第2章 知覚の基礎 1.知覚理論:pweb.sophia.ac.jp/c-michim/2019cc02.pdf · 2...
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第2章 知覚の基礎環境とのファーストコンタクト
1.知覚理論:問題の設定
2.空間知覚:知覚の基本特性
3.知覚世界:観察者と環境の関係
4.ミッドレベル・ビジョン:構造化される世界
5.知覚と脳
1.知覚理論:問題の設定
(1)見るということ
・見るという体験
・網膜像と視知覚
(2)問題としての知覚
・順光学と逆光学
・計算理論と制約条件
(1)見るということ
• 見るという体験
「ものを見る」ことは写真とはまったく違う。
(1)見るということ
• 視知覚とは網膜像そのものではない。
(1)見るということ
• 錯視は視覚の「間違い」ではなく、正常に機能するからこそ生ずる現象。たとえば、2次元の図に奥行きを見てしまうこと、など。
錯視と奥行き知覚
「錯視」は単なるまちがいではなく、高度で 自動的な処理の反映!
出典 Zimbardo, P.G. and Gerrig, R.J. (1999) Psychology and Life, 15th ed. Longman, Inc., P172
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(1)見るということ
• 知覚は、感覚器官からの情報が脳で処理されることで生ずる。
• 知覚=感覚器を通じて外界から得られた情報が、物体、出来事、音、味のような、「経験」へと変換される過程
(1)見るということ
網膜を刺激する電磁波
無意識的で複雑な 変換過程の介在 意識のレベルで見える友人の顔
(2)問題解決としての知覚
• 計算理論と制約条件 網膜像から外界を構築する逆光学の過程は、
解が不定になる「不良設定問題」である。
制約条件を導入することで解を定める。脳はいくつかの自然制約条件(たとえば、「物体はあまり変形しない」など)を導入することで、逆光学問題を計算していると考えられる。
1.知覚理論:問題の設定
まとめ
• 知覚とは、外界の「素朴な実在」がそのまま頭の中に再現されることではない。
• それは複雑な「構築の過程」である。
• しかも、その構築の基礎となる情報は、不完全なものである。
• 不完全な情報からいかにしてこの驚異的な知覚世界が構築されるのか?が問題。
2.空間知覚:知覚の基本特性
(1)時空間的な相互作用
・同化と対比
・順応と残効
・残効の機構
・順応の意味すること
(2)機能と機構の相互的解明
・聴覚の周波数特性
・視覚の周波数特性
(1)時空間的な相互作用同化と対比
・同化(Assimilation)=近いもの同士がまとまる。
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(1)時空間的な相互作用同化と対比
・対比(Contrast)=近いもの同士の差が強調される。
「マッハの帯」
(1)時空間的な相互作用同化と対比
(1)時空間的な相互作用同化と対比
同化と対比は、世界にまとまりと構造を見出す基本的な機構である。
(1)時空間的な相互作用順応と残効
• 順応(Adaptation)=知覚系が環境変化に対応して変化すること。特に、同一刺激に長時間さらされることで感度が低下すること。
• 残効(Aftereffect):刺激消失後にもその刺激に知覚が影響を受けること。
「残像 Afterimage」
(1)時空間的な相互作用順応と残効
• 運動残効 • sensation • →sensory adaptation • →motion afterimage
(1)時空間的な相互作用順応と残効
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(1)時空間的な相互作用残効の機構
拮抗する特徴検出器を仮定することで、順応と残効が説明可能。(上方向運動検出器+下方向運動検出器)
・「静止」の知覚=2つの検出器の出力が等しい状態
(プラスとマイナスでゼロ)
・順応と残効:一方の検出器が疲労し、出力が低下する=拮抗が崩れ、中性刺激に対して反対の知覚が生ずる。(プラスが疲労=ゼロがマイナスになる)
空間周波数
コントラスト感度と空間周波数(Contrast Sensitivity Function, CSF)
コントラスト感度と空間周波数(Contrast Sensitivity Function, CSF)
周波数選択性の順応
「空間周波数チャンネル」の存在?
