第119回広島消化器病研究会 -...

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第119回広島消化器病研究会 2017 年4 月 8日(土) 12:30より 広仁会館 大会議室 広島市南区霞 1 2 3 (広島大学霞キャンパス) Hiroshima Gastroenterological Association (HGA)

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第119回広島消化器病研究会

2017 年 4 月 8 日(土) 12:30より

広仁会館 大会議室

広島市南区霞1-2-3

(広島大学霞キャンパス)

Hiroshima Gastroenterological Association (HGA)

広島消化器病研究会

事務局: 〒734-8551 広島市南区霞1-2-3 広島大学病院 内視鏡診療科 TEL 082-257-5538 FAX 082-253-2930 E-mail : hga@hiroshima-u.ac.jp http : //home.hiroshima-u.ac.jp/hga14/

講 演 時 間 発表時間は一般演題6分で,討論は3分です。 時間厳守をお願いします。

発 表 方 法 パソコンによるプレゼンテーションをお願いします。 発表データを保存したUSBメモリをご持参下さい。−Mac,Windows対応可−

なお,動画データを組み込まれている場合は,パソコン本体をご持参下さい。

研究会会費 当日受付でお払込み下さい。 参加費

   勤務医  1,000円

   一般医家  2,400円(年1回徴収)

         (ただし,一般医家会員は診療報酬より差し引きます)

幹 事 会 12:00〜12:30に中会議室にて幹事会を行います。(弁当代1,500円)

会場〔広島大学病院構内地図〕

広仁会館

広仁会館

正門

―1―

開 会 の 辞 (12:30~12:32) 会長 茶山一彰

一 般 演 題 (12:32~16:27)

Ⅰ(12:32~12:50) 座長 広島記念病院 内科 田村忠正 コメンテーター 広島市立安佐市民病院 消化器内科 永田信二

1.大腸NBI拡大観察所見統一分類(JNET分類)の診断能とType2B亜分類の試み

広島大学病院 内視鏡診療科 ○住元 旭,田中信治,林 奈那,岡 志郎

同 消化器・代謝内科  田中秀典,松本健太,保田和毅,山下 賢

 平野大樹,田丸弓弦,二宮悠樹,茶山一彰

同   病理診断科  有広光司

2.当院における高齢者の下部消化管出血症例に関する臨床的検討

庄原赤十字病院 内科 ○竹内泰江,沼田紀史,網岡 慶,鳴戸謙輔

 谷口陽亮,山岡賢治,鎌田耕治,服部宜裕

 中島浩一郎

同  消化器内科  西山宗希

Ⅱ(12:50~13:08) 座長 呉医療センター・中国がんセンター 消化器内科 桑井寿雄 コメンテーター 県立広島病院 内視鏡内科 平賀裕子

3.困難症例に対する全身麻酔下大腸ESDの有用性

広島市立安佐市民病院 消化器内科 ○朝山直樹,永田信二,小川祐太郎,下原康嗣

 玉理太覚,青山大輝,村上英介,行武正伸

 向井伸一,脇 浩司,桑原健一

同  内視鏡内科  福本 晃,上田裕之

4.広島地域における大腸ESDの有効性と安全性に関する検討

 ―広島消化管内視鏡リサーチグループ多施設共同前向き研究中間報告―

広島消化管内視鏡リサーチグループ ○保田和毅,田中信治,岡 志郎,鴫田賢次郎

 永田信二,國弘真己,東 玲治,桑井寿雄

 平賀裕子,古土井明,中土井鋼一,金尾浩幸

 寺崎元美,岡信秀治,東山 真,茶山一彰

―2―

Ⅲ(13:08~13:26) 座長 広島市立広島市民病院 内科 國弘真己 コメンテーター 県立広島病院 内視鏡内科 渡邉千之

5.内視鏡的大腸ステント留置術を施行し臨床的不成功であった2症例の検討呉医療センター・中国がんセンター 消化器内科 ○高砂 健,桑井寿雄,隅田ゆき,宮迫由季  西村朋之,飯尾澄夫,今川宏樹,山口敏紀  山口 厚,河野博孝,高野弘嗣

6.TotalColonoscopy(TCS)直後にCT-Colonography(CTC)検査を行う意義 広島原爆障害対策協議会 ○川西昌弘

Ⅳ(13:26~13:44) 座長 広島赤十字・原爆病院 消化器内科 岡信秀治 コメンテーター JA広島総合病院 消化器内科 小松弘尚

7.胃石に対してコーラ溶解療法が有用であった1例 広島赤十字・原爆病院 消化器内科 ○宮本明香,羽田 裕,稲垣克哲,後藤久美子  本田洋士,坂野文香,金尾浩幸,齋 宏  毛利律生,井上基樹,高木慎太郎,森 奈美  久留島仁,岡信秀治,辻 恵二,松本能里  古川善也

8.Helicobacter pylori(Hp)除菌治療23年間の記録と現在の最善の除菌方法 広島原爆障害対策協議会 ○川西昌弘

Ⅴ(13:44~14:02) 座長 広島大学病院 内視鏡診療科 佐野村洋次 コメンテーター 広島記念病院 内科 隅井雅晴 

9.心房細動に対するアブレーション治療後に発症した急性麻痺性胃拡張の1例 県立広島病院 内視鏡内科 ○白根佑樹,平本智樹,友清せらみ,花田麻衣子  東山 真,平賀裕子,渡邉千之,隅岡正昭 同  消化器内科  大谷里奈,佐伯 翔,小道大輔,佐々木民人  北本幹也,山田博康

10.全身痛・下痢で発病した好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の1例 広島記念病院 内科 ○安藤雄和,隅井雅晴,山本隆一,阿座上隆広  田村忠正,木村 茂,山田 朗,城戸聡一郎  江口紀章 広島修道大学 人文学部  嶋本文雄

―3―

Ⅵ(14:02~14:20) 座長 広島大学原医研 腫瘍外科 恵美 学 コメンテーター 広島大学病院 消化器・移植外科 田邊和照

11.食道癌術前治療症例における脈管侵襲の予後因子としての意義 広島大学原爆放射線医科学研究所 腫瘍外科 ○伊富貴雄太,浜井洋一,恵美 学,古川高意  岡田守人

12.胃上部の早期胃癌に対する腹腔鏡下噴門側胃切除術(観音開き法再建)  ―術後QOL向上を目指して―

広島大学病院 消化器・移植外科 ○堀田龍一,田邊和照,佐伯吉弘,山本悠司  竹原寛樹,大段秀樹

―――――― 休 憩(14:20〜14:30)――――――

Ⅶ(14:30~14:48) 座長 広島大学大学院 応用生命科学部門外科学 渡谷祐介 コメンテーター 広島大学大学院 消化器・移植外科学 惠木浩之

13.下部直腸癌に対する術後排便機能・QOLを考慮した術式の検討 広島大学病院 消化器・移植外科 ○河内雅年,惠木浩之,安達智洋,向井正一朗  矢野琢也,佐田春樹,田口和浩,寿美裕介  中島一記,大段秀樹 同  医学教育センター  服部 稔 川堀病院外科  川堀勝史

