aerで学ぼう 宮教大防災 -...

6
発     行: 国立大学法人 宮城教育大学 (学びを通じた被災地の地域コミュニティ再生支援事業)  企画・編集: 学びを通じた被災地の地域コミュニティ再生支援事業事務局 国立大学法人 宮城教育大学 国立大学法人宮城教育大学 教育復興支援センター 学びを通じた被災地の地域コミュニティ再生支援事業 AERで学ぼう 出前防災講座 実施報告書 宮教大防災 Week

Upload: others

Post on 06-Sep-2019

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

発     行: 国立大学法人 宮城教育大学  (学びを通じた被災地の地域コミュニティ再生支援事業)     企画・編集: 学びを通じた被災地の地域コミュニティ再生支援事業事務局

国立大学法人 宮城教育大学

ア エ ル

国立大学法人宮城教育大学 教育復興支援センター学びを通じた被災地の地域コミュニティ再生支援事業

AERで学ぼう

出前防災講座 実施報告書

宮教大防災Week

12:00

13:00

14:00

15:00

16:00

17:00

18:00

19:00

20:00

1/21(火) 1/22(水) 1/23(木) 1/24(金) 1/25(土)

第3回国連防災世界会議 仙台開催の意義

災害後に必要な長期の心の支援とは?

仙台・神戸発生きる力を育む防災教育

津波災害と学校-東日本大震災時の津波避難行動から学んだこと-

被災地からの報告①

いのちと地域を守る

東北から語り継ぐ未来へのメッセージ-3.11の経験から-

若林区での農業復興支援の取り組み

復興・復旧ボランティア活動

お母さんたちの震災とのびすく仙台の取り組み

東日本大震災における自衛隊の活動

ちょこっと・ねっと ̶障がい児者とその 家族からのメッセージ̶

学校防災と地域防災の連携推進者SBL

オープニング

1 4

2 5 8

3

12

植物が被災者にもたらす効果

11

16

17

18

6 被災地からの報告②

仙台平野のいぐねと防災機能

9 被災地からの報告③気仙沼防災教育の実践防災学習シートを使った実践

14

10

出張学び喫茶̶災害時の  食について考える̶

13

15学校を災害が襲うとき、襲った後

宮城教育大学教育振興支援センターの取り組みと学生ボランティアの活動発表

7

クロージング

あいさつ

プログラム実施日:2014年1月21日(火)〜1月25日(土)  会場:AER 1F アトリウム

※本文中の敬称は略しております。

1 2

来場者アンケートより

・国連防災世界会議に対する仙台市の取り組み状況がよくわかりました。是非成功させてください。(一般)

・国連防災世界会議 2015 のイメージがつかめました。ありがとうございました。(一般)

・釜石市の奇跡といわれた小中学校の教育が多くの人を助けたことで、防災教育の大切さがわかったと思います。私事ですが、訓練指導の中でなかなか教育の先生方がわかっていないといった残念なことがありました。小さい時から伝えることを広げてください。( 元消防職員 )

・ 大学が町にやってきた(宮教大のイベントに初めて参加)。 防災これからの 1 年と本番とそのあとでの一連の取り組みに期待。( その他 )

小お

田だ

 隆たか

史し

宮城教育大学 教育復興支援センター特任准教授

専門は地理学、防災教育、災害復興教育。2015年に仙台で行われる国連防災世界会議に向けても数々の活動にかかわっています。

柳やな

津つ

 英ひで

敬たか

仙台市総務企画局国連防災世界会議準備担当課長

仙台市役所の中で、2015年に行われる国連防災世界会議を準備するという立場で、防災事業をはじめ様々な仕事にかかわっています。

オープニング

❶ 2015年3月「第3回国連防災世界会議」が仙台で開催される意義について、お話します。 仙台市は防災のロールモデル都市にもなっており、今回は193の国連加盟国から5000人以上が参加する、仙台市で開催される国際会議としては史上空前規模の会議になります。「東日本大震災の経験、教訓、知見の継承」「東北の現状を世界に発信」「市民の防災意識の向上」「安全で魅力ある仙台や東北のPRと交流人口の拡大」「震災時に受けた世界各国からの支援への御礼」を目的として準備を進めています。 同時に「2015年問題」と言われる課題があります。2015年には北陸新幹線が開通、2020年には東京五輪が開催されます。その活動や準備が始まったとき、被災地の復興に向けられていた関心や支援、人的や金銭的なもの、プロジェクトが残っていくのかどうか、後回しにされる可能性はないかということです。対応として、今スタンドアローンになっている活動をつないでいくことが重要になります。 私は宮城教育大学のOBですが、教員養成を軸にしつつ、地域のためにできることを考え、実践し、発信するという今の大学の姿勢に感慨深いものがあります。ぜひ、協働していきましょう。

