電磁気学問題集 - kozakai yoshinobu.comkozakaiyoshinobu.com/doc/mondai1.pdf本書について...
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電磁気学問題集
§1 クーロンの法則 ~ §4 電位
シャルル・ド・クーロン(1736~1806)
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本書について
この問題集は,テキスト「基礎物理A(大同大学 物理学教室 編)」の内容を中心に,
解説を加えて学生の自学自習の助けになるよう再編集した問題集です。第一回の確認テス
トはこの問題集に準じた問題を出題します(本書の問題を解けるようにしておけば,確認
テストの問題は確実に解くことができます)。単位取得に向け,有効に活用してくださ
い。
本書の構成
1. 「要点のまとめ」は,テキスト「基礎物理A」の特に重要な語句,定義・定義式,公
式を抜粋してまとめたものです。語句を覚えたり,演習問題を解く際に公式を参照す
るのに使用してください。詳しい説明や図は省略されているので,必要に応じてテキ
ストを確認してください。
2. 各単元の問題は,テキスト「基礎物理A」の本文を問題にアレンジしたもの,演習問
題,オリジナル問題で構成されています。解説はテキストのものより詳しく書いてあ
ります。また,テストに出題したときの採点ポイントも書いておきましたので,よく
読んでおいてください。
※ 第1回確認テスト終了後,第2回確認テストに向けた同様の問題集を配布予定です。
おすすめ勉強方法
1. 「要点のまとめ」を繰り返し読み,重要語句(太字のもの)を確実に覚えてくださ
い.定義式・公式については覚える必要はありません(テストでは公式集を配布しま
す)。
2. 本書にある演習問題を(解答部分を伏せて)解いてください。その際,途中式,説明
文を書くようにしてください(正しく書ければ理解していると判断できます)。問題
が難しいと感じる人は,あらかじめ解答をしっかり読んで理解し,改めて問題を解い
てみてください。解説の言っている意味が分からない場合は説明するので質問してく
ださい。
3. 授業では本書の問題に準じた演習・小テストを行います。本書の問題を理解し,解き
方を身に付けたかどうかの確認になるので有効活用してください。授業の予習は必須
ではありませんが,自信のない人はあらかじめ授業範囲に目を通しておくことをお勧
めします。
4. 授業で行う演習問題・小テストおよび,本書の問題(解答無し版)をホームページに
アップしておきます。繰り返し演習したい人はダウンロードして活用してください。
ホームページ:http://kozakaiyoshinobu.com
http://kozakaiyoshinobu.com/
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【静電気力】
異なる物質同士をこすり合わせると,これらの物体は電気を持つ.電気を持つことを
帯電するといい,帯電した物体を帯電体という.
2 個の帯電体の間で及ぼしあう力を,電気力または静電気力と呼ぶ.2 個の帯電体が同
種の電気(正と正,負と負)の場合には,電気力は反発する向きに働く(斥力,反発力).
2 個の帯電体が異種の電気(正と負)の場合には,電気力は引き合う向きに働く(引力).
【電気量(電荷)】
帯電体のように電気をもつものを電荷といい,電気の量を電気量という.電気量のこ
とを電荷ということもある.電気量の単位は C(クーロン)である.
電荷保存則
電荷の総量(正の電荷と負の電荷の和)は,常に一定である.
qQ + 2Q = 1Q - + 2Q -
【原子の構造】
全ての物質は多数の原子が集まったものであり,原子は正の電荷をもつ原子核と負の
電荷をもつ電子からできている.原子核はさらに陽子と中性子と呼ばれる 2 種類の粒子
からできている.陽子は正の電気を持ち,中性子は電気を持たない(電気的に中性).陽
子や中性子の間には核力と呼ばれる強い力が働いており,陽子や中性子が結びついてい
る.
電子そのものを記号 -e で表し,電子が持つ負の電気量を-e と書く.電気量 e は電気
素量と呼ばれる電気量の最小単位である.
e=1.6% -1910 C
原子は,原子核のもつ正の電気量と負の電気量のバランスした状態になっている.この
状態を電気的に中性という.電気を帯びた状態にある原子をイオンといい,正の電気を
帯びたイオンを陽イオン,負の電気を帯びたイオンを陰イオンという.
Na 原子が電子 1 個を放出して陽イオン Na+ となったとき,放出された電子は原子の
外で自由に動くことができる.このように,原子からの束縛を受けずに自由に動ける電子
を自由電子という.一方,原子の中に束縛されて原子の外へ飛び出さない電子を束縛電
子という.
【導体と不導体】
鉄 Fe,銅 Cu,アルミニウム Al などの金属や黒煙のように電気を通しやすい物質を導
体といい,ゴム,紙,ガラス,塩化ビニル等のように電気を通しにくい物質を不導体また
は絶縁体という.
要点のまとめ(§1 クーロンの法則)
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【電流と自由電子】
導体の内部には,自由電子のような自由に動ける電荷が存在する.これらの電荷が一方
向にそろって移動すれば電気が流れる.このような電気の流れを電流という.
導体の断面を 1 秒間に通過する電気量を電流の強さまたは電流の強さといい,記号I
で表す.電流の単位は A(アンペア)である.
【MKSA 単位系】
国際単位系(SI)では 7 個の基本単位を採用しているが,そのうち,電磁気学で主に
用いる基本単位は次の 4 つである.
長さの単位 m(メートル), 質量の単位 kg(キログラム)
時間の単位 s(秒), 電流の単位 A(アンペア)
基本単位以外の単位は,基本単位を組み合わせて作られる.これを組立単位または誘導
単位という。このようにして作られた電磁気学の単位系を MKSA 単位系という.
【電気力に関するクーロンの法則】
1785 年クーロンは,ねじれ秤を用いた実験によって電気力を精密に測定して,電気力
の大きさに関する定量的な法則を見出した.
電気力に関するクーロンの法則
2 個の小さな帯電体の間に働く電気力の大きさ F は,2 個の帯電体の電気量 q,Q
の積に比例し,帯電体間の距離 r の 2 乗に比例する.
F= kqQ
2r(静電気力の大きさ)
電気力をクーロン力ということもある.k は比例定数で,帯電体のまわりの空間の状
態によって決まる.特に,真空での k の値 0k は次の値になる.
0k =9.0%910 N!m2/C2
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【電場】
ファラデーは,空間を隔てた場所にある物体どうしが力を及ぼしあうのは,その間の空
間に力を伝える「何か」が生じているからであると考えた(近接作用の考え方).一般に,
空間に生じた「何か」を場と呼び,特に,電気力を伝える場を電場と呼ぶ.
電場の定義式
F=qE(電場の定義式)
電気力 F は電荷 q に比例する.E は比例係数であるがベクトルである.E はその
場 所に存在する量であり,電場ベクトル(略して電場)と呼ぶ.電場の単位は N/C
とな る.ベクトル E の大きさ(矢印の長さ)を電場の強さといい,E= E と書く.
電荷はそのまわりの空間に電場をつくり,別の電荷で電場から力を受ける.
【点電荷のまわりの電場】
大きさのない点状の電荷を点電荷という.1 個の点電荷 Q がある場所に置かれている
とする.このとき,点電荷 Q から距離 r だけ離れた点 P に生じる電場 E の向きと強さは
次のようになる.
電場 E の向きは,正の点電荷 q を置いたときに,q に働く電気力の向きに等しい.
電場 E の強さ E は,距離 r の関数 E=E0 1r であり,次式で表される.
E0 1r = kQ
2r(点電荷 Q のまわりの電場の強さ)
【電気力線】
空間に生じた電場を向き付けられた曲線の束で表したものを電気力線という.
電気力線の描き方
1.電気力線は正電荷から湧き出し,負電荷に吸い込まれる.
2.電気力線は,その線上の各店で電場 E に接するように描かれている.
要点のまとめ(§2 電場)
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【重ね合わせの原理】
重ね合わせの原理
電荷 1Q が点 P につくる電場を 1E とし,電荷 2Q が点 P につくる電場を 2E とする.
このとき, 1Q , 2Q が両方ともある場合に点 P での電位は E= 1E + 2E となる.電場 E
はベクトルなので,足し算+は平行四辺形の法則に従う.
【いろいろな状況での電気力線】
十分に広い 2 枚の平板を狭い間隔で平行に置き,正と負の等しい電荷 +Q,-Q を一
様に分布させる.このとき,平板の間では強さと向きがどこでも一定の電場ができる.こ
れを一様な電場という.
【電場の中に導体!不導体を置いてみる】
導体に電場を加えると,導体内の自由電子が移動して導体表面に正と負の電荷分布が生
じる.この電荷分布がつくる電場が外部からの電場と打ち消し合い,やがて導体内部で電
場がゼロとなる.このように,外部からの電場によって導体表面に正!負の電荷分布が生
じる現象を静電誘導という.
電気的に中性の状態にある原子を電場の中に置く,このとき,原子に束縛された電子の
位置が電場と逆向きにずれ,原子の中で正電荷と負電荷のずれが生じる.このように電場
の中に置かれた原子や分子に電荷の偏りが生じることを分極という.
不導体に電場を加えると,不導体の中の個々の原子に分極による電荷の偏りが電場と平
行にそろって生じ,不導体表面に正と負の電荷の偏りが生じる.分極による電荷がつくる
電場によって不導体内部では電場は弱められる.このように,外部からの電場によって不
動体表面に分極による電荷の偏りが現れる現象を誘電分極という.
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【電気力線の本数】
電気力線の本数(電場 に対して平面が垂直な場合)
電場 E に対して垂直な平面 S を考え,その面積を S とする.このとき,平面 S を貫
く電気力線の本数を次式で定義し,記号 ΦE で表す.
EΦ =E・S
ΦE の単位は N!m2/C である.
電気力線の本数(電場 に対して平面が平行な場合)
平面 S が電場 E と平行な場合,ΦE = 0 となる.
電気力線の本数(電場 に対して平面が傾いている場合)
平面 S の法線方向(平面と垂直な方向)と電場 E との間の角を h とする.このとき,
平面 S を貫く電気力線の本数ΦE は以下のようになる.
EΦ =EScosh
点電荷から湧き出す電気力線の本数
点電荷 Q から湧き出す電気力線の本数 は Q に比例する.比例係数の逆数を誘電率
と呼び,e で表す.
誘電率 e=1
4pk,真空の誘電率 e=8.85% -1210 C2/N!m2
点電荷から湧き出す電気力線の本数ΦE は以下のようになる.
EΦ =Q
e
要点のまとめ(§3 ガウスの法則)
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【静電エネルギー】
力 F の大きさを F,移動距離を s,力 F の方向と移動方向の間の角を h とすると,移
動の間に F と h が変化しない場合,力 F がした仕事 W は次式であらわされる.
W=F・s・cosh
仕事の単位は J(ジュール)である.外力が物体にした仕事は,その物体の内部に蓄えら
れる.物体に蓄えられた仕事をエネルギーという.物体の位置によって定まるエネルギ
ーを位置エネルギーという.
静電場の場合に位置エネルギーを導入する.点 O を位置エネルギーの基準とし,点電
荷 q が点 P にあるときには,外力がした仕事 外,O.PW が位置エネルギーとして点電荷 q
に蓄えられる.これを点電荷 q が点 P で持つ静電気による位置エネルギー,略して静
電エネルギーといい,記号 U で表す.すなわち,静電エネルギーは U= 外,O.PW である.
【電位と電位差】
静電場の生じている空間に,静電エネルギーを用いて“高さ”の考え方を導入する.こ
の電気的な高さを電位(または静電ポテンシャル)という.
電位の定義
点電荷 q が点 P で持つ静電エネルギーを U とする.U と q は比例するので,
U=qu(電位の定義)
となる.u は比例定数であり,q によらず空間の点 P で定まる量である.この u を点
P での電位と呼ぶ(u はベクトルでなくスカラーである).電位の単位は V(ボルト)
である.
空間上の 2 点の間の電位の差を電位差(または電圧)といい,V で表す.
電位差(電圧)の定義
点 P,R の電位をそれぞれ uP,uR とすると,PR 間の電位差 PRV は,
PRV = Pu - Ru (電位差の定義)
となる.電位差は電気力がする仕事と結びつく.点電荷 q が点 P から点 R まで移動す
る間に電気力がした仕事を PRW とすると,次式が成り立つ.
PRW = PRqV (電気力がした仕事)
【等電位面】
静電場のある空間において,電位が等しい点の集まりは曲面(または平面)をなす.こ
の面を等電位面という.電気力線は電位が高い方から低い方に向かっている.また,電
気力線と垂直な方向に移動しても電位は変化しないので,等電位面は電気力線と垂直に交
わっている.等電位面を描く場合には,この 2 点に注意すること.
要点のまとめ(§4 電位)
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【一様な電場における電位差】
一様な電場における電位差
強さ E の一様な電場を考える.空間内の 2 点 P,R 間の電位差を PRV とし,点 P を
通る等電位面と点 R を通る等電位面の間隔を d とすると, PRV の絶対値 V は次式であ
らわされる.
V=Ed(一様な電場における電位差,符号なし)
d に符号を入れた間隔 PRd を次のように導入する.d= PRd であり,点 P が点 R よ
り高電位のとき PRd >0,点 P が点 R より低電位のとき PRd
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