14.便失禁に対する新規治療法:仙骨神経刺激療法の有用性 広島大学大学院 応用生命科学部門外科学 ○渡谷祐介,大毛宏喜,嶋田徳光,矢野雷太  峠越宏幸,黒尾優太,北川浩樹,岡本暢行  繁本憲文,上神慎之介,上村健一郎,村上義昭  末田泰二郎

Ⅷ(14:48~15:06) 座長 広島大学病院 消化器・代謝内科 相方 浩 コメンテーター 広島赤十字・原爆病院 消化器内科 辻 恵二

15.ステロイド治療抵抗性で肝不全が進行していった自己免疫性肝炎(AIH)の1例 市立三次中央病院 消化器内科 ○田村陽介,児玉英章,川上源太,永井健太  趙 成大,濱田敏秀,中西敏夫

―4―

16.当院で経験したE型急性肝炎の3例 広島赤十字・原爆病院 臨床研修部 ○藤田陸登 同  消化器内科  高木慎太郎,辻 恵二,宮本明香,本田洋士  齋 宏,金尾浩幸,坂野文香,毛利律生  井上基樹,森 奈美,久留島仁,岡信秀治  松本能里,田利 晶,古川善也 なかむら内科クリニック  中村利夫

Ⅸ(15:06~15:24) 座長 広島市立安佐市民病院 消化器内科 脇 浩司 コメンテーター 県立広島病院 消化器内科 北本幹也

17.SGLT2阻害薬の肝機能パラメータに与える影響と体組成変化の検討 広島大学病院 消化器・代謝内科 ○中原隆志,寺岡雄吏,稲垣有希,盛生 慶  小林知樹,長沖祐子,河岡友和,柘植雅貴  平松 憲,今村道雄,川上由育,相方 浩  茶山一彰 同 糖尿病代謝内科  米田真康 同   循環器内科  中野由紀子

18.嘔吐,下痢が初発症状であったSFTSの1例 広島市立安佐市民病院 消化器内科 ○小川裕太郎,村上英介,脇 浩司,玉理太覚  下原康嗣,朝山直樹,青山大輝,行武正伸  向井伸一,桑原健一,永田信二 同  内視鏡内科  福本 晃,上田裕之

Ⅹ(15:24~15:42) 座長 呉共済病院 消化器内科 野間文次郎 コメンテーター JA尾道総合病院 消化器内科 花田敬士 

19.膵石症に対する治療ストラテジーと成績 広島大学病院 消化器・代謝内科 ○関藤 剛,芹川正浩,石井康隆,清水晃典  壷井智史,栗原啓介,辰川裕美子,宮木英輔  河村良太,津島 健,齋藤裕平,中村真也  茶山一彰

20.当科における膵嚢胞経過観察例の検討呉医療センタ−・中国がんセンター 消化器内科 ○山口 厚,宮迫由季,高砂 健,隅田ゆき  西村朋之,飯尾澄夫,今川弘樹,山口敏紀  桑井寿雄,河野博孝,高野弘嗣

―5―

Ⅺ(15:42~16:00) 座長 県立広島病院 消化器内科 佐々木民人 コメンテーター 中国労災病院 消化器内科 大屋敏秀 

21.限局性膵管狭窄の1例 県立広島病院 内視鏡内科 ○友清せらみ,花田麻衣子,東山 真,平本智樹  平賀裕子,渡邉千之,隅岡正昭 同  消化器内科  小道大輔,佐々木民人,大谷里奈,佐伯 翔  北本幹也,山田博康 同  消化器・乳腺・移植外科  末岡智志,大下彰彦,眞次康弘 同  臨床研究検査科  倉岡正嗣,西阪 隆

22.膵癌の病理診断におけるENPDとEUS-FNAの成績 JA尾道総合病院 消化器内科 ○南 智之,花田敬士,天野 始,平野巨通  小野川靖二,宍戸孝好,片村嘉男,中土井鋼一  福原基充,日野文明

Ⅻ(16:00~16:27) 座長 広島大学病院 消化器・代謝内科 芹川正浩  コメンテーター 広島大学大学院 応用生命科学部門外科学 上村健一郎

23.診断に苦慮した肝内胆管狭窄の一例 広島赤十字・原爆病院 臨床研修部 ○山下由美子 同  第一消化器内科  斎 宏,井上基樹,古川善也 同      検診部  松本能里 広島大学大学院 応用生命科学部門外科学  村上義昭 広島大学病院 病理診断科  有廣光司

24.膵神経内分泌癌(小細胞癌)に対してCBDCA+VP-16併用療法が奏功した1例 中国労災病院 研修医 ○高畑明寛 同  消化器内科  毛利輝生,長崎直子,堀内敦史,門田紘樹  菊川千尋,実綿倫宏,北村正輔,久賀祥男  守屋 尚,大屋敏秀

25.BorderlineResectable膵癌に対する術前化学療法の成績と新たな治療戦略確立への取り組み 広島大学病院 応用生命科学部門外科 ○岡田健司郎,近藤 成,村上義昭,上村健一郎,  中川直哉,末田泰二郎 呉医療センター 外科  首藤 毅 広島記念病院 外科  橋本泰司

―――――― 休 憩(16:27〜16:40)――――――

―6―

「伊 藤 賞」 表 彰 式(18:10~18:15)

閉 会 の 辞 (18:15) 会長 茶山一彰

座長 広島大学大学院 医歯薬保健学研究院 消化器・移植外科学

教授 大段秀樹先生

『肝癌の再発予防に向けた取り組み』広島大学大学院 消化器・移植外科学 特任講師 小林 剛 先生

教育講演(16:40~17:10)

座長 広島大学大学院 医歯薬保健学研究院 消化器・代謝内科学

教授 茶山一彰先生

『IPMN ― 最近の動向と新たな課題 ―』手稲渓仁会病院 消化器病センター センター長 真口宏介 先生

共催:ボストン・サイエンティフィックジャパン株式会社

特別講演(17:10~18:10)

―7―

肝癌の再発予防に向けた取り組み

肝切除は肝細胞癌(HCC)の根治治療であるが,切除後の再発は依然として高率で,HCC患者の

予後改善のためには,再発予防法の確立が必要である。HCCの再発は癌転移再発と多中心性発癌

に分けて理解できるが,転移再発を予防する方法は確立されていない。

HCCの血行性転移には血中循環腫瘍細胞(CTC)が中心的役割を担うと考えられ,HCCで特異

的に高発現しているGlypican3を標的にCTCの新規検出法を開発した。切除例の検討からCTC陽性

は顕微鏡的門脈侵襲の独立した予測因子であった。またHCC切除例における遺伝子多型解析によ

り,NK細胞に表出する抑制性受容体killercell immunoglobulin-likereceptor(KIR)の遺伝子多型

と,ヒト白血球抗原(HLA)classIgenotypeの組み合わせが有意な再発危険因子であることが明

らかになった。KIRは,HLAclassI上の一定の配列を認識することで,NK細胞の潜在的活性強化

を獲得し,この機構は“license”と呼ばれる。すなわち,遺伝子レベルで規定されるlicensedNK細

胞の存在が,HCCの再発抑制に重要であった。

これらの結果から肝切除後転移再発の正確なリスク評価が可能となり,高リスクグループを対

象にした転移再発予防法の開発が期待される。現在造血幹細胞やiPS細胞から分化・誘導したNK細

胞を移入する免疫細胞療法を開発中である。

教 育 講 演

小林 剛 先生広島大学大学院 消化器・移植外科学 特任講師

―8―

主要履歴 小林 剛  (こばやし つよし)

