c 藤s 青 井a 野 j 社長 特別

2
── 藤井理事はPSQ認証制度を3年前に企画され たとうかがっています。この制度を開始したきっ かけと狙いを教えてください。 藤井 パッケージソフトの品質を見える化した かったのです。ソフトのクオリティは、目に見え ず、メーカーは高品質なソフトをつくっても、そ れをユーザーに理解してもらいにくい。一方で、 ユーザーはソフトの品質を測る物差しがない。そ んな状況下、公的機関が公平な審査をして、条 件を満たせばお墨付きを与える。そんな制度が、 日本のソフト産業を底上げするためには、絶対に 必要でした。 青野 藤井さんがおっしゃる通り、ソフト品質へ のユーザーの理解は、曖昧な部分があります。ユ ーザーによって基準が違っていて、同じ品質で も、或るユーザーはクオリティが高いと言うけれ ども、別のユーザーは低いと不満を漏らす場合が ある。或る不具合が海外のソフトと日本のソフト で同じように発生しても、ユーザーは海外製のソ フトだと「海外製品だから仕方ない」と咎めませ んが、日本のソフトなら「日本製なのにどういう ことだ」と怒るというようなケースも多い。ユー ザーによって基準が違うことにもどかしさを感じ ていたので、CSAJという中立的な団体が公正な 審査・認証するPSQ認証制度には大賛成でした。 ── サイボウズは、8月27日に大規模向けグルー プウェア「サイボウズ ガルーン」でPSQ認証を取 得されました。効果は現れていますか? 青野 二つメリットがありました。一つはPR効 果。ユーザーやパートナーに伝わりにくかった品 質の高さを、PSQ認証で容易にアピールするこ とができています。サイボウズ ガルーンは、品 質に厳しい大規模ユーザーを対象にしたソフトで すから、PSQ認証で高品質を訴えやすく、受注 につながりやすくなりました。 もう一つは開発体制の強化です。PSQ認証を 取得するにあたって、社内の開発管理体制が強 化されました。PSQ認証を維持するためには、 定期的にチェックを受ける必要があり、取得時だ けでなくその後も強固な開発体制を保たなけれ ばなりません。おかげさまで、サイボウズは多く のユーザーを獲得できています。それは大変あり がたいことですが、一方で、高いシェアが驕りを 生み、品質を下げてしまうおそれがあります。そ うした事態を招かないために、社外の機関が外 圧として品質を定期的にチェックしてくれるのは 大変ありがたいことです。 ── PSQ認証はまだ発展の段階にあって、影響力 をさらに高める活動をお考えだと聞いています。 藤井 二つあって、一つはクラウドサービスを網 羅すること。もう一つは、海外でも影響力をもつ 認証制度にすることです。 今のIT産業を考えれば、パッケージソフトだ けでなく、クラウドも範疇に入れるべきだと認識 しています。早ければ来年度にクラウドも評価・ 認証対象に入れられるようにしたいと思っていま す。今、その準備を急ピッチで進めています。 また、海外にある同様の認証制度と相互関係 をつくる準備を進めていきます。PSQ認証制度 は国際規格「ISO/IEC 25051:2006」に準拠 していますから、海外に同じような認証制度があ れば、連携しやすい。韓国の「Good Software (GS)認証制度」とは相互承認の話を進めてい て、カナダやフランスとも可能性があります。海 外の認証制度と相互関係を築くことができた場 合、PSQ認証を取得すれば日本だけでなく、そ の国でも同じように高品質をアピールすることが できるようになるでしょう。そうなれば、日本の パッケージソフトメーカーの海外進出をバックア ップできます。 青野 どちらも非常にありがたいお話です。私た ちはクラウドにも海外展開にも積極的で、PSQ 認証がそのように進化すれば、取得企業はもっ とマーケティング力と開発力を強化することにつ ながると思います。 藤井 ソフトメーカーのなかには、サイボウズの ような大手だけでなく、若いベンチャーも多く存 在します。ベンチャーは大手に比べて信用力が 弱いですから、PSQ認証制度を活用してビジネ スに生かしてほしいと思います。そのために、私 たちはもっとユーザーにPSQ認証を知ってもらう 活動を進めますし、PSQ認証の影響力が高まる ように努めていきます。 Special Issue BCN 2013年6月、パッケージソフ トの品質を評価・認証する制 度「パッケージソフトウェア品 質(PSQ)認証」制度がスタートした。ソフト メーカーは、PSQ認証を取得することで高品 質をアピールでき、ユーザー企業やIT販社は 認証の有無でソフトの品質をチェックするこ とができる。すでに9社・11製品がPSQ認証 を取得した。日本にとって初のパッケージソ フト認証制度を企画したのは、 一般社団法人のコンピュータソ フトウェア協会(CSAJ)で理事 (パッケージソフトウェア品質認証制度委員会 委員長)を務める藤井洋一氏(日本ナレッジ社 長)。生みの親である藤井氏と、PSQ認証の 第1号取得企業であるサイボウズの青野慶久社 長との対談によって、PSQ認証の存在意義や 効果を浮き彫りにする。 コンピュータソフトウェア協会 パッケージソフトウェア品質認証制度特集 CSAJphoto by Takao Tsushima ソフト産業の発展に貢献する 品質の見える化に貢献する 今後はクラウドも認証対象に 「PSQ認証」の価値

