるということである。

(2) 1か月児のチェックポイント この時期の姿勢としては、上下肢を半屈曲し、両手を上にあげている姿勢、不完全な緊張性頚反射(Tonic Neck Reflex; TNR)の姿勢、両手を下におろしている姿勢を認める。正常では、決して手を固く握りしめていることはなく、手を半ば開いているか、軽く握っている。自発運動はまだ分節的で、全体的な運動である。頭囲が平均より2.5cm以上大きいか小さい時には、フォローアップが必要である。 顔を一方に曲げた時の反応は、丸太棒のようにくるりと体を回転する形と緊張性頚反射の姿勢をとるもの、まったく反応せずにそのままの姿勢でいるものがある。 引き起こし反射では、引き起こす時に頭は背屈し、上肢は伸展し、下肢はそのままである。 腋下を支えて垂直抱きすると、下肢は半屈曲か、半ば伸展する。決して完全に進展したり、逆に屈曲したままのことはない。 足裏を床につけて、陽性支持反応をみると約半数が陽性となる。陽性支持反応の姿勢で、体を前に傾けると歩行するかのように足を前に出す(歩行反射)。原始反射のひとつで、生後1か月を境に急速に消失するが、生後30日過ぎでは50~60%に認められる。 水平抱きでは、頭、体幹、四肢ともに軽度に屈曲する場合(Landau反射第1相)と、肩の高さまで頚部が伸展し、体幹、四肢ともに軽度に屈曲している姿勢(Landau反射第2相)とがみられる。 腹臥位では、顔を一方に向けたままで挙上しようとしないものから、正中位でベッドから45度近くまで挙上する

チェックポイント手技

仰臥位の姿勢

仰臥位での観察(視聴覚を同時に観察)

自発運動

仰臥位で観察

引き起こし

児を仰臥位の状態から児の手掌の尺側から検者の拇指を入れ、把握反射をおこしながら引き起こす。体幹が45°及び90°のところで判定する。

垂直保持

児の体幹側部を検者の手掌ではさんで、垂直に引きあげる。四肢の状態をみる。

正  常  所  見

正常な姿勢・肢位の例

・四肢半屈曲・上肢半伸展、下肢半屈曲・ゆるいTNR肢位・手はゆるく握っている

・45°で手は握り、上肢は伸展、頭部は  背屈したまま後方に垂れ、下肢は半屈曲 位のまま、軽く外転している。・90°で頭部はついてきて垂直位ないし  はやや前屈する。

・腋窩で体幹が支えられ、両下肢はゆるい 屈曲位をとる。

異  常  所  見

異常な姿勢・肢位の例

・後弓反張・蛙肢位・つよいTNR肢位・手を強く握ったまま拇指を握りこむ

・低下、欠如・左右差、振せん

・45°で上肢は力なく完全に伸展、頭部は 垂れ下がり体幹も屈曲する。 また逆に引き起こしに抵抗して体は棒状 のまま立ってしまったり後弓反張位をとる。・90°で頭部強く前屈。

・抱きにくく、肩がすりぬけそうになった り、下肢がぶらぶらで振っても抵抗がない。・両下肢を硬く伸展交叉、内旋、尖足位をとる。 上肢伸展、回内、手を強く握る。

ものもある。上肢は屈曲位、下肢は半屈曲位か半ば伸展位である。

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(3) 3~4か月児のチェックポイント 3~4か月児の健診は、多くの市町村の公的な乳幼児健診に取り入れられている健診である。発達については、3か月児より4か月児の方が判定しやすいでため4か月児で行われることも多い。満4か月は発達のチェックを行いやすいkey ageであり、頚の坐りの確認、モロー反射や緊張性頚反射などの原始反射の消失傾向、追視テストなどで評価できる。赤ちゃんは可愛い、子どもを産んで良かったなどと感じる時期でもある。 一般に公的な健診は暦月齢で実施されるが、早期産児では修正月齢で評価することを忘れてはいけない。

1) 追視テスト 赤鉛筆、ペンライト、赤色電球などの検体を使用して追視をテストする。 仰臥位の乳児の眼前30~40cmに検体をもっていき固視したのを確認した後に、左右にゆっくりと移動させる。左右の目が同じ位置にあるか、眼球の異常運動がないかもチェックする。正常では水平方向に150~180度くらいは追視する。 3か月児では上下方向には、ほんのわずかに追視する。4か月児では上下にも追視する。