【学歴・職歴】

平成8年  広島大学医学部卒業

平成9年  北九州総合病院

平成11年  県立広島病院

平成17年  安芸市民病院

平成18年  土谷総合病院

平成18年  Strasbourg大学Hautepierre病院

平成19年  山陽病院

平成20年  広島大学病院 医科診療医

平成21年  広島大学病院 病院助教

平成26年  広島大学大学院 学部内講師

平成27年  広島大学大学院 特任講師

      現在に至る

【資格】

広島大学大学院医歯薬学総合研究科 医学博士

日本外科学会 外科専門医・指導医

日本消化器外科学会 消化器外科専門医・指導医

日本肝胆膵外科学会 高度技能専門医

消化器がん外科治療認定医

日本肝臓学会 肝臓専門医

日本がん治療認定医機構 がん治療認定医

日本透析医学会 透析専門医

―9―

IPMN ―最近の動向と新たな課題 ―膵管内乳頭粘液性腫瘍(Intraductalpapillarymucinousneoplasm:IPMN)は,通常型膵癌と同様に膵

管上皮から発生するが,膵管内で腫瘍が増殖・進展しやすく,腫瘍あるいは粘液貯留によって膵管拡張を呈する。病理組織学的には腺癌のほか腺腫があり,治療方針が重要となる。2006年にIPMN国際診療ガイドラインにて診断と治療指針について世界的に一定の方向性が示された後,2012年に改訂されている。ガイドライン2012では,主膵管型と分枝型に混合型を加えた3分類とし,主膵管型は主膵管径5㎜以上,分枝型は拡張分枝径5㎜以上と閾値を下げ,“worrisomefeature”と“high-riskstigmata”の2段階を設定し,手術適応を決定する指針とした。但し,閾値を下げたことにより,IPMN以外の病態もIPMNと誤る危険があること,混合型の解釈に施設間差が出やすいなどの問題も残る。また,分枝型IPMNの“worrisomefeature”に対してはEUSでの結節(muralnodule:MN)の評価が重要視されたが,手術適応とすべきMN高については明記されていない。現状ではMN高5㎜以下には経過観察を行い,進展がみられた場合に手術を考慮するのが妥当と考えられる。

一方,IPMNでも浸潤癌となる場合があり留意する必要がある。IPMN由来浸潤癌(由来浸潤癌)の定義としては「画像あるいは病理学的にIPMNの特徴を有し,かつIPMNと浸潤癌との間に組織学的移行像を認めるもの」とされ,浸潤形態には管状腺癌(tub)と粘液癌(mucinous,colloid)がある。由来浸潤癌の多くは,組織学的に膵管内の乳頭状腫瘍高3㎜以上のpolypoid型であるが,浸潤部位は高乳頭状腫瘍の近傍とは限らない。由来浸潤癌の術前診断は,浸潤部が20㎜を超えると指摘可能であるが,10㎜未満

(T1a,T1b)では困難である。現在,最も注目されている話題としてIPMN併存膵癌がある。IPMNを有する背景膵が通常型膵癌の

high-riskと考えられ,その頻度は1.4〜9.3%と報告されている。併存膵癌は,IPMNと浸潤癌が離れて存在する場合には確診となるが,IPMNと浸潤癌部が近接している場合には,「隣接併存膵癌」と「由来浸潤癌」との鑑別が問題となる。IPMNと浸潤癌部に移行像がみられない場合,IPMNの膵管内成分がhigh-gradedysplasiaでない場合には隣接併存膵癌の可能性が高い。自験例の検討では,IPMN1087例中の由来浸潤癌は30例(2.8%)であったに対し,併存膵癌は確診35例(3.2%),隣接併存26例(2.4%)の計61例(5.6%)であり,併存膵癌の頻度が由来浸潤癌に比べ高い。これらのIPMNに関連した由来浸潤癌と併存膵癌の確診例,隣接併存例の遺伝子変異にどのような違いがあるか興味が持たれる。そこで,切除例のIPMN膵管内腫瘍部と浸潤癌部からmicrodissection法にてDNAを抽出し,18遺伝子(KRAS,GNAS,TP53,SMAD4,

特 別 講 演

真口宏介 先生手稲渓仁会病院 消化器病センター センター長

―10―

COKN2A,CTNNB1,RNF43など)についてカスタム遺伝子パネルを用いてターゲットシークエンスを行い検討した。現在までの結果では,由来浸潤癌例の膵管内成分と浸潤癌部の遺伝子変異は一致しており,併存膵癌確診例ではIPMNと浸潤癌部での遺伝子変異は全て異なっていたのに対し,隣接併存では異なる遺伝子変異を示す例とKRAS変異が一致している例があり,膵癌の発育進展を考える上で興味深い。

さらに,IPMN切除後の残膵再発の問題が浮上してきている。残膵再発にはIPMNの再発と通常型膵癌発生の2つがある。IPMNでは以前から多発性が指摘されているほか,背景膵に小さなIPMN病変やPanINの多発病変(fielddefect)の存在が明らかにされつつある。これらのことが,残膵再発や併存膵癌に関わっていると考えられ,今後の検討により,術式選択や経過観察法を含めたガイドラインの将来の改訂に加えて,膵癌の発育進展経路の解明が期待される。

主要履歴 真口宏介  (まぐち ひろゆき)  昭和33年2月13日生

【学歴】1983年(昭和58年)3月  帝京大学医学部卒業1993年(平成5年)12月  医学博士・旭川医科大学学位論文名:粘液産生膵腫瘍の臨床病理学的および診断学的研究

【職歴】1983年(昭和58年)5月  旭川医科大学 第三内科入局1985年(昭和60年)4月  旭川厚生病院 消化器科1990年(平成2年)7月  旭川医科大学 第三内科医員1995年(平成7年)5月  札幌厚生病院 消化器科医長1997年(平成9年)4月  手稲渓仁会病院 消化器病センター長

【資格】日本消化器病学会指導医日本消化器内視鏡学会指導医日本超音波医学会超音波指導医日本消化器がん検診学会指導医日本胆道学会認定指導医日本内科学会認定医

【学会関連】日本消化器病学会評議員日本消化器内視鏡学会評議員日本胆道学会評議員日本膵臓学会評議員日本消化器がん検診学会評議員日本超音波医学会代議員MembershipofAmericanSocietyforGastrointestinalEndoscopy臨床消化器病研究会代表世話人日本消化器画像診断研究会代表世話人

