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53
https://www.rieti.go.jp/jp/index.html BBLセミナー プレゼンテーション資料 2019年5月23日 2019年版中小企業白書・小規模企業白書 概要宇野 雄哉 (RIETIコンサルティングフェロー / 前中小企業庁事業環境部企画課調査室長補佐) 独立行政法人 経済産業研究所(RIETI

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Page 1: BBLセミナー プレゼンテーション資料(資料)総務省・経済産業省「平成28年経済センサス‐活動調査」再編加工. 企業数( 2016. 年) 従業者数(

https://www.rieti.go.jp/jp/index.html

BBLセミナープレゼンテーション資料

2019年5月23日

「2019年版中小企業白書・小規模企業白書 概要」

宇野 雄哉 (RIETIコンサルティングフェロー / 前中小企業庁事業環境部企画課調査室長補佐)

独立行政法人 経済産業研究所(RIETI)

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2019年版中小企業白書・小規模企業白書 概要

令和元年5月

中小企業庁調査室

RIETI BBLセミナー

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1

2019年度版中小企業白書・小規模企業白書について

新時代を視野に入れ、経営者の世代交代と、中小企業・小規模事業者に期待される自己変革に焦点を当てる。

経営者の世代交代については、事業承継・経営資源の一部承継、多様な創業について分析・解説。

自己変革については、構造変化に対応する挑戦やそれを支えるステークホルダーとの互恵関係について分析・解説。

具体的な事例を豊富に紹介し、経営者目線に立った分かりやすい内容とした。

3.中小企業・小規模企業経営者に期待される自己変革

構造変化への対応1

2.経営者の世代交代

経営資源の引継ぎ1

親族内外の類型を網羅した総合的な支援施策を活用。多くの質の高い事業承継を早めに実現。

創業2

初期費用の低い創業の促進が期待される。

仮に廃業する場合でも、人材や設備等の貴重な経営資源を意欲の高い次世代の経営者に引き継ぐ。

クラウド等のICT技術の発展や働き方改革が進展し、リスクやコストの低い創業も容易になりつつある。

全部承継

一部承継

副業・フリーランス

経営資源の譲受け

防災・減災対策2

〇第4次産業革命等が進む中、中小企業は、自身の存在意義が問われる。構造変化に対応した行動変容(デジタル化への対応、オープン・イノベーション、インバウンド需要の獲得等)に挑戦。

〇大企業や自治体などの周囲の関係者は、中小企業と運命共同体であることを自覚し、主体的に中小企業を支援する等、従来の関係を再構築。

〇中小企業強靭化法案を踏まえ、中小企業・小規模事業者は、大企業や自治体などの周囲の関係者の協力を得つつ、減災・防災対策(事業継続力強化に向けた計画の策定・実施、保険加入等)に取り組む。

1.中小企業・小規模事業者の動向

景況感や財務、開廃業、人手不足等、中小企業・小規模事業者の経営環境を概観。

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中小企業・小規模事業者の動向

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中小企業・小規模事業者について中小企業基本法上の中小企業・小規模事業者の定義

中小企業 うち、小規模事業者

業種 資本金 または 従業員 従業員

製造業その他 3億円以下 300人以下 20人以下

卸売業 1億円以下 100人以下 5人以下

サービス業 5,000万円以下 100人以下 5人以下

小売業 5,000万円以下 50人以下 5人以下

(資料)総務省・経済産業省「平成28年経済センサス‐活動調査」再編加工

企業数(2016年) 従業者数(2016年) 付加価値額(2015年)

小規模事業者約304.8万者(84.9%)

中規模企業約53.0万者(14.8%)

大企業約1.1万者(0.3%)

小規模事業者約1,044万人(22.3%)

中規模企業約2,176万人(46.5%)

大企業約1,459万人(31.2%)

小規模事業者約35.7兆円(14.0%)

中規模企業約99.4兆円(38.9%)

大企業約120.5兆円(47.1%)

中小企業は全企業の99.7% 中小企業の従業者は全体の約70% 中小企業の付加価値は全体の約53%

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4

中小企業の現状

中小企業の景況感や経常利益は、改善傾向。

ただし、設備投資額の伸び悩み等、課題も見られる。

▲ 60.0

▲ 50.0

▲ 40.0

▲ 30.0

▲ 20.0

▲ 10.0

0.0

ⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠ

07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19

中小企業 中規模企業 小規模事業者(DI、%pt)

(年期)

図1 企業規模別業況判断DIの推移

0

2

4

6

8

10

12

14

ⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣ

07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18

中小企業 大企業(兆円・後方4四半期移動平均)

(年期)

図2 企業規模別経常利益の推移

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

7.0

8.0

9.0

ⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣ

07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18

中小企業 大企業(兆円・後方4四半期移動平均)

(年期)

図3 企業規模別設備投資の推移

0

2

4

6

8

10

12

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

ⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣ

07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18

ソフトウェア投資額・大企業(左目盛)

ソフトウェア投資額・中小企業(左目盛)

ソフトウェア投資比率・大企業(右目盛)

ソフトウェア投資比率・中小企業(右目盛)

(兆円・後方4四半期移動平均)

(年期)

(%)

図4 ソフトウェア投資額・ソフトウェア投資比率の推移

(資料)図1:中小企業庁・(独)中小企業基盤整備機構「中小企業景況調査」、図2~4:財務省「法人企業統計季報」

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財務データから見た中小企業の実態

財務指標から分布を見ると、平均値と中央値の乖離は大きく、中小企業像を捉える際は要注意。

ここでも業績が改善基調にあることは確認できるが、分布を見ると二極化している。

(資料)一般社団法人CRD協会「平成30年度財務情報に基づく中小企業の実態調査に係る委託事業」(2019年3月)

平均値; 48.1

中央値; 9.9

0%

1%

2%

3%

4%

5%

6%

7%

8%

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80 85 90 95 100

企業

数の

構成

割合

(単位:千万円)

平均値

中央値

売上高10億円超の企業が全体の9%弱存在

売上高3~4千万円の企業が最も多い

図1 中小企業の売上高の分布(2016年度)

n=953,505社

平均値; 461.6

中央値; 69.5

0%

1%

2%

3%

4%

5%

6%

7%

8%

0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500

企業

数の

構成

割合

(百万円)

平均値

中央値

総資産5億円の企業が全体の15%弱存在

総資産2~3千万円の企業が最も多い

n=953,505社

図2 中小企業の総資産の分布(2016年度)

61.1%

56.5%

50.2%

53.4%

57.1%

60.7%

62.2%

64.3%

63.9%

64.7%

38.9%

43.5%

49.8%

46.6%

42.9%

39.3%

37.8%

35.7%

36.1%

35.3%

0% 100%

07

08

09

10

11

12

13

14

15

16

営業黒字 営業赤字(年度)

図3 営業利益の黒字/赤字企業の割合の推移

7.0

1.5 2.1 3.3

5.5

11.6

32.7

19.2

9.9

5.0 2.1

9.3

1.7 2.3 3.4 5.5

11.2

27.0

18.7

11.4

6.6

2.9

0

5

10

15

20

25

30

35

▲100%未

▲100%以

▲80%未満

▲80%以上

▲60%未満

▲60%以上

▲40%未満

▲40%以上

▲20%未満

▲20%以上

0%未満

0%以上

20%未満

20%以上

40%未満

40%以上

60%未満

60%以上

80%未満

80%以上

100%未満

07年度の企業数の構成割合

16年度の企業数の構成割合

(%)

(07年度:n=1,125,337社)(16年度: n=953,505社)

図4 自己資本比率の水準にみた、企業数の分布状況の比較

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中小企業の人手不足の状況

中小企業の人手不足は、ますます深刻化。

中小企業には、大企業との待遇差を縮小する努力をすることも求められる。

(資料)図1:中小企業庁・(独)中小企業基盤整備機構「中小企業景況調査」、図2:株リクルートワークス研究所「ワークス大卒求人倍率調査」図3:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」 再編加工、図4:厚生労働省「平成30年就労条件総合調査」

▲ 60

▲ 40

▲ 20

0

20

40

ⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠ

07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19

全産業 製造業 建設業

卸売業 小売業 サービス業

(DI,%p)

図1 業種別従業員過不足DIの推移

図3 規模別給与額の推移 図4 年間休日総数の企業割合

図2大卒予定求人数・就職希望者数(左:従業員数299人以下、右:従業員数300人以上)

(万人)

4.4

9.9

0

2

4

6

8

10

12

0

10

20

30

40

50

11 12 13 14 15 16 17 18 19

求人数

希望者数

倍率(右軸)

(倍)

0.7 0.9

0

1

2

3

4

5

6

7

0

10

20

30

40

50

11 12 13 14 15 16 17 18 19

求人数

希望者数

倍率(右軸)

(倍)(万人)

(年卒)

37.9

30.2

20

25

30

35

40

94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17

大企業(正社員)

中小企業(正社員)

39.7

35.2

30.3

35.8

0

10

20

30

40

69日以下 70~79日 80~89日 90~99日 100~109

110~119

120~129

130日以上

1,000人以上

300~999人

100~299人

30~99人

(万円)

(年)

(年期)

(%)

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中小企業の構造分析

小規模企業を中心に、企業数は減少している。

ただし、主に存続企業が付加価値額を伸ばすことで、全体の付加価値額は増加。

1.4 1.3 1.2 1.2 1.2 1.1 1.1 1.1

61 59 55 53 54 51 56 53

423 410 378 366 367

334 325 305

485 470

434 421 421

386 382 359

0

100

200

300

400

500

1999 2001 2004 2006 2009 2012 2014 2016

大企業 中規模企業 小規模企業 企業数合計(万者)

(年)

中小企業358万者

(資料)図1:資料:総務省「平成11年、13年、16年、18年事業所・企業統計調査」、「平成21年、26年経済センサス‐基礎調査」、 総務省・経済産業省「平成24年、28年経済センサス‐活動調査」再編加工図2:資料:総務省・経済産業省「平成24年、28年経済センサス-活動調査」再編加工

図1 企業規模別企業数の推移

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

2012 2016

存続企業 開業(2012-2014) 開業(2014-2016) 廃業(2012-2014) 廃業(2014-2016) その他(万者)

(年)

企業数:386万者

企業数:359万者

廃業企業83万者

開業企業46万者

▲27万者

存続企業295万者

存続企業295万者

その他の増減17万者

その他の増減8万者

小規模企業

1,192

小規模企業

1,044

中規模企業

2,024

中規模企業

2,176

大企業

1,397

大企業

1,459

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

2012 2016 (年)

(万人)

▲148万人(▲12.5%)

+62万人(+4.4%)

+152万人(+7.5%)

企業規模計4,614万人 4,679万人

図2

図3 企業規模別従業者数の推移(2012年~2016年)

企業数の変化の内訳(2012年~2016年)

存続企業

157.8 兆円

存続企業

192.4 兆円

2012~14年

に廃業

12.8 兆円

2012~14年

に開業

11.1 兆円

2014~16年

に廃業

4.9 兆円

2014~16年

に開業

5.0 兆円

その他

32.0 兆円

その他

47.1 兆円

0

50

100

150

200

250

300

2011 2015

存続企業 2012~2014 2014~2016 その他(兆円)

(年)

図4 付加価値額の変化の内訳(2012年~2016年)

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8

経営資源の引継ぎ

経営者の高齢化が進み、休廃業・解散件数は増加。

中小企業が培ってきた事業や経営資源を次世代へ引き継ぐことが重要である。

0%

5%

10%

15%

20%

25%

15~

19

20~

24

25~

29

30~

34

35~

39

40~

44

45~

49

50~

54

55~

59

60~

64

65~

69

70~

74

75~

79

80~

1995年 2000年 2005年

2010年 2015年 2018年

(歳)

