第29号july 2020...1 jica教育ナレッジマネジメントネットワーク(kmn)...

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1 JICA教育ナレッジマネジメントネットワーク(KMN) ニュースレター 第 29 号 July 2020 目次 ニュース (全体)人間開発部長よりコロナ禍の教育協力に向けたメッセージ 1 ニュース (全体)コロナ危機下の教育協力を考える 2 ニュース 高等教育 (全体)コロナ禍における大学の先駆的な取り組み 3 国際動向・国際会議 (全体)主要マルチドナーのコロナ危機への対応を紹介 4 プロジェクト紹介 基礎教育 (マダガスカル新型コロナウイルス禍の新学力改善モデル 5 プロジェクト紹介 基礎教育 (ミャンマー)学びを止めるな!ミャンマー国初等教育カリキュラム改訂プロジェクトの挑戦 6 プロジェクト紹介 高等教育 (マレーシア)新型コロナウイルスに立ち向かう−マレーシア日本国際工科院の挑戦 7 プロジェクト紹介 高等教育 (ケニア)ジョモ・ケニヤッタ農工大学工学部の対コロナ研究・開発 8 世界で輝く協力隊 (全体)オンラインセミナー「遠隔での協力の可能性を考える」を開催 9 KMN 活動報告 (全体)新型コロナウイルス影響下、私たちにできる教育支援とは? 10 専門家リレー寄稿 (全体)奇禍を機会に更なる飛躍を目指す−エジプトにおける特別活動普及の取り組み(中島専門家) 11 広報 (全体)JICA の教育×コロナ特設ページが開設! 12 新型コロナウイルスの猛威が続いています。WHO によれば、6 月末の世界の感染者数は 1000 万人を突破し、累計死者数も 50 万人を超える等、収束の気配は見えません。ご存知の通り、こうした状況を受け、JICA も現在多くの国で、活動の縮小や一時 休止を余儀なくされています。けれども私たちは、この状況に甘んじて立ち尽くしているわけにはいきません。 UNESCO によれば、世界中で休校等の影響により、最も多い時で 15 億人以上の子どもたちが学校に通えず、そのことが 子どもたちの学習だけでなく、栄養状態にも深刻な影響を与えています。高等教育機関においても、経済状態の悪化で多くの 学生が困窮しています。こうした状況だからこそ、私たち教育協力の関係者は、自らの使命にあらためて思いを馳せ、行動に移して いく必要があります。 現場に行けないことは大きな制約要因です。けれどもそのことは私たちが協力を止める理由にはなりません。実際に、日本から遠隔 での教科書開発支援や、教育番組制作への協力等、工夫をこらした優良事例も生まれています。一番重要なことは、この状況下 で何ができるのかを、関係者一人ひとりが真剣に考え、議論し、迅速に実現していくことです。そのことが教育協力のブレークスルー にもつながっていくのだと思います。 JICA の協力に携わっていただいている関係者の皆様や、その他国内の協力パートナーとの連携を一層強化し、未曽有の学びの 危機の打開に向け、引き続き JICA は取り組んでいきます。 皆さんのご協力をよろしくお願いします。 コロナ禍の教育協力に向けたメッセージ ~現場に行けない今、世界の学びを止めないために~ ニュース 人間開発部 部長 佐久間 潤

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Page 1: 第29号July 2020...1 JICA教育ナレッジマネジメントネットワーク(KMN) ニュースレター 第29号July 2020 目次 ニュース (全体)人間開発部長よりコロナ禍の教育協力に向けたメッセージ

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JICA教育ナレッジマネジメントネットワーク(KMN) ニュースレター