第3回国連防災世界会議 仙台開催の意義1月21日(火)12:30~13:30

 教員養成を使命とする教育大学である宮城教育大学が、全18講座、各界で活躍されている講師の皆様を招聘し多様な視点で講座を展開した意図は、本事業「学びを通じた被災地の地域コミュニティ再生支援事業」の趣旨にあります。 東日本大震災から3年目を迎えようとしている今、復興を進め、災害列島である日本の未来における被害を最小限に抑えるために必要なのは、知ること、考えること、伝えること~すなわち、学ぶことと考えます。そして、学びは子どもたちだけでなく大人たちにも求められていることから、学校教育、社会教育が両輪となって生涯学習社会の実現を目指していくことが大切です。真の復興は、こうした環境の中でこそ実現できると思います。 大学は今、地(知)の拠点として、自治体と連携し、地域を志向した教育・研究・地域貢献を進めることで、課題解決に資する様々な人材や情報・技術が集まる、地域コミュニティの中核的存在としての機能強化を図ることを求められています。 復興という課題解決をつないでいくのは、次代を担う子どもたちであり、子どもたちを育てる教員の養成は、社会の最大の使命です。宮城教育大学は、地域社会と共に「学びを通じた被災地の地域コミュニティ再生」をめざして参ります。

3 4

来場者アンケートより 来場者アンケートより

来場者アンケートより

・チームづくりについて、学生だけではなく、社会人として集団の中で動くうえで大変参考になる話を伺い、ボランティア活動を通じ学ぶことの大切さを教えられた気がします(一般)

野の

澤ざわ

令よし

照てる

宮城教育大学教育復興支援センター 副センター長

▲右から八や

木ぎ

沼ぬま

賢けん

悟ご

 宮城教育大学2年濱はま

田だ

 茄か

奈な

 宮城教育大学1年清し

水みず

 卓たか

樹き

 宮城教育大学4年

◀戸と

田だ

 雄ゆう

哉や

 宮城教育大学 1年

 宮城教育大学教育復興支援センターが、震災復興のためにどのような形でかかわってきたかの紹介と、本事業の趣旨を説明します。教育という分野を担っている本学では、震災後に子どもたちの学習支援、現場の先生方の支援、これからの復興を支えて行くための学びの内容などについて様々な活動を行って来ました。活動を通して、復興には学校教育だけでなく広く市民に学ぶ場を提供し、復興への思いを共有していくことも使命と考え、大学から外に出向いての一週間の本講座を企画しました。 学生は、仙台市内や津波被災地で子どもたちへの学習支援や学生企画のボランティアを行ったほか、仮設住宅に住む住人や子どもたちと交流するイベントの開催や、学生企画の南相馬ツアーなどの活動を続けています。また、防災や減災について自主的に学ぶ機会を作り、次の活動に繋げています。地域の方々や子どもたちとのふれ合いを通して感じたことを、将来教師として現場で働くとき、長い支援につなげていくことが自分たちの大きな役割であると考え活動しています。

宮城教育大学 教育復興支援センターの取り組みと学生ボランティアの活動発表

1月22日(水) 18:00~19:00

広ひろ

瀬せ

 剛つよ

史し

一般社団法人 ReRoots(リルーツ)代表仙台市若林区の七郷地区にあるボランティアハウスを拠点に、全国のボランティアと一緒に、津波で被災した沿岸地域の農業再生と地域おこしを目標にサポートし続けています。

 大学生を中心とするボランティアグループReRoots は「復旧から復興へ、そして地域おこしへ」をコンセプトに、被災した農地を再生し、農村復興をめざして活動を始めました。地元の人と生活空間を共有しながら地域に根付いた関係を作っています。 今の教育では個人のスキルアップが主な目的になっているため、学生たちはチームで動くことがあまり得意ではありません。活動を通して考え実践してきたことは