2) 仰臥位の姿勢   1か月児などに比べて対称的な姿勢を取るようになる。3か月児では両下肢は左右対称に屈曲、なかば外排

しているが、顔はまだどちらか一方を向き、左右の上肢は異なった肢位をとっている。両手はほとんど開いている。周囲に対する関心が盛んで、しきりにあちこちを見まわす。 4か月児では、さらに対称的となる。一般に顔が正面を向き、両下肢を屈曲してなかば挙上し、両手を顔の前に持ってきて遊んでいることが多い。ガラガラを握らせると振ったり、しばらく眺めたりして遊んでいる。時に顔を一方に向けたり、緊張性頚反射の姿勢となったりする。

3) 頚の坐り   頚の坐りの確認は引き起こし反射で行う。仰臥位の乳児の両手を持って引き起こすと、3か月児は約45度引き起こされたところで頚が体幹と平行になり、引き起こしたときにしばらくの間、頚が坐っている。乳児の視線が、別のところを見ていたり、泣いていたりすると引き起こしたときに反りやすい、また正常でも45度になっても頚が背屈していることがある。そのときは、引き起こしてから少し元に戻すと正常では頚が前屈してくる。 頚が坐った状態とは、一般には母親が乳児の後頭部に手をやらずに縦抱きにできる状態とされている。しかし、少し抱いているとカックンと前屈してしまう頚が坐りたての状態から、しばらくの間、坐っているが前後にゆらすと前屈してしまうもの、さらに横抱きにしてゆすっても大丈夫なものまで種々な発達段階がある。

4) 頚を一方に回転させる 仰臥位の乳児の頚を一方に他動的に回すと身体全体が棒のように回転することが多い。これはneck righting reflex as a whole(身体に働く頚の立ち直り反射)あるいはhead righting reflex as a whole(身体に働く頭部立ち直り反射)などの立ち直り反射である。発達の早い子どもでは頭部を一方に回転させると肩、胴、腰と順に回転していくsegmental rotationの形をとることもある。この月齢ではどちらも正常である。

5) 垂直抱き   4か月児の垂直抱きでは、下肢は屈曲位を取ることが多いものの、そのまま足裏を床につけて体重を支えさせようとしても、多くは下肢を屈曲したままで体重は支えようとしない。また、この姿勢で両手は開いている。2~3か月児のように垂直抱きで手を固く握りしめて上肢が回内・伸展傾向をとることはない。

6) 水平抱き(腹位)   4か月児を腹位で水平抱きにすると、顔をあげ、体幹が伸展し、下肢は軽く伸展傾向をとる。顔をあげ前方をみつめる。上肢は手を軽く握り自由な姿勢の場合、手を硬く握り上肢を回内、伸展する場合も認められる。

水平抱き(腹位)(Landau)

検者の手で児の腹部を支え正確に水平に持ちあげる。

腹臥位の姿勢

腹臥位で観察

視 覚

固視、追視、眼振の有無、反射(瞳孔閉瞼)

聴 覚

突然の比較的大きい音をたてる(太鼓など)。

・頭部は軽く前屈ないし体幹と平行、体幹 は軽度屈曲し四肢はゆるい屈曲位をとる。

・顔を一方に向けるか短時間45°位まで  持ちあげる。上肢半屈曲位、下肢半屈曲 位ないし半伸展位をとる。

・検者(母)の目をみつめる(短時間)。・左右に多少追視が可能。

・ビクッとする。眼を開いたり、逆に眼は 閉じて泣き出す。

・逆U字型となり四肢がだらりと垂れ下が る。・頭を挙げ、体幹、下肢も伸展、そりかえ る。

・下肢が屈曲して腹部の下に入り、臀部が 高くあがる。・頭を挙げすぎそりかえる。

眼球の位置異常眼振、固視しない。

反応が常に出ない。

7) 水平抱き(仰臥位)  3か月児を仰臥位で水平抱きにすると頭は背屈してしまうが、4か月児になると頚を前屈して頭を支えようとする。しかしまだ完全には支えられない。弓状に反ってしまうものは背筋のトーヌスの亢進で異常といえる。