第 29 号 July 2020

目次

ニュース (全体)人間開発部長よりコロナ禍の教育協力に向けたメッセージ 1

ニュース (全体)コロナ危機下の教育協力を考える 2

ニュース 高等教育 (全体)コロナ禍における大学の先駆的な取り組み 3

国際動向・国際会議 (全体)主要マルチドナーのコロナ危機への対応を紹介 4

プロジェクト紹介 基礎教育 (マダガスカル)新型コロナウイルス禍の新学力改善モデル 5

プロジェクト紹介 基礎教育 (ミャンマー)学びを止めるな!ミャンマー国初等教育カリキュラム改訂プロジェクトの挑戦 6

プロジェクト紹介 高等教育 (マレーシア)新型コロナウイルスに立ち向かう−マレーシア日本国際工科院の挑戦 7

プロジェクト紹介 高等教育 (ケニア)ジョモ・ケニヤッタ農工大学工学部の対コロナ研究・開発 8

世界で輝く協力隊 (全体)オンラインセミナー「遠隔での協力の可能性を考える」を開催 9

KMN 活動報告 (全体)新型コロナウイルス影響下、私たちにできる教育支援とは? 10

専門家リレー寄稿 (全体)奇禍を機会に更なる飛躍を目指す−エジプトにおける特別活動普及の取り組み(中島専門家) 11

広報 (全体)JICA の教育×コロナ特設ページが開設! 12

新型コロナウイルスの猛威が続いています。WHO によれば、6 月末の世界の感染者数は 1000 万人を突破し、累計死者数も

50 万人を超える等、収束の気配は見えません。ご存知の通り、こうした状況を受け、JICA も現在多くの国で、活動の縮小や一時

休止を余儀なくされています。けれども私たちは、この状況に甘んじて立ち尽くしているわけにはいきません。

UNESCO によれば、世界中で休校等の影響により、最も多い時で 15 億人以上の子どもたちが学校に通えず、そのことが

子どもたちの学習だけでなく、栄養状態にも深刻な影響を与えています。高等教育機関においても、経済状態の悪化で多くの

学生が困窮しています。こうした状況だからこそ、私たち教育協力の関係者は、自らの使命にあらためて思いを馳せ、行動に移して

いく必要があります。

現場に行けないことは大きな制約要因です。けれどもそのことは私たちが協力を止める理由にはなりません。実際に、日本から遠隔

での教科書開発支援や、教育番組制作への協力等、工夫をこらした優良事例も生まれています。一番重要なことは、この状況下

で何ができるのかを、関係者一人ひとりが真剣に考え、議論し、迅速に実現していくことです。そのことが教育協力のブレークスルー

にもつながっていくのだと思います。

JICA の協力に携わっていただいている関係者の皆様や、その他国内の協力パートナーとの連携を一層強化し、未曽有の学びの

危機の打開に向け、引き続き JICA は取り組んでいきます。

皆さんのご協力をよろしくお願いします。

コロナ禍の教育協力に向けたメッセージ

~現場に行けない今、世界の学びを止めないために~ ニュース

人間開発部 部長 佐久間 潤

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長期休校により子どもたちの学びの機会の喪失、学力の低下と学力格差の拡大が懸念されて

おり、学びの継続への取組、とりわけ教育システムが脆弱な国の子どもたちへの支援が重要性を増して

います。

このような中、外務省が毎年開催している「国際教育協力連絡協議会」1 の枠組みを拡大する

形で、6 月 29 日に外務省と JICA 人間開発部がオンラインセミナー「コロナ危機下の教育協力を

考える」を開催しました。当日は、関係省庁、JICA、国際機関、有識者、企業、財団、NGO から

120 名を超える関係者が出席しました。

教育協力関係者が取り組みや問題意識を共有

登壇したそれぞれの機関・団体から、子どもたちの学びの継続、学びの質を向上させる

ための取り組み等が共有され、特に民間企業からは途上国で実施中のオンライン教育・

遠隔教育の具体事例が紹介されました。また、課題として、公衆衛生など感染抑止に

向けた支援と教育への支援をいかに連携させていくかや、オンライン教育・遠隔教育の普及

過程で直面する、学校の IT インフラ構築、教員の役割変化、子どものアクセス等に対する

懸念が示されました。今回のコロナ危機により、「従来型の学校モデル」の継続という前提

が大きく揺らぎ、遠隔教育や子どもの理解度に合わせた個別学習の進展等、多様化する

「新しい学び」への対応が急がれる中、どの関係者も、途上国の教育の継続と質の向上に

貢献するとの強い信念のもとに事業を進めている様子がみられました。

After コロナを見据えた教育協力

有識者からのコメントの中で、「今あるものを今までにないやり方で結びつけることも

イノベーションである」との言葉がありました。新型コロナウイルス感染症による休校は、学校や

教員の役割を改めて見直す機会となりましたが、遠隔・オンライン教育にも対面教育にもそれ

ぞれの強みや課題があります。どちらか一方ではなく、これらを最適な形で組み合わせること

(=ベストミックス)が求められており、そのためには、各アクターが強みを持ち寄り、協力し合い

ながら日本としての総合力を発揮していくことが必要です。After コロナ時代の教育協力の

担い手として、私たち一人ひとりが中長期的な視点で今後の教育や学びのあり方を模索し、

形作っていくことが、「Build back better(より良い復興)」、ひいては SDG4 の達成にも

繋がるものと信じています。

1 外務省、文部科学省、財務省、NGO、国際機関、有識者、民間企業、JICA が参加し、広く教育開発関連の情報・意見交換を行う場として 2008

年に設立された協議会

コロナ危機下の教育協力を考える

~国際教育協力連絡協議会オンラインセミナー開催~ ニュース

(株)パデコ 松月 さやか

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5 月 22 日(金)に全世界の高等教育技術協力プロジェクト 12 案件の専門家をオンラインで繋ぎ、JICA 本部及び事務所

担当者も同席の上、約 60 人で専門家会議を開催しました。新型コロナウイルスが世界的に感染流行している中、主に工学分野の

科学的知見や技術の活用を通じて、知が集積した大学が貢献できることを検討すべく、各案件のコロナ禍における先駆的な取り組

み事例を共有いただき意見交換を行いました。

支援対象大学の先駆的な取り組み

JICA が関わって実施されている取り組みの一部を以下に紹介させていただきます。他にも、これまでの協力を土台に大学が独力

で行っている取り組みや検討中のものまで数多く紹介されました。

マレーシア日本国際工科院 円借款事業で立ち上げられた精密機械ラボで、飛沫感染を防ぎながら呼吸器の挿管等の処置

ができるシールド装置を開発。既に病院での実証実験も行われ、現時点で既に 12 台を病院へ

寄贈。(関連記事:p.7)

アセアン工学系高等教育

ネットワークプロジェクト

アセアンと日本の大学の共同教育プログラム(材料工学分野)で、ウイルス防護に有効な素材

を利用したフェイスマスク、研究室用ガウンを開発。また、オンラインでの国際学会の開催、共同

研究支援を計画中。

日越大学(ベトナム) 消毒液を製造し、その成分や製造工程等を Facebook で公開。また、日越大学と本邦大学の

学生交流プログラムをオンラインで実施。将来的には論文提出等により修了証を発行することも

検討。

カントー大学(ベトナム) 動植物のウイルス病対策や病虫害感染対策についての共同研究を実施中。ウイルス分析能力

強化のため、日本の先生方による集中講義と実習を実施。

エジプト日本科学技術大学 講義は全てオンラインで実施するほか、コミュニティー向けに Web セミナーを提供。また、学内で

新型コロナウイルス対策に資する各種活動を公募し、その実施支援を検討中。

ケニア国立ジョモ・ケニヤッタ

農工大学

人工呼吸器、消毒剤、ウェブベースの感染トレンド予測システム、感染者の接触履歴をトレース

するアプリの開発を実施中。(関連記事:p.8)

今後に向けて

今次専門家会議は、コロナ禍の制約があったため、初めて世界各国と

オンラインで繋ぎ大規模な会議を開催しましたが、オンラインツールの活用に

より活動の幅が広がることを改めて実感しました。教育分野への支援は、

今回の危機下において平時に増して重要な分野となります。コロナ禍におい

ても、IT 等の技術を駆使し、機動的且つ緊密に、現場と本部が一体と

なって有効な協力を考えて実行に移していければと思います。

人間開発部 高等・技術教育チーム 井上 数馬

コロナ禍における大学の先駆的な取り組み

~高等教育技術協力プロジェクト専門家会議をオンラインで開催~ ニュース

日越大学が Facebook で公開している消毒液の作り方

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6 月末の時点で 180 を超える国々が、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ手段として、全国一律または部分的な休校措置を

続けています。休校の影響を受けている子どもや若者はおよそ 15 億人。これは学齢期人口の 85%にも相当します。休校期間が

3 か月を超えたものの、いまだ学校再開の目処が立たない国や地域も多く、学習活動の中断による中長期的な影響も懸念されて

います。このような状況において、他の援助機関はどのような取り組みを行っているのか、簡単に紹介したいと思います。

世界銀行:長期休校の影響を分析して政策提言

休校の中長期的な影響を分析し、政策提言を行っているのが世界銀行です。世銀は

「長期の休校は、平均学力の低下と学力格差の拡大をもたらす」と警鐘を鳴らしています。

休校が5 か月続いた場合の推計で、子どもたちが受ける学校教育の平均有効年数は7.9 年

から 7.3 年に減少、学力低下や退学率の上昇による損失は全体で 10 兆ドル。これは基礎

教育に対する各国政府の投資額の 16%に相当します。世銀は、休校による学力低下を補う

リソースを持たない脆弱層への配慮が重要と指摘しています。また、学力低下を防ぐための

政策として、学習活動への継続的参加(学校給食や現金給付、遠隔教育等)を保全しつ

つ、習熟度別の学習指導や学力評価方法の改革など「学びの質を高める」施策を提言してい

ます。

教育のためのグローバルパートナーシップ(GPE):各国政府のコロナ対応を資金面で支援

一方、GPE は各国の初動対応を資金面で支えるべく、早い動きを見せました。3 月下旬にはメンバー67 か国を対象とする

「コロナ対応基金(250 億円)」を立ち上げて各国におけるコロナ対応計画の作成を促すとともに、実施中の「教育セクター計画

実施グラント」(ESPIG)においてもコロナ対応に必要な予算組み換えを柔軟に認めることを明らかにしました。危機への即応体制

を敷くため事務局長に大きな権限が与えられ、コロナ対応基金や ESPIG 予算の組み換えを理事会なしで承認する臨時体制を

組んでいます。6 月にはコロナ対応基金が 500 億円に増額され、67 か国すべてに数億円から十数億円の資金が拠出される

見通しです。

このほか、UNICEF は各国事業計画のなかで遠隔教育の促進や学校給食支援(WFP

と協力)、学校における感染予防(衛生啓発)等を通じて「学びの継続」を支える活動を

展開しています。

学力低下と格差拡大による負の影響は、コロナが収束した後も子どもたちの人生に大きな

足かせとなることが懸念されます。一方でコロナは、教育システムを「より良く作り直す」好機と

見なすこともできます。今後、どのような知見が蓄積され、どのような支援が行われるのか、

引き続き注目したいと思います。

主要マルチドナーのコロナ危機への対応を紹介

~より良く作り直す:Build back better に向けた取り組み~ 国際動向・国際会議

人間開発部 基礎教育チーム 森本 俊輔

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マダガスカルの学習の危機とみんなの学校(TAFITA)

マダガスカルは、アフリカ南東部に浮かぶ、人口約 2,200 万人、日本の約 1.6 倍の面積を持つ島国です。この国には、

約 25,000 校の小学校があり、約 370 万人の生徒たちが元気に学んでいます。しかし、残念なことにほとんどの生徒が読み書き・

計算ができません。マダガスカルは、「学習の危機」の状態にあります。対策として、政府やドナーは、協力して大規模な教育開発

政策の改善に取り組んでいますが、生徒の低学力の問題は解決されていません。この厳しい状況を改善するため、マダガスカル政府

から日本政府に要請され、開始されたのが「みんなの学校:住民参加による教育開発プロジェクト(TAFITA)」です。

TAFITA の新学力改善モデル

TAFITA は、既存の小学校運営委員会内の情報共有と住民参加を促進することに

より、住民と教員がともに教育改善を行う協働の枠組みを構築しました。さらにその枠組

みをネットワーク化した組織として、小学校運営委員会連合を設立したことにより、1 県

1650 校 17 万人の生徒に対する一斉学力改善活動を可能にしました。この活動は、

教師と住民が協働で行う 3 か月間の補習活動です。

この補習活動では、インドの NGO が開発した TaRL(Teaching at the Right

Level)という効率的な読み書き・算数の改善手法を取り入れ、教員に伝授しました。

活動前後に実施したテストの結果比較で、生徒 17 万人の正答率が算数で 3 割、

読み書きで 2 割改善されました。ここに、「生徒一人当たりの単価が 0.15 ドルの、

教師と住民が協働で行う TaRL を用いた地域一斉補習活動」という TAFITA の

新学力改善モデルが誕生したのです。

新型コロナの対策と新学力改善モデル

TAFITA の新学力改善モデル普及活動は、新型コロナウイルスの影響で

学校が閉鎖したために中断してしまいましたが、モデルの一部が新型コロナ

対策に使われることになりました。マダガスカル教育省は、TaRL 手法を用い

た補習方法を国営放送の教育テレビ番組(KiLASY POUR TOUS)で

放送し、学校に行けない子どもたちの学習を支援しています。さらに、

TAFITA の新学力改善モデルは、学校閉鎖で学習の遅れた生徒の学力

キャッチアップに最適なモデルでもあります。今後、全力で、全国の生徒の

学力キャッチアップを支援していきます。

アスカ・ワールド・コンサルタント(株) 原 雅裕

新型コロナウイルス禍の新学力改善モデル

~マダガスカルの子どもたちを救うみんなの学校~

プロジェクト紹介

(基礎教育)