「チーム作りの基本は、謙虚さとセルフコントロールという人の要素を第一にすること」「リーダーは触媒であり、チーム編成と役割分担の明確化に基づく実践を通じて本人の成長を促すこと」「能力が高い人ほど、出来ない人の気持ちがわからない。人を育てるには怒る前に現実を認める勇気が必要。リーダーは相手が出来るようになるための法則を見つけ媒介することが大切」ということです。

若林区での農業復興支援の取り組み1月22日(水) 14:00~15:00

田た

原はら

和かず

裕ひろ

仙台市教育委員会教育指導課 主任指導主事(神戸市より出向)神戸市で19年前の阪神・淡路大震災を経験し、その後神戸市教育委員会で防災教育の推進等を進めてきました。昨年4月から神戸より出向し、学校での防災教育の研修や出前授業で体験を伝えています。

佐さ

藤とう

 静しずか

宮城教育大学 教職大学院 教授専門は臨床心理学。「心理、カウンセリング、心の支援」について、学校における心理支援・適応指導としての教育相談、臨床心理学療法における心の支援全般について研究しています。

・いずれ仙台も通る道です。参考になりました。(一般)・震災後の教育の悩み、神戸から学ぶことの多さに改めて気づいた。話に共感できた。(教育関係者)

 19年前の阪神・淡路大震災を経験した現在の神戸市民は約40%と言われています。当時教員として震災を経験し、復興に向けた活動や防災教育、風化させないための神戸の取り組みを、現在の立場でお話します。 神戸市は副読本を作り防災教育に取り組みましたが、震災体験の温度差ですべての学校や児童生徒に同じ取り組みは出来ませんでした。同様に副読本を作って防災教育を推進している仙台市のこれからの防災教育も、神戸市の経験を参考にしていただきたいと思います。 仙台市内の学校を回っての出前授業やいろいろな講座での講義で一貫してお話していることは、「防災教育は決して急いではいけない。児童生徒が受け入れられる時期が来るまで待つこと」「教える防災教育ではいけない」ということです。

・実際に津波を体験した人間と内陸で被災した人間では、現在の感覚のブレ、受け止め方の差やずれを多く感じます。佐藤先生の話の通り、これから心のケア、経済、サービスが重要になると思います。(一般)

 災害直後に必要な心の支援と、3年を経過する現在の心の支援の違い、さらに今後の支援について説明します。初期の段階では、安定した生活へ向けての見守りや対応と、気持ちの共有が必要ですが、時間の経過とともに、個々人の傷つき体験や被災感情に配慮しながら、自己肯定感や自己効力感(やればできるという気持ち)を持たせていくこと、心理ケアのバックアップ体制を作っていくこと、記念行事や追悼行事への配慮が必要になってきます。 今後出始める可能性としては、被災状況の違いによる意識や気持ちの温度差、潜在的に押し込んでいた感情や問題の表出が考えられ、災害以外の影響も関わります。 対応として予防的な視点、心の支援体制を整える、何かが起きたときでなく普段からの心の支援や寄り添い、相談やカウンセリングにおける専門家の活用が必要で、災害に限らず人間の心理的なしくみを理解しておくことが大切です。

❷ 災害後に必要な長期の心の支援とは?1月21日(火) 14:00~15:00

❸ 仙台・神戸発 生きる力を育む防災教育1月21日(火) 18:30~19:30

※ ESD…社会の課題と身近な暮らしを結びつけ、新たな価値観や行動を生み出すことを目指す学習や活動のことRCE…国連大学が推進する「持続可能な開発のための教育に関する地域拠点」のこと5 6

来場者アンケートより

来場者アンケートより

❹ 出張学び喫茶 ー災害時の食について考えるー1月22日(水) 12:30~13:00

(右から)高たか

橋はし

 栞しおり

 宮城教育大学4年 石

いし戸と

里り

依え

 宮城教育大学4年

気 仙 沼 ESD/RCE  気仙沼の防災教育の実践 防災学習シートを使った実践1月24日(金) 16:30~17:30

仙台ESD/RCE 仙台平野のいぐねと防災機能1月23日(木) 16:30~17:30

 本学の学生2名が、震災時、ライフラインが途絶えたり食に困ったりした経験から、被災後の物流や復旧に合わせた日にちごとの段階に分けて、災害時にできる対応について考えました。その中から「すぐに使える浄水フィルター」「身近にある材料でできる非常食のレシピ」

「アレルギー対応非常食」を紹介しました。「たのしい、ちからになる、つながる、てとてを取り合う、ともに立ち向かう」の「たちつてと」の合い言葉を考え、自助、共助、公助の大切さを発表しました。

