bsw3.naist.jp · web view図1 異種キメラの作出方法...
TRANSCRIPT
図 1 異種キメラの作出方法マウスの胚盤胞に GFP遺伝子によって緑に光るラットの ES 細胞を注入して、偽妊娠マウスの子宮に移植すると、ラットの細胞 (緑 )を持つ異種キメラが誕生する。
図 2 大きさの異なるマウスとラットの異種キメララットの胚盤胞にマウスの ES細胞を注入して作製したラットサイズの異種キメラ ( 上 ) と、マウスの胚盤胞にラットの ES細胞を注入して作製したマウスサイズの異種キメラ (下 )。
図 3異種キメラで作られたラットの胸腺の機能ヌードマウスにラットの ES細胞を注入して作成した異種キメラのラットの胸腺は、胸腺を持たないヌードラットの腎皮下に移植すると、成熟した T細胞 (rCD4+/rCD8- 、または rCD4-/rCD8+)が出現する。
研究・教育の 概要
哺乳類において、精子と卵子が融合した受精胚は、 8細胞期胚まで、すべての細胞に分化することができる万能
性を持ち、着床直前の胚盤胞期になると、将来、胎盤にな
る栄養膜細胞と、様々な組織や臓器へと分化する内部細胞
塊に運命が分かれます。内部細胞塊から樹立された胚性幹
細胞 (ES 細胞 ) は、胎盤組織以外であれば、生殖
細胞を含むどんな細胞にでも分化できる多能性を持ち、こ
の性質は、再生医療研究を大きく後押しし、誘導型多能性
幹細胞 (iPS 細胞 ) の発見にも繋がりました。初期
胚、 ES/iPS 細胞と発生工学技術を組み合わせた、動物
モデルを通して、再生医療に繋がる基礎研究を目指します。
主 な 研 究 テ ー マ
1 ) 異種キメラを用いた臓器形成モデル胚盤胞と ES 細胞を用いれば、マウスとラットの細胞
を個体の中に合わせ持つ異種キメラが誕生させることができ
ます ( 図1、2 ) 。胸腺のないヌードマウスの胚盤
胞とラットの ES 細胞を用いて異種キメラを作ると、胸
腺がラットの細胞で構築されることが分かりました。つまり 、
異種キメラの系を用いれば、 ES 細胞や iPS 細胞か
ら、複雑な 3 次元構造を持つ臓器を作ることができます。
異種キメラ内に作られたラットの胸腺は、 T 細胞を成熟
させることが分かりました ( 図 3) が、マウスよりも
小さく非自己を排除する T 細胞ができているかどうかは
まだ明らかになっていません。一方、マウスの胚にラットの
ES 細胞を注入した異種キメラの精巣内には、マウスだけ
でなく、ラットの精子もできますが、これらの精子は同種の
卵子と受精させると、次世代が誕生することが分かっていま
す。このように、異種キメラの体内で作られた臓器・組織、
細胞が正しく働いているかを明らかにすることは、再生医療
に結びつけるためにも、今後の重要な課題になります。異種
キメラの系を用いて、様々な臓器形成モデルの確立を試み、
臓器・組織、細胞が正常に機能するために必要な要因を明ら
かにしていきます。
2 ) 新規動物モデルの開発近年、次世代遺伝子改変技術として注目されているゲノム
編集技術 (CRISPR/Cas システムなど ) を用いれば、
簡単に遺伝子破壊動物を作製できるようになりました。この
技術を ES 細胞 ( または、 iPS 細胞 ) と組
み合わせば、より複雑な遺伝子改変を行えるようになります。
単に遺伝子改変を行ったヒトの疾患モデル動物だけでなく 、
遺伝子工学・細胞工学・生殖工学を
駆使して生命科学研究のブレイク・
スルーに繋がるような新たな動物モ
デルの開発を目指します。
主 な 発 表 論 文 ・ 著 作
[1] Isotani et al., Biol Reprod, 97, 61-68, 2017
[2] Isotani et al., Sci Rep, 6, 24215, 2016[3] Isotani et al., Genes Cells, 16, 397-
405, 2011[4] Isotani et al., Proc Natl Acad Sci U S A,
102, 4039-4044, 2005
器官発生工学
メディカル生物学分野
准教授 :磯谷 綾子 :[email protected]助教 :由利 俊祐 :[email protected]:/ /bsw3.naist . jp / isotani /
バイオ データ情報生命 バイオナノ