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くりこみ群の方法による
因果律を保った相対論的流体方程式の導出と
新しいモーメント法の提案
富士フイルム 津村享佑
研究会「強相関量子多体系としてのハドロン・クォーク物質」
2012年9月15日(土)京都大学時計台国際交流ホール
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「QGPの小さな粘性」*の発見は、
相対論的な系における散逸過程、
さらには散逸過程を記述する方程式自体への関心**を促した。
7年ほど前から、国広先生と共同で、
ご自身の「くりこみ群/包絡線の方法」***に基づき、
相対論的な系において
運動学から流体方程式を基礎付ける研究を行ってきた。
・このプロジェクトのきっかけ
・最近の結果である
「因果律を保った相対論的流体方程式の導出、
および新しいモーメント法の提案」
本日の講演の内容
はじめに *T. Hirano and K. Tsuda, Phys. Rev. C 66 (2002), 054905.
M. Gyulassy and L. McLerran, Nucl. Phys. A 750 (2005), 30.
**P. Van and T. S. Biro, Eur. Phys. J ST 155 (2008),201.
A. Monnai and T. Hirano, Nucl.Phys. A847 (2010) 283-314
G.S.Denicol, T. Koide, and D.H.Rischke, Phys. Rev. Lett. 105 (2010) 162501
T. Osada, Phys. Rev. C85 (2012) 014906.
***T. Kunihiro, Prog. Theor. Phys. 94, 503 (1995); Errata:95,835 (1996);
T. Kunihiro, Jpn. J. Ind. Appl. Math. 14, 51 (1997);Prog. Theor. Phys. 97, 179 (1997).
S.-I. Ei, K. Fujii, and T. Kunihiro, Ann. of Phys. 280, 236 (2000).
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プロジェクトのきっかけ
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2005年D2の4月に富士フイルムへの入社を決めた。
国広先生から
「大学最後の一年間を使って一緒に共同研究をして、
論文を出すところまでやってみないか」 とおっしゃっていただいた。
最初頂いたテーマは
“full QCDでのスカラーメソンの質量計算”であり、
国広先生、松古さん、津村のコラボであった。
ミーティングのためのKEKへの出張の新幹線中で、
国広先生にくりこみ群(RG)法に興味があることを告げると、
「Hatta-Kunihiroの論文*にある
“ボルツマン方程式からナビエ・ストークス方程式”を出す節には
輸送係数の微視的表現を明示的に示しておらず、
まだ詰める余地がある。
興味があればやってみなさい。」 とおっしゃられた。
*Y. Hatta and T. Kunihiro, Ann. of Phys. 298, 24 (2002).
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そして7年がたった。
それからしばらくして、
国広先生へ「できました」と伝えたところ、とても喜ばれた。
この仕事は、 T. Kunihiro and K.T., J.Phys.A A39 (2006) 8089 の一部に
載せていただいた。
この後しばらく“full QCDでのスカラーメソンの質量計算”を続けたが、
とても半年でまとまる研究ではないことが分ってきた。
そして、私自身が上の仕事の相対論化である
”RG法による相対論的ボルツマン方程式から相対論的流体方程式の導出” に強い興味を持ったため、こちらを行うことにした。
2005年7月ごろ、プロジェクトスタート。
(半年間、国広先生、大西一聡さん、津村でコラボ、
その後、国広先生と津村でコラボ)
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因果律を保った相対論的流体方程式の導出、
および新しいモーメント法の提案
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相対論的流体方程式をボルツマン方程式から導出する
相対論的ボルツマン方程式:
衝突項(一体分関数についての非線形項) 一体分布関数
目的
世の中ではこの目的にモーメント法*を用いている
先行研究
*W. Israel and J. M. Stewart, Ann. of Phys. 118, 341(1979).