海かい

藤どう

 節せつ

生お

NPO法人水守の郷・七ヶ宿理事長

小こ

金がね

澤ざわ

 孝たか

昭あき

宮城教育大学教育学部教授FEEL 仙台

片かた

山やま

 祥しょう

子こ

気仙沼市立松岩小学校教諭

 町の交流事業への参加を機に仙台から生活拠点を移し環境保全活動に取り組んで来ました。震災後に避難所生活から仮設住宅に移り時間的余裕の出て来た人たちから農ある暮らしを求める声が聞こえ始め、瓦礫撤去や耕運、復興ハーブプロジェクトなどコミュニティ再生のための活動を進めてきました。協力者も増えてきました。今後は農地で作ったものの製品化等で高齢化や過疎化に負けない元気な町にするのが夢です。

 今回の震災での津波被害について調査したところ、いぐね(居久根=屋敷林)のあるところと、ないところでは津波の到達の時間や被害の度合いに差があることがわかりました。いぐねだけでなく他の植物についても同様です。震災以降、防潮堤などを作ることで被害を食い止める方法が各地で検討されていますが、人工のものだけで災害を防ごうとしても限界があり、自然災害を防ぐには自然の力を決して侮ってはいけないということです。

 気仙沼市教育委員会では、40年前から教育研究員制度を設け、各校から教師が集まりテーマを決めて研究を進めています。震災を受け、一昨年からは研究員で作成した「防災学習シート」を活用した防災教育に取り組んでいます。学年ごとに系統だて、児童の発達段階に合わせて各教科との関連を図りながら学習活動を推進しています。今後は学校間の取り組みの温度差をなくし、地域をあげての防災教育にしていくことが課題です。

白石・七ヶ宿ESD/RCE 復旧・復興ボランティア活動1月22日(水) 16:30~17:30

・学校は避難所となっていることが多く、その現状を事実としてとらえることができました。この分析の正否は別として、現在の学校、今後の学校や避難所も考えなければならないと感じました。(企業)

・自分も楽しみ人を楽しませつつ活動をなさっていることが素敵でした。行動することが大事なのだと改めて感じました。(一般)

・防潮堤を造れば良いという安易な考えが正しくないことが判りました。建築家の伊東豊雄さんも同じ点について指摘しておられ興味深いことです。(一般)

・みんなで取り組んでいる研究や資料が素晴らしい。自分が現場に立ったら今回の事例のようにこの学校・家庭・地域、三者の結びつきを密接なものにしたいと思いました。(学生)

瀬せ

尾お

 和かず

大お

宮城教育大学 教育復興支援センター副センター長専門は社会地震学、自然災害科学。聞き取り調査、実地踏査をもとに「体験談に基づく災害時の地域特性」など、今後の災害予防の観点から研究を進めています。

 今回、震災後の津波被災地を回り、その場所の地形と学校の構造、その時の住民の避難行動に目を向けました。被害の大きさの違いは、地理的な条件だけでなく、住民の意識や避難行動にも現れていました。震災前から危機感を持って避難訓練などに取り組んでいたところももちろんありましたが、反面、「この場所には津波はこないであろう」という根拠のない情報や、正しい知識をもたないが故に行動が遅れてしまった例も見受けられました。問題になっている学校でも、その時の学校の判断の善し悪しは結果論でしか言えないところもありますし、避難所にも指定され、安全と思われていた学校で被害を受けた例も見られました。地域の防災拠点としての学校の果たす役割の大きさがこの震災で実証されました。しかし学校だけが万能なのではなく、災害予防の観点から地域住民にとって大切なのは、その地域の正しい情報を常に得て、行動できるようにしておくということです。

津波災害と学校ー東日本大震災時の津波避難行動から学んだことー1月23日(木) 18:00~19:00

・震災時の親子への支援、特にお母さん方への非常に親身で厚い支援をのびすくが行っているということを知り、素晴らしい活動をしている施設だと感じました。(学生)

伊い

藤とう

 仟ち

佐さ

子こ

子育て支援施設「仙台市子育てふれあいプラザのびすく仙台」館長特定非営利活動法人「せんだいファミリーサポート・ネットワーク」代表理事「せんだいファミリーサポート・ネットワーク」は子育て家庭支援を目的として仙台市内で子育て支援にかかわってきたメンバーを中心に設立され、既存の施設団体と連携して支援事業を展開しています。