23年間で経営者年齢の山は、47歳から69歳へ移動

図1 年代別に見た中小企業の経営者年齢の分布図1 図1 休廃業・解散件数の推移図2

34,800 33,475

37,548

41,162 40,909

46,724

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

40,000

45,000

50,000

13 14 15 16 17 18

(件)

(年)

(資料)図1:(株)帝国データバンク「COSMOS2(企業概要ファイル)」再編加工、図2:(株)東京商工リサーチ「2018年「休廃業・解散企業」動向調査」

※年齢区分が5歳刻みであるため山が、動いているように見えないが、2015年から2018年にかけて、経営者年齢のピークは3歳高齢化している。

※休廃業とは、特段の手続きをとらず、資産が負債を上回る資産超過状態で事業を停止することをいう。※解散とは、事業を停止し、企業の法人格を消滅させるために必要な清算手続きに入った状態になることをい

う。基本的には、資産超過状態だが、解散後に債務超過状態であることが判明し、倒産として再集計されることもある。

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経営者の世代交代

旧経営者 新経営者※右上の は、世代交代をする前後のどちらの経営者に

ついて分析をしているかを示しています。

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経営者の世代交代(概念整理)

貴重な経営資源を有効利用するためには、従来の事業承継に加え、廃業企業の経営資源の有効利用も検討していくことも必要。

そのような経営資源は、既存企業に引き継ぐほかに、これから起業する人に引き継げれば起業の活性化にもつながる。

【譲渡し】経営者引退(事業承継、廃業)

図1 経営資源引継ぎ(譲渡し、譲受け)の概念図図1

【譲受け】経営者参入(事業承継、起業)

※廃業とは、経営者が引退した後は「事業を継続しない」(事業が連続していない)ことを指す。※経営資源には、事業用資産(設備・不動産)、取引先との人脈、ノウハウ等が挙げられる。

旧経営者 新経営者

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経営者の世代交代(事業承継)

これまで、法人向け・個人事業者向けに、贈与税や相続税の負担をゼロにする事業承継税制を措置。親族内承継の支援措置は、大幅に前進。(次スライド参照)

今後は、親族外承継も一層推進することが重要。

旧経営者 新経営者

2.6

42.8

2.3 2.6 1.5

3.5

19.1

16.5

9.1 配偶者

子供(男性)

子供(女性)

子供の配偶者

兄弟姉妹

その他親族

親族以外の役員・従業員

社外の第三者

その他

(%)

親族内承継 55.4%

役員・従業員承継 19.1%

社外への承継 16.5%

(n=2,565)

事業承継した経営者と後継者との関係図1

3.1

10.5

18.7

12.7

6.38.0

21.0

4.7

15.1

22.3

16.811.8

23.0 24.5

14.6

10.3

28.2

11.4

14.0

26.928.4

9.8

22.2

12.6

20.1

7.7

35.6

14.2

8.0

17.0

0

5

10

15

20

25

30

35

40

後継者を

探すこと

後継者と

対話する

機会を

設けること

後継者に

経営状況

を詳細に

伝えること

後継者の

了承を

得ること

後継者と

引継ぎの

条件を

調整する

こと

金融機関

との調整

(経営者の

個人保証、

債務引受)

取引先との

関係維持

従業員の

反発

後継者の

育成

後継者を

補佐する

人材の確

親族内承継

(n=1,307)

役員・従業員承継

(n=465)

社外への承継

(n=388)(%)

図2 後継者を決定し、事業を引き継ぐ上で苦労した点

※図1、2:引退後の事業継続について「事業の全部が継続している」、「事業の一部が継続している」と回答した者について集計している。※図2:苦労したとする回答が多かった上位10項目について表示している。

(資料)図1,2:みずほ情報総研㈱「中小企業・小規模事業者の次世代への承継及び経営者の引退に関する調査」(2018年12月)

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税理士の支援のもと、早期のM&Aを実現した事例

いばら(従業員7名、資本金300万円)は、自動車販売、整備を行う企業。

前社長の佐藤氏は、息子と従業員が引継ぎを望まなかったため、M&Aによる第三者への譲渡を模索した。

現社長の桜井氏は、同業の個人事業を営んでいた。事業展開を検討する中で、M&Aを行い拡大したいと考え、税理士が主催する勉強会でM&Aの知識を深めた。

桜井氏は、損保会社の担当者経由で、同社を紹介され、顧客基盤・施設などに魅力を感じ、引継ぎを希望した。

前述の税理士の支援により、価格算定や条件調整、売買契約などの手続きを2か月という短期間で完了できた。

桜井氏は、「地域の役に立つ新事業にもチャレンジしたい」という。

佐藤氏は、「安心して事業を任せることが出来ており、安定した引退生活を送ることができている」と語る。

12

経営者の世代交代(親族外承継の事例)

支援機関のサポートにより円滑に社外の第三者へ事業承継を行うことができた事例。

旧経営者の負担が軽減されるほか、新経営者による新たな事業展開も期待される。

支援機関のマッチングにより、異業種企業に事業を譲り渡した老舗和菓子店

恵比須堂(従業員5名、資本金1,000万円)は、1917年に創業した、羽二重餅の製造を行う老舗企業。

前社長の中道氏には後継者がおらず、事業承継を福井県事業引継ぎ支援センターに相談。

「従業員の雇用の維持」などを条件にできることが分かり、引継ぎ先を募ったところ、2か月程度で、障害者就労継続支援の企業とマッチングが実現。

引継ぎ先では、就労している障害者の仕事内容が多様化し、やりがいも感じられるようになった。

現在は、新規の利用者も増え、新商品の開発や仕事の効率化にもつながっている。

【事例】株式会社恵比須堂(福井県福井市)

中道氏(右)と引き継いだ嶋田氏(左)

【事例】有限会社いばら(新潟県新潟市)

同社の外観

旧経営者 新経営者

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-0.06

-0.04

-0.02

0.00

0.02

0.04

0.06

0.08

0.10

1年後 2年後 3年後 4年後 5年後

30代以下 40代 50代

*

13

経営者の世代交代(事業承継の効果)

事業承継が企業の業績に与える影響を、新経営者の年齢別に分析。

30代以下、40代の経営者に事業承継を行う方が、50代への事業承継と比較して売上高などを押し上げる効果をもたらすことが分かった。

事業承継が売上高に与える効果(後継者の年齢別)図1

-0.06

-0.04

-0.02

0.00

0.02

0.04

0.06

0.08

0.10

1年後 2年後 3年後 4年後 5年後

30代以下 40代 50代

事業承継が総資産に与える効果(後継者の年齢別)図2

事業承継がROAに与える効果(後継者の年齢別)図3 事業承継が従業員数に与える効果(後継者の年齢別)図4

-1

-0.5

0

0.5

1

1.5

1年後 2年後 3年後 4年後 5年後

30代以下 40代 50代(%pt)

-0.02

0

0.02

0.04

0.06

0.08

1年後 2年後 3年後 4年後 5年後

30代以下 40代 50代

※「傾向スコアマッチング」及び「差の差の分析」の手法を利用して分析。グラフは、対照群と処置群の変化の差を示している。なお、グラフ上の「*」は統計上の有意水準。 *…10%有意、**…5%有意、***…1%有意。

(資料)一般社団法人CRD協会「平成30年度財務情報に基づく中小企業の実態調査に係る委託事業」(2019年3月)

***

***

***

***

*** ***

*** ***

*

*** ***

**

***

***

***

***

*****

**

**

**

旧経営者 新経営者

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14

経営者の世代交代(事業承継)

将来事業を継ぐことが決まっている者(後継決定者)の過半は、今の業績に関わらず事業を拡大したいと考えている。また、若いうちに継ぎたい者の方が、事業を拡大したいと考えている。

旧経営者 新経営者

62.2

55.2

54.8

51.0

0% 100%

39歳以下

(n=98)

40~49歳

(n=210)

50~59歳

(n=188)

60歳以上

(n=145)

拡大型 維持型 縮小型 その他

19.2

36.0

35.4

8.9

0.5

新しい事業分野への進出・新商品やサービスの開発をしたい

新しい顧客・取引先を開拓したい

現状を維持していきたい

事業規模を縮小のうえ経営したい

その他

(n=641)

拡大型

維持型

縮小型

図1 後継決定者の事業承継後の事業規模に対する意向

57.4

58.3

57.1

36.5

0% 100%

安定的に利益を確保

できている(と思う)(n=251)

利益のでる年とでない年

がある(と思う)(n=218)

利益が確保できず苦しい

状況だ(と思う)(n=98)

損益の状況について一切

把握していない(n=74)

拡大型 維持型 縮小型 その他

図3

図2

事業承継後の事業規模に対する意向(継ぎたい年齢別)

※「後継決定者」とは、事業を継ぐことについて現経営者と合意がとれている者をいう。

(資料)三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)「中小企業・小規模事業者における経営者の参入に関する調査」

事業承継後の事業規模に対する意向(業績別)

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外部研修を活用した後継者教育により円滑な事業承継を果たした企業

シービージャパン(従業員40名、資本金9,900万円)は、生活関連用品の企画開発、製造・販売を行う企業。

営業一筋だった樋口現社長は、自身が社長になることは想定していなかったが、前社長の病気を機に後継者に指名され、急遽事業承継の準備を開始。

経営者になるに当たり必要なスキルを洗い出すため、外部の専門家による研修を受講。最も不安を感じていた金融・財務の知識を習得した。さらに学んだことを社内で実践し、社長になる前に着実に経営ノウハウを身に着けた。

「次の承継の際は早期に準備をはじめて、最低5年はかけて進めたい」と考えている。幹部社員には外部研修・社内研修を実施。次の事業承継に向けた準備にも余念がない。

経営者の世代交代(後継者の育成)

後継決定者の事業承継に向けた最大の懸念は資質や経験の不足で、事業を拡大したい者ほど準備に時間がかかると考えている。早くから事業内外で経験を積む機会を用意することが重要。

旧経営者 新経営者

0

10

20

30

40

50

経営者と

しての資

質の不足

実務経験

の不足

業績の維

持・向上

雇用の維

借入金の

返済・資

金繰り

借入金の

個人保証

の引継ぎ

役員・従

業員から

の支持

地域との

関係性構

プライベー

トとの両

特にない

拡大型(n=354) 維持型(n=227) 縮小型(n=57)(%)

0% 50% 100%

拡大型

(n=354)

維持型

(n=227)

縮小型

(n=57)

1年以下 2年 3年 4年 5年 6~10年 11年以上

15

図1

※後継決定者とは、事業を継ぐことについて現経営者と合意がとれている者をいう。

(資料)三菱UFJリサーチ&コンサルティング㈱「中小企業・小規模事業者における経営者の参入に関する調査」

後継決定者が事業を継ぐにあたり懸念すること

図2

【事例】株式会社シービージャパン(東京都足立区)

樋口圭介社長(左)と青木宏会長(右)

経営者になるために必要だと思う準備期間

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新店舗オープンを機とした事業承継を進める企業

中乃見家(従業員3名、資本金300万円)は、和食を提供する飲食店と民宿を営む企業。現在の店舗は閉店し、新たに宿泊施設を備えた和洋食レストラン「オルビス」をオープン予定。

洋食の料理人であり現社長息子の上村航平氏は、両親が「オルビス」のオープンを検討していることを聞き、事業の長期的な展望をイメージできるようになったことを機に、事業を承継することを決断、店を手伝い始めた。

現社長の上村恵司氏は、商工会や金融機関に相談しながら、5年後の代表交代に向けて事業承継計画を作成することで、念入りな準備を進めている。

「両親の『オルビス』へのこだわりはずっと見てきた。オープンに向けて協力して準備を進めたい」と航平氏は語る。

経営者の世代交代(後継者の確保)