【受賞学術賞】日本消化器病学会奨励賞

1993年(平成5年)論文名:粘液産生膵腫瘍診断における選択的膵管造影(SelectiveERP)と内視鏡的膵生検(EndoscopicpancreaticBiopsy:EPB)の有用性

内視鏡医学研究振興財団1991年(平成3年)膵癌診断のための内視鏡的膵生検(EndoscopicPancreaticBiopsy:EPB)法の

確立と膵管鏡の開発1999年(平成11年)膵・胆道狭窄に対する内視鏡的ステンティングの有用性に関する研究2011年(平成23年)分枝型膵管内乳頭粘液性腫瘍の通常型膵癌発症の頻度解明のための

前向き追跡研究法開発

―11―

MEMO

―12―

抄 録 集( 一 般 演 題 )

(応募抄録をそのまま掲載しています)

1  大腸NBI拡大観察所見統一分類(JNET分類)の診断能とType2B亜分類の試み

広島大学病院 内視鏡診療科

住元 旭,田中信治,林 奈那,岡 志郎

広島大学病院 消化器・代謝内科

田中秀典,松本健太,保田和毅,山下 賢,平野大樹,田丸弓弦,二宮悠樹,茶山一彰

広島大学病院 病理診断科

有広光司

2014年TheJapanNBIExpertTeam(JNET)より大腸NBI拡大観察所見統一分類(JNET分類)が提唱され

た。JNET分類は,vesselpatternとsurfacepatternの2つのNBI拡大観察所見を指標とし,Type1,2A,2B,

3の4つのカテゴリーから成り立っている。Type1,2A,3はそれぞれの予想組織型(Type1:過形成,Type

2A:腺腫〜Tis癌,Type3:T1b癌)の有力な診断指標であるが,Type2Bは腺腫からT1b癌まで幅広い組織

型を含み,Tis癌/T1a癌に対する特異度はやや低い。Type2Bをsurfacepatternの不整度で2B-low/2B-high

に亜分類すると,Type2B-lowのほとんどが腺腫〜T1a癌であり,NBI単独で内視鏡的治療適応病変の拾い上

げに有用であった。

2  当院における高齢者の下部消化管出血症例に関する臨床的検討

庄原赤十字病院 内科

竹内泰江,沼田紀史,網岡 慶,鳴戸謙輔,谷口陽亮,山岡賢治,鎌田耕治,服部宜裕,中島浩一郎

庄原赤十字病院 消化器内科

西山宗希

【対象と方法】2011年4月から2016年2月までに血便を主訴に受診し大腸内視鏡検査施行した159症例の臨床像

を検討した。

【結果】性別は男性70%,女性30%,平均年齢は76歳で,高齢者は81%だった。併存症は77%で認めた。抗血栓

薬内服は43%,低Alb血症は36%だった。貧血は21%,輸血施行例は24%,出血性ショックは8%で認めた。出

血源を同定した症例は94%であり,憩室出血が最も多く,次いで直腸潰瘍,虚血性腸炎,進行大腸癌だった。

初回CS時に自然止血または止血処置により全症例止血を得たが,6%に再出血を認め,追加止血により止血し

得た。全症例で検査による緊急手術や偶発症を認めなかった。

【結語】当地域の下部消化管出血患者は,高齢者が多く,併存症,抗血栓薬内服例が高率だった。血便を主訴

に受診した患者では重篤化する可能性があり,的確な診断と治療方針の決定を行うことが重要と考えた。

―13―

3  困難症例に対する全身麻酔下大腸ESDの有用性

広島市立安佐市民病院 消化器内科

朝山直樹,永田信二,小川祐太郎,下原康嗣,玉理太覚,青山大輝,村上英介,行武正伸,向井伸一,

脇 浩司,桑原健一

広島市立安佐市民病院 内視鏡内科

福本 晃,上田裕之

【背景】難易度の高い症例では長時間の処置を行うこととなるため,確実な鎮静が必要になる。当院では,精査

で困難症例と判断した症例に関して麻酔科医の協力の下,内視鏡センターにて全身麻酔下ESDを施行している。

【対象と方法】2017年1月までに施行した大腸ESD519例のうち,全身麻酔下で大腸ESDを施行した32例を対象

とし,治療成績について検討した。

【結果】男性15例,平均年齢69歳,平均腫瘍径32㎜,腺腫4例,pTis癌19例,pT1癌9例であった。局在は右側

結腸19例,左側結腸6例,直腸7例であった。平均術時間59分,一括摘除率92%(30/32),組織学的完全一括摘

除率84%(27/32)であった。不完全摘除の5例は,垂直断端陽性3例,分割切除2例であった。後出血を2例に

認めたが全て内視鏡的に止血できた。

【結語】全身麻酔により安全かつ効率的に大腸ESDを行うことが可能であった。

4  広島地域における大腸ESDの有効性と安全性に関する検討

  ―広島消化管内視鏡リサーチグループ多施設共同前向き研究中間報告―

広島消化管内視鏡リサーチグループ

保田和毅,田中信治,岡 志郎,鴫田賢次郎,永田信二,國弘真己,東 玲治,桑井寿雄,平賀裕子,

古土井明,中土井鋼一,金尾浩幸,寺崎元美,岡信秀治,東山 真,茶山一彰

【目的】広島地域における大腸ESDの有効性と安全性を前向きに検討する。

【方法】2013年8月から2016年6月に施行された大腸ESD1126例1188病変を対象に,臨床病理学的特徴と治療成績

を解析した。登録症例数の中央値(80例)を指標に,high/lowvolumecenter(H群/L群)別に比較検討した。

【結果】男性681名,平均年齢69歳,局在:右側結腸594例(50%),左側結腸253例(21%),直腸341例(29%),

平均腫瘍径30±15㎜,発育形式:LST-G500例(42%),LST-NG433例(36%),Polypoid255例(22%),病理

所見:腺腫432病変(36%),Tis癌531病変(45%),T1a癌81病変(7%),T1b癌144病変(12%)であった。治療

成績は,平均術時間90±70分,一括切除率95%,完全一括摘除率93%,R0切除率83%,後出血率2%,穿孔率

4%(42例中3例のみ外科手術)であった。H群はL群と比較して局所再発/EMR中断例,高度線維化,スコープ

操作性不良例が有意に多かった。

【結語】広島地域における大腸ESDは,各施設の技術レベルに応じて病変が適切に選択されており,安全性も

保たれていた。

―14―

5  内視鏡的大腸ステント留置術を施行し臨床的不成功であった2症例の検討

呉医療センター・中国がんセンター 消化器内科

高砂 健,桑井寿雄,隅田ゆき,宮迫由季,西村朋之,飯尾澄夫,今川宏樹,山口敏紀,山口 厚,

河野博孝,高野弘嗣

症例1:症例は49歳女性。2012年8月に胃癌の卵巣転移,腹膜播種と診断し,化学療法を開始したが,11月に

腹膜播種によりイレウスを発症した。狭窄部位はS状結腸に2カ所あり,緩和治療を目的にまず肛門側の狭窄