Upload: others

Post on 04-Feb-2022

1 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

──藤井理事はPSQ認証制度を3年前に企画され

たとうかがっています。この制度を開始したきっ

かけと狙いを教えてください。

藤井 パッケージソフトの品質を見える化した

かったのです。ソフトのクオリティは、目に見え

ず、メーカーは高品質なソフトをつくっても、そ

れをユーザーに理解してもらいにくい。一方で、

ユーザーはソフトの品質を測る物差しがない。そ

んな状況下、公的機関が公平な審査をして、条

件を満たせばお墨付きを与える。そんな制度が、

日本のソフト産業を底上げするためには、絶対に

必要でした。

青野 藤井さんがおっしゃる通り、ソフト品質へ

のユーザーの理解は、曖昧な部分があります。ユ

ーザーによって基準が違っていて、同じ品質で

も、或るユーザーはクオリティが高いと言うけれ

ども、別のユーザーは低いと不満を漏らす場合が

ある。或る不具合が海外のソフトと日本のソフト

で同じように発生しても、ユーザーは海外製のソ

フトだと「海外製品だから仕方ない」と咎めませ

んが、日本のソフトなら「日本製なのにどういう

ことだ」と怒るというようなケースも多い。ユー

ザーによって基準が違うことにもどかしさを感じ

ていたので、CSAJという中立的な団体が公正な

審査・認証するPSQ認証制度には大賛成でした。

──サイボウズは、8月27日に大規模向けグルー

プウェア「サイボウズ ガルーン」でPSQ認証を取

得されました。効果は現れていますか?