教育テレビ番組 (KiLASY POUR TOUS) での放送の様子

TaRL の手法を用いた補習活動で学んでいる様子

住民総会の様子

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ミャンマーの学校のいま

ミャンマーでは、例年 3 月から 5 月までが正月/暑季休暇で、6 月 1 日に新学年

が開始されますが、今年の小学校の開校は8月中旬以降となることが発表されました。

外出制限は少しずつ解除された一方、マスク着用の義務化等厳しい措置も続く中、

教育省や学校関係者は開校にむけ、児童数に応じた通学パターンを設定する等、

緊張感をもって感染予防策の準備を進めています。通常は 3 月から 5 月にかけて

実施する新カリキュラム導入の全国研修はオンラインと対面を組み合わせて6月に実施

され、初等教育カリキュラム改訂プロジェクト(以下、プロジェクト)も教材の編集や

トレーナー研修に協力しました。一方、授業開始前の学習機会の提供は見合わせら

れており、半年におよぶ空白期間による学習意欲の減退や家庭環境による教育格差

の拡大が懸念されます。

遠隔でのプロジェクト継続と「With コロナ」の教育への支援

プロジェクトでも、専門家の渡航が全面的に見合わせとなる中、4 月から 5 月の

2 か月間は、教育省カウンターパートとプロジェクトスタッフも在宅勤務を行いました。

この間、データ共有やビデオ会議の環境を設け、全関係者との定期的な進捗確認等

が取れるよう体制を整備しました。その結果、新 5 年生 10 科目の教科書や教師用

指導書の開発と、昨年 12 月から 4 年制化された教員養成校カリキュラムに資する

教材の開発が、滞ることなく行われています。また 6 月からは政府の方針に従って、

カウンターパートとスタッフがプロジェクトオフィスでの勤務を再開しました。再開に当たって

は、安全に業務にあたってもらうためにソーシャルディスタンスが取れるよう、オフィスの部

屋割りや机の配置を変えるなど、考えうる限りの方策を立て、リスク低減に努めています。

コロナ下の教育への支援として、教育省の要請を受け、授業時数の減少や感染

予防対策をふまえたカリキュラムの調整やガイドラインの策定を実施中です。コロナ

下の学びをどう実現していくのか、感染対策を講じながらの児童中心教育について、

先生や保護者にわかりやすく伝える広報ビデオも制作しています。

プロジェクトでは、一日も早く、新型コロナウイルスが収束することを祈りつつ、子ども

たちの学びを止めないよう、協力を続けていきます。

(株)パデコ 宮原 光 ・ 大津 璃紗

学びを止めるな!

~ミャンマー国初等教育カリキュラム改訂プロジェクトの挑戦~

プロジェクト紹介

(基礎教育)

上:再開に向けた準備が進む学校(生徒は印の

ある場所に着席)

下:4 年生新カリキュラム導入研修のトレーナー

研修を全国にライブ配信

上:ソーシャルディスタンスを確保した座席配置

下:トイレに貼っている手洗いポスター

上:プロジェクトで配布したマスクを使い仕切りを

付けたデスクで業務にあたるスタッフ

下:日本人専門家とのオンライン会議の様子

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マレーシア日本国際工科院(MJIIT)がマレーシア国内での新型コロナウイルス1に立ち向かっています。JICA

は 2011 年の開校以前より、機材整備や専門家の派遣を通し、同工科院の研究能力の向上などに協力。修了

生や在校生たちは、新型コロナウイルスから市民を守るため、JICA の協力で学んだ知識を活かして精力的に活動

しています。

防災リスク管理の知識を活かす

マレーシア・イスラム科学大学の救急医であるシャル

ル氏は、MJIIT で学んだ現場指揮システムや公衆衛

生に関する知識を応用し、市民防衛局の医療対策

本部の立ち上げに関わり、前線で対応にあたる初動

対応者の健康モニタリングや医療マスクの配布、ラ

ジオ番組を通した新型コロナウイルスに対する啓発

活動に取り組んでいます。

感染防止に向けた医療支援ツールの開発と生産

MJIIT は、日本からの協力によって設立された精密機械

工作ラボを活用し、医療従事者への飛沫感染を防ぎながら

呼吸器の挿管等の処置ができる、新型コロナウイルス対策用

のシールド装置を開発しました。すでに12台が病院へ寄贈され

ており、今後も病院からのリクエストに応じて増産していく予定で

す。

また、3D プリンターやレーザー裁断機を活用して飛沫防御

シールドを生産し、感染患者を受け入れている市内の病院に

順次寄贈しており、一般向け販売も検討しています。

新型コロナウイルス拡散のメカニズムを研究

今年 3 月、MJIIT がオランダの研究所と連携し、下水における新型コロナウイルスの研究を実施すると発表しまし

た 2。新型コロナウイルスの感染経路は飛沫感染が主ですが、本研究では、家庭や病院から排出される下水中の

ウイルスの痕跡を探し、まだ不明点の多い新型コロナウイルスの拡散メカニズムの解明を目指します。

1 マレーシアは、累計感染者数 4,817 名、死者数 77 名に達し(4 月 13 日現在、保健省 HP)、東南アジア諸国の中でもフィリピンに次いで二番目

に多くの累計感染者が確認されています。 2 https://news.utm.my/2020/03/utm-offers-expertise-to-investigate-coronavirus-in-wastewater/

開発されたシールド装置

新型コロナウイルスに立ち向かう ~マレーシア日本国際工科院の挑戦~

人間開発部 高等・技術教育チーム 森 義徳

プロジェクト紹介

(高等教育)

感染者対応の最前線で奮闘する MJIIT の修了生で、

医師のシャルル氏(右端)

