bvd ウイルスの清浄化 -...
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BVDウイルスと疾病 概要
BVD(牛ウイルス性下痢)ウイルスは、一般的には牛の呼吸器病や下痢を引きおこすウイルスですが、以下に示すように肺炎や妊娠牛での死流産、時には致命的な出血性の病気をひきおこす場合があります。
感染と病気
① 健康な牛への感染
感染した牛の多くは軽い発熱を示す程度であまり症状は示しません。しかしながら、免疫機能を一時的に低下させるため、他のウイルスや細菌の混合感染により呼吸器病症候群(BRDC : Bovine Respiratory Disease Complex)を引き起こす場合があ
ります。重い肺炎に移行し生産性が大幅に低下します※。また、同時に感染した他のウイルス(IBRやRSウイルス)の感染が長期化することにより、それらのウイルス感染が拡がります。
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一時的に白血球が減少します発熱
発熱体温℃ 白血球数(×1000/mm3)
Shuqin Zhang Virology Journal2014 11:67感染 感染
※牛は、ルーメンで産生した脂肪酸の代謝に大量の酸素を消費し、また巨大なルーメンにより肺の容積が相対的に小さいため、肺に大きな負担がかかっています。肺炎は生産性に大きなダメージを与えます
② 重症型の発生
特定のウイルスタイプが感染すると、致命的な出血性の病気を発病する場合があります。
上記のウイルスはドイツにも拡散し、大きな被害が発生しました。原因ウイルスは遺伝子の変異により強毒化しました。骨髄へのウイルス感染により、止血機能を担う血小板が減少したため、臓器や粘膜での出血が止まらなくなり死亡したものです。
③ 繁殖牛への影響
卵胞期にBVDウイルスに感染するとエストラジオールの分泌延長や排卵後のプロゲステロンの立ち上がりの遅延などの影響が出ることが実験で示されています。また、感染牛のLHパルス(ゴナドトロピン分泌)は約50%減少するとされています。
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プロゲステロン(ng/ml)
ウイルス接種群
正常群イージーブリード 抜去
排卵後日数M. D. Fray1ら Reproduction (2002) 123, 281–289
2013年1月
オランダの子牛肉(veal)生産農場で飼養牛の40%が死亡する疾病が発生
軽度の呼吸器症状と40.5℃の発熱
元気消失、治療に反応せず横臥
重度の下痢、時には出血性、出血性素質を示す
発病後2~3日の経過で約90%が死亡した。
Jenckel M1, et al J Virol. 2014 Jun;88(12):6983-92.
④ 妊娠牛への感染
BVDウイルスには細胞培養での性質により、ncp(細胞非変性)とcp(細胞変
性)と呼ばれる2つのタイプが存在します。流行しているウイルスの大半はncpタイ
プです。タイプにより胎児に対する影響は異なります。
約30日~120日胎齢の牛胎児が、ncpタイプのBVDウイルスに感染すると、胎児の免疫機構が働かず、ウイルスと共存する状態(免疫寛容)で発育し娩出されます。このような牛はPI牛(持続感染牛)と呼ばれ、生涯BVDウイルスが全身の臓
器で増殖しつづけます。
PI牛は発育の遅れや糖尿病などの症状を示します。また、感染しているBVDウ
イルスが牛の体内でcpタイプに変異する
と致死的な粘膜病をおこします。
PI牛は尿や鼻汁などにより大量のウイルスを排出しつづけ、周囲の牛を感染さ
せます。
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正常牛PI牛
NADIS
(NATIONAL ANIMAL DISEASE INFORMATION SERVICE)
PI牛
粘膜病
粘膜病を発病すると腸管や食道の粘膜にびらんや潰瘍ができ、慢性的な下痢を示して死亡します。以下に主な病変を示します。 ① 鼻の表面の潰瘍病変
② のど(咽喉頭部)の粘膜にびらんと潰瘍
③ 食道の粘膜には多数の潰瘍
④ 小腸粘膜の出血
粘膜病を発病した牛からはncpとcpの両タイプのウイルスが分離されます。
異常産
BVDウイルスは、妊娠牛への感染により胎児の奇形や流産も引きおこします。
← 関節の奇形 小脳欠損など
← 小脳欠損により前足の開脚と頭部を下げ る姿勢をとる子牛
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① ②
③ ④
Brodersenら Veterinary Pathology 2014, Vol. 51(2) 453-464
Haligur, M.,et al Israel Journal of Veterinary Medicine Vol. 67 (4) December 2012
NADIS
(NATIONAL ANIMAL DISEASE INFORMATION SERVICE)
妊娠牛へのBVDウイルス感染のまとめ
BVDウイルス感染と関連する病気のまとめ
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感染PI牛
糖尿病
粘膜病
流産 異常産
小脳欠損
発育不良死亡
感染
関節異常
胎齢 30日~130日
ncpタイプ
cpタイプ
BVDウイルスの防除 ウイルスの性質と変異
BVDウイルスは細胞培養での性質による分け方(生物学的タイプ)の他に遺伝子タ
イプによる分類が行われます。
① 生物学的タイプ
② 遺伝子タイプ 各遺伝子タイプに①の各生物学的タイプが存在する
③ 国内で流行しているウイルスタイプ
2型と1型のb亜型が大半を占めています。
安部優里ら 北獣会誌59(2015)
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一部の遺伝子の塩基配列をもとに型別
1型 1a~1qまで17亜型の存在が報告されている
2型 2a 2b 2c の3亜型
3型 非定型ペスチウイルス
ワクチンの選択と使用方法
1型と2型のウイルスとの間には抗原が異なるため、ワクチンの選択に当たっては2価ワクチン(1型と2型含む)を選択しましょう。
繁殖牛へのワクチン接種に当たっては、定期的に複数回接種し、生ワクチンと不活化ワクチンを組み合わせて接種しましょう。
PI牛の摘発と淘汰
汚染農場では、ワクチン接種のみでは清浄化(PI牛フリー)は実現できません。新生子牛の検査によりPI牛の摘発・淘汰で清浄化が進みます。
国が定めた牛ウイルス下痢・粘膜病(BVD)に関する防疫対策ガイドラインによりPI牛の産出リスク低減に努めましょう
検査・指導については下記の各地域の家畜保健衛生所に御相談ください。 中央家畜保健衛生所 023-686-4410 置賜家畜保健衛生所 0238-43-3217
最上家畜保健衛生所 0233-29-1357 庄内家畜保健衛生所 0235-68-2151
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LK (生ワクチン→不活化ワクチン)
LKK (生ワクチン→不活化ワクチン→不活化ワクチン)
LKKK(生ワクチン→不活化ワクチン→不活化ワクチン→不活化ワクチン)