 「のびすく仙台」は震災4日後には再開しました。「震災後初めて子どもの笑顔を見た」というお母さんもいました。震災後「自分が子どもを守らなくては」と必死だったお母さんたちがしばらくしてその時の気持ちを語り始めました。もっと大変な方もいるから弱音を吐いてはいけないと思っていたこと、悲しく辛かったこと、子どもの変化、困難を乗り越えた知恵。「今しか聞くことのできないお母さんたちの声をこれから子育てする人に伝えたい」と、あのときの経験、災害への備え、乳幼児のママの声や知恵、心に寄り添うメンタルケアなど、お母さんたちの生の声と専門家のアドバイスをもとに、「大切な人を守るために今できること」いう地震防災ハンドブックを制作しました。 あの日を知るお母さんたちも減り始めた今、「のびすく仙台」はそれを伝えると共に一生懸命頑張ったお母さんたちが再び元気になれるよう応援していこうと活動しています。

お母さんたちの震災と のびすく仙台の取り組み1月23日(木) 14:00~15:00

被災地からの報告

7 8

来場者アンケートより 来場者アンケートより

来場者アンケートより 来場者アンケートより

・子供たちの行動や先生方の行動から、生きていくためにどうすべきか、それぞれ自ら役割を持って考えられたこと…生き抜くためのパワーを感じました。(企業)

田た

端ばた

 健たけ

人と

宮城教育大学 教育学部 准教授専門は教育学。教育実践研究、学級づくり、授業づくりなど具体的な支援のしかたを研究するとともに、実際に現場で役立つ支援について学生に指導しています。

 震災発生時、多くの子どもたちは学校にいました。マニュアル通りにはいかず、教師たちはその場で判断して行動することが求められました。地元出身の地域に詳しい先生を先頭に子どもを学校外に避難させた学校、30分後に10mの津波が来るという情報を得て外に避難するのは間に合わないと判断して屋上に上げた学校… 教師は自分たちの経験や立場、知識を活かし指示を待たず自主的に行動しました。避難所運営でもそれぞれの専門性を活かし、通訳をする教師、理科の備品で使えるものを提供する教師、子どもを動かしながら地域の方々を上手にまとめ上げた教師たち。 それぞれの学校で教師の話を聞き取りながら、あのような状態に陥ったときでも日々子どもたちに接して集団を動かしている教師のメンタリティの強さを改めて感じ、未来を担う人材を育てる教員を養成する宮城教育大学の使命と、大学が育てる人材が町を蘇らせていくのだということを改めて考えました。

学校を災害が襲うとき、襲った後1月24日(金) 18:00~19:00 

・自衛隊のみなさんが尽力なさっていたことはテレビなどで拝見させていただいていました。そして今回の講演を聞き、さらに自衛隊のみなさんの ” 命 ” に対する必死な想いが心に響きました。(学生)

小お

渕ぶち

 洋よう

一いち

郎ろう

自衛隊宮城地方協力本部 渉外幹部3等陸佐海外での勤務も何度も経験され、オーストリア日本大使館での勤務、そしてイラク紛争の際には第二次支援隊として活躍されました。現在、自衛隊宮城地方協力本部で渉外幹部としてご活躍です。

 震災発生から5分後、自衛隊は県庁・各自治体に連絡員を派遣し情報収集を開始、9分後には海上自衛隊のヘリコプターが離陸し、陸、空、海から必死で救命・救急活動を開始しました。救命は発災から72時間が勝負と言われます。派遣される隊員の中には自分の家族と連絡の取れない隊員もいましたが、「目の前にある命を救うために」との任務を全うする思いで活動しました。11日夜半には全国各地から増援の部隊が駆けつけ救護活動は拡大していきました。14日には予備自衛官を初めて投入し、救援活動から生活支援へと任務をシフトしながら、7月末まで活動を続けました。友達作戦など、救護活動の支援を通して任務を再確認し、このとき、日本各地、世界各国から駆けつけてくれた支援への恩返しとして、自衛隊はこれからも全国そして他国での災害支援に出向くことが任務と思っています。

東日本大震災における自衛隊の活動1月24日(金) 15:00~16:00

・障害特性による困難さも理解することができ、地域とのつながり、ネットワークの必要性を切に感じましたが仙台という土地柄、近所づきあいが少ないのも事実。今後自分が関わっていきたいです。(学生)