8) 腹臥位の姿勢   4か月児では、前腕で体重を支え、顔が床から45~90度上げられるとされているが、実際には顔を真ん中にして瞬間的に挙上する1か月の発達レベルのものから、45度以下しか上げられない3か月の発達レベル、そしてごくまれに前腕で体重を支え顔が90度まで上がる5か月の発達レベルまでと、4か月児の腹臥位の発達の幅は、他の月齢に比して広範囲である。したがって、腹臥位の姿勢のみで発達を評価せず筋トーヌスの低下や亢進など他の異常所見を加味して判断する。

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(3) 3~4か月児のチェックポイント 3~4か月児の健診は、多くの市町村の公的な乳幼児健診に取り入れられている健診である。発達については、3か月児より4か月児の方が判定しやすいでため4か月児で行われることも多い。満4か月は発達のチェックを行いやすいkey ageであり、頚の坐りの確認、モロー反射や緊張性頚反射などの原始反射の消失傾向、追視テストなどで評価できる。赤ちゃんは可愛い、子どもを産んで良かったなどと感じる時期でもある。 一般に公的な健診は暦月齢で実施されるが、早期産児では修正月齢で評価することを忘れてはいけない。

1) 追視テスト 赤鉛筆、ペンライト、赤色電球などの検体を使用して追視をテストする。 仰臥位の乳児の眼前30~40cmに検体をもっていき固視したのを確認した後に、左右にゆっくりと移動させる。左右の目が同じ位置にあるか、眼球の異常運動がないかもチェックする。正常では水平方向に150~180度くらいは追視する。 3か月児では上下方向には、ほんのわずかに追視する。4か月児では上下にも追視する。

2) 仰臥位の姿勢   1か月児などに比べて対称的な姿勢を取るようになる。3か月児では両下肢は左右対称に屈曲、なかば外排

しているが、顔はまだどちらか一方を向き、左右の上肢は異なった肢位をとっている。両手はほとんど開いている。周囲に対する関心が盛んで、しきりにあちこちを見まわす。 4か月児では、さらに対称的となる。一般に顔が正面を向き、両下肢を屈曲してなかば挙上し、両手を顔の前に持ってきて遊んでいることが多い。ガラガラを握らせると振ったり、しばらく眺めたりして遊んでいる。時に顔を一方に向けたり、緊張性頚反射の姿勢となったりする。

3) 頚の坐り   頚の坐りの確認は引き起こし反射で行う。仰臥位の乳児の両手を持って引き起こすと、3か月児は約45度引き起こされたところで頚が体幹と平行になり、引き起こしたときにしばらくの間、頚が坐っている。乳児の視線が、別のところを見ていたり、泣いていたりすると引き起こしたときに反りやすい、また正常でも45度になっても頚が背屈していることがある。そのときは、引き起こしてから少し元に戻すと正常では頚が前屈してくる。 頚が坐った状態とは、一般には母親が乳児の後頭部に手をやらずに縦抱きにできる状態とされている。しかし、少し抱いているとカックンと前屈してしまう頚が坐りたての状態から、しばらくの間、坐っているが前後にゆらすと前屈してしまうもの、さらに横抱きにしてゆすっても大丈夫なものまで種々な発達段階がある。

4) 頚を一方に回転させる 仰臥位の乳児の頚を一方に他動的に回すと身体全体が棒のように回転することが多い。これはneck righting reflex as a whole(身体に働く頚の立ち直り反射)あるいはhead righting reflex as a whole(身体に働く頭部立ち直り反射)などの立ち直り反射である。発達の早い子どもでは頭部を一方に回転させると肩、胴、腰と順に回転していくsegmental rotationの形をとることもある。この月齢ではどちらも正常である。

5) 垂直抱き   4か月児の垂直抱きでは、下肢は屈曲位を取ることが多いものの、そのまま足裏を床につけて体重を支えさせようとしても、多くは下肢を屈曲したままで体重は支えようとしない。また、この姿勢で両手は開いている。2~3か月児のように垂直抱きで手を固く握りしめて上肢が回内・伸展傾向をとることはない。

6) 水平抱き(腹位)   4か月児を腹位で水平抱きにすると、顔をあげ、体幹が伸展し、下肢は軽く伸展傾向をとる。顔をあげ前方をみつめる。上肢は手を軽く握り自由な姿勢の場合、手を硬く握り上肢を回内、伸展する場合も認められる。