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日本と関わりの深い教員・技官の活躍

JICA の長年の協力でケニアのトップ大学の 1 つとなり、2010 年には

汎アフリカ大学の拠点大学に指名されアフリカ各国から多くの留学生を受け

入れるジョモ・ケニヤッタ農工大学(JKUAT)。地域の拠点大学として

新型コロナウイルス蔓延にもいち早く対応し、人工呼吸器、消毒剤、ウェブ

ベースの感染トレンド予測システム、感染者の接触履歴をトレースする

アプリ等の開発を進めています。

人工呼吸器の開発をリードするのは、鳥取大学で博士号を取得した

イクア副学長です。また、鳥取大学での短期研修で、ものづくりについて

学んだオモンディ技官、アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ

(ABEイニシアティブ)1の修士課程(およびインターンシップ)プログラムに

て北海道大学で修士号を取得したカリウキ技官も開発に関わっており、日本

で学んだ教員・技官がコロナ禍でも活躍しています。

困難を抱えながらも、学びを活かして挑戦中!

大学への入校制限や初の医療機器開発での難しさなどがありつつも、

「ナイロビのお店も閉まり、国外からの輸入も難しく、新しい電子部品が手に

入らないことで最も苦労しています。JKUAT には実習用の古い車も多いの

で、それらから部品を取り出して、新たな部品の製作を行っているために、人

工呼吸器のデザインや部品の確定に時間を要してしまいます」と、オモンディ

技官は手に入るものを最大限活かして取り組んでいることを教えてくれまし

た。また、カリウキ技官は「正確な研究や開発をする姿勢も現在の開発の

生産性と効率性の向上につながっていると実感しています」と、日本で体得

したこととその学びがいま活かされていると語ってくれました。

必要は発明の母!

2018 年より工学分野の長期専門家として JKUAT に派遣されている

青木専門家は人工呼吸器開発チームのメンバーとして、一時帰国中も

オンライン会議で助言しています。「医療機器の開発は初めてなので、保健

医療科学部の協力も得ながら、試行錯誤しているようです。JKUAT に人工

呼吸器の開発はハードルが高いかもしれませんが、必要は発明の母ともいい

ます。やってみよう!という意欲が教員や技官たちの間にあることが重要

です」と、初めての挑戦に奮闘する教員や技官に期待を寄せながら、青木

専門家も遠隔指導に励んでいます。今後の展開にもぜひご注目ください!

1 https://www.jica.go.jp/africahiroba/business/detail/03/index.html

青木専門家のデジタルファブリケーションの研修は大人気!

ジョモ・ケニヤッタ農工大学工学部の対コロナ研究・開発

~日本で学んだ教員・技官と工学専門家の活躍~

プロジェクト紹介

(高等教育)

人間開発部 高等・技術教育チーム(専門家/派遣前業務委嘱)十田 麻衣

人工呼吸器試作品を製作中!

(右から4番目:カリウキ技官、その左隣:オモンディ技官)

試供品のお披露目会を JKUAT で開催

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青年海外協力隊事務局では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて一時帰国している JICA 海外協力隊を対象と

した、分野別のセミナーを多数企画しています。6 月 11 日、12 日には、人間開発部基礎教育グループの協力を得て、オンライン

セミナー「数学教育・理科教育:遠隔での協力の可能性を考える」を開催。数学教育・理科教育隊員 17 名が参加しました。

遠隔での協力事例の共有

1 日目は、遠隔での協力事例として、小中高生向けのオンラインでの算数の授業(キルギス)、教員養成校の学生に対する

SNS を使った数学の問題発信(ミャンマー)、WEB 会議システムを使った統計セミナーへの協力(コロンビア)、身近なものを

使った理科実験動画の作成(ガーナ)に関する報告がありました。どの事例も任国の通信環境やツールの普及度を考慮して

方法を選び、遠隔での難しさを理解した上で、生徒や学生の学習意欲を高め、学習過程を把握する工夫がされていることが感じ

られました。

教育分野における ICT の活用例

2 日目は、教育分野における ICT の活用例について学びました。モンゴル隊員より、教育省が実施するテレビ番組配信と課題

提示による遠隔授業に関する報告があり、実験や体験を伴う授業の減少など、想定される課題に関する考察が示されました。また、

JICA 基礎教育グループより、JICA の基礎教育事業における ICT の活用事例、及び各国における遠隔教育の概況の報告が

ありました。

参加者の感想

本セミナーでは、自分の活動を振り返って、目的を明確化し、戦略を適切化していくこと、その上で、学びの改善のために遠隔で

どんな協力ができるのかを考える重要性を確認しました。また、参加者からは「他の隊員の事例を聞いて刺激になった」

「やってみないとわからないことがある」「遠隔での協力は不可能だと思っていたが、自分にもできることがあるかもしれない」といった感想

が多く聞かれました。

青年海外協力隊事務局 課題業務・選考課 星井 直子

オンラインセミナー「遠隔での協力の可能性を考える」を開催

~一時帰国中の数学教育・理科教育隊員が参加~ 世界で輝く協力隊

SNS で数学のおもしろ問題を学生に共有 身近なものを使った理科の実験動画作成

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5 月 20 日(水)、「第 20 回教育セクターにおける JICA・コンサルタント勉強会」が開催されました。今回は、初めてオンライ