コントラスト感度と空間周波数(Contrast Sensitivity Function, CSF)
周波数選択性の順応
「空間周波数チャンネル」の存在?
2.空間知覚:知覚の基本特性まとめ
• 知覚システムは、同化と対比などの原理によって世界にまとまりと構造を見出す。
• 知覚の顕著な現象として、順応と残効がある。これらの現象を説明することは、知覚を理解する大きなポイントである。
• また、「周波数分析」の概念は知覚の基本的機構の理解にて重要。
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3.知覚世界観察者と環境の関係
知覚の目的とは、観察者と環境の関係を把握することである。「奥行き」と「運動」の問題を取り上げる。
(1) 奥行きのある世界
(2)動いているものと動かないもの
3.知覚世界観察者と環境の関係
(1) 奥行きのある世界
・大きさの恒常性
・奥行きの再構成
(2)動いているものと動かないもの
・動いている観察者
・運動の知覚
・運動からの奥行き知覚
・自己運動知覚
(1) 奥行きのある世界
・大きさの恒常性(Size Constancy)
網膜像の大きさが変化しても、知覚される大きさはあまり変化しないこと。
もっとも単純な「大きさ」の知覚にも「奥行き情報」が用いられている!
・奥行きの再構成
<奥行き手がかり>
眼球に起因:
輻輳(convergence:寄り目)と
調節(accommodation:水晶体の厚み)
環境に起因:大きさ変化、肌理勾配、遮蔽、
両眼視差、陰影、運動勾配、
運動視差
・奥行きの再構成
<奥行き手がかり>
肌理勾配
・奥行きの再構成
<奥行き手がかり>
陰影
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・奥行きの再構成
<奥行き手がかり>
陰影
出っ張って見える へこんで見える
へこみとでっぱり (クレーター錯視)
・奥行きの再構成
<奥行き手がかり>
両眼視差 retinal disparity • 奥行きにともなう、左右の眼球の網膜像のずれ
のこと。
• これを利用して、ランダムドット・ステレオグラムが作れる。
ランダムドット・ステレオグラム
• 下の図の2つの黒丸が重なって3つに見えるように、「寄り目」を作る。
ランダムドット・ステレオグラム
• 左右の「対応」は、典型的な「不良設定問題」である。
• ランダムなので、形態手がかりを用いていない!
• 形態は対応が完成してから発見される!
• 両眼視差だけで奥行きが知覚される!
• 両眼視差による立体視は、「独立モジュール」である。
(2)動いているものと動かないもの
• 運動の知覚
「仮現運動」Apparent Movement
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(2)動いているものと動かないもの
• 運動の知覚
「仮現運動」Apparent Movement
(2)動いているものと動かないもの
• 運動の知覚
ランダムドット・キネマトグラム
(2)動いているものと動かないもの
• 運動からの奥行き知覚
「運動からの構造復元」
「運動視差」motion parallax
(2)動いているものと動かないもの
運動はじゃまものではなく、形態や奥行き知覚の重要な手がかりである。
「運動による奥行き知覚」の例
(2)動いているものと動かないもの
運動の軌跡と影
(2)動いているものと動かないもの
運動はじゃまものではなく、形態や奥行き知覚の重要な手がかりである。
「バイオロジカル・モーション」の例
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4.ミッドレベル・ビジョン構造化される世界
(1)体制化
・統合と分離
・図と地
(2)表面と遮蔽
・輪郭と遮蔽の関係
・遮蔽、グルーピング、補完
(3)表面への統合
(1)知覚の体制化Perceptual Organization
• 単純な形態の知覚も不良設定問題である。
(1)知覚の体制化Perceptual Organization
• 統合と分離:ゲシュタルト心理学
近接の要因 類同の要因 よい連続の要因 閉合の要因
(1)知覚の体制化Perceptual Organization
• 図と地
(1)知覚の体制化Perceptual Organization
• 図と地
(1)知覚の体制化Perceptual Organization
• 図と地 以上のもの!
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(2)表面と遮蔽
• 主観的輪郭
美しい。トロクスラー効果