に対して大腸ステント留置術を行った(WallFlex大腸用ステント25㎜×9㎝)。その6日後に口側の狭窄に対し

てステント留置を試みたが,肛門側のステント拡張が不良であり断念した。

症例2:症例は83歳女性。2013年3月に腹痛を主訴に受診し下行結腸の全周性の2型進行大腸癌によりイレウス

を発症していた。入院当日にイレウス管留置し,第3病日に大腸ステント留置術を行った(WallFlex大腸用ス

テント22㎜×6㎝)。ステント拡張は良好であったものの,減圧は不良であり,第4病日に穿孔,腹膜炎が疑わ

れ緊急手術となった。大腸ステント留置術を施行し臨床的不成功であった上記2症例を考察し,報告する。

6  TotalColonoscopy(TCS)直後にCT-Colonography(CTC)検査を行う意義

広島原爆障害対策協議会

川西昌弘

【目的】TCS直後にCTCを施行し,その有用性について検討した。

【方法】800例にポリープ切除等の処置を伴うTCS直後にCTCを行い,その後に2回目のTCSを129例に行った。

CTCはVirtualEndoscopy(VE),AirImage(AI),Multi-PlanarReformation(MPR)で評価した。

【結果】不完全TCSに対しては盲端となった結腸をVEにて観察し,AIにより挿入困難の原因を明らかにでき

る。また,TCSにて見逃された病変(6㎜以上)の発見も可能であり,早期の再検査を施行できる。手術適応

例はその病変の位置,範囲,転移の有無だけでなく,3D-CTにより血管系の把握も可能である。また,その

他の腹部病変の発見や内臓脂肪測定など行える。

【結語】TCS直後にCTCを行うことは検査の前処置を1回ですませることが出来るだけでなく,より多くの情

報を得ることが出来る。

―15―

7  胃石に対してコーラ溶解療法が有用であった1例

広島赤十字・原爆病院 消化器内科

宮本明香,羽田 裕,稲垣克哲,後藤久美子,本田洋士,坂野文香,金尾浩幸,齋 宏,毛利律生,

井上基樹,高木慎太郎,森 奈美,久留島仁,岡信秀治,辻 恵二,松本能里,古川善也

症例は68歳,男性。2017年1月コーヒー残渣様吐物とタール便を認め近医受診し,消化管出血の疑いで当院

へ転院となった。内視鏡検査にて胃体上部小弯の胃潰瘍(A2stage)と7㎝大の胃石を認めた。鰐口鉗子やス

ネアを用いて内視鏡的砕石術を施行し,翌日再検するも胃石の大部分は残存していた。再度砕石術を試みる

も胃石の中心部には硬い部分があり全ての破砕は困難であったため,コーラによる胃石溶解療法を行う方針

とした。患者は糖尿病性腎不全による透析中で飲水制限があったため,糖分が少ないペプシコーラSTRONG

ZERO490ml/日を4日間経口投与した。コーラ服用後の内視鏡再検では,鉗子で容易に破砕できネットにて

ほぼすべての胃石を回収することができた。糖尿病性腎不全患者に対して,比較的少量のコーラを使用した

溶解療法が有用であった1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

8  Helicobacter pylori(Hp)除菌治療23年間の記録と現在の最善の除菌方法

広島原爆障害対策協議会

川西昌弘

【目的】Hp除菌治療を1994年より行ってきた。その経過と,現在,最善と思われる検査方法や,除菌方法につ

いて述べる。

【対象と方法】23年間に3853人にHp除菌を行った。当初は,鏡検法,迅速ウレアーゼ検査,培養法を,現在は

主として内視鏡検査時に培養法(感受性検査を伴う)と鏡検法を,除菌判定は3か月後のUreabreathtest

(UBT)にて行っている。

【結果】Hpの薬剤耐性は近年,増加しており,特にCAM耐性菌の増加は著しい。そこで,感受性検査

(CAM,AMPC,MNZ,STFX)に基づく除菌薬選択,およびP-CAB使用による除菌方法を行うと95%以上の除菌

率を得ることが可能である。また,除菌判定は3か月後を目安とすると,偽陰性,偽陽性が減少する。

【結語】Hpは細菌であり,その治療方法の決定には抗生剤感受性の結果に基づくことが重要である。

―16―

9  心房細動に対するアブレーション治療後に発症した急性麻痺性胃拡張の1例

県立広島病院 内視鏡内科

白根佑樹,平本智樹,友清せらみ,花田麻衣子,東山 真,平賀裕子,渡邉千之,隅岡正昭

県立広島病院 消化器内科

大谷里奈,佐伯 翔,小道大輔,佐々木民人,北本幹也,山田博康

症例は70歳代男性。主訴は腹部膨満感。心房細動のためアブレーション治療を受け,術後3日で退院となっ

た。術後5日から腹部膨満感・経口摂取不良が出現。近医での腹部XPで胃拡張を指摘され当科入院となった。

腹部USとCTでは,胃が著明に拡張し内容物が多量に貯留していた。また,USでは胃の蠕動運動が消失して

いた。EGDでは胃内に多量の食物残渣を認めるのみであった。アブレーション合併症による急性麻痺性胃拡

張と診断した。絶食・補液による保存的加療を開始し,術後10日から徐々に症状は改善し退院となった。術後

80日のUSでは胃の拡張はなく,蠕動運動も改善していることを確認した。急性麻痺性胃拡張は,心房細動に

対するアブレーションにおける左心房から食道周囲合併症の一つで,過去の報告では発生率は1.1%とされ比

較的稀である。アブレーション治療後に発症した急性麻痺性胃拡張を経験したので,文献的考察を加えて報

告する。

10  全身痛・下痢で発病した好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の1例

広島記念病院 内科

安藤雄和,隅井雅晴,山本隆一,阿座上隆広,田村忠正,木村 茂,山田 朗,城戸聡一郎,江口紀章

広島修道大学 人文学部

嶋本文雄

症例は73歳男性,気管支喘息の治療中。1ヶ月前から全身の筋肉痛,関節痛あり。数日前から下痢症状が出

現し近医を受診し,著明な好酸球増加を認めたため当院紹介となった。初診時,全身の筋肉および諸関節に

疼痛を認め,筋力低下,両手足先の異常感覚,知覚低下を認めた。また,四肢,腹部に紫斑が散在していた。

血液検査で好酸球48%,血清IgE10735IU/mlと上昇を認めたがMPO-ANCAは陰性だった。入院後に施行し

た皮膚生検,消化管生検のうち,大腸生検組織に好酸球浸潤肉芽腫性変化を伴う壊死性血管炎の所見を認め

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症と診断した。prednisolone60mg/日とcyclophosphamidehydrate50mg/日に