事業を継ぐ可能性があるが、まだ決まっていない者(後継者候補)の過半が、現経営者と事業承継に向けた対話をできていない。

身近な人なども巻き込んで、対話の場を設けることも有効。

旧経営者 新経営者

16

0% 100%

積極的後継者候補

(n=250)

消極的後継者候補

(n=500)

よくしている している あまりしていない していない

53.2

59.0

図1 後継者候補と現経営者の間での、事業承継に関する会話

※「積極的後継者候補」とは、事業を継ぎたいと考えているがまだ現経営者と合意がとれていない者をいう。「消極的後継者候補」とは、前向きではないが事業を継ぐかもしれないと考えている者をいう。

図2後継者候補が事業承継について現経営者と一緒に相談するのに適していると思う相手

【事例】有限会社中乃見家(千葉県鴨川市)

新店舗「オルビス」オープンに向けた歩みを記した31冊のノート

0

20

40

60

現経営者

の親族

事業の役

員・従業員

地域の関

係者(同

業者等)

金融機関 商工会議

所・商工会

中小企業

診断士

公認会計

士・税理士

弁護士 特にいない

積極的後継者候補(n=250)

消極的後継者候補(n=500)

(%)

(資料)三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)「中小企業・小規模事業者における経営者の参入に関する調査」

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58.5

41.6

19.8 19.6 19.4

7.1 5.6 3.9 1.1 0.7 0.3

6.1

0

20

40

60

もともと自分の代で

畳むつもりだった

事業の将来性が

見通せなかった

資質がある後継者

候補がいなかった

事業に引継ぐ価値

があると思えなかっ

事業の足下の収

益力が低かった

家族・親族から事

業継続を反対され

借入金が大きかっ

親族以外への引

継ぎには抵抗が

あった

専門家からアドバイ

スを受けた

災害によりやむを

得ず廃業した

連帯保証人から事

業継続を反対され

その他

(%)

(n=2,020)

経営者の世代交代(廃業)

廃業した経営者が事業を継続しなかった理由は、「もともと自分の代で畳むつもりだった」が最多。

廃業に向けて苦労した点は、経営資源の引継ぎに関することの割合が多い。

旧経営者 新経営者

17

事業を継続しなかった理由図1

廃業に向けた取組の中で苦労したこと図2

31.8

26.7

14.2 13.0 13.0 12.0

5.1 4.7 3.4 2.6 0.9

3.6

36.1

17.1 14.8

2.0

6.9 3.6

6.2

1.7 1.5 0.6 0.8 0.1 3.0

41.8

0

10

20

30

40

50

顧客や

販売先

への説明

従業員の

処遇

仕入先への説明 資産売却先の確

家族の同意 借入金の

返済

納税資金の確保 売掛金の

回収

金融機関等の債

権者への説明

出資者・

株主への

説明

連帯保証人への

説明

その他 特になし

苦労したこと(n=1,976) 最も苦労したこと(n=1,730)

(%)

※引退後の事業継続について「継続していない」と回答した者について集計している。

(資料)みずほ情報総研㈱「中小企業・小規模事業者の次世代への承継及び経営者の引退に関する調査」(2018年12月)

経営資源の引継ぎに関わる取組

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経営者の世代交代(経営資源の引継ぎ)

廃業した企業からの経営資源の引継ぎは一定程度行われているが、促進の余地あり。

経営資源を有償で譲渡すれば、経営者は、廃業費用の一部を賄うことが可能。

旧経営者 新経営者

図1

38.5

50.9

61.5

49.1

0% 100%

再就職を希望する

従業員の有無(n=1,549)

経営者の支援により再就職が

決定した従業員の有無(n=597)

いた いなかった

63.2 36.8

0% 100%

継続的に取引のある

販売先・顧客の有無(n=1,850)

いた いなかった

65.6 34.4

0% 100%

販売先・顧客の引継ぎについて

(n=1,133)

引継ぎを実施 引継ぎ非実施

62.7 37.3

0% 100%

設備の所有の有無(n=1,840)

所有していた 所有していなかった

53.6 46.4

0% 100%

設備の引継ぎについて

(n=1,091)

引継ぎ実施 引継ぎ未実施

36.1 63.9

0% 100%

事業用不動産の所有の有無

(n=1,909)

所有していた 所有していなかった

48.2 51.8

0% 100%

事業用不動産の引継ぎについて

(n=637)

引継ぎ実施 引継ぎ未実施

廃業企業からの経営資源引継ぎの実態 図2 廃業の費用総額

図3 経営資源を引き継いだ際の対価の総額

8.9

37.3

17.6

21.7

7.0

7.6 0 円

1 円以上50万円未満

50万円以上100 万円未満

100 万円以上500 万円未満

500 万円以上1,000万円未満

1,000万円以上

(%)

(n=1,907)

※引退後の事業継続について「継続していない」と回答した者について集計している。※図3は、何らかの経営資源の引継ぎを「行った」と回答した者について集計している。

(資料)みずほ情報総研㈱「中小企業・小規模事業者の次世代への承継及び経営者の引退に関する調査」

39.2

10.9 5.8

15.2

7.8

21.0 0 円

1 円以上50万円未満

50万円以上100 万円未満

100 万円以上500 万円未満

500 万円以上1,000 万円未満

1,000万円以上

(%)

(n=599)

18(2018年12月)

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経営者の世代交代(廃業企業から経営資源を引き継いだ事例)

廃業した企業から経営資源を引継ぎ、成長につなげた既存企業の事例。

廃業時の経営資源の引継ぎは、廃業した経営者の引退後の満足にもつながる。

旧経営者 新経営者

19

廃業した同業者から取引先や従業員、設備を引き継ぎ、成長につなげた企業

藤田商事(従業員105名、資本金4500万円)は、1947年創業の、自動車や重機向けの特殊鋼を販売する専門商社。

取引先の鉄鋼販売会社社長から、後継者がおらず廃業するため、販売先等を引き継いで欲しいと打診を受け、販売先と従業員3名、設備などを引き継いだ。

同社の技術力・対応力が、引き継いだ販売先に認められ、引継ぎ前より売上は増加している。

元の経営者にはまとまったお金が入ったが、それ以上に、従業員と取引先に迷惑をかけずに済んだことが、引退後の満足につながっているという。

【事例】藤田商事株式会社(千葉県浦安市)

代表取締役 藤田忠義氏

廃業する企業から経営資源を引き継ぎ、成長する個人事業者

やだぱん(従業員10名、個人事業者)は、2013年に設立したパン屋。

創業当初、郊外に店舗を構えていたが、売上が伸びず、移転を模索。2016年、店主が高齢のため廃業するパン屋から、店舗を引継ぎ移転した。

移転に当たり、設備(製パン機や冷蔵庫等)・内装・什器一式を200万円で買い取った。これは新規で購入する価格の10分の1程度であり、移転に係る費用を圧縮することができた。

併せて従業員6名も引き継いだことで、地域の常連客とのつながり、メニューのレシピも引き継ぐことができ、移転後の売上向上につながった。

【事例】やだぱん(島根県松江市)

店内の様子

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経営者の世代交代(経営資源を引き継いでの創業)

起業をしようとする者が、事業を素早く立ち上げようとする場合、他者から経営資源を引き継ぐ形での起業は有効であるが、実際に引き継げた者は限定的。起業促進の観点からも、経営資源の引継ぎを進めることが必要。

旧経営者 新経営者

引き継いだ技術を活かし、新たな挑戦をする企業

藤綱合金(従業員3名、資本金200万円)は、銅合金の鋳造を行う企業。

藤綱氏が務めていた、地元の銅合金鋳造の企業は、社長の急死を機に廃業。

同氏は、技術が失われることを憂慮し、自らが代表となり、同僚たちとともに、銅合金の鋳造会社を新たに起業することを決意。

廃業から半年後、顧客の一部と技術者を引き継いで、藤綱合金を設立。設立当初から、一定の売上を確保できた。

新たな顧客も確保するために、新たに低コストで高品質な鋳造技術にも挑戦。今では起業後に獲得した顧客の売上が半分に迫る。

※「起業家」とは、本業で起業(フリーランスでの起業を除く)したことがあり、その事業を10年以内継続していると回答した者をいう。※「起業準備者」とは、起業に向けて具体的な準備をしている者をいう。※起業後の売上高に対する成長意向について、短期間で拡大させる意向の者を「急成長型」、中長期的かつ安定的に拡大させる意向の者を「安定成長型」、拡大を意図しない意向の者を「事業継続型」としている。

(資料)三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)「中小企業・小規模事業者における経営者の参入に関する調査」

図1

図2 起業準備者が引き継ぎたい経営資源(起業後の成長意向別)

【事例】株式会社藤綱合金(大阪府東大阪市)

藤綱伸晴社長

引き継いだ経営資源・引き継ぎたい経営資源

53.8

41.3

50.4

39.6

47.741.9

32.7

18.4

8.913.8

7.3 9.75.0

61.9

0

20

40

60

80

事業の

ノウハウ

ブランド 顧客・

販売先

役員・

従業員

設備 不動産 特にない

起業準備者(n=790) 起業家(n=1,057)(%)

63.3

47.7

60.253.9 54.7

50.0

25.8

59.4

46.5

55.8

42.5

53.3

46.3

26.933.2

23.529.9

22.528.9

25.1

51.9

0

20

40

60

80

事業の

ノウハウ

ブランド 顧客・

販売先

役員・

従業員

設備 不動産 特にない

急成長型(n=128) 安定成長型(n=475) 事業継続型(n=187)(%)

20

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21

経営者の世代交代(廃業企業の収益)

休廃業・解散企業の利益率は、解散などの数年前までは中小企業全体に遜色ないが、徐々に利益率を減少させ、休廃業・解散するに至る傾向にある。

収益が悪化する前に、早期に事業承継を見据えた経営改革や廃業の準備をすることが重要。

図1 休廃業・解散企業の売上高純利益率(中央値)の推移 図2 2016年休廃業・解散企業の売上高純利益率の分布の推移

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

1.4

1.6

07 08 09 10 11 12 13 14 15

2016年に休廃業・解散 2013年に休廃業・解散

2010年に休廃業・解散 中小企業全体の中央値

(%)

(年)

8.610.6

30.929.4

10.5 10.0

18.7

12.7

19.7

23.5

11.1

14.2

6.39.6

35.4

32.5

9.2

7.0

8.810.9

23.7

31.6

13.1

12.0

0

5

10

15

20

25

30

35

40

▲5未満 ▲5以上、0未満 0以上、1未満 1以上、5未満 5以上、10未満 10以上

2016年休廃業・解散企業(2007年時点)

2016年休廃業・解散企業(2015年時点)

中小企業全体(2007年)

中小企業全体(2015年)

(%)

※データは、各年9月時点のもの。※民営、非一次産業の中小企業を集計している。※決算月数が12か月かつ、当期決算売上高及び当期決算利益金が有効回答の企業を集計している。

(資料)㈱東京商工リサーチ「企業情報ファイル」再編加工

旧経営者 新経営者

(%)

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22

経営者の世代交代(引退した経営者)

経営者引退前の懸念事項は、実際には問題にならない場合もある。

事業承継した経営者・廃業した経営者ともに、引退後の生活の満足度は高い傾向。

41.6 41.3

32.3 30.9 30.4

22.2

15.6 15.6 13.4 12.1

27.3

46.5

21.0 24.5

19.4 16.0

17.4

10.6 9.6 9.4

0

10

20

30

40

50

60

後継者

の経営

能力

自身の

収入の

減少

従業員

への影響

引退後

の時間の

使い方

顧客や

販売・受

注先への

影響

技術・ノ

ウハウの

引継ぎ

家族への

影響

後継者

の確保

借入金

の返済

個人保

証の残

懸念事項(n=2,561) 実際に問題(n=2,437)