谷や

津つ

 尚なお

美み

特定非営利活動法人アフタースクールぱるけ 代表理事障がいを持っている子どもたちやその家族が安心して地域で生活できることを願い、障がいを持つ子どもたちの余暇活動やその家族を支援する事業、ボランティア育成等の事業を行っています。

 障がい児者は地域と繋がりにくい環境で生活しています。震災時、放課後の時間を過ごすため、子どもたちは施設内にいました。学区ではなく多地域から集まってきているため、保護者に引き渡すために時間がかかり配慮を要しました。避難所生活が始まっても、障がい児をもつ保護者、特に見通しが持てないことが不安定の原因になり多くの方がいる場所に行きにくい情緒面での障がい児をもつ保護者の方の悩みは続きました。そういう生活の中で震災後困ったこと、必要な支援を知ってもらおうと保護者の皆さんと活動を始め、「見守る側に知って欲しい」「障がい児を持つ保護者の方にも伝えたい」という強い思いで、冊子を作成したり、各所への出前講座などの活動を続けてきました。「障がい児者を理解するためにはみんなが専門家にならなくていい、ちょこっと見守ってくれる方を増やしていきたい」と「ちょこっと・ねっと」では活動を続けています。

ちょこっと・ねっと -障がい児者とその家族からのメッセージ-1月24日(金) 14:00~15:00

・実際体験してみることで、心が身体がウキウキするような体感を持てる作業というのが、なにより大切なことかと思いますしそれがデータ的にもわかり、有意義に感じました。(教育関係者)

 園芸療法とは、植物を用いて心や体の健康の回復を図ることを目的とした方法です。日本で園芸療法が注目されたきっかけは、阪神・淡路大震災でした。阪神・淡路大震災後、緑や植物に触れることが心のケアの一環になるとの認識が高まりました。その時は支援面に注目が集まりましたが、心身面でどんな変化や効果があったのか、どんな回復が見られたのかという研究は行われていませんでした。  東日本大震災で再び注目され、被災者にとっての効果に科学的な根拠があることなのか、どんな効果があるのか研究され、その結果、園芸を行った人は園芸を行わない人と比べて、ストレスに関係する脳の部分の回復や震災ストレス、抑うつ状態の改善、外傷後成長(心に傷を負った人がその後人間的な成長を遂げること)が向上することが分かりました。これらの結果を元に、被災地域のコミュ二ティ再生の手段として園芸療法を活用できないかという検討を沿岸部ではじめています。

植物が被災者にもたらす効果1月24日(金) 12:30~13:30 

⓫事こと

崎ざき

 由ゆ

佳か

東北大学加齢医学研究所東日本大震災を機に震災復興に寄与するべく、基礎的・実証的な研究を行っています。

宍しし

戸ど

多た

恵え

子こ

園芸療法士

右から宍戸多恵子藤ふじ

田た

 茉ま

優ゆ

サポートスタッフ事崎 由佳

9 10

来場者アンケートより

来場者アンケートより

・河北新報の考え方が明確で共感できました。若い人たちを巻き込み、社会の力に変換できると良いと思いました。宮教大へは、いのち・人権を守るためには教育が大切。期待しています(その他)

武たけ

田だ

 真しん

一いち

河北新報社 編集局次長  入社以後、福島総局、東京支社編集部、報道部などに勤務。東日本大震災の折には、報道部長として手腕を発揮し震災関連の報道の陣頭指揮を執り、地元の新聞社としての大きな使命を果たしました。

 「震災を風化させないようにするのは誰のため、何のためなのか」 被災地間、被災者間、被災の原因での格差が広がってきた今、風化させないために考えるべきことは

「災害をひとごとではなく『わがこと』として捉えること」「犠牲者の無念や被災者の苦悩に報いるためにも教訓を残し、次なる災害で犠牲や被災する人を少なくするためのものでなければいけない。風化させないことは自分と家族を守るためのものであり、それが地域と国を守ることに繋がる」と認識しています。 河北新報社では震災から3年が経過する現在も「いのちと地域を守る」キャンペーンで震災に関する報道を続けていると共に、毎月11日には防災のページ、被災地以外の都市を回っての「むすび塾」のワークショップなど、市民の防災意識を高めるために発信していく活動と報道を続けています。 