よる治療を開始し,紫斑,疼痛,下痢症状は改善した。今回,我々は全身痛,下痢で発病した好酸球性肉芽

腫症の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

―17―

11  食道癌術前治療症例における脈管侵襲の予後因子としての意義

広島大学原爆放射線医科学研究所 腫瘍外科

伊富貴雄太,浜井洋一,恵美 学,古川高意,岡田守人

方法:術前治療の後に完全切除を施行し得た食道扁平上皮癌177例中,病理学的完全奏功となった52例を除外

した125例を対象とした。VIの有無及び他の病理学的因子と無病再発期間(DFS)の関連性を評価した。

結果:VI陽性は63例に認め,陽性例は陰性例に比べ有意に予後不良であった(5年DFS率,VI(+)群23%vsVI

(-)群58%:p<0.001)。VIに他の病理因子を加えてDFSに対する多変量解析を行うと,VI(HR=1.39:p=0.24)

は予後不良傾向はあるが有意差は認めなかった。pT(HR=2.2:p=0.002),pN(HR=3.5:p<0.001)は独立した

予後因子であった。リンパ節転移陰性例のみではVIは有意な予後因子であった(5年DFS率47%vs79%:

p=0.042)。

結語:術前治療を施行した食道扁平上皮癌において特にリンパ節転移陰性例にVIは予後因子となり得る。

12  胃上部の早期胃癌に対する腹腔鏡下噴門側胃切除術(観音開き法再建)

