盛期ルネサンスの古代建築の解釈 -...

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盛期ルネサンスの古代建築の解釈

飛ヶ谷 潤一郎 東北大学大学院工学研究科・准教授

専門:西洋建築史

飛ヶ谷 潤一郎『盛期ルネサンスの古代建築の解釈』 中央公論美術出版、2007年

目次 •序 •第一章 パラッツォ・ルチェッライの腰壁に見られる 網目積みを模した表面仕上げについて •第二章 ルネサンスにおけるエトルリア神殿の解釈の変遷 アルベルティからバルバロまで •第三章 《プレヴェダーリの版画》に見るエトルリア神殿の廃墟 ブラマンテによる集中式平面の展開と古代建築の解釈について •第四章 ルネサンスにおける古代浴場の解釈 テルマエから聖堂へ •第五章 ルネサンスにおけるギリシアのフォルム フラ・ジョコンドのリアルト市場再建計画について

•第六章 ルネサンスにおけるアッティカ式の解釈について ラファエッロと五つのオーダー •第七章 ふくらんだフリーズについて ラファエッロによるイオニア式オーダーの解釈とその影響 •結 •付録一 「ミラノ大聖堂ティブリオに関するブラマンテの意見書」翻訳および解説 •付録二 ジョルジョ・ヴァザーリ『芸術家列伝』所収「フラ・ジョコンド、 リベラーレ、ならびに他のヴェローナの芸術家伝」から 「フラ・ジョコンド伝」抄訳および解説 •付録三 ジョルジョ・ヴァザーリ『芸術家列伝』所収 「ペルッツィ伝」 翻訳および解説

•ルネサンスの建築家が設計の手本とした古代建築の 驚異 •従来の研究では扱われなかったギリシアやエトルリアも含 めた古代建築や古代風の中世建築の解釈 •古代建築の研究に取り組みながら、同時に新しい建築の設 計にも携わっていた当時の建築家 •学問的な観点からは過小評価されがちな「誤解」も、新しい 建築の創造に寄与

第一章 • オーダーの積み重ねを用いたルネサンスで最初の例という従来の歴史的位置づけ

• 構造とは無関係な、腰壁の網目積みを模した仕上げ

• オーダー、石積み、戸口の形式も含めた古代風の表現としての再評価

レオン・バッティスタ・アルベルティ パラッツォ・ルチェッライ立面図(左) 腰壁の網目積み(右)、フィレンツェ

第二章 • アルベルティはマクセンティウスのバシリカをエトルリア神殿と誤解して、マントヴァのサンタンドレア聖堂設計の手本

• ウィトルウィウス『建築十書』におけるエトルリア神殿の記述と、アルベルティ『建築論』をはじめとするルネサンスの建築書におけるエトルリア神殿の記述のちがい

• キリスト教の聖堂との類似した姿から、正確な古代神殿の姿へ

アルベルティ、サンタンドレア聖堂内観(上)、マントヴァ タヴァーナーによるサンタンドレア聖堂 推定復元図(下)

クラウトハイマーによるアルベルティ(上左)およびウィトルウィウス(上右)のエトルリア神殿復元図

バルバロによるエトルリア神殿 復元平面図(右)と立・断面図(左下)

第三章 • ブラマンテ《プレヴェダーリの版画》に見られるキリスト教の聖堂と異教の神殿

• 古代ローマ建築を知らなかったブラマンテは北イタリアの中世建築や、同時代のルネサンス建築を手本

• チェザリアーノ版『ウィトルウィウス』の古代神殿の図

• エトルリア神殿、およびジェナッツァーノのニンフェウムとの関連性

ブラマンテ≪プレヴェダーリの版画≫ スフォルツァ城、ミラノ

ブルスキによるブラマンテ《プレヴェダーリの版画》の断面図と平面図(左) チェザリアーノ版『ウィトルウィウス』の エトルリア神殿復元図(右)

第四章 • 公的な複合施設としてのテルマエと私的なバルネア

• テルマエの冷浴室(フリギダリウム)からアルベルティのサンタンドレア聖堂とブラマンテのサン・ピエトロ聖堂計画へと発展

• 古代浴場の復興は実現しなかったものの、16世紀から浴場窓はひんぱんに使用

バルトリ訳『アルベルティ「建築論」』 テルマエの平面図、中央部が例浴室(左) 浴場窓、ヴィッラ・マダマ、ローマ(右)

第五章 • 実現しなかったフラ・ジョコンドによるヴェネツィアのリアルト市場再建計画(左はフェデリーチの復元図、右はフォンターナの復元図に飛ヶ谷加筆)

• ウィトルウィウスの記述を手本にギリシアのフォルム(アゴラ)を復元

• 中央に集中式聖堂が配置された同心状の平面計画

第六章

• ウィトルウィウス(左図はチェザリアーノ版)によるアッティカ式柱礎と戸口

• ラファエッロがオーダーの一種とみなしたアッティカ式

• ギリシア起源のアッティカ式からイタリア起源のコンポジット式へ

• セルリオによる五つのオーダーの確立(右)

第七章

• ラファエッロのヴィッラ・マダマに見られるイオニア式オーダーのふくらんだフリーズ(左)

• ウィトルウィウスのテクストの誤解

• ラファエッロ以降にセルリオやパラーディオ(右)が好んで使用

・ルネサンスの建築家が古代建築と見なしていたもの は実際には中世建築のこともあった ・ギリシアやエトルリアの建築は文献やローマの遺跡から類推 ・研究の発展とは独立して進行した「誤解の系譜」ともいうべき 新しい建築の考案

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