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1)一体分布関数が局所平衡分布の周りで揺らいでいる状況を想定し、
揺らぎの運動量依存性を手で与える。
モーメント法とは
局所平衡解分布:
揺らぎ:
散逸流の微視的表現
pの高々2次
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2)この一体分布関数をパラメトライズする
:温度、化学ポテンシャル、流速
の時空依存性は、
ボルツマン方程式から得られるモーメント方程式で決める。
0次:
1次:
2次:
モーメント法とは
:散逸流
連続の式
緩和方程式
連続の式と緩和方程式のセットが、相対論的流体方程式
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モーメント法は、 のp依存性の正しさを
理論的にチェックできる方法を持たない。
実際に、Denicol et al. は、
Israel-Stewart(IS)の課したp依存性を
修正する必要があることを、
・1+1次元の膨張過程
・衝突項における散乱断面積にp依存性なし
での数値シミュレーションで示した。
問題点
Denicol et al.
Israel-Stewart
G.S.Denicol, T. Koide, and D.H.Rischke, Phys. Rev. Lett. 105 (2010) 162501
これがモーメント法の限界
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RG法*に基づき、
相対論的ボルツマン方程式の解の漸近解析を行い、縮約を実行し、
相対論的ボルツマン方程式の低エネルギー有効理論として
相対論的流体方程式を導出する。
戦略
*T. Kunihiro, Prog. Theor. Phys. 94, 503 (1995); Errata:95,835 (1996);
T. Kunihiro, Jpn. J. Ind. Appl. Math. 14, 51 (1997);Prog. Theor. Phys. 97, 179 (1997).
S.-I. Ei, K. Fujii, and T. Kunihiro, Ann. of Phys. 280, 236 (2000).
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Geometrical image of reduction
of dynamics
nR
t X
M
dimM m n
dim X n
( )ts
O dim ms
Invariant and attractive manifold
( )d
dt
XF X
( )d
dt
sG s
M={ ( )}X X X s
n-dimensional dynamical system:
RG法は、X(s)とG(s)を摂動的に構成することを可能にする: 永年項を含む摂動解の包絡線として大域解を構成することで、
X(s)とG(s)を構成できる。
Kunihiro, 日本物理学会誌 2010 val.65 No9
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RG法で、相対論的ボルツマン方程式の低エネルギー有効理論を構成した。
得られた方程式から、モーメント法で採用すべきp依存性が読み取れた。
c.f. ISの場合
Denicol et al.の場合
ISともDenicol et al.とも異なる。
衝突演算子
の逆行列
結果
衝突項
非自明なp依存性
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pで積分して見やすくする。
これは、専門的になるが、
因果律を保つ相対論的流体方程式で、
Landau-Lifshitz のエネルギーフレーム*である。
+ ・・・・
+ ・・・・
+ ・・・・
連続の式:
緩和方程式:
希薄ガスのEOS
輸送係数 緩和時間
*L. D. Landau and E. M. Lifshitz, Fluid Mechanics (Pergamon Press, London, 1959).
体積粘性:
熱伝導率:
ずれ粘性:
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相関関数を用いたコンパクトな表式:
Def.
Then,
非常に自然な表式と言える。
我々の輸送係数と緩和時間の表式(ここではずれ粘性のみ紹介):
内積の定義:
with
Green-Kubo公式そのもの
相関関数の減衰の時定数
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本発表は以下のレビュー論文およびショートアナウンスの
内容に基づく: arXiv:1206.3913, to be published in EPJA
arXiv:1205.5843, to be published in Suppl. Prog. Theor. Phys.
まとめ
・くりこみ群の方法を用いて、相対論的ボルツマン方程式から因果律と整合的な散逸を含む相対論的流体方程式を導出した。それはエネルギーフレームであった。
・モーメント法における「正しい」モーメントの設定方法を提案したことを強調する。
・相関関数を用いて、輸送係数および緩和時間の統一的且つコンパクトな表式を得た。
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付録
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ISとDenicolとの比較(stress tensorのchannel)
緩和時間と輸送係数の比を用いた比較:
ボルツマン方程式の衝突項内の散乱断面積が
運動量依存性を持たないという特殊な場合:
Ritz-Galerkin近似が
妥当
近似的にDenicol et al.の表式は我々の
ものと一致する。ISは一致しない。
我々の表式は一般の状況でも妥当であることを強調する。
This work:
IS:
Denicol et al.:
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相関関数を用いたコンパクトな表式:
Def.
Then,
非常に自然な表式と言える。
我々の輸送係数と緩和時間の表式: