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A r m o u r o f J a p a n

合戦雑学入門ビジュアル

甲冑と戦国の攻城兵器    共著東郷 隆上田 信

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プラモデル、とくに戦車模型の世界では車両とともに乗員や歩兵などのフィギュアを製作するこ

とは半世紀も前から当たり前のことでした。

 

そうしたモデラー各位の、甲かっちゅう冑モ

ノに対する潜在需要は高いと、やはり昔からよく言われてきま

した。試みに、知人のミリタリーモデラーなどへ、「鎧よろい

武者なんか作ってみたいと思う?」と訪ねると、

十人のうち七、八人は、

「やってみたい、単体ではなく合戦や城攻めの情景なんかを」

という答えが返ってきます。しかし、実際にトライしてみた人は、そのうちのほんの一握りです。

理由は、資料(主としてモデラー向けのそれですが)の乏しさと、素材の圧倒的な不足が考えられ

ます。

 

そうした状況に長く不満を抱かれていたのが、イラストレーターの故中西立太さんでした。

「外国はメタルの歴史フィギュアを作る伝統が長いが、日本には底辺を支える土壌がない。早い話、

ワッフェンSSの迷彩パターンをよく知っていても、大おおよろい鎧と当とうせいぐそく

世具足をゴチャ混ぜに考えているモ

デラーが多過ぎる」

〔はじめに〕 

〜機ア

ーマー甲

と甲ア

ーマー冑

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と憤慨なさっていました。また若年のイラストレーターの人々に対しては、

「人は自国の歴史を避けて通れない。それをわかりやすく知ってもらうには、挿絵画家が復元画に

努力しなければだめなんだ」

と説き続けていました。その思いが高じたものか、中西さんは戦車模型専門誌『月刊アーマーモデ

リング』に長く「日本甲かっちゅう冑

史」を連載。その単行本下巻が出来上がった平成二十一年一月、惜し

くも急逝されました。

 

それからしばらく。

 

日本中に鎧モノの復リエナクトメント

元模擬戦闘(いわゆる合戦祭り)は増え続け、歴史モノの専門誌には月々の

イベント情報が出ています。地方のお祭りに行けば男女を問わず(まあ、女子の方が多いみたいで

すが)甲かっちゅう冑武者のオンパレード。こんな場面を中西さんに見せたら興奮感激するだろうなあ、と思

うことしきりです。

 

本書の前身ともいうべき「アーマーofジャパン」の連載を『月刊アーマーモデリング』で、とい

う話をいただいたのは中西さんが亡くなって五年ほど経った、そんなころのことでした。

 

そのとき、ふと思いついて東日本大震災以来崩れたままになっている自分の書庫へ分け入ってみ

ました。記憶を頼りに、『アーマーモデリング』が未だ月刊化されていなかった平成十四年七月の

エクストラ№4をみつけ出し、ページをめくってみると、ありました、ありました。その年四月の「川

中島合戦絵巻・観戦リポート」が。当時は国内最大規模を誇るリエナクトメントに、生前の中西さ

んばかりか、上田信氏、旧カンプグルッペジーベンの面々、(めずしく帽子もマントも着用してい

ない)吉祥寺怪人氏まで、笛吹川の河原にズラリ、と鎧よろい

姿で居並んでいます。

 

往年のミリタリー小僧たちが、こぞって甲かっちゅう冑世界になだれ込んでいるのは、当時すこぶる不思議

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な気がしていましたが、いまならさしておかしくも感じません。

 

さて、近ごろはテレビでも考証流行りで、やれ「戦場では刀は使わなかった」だの「馬は小さく

て人を乗せても走れなかった」だの、極端な説を唱える、また不思議な「実験映像」を見せる雑学

番組が増えていますが、あーゆうのに騙されちゃいけません。

 

刀も驚くほど粗製のものが平然と使われていました。乗馬はポニー種ですが、乗り手が現在の女

子中学生ぐらいの体格であれば、騎上バランスはとれています。何よりも、現代人とはまったく違

うスピード感覚でしたから、いまの人が「遅いなあ」と思う速度でも、当時の武者は満足していま

した。足場の悪い戦場では降りて戦ったでしょうが、市街地や平場では配下を牽連れ、果敢に突進

することが普通でした。

 

本書は、日本の甲冑の成り立ちや周辺の様子、個人装備の武器から城攻めの道具に至るまでを単

に物質的に紹介するだけではなく、正しい身の付け方や、使い方を知っていただこうという考えか

ら始めた前述の連載を単行本にまとめたものです。

 

とはいえ、中西さんのように古代から幕末までというのは範囲が広過ぎます。そこで、モデラー

をはじめ、武者行列などに参加される皆さんがいちばん興味を持っておられるであろう戦国期(室

町末期から元げんき亀

・天正あたり)を中心に御紹介していこうと思います。

東郷 

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第一章 大鎧とその周辺

〔総論〕大鎧と矢の収納具の関係………………

10

大鎧、その発生……………………………………

12

大鎧の完成…………………………………………

16

末期の大鎧…………………………………………

20

矢の容器

「箙」………………………………………

24

戦国時代の雑兵箙…………………………………

28

「空穂」 その①

……………………………………

32

「空穂」 その②

……………………………………

36

第二章 雑兵とその装備

〔総論〕雑兵の装備と槍について………………

42

下卒の支給刀について……………………………

44

一般的な足軽………………………………………

48

兵士の排泄…………………………………………

52

槍の威力……………………………………………

56

槍の用意……………………………………………

60

盾……………………………………………………

64

第三章 戦国の城攻め道具

〔総論〕山城の攻防………………………………

70

柵……………………………………………………

72

中世山城の上部構造物①/塀と狭間……………

76

中世山城の上部構造物②/櫓……………………

80

応仁の乱に復活した投石機………………………

84

究極の城攻め道具「亀甲車」………………………

88

第四章 戦国の敵味方識別

〔総論〕合戦の識別〜目立つということ〜……

94

兜の立物……………………………………………

96

目次

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7

伊達の甲冑…………………………………………

100

戦場の異形/顔面を覆うもの①…………………

104

戦場の異形/顔面を覆うもの②…………………

108

裸に似せた鎧のこと………………………………

112

真田の赤備え………………………………………

116

戦場の敵味方識別①/笠印と袖印………………

120

戦場の敵味方識別②/受筒と腰差………………

124

戦場の敵味方識別③/差物………………………

128

戦場の敵味方識別④/立物………………………

132

戦場を先駆する異形者たち………………………

136

第五章 馬の装具

〔総論〕馬の周辺…………………………………

142

戦場の馬①/馬の丈………………………………

144

戦場の馬②/馬甲…………………………………

148

戦場の異形/保侶①………………………………

152

戦場の異形/保侶②………………………………

156

第六章 戦国の火砲

〔総論〕火を用いた兵器…………………………

162

長篠の鉄砲放ち……………………………………

164

長篠城の防御………………………………………

168

火攻め①……………………………………………

172

火攻め②/棒火矢…………………………………

176

信玄狙撃……………………………………………

180

騎馬鉄砲……………………………………………

184

仏郎機砲「国崩」……………………………………

188

大阪城に射ち込まれた砲弾………………………

192

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本書は戦車模型専門誌『月刊アーマーモデリング』の連載記事「アーマー ofジャパン」を加筆修整して単行本化したものです。各記事の初出は以下の通りです。収録にあたりいくつかの題名は手直しし、掲載順序も再構成しています。

第1回/機甲(アーマー)と甲冑(アーマー) 第2回/槍の威力 第3回/長篠の鉄砲放ち 第4回/真田の赤備え 第5回/伊達の甲冑 第6回/長篠城の防御 第7回/兜の立物 第8回/一般的な足軽 第9回/兵士の排泄 第10回/槍の用意 第11回/下卒の支給刀について 第12回/応仁の乱に復活した投石機 第13回/究極の城攻め兵器「亀甲車」 第14回/火攻めその① 第15回/火攻めその②/棒火矢 第16回/盾 第17回/柵 第18回/中世山城の上部構造物その①/塀と狭間 第19回/中世山城の上部構造物その②/櫓 第20回/仏郎機砲「国崩」 第21回/裸に似せた鎧のこと 第22回/大阪城に射ち込まれた砲弾 第23回/信玄狙撃 第24回/大鎧、その発生 第25回/大鎧の完成 第26回/末期の大鎧 第27回/矢の容器・箙 第28回/戦国時代の雑兵箙 第29回/空穂① 第30回/空穂② 第31回/戦場の馬①/馬の丈 第32回/戦場の馬②/馬甲 第33回/騎馬鉄砲 第34回/戦場の異形①/保侶① 第35回/戦場の異形②/保侶② 第36回/戦場の異形③/顔面を覆うもの① 第37回/戦場の異形④/顔面を覆うもの② 第38回/戦場の異形⑤/先駆する異形者たち 第39回/戦場の敵味方識別①/笠印と袖印 第40回/戦場の敵味方識別②/受筒と腰差 第41回/戦場の敵味方識別③/差物 第42回/戦場の敵味方識別④/立物

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大鎧とその周辺

第一章

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「武」という文字は、戈と止の組み合わせです。

 

戈は古代中国の武器である斧おの

や鉞まさかりを

表します。即ち、敵の攻撃を押さえるために、相手を上まわ

る力を保持すること。または、強力な力を誇示することによって、敵の闘争心を事前に喪失させる

ことを表わしています。

 

近代以前の武具が、時に異常なまでに凶まがまが々

しいデザインである理由のひとつは、この抑よくしりょく

止力を期

待してのことでしょう。

 

敵を凌りょうが駕する武具を保持していくことは、そう簡単なことではありません。なぜなら、敵も必ず

それを上まわる武具を開発するからです。それに対抗するため、味方は武具を改良する。太古以来、

兵器はそうやって進化し続けてきました。

 

いわゆる「死のシーソーゲーム」というもので、その代表的な例が、弓矢と甲冑の関係です。

 

頭部を保護する兜かぶとは、頭を表わす古語の「カブ」に接尾語を付けた。また胴体を保護する鎧よろいは硬

質の皮革「甲かふら羅

」から。あるいは人体に「寄よ

り揃そろ

う」からヨロイになったなど、その語源は諸説入

り乱れています。

〔総論〕 

大鎧と矢の収納具の関係

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さて、このヨロイ・カブトの代表的なものが平安時代に登場した「大おおよろい鎧」

です。大鎧の基部は大

部分が、小こざね札という革や鉄の小さな板の組み合わせで構成されます。これを革紐や組み紐で綴と

じ下

げて屈伸を良くし、馬上戦闘用に進化させたもので、同様な小札型式防具はユーラシア大陸の各地

でよく見受けられます。しかし、大鎧の進化には、いつの頃からか「戦場の晴れ着(死装束)」と

いう観念が強く反映されていきます。これは大陸からの影響を意識的に排除する「国こくふうぶんか

風文化」と、

同一地域での特殊な戦闘ばかり繰り返した結果生まれたものでしょう。今日の我々の眼から見れば、

過剰なほどの装飾、着用重量も平均三十キログラムと、不思議な進化を尽げたこの防具も、当時の

主要兵器と、我が国独特の戦闘法を多少とも知れば、どうしてこういう形になったのか理解できる

と思います。

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九世紀末ころの日本では、大規模な荘園制がはじまり、

律令制度が崩壊します。それにつれて徴兵制度を基本とす

る軍ぐんぼうれい

法令も廃され、「健こんでい児

」と呼ばれる人々が軍事を担い

はじめます。

 

健児制には諸説ありますが、おもに地方の上層階級であ

る郡ぐんじ司(編注/国司の下に位置する地方官)の子弟を、人

口の多い国では二百人、少ない国でも三十人ほど選出して

争乱に備えさせたようです。律令下の制度では、奈良朝以

来の規格化された武具を地方の官かんが衙

(役所)に置き、必要

に応じて兵に供給するシステムでした。ところが、健児は

「戎じゅうきじべん

器自弁」、すなわち自前の兵器をつねに手元へ置くこと

が許されます。ほかにも彼らは、馬料や従者への賄まかない

料支給、

調ちょう(

上代以来の税、貢みつぎモ

ノ)免税などの特典が与えられま

した。

 

馬を操り、弓術に巧みな健児たちの中で特に武勇の優れ

た者は、都に上がって検け

非違使の随ずいひょう兵や

貴族の私兵になり、

地方で富を蓄えていきます。そしてこれが、武士の発生と

いう事態を招くもとにもつながっていくのです。

 

戦闘形態の変化に応じて私製の武具を順次改良していく

彼らの装備は、斬新なものでした。現在、我々がよく知る「大

鎧」は、この健児たちが武士となっていく過程で成立した

ものです。しかし残念なことに、当時の遺物はほとんど存

在せず、奈良朝以来の武具からどのように進化して、あの

華麗な鎧ができあがったのか全く分かっていません。

 

甲冑研究家の故笹間良彦氏は、形成期の大鎧について、

「上代から平安中期に至る出土遺物の部分的変化を観察す

大おおよろい鎧、その発生

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●平たいらのまさかど

将門が関東で蜂起した承じょうへい平

・天てんぎょう慶

の乱(九三五〜九四〇年)の

頃の武もののふ士

。幾多の土地争いの実戦経験を経て、このころに大鎧の基本

はできあがったが、末端の伴ばんるい類と呼ばれる戦闘補助員たちは、非武装

か、前時代の挂甲を改造するなどして戦場に出ていたと思われる。

烏え ぼ し

帽子

大おおそで

篭こ て

手て こ う

馬ばじょうぐつ

上沓

草くさずり

箙えびら

刀と う す

丸ま る き ゆ み

木弓

弦つるばしり

栴せんだんのたて

檀 板

射い む

向けの板たて

吹ふきかえ

返し

毛けぬきがたにしき

抜形錦包つ つ み た ち

太刀

■各部の名称

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▲和歌山県出土の掛けヨロイ(掛けいこう甲

)を関西大学で復元した

もの。通常の掛甲と違い、身体の両側面の防御部分が別パー

ツになる。これが左脇だけの装具となり、右側から胴を着脱

する大鎧の着用法に進化していく。また、頂点が丸い中国風

の兜は、それまでの髪の毛を頬の側面でまとめるミズラを止

め、丸く頭上でまとめてから被る形式に変化したためとも言

われている。

■甲冑の進化(大鎧の場合)

ることにより、ある程度の推移過程がわかる」

 

として、福岡県浮羽郡の徳山古墳出土の短たんこう甲

や、関東各

地で発見される兜鉢、小札残ざんけつ欠(編注/一部が欠け不完全

なもの)などを例にあげ、その変遷図を多く描いています。

 

ここにあげた図例も、大鎧がほぼ完成期に近づいた

承じょうへい

平・天てんぎょう慶の

ころ(AD九三七年前後)の着用例ですが、

これも笹間氏の復元図がもとになっています。

頸くびよろい

6 世紀ころの唐とうふうかぶと

風 兜

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●兜かぶとは

上代の衝しょうかくつきかぶと

角付兜から、打ち出し鋲びょうの

大きな

星ほしかぶと

兜に変化する。錣しころ

は両頬を覆っていた部分が

固められて吹返しになる。胴部分は、両脇が別

部品であった挂けいこう甲

(編注/日本の古墳時代に使

われた鎧よろいの一種)から、敵に向ける左部分が前部・

背の部分結合となり、右側のみ別にする脇わいだて楯付

きとなった。肩を覆う肩かたよろい鎧は平たい大おおそで袖、両鎖

骨の辺を守る頸くびよろい鎧も

栴せんだん檀

・射いむけ向

の板に変化。また、

弓を射たとき、前面の小こざね札

に弓ゆづる弦

が掛からぬよ

う、胸部には弦つるばし走

りという革も張るようになる。

●毎年十月二十二日に京都で行なわれる「時

代祭」には、「延え

んりゃくぶかんこうしんれつ

歴武官行進列」という平安

遷都の頃の古代武人行列が出る。明治期の時

代考証家関せきやすのすけ

保之助らが復元した坂さかのうえのたむらまろ

上田村麻呂

出陣の姿だが、ここでは挂甲から大鎧への変

遷も実際に見ることができる。

縦たていたびょうどめかぶと

板 鋲 留 兜

錣しころ

肩かたよろい

吹ふきかえ

返し

栴せんだんいた

檀板

祖型の星ほしかぶと

射い む

向けの板たて

大おおそで

袖弦つるばしり

栴せんだん

眉まびさし

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