(%)

図1経営者引退決断時の「懸念事項」と経営者引退に際し「実際に問題」になったこと(事業承継した経営者)

図2経営者引退決断時の「懸念事項」と経営者引退に際し「実際に問題」になったこと(廃業した経営者)

53.4

33.5 26.9 22.9

21.0 17.1 15.9

12.0 11.9 8.6

57.2

19.4 13.9

22.4 25.6

16.6 12.1

9.2 6.6 6.1

0

10

20

30

40

50

60

70

自身の

収入の

減少

顧客や

販売・受

注先への

影響

従業員

への影響

引退後

の時間の

使い方

家族への

影響

個人財

産の減

資産の

売却、処

借入金

の返済

後継者

の確保

技術・ノ

ウハウの

引継ぎ

懸念事項(n=2,039) 実際に問題(n=1,975)

(%)

図3 現在の生活の満足度 図4 現在の生活が満足な理由

40.4

20.1

30.4

29.6

15.3

23.4

9.4

14.8

4.4

12.0

0% 100%

事業承継した経営者(n=2,408)

廃業した経営者(n=1,886)

満足 やや満足 どちらとも言えない やや不満 不満

67.0 63.0

36.1 33.2

22.8 20.1

11.6 4.5

74.2 67.4

24.6

38.8

27.1 21.6

12.4

4.0

0

20

40

60

80

時間的余裕

がある

精神的余裕

がある

経済的余裕

がある

家族と過ごす

ことができて

いる

新たな人との

つながりを形

成できている

地域への貢

献ができてい

新たな仕事

に就けている

その他

事業承継した経営者(n=1,684) 廃業した経営者(n=923)

(%)

※ここでいう「事業承継した経営者」とは、引退後の事業について「事業の全部が継続している」、「事業の一部が継続している」と回答した者を、「廃業した経営者」とは、引退後の事業継続について「継続していない」と回答した者をいう。図1~2:懸念事項とする回答が多かった上位10項目について表示している。図4:現在の生活満足度について「満足」、「やや満足」と回答した者について集計している。

(資料)みずほ情報総研㈱「中小企業・小規模事業者の次世代への承継及び経営者の引退に関する調査」(2018年12月)

旧経営者 新経営者

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23

経営者の世代交代(創業の担い手)

起業の担い手は減少傾向。他方、起業を準備する者が実際に起業する割合は上昇。

多様な創業を担う副業経営者は足元で増加しており、フリーランスの存在も小さくない。

図1 起業の担い手の推移 図2 副業経営者等の推移

図3 フリーランスの人口規模(推計値)

300 140

270

5,700

本業フリーランス

副業フリーランス

フリーランス以外の事

業主等

その他の就業者

(万人)

本業及び副業フリーランスの人口規模(推計)440万人

(全就業者の約7%)

(資料)図1、2:総務省「就業構造基本調査」再編加工、図3:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」(2018年1月)より中小企業庁作成

101.4

83.972.5

72.1

67.7

78.1

52.1 41.8 36.7

31.9

32.6 40.2

18.1 16.9 16.0

173.5

151.6 150.6

84.0 74.4 76.9

0.0

20.0

40.0

60.0

80.0

100.0

120.0

140.0

160.0

180.0

200.0

07 12 17

起業希望者 副業起業希望者

起業準備者 副業起業準備者

起業家

(万人)

(年)

34.7% 40.4% 43.6%

65.472.1

67.7

78.1

27.031.9 32.6

40.231.9 30.1 33.7

42.1

36.730.2 19.8

15.7

68.5

60.2

53.557.8

0

20

40

60

80

100

02 07 12 17

副業起業希望者 副業起業準備者

副業経営者(農林漁業以外) 副業経営者(農林漁業)

(万人)

(年)

旧経営者 新経営者

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24

経営者の世代交代(我が国の創業意向の状況)

我が国の18~64歳男女に占める起業活動者の割合は低位、かつ、起業無関心者の割合は高位で推移。

一方、我が国においては、起業に関心を持つ者が起業活動を行う割合は高いため、起業家を増やすためには、まずは起業に関心を持ってもらうことが重要。

図1 起業活動者の割合の推移 図3 起業無関心者、起業関心者に占める起業活動者の割合

図2 起業無関心者の割合の推移

3.83.5 5.2

5.3 4.8

12.3

6.26.2

3.1

8.6

10.7

0

4

8

12

16

13 14 15 16 17

日本 米国 英国 ドイツ

フランス オランダ 中国(%)

(年)

(資料)「Global Entrepreneurship Monitor:GEM調査」日本チーム再編加工

72.2 74.6 73.1 75.0 75.8

21.6

39.332.1

43.5

23.9

40.3

0

20

40

60

80

13 14 15 16 17

日本 米国 英国 ドイツ

フランス オランダ 中国(%)

(年)

1.11.5

0.40.8

0.3

1.01.6

14.915.3

10.1

9.0

4.9

12.0

17.3

0

4

8

12

16

20

日本 米国 英国 ドイツ フランス オランダ 中国

起業無関心者に占める起業活動者の割合

起業関心者に占める起業活動者の割合

(%)

旧経営者 新経営者

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経営者の世代交代(フリーランス・副業の状況)

フリーランスの形態をとる起業家は、自由度や裁量に関する満足度が高く、副業は、比較的に事業経験が短い事業を営む傾向。また、いずれも開業費用は低く抑えられている傾向。

個人が比較的簡単に創業できるチャンスが到来。※ここでの「フリーランス」とは、特定の組織に属さず、雇用・店舗なし、技術技能の提供で成り立つ事業を営む者、「副業」とは、雇用される傍ら、事業を営むことをいう。

25

図1 起業前後の仕事の収入及び自由度・裁量に関する満足度 図2 起業家が営む事業に関する仕事の経験年数

図3 類型別に見た開業費用

37.3

38.5

13.5

33.5

24.5

23.3

26.4

31.3

52.5

2.7

5.8

10.7

0% 100%

フリーランス起業家

副業起業家

フリーランス・副業

以外の起業家

10万円未満 10~100万円未満 100~1,000万円未満 1,000万円以上

(n=874)

(n=208)

(n=948)

(資料)三菱UFJリサーチ&コンサルティング㈱「中小企業・小規模事業者における経営者の参入に関する調査」(2018年12月)

18.718.3 20.1 16.4

23.5 23.0

28.928.9 26.0 36.5

29.4 30.5

22.5 27.6 28.326.0 19.6 18.9

19.5 20.7 18.3 14.6 17.4 18.6

0

20

40

60

80

100

起業前 現在 起業前 現在 起業前 現在

フリーランス起業家(n=999) 副業起業家(n=219) フリーランス・副業以外の起業家

(n=1,057)

満足 やや満足 どちらともいえない やや不満 不満(%)

9.9

33.8

7.3 14.2 11.228.2

20.6

39.5

28.3

40.225.1

40.429.3

20.5

39.3

37.0

30.5

23.9

0

20

40

60

80

100

起業前 現在 起業前 現在 起業前 現在

フリーランス起業家(n=999) 副業起業家(n=219) フリーランス・副業以外の起業家

(n=1,057)

(%)

(1)収入

(2)自由度・裁量

22.9

32.4

19.5

44.1

45.7

45.8

33.0

21.9

34.7

0% 100%

フリーランス起業家

(n=997)

副業起業家

(n=219)

フリーランス・副業

以外の起業家

(n=1,057)

3年未満 3~10年未満 10年以上

旧経営者 新経営者

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経営者の世代交代(フリーランスとしての創業)

まずはフリーランスとして起業し、その後、雇用を拡大するような事例も存在。起業の一形態として、フリーランスによる創業を促進することも重要。

フリーランスとして起業し、売上と雇用の面で着実な成長を続ける企業

ベイジ(従業員14名、資本金500万円)は、デザイン性に加え、戦略的なBtoBサイトの構築に強みを持つWeb制作会社。

代表の枌谷氏は、起業を志向し、専門学校への通学、デザイン会社への就職など、起業準備を進めたが、社員を抱える不安を払拭できずにいた。

腕試しとして、フリーランスの形で起業。仕事内容や収入には満足していたが、事業を拡大するため、法人化し、雇用を拡大することを決心。

法人化1年目より雇用に踏み切り、現在では、14名を擁するまでに成長。

雇用に踏み切ったことについて、「業務分担で仕事のスピード感が増した。今後は自身がいなくても回る組織づくりを目指す」と枌谷社長は語る。

図1 フリーランスとして起業し、雇用を拡大した起業家の割合

雇用拡大17.5%

雇用なし82.5%

図2 フリーランスから雇用を拡大した起業家の起業時の成長意向

【事例】株式会社ベイジ(東京都世田谷区)

そぎ たに

オフィス内の風景

77.0

55.0

64.3

36.4

23.0

45.0

35.7

63.6

0% 100%

フリーランスとして起業し

雇用を拡大した起業家(n=196)

起業家全体(n=2,275)

フリーランスとして起業し

雇用を拡大した起業家(n=196)

起業家全体(n=2,275)

売上

高雇

成長志向型 安定志向型

26

※「成長志向型」とは、売上高又は雇用に関する起業時に目指していた成長タイプについて「短期間で拡大させる」又は「中長期的かつ安定的に拡大させる」と回答した者、「安定志向型」とは、「拡大を意図しない(事業の継続を重視する」と回答した者をいう。

(資料)三菱UFJリサーチ&コンサルティング㈱「中小企業・小規模事業者における経営者の参入に関する調査」(2018年12月)

旧経営者 新経営者

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経営課題の解決に多様な外部専門家の知見を活用し成長する企業

ベジタル(従業員1名、資本金300万円)は、妊婦向けのスープなどの企画販売をする企業。

会社員時代に起業に関心を持つも、経営ノウハウがない中で会社を辞めて起業することはリスクが高いと判断し、副業として起業。4年後に本業へ移行し、法人化。

起業当初は、移動出店型のスープショップを運営していたが、妊婦向け食品のニーズに気付き、製品開発に着手。半年後に製品化に至るも販売面での課題に直面。

スポットコンサルティングサービス※を活用し、営業職の勤務者や異業種の経営者など、販売を本業にしている専門家2名への相談を実施。

業界ノウハウ・知見を得ることで、上記課題の解決の糸口を見つけることに成功。

27

経営者の世代交代(フリーランスの活躍の場)

起業家によるフリーランスの活用実績の地域差は小さく、約4割は今後の活用意向を有する。

活用実績がない者は、フリーランスに関する情報不足に起因する課題を抱えている。まずは1回活用してみることが重要。

【事例】株式会社ベジタル(群馬県前橋市)

31.2

34.5

34.2

33.8

33.6

32.5

23.2

29.4

9.2

14.1

11.8

13.5

14.4

7.3

10.7

14.3

10.1

10.6

8.0

7.2

9.0

5.7

7.1

7.1

22.9

19.7

24.0

23.7

21.3

27.6

25.0

19.7

26.6

21.1

22.1

21.7

21.8

26.8

33.9

29.4

0% 50% 100%

北海道(n=109)

東北地方(n=142)

関東地方(n=968)

中部地方(n=207)

近畿地方(n=432)

中国地方(n=123)

四国地方(n=56)

九州・沖縄地方(n=238)

活用実績があり、今後の活用にも関心がある 活用実績はないが、今後の活用に関心がある

活用実績があるが、今後の活用に関心はない 活用実績はなく、活用に関心もない

分からない

図1 起業家の所在地域別に見た、フリーランスの活用実績・意向

図2 フリーランスを活用する際の課題や懸念

20.3

13.3

25.3 24.7

31.9

25.4 27.233.6

35.0

16.3

0

10

20

30

40

どのような業務をアウト

ソーシングすればよいの

かわからない

フリーランスを探す手

段が分からない(手段

がない、見つからない)

フリーランス活用の費

用対効果が不明瞭

依頼した業務をこなす

能力があるか不安

特に課題は無い

活用実績があり、今後の活用にも関心がある(n=752) 活用実績はないが、今後の活用に関心がある(n=283)

(%)

マタニティスープ※幅広い業種・業態のビジネスパーソンが、フリーランスや

副業として、スポットコンサルティングを行うための顧客とのマッチングを行うプラットフォーム「ビザスク」を活用※図1:経済産業局の管轄地域の区分で集計、図2:主要な項目のみ表示。

(資料)三菱UFJリサーチ&コンサルティング㈱「中小企業・小規模事業者における経営者の参入に関する調査」(2018年12月)

旧経営者 新経営者

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副業として始めた製品開発で着実に成功を重ね、本業への移行を果たした企業

バタフライボード(従業員なし、資本金500万円)は、携帯性や拡張性等といった特徴を有するホワイトボードを開発・製造・販売する企業。

同社の福島社長は、前職の音響メーカーで仕事をする中で「どこでも使えるホワイドボードが欲しい」と思い、就業後の時間や週末を活用し、副業として製品開発を開始。

開発途上で何度も障壁に直面したが、国内外でのクラウドファンディングの活用により、顧客からの意見を踏まえた製品改良を重ねることで、事業化に自信を持ち、本業への移行を決断。

「自分のような普通のサラリーマンでもやりたいことを具現化できる」と福島社長は語る。

28

経営者の世代交代(副業としての創業)

まずは副業として起業し、その後、事業を本業に移行する事例も存在。起業の一形態として、副業による創業を促進することも重要。

【事例】バタフライボード株式会社(神奈川県横浜市)

同社製品「バタフライボード」 製品使用イメージ

本業へ移行68.0%

副業のまま32.0%

図1 副業として起業し、本業へ移行した起業家の割合

図2 副業に関する今後の意向

18.7

27.9

24.7

7.3

3.7

1.4

16.4

現在の副業を本業にしたい

現在の副業を本業にする可能性はあるが、現

時点では未定現在の副業は、副業のままにしたい

現在の副業をしながら、新たな副業(事業)を

始めたい現在の副業をやめたい

現在の副業をやめ、新たな副業(事業)を始

めたい分からない

(%)

(n=219)

(資料)三菱UFJリサーチ&コンサルティング㈱「中小企業・小規模事業者における経営者の参入に関する調査」(2018年12月)

旧経営者 新経営者

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29

中小企業・小規模企業経営者に期待される自己変革

※まず、中小企業・小規模事業者を取り巻く環境として、人口減少、デジタル化、グローバル化

といった「構造変化への対応」について分析し、これから中小企業や小規模事業者に「期待される

役割」や、中小企業の活躍を応援するステークホルダーとの関係について検討していきます。

さらに、その一例として、「防災・減災対策」について考えます。

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30

構造変化への対応(人口減少)

我が国が直面する最大の課題は、人口減少。

中小企業の労働生産性は、立地地域の人口密度との関係性が強い。

394

1,098

428

932

496

1,002

538

1,022

0

200

400

600

800

1,000

1,200

中小企業 大企業

カテゴリⅠ カテゴリⅡ カテゴリⅢ カテゴリⅣ(万円)

人口密度⇐ 低 高 ⇒

図1 可住地面積人口密度ランク別、労働生産性(製造業)

306

569

317

545

347

545

377

576

0

100

200

300

400

500

600

中小企業 大企業

カテゴリⅠ カテゴリⅡ カテゴリⅢ カテゴリⅣ(万円)

⇐ 低 人口密度 高 ⇒

図2 可住地面積人口密度ランク別、労働生産性(非製造業)

人口減少・競合参入という経営環境で、利便性の向上や固定客の獲得により地域内シェア首位を維持する企業

株式会社スーパーまるまつ(従業員24名、資本金2,500万円)は、地域密着型のスーパーを経営する企業。

同社の所在する地域は20年間で約1割減少する中で、同社はかねてより人手不足に悩まされていたことから、データを利用した正確な販売予測と在庫管理を実現することで業務負荷軽減を実現。

また20年以上前からチラシによる販促を止め、ポイントカードによる固定客の取り込みを進め、優良顧客の囲い込みを実現。

近年は、主要顧客である高齢者に対して送迎サービスを開始。送迎社内で交わされるコミュニケーションにより顧客との関係性はより強固なものに。

このような地域密着の取組を継続的に行うことで、同地域におけるシェア1位という地位を確立している。

【事例】株式会社スーパーまるまつ(福岡県柳川市)

※人口密度の下位25%以下を「カテゴリⅠ」、25%超~50%以下「カテゴリⅡ」、50%超~75%以下「カテゴリⅢ」、75%超「カテゴリⅣ」の4つのランクに分類した。

(資料)総務省・経済産業省「平成28年経済センサス‐活動調査」再編加工、総務省「平成27年国勢調査」 「統計でみる市区町村のすがた2016」

同社店舗

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31

構造変化への対応(デジタル化①)

デジタル化の進展により顧客との接点は増加。無料・安価なソーシャルメディア(ブログ、SNS)は新たなマーケティングツールとして活用が期待される。

商圏内需要の減少に対し、EC(電子商取引)を有効活用することで販路を拡大するチャンスは十分に存在。

82.4

87.2

94.1

95.7

15.3

12.8

4.3

4.1

0% 100%

2010年

2017年

2010年

2017年

中小

企業

(100~

299人

大企

(300人

以上

開設している 開設していない 無回答

12.1

25.2

12.6

36.7

85.9

73.7

86.5

62.0

0% 100%

2011年

2017年

2011年

2017年

中小

企業

(100~

299人

大企

(300人

以上

活用している 活用していない 無回答

図1 ホームページ開設状況の推移 図2 ソーシャルメディアサービスの活用状況の推移

44.7

55.7

52.9

42.0

0% 100%

中小企業

(100~299人)

大企業

(300人以上)

利用している 利用していない

図3 ECの利用状況(2017年)

33.2

16.1

8.5

40.8

22.1

15.3

0

10

20

30

40

50

企業から調達 一般消費者へ販売 企業へ販売

中小企業(100~299人) 大企業(300人以上)

(%)

図4 EC実施企業の利用目的(2017年)

※.複数回答のため、合計は必ずしも100%とならない。「ECを利用している」と回答した者に対する質問。(資料)総務省「通信利用動向調査」

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AIによるデータ分析で、業務改善や従業員の士気向上、売上拡大を実現した企業

有限会社ゑびや(従業員45名、資本金500万円)は、伊勢神宮内宮前で、創業100年以上にわたり食堂を経営してきた企業。

同社では、「経験と勘」に基づく事業運営が常態化。正確な需要予測ができないため、食品ロスと現場従業員の疲弊について悩んでいた。

2012年に同社に入社した現社長は、「来客予測」を重点課題と定め、AIを利用して膨大なデータから精緻な来客予測を実現するシステムを開発・導入した。

時間帯別の来客予測や注文予測は、90%以上の精度を誇り、食品の廃棄ロスが大幅低減され、従業員の業務負担も大幅軽減。

従業員数を増やすことなく売上高4倍、週休二日制・長期休暇の導入に加え、給与アップを実現。

32

構造変化への対応(デジタル化②)

近年、注目されている新たな技術としてIoT・AIが挙げられるが、中小企業は導入に消極的。

IoTを導入しない最大の理由は、「導入後のビジネスモデルが不明確」であり、まずはIoTが自社の経営にどのように活用できる可能性があるかを検討することが重要。

24.9

26.5

15.1

28.6

54.3

38.8

0% 100%

中小企業

(100~299人)

大企業

(300人以上)

IoT・AI

どちらか(あるいはどちらも)を導入している

IoT・AI

どちらか(あるいはどちらも)を導入を検討している

IoT・AIどちらも導入意向はない

図1 AI・IoTの導入状況(2017年)

14.6

21.8

7.4

12.0

46.5

52.1

8.4

10.6

12.3

18.9

10.4

26.9

2.5

14.2

19.5

12.4

1.6

23.0

17.1

11.7

5.1

36.7

14.1

0% 100%

中小企業

(100~299人)

大企業

(300人以上)

中小企業

(100~299人)

大企業

(300人以上)

積極的に活用 ある程度活用 活用できていないが、活用を検討 活用する予定はない 分からない 無回答

既存業務の改善

商品サービスの開発や展開

図2 IoTにより収集・蓄積したデータの活用状況(2017年)

※IoTを導入企業していると回答した企業に対する質問。

(資料)総務省「平成29年通信利用動向調査」

【事例】有限会社ゑびや(三重県伊勢市)

データを確認する従業員の様子

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クラウドファンディングにより、新たな商品開発と顧客開拓につなげた企業

前原光榮商店は、1948年に創業した高級傘の製造・販売を行う企業。

傘は常に電車での忘れ物の第1位であるため、IoTデバイスを取り付け「常に場所を把握できる傘」を開発することで、同社の傘もより多くの人に利用してもらえるのではないかと考えた。

他方、この新商品は仮説に基づく企画で、売れる確約はないため、極力リスクを排除した形で商品開発及び販売する方法を検討する中でクラウドファンディングを活用。

クラウドファンディングは、購入希望者から資金調達を行うため売れ残りリスクが低減されるほか、資金調達の状況から「消費者にとって価値のある商品か」を確認できる点が魅力だった。

1か月間の出品期間で約50万円の資金調達を実現し、新商品を開発販売。価格や商品設計面での課題も明らかになり、次の新商品開発につなげることができた。

33

構造変化への対応(デジタル化③)

デジタル化の進展により、新たなビジネスも数多く出現。

シェアリングやフィンテックの台頭は、中小企業の経営資源を補完する役割を果たす可能性。

設備のシェアを通じて、中小製造業設備に関する課題を解決している企業

シェアリングファクトリー(従業員3名、資本金500万円)は、中小製造業に対する製造設備シェアのプラットフォームを提供する企業。

一般に、製造業は設備を自ら所有することが多いが、技術革新のスピードが速まる中で、思い切った設備投資を行うことができない中小企業も多数存在する。

事業立ち上げに際して、町工場の設備稼働状況を調査したところ、不稼働設備を所有している中小企業が多数存在する一方、近隣にその設備の利用ニーズがある企業の存在が確認され、シェアリングによる両者のマッチングビジネスを構想。

現在、同社プラットフォームには機械装置や計測器など400を超える設備が登録されており、マッチング件数はサービス開始から順調に増加。

【事例】株式会社シェアリングファクトリー(愛知県名古屋市) 【事例】株式会社前原光榮商店(東京都台東区)

同社サービス 同社製品

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34

構造変化への対応(グローバル化①)

過去30年、海外製品の国内市場への流入は大きく増加、海外への業務委託は製造工程のみに留まらず、企業内の間接業務も海外へ流出。競合は国内に限らず、世界中に存在する。

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18

食料品及び動物 化学製品 原料別製品 機械類及び輸送機器 雑製品(百億円)

(年)

図1 主要製品別、我が国の輸入額の推移

19,948 19,268 20,964 24,478

27,480

36,739

47,207

36,279

10.6

11.712.3

12.913.4 13.6 14.0

14.3

0

3

6

9

12

15

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

09 10 11 12 13 14 15 16

海外への製造委託額(左軸)

海外への製造委託を行っている企業割合(右軸)(億円)

(年度)

(%)

図2 海外への製造委託を行っている企業の割合及び委託額

5,221 4,803 4,984

6,816

8,414 9,480

11,378 11,256

6.8 7.17.6

8.28.8 9.0

9.4 9.7

0

2

4

6

8

10

0

4,000

8,000

12,000

16,000

09 10 11 12 13 14 15 16

海外への製造以外の委託額(左軸)

海外への製造以外の委託を行っている企業割合(右軸)(億円)

(年度)

(%)

図3 海外への製造以外の委託を行っている企業の割合及び委託額

※「原料別製品」には、「革及び同製品毛皮」「ゴム製品」「木製品及びコルク製品(除、家具)」「紙類及び同製品」「織物用糸及び繊維製品」「非金属鉱物製品」「鉄鋼」「非鉄金属」「金属製品」、「機械類」には、「一般機械」「電気機器」「輸送用機器」、 「雑製品」には、「照明器具」「家具」「バッグ類」「衣料及び同附属品」「履物」「精密機器類」「その他雑製品」が含まれる。

※「海外への製造委託を行っている企業割合」は、国内外問わず製造委託を行っている企業のうち、海外への委託を行っている企業の割合。

(資料)図1:財務省「貿易統計」、図2,3」経済産業省「企業活動基本調査」再編加工

約4.2倍約7.5倍約2.1倍約4.5倍約1.8倍

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28.8

26.4

16.4

21.4

0

5

10

15

20

25

30

35

97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16

大企業 中小企業(%)

(年度)

35

構造変化への対応(グローバル化②)

過去20年、中小企業の直接輸出・直接投資は徐々に増加。

都市部・地方部別では、特に地方部で拡大伸び率が大きく、拡大の余地も大きい。

26.8

30.9

6.0

14.2

0

10

20

30

97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16

大企業 中小企業(%)

(年度)

図1 直接輸出企業割合 図2 海外子会社を保有する企業割合

2,416 3,293

762

1,354

21.7

25.9

9.3

15.1

0

5

10

15

20

25

30

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16

直接輸出企業数(都市部):左軸 直接輸出企業数(地方部):左軸

直接輸出企業の割合(都市部):右軸 直接輸出企業の割合(地方部):右軸(%)

図3都市部・地方部別、中小企業の直接輸出企業数及び直接輸出企業の割合

1,208 2,370 450

921

10.8

18.7

5.5

10.3

0

5

10

15

20

0

2,000

4,000

6,000

8,000

97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16

直接投資企業数(都市部):左軸 直接投資企業数(地方部):左軸

直接投資企業の割合(都市部):右軸 直接投資企業の割合(地方部):右軸

(%)

図4都市部・地方部別、中小企業の直接投資企業数及び直接投資企業の割合の推移

※ここでいう「都市部」とは、「東京圏(埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県)」、「大阪圏(京都府・大阪府・兵庫県・奈良県)」、「名古屋圏(岐阜県・愛知県・三重県)」の三大都市圏。「地方部」とは、それ以外の道県をいう。※ここでいう「直接投資企業割合」は、都市部・地方部それぞれに立地する中小企業の総数に占める直接投資企業の割合。

(資料)経済産業省「企業活動基本調査」再編加工

(年度) (年度)

(社)

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「体験=コト消費」を提供して、インバウンドのニーズをとらえた企業

梅守本店(従業員100名、資本金1,000万円)は、寿司の体験教室「うめもり寿司学校」を営む企業。

郊外型回転寿司店として事業を開始し、寿司物販店を展開してきたが、「食を通じて人々を幸せにする」という理念のもと、寿司という「モノ」だけでなく、寿司を握るという「体験」の提供に思い至り、2012年から寿司学校をスタート。

当初のターゲットは近隣住民だったが、東大寺の参道に外国人観光客が増加していることに着目し、メインターゲットを外国人観光客に変更。

寿司学校では外国人観光客が「寿司職人」になりきることができるよう、本物の職人の衣装に着替え寿司を握る。またエンターテインメント性を高めるため、社長らが日本語で盛り上げる。

寿司学校は4店舗まで拡大し、5年間で30万人の外国人観光客が来場。 36

構造変化への対応(グローバル化③)

外需を取り込む方法の1つとして、近年大きく増加するインバウンドは、縮小が懸念される国内市場の中で大きなチャンス。

伸び率で見れば、地方部が外国人宿泊者数の上位に来ている。

31.2

4.5

0

1

2

3

4

5

0

5

10

15

20

25

30

35

96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18

百万

訪日外国者数(左目盛)

訪日外国者の旅行消費額の推移(右目盛)

(百万人)

図1 訪日外国者数及び旅行消費額の推移

13.2

11.310.5

8.2 8.2 8.0 7.7 7.4 7.3 7.1

0

2

4

6

8

10

12

14

香川県 奈良県 佐賀県 沖縄県 和歌山県 鹿児島県 青森県 岡山県 岐阜県 宮崎県

(倍)

図2都道府県別、外国人延べ宿泊者数の変化(倍率)(2017年/2011年)

【事例】株式会社梅守本店(奈良県奈良市)

(資料)図1:日本政府観光局「訪日外客数の動向」、観光庁「訪日外国人消費動向調査」、図2:観光庁「宿泊旅行統計調査」

(年)

(兆円)

寿司学校の様子

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37

期待される役割(中小企業基本法上の位置づけ)

1999年、中小企業基本法が改正され、21世紀の中小企業像が示されてから20年が経過。中小企業像は基本的に大きく変わっていない。

但し、社会変化とともに期待される役割も変化。中小企業は自社の役割を捉え直し、改めて果たすべき役割を自ら見出していくことが重要。

中小企業基本法(旧) 中小企業基本法(改正後)

政策理念 〇「格差の是正」 〇多様で活力のある中小企業者の育成・支援(結果として格差の存在は是認)

政策目的 〇生産性の向上(中小企業構造の高度化)〇取引条件の向上(事業活動の不利の補正)

〇経営の革新及び創業の促進〇経営基盤の強化〇経済的社会的環境の変化への適応の円滑化(*独立した中小企業者の自主的な努力を前提)

図1 中小企業基本法改正(1999年)のポイント

21世紀の中小企業像

① 市場競争の苗床

②イノベーションの担い手(多様な財・サービスの提供、新たな分業関係の形成)

③ 魅力ある就業機会の担い手

④ 地域経済社会発展の担い手

(資料)図1、2:中小企業庁「新中小企業基本法-改正の概要と逐条解説-」(2000年)より、中小企業庁作成、図3:中小企業庁の小規模企業基本政策小委員会を参考に作成

図2 中小企業基本法改正(1999年)のポイント 図3 これからの中小企業に期待される役割(4つの切り口)

中小企業の「役割」

① 我が国経済を牽引する役割

② サプライチェーンを支える役割

③ 地域経済を活性化する役割

④ 地域の生活・コミュニティを支える役割

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独自の技術力をいかして大企業の課題を解決するオープンイノベーションを実現する企業

HCI(従業員48名、資本金2,000万円)は、ケーブルワイヤー製造装置の製造販売及びロボットシステムSIerを行う企業。

同社は携帯電話に利用される極細のケーブルを安定して撚るという独自技術を有していた。

大手電機メーカーの三菱電機は、ワイヤーハーネスを製造するロボットシステムの開発を進めていたが、柔らかいケーブルの扱いが難しく、実用化に十分な精度を実現できなかった。

三菱電機のロボットでシステムを作っていたHCIは、独自の技術で「多芯ワイヤーハーネス自動製造ロボットシステム」を開発し、実用に至った。

この実績により、同社と三菱電機の関係はより強固なものとなり、現在も新たなシステムなどを協力して開発しているほか、AIシステムでの技術力を磨いている。

38

期待される役割(我が国経済を牽引する役割)

国際競争力低下が懸念される中で、新たな財・サービスを生み出すための研究開発が重要。

大企業にとっても中小企業は魅力的な連携相手。連携により自社の経営資源を補完しつつ、研究開発を行うことで、中小企業の競争優位を更に高める可能性。

【事例】株式会社HCI(大阪府泉大津市)

0.700.98

3.43

5.11

0.06 0.140.210.77

0

1

2

3

4

5

6

94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16

中小企業(製造業) 大企業(製造業)

中小企業(非製造業) 大企業(非製造業)

(%)

(年度)

75.5 71.2

56.750.9

34.2

22.0 19.6

1.8

01020304050607080

国内の大学等 大企業

(外部コンサルタン

トや民間研究所を

除く)

中小企業

(外部コンサルタン

トや民間研究所を

除く)

国内の公的研究

機関

外部コンサルタント

や民間研究所

ベンチャー企業・起

業家

(外部コンサルタン

トや民間研究所を

除く)

国外の大学等・公

的研究所

その他

(%)

図1 売上高対研究開発費の推移

図2 外部組織と連携した資本金1億円以上の企業の連携相手

※2014~16 年度の研究活動で他組織との連携を実施したと回答した企業に対して、それぞれの組織の種類ごとに連携したかどうかを「はい」か「いいえ」で回答を求めた。

(資料)図1経済産業省「企業活動基本調査」再編加工、図2:文部科学省 科学技術・学術政策研究所「民間企業の研究開発に関する調査報告 2017年」

同社のワイヤーハーネス

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39

期待される役割(サプライチェーンを支える役割①)

我が国の強みである「ものづくり」は、サプライチェーンを構築する中小企業によるところが大きい。

製造業における取引構造について過去10年の変化を分析。

直近10年間では、全体として大きな変化は見られない。

32.61

30.93

23.47

26.12

34.13

32.74

0% 100%

07

08

09

10

11

12

13

14

15

16

17

上場企業 1次取引企業 2次取引企業 3次取引企業

4次取引企業 5次取引企業 6次取引企業 独立型企業(年)

45,953

8,276 7,287

4,743

7,164

21,698

変化なし(独立型除く) 階層上昇(独立型除く) 階層下降(独立型除く)

非独立から独立 独立から非独立 独立型のまま

図1 製造業における取引構造の階層化(構成比率) 図2 2007年と2017年の取引階層の変化(製造業)

※「企業相関ファイル」に収録されている製造業企業の仕入先・販売先から取引関係の有無を判定。※ここでいう「上場企業」とは、製造業の東証一部上場企業。※ここでいう「n次取引企業」とは、上場企業を起点にした取引関係で、何社先にあるかを数えたもの。※ここでいう「独立型企業」とは、上場企業から6次取引企業までに分類されなかった製造業の企業。

資料:㈱東京商工リサーチ「企業情報ファイル」「企業相関ファイル」より中小企業庁作成

(n=95,121)

(社)

同一階層に留まる企業48.3%

取引階層内⇔独立型入れ替り企業

12.5%

階層遷移した企業16.4%

独立を維持する企業22.8%

▲1.68%pt +2.65%pt

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40

期待される役割(サプライチェーンを支える役割②)

階層変化の類型別に、07年から17年までの財務指標の変化を分析。

ポジションが変化した企業は、そうでない企業と比較し、総じてパフォーマンスが高い。

377

302 310

210 230

189

328 283

263

170 200

147

-49 -19

-47 -40 -30 -42 -100

0

100

200

300

400

変化なし

(独立型除く)

階層上昇

(独立型除く)

階層下降

(独立型除く)

非独立から独立 独立から非独立 独立型のまま

2007年 2017年 増減額(17年-07年)(百万円)

56.2

30.2 23.9

14.8 14.7

8.7

55.4

40.5

27.5

13.7

18.1 11.0

-0.8

10.3

3.5

-1.1

3.5 2.3

-10

0

10

20

30

40

50

60

変化なし

(独立型除く)

階層上昇

(独立型除く)

階層下降

(独立型除く)

非独立から独立 独立から非独立 独立型のまま

2007年 2017年 増減額(17年-07年)(百万円)

3.1

2.4 2.3 2.0 2.0

1.7

3.2 3.3

2.6 2.3 2.4

2.0

0.1

0.9

0.3 0.3 0.4 0.3

0

1

2

3

4

変化なし

(独立型除く)

階層上昇

(独立型除く)

階層下降

(独立型除く)

非独立から独立 独立から非独立 独立型のまま

2007年 2017年 増減(17年-07年)(%:%pt)

3.0 2.7 2.6 2.7 2.6 2.4

3.4 3.6

3.2 3.4 3.6

3.3

0.4

1.0

0.5 0.7

1.0 0.9

0

1

2

3

4

変化なし

(独立型除く)

階層上昇

(独立型除く)

階層下降

(独立型除く)

非独立から独立 独立から非独立 独立型のまま

2007年 2017年 増減(17年-07年)(百万円)

図1 6類型別、売上高(中央値)の比較 図2 6類型別、営業利益(中央値)の比較

図3 6類型別、売上高営業利益率(中央値)の比較 図4 6類型別、労働生産性(中央値)の比較

※図1~4:2007年と2017年の2時点のデータが確認できる企業に限定。※図4:「労働生産性」は、「付加価値額÷従業員数」。「付加価値額」は、「営業利益+減価償却実施額+賃借料+租税公課+人件費」。

(資料)㈱東京商工リサーチ「企業情報ファイル」「企業相関ファイル」「財務情報ファイル」より中小企業庁作成

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革新的な受発注システムにより、調達に係る煩雑な見積もり作成業務を大幅に効率化する企業

キャディ(従業員30名、資本金1億9千万円)は、AIを駆使して様々な金属加工製品のマッチングを行う企業。

一般に、町工場の社長は受注の度に見積もり作成に忙殺される上、8割以上が失注になるなど負担が大きい。

同社のシステムでは、金属加工を行う町工場をパートナーとして採用し、固定価格で生産委託を構築しており、発注者のニーズに合った町工場との最適なマッチングが行われ、確定した発注が行われる。

このため、パートナーである町工場にとっては多大な見積り作成負担から解放されるほか、年間を通じ安定的な受注を獲得できる。

他方、発注者側にとっては、パートナー企業の中から最適な企業と共に最もコストメリットの大きい企業が提示される。この時、固定価格であることから相見積もりを取る必要がなく、AIによる最適なマッチングが行われるため、最短で7秒、原則即日中に見積りが提示される。

41

期待される役割(サプライチェーンを支える役割③)

「請負型」から「提案型」のビジネスモデルに転換し、サプライチェーン内での地位を確立した企業

最上インクス(従業員103名、資本金4,600万円)は、電気・電子部品、薄板金属加工品の製造を行う企業。

創業以来、国内の大手電機機器・部品メーカーを顧客に順調に業績を拡大してきたが、リーマンショック時の大きな受注減少を受け、顧客から受注を受けて製造するという「請負型」のビジネスモデルの限界を感じた。

新たなビジネスモデルを模索する中、同社が受注している「試作」は発注元企業の「新たに開発する製品」を知る機会であり、この新製品に必要なキーパーツを自社製品として製造する「提案型」ビジネスモデルへの転換を企図。

ビジネスモデルの転換は、予算見積りの難しさや在庫リスクなどハードルもあったが、付加価値に応じて値決めができる点は大きな魅力。

生産設備を導入するなど生産体制を整備しビジネスモデルを転換。この結果、これまで取引の無かった重工業、自動車、発電メーカーなどから引き合いを受けるなど事業機会は増大。

【事例】株式会社最上インクス(京都府京都市) 【事例】キャディ株式会社(東京都墨田区)

CADDiの仕組み

同社の代表的なキーパーツであるフィン製品

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42

期待される役割(地域経済を活性化する役割)

地域経済を活性化するためには、「地域資源」の有効活用が期待される。

しかし、経済環境・産業構造が変化する中で、地域資源を活用した「産地産業」は、多くの分野で企業数・出荷額ともに減少しつつある。

13,735

5,556

9,391

4,616 3,808

1,478 341

154 163 83 0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16

衣料 木製家具類 陶磁器類 眼鏡類 金属食器類(事業所数)

1,631

1,023

1,390

767 1,005

743

85 112

0

500

1,000

1,500

2,000

99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16

清酒 水産練製品類 味噌 チーズ(事業所数)

27,563

11,333 12,286

6,307 8,328 6,072

1,005 462 228 122 0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16

衣料 木製家具類 陶磁器類 眼鏡類 金属食器類(億円)

8,121

4,436 4,640

3,704

1,589 1,392

1,665

2,679

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16

清酒 水産練製品類 味噌 チーズ(億円)

図1 代表的な産地産業(日用品)の産出事業所数の推移 図2 代表的な産地産業(飲食料品)の産出事業所数の推移

図3 代表的な産地産業(日用品)の出荷額の推移 図4 代表的な産地産業(飲食料品)の出荷額の推移(年) (年)

(年) (年)(資料)経済産業省「工業統計表」再編加工

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43

期待される役割(地域経済を活性化する役割)

地域産品の維持・発展のためには、海外を含む販路開拓や、市場のニーズに合わせた製品開発をしていくことが重要。

地域産品の良さを活かし、海外展開を図る企業

高澤商店(従業員27名、資本金1,000万円)は、「和ろうそく」の製造や線香などの仏事用品の販売を行う企業。

同社は、高度経済成長期に業容を拡大し、現在まで和ろうそくの国内シェア首位を維持している。

しかし、同社社長は、国内の人口減少などを背景に長期的な「和ろうそく」の需要減少に危機感を抱き、和ろうそくの新たな可能性を模索。

石川県からパリで開催される見本市への参加を依頼され、海外市場での和ろうそくの評価を知るために出品。

その結果、植物由来の原料を使用している和ろうそくの評価は高く、海外展開の可能性を確認できた。

海外のニーズに合わせ、植物由来の原料を利用しているイメージが訴求できるようデザインを工夫した「和ろうそく ななお」を新商品として開発し、海外への販路拡大を進めている。

【事例】株式会社高澤商店(石川県七尾市)

同社和ろうそく

地域産品の販路拡大を支援する、地銀発の地域商社

地域商社やまぐち(従業員9名、資本金5,000万円)は、山口県と山口フィナンシャルグループの地方創生に関わる包括連携協定に基づいて設立された企業。

県内産品の販路拡大に資する一般的な商社機能を有するほか、仕入先の中小企業に対する品質管理の指導やマーケティング支援を行うなど、販路拡大に苦心する地域産品メーカーに対して手厚い支援を行っている。

厳選された県産品は、同社が「やまぐち三ツ星セレクション」として全量買取りし、首都圏に販売。

「やまぐち三ツ星セレクション」は、山口県の公募によって候補が集められ、都市圏のバイヤーを含めた審査員により「こだわり、ストーリー性、山口県産の原料使用」などの観点から審査の上、決定。

また、商品開発候補として認定されると、山口県から1社あたり150万円を上限として研究開発費の2/3が補助として支給され、同社及びメーカーと協力して商品開発が行われる。

現在、16社34アイテムが「やまぐち三ツ星セレクション」として販売されている。

【事例】地域商社やまぐち株式会社(山口県下関市)

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期待される役割(地域の生活コミュニティを支える役割)

人口減少が進む中、過疎地域の生活コミュニティを維持することは、喫緊の課題。

より効率的な仕組みを作る工夫や、住民自らの努力も必要とされる。

地域の小売・サービス事業者による新たなネットワーク経営(ローカルプラットフォーム)を推進する企業

コスモス・ベリーズ(従業員73名、資本金1億円)は、地域の中小小売業・サービス業の事業者による新たなネットワーク経営の在り方を推進する企業。

小売業・サービス業は、地域内需要に依存しがちなビジネスモデルだが、少子高齢化・人口減少などにより、特に地方部では地域内需要の縮小が懸念される。

このような環境変化を踏まえ、同社は地域中小小売・サービス業の新たなモデルとして、「業態店」を提案。

このモデルは、加盟店をリーダーとし、地域の複数の異業種店舗との間で、元請・下請の関係ではない水平分業型の協業関係(ローカルプラットフォーム)を構築するもの。

具体的には、顧客からの悩み事を受けた企業が、その悩みを解決できる協力企業を紹介するモデル。地域住民はワンストップで生活の悩みを解決でき、事業者側は協力企業間で顧客ニーズを共有し、需要を発掘できる仕組み。

2014年から全国に広がりつつあり、2019年2月末時点で、山形、千葉、長野、香川、福岡の5例が存在。

【事例】コスモス・ベリーズ株式会社(愛知県名古屋市)

生活基盤を守るため、地域住民により設立された企業

あば村(出資者181名、出資金527万円)は、地域住民により設立され、住民向けのガソリンスタンドや日用品を取り扱う商店を運営する企業。

過疎の進展により津山市に合併された阿波(あば)村では、相次いで地域インフラの閉鎖が進み、住民に必要とされてきたガソリンスタンドも撤退することになった。

住民で構成される自治協議会はガソリンスタンドを存続させるため、住民自らがガソリンスタンドを設立・経営していく方針を打ち立て、2014年に同社が設立された。

同社はガソリンスタンドだけでなく、買い物難民対策のため、つやま産業支援センターの協力を得て地元スーパーと提携し、配達型スーパーも展開してきた。

2019年3月からは同センターの支援期間が満了。これを受け、生活基盤を維持するため、収益性の見直しを行った移動型スーパーとして事業を継続することとなった。

このモデルでは通常価格より2~3割上乗せして販売しているが、車を使えない高齢者にはメリットが大きく、住人の理解を得た上でモデルを転換。地域インフラとして重要な役割を果たしている。

【事例】合同会社あば村(岡山県津山市)

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ハザードマップを基に事業所を高台移転するなど利用者・従業員の安全確保に注力する企業

池ちゃん家・ドリームケア(従業員40名、資本金400万円)は、介護施設(17事業所)を営む企業。

東日本大震災の津波被害を見て、自社の防災体制に不安を感じ、事前対策に取り組み始めた。

その中で、自社の地域のハザードマップを確認したところ、焼津市内の1事業所が津波浸水想定地区にあることが判明。

災害時における利用者や従業員の安全を確保し、事業継続を図る上で必要不可欠と捉え、一部事業所を高台に移転。

調達先を複数にし、災害時にも、移動困難な利用者が、非難することなくサービスを受けられるようにしている。

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防災・減災対策(自然災害のリスク認知)

自社の自然災害に対するリスクを把握していない企業は半数以上を占める。

リスク把握の有効なツールにハザードマップがあるが、被災リスクが存在する企業であっても、確認したことがある者は半分以下にとどまっている。

【事例】有限会社池ちゃん家・ドリームケア(静岡県焼津市)

高台へ新築移転した事業所

図1 従業員規模別、自然災害に関して自社が抱えるリスクの把握状況

図2 ハザードマップ上の自社の浸水リスク区分別、ハザードマップ確認状況

(資料)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株「中小企業の災害対応に関する調査」、「小規模事業者の災害対応に関する調査」

2.3

2.1

2.3

2.3

2.9

20.6

29.6

30.2

34.2

44.7

7.3

4.9

5.2

4.9

4.9

55.8

53.4

54.7

52.6

44.5

14.0

10.0

7.6

6.0

3.1

0% 100%

20人以下

21~30人

31~50人

51~100人

101~300人

既に調べて把握し、被災時の損害

金額まで想定できている

既に調べ、一定程度把握している

今すぐ調べてリスクを把握したい

いずれ調べてリスクを把握したい

リスクの把握に取り組むつもりはない

39.5

46.1

44.4

45.8

48.4

60.5

53.9

55.6

54.2

51.6

0% 100%

0m

0m超、0.5m未満

0.5~1.0m未満

1.0~2.0m未満

2.0m以上

自社の地域のハザードマップを見たことがある 自社の地域のハザードマップを見たことがない

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被災経験を教訓に、小さなことから災害対策に着手している事業者