親がふだんどのような抱き方をしているかで、頚の坐りは違ってくる。 横抱き:頚を前腕で支え、反って抱く横抱きをしている場合には、引き起こし反射の際に頚が反り     やすくなるため、頚が坐っていないと判定されることがある。 背中の棒抱き:膝をあまり曲げないで、乳児を棒抱きにすると、反るくせがつき、やはり引き起こ     しで頚が坐らないと判定されることがある。     健診の際も、親がどのような抱き方で、診察室に入ってくるか注目すると良い。

親の抱き方と頚の坐り

7) 水平抱き(仰臥位)  3か月児を仰臥位で水平抱きにすると頭は背屈してしまうが、4か月児になると頚を前屈して頭を支えようとする。しかしまだ完全には支えられない。弓状に反ってしまうものは背筋のトーヌスの亢進で異常といえる。

8) 腹臥位の姿勢   4か月児では、前腕で体重を支え、顔が床から45~90度上げられるとされているが、実際には顔を真ん中にして瞬間的に挙上する1か月の発達レベルのものから、45度以下しか上げられない3か月の発達レベル、そしてごくまれに前腕で体重を支え顔が90度まで上がる5か月の発達レベルまでと、4か月児の腹臥位の発達の幅は、他の月齢に比して広範囲である。したがって、腹臥位の姿勢のみで発達を評価せず筋トーヌスの低下や亢進など他の異常所見を加味して判断する。

背中の棒抱き

横抱きの抱き方

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(3) 3~4か月児のチェックポイント 3~4か月児の健診は、多くの市町村の公的な乳幼児健診に取り入れられている健診である。発達については、3か月児より4か月児の方が判定しやすいでため4か月児で行われることも多い。満4か月は発達のチェックを行いやすいkey ageであり、頚の坐りの確認、モロー反射や緊張性頚反射などの原始反射の消失傾向、追視テストなどで評価できる。赤ちゃんは可愛い、子どもを産んで良かったなどと感じる時期でもある。 一般に公的な健診は暦月齢で実施されるが、早期産児では修正月齢で評価することを忘れてはいけない。

1) 追視テスト 赤鉛筆、ペンライト、赤色電球などの検体を使用して追視をテストする。 仰臥位の乳児の眼前30~40cmに検体をもっていき固視したのを確認した後に、左右にゆっくりと移動させる。左右の目が同じ位置にあるか、眼球の異常運動がないかもチェックする。正常では水平方向に150~180度くらいは追視する。 3か月児では上下方向には、ほんのわずかに追視する。4か月児では上下にも追視する。

2) 仰臥位の姿勢   1か月児などに比べて対称的な姿勢を取るようになる。3か月児では両下肢は左右対称に屈曲、なかば外排

しているが、顔はまだどちらか一方を向き、左右の上肢は異なった肢位をとっている。両手はほとんど開いている。周囲に対する関心が盛んで、しきりにあちこちを見まわす。 4か月児では、さらに対称的となる。一般に顔が正面を向き、両下肢を屈曲してなかば挙上し、両手を顔の前に持ってきて遊んでいることが多い。ガラガラを握らせると振ったり、しばらく眺めたりして遊んでいる。時に顔を一方に向けたり、緊張性頚反射の姿勢となったりする。

3) 頚の坐り   頚の坐りの確認は引き起こし反射で行う。仰臥位の乳児の両手を持って引き起こすと、3か月児は約45度引き起こされたところで頚が体幹と平行になり、引き起こしたときにしばらくの間、頚が坐っている。乳児の視線が、別のところを見ていたり、泣いていたりすると引き起こしたときに反りやすい、また正常でも45度になっても頚が背屈していることがある。そのときは、引き起こしてから少し元に戻すと正常では頚が前屈してくる。 頚が坐った状態とは、一般には母親が乳児の後頭部に手をやらずに縦抱きにできる状態とされている。しかし、少し抱いているとカックンと前屈してしまう頚が坐りたての状態から、しばらくの間、坐っているが前後にゆらすと前屈してしまうもの、さらに横抱きにしてゆすっても大丈夫なものまで種々な発達段階がある。

4) 頚を一方に回転させる 仰臥位の乳児の頚を一方に他動的に回すと身体全体が棒のように回転することが多い。これはneck righting reflex as a whole(身体に働く頚の立ち直り反射)あるいはhead righting reflex as a whole(身体に働く頭部立ち直り反射)などの立ち直り反射である。発達の早い子どもでは頭部を一方に回転させると肩、胴、腰と順に回転していくsegmental rotationの形をとることもある。この月齢ではどちらも正常である。