いのちと地域を守る1月25日(土) 15:30~16:30

・地域の教育力を上手に学校防災に生かせていけたら未来が開けると思います。(一般)・子ども達に震災の教訓を語り継ぎ災害に強いまちをつくるのは、地域に開かれた学校でしょう。(学生)

佐さ

藤とう

 健たけし

東北大学災害科学国際研究所 教授専門は地震工学、地域防災、防災教育。災害に強い持続可能で、美しく快適な地域社会づくりを目指し、地域に根差した減災・防災まちづくりの研究とその実践を行っています。

 平成24年より仙台ではSBL(Sendaichiiki Bosai Leader)を養成し、現在約200人の方が学校と連携した地域防災のために活動しています。学校の防災は管理と教育、地域の防災は自主防災活動に主に分けられます。震災以降たくさんの教訓が語られましたが、災害に備えた持続可能な町作りをしていくためには学校防災と地域防災の連携、融合が不可欠です。そのために大きな役割を果たしているのがSBLです。仙台市でも防災教育モデル校を中心に地域との関わりを強化しています。学校の教師たちは教えることが専門ではありますが、その地域に住んでいない教師だけでは十分に教えられないものもあります。地域に根ざしたことを教えたいという学校のニーズのために、地域の情報や知識、地域素材を把握し、学校と情報を共有しながら「自分たちの地域は自分たちで守る」ための防災教育にも活かせるようにという目的で、SBLは支援システムを作り学校の防災教育を支援しています。

学校防災と地域防災の連携推進者SBL1月25日(土) 14:00~15:00

来場者アンケートより

講座全体の感想 ー来場者アンケートよりー

・震災を未来につないでいくための計画性の不足、情報の統一性の不足…学校教育の中に防災教育をどう組み込むか、一般性の情報だけでなく、地域性を十分に含んだものにできるかが求められているだろうと感じた。(教育関係者)

・通りすがりです。東松島市で津波被害。震災後から 1 年目、2 年目は自分自身の行動の頑張りで被災地自宅処理行政手続きを進められましたが、2 年目以降は自分の行動だけではどうにもならない部分、今後の生活について不安を多く感じるようになりました。実際に津波体験した人間と内陸で被災した人間では、現在の感覚のブレ、受け止め方の差やずれを多く感じます。佐藤先生の話の通り、これから心のケア、経済、サービスが重要になってくると思います。このような講座を引き続き行っていただきたいです。(その他)

・津波被災地と原発被災地の格差を考えなければならないと初めて思った。風化させないためにどうすべき か、このような防災 week を主催するのも良いと思うが、参加するのは一部の人であるのでもったいないと思う。メディアで継続して取り上げていき、一人でも多くの人の心に焼き付けていかなければ、風化は免れないと思う。被災者側としても、受け身ではなく、情報の発信側になると、また新しい形で多くの人に防災のアプローチができると思った。(学生)

武田 真一河北新報社編集局次長

佐藤 健東北大学災害科学国際研究所教授

瀬尾 和大宮城教育大学教育復興支援センター副センター長特任教授

 瀬尾教授から「今までの災害経験が今回の震災に活かされていたのか。風化させないため出来ることは何なのか。」という問題提起があり、それぞれの考えが出されました。 佐藤教授からは「阪神・淡路大震災で甚大な被害を受け、当時の資料も残し風化させない多くの取り組みをしてきた学校ですら、教師が入れ替わり当時を知る者がいなくなり、残された資料が活用されていない現状がある。学校だけでは出来ないことをつなぐ、地域人材の発掘が必要である。」との意見がありました。 武田氏からは「学校、企業、病院、NPO等、個別にはそれぞれ取り組みがされている。しかしバラバラで散発的である。統一感を持って発信し、統合体としていくための窓口はどこになるのかを、そろそろ考えていかなければならない。」との発言があり、また、「今後地震が起きる可能性がある」という国民を怖がらせる防災ではなく、「ではこの地域ではどうするか」という、さらに踏み込んだ防災啓発の必要性がこれから活かすべき教訓として示されました。 それぞれの分野でのアプローチは根気強く続けながらも、被災地同士が同じ立場で悩みを打ち明けあって交流し、刺激し合って経験や知見を熟成させ共有させていくこと、それを統合して大きなものしていくことが、今回の教訓を伝えていくための今後の大きな課題になるということが共有されました。

東北から語り継ぐ未来へのメッセージ-3.11の経験から-

1月25日(土) 16:50~17:50

クロージング