ン会議システムを使っての開催となりました。JICA 職員と開発コンサルタント合せて約 110 名が参加し、新型コロナ影響下における

教育支援について情報や意見交換を行いました。

新型コロナ影響下における遠隔での教育支援

新型コロナウイルスの影響により 3 月末から海外へ渡航ができない状態が続いています。勉強会では、JICA より現在世界で実施

中の教育プロジェクトへの対応方針について説明があった後、開発コンサルタントから、どのように遠隔での指示や連携を通して教育

プロジェクトを実施できるのかについて、過去のアフガニスタンとニカラグアの事例、実施中のミャンマーの事例が共有されました。現地

スタッフも在宅勤務ができるよう、パソコンの貸し出し、通信環境の整備、連絡網や連絡手段の確認、業務の進捗管理の徹底など、

具体的な対応策が発表されました。参加者からは「現地スタッフとどのように遠隔で良い人間関係を築いているのか」といった質問も

寄せられました。

学びを止めない!学校に行けない途上国の子どもたちのためにできる教育支援とは?

休校のため学校に行けない子どもたちのためにできる教育支援について、開発コンサルタントから事前に寄せられた事例やアイディア

をもとに、情報・意見交換を行いました。すでに行っている活動として、小学校の自宅学習用教材の作成などが挙げられました。また、

今後の活動アイディアとして、TV、ラジオ、新聞等国内で浸透している媒体を用いた学習コンテンツの配信、ICT インフラを用いた

コミュニティースクールの開設、オンラインでの教員研修などが挙げられました。勉強会後、参加者から寄せられた感想を以下に一部

ご紹介します。

⚫ 遠隔でのプロジェクト実施における工夫等、大変参考になった。

⚫ タイムリーなテーマであり、先駆的な取組から活用できる具体的事例まで知ることができて良かった。

⚫ オンライン開催のため、居住地に関係なく、多くの人が参加できて良かった。

新型コロナ影響下であっても「学びを止めない」ために、今後も JICA と開発コンサルタントは互いに協力し合い、知恵を絞って活動

していきたいと思います。

新型コロナウイルス影響下、私たちができる教育支援とは?

~オンライン勉強会で JICA とコンサルタントが知恵をしぼる!~ KMN 活動報告

(株)パデコ 大橋 悠紀

プロジェクトにおける遠隔支援のポイント(発表資料より抜粋) 事前に様々なアイディアが寄せられました(発表資料より抜粋)