青野 二つメリットがありました。一つはPR効

果。ユーザーやパートナーに伝わりにくかった品

質の高さを、PSQ認証で容易にアピールするこ

とができています。サイボウズ ガルーンは、品

質に厳しい大規模ユーザーを対象にしたソフトで

すから、PSQ認証で高品質を訴えやすく、受注

につながりやすくなりました。

 もう一つは開発体制の強化です。PSQ認証を

取得するにあたって、社内の開発管理体制が強

化されました。PSQ認証を維持するためには、

定期的にチェックを受ける必要があり、取得時だ

けでなくその後も強固な開発体制を保たなけれ

ばなりません。おかげさまで、サイボウズは多く

のユーザーを獲得できています。それは大変あり

がたいことですが、一方で、高いシェアが驕りを

生み、品質を下げてしまうおそれがあります。そ

うした事態を招かないために、社外の機関が外

圧として品質を定期的にチェックしてくれるのは

大変ありがたいことです。

──PSQ認証はまだ発展の段階にあって、影響力

をさらに高める活動をお考えだと聞いています。

藤井 二つあって、一つはクラウドサービスを網

羅すること。もう一つは、海外でも影響力をもつ

認証制度にすることです。

 今のIT産業を考えれば、パッケージソフトだ

けでなく、クラウドも範疇に入れるべきだと認識

しています。早ければ来年度にクラウドも評価・

認証対象に入れられるようにしたいと思っていま

す。今、その準備を急ピッチで進めています。

 また、海外にある同様の認証制度と相互関係

をつくる準備を進めていきます。PSQ認証制度

は国際規格「ISO/IEC 25051:2006」に準拠

していますから、海外に同じような認証制度があ

れば、連携しやすい。韓国の「Good Software

(GS)認証制度」とは相互承認の話を進めてい

て、カナダやフランスとも可能性があります。海

外の認証制度と相互関係を築くことができた場

合、PSQ認証を取得すれば日本だけでなく、そ

の国でも同じように高品質をアピールすることが

できるようになるでしょう。そうなれば、日本の

パッケージソフトメーカーの海外進出をバックア

ップできます。

青野 どちらも非常にありがたいお話です。私た

ちはクラウドにも海外展開にも積極的で、PSQ

認証がそのように進化すれば、取得企業はもっ

とマーケティング力と開発力を強化することにつ

ながると思います。

藤井 ソフトメーカーのなかには、サイボウズの

ような大手だけでなく、若いベンチャーも多く存

在します。ベンチャーは大手に比べて信用力が

弱いですから、PSQ認証制度を活用してビジネ

スに生かしてほしいと思います。そのために、私

たちはもっとユーザーにPSQ認証を知ってもらう

活動を進めますし、PSQ認証の影響力が高まる

ように努めていきます。

Special IssueBCN

1 校

 2013年6月、パッケージソフトの品質を評価・認証する制度「パッケージソフトウェア品質(PSQ)認証」制度がスタートした。ソフトメーカーは、PSQ認証を取得することで高品質をアピールでき、ユーザー企業やIT販社は認証の有無でソフトの品質をチェックすることができる。すでに9社・11製品がPSQ認証を取得した。日本にとって初のパッケージソ

フト認証制度を企画したのは、一般社団法人のコンピュータソフトウェア協会(CSAJ)で理事

(パッケージソフトウェア品質認証制度委員会委員長)を務める藤井洋一氏(日本ナレッジ社長)。生みの親である藤井氏と、PSQ認証の第1号取得企業であるサイボウズの青野慶久社長との対談によって、PSQ認証の存在意義や効果を浮き彫りにする。

コンピュータソフトウェア協会

特別

対談

パッケージソフトウェア品質認証制度特集

CSAJ

 藤井理事

photo by Takao Tsushima

サイボウズ

青野社長

ソフト産業の発展に貢献する

品質の見える化に貢献する

今後はクラウドも認証対象に

「PSQ認証」の価値

(この特集記事は、週刊BCN2013年12月16日発行vol.1510に掲載したものです)

Special IssueBCN

1校

 パッケージソフトウェアの説明資料とソフトウェアの機能が一致していることを確認・認証する国際規格に準拠した認証プログラムとして、「PSQ認証制度」がある。CSAJが推進する制度で、日本製品の品質の高さを改めて世界中に訴求することを目的としている。認証を受けたソフトであれば、専門知識に乏しいユーザーでも、カタログに記載された製品の優位性を信頼し、安心して購入することができる。一方、パッケージソフト業界にとっては、“品質の見える化”への動きを触発することによって、業界全体の品質向上と活性化を期待することができる。ここでは、すでに認証を受けた主要ソフトメーカーの製品を紹介しよう。PSQ認証制度で認められた各社の製品を紹介

オービックビジネスコンサルタント(OBC)

高品質で高機能なソフトウェアがずらり

 「勘定奉行V ERP8」は、中堅企業・成長企業向けの会計パッケージだ。高度に標準化された機能を備え、制度会計から債権債務管理・連結決算・管理会計・BI連携まで幅広い会計業務の統一管理を実現する。内部統制・IFRSにも対応している。グループ導入モデルでは基盤統一やシェアード運用実績も豊富である。 勘定奉行i8は、制度会計だけでなく管理視点を実現できる成長性の高い会計パッケージ。細分化された会計データを迅速に処理する入力・検索機能を搭載し、会計業務の時間短縮を実現でき、Office連携機能で情報活用を可能にする。

勘定奉行V ERP8(勘定奉行i8) Ver.2.06

■対応OS:Windows 8.1 / 8 / 7 /Vista(Service Pack 2以降)/XP(Service Pack 3以降)、Windows SQL Server 2008 R2(Service Pack 2以降)/ 2008(Service Pack 3以降)■価格(例):勘定奉行i8 for Windows with SQL Server 2008 R2 Type NP 3ライセンスの場合が114万円〜(税抜)

ピー・シー・エー(PCA)

 中堅・中小企業向けの給与計算システム「PCA給与X」は、初めて利用する方にも使いやすい操作性と、あらゆる企業の給与体系に適応する高機能を実現。企業の給与計算業務を飛躍的に向上させることができる。 月々の給与明細書の発行、振込業務はもちろん、労働条件通知書や社会保険の資格取得・喪失届の出力が可能になっており、給与・人事部門担当者の業務効率化を支援する。さらに、PCA給与Xに無償提供されるドキュメント管理システム「PCA eDOCX」と連携させることで、給与明細書のPDFファイルを支店や拠点などの遠隔地に配信することができるなど、従来の給与計算ソフトとは一線を画す先進のシステムである。

PCA給与X Ver.1.00 Rev.3.00

■対応OS:Windows 8.1/ 8 / 7 /Vista(Service Pack 2以降)/XP(Service Pack 3 以降)、Windows SQL Server 2012 / 2008 R2 / 2008(Service Pack 1 以降)■価格(例):PCA給与X システムBが25万円(税別)、PCA給与X EasyNetwork/with SQL 2CALが36万円(税別)