丸田屋生花店(従業員4名、個人事業者)は、親子2世代で2店舗を経営する生花小売業。

1999年の台風16号による飛騨川の河川氾濫で、店舗が床上浸水の被害を受けたことをきっかけに、災害対策を実施。

具体的には、店舗入口の嵩上げ、入口の密閉度を高める自動ドアへの変更、匂いを取るための換気扇の設置、主要電気設備の配線・コンセント等の上部移設などを行った。

2018年の7月豪雨により再び水害が発生し、フロア内の商品には被害が生じたが、生花用冷蔵庫内の商品は浸水高より上部にあったため被災せず、また、主要電気設備の不具合もなかった。

結果、被災翌日には店舗清掃をしながらであったが、開店して業務を継続することができた。

46

防災・減災対策(防災・減災対策①)

防災・減災対策を行った企業ほど、短期間で売上を回復できる。

【事例】丸太屋生花店(岐阜県下呂市)

店舗外観 上部に位置する電気設備生花用冷蔵庫

図1被災前における自然災害への備えの有無別、下がった売上が元の水準に戻るまでに掛かった期間

53.3

41.7

38.9

39.5

7.8

18.8

0% 100%

被災以前に、

自然災害への備えを

行っていた

被災以前に、

自然災害への備えを

行っていなかった

半年以内 半年超 元の水準に戻っていない

(資料)三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)「中小企業の災害対応に関する調査」、「小規模事業者の災害対応に関する調査」

(注)従業員21人以上の事業者を対象に集計

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防災・減災対策(防災・減災対策②)

特に規模が小さい事業者は、防災・減災対策の取組が不十分な企業が多い。

理由としては「何から始めれば良いかわからない」とする事業者が最多。

自然災害への備えに具体的に取り組んでいる割合図1 自然災害への備えに取り組んでいない理由図2

45.9

54.1

取り組んでいる 取り組んでいない

21.9

78.1

(資料)三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)「中小企業の災害対応に関する調査」、「小規模事業者の災害対応に関する調査」

(1)21人以上

(2)20人以下

(1)21人以上

(2)20人以下

31.8

23.919.9

15.6 15.0 13.3

0

10

20

30

40

何から始

めれば良

いか分か

らない

人手不足 複雑と感

じ、取り組

むハード

ルが高い

取組の重

要性や効

果が不明

法律や規

則での要

請がない

被災した時に

対応を考えれ

ば良い

43.1

17.6 17.314.7 12.4 10.9

0

10

20

30

40

50

何から始

めれば良

いか分か

らない

人手不足 複雑と感

じ、取り組

むハード

ルが高い

取組の重

要性や効

果が不明

法律や規

則での要

請がない

被災した時に対

応を考えれば良

(%)

※複数回答のため、合計は必ずしも100%にはならない。※「その他」、「特に理由はない」以外に、回答率が10%以上の項目を抽出

(%)

(%)

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防災・減災対策(BCPの策定①)

事業継続計画(BCP)の策定率は全体で1割以下にとどまり、一層の取組の余地が存在。

取引先からの働きかけがBCP策定のきっかけとなるため、取引先にも一定の支援が求められる。

図1

下請業務を行う事業者における、取引先による働きかけの有無別に見た、BCPの策定状況

図3 下請業務を行う事業者が、災害対策に関して取引先に求めること図4

※複数回答のため、合計は必ずしも100%にはならない。※ 「特になし」「その他」以外で、回答率が高い上位5つの項目を表示

67.7

8.5

32.3

91.5

0% 100%

直接の取引先からBCPの策定を要請され

ている

直接の取引先からBCPの策定を要請され

ていない

策定している 策定していない

(1)21人以上

注)1.主要事業におけるサプライチェーン内での位置付けが「下請」と回答した者を集計している。2.BCPについて「名称は知っているが、策定していない」又は「名称を知らず、策定もしていない」と回答した者を、「策定してい

ない」者として集計している。

23.117.8 17.8

11.1 10.18.411.8 9.2 7.6

52.9

0

10

20

30

40

50

60

販売先からの勧め 行政機関からの

勧め

自身の被災経験 国内での災害報道 地域の支援機関

からの勧め

21人以上 20人以下(%)

33.3

28.125.7

15.1 14.2

22.2 20.823.9

17.2

10.2

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

30.0

35.0

取引先が行っている

対策内容についての

紹介

災害対策の取組の

検討、実施に当たっ

ての相談相手

仕入先の被災時に

おける、原材料等の

代替供給先の紹介

自社の被災時にお

ける代替生産先の

紹介

セミナーの開催、専

門家派遣などの

BCP策定支援

21人以上 20人以下(%)

25.0

2.3

75.0

97.7

0% 100%

直接の取引先からBCPの策定を要請され

ている

直接の取引先からBCPの策定を要請され

ていない

(2)20人以下

8.9

2.2

10.1

14.2

19.8

34.2

46.8

41.5

48.1

54.8

57.1

51.8

44.3

56.3

41.8

31.0

23.1

14.0

0% 100%

全体

20人以下

21~30人

31~50人

51~100人

101~300人

策定している 名称は知っているが、策定していない 名称を知らず、策定もしていない

(資料)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株「中小企業の災害対応に関する調査」、「小規模事業者の災害対応に関する調査」

従業員規模別にみたBCP策定状況 BCP策定のきっかけ図2

Page 51: BBLセミナー プレゼンテーション資料(資料)総務省・経済産業省「平成28年経済センサス‐活動調査」再編加工. 企業数( 2016. 年) 従業者数(

地域企業の事業継続力強化に取り組む地方銀行

紀陽銀行は、和歌山県や大阪府を中心に営業している金融機関。紀陽リース・キャピタルは、紀陽銀行を母体とする、リースと投資・コンサルティングを行う企業。

和歌山県は南海トラフ地震により、甚大な被害が生じる可能性が高いと言われている。そのため、同行の主要顧客に納入するサプライヤーを対象にアンケート調査を実施したところ、7割以上がBCPを未策定であることが判明。

同行はBCPの最新の動向を熟知し、BCPの策定及び訓練を指導できる指導者3名とスタッフ15名を育成。

BCP啓発セミナー、BCP策定に向けてのコンサルティング業務に加えて、BCP策定後も、BCPの実効性を高めるため、企業向けの模擬訓練も実施。

地域企業が実効性のあるBCPを策定し、定着させる支援を通じて、同行の地域基盤の強化につなげている。

49

防災・減災対策(BCPの策定②)

BCPの普及啓発に向けては、大企業や金融機関等の関係者の協力も有効。

取引先の事業継続力強化を通じながら、自社の事業継続力の強化に取り組む大企業

ナブテスコは、鉄道車両用ブレーキシステムやドア開閉装置などの最終製品を製造している大企業。

重要なサプライヤー400社にBCPの有無を確認した結果、300社が未策定であることが判明。自社の事業継続力を強化するため、取引先における事前対策を促す取組を開始。

サプライヤーが所在する各県と連携。県主催のBCP普及啓発セミナーへの参加をサプライヤーに促し、その後、同社がBCP策定講座を開催し、個社の策定を支援。

サプライチェーン全体の強靱化を行い、緊急時の自社の事業継続力強化につなげようとしている。

【事例】ナブテスコ株式会社(東京都千代田区)【事例】株式会社紀陽銀行・紀陽リース・キャピタル株式会社

(和歌山県和歌山市)

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地震保険の活用により、事業継続に必要な資金を確保した企業

マイヤ(従業員1,100名、資本金5,000万円)は、グループ全体で18店舗、県内に16店舗を有する食品スーパー。

東日本大震災では、6店舗と管理本部・営業本部の2拠点を失い、被害金額は約16億円に上った。

しかし、同社は以前の地震被害の経験から、事前に地震保険に加入しており、損害保険金として4億円を受け取ることができた。

複数の金融機関と事前に締結していた、1か月程度の仕入れ相当額の貸越契約と合わせて、十分な資金を確保できたことで、ほとんどの仕入先から信用を得て取引を継続できた。

50

防災・減災対策(災害保険①)

また、多くの中小企業は、損害保険や火災共済に加入しており、被災時における迅速な資金確保を通じて復旧・復興に貢献。

図1 損害保険・火災共済への加入割合

55.831.2

8.1

4.8

(注)「損害保険」と「火災共済」の双方に加入している場合は、補償が中心的な役割を担っている方を回答している。

(1)21人以上 (2)20人以下

36.7

48.9

10.1

4.2

損害保険に加入

火災共済に加入

加入なし

加入有無について

分からない

(%)

図2 従業員規模別に見た、損害保険・火災共済が役立った理由

※複数回答のため、合計は必ずしも100%にはならない。

(資料)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株「中小企業の災害対応に関する調査」、「小規模事業者の災害対応に関する調査」

54.8

28.2

39.9

16.013.0

57.4

34.7

26.722.5

13.5

56.6

28.924.5 23.9

12.9

56.6

30.1

20.3

29.4

15.4

0

10

20

30

40

50

60

保険金や共済金の支

払いが迅速だった

担当者の対応が

丁寧だった

復旧資金の確保

により事業を継続

することができた

事前に認識していた

額の保険金等を

受け取ることが

できた

請求方法が分かり

やすかった

20人以下 21~50人 51~100人 101~300人

【事例】株式会社マイヤ(岩手県大船渡市)

高田店の被災状況 大船渡インター店での店頭販売

(%)

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防災・減災対策(災害保険②)

他方、水災対応していない保険や、一部しか補償されない保険への加入が半分以上。

事業復旧に資する、リスクに見合ったカバー率の保険加入を進めることが必要。

BCP策定を契機に水災に対応する保険に見直し、被災後に早期復旧を果たした企業

ヤスナガ(従業員54名、資本金3,850万円)は、シートメタル加工全般や鋼板切断等を行う企業。

主要取引先からの要請を受け、2012年にBCPを策定。風水害を想定して検討する中、損害保険が水災に対応していないことが発覚。

契約更新直後だったが、保険の重要性を理解していたため、すぐに水災補償を付保する手続を行った

その翌月、「平成24年7月九州北部豪雨」が発生。浸水により工場や機械等に甚大な被害を受けたが、1億7千万円の損害保険金を受け取り、円滑に事業継続できた。

【事例】株式会社ヤスナガ(福岡県柳川市)加入している損害保険・火災共済の内訳図1

(1)21人以上 (2)20人以下

29.4

28.3

24.0

18.3

※自然災害に対応する損害保険又は火災共済に加入している者を集計。

17.7

32.7

18.8

30.7 水災対応、満額補償

水災対応、一部補償

水災非対応

分からない

(%)

加入している損害保険・火災共済の水災への補償内容別の事業復旧への貢献度

図2

81.0

64.6

39.6

8.0

15.2

26.4

6.6

9.1

5.7

4.4

11.1

28.3

0% 100%

水災に対応しており、損害の満額を補償する商品

水災に対応しており、損害の一部割合を補償する商品

水災は補償しない商品

役立った やや役立った あまり役立たなかった 全く役立たなかった(1)21人以上

(2)20人以下

74.9

55.8

18.2

11.8

26.6

19.0

4.3

11.9

19.0

9.1

5.6

43.8

0% 100%

水災に対応しており、損害の満額を補償する商品

水災に対応しており、損害の一部割合を補償する商品

水災は補償しない商品

※過去に「平成30年7月:西日本豪雨(平成30年7月豪雨)」、「平成29年6~7月:九州北部豪雨等、台風第3号」、「平成28年8~9月:台風第7号・台風第11号・台風第9号・台風第10号等」、「平成27年9月:台風第18号等」、のいずれかで被災したことがあると回答した者を集計。

(資料)三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)「中小企業の災害対応に関する調査」、「小規模事業者の災害対応に関する調査」

水害発生時の様子