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未曾有の状況に直面

2017 年にエジプトで開始された「学びの質向上のための環境整備プロジェクト」は、特別活動と呼ばれる日直/掃除/

学級会等の日本式教育を、新規に開校したエジプト日本学校(EJS)を中心に、全国の教育現場への展開を目指して活動して

きました。本案件では、専門家派遣のみならず、本邦研修や円借款もフル活用し、これまで両国チームによる総力戦での取り組み

が続けられてきました。しかしながら、今年 3 月末にはエジプト政府による外出制限の発令、続く 4 月には主要な案件関係者に

対する一時退避帰国の指示が出されました。本案件に従事するほぼすべての JICA 関係者が、日本国内に退避した状態で案件の

最終年を迎えるという、未曾有の難しい状況に直面することになりました。

新しい日常の模索と気づいたメリット

現地での勤務が在宅に切り替わった直後は、両国関係者間に

よる意思疎通の場を確保することが優先課題となりました。これまで

活用が少なかったオンライン会議システムを本格稼働し、週例会議

を再開した当初は、慣れない環境で戸惑うことも多くありました。

しかしながら、過去の会議と比較してみると、参加が難しかったメン

バーの招集の実現、多忙で途中離席が多かったメンバーの最後

までの参加など、オンライン会議ならではのメリットも見つかりまし

た。現在は、案件主要メンバー/実務担当者/日本人専門家

と、それぞれ対象を分けた会議を毎週開催し、互いの進捗を確認

しています。さらに追加で、特定トピックの会議も招集するなど、退避

前と比べても遜色ない連絡体制の中で、日々の業務を進めています。

コロナ禍における特別活動の強みを模索

エジプトで展開している特別活動には、手洗いの重要性やその方法など、コロナの感染

予防に直接役立つ、保健衛生に関する指導項目が数多く含まれています。日本の教室

現場では日常的に実施されているこうした活動が、世界的に強く求められている現在、

エジプト案件のこれまでの実践と成果は、以前にも増して注目を集める可能性があります。

新たに直面した厳しい環境ではありますが、この奇禍をむしろ好機と解釈し、これまでの

研修内容を補完・強化しつつ、新たな活動提案を模索するなど、両国関係者の工夫と

努力が続いています。

奇禍を機会に更なる飛躍を目指す―エジプトにおける特別活動普及の取り組み

~エジプト国「学びの質向上のための環境整備プロジェクト」近況報告~

専門家リレー寄稿

中島 基恵(エジプト教育省プロジェクト管理ユニットアドバイザー専門家)

毎週火曜日に開催されるオンライン会合の参加メンバー

特別活動の一環としての手洗い指導

(エジプト日本学校にて)

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このたび JICA では、教育分野におけるコロナ影響下の活動を伝えるべく、特設ページを JICA ホームページの教育分野の直下に

開設しました。コロナ危機下での JICA の取り組みや各国のプロジェクト現場の状況などについての既存記事、また関連性の高い

外部リンクを集約したコンテンツとなっております。

JICA 全体のコロナ特設ページと合わせてご覧ください。

新型コロナウイルス感染症への対応―教育分野における対応―(教育分野特設ページ)

https://www.jica.go.jp/activities/issues/education/corona/approach.html

より強靭な社会へ、信頼で共に創る―新型コロナウイルスへの対応―(JICA 全体の特設ページ)

https://www.jica.go.jp/COVID-19/ja/index.html

「教育ナレッジマネジメントネットワーク(KMN)」とは

JICA 教育ナレッジマネジメントネットワーク(KMN)は、JICA の教育協力事業の質向上を目標に、JICA の教育協力に関する知見や経験を一元的に

蓄積し、事業に活かすとともに対外的に発信するために、人間開発部を中心に活動を行っています。具体的には、①戦略(事業戦略、ドナー連携等)、

②ナレッジの創造(プロジェクト研究、インパクト評価等)、③ナレッジの共有(民間・大学とのネットワーキング)、④広報(ナレッジの蓄積・発信)等の

活動を実施しています。

「教育だより」では、こうした教育 KMN の取組のほか、教育協力に関わる国際的な動向や実施中の案件情報等をあわせてお伝えしていきます。

教育 KMN および JICA 基礎教育、高等・技術教育、社会保障グループからの各種お知らせを希望の方は、

(1)名前、(2)ふりがな、(3)所属、(4)役職、(5)職業、(6)E メールアドレスを明記のうえ、[email protected] までお送りください。

【編集後記】

緊急事態宣言下での 1 か月半近くの在宅勤務は誰にとっても初めての経験でしたね。これまで対面でと思いこんでいたものが

ICT の力を借りると結構できるということを実感し、テレワークの可能性を感じた方も多いと思います。一方で、在宅勤務で外に

出ない生活、誰とも話さない環境の中で、多くの方が人と繋がることの貴重さを実感したのではないかと思います。

今月号はコロナ特集ということで、基礎教育から高等教育まで、専門家からコンサルタント、教育 ICT 企業、JOCV(海外協力

隊)まで幅広く、コロナ禍での困難をどう克服しているかを取り上げました。これまで繋がりが弱かった関係者であっても、オンラインと

いうツールを使えば、同じ問題意識のもと繋がることが可能ということが記事からはうかがえます。この教育だよりを通じ、皆様の

アイデアが集まり、困難を克服していくパワーに繋がっていくことができれば幸いです。

京都大学の石井英真先生が日本での、with コロナの状況下での教育について積極的に発信されています(https://e-

forum.educ.kyoto-u.ac.jp/)。そこでは、授業を進めること≠学びの保障であり、オンラインだからこそ視覚的なもの以外の

相手への触覚的な感知力が必要とのメッセージが込められています。JICA が大事にしてきた相手に寄り添う姿勢をコロナ禍でどう

実践するかという視点に立ってこのメッセージを考えると、オンラインだからこそ五感を総動員して相手の表情、気持ち、考えを理解

することが大事と感じました。

日本でのコロナ感染もまだまだ収束とは言えません。こうした事態に大人がどう行動し、アイデアを出し、繋がるか、それを子供も

見て、敏感に感じ取っているのではないかと思います。JICA において教育セクターに取り組む関係者が、アイデアを出し合い、

お互いを高めあうことで、事業実施において途上国の先生、子供・学生、保護者に寄り添うことができるよう、歩みを止めないで

いきたいと思います。

人間開発部 基礎教育第一チーム 課長 澁谷 和朗

JICA の教育✖️コロナ特設ページが開設! 広報