5) 垂直抱き   4か月児の垂直抱きでは、下肢は屈曲位を取ることが多いものの、そのまま足裏を床につけて体重を支えさせようとしても、多くは下肢を屈曲したままで体重は支えようとしない。また、この姿勢で両手は開いている。2~3か月児のように垂直抱きで手を固く握りしめて上肢が回内・伸展傾向をとることはない。

6) 水平抱き(腹位)   4か月児を腹位で水平抱きにすると、顔をあげ、体幹が伸展し、下肢は軽く伸展傾向をとる。顔をあげ前方をみつめる。上肢は手を軽く握り自由な姿勢の場合、手を硬く握り上肢を回内、伸展する場合も認められる。

7) 水平抱き(仰臥位)  3か月児を仰臥位で水平抱きにすると頭は背屈してしまうが、4か月児になると頚を前屈して頭を支えようとする。しかしまだ完全には支えられない。弓状に反ってしまうものは背筋のトーヌスの亢進で異常といえる。

8) 腹臥位の姿勢   4か月児では、前腕で体重を支え、顔が床から45~90度上げられるとされているが、実際には顔を真ん中にして瞬間的に挙上する1か月の発達レベルのものから、45度以下しか上げられない3か月の発達レベル、そしてごくまれに前腕で体重を支え顔が90度まで上がる5か月の発達レベルまでと、4か月児の腹臥位の発達の幅は、他の月齢に比して広範囲である。したがって、腹臥位の姿勢のみで発達を評価せず筋トーヌスの低下や亢進など他の異常所見を加味して判断する。

チェックポイント手技

仰臥位の姿勢

仰臥位での観察(視・聴覚、精神発達を同時に観察)

引 き 起 こ し

児を仰臥位の状態から児の手掌の尺側から検者の拇指を入れ、把握反射をおこしながら引き起こす。体幹が45°及び90°のところで判定する。

垂 直 保 持↓

立位(陽性支持)

垂直に引きあげたのち診察台へ下肢をおろしたり、あげたり (ツンツン)する。

正  常  所  見

正常な姿勢・肢位の例

・顔は正中を向き、上肢は半伸展 ~伸展、下肢は半屈曲、手は軽く握って いる。・下肢開排可能、膝窩角90~110°

・45°で頭は体幹と同一線上協力するよ  うに頭を持ち上げ、上肢は肘をやや屈曲 させ、下肢は屈曲して腹部にひきよせる。・90°で坐位となっても首はくらくらせ  ず前屈もしない。

・上肢は伸展~半伸展のまま、手は開いて いる。下肢は軽く屈曲、腹部へひきよせ る。

異  常  所  見

異常な姿勢・肢位の例

・後弓反張、蛙肢位 つよいATN肢位、手を強く握る。・不随意に口を開ける。・下肢開排制限、膝窩角90°

・頭がついてこないで垂れてしまい、上肢 は力なく伸展したまま。・棒のように立ってしまう。 そってしまう。・90°で頭部が前屈してしまう。

・すり抜け徴候・手を握り、上肢伸展、回内下肢伸展、交 叉、尖足

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腹臥位の姿勢

腹臥位での観察

水平抱き(腹位)

検者の手で児の腹部を支え、正確に水平に持ちあげる。

視    覚

固視、追視

聴    覚

母に向かいあって抱かせ、後方から左右の耳近くで音を出す。(タイマーの音など)

精 神 発 達

反応の観察表情、動作の観察

・頭を45°~90°挙上し、前腕で上体を  支える。

・やや頭を挙げ、体幹はゆるい屈曲か伸  展、上肢は伸展、かるく手を開き、下肢 は軽く伸展。

固視の時間が長くなり、目と頭を共同させ180°の追視をする。 

音の方へ頭をめぐらせて目でみる。母の声に反応する。

あやすと笑う。(社会的笑い)くすぐると声を出して笑う。喃語。両手を顔の前へ持っていき、動かしたりからみ合わせたり眺めたりして遊ぶ。手を開いて触れたものを握る。口へ持っていく前に持った物をみる。

・頭を挙上せず、手を握り上肢は屈曲、後 方へ或いは伸展、回内、後方へ。・下肢は屈曲、腹部へ入り臀部挙上。

・逆U字型・そりかえり

固視・追視ができないか、できても不完全。

反応しない。

無欲、無関心、無表情、目をあわせない、あっても直ぐそらせる。

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