   ―術後QOL向上を目指して―

広島大学病院 消化器・移植外科

堀田龍一,田邊和照,佐伯吉弘,山本悠司,竹原寛樹,大段秀樹

胃上部に存在し,胃を1/2以上温存可能な早期胃癌は,噴門側胃切除術の良い適応である。噴門側胃切除術

は,胃全摘術と比べ,術後の体重減少の軽減やQOLが向上する考えられており,機能温存の面で有用な術式

であるが,術後の逆流性食道炎が問題となる。当科では2015年3月より逆流性食道炎発生の低下を目指し観音

開き法再建を行っており,14例に施行した。術後1年目に逆流性食道炎を1例認めたが,PPI投与にて軽快した。

その他の症例では逆流性食道炎は認めていない。術後6か月でのPGSAS-37食道逆流スコア(1.8±1.1)は,胃

全摘症例(2.1±1.1)と比較し,低い傾向にあり自覚症状も向上していた。体重減少率も胃全摘術と比べ,有

意に低かった(7.9%±6.0vs14.6%±5.1)(p<0.05)。腹腔鏡下観音開き法再建は強力な逆流防止機構により,

逆流性食道炎の発症を減少させ,術後のQOL改善につながる。

―18―

13  下部直腸癌に対する術後排便機能・QOLを考慮した術式の検討

広島大学病院 消化器・移植外科

河内雅年,惠木浩之,安達智洋,向井正一朗,矢野琢也,佐田春樹,田口和浩,寿美裕介,中島一記,

大段秀樹

広島大学病院 医学教育センター

服部 稔

川堀病院外科

川堀勝史

【はじめに】下部直腸癌に対する内肛門括約筋合併切除術(ISR)は次第に普及してきたが,術後排便障害によ

るQOL低下が問題となっている。

【目的】ISR適応症例に対して腹腔内からできるだけ肛門管内まで剥離して切離・器械吻合する術式をmodifiedUltraLow

AnteriorResection(mULAR)とし,この術式が術後排便障害を軽減できるという仮説を立て検証することとした。

【対象と方法】2008年から2014年までに下部直腸癌に対して肛門温存術を行った35例を後ろ向きに検討した。

検討内容は,排便機能(肛門内圧検査,Wexnerscore),QOL(EORTCQLQ-C30)。

【結果】mULARとISRの吻合部の高さに統計学的な差がない背景のなかで,mULARの排便機能やQOLはISR

に対して有意に良好な成績であった。

【結論】肛門温存手術が厳しいISR適応症例に対して,肛門管内まで剥離を進めmULARを行うことが術後の排便機

能やQOLを改善する可能性があることが示唆された。またこの術式は腹腔鏡下手術だからこそできる術式でもある。

14  便失禁に対する新規治療法:仙骨神経刺激療法の有用性

広島大学大学院 応用生命科学部門外科学

渡谷祐介,大毛宏喜,嶋田徳光,矢野雷太,峠越宏幸,黒尾優太,北川浩樹,岡本暢行,繁本憲文,

上神慎之介,上村健一郎,村上義昭,末田泰二郎

はじめに:仙骨神経刺激療法(SacralNeuromoduration,SNM)は,排泄に関係する仙骨神経に持続的電気刺

激を与え便失禁症状の改善を図る新規治療法で,2014年4月より本邦でも施行可能となった。当科初回施行例

の経験よりSNMの有用性を検討した。

症例:60歳代,女性,6か月前よりほぼ毎日切迫性便失禁が出現し,当科を紹介受診した。既往歴に糖尿病,

高血圧症あり,妊娠歴は3経妊3経産ですべて経膣分娩であった。消化管精査で器質的疾患なく,薬物療法,

骨盤底筋収縮訓練は無効であったため,SNMを施行した。2期分割手術で刺激リードおよび埋め込み型刺激

装置を留置し,周術期合併症なく,便失禁は術前18回/週から術後0回/週と著効した。

結語:SNMは各種保存的治療が奏功しない便失禁に対し効果が期待でき,その低侵襲性,可逆性より今後外

科的治療の第一選択となりうると考えられた。

―19―

15  ステロイド治療抵抗性で肝不全が進行していった自己免疫性肝炎(AIH)の1例

市立三次中央病院 消化器内科

田村陽介,児玉英章,川上源太,永井健太,趙 成大,濱田敏秀,中西敏夫

【症例】60歳代女性。

【経過】201X年9月末に鼠経ヘルニアの術前検査にて肝機能異常を指摘され当科紹介となった。受診時の血液

検査では黄疸を伴う肝障害を認めたが,ウイルス検査,自己抗体検査はいずれも陰性であった。腹部CTでは

急性肝炎に矛盾しない所見,肝生検で中等度のリンパ球・形質細胞浸潤,またロゼット様の所見を認めAIHと

診断した。診断後PSLを開始して漸減するも肝機能低下したままで,腹部エコー上で徐々に肝萎縮が顕著に

なっていった。そこで,ステロイドパルス療法,さらに免疫抑制剤を投与するも肝機能改善なく,Child-

Pugh12点C,MELDscore19点の時点で肝移植の適応と判断した。しかし,ドナー候補が不適と診断され

て以後は対症療法が中心となり,次第に全身状態は増悪していって永眠された。

【結語】ステロイド治療抵抗性で肝不全が進行していった貴重なAIH症例を経験した。

16  当院で経験したE型急性肝炎の3例

広島赤十字・原爆病院 臨床研修部

藤田陸登

広島赤十字・原爆病院 消化器内科

高木慎太郎,辻 恵二,宮本明香,本田洋士,齋 宏,金尾浩幸,坂野文香,毛利律生,井上基樹,

森 奈美,久留島仁,岡信秀治,松本能里,田利 晶,古川善也

なかむら内科クリニック

中村利夫

急性肝炎の原因として近年,E型肝炎ウイルス(HEV)が増えている。症例1 26歳男性。3週間前にインド

へ渡航。儀式で川の水や羊の生血摂取。発熱,吐き気,倦怠感で発症。症例2 68歳男性。焼肉はよく食して

いた。原発性胆汁性肝硬変で経過観察中,発熱で発症。症例3 28歳男性。受診1週間前(発症前日)に豚生レ

バーを摂取した。濃尿,食欲低下,感冒様症状で発症。いずれの症例も重篤化せず軽快し後日IgA-HEV陽性

と判明した。Genotypeは,症例1は1aでネパールに多い株。症例2は3bで本邦固有の株。症例3は3aで米国型

に分類されるが特定できない株であった。1例は海外での感染であったが,2例は広島県内での感染で,いず

れも獣肉摂取による感染が疑われたが感染経路の特定はできなかった。今後,E型急性肝炎の発生状況把握

と予防のために感染源の調査も必要と考えられた。

―20―

17  SGLT2阻害薬の肝機能パラメータに与える影響と体組成変化の検討

広島大学病院 消化器・代謝内科

中原隆志,寺岡雄吏,稲垣有希,盛生 慶,小林知樹,長沖祐子,河岡友和,柘植雅貴,平松 憲,

今村道雄,川上由育,相方 浩,茶山一彰

広島大学病院 糖尿病代謝内科

米田真康

広島大学病院 循環器内科

中野由紀子

【目的】SGLT2阻害薬の有用症例の検討とNAFLD患者を対象として体組成変化を検討する。

【方法】①対象は,SGLT2阻害薬を投与した2型糖尿病患者83例。各種パラメータと体重の変化を経時的に観

察し,薬剤の有効性に与える影響について検討。②2型DM合併NALFD13症例を対象とし,Inbody720を用

いて体組成の変化について検証した。

【結果】①体重は-1.8kg低下し,HbA1c,FBSのみならず,AST,ALT値も改善した。治療前のHBA1c,FBS,

肝胆道系酵素,TG高値症例でより高い血糖低下作用を認めた。ALT異常症例を対象としたサブ解析ではより

顕著な肝胆道系酵素,HbA1c改善を認めた。②平均3.3kgの体重減少を認めその成分の多くは体脂肪であった。

【考察】SGLT2阻害薬は良好な血糖降下作用を認め,特に肝機能異常や高TG血症症例によい適応と考えられた。

18  嘔吐,下痢が初発症状であったSFTSの1例

広島市立安佐市民病院 消化器内科

小川裕太郎,村上英介,脇 浩司,玉理太覚,下原康嗣,朝山直樹,青山大輝,行武正伸,向井伸一,

桑原健一,永田信二

広島市立安佐市民病院 内視鏡内科

福本 晃,上田裕之

【背景】重症熱性血小板減少症候群(以下SFTS)は,予後不良のマダニ媒介性感染症である。

【症例】70歳代,女性。入院4日前より悪心,嘔吐,下痢を認めた。近医で肝機能異常を指摘され,精査加療

目的で入院した。血液検査で肝胆道系酵素の上昇と血球減少,凝固系亢進を認めた。補液と抗菌薬投与で治

療を行うも,入院3日目にLDH,CPKの上昇を認め,意識レベルが低下した。病勢の改善なく,多臓器不全

により入院5日目に永眠した。死亡同日に提出した血清からSFTS抗体陽性を認めた。

【考察】SFTSの病原体であるSFTSウイルスは2011年に中国で同定され,2013年に本邦での感染が報告され

た。SFTSには特異的な治療法がなく,当院で経験したSFTSの4例のうち2例が生存,2例が死亡している。

【結語】原因不明の消化器症状・肝障害・血球減少を呈する重症感染症はSFTSの鑑別を念頭に置く必要がある。

―21―

19  膵石症に対する治療ストラテジーと成績

広島大学病院 消化器・代謝内科

関藤 剛,芹川正浩,石井康隆,清水晃典,壷井智史,栗原啓介,辰川裕美子,宮木英輔,河村良太,

津島 健,齋藤裕平,中村真也,茶山一彰

過去10年間に当院で内科的治療を行った膵石症60例を対象とし,治療成績及び再発因子の検討を行った。

対象の内訳は男性52例,女性8例で,有症状例は39例(65%)だった。結石径は平均6.6㎜(2.5〜10㎜)で,内