日本事務器

 右肩上がりの傾向が続いている通販市場。従来の通販専門事業者だけでなく、多くの企業が新たな販路として通販事業へ参入する流れが拡大している。 日本事務器では長年培ってきたノウハウをベースに、この通販事業に寄与するパッケージを提供している。通販パッケージ「CORE Plus NEO 通販」は、EC、電話などの受注経路を問わず、購入履歴・問合せ履歴などを“顧客カルテ”化することにより、個々の顧客に対する対応判断を実現し、攻めの経営を可能にする通販業務支援システムである。一方、与信管理機能などによって、リスク回避にも貢献している。 通販事業での業務運営を攻めと守りの視点からトータルにサポートする製品である。

CORE Plus NEO 通販 R1.00

■対応OS:Windows 7 Pro、Windows Server 2008 R2 SP1、Oracle 11g■価格:基本ライセンスが150万円(3CL込)

フォーラムエイト

 「土留め工の性能設計計算」は、土留め工の「斜め切ばり」「切ばり+アンカー併用工での両壁一体解析」「支保工撤去順序の自由化」などの構造モデルに対して、地盤の弾塑性挙動を考慮した土留め壁解析により設計を行うソフト。 「置換基礎の設計計算」は、擁壁、橋台に設置される置換基礎の安定計算、圧密沈下を計算し、設計を行うソフト。軟弱土を良質な土に置き換える置換え土工法、基礎地盤をコンクリートで置き換える置換えコンクリート工法をサポート。

土留め工の性能設計計算(弾塑性解析II+) Ver.1.0.2置換基礎の設計計算 Ver.2.0.2

■対応OS:Windows 8 / 7 /Vista/XP■価格:「土留め工の性能設計計算」が18万円(税別)、「置換基礎の設計計算」が10万円(税別)

日本ナレッジ

 「Power Steel(パワー・スチール)」は、大塚商会が販売する中堅・中小企業向け基幹業務ソフト「SMILE BS 2nd Edition 販売」を鋼材卸売業向けに特化させたテンプレートソフト。鋼材業界特有の商慣習や業界特性に対応し、出荷本数が400本超を誇る業種パッケージである。鋼材管理で必要な資材の数量・重量による在庫管理のほか、加工品振替、ロット管理など、詳細な原価管理・品質管理に対応したソリューションを提供。鋼材卸売業に求められる情報を統合化し、サービス力の向上とローコスト経営を強力にバックアップしている。

Power Steel 7.35

■対応OS:OSK社「SMILE BS 2nd Edition 販売」に依存します■価格:大塚商会 システムプロモーション部(03-5624-8523)までご相談ください

サイボウズ

 「サイボウズ ガルーン」は、高い拡張性を特徴とするエンタープライズ向けグループウェア。日々の業務に欠かせない会社の情報共有基盤としての役割はもちろん、部門や拠点間の垣根を越えたコミュニケーションを促進し、議論を深め、チームの力を最大限に引き出す機能性を備えている。発売から10年を経て、国内2700社、140万ユーザー以上の導入実績(2012年12月現在)をもっている。数万人規模でも安心して利用できるスケーラビリティの高さと、使い勝手のよさが多くのお客様から選ばれてきた理由だ。「ガルーン 3」には、ビジネスに不可欠なスケジュール、ポータル機能に加えて、ワークフローや組織横断型チームの成功を支援するスペース機能が標準で提供されている。また、日・英・中三か国語や多様なモバイルソリューションにも対応している。

サイボウズ ガルーン 3.7.0

ネクストウェアスピーディ・コール Version 1.0

東京システムハウスiOptMICS バージョン 1.1

■対応OS:サーバーOSはWindowsとLinuxで利用いただけ、サーバーマシン1台で5000名まで※利用いただけます。ウェブブラウザは活用頻度の高いInternet Explorer 6 〜 11はもちろん、最新のスマートフォンのiOS/Androidまでカバー。幅広い環境で快適に利用いただけます。※利用するアプリケーションや機種、データ量によって異なります■価格(例):基本ユーザーライセンスが60万円(50ユーザー)より。詳細はお問合せください。

OSKSMILE BS 2nd Edition 販売 Ver7.71SMILE BS 2nd Edition 会計 Ver7.71

PSQ認証制度に関するお問い合わせは一般社団法人コンピュータソフトウェア協会PSQ認証室

TEL: 03-3560-8452E-mail : [email protected]://www.psq-japan.com