科的治療の内訳は,内視鏡的採石術単独が6例(10%),ESWL単独が4例(6.7%),内視鏡治療とESWLの併用

が50例(83.3%)と最も多かった。完全截石率は66.7%であり,治療により除痛が得られた症例は92.3%だった。

完全截石後6か月以上経過観察可能であった31例で,再発率および再発に関わる因子を検討したところ,再発

率は48.4%で,再発までの期間中央値は404日だった。再発因子については飲酒継続と主膵管狭窄が有意な独

立予測因子だった。膵石症に対するESWLを併用した内視鏡治療は有用であり,再発予防には断酒が重要で

あると考えられた。

20  当科における膵嚢胞経過観察例の検討

呉医療センタ−・中国がんセンター 消化器内科

山口 厚,宮迫由季,高砂 健,隅田ゆき,西村朋之,飯尾澄夫,今川弘樹,山口敏紀,桑井寿雄,

河野博孝,高野弘嗣

IPMNへの併存膵癌早期発見のため定期的な画像検査が推奨されている。当科における膵嚢胞観察例を検

討した。2014年12月までに当科を受診し,年に1度以上の検査で1年以上経過観察した354例(年齢中央値71歳

(31−92,M:F=135:219,観察期間中央値50ヶ月(12−148))を対象とした。半年毎に,MRCP3回,膵CT1

回を基本した。IPMN:膵嚢胞:IPMN+膵嚢胞:SCN=227:79:43:5。嚢胞径中央値14.7㎜(2-68),主膵管

径中央値2.9㎜(1-13.2)。嚢胞自体の変化で4例が切除されたが全例良性であった(IPMA3,SCN1)。7例(年

率0.32%)に通常型膵癌の合併を認めた。すべてIPMN保持例で5例が糖尿病保持例であった。全死亡14例中4

例が膵癌死であった。膵嚢胞観察例では併存膵癌発症への留意が必要であり早期発見にはEUS併用も必要と

考えた。

―22―

21  限局性膵管狭窄の1例

県立広島病院 内視鏡内科

友清せらみ,花田麻衣子,東山 真,平本智樹,平賀裕子,渡邉千之,隅岡正昭

県立広島病院 消化器内科

小道大輔,佐々木民人,大谷里奈,佐伯 翔,北本幹也,山田博康

県立広島病院 消化器・乳腺・移植外科

末岡智志,大下彰彦,眞次康弘

県立広島病院 臨床研究検査科

倉岡正嗣,西阪 隆

症例は82歳女性。糖尿病,脂質異常症に対して近医でフォローされていた。血液検査でリパーゼ高値を認

めたため,精査目的にMRCPを施行した。膵体部膵管に狭窄があり,それより尾側膵管の拡張を認めたため,

当科を紹介受診した。EUSでは膵体部に10㎜程度の膵管狭窄があり,それより尾側の膵管は5.6㎜と拡張して

いたが,狭窄部には明らかな腫瘤性病変は認めなかった。ERCPではEUSで膵管狭窄を認めた部位に一致し

て膵管の高度狭窄を認めた。膵液細胞診はClassⅡであったが,微小膵癌の可能性が否定できず,手術の方針

とした。術後病理では主膵管の狭窄部に微小浸潤癌があり,それより尾側の膵管上皮には11㎝に渡って

PanIN2-3の所見であった.小膵癌の自然史を考える上で非常に貴重な症例を経験したため,文献的考察を含

めて報告する。

22  膵癌の病理診断におけるENPDとEUS-FNAの成績

JA尾道総合病院 消化器内科

南 智之,花田敬士,天野 始,平野巨通,小野川靖二,宍戸孝好,片村嘉男,中土井鋼一,福原基充,

日野文明

膵癌の病理診断におけるENPDとEUS-FNAの当院での成績を示す。2007年1月から2016年12月の期間,当

院にて膵癌と診断した349例を対象にENPD留置下複数回膵液細胞診(SPACE)とEUS-FNAの診断能を検討

した。SPACE症例は25例,Stage013例,Ⅰ6例,Ⅱ4例,Ⅲ1例,Ⅳ1例。EUS-FNA症例は326例,Stage

01例,Ⅰ13例,Ⅱ84例,Ⅲ52例,Ⅳ176例。診断能は感度がSPACE92.0%,EUS-FNA91.1%であった。

また,EUS-FNAにより診断できず,SPACEにより癌の病理診断が可能であった例が2例存在した。膵癌の病

理診断においてSPACEとEUS-FNAはいずれも良好な成績であった。また,SPACEとEUS-FNAは膵癌の診

断において相補的な役割を果たし得る可能性が示唆された。

―23―

23  診断に苦慮した肝内胆管狭窄の一例

広島赤十字・原爆病院 臨床研修部

山下由美子

広島赤十字・原爆病院 第一消化器内科

斎 宏,井上基樹,古川善也

広島赤十字・原爆病院 検診部

松本能里

広島大学大学院 応用生命科学部門外科学

村上義昭

広島大学病院 病理診断科

有廣光司

20XX年6月に健診で肝機能障害を指摘。造影CTで右肝内胆管の軽度拡張と拡張した胆管の基部に弱い造影

効果を伴った領域を認めた。当科入院しERCを施行,B6を主体とした右肝内胆管の基部に狭窄を認めそこを

起点としたB6末梢胆管の拡張を認め右肝内胆管癌が疑われた。狭窄部の細胞診から悪性所見は認めず多くの

ランブル鞭毛虫が指摘された。FDG-PETCTではSUVmax3.7→3.1と炎症性パターンを呈した。患者にイノ

シシの生肉の摂取歴があったため,ランブル鞭毛虫感染による炎症性胆管狭窄を疑った。同年9月よりメトロ

ニダゾールによる内服加療を開始したが肝胆道系酵素は改善せずCTでは右肝内胆管拡張の増悪を認めた。

ERC再検査では狭窄の範囲は増悪し細胞診からadenocarcinomaを指摘された。同年12月外科的切除が施行さ

れた。術後病理では左肝内胆管まで浸潤した肝門部胆管癌と診断された。

24  膵神経内分泌癌(小細胞癌)に対してCBDCA+VP-16併用療法が奏功した1例

中国労災病院 研修医

高畑明寛

中国労災病院 消化器内科

毛利輝生,長崎直子,堀内敦史,門田紘樹,菊川千尋,実綿倫宏,北村正輔,久賀祥男,守屋 尚,

大屋敏秀

症例は60歳代,男性。当院受診2週間前より軟便,排便回数増加が続き前医受診。画像検査で肝腫瘤,腹水

認め当院紹介となる。造影CTで膵体部中心に14㎝大の造影効果乏しい不均一な腫瘤,多発肝転移,腹腔内リ

ンパ節転移,腹膜播種,肺転移を認めた。入院後,組織診断のためEUS-FNAを施行した。腫瘍細胞は小型で

N/C比は高く,裸核状であった。免疫染色ではクロモグラニンA陰性,シナプトフィジン陽性,Ki-67は90%

であった。以上より,膵神経内分泌癌(小細胞癌):pNECc-stageⅣT4N1M1(ENETS)と診断した。第15病

日よりCBDCA+VP-16併用療法開始。1コース後腹水は減少し,腫瘍マーカーも低下した。3コース後CT施

行し,原発巣・転移巣ともに縮小を認めた。腫瘍縮小効果はPRと判定し現在化学療法継続中である。pNEC(小

細胞癌)は稀な疾患であり,若干の文献的考察を加えて報告する。

―24―

25  BorderlineResectable膵癌に対する術前化学療法の成績と新たな治療戦略確立への取り組み

広島大学病院 応用生命科学部門外科

岡田健司郎,近藤 成,村上義昭,上村健一郎,中川直哉,末田泰二郎

呉医療センター 外科

首藤 毅

広島記念病院 外科

橋本泰司

【目的】当科におけるBR-A膵癌に対する、術前Gemcitabine+S1(GS)化学療法の長期成績を報告するととも

に、現在進行中の臨床試験であるGemcitabine+nab-Paclitaxel+S1(GAS)術前化学療法のPhase Iの結果に

ついて報告する。

【対象】2002〜2015年に当科にて治療を行ったBR-A膵癌77例と、2015〜2017年にGAS療法PhaseIに登録され

た16例。

【結果】術前GS施行群のMSTは27.1か月であり、手術先行群の11.6か月に比べて有意に予後良好であった

(P=0.003)。また、多変量解析において、術前GS施行は独立した予後因子であった(HR:0.48,P=0.01)。術

前GAS療法の推奨用量はGEM:1000mg/m2、nab-Paclitaxel:125mg/m2、S1:60〜100mg(Day1-7)/biweekly

であった。

―25―

協 賛 一 覧

ボストン・サイエンティフィックジャパン株式会社

大塚製薬株式会社

武田薬品工業株式会社

EAファーマ株式会社

アストラゼネカ株式会社

MSD株式会社

ゼリア新薬工業株式会社

ブリストル・マイヤーズスクイブ株式会社

あすか製薬株式会社

杏林製薬株式会社

大鵬薬品工業株式会社

帝人ファーマ株式会社

富士フイルムメディカル株式会社

堀井薬品工業株式会社

持田製薬株式会社

株式会社ツムラ

ご協賛いただきました各社に深く感謝の意を表します。

第119回広島消化器病研究会

2017 年 4 月 8 日(土) 12:30より

広仁会館 大会議室

広島市南区霞1-2-3

(広島大学霞キャンパス)

Hiroshima Gastroenterological Association (HGA)

広島消化器病研究会

事務局: 〒734-8551 広島市南区霞1-2-3 広島大学病院 内視鏡診療科 TEL 082-257-5538 FAX 082-253-2930 E-mail : hga@hiroshima-u.ac.jp http : //home.hiroshima-u.ac.jp/hga14/