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⽣活製品におけるIoT等のデジタルツールの活⽤による ⽣活の質の向上に関する研究会 報告書概要 平成30年3⽉

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Page 1: ⽣活製品におけるIoT等のデジタルツールの活⽤による ⽣活の質の向上に関する研究会 報告書 … · ・報告書(案)について 【研究会委員】

⽣活製品におけるIoT等のデジタルツールの活⽤による⽣活の質の向上に関する研究会

報告書概要

平成30年3⽉

Page 2: ⽣活製品におけるIoT等のデジタルツールの活⽤による ⽣活の質の向上に関する研究会 報告書 … · ・報告書(案)について 【研究会委員】

【開催概要】○ 第1回研究会(平成29年11⽉30⽇開催)・⽣活製品におけるIoT等の活⽤に向けた検討の⽅向性と論点について

○ 第2回研究会(平成30年2⽉7⽇開催)・ファッションテックに係る事例整理を踏まえた今後の⽅向性について・委員及び招聘委員からのプレゼンテーション

※フクル、ルグラン、アシックス、TFLより説明

○ 第3回研究会(平成30年2⽉26⽇開催)・スマートテキスタイルに係る事例整理を踏まえた今後の⽅向性について・委員及び招聘委員からのプレゼンテーション

※ミツフジ、倉敷紡績、グンゼ、Xenoma、アシックス、セーレンより説明

○ 第4回研究会(平成30年3⽉22⽇開催)・報告書(案)について

【研究会委員】野城 智也 東京⼤学⽣産技術研究所 教授(座⻑)⽯⽥ 智⾏ ソフトバンク株式会社 IoT事業推進本部⼩笠原 治 株式会社ABBA Lab 代表取締役蔭⼭ 広明 株式会社アシックス 経営企画室 副室⻑酒井 崇匡 株式会社博報堂 ⽣活総合研究所 上席研究員笹本 純也 ヤフー株式会社 IDサービス統括本部辻本 和久 セーレン株式会社 研究開発センター平井 利博 信州⼤学 特任教授、名誉教授⽔⾕ 博明 株式会社 スパイスボックス / DiFa GM三寺 歩 ミツフジ株式会社 代表取締役

※敬称略

研究会の開催概要 消費者の価値観やライフスタイルが変化するとともに、第四次産業⾰命が進展する中、⽣活製品*1には、IoT

等のデジタルツールを活⽤し、データを収集・分析し、課題解決や体験価値等の新たな付加価値を提供することによって、私たちの⽣活の質の向上や、Connected Industries、Society 5.0の実現に貢献できる⼤きな可能性がある。

競争⼒の源泉はデータの利活⽤やソリューションの提供にあり、グローバルを視野に、スピード感を持って、単なる従来の延⻑上ではない取組が求められる。

こうした観点から、⽣活製品におけるデジタルツールの活⽤について、現状の把握を⾏った上で、今後の課題や取組、将来的な可能性・⽅向性等について検討を⾏うことを⽬的として、「⽣活製品におけるIoT等のデジタルツールの活⽤による⽣活の質の向上に関する研究会」を平成29年11⽉に設置、平成30年3⽉までに4回開催した。

1*1 広義には⼈々が⽣活に使⽤する製品⼀般を指すが、本研究会では、繊維、服飾品、⽣活雑貨等、⽣活製品課が所掌する製品群を取り上げた。

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研究会での検討の対象範囲について 研究会では、⽣活製品におけるIoT等の活⽤について、消費者等の⽬に⾒える形で⽣活の質の向上をもたらす⼤きな可能性があることを展望する観点から、特に B to C ⼜は B to B to C での展開に着⽬し、主に繊維・ファッション関係を取り上げた*2 。

⽣活製品におけるB to C等でのデジタルツールの活⽤事例を⾒ると、「マスカスタマイゼーション」、「提案型サービス」、「情報収集・センシング」等に⼤別される。

このように、ファッション分野にデジタル技術等を積極的に導⼊し、製品・サービスの⾼付加価値化を図る取組は、「ファッションテック」と総称され、その中でも、⽣体データ等の収集・分析を可能とする⾐料等は「スマートテキスタイル」とも呼ばれ、各社で開発が進められている。本研究会ではファッションテック及びスマートテキスタイルに主に焦点を当てて取り上げた。

これらは、将来的には、⾐服というモノの概念を根本的に変⾰し、これまでは到底不可能だった様々なサービスやソリューションを提供できる無限の可能性を秘めている。

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検討の対象

*2 スマートホームについては、平成28年度、⽣活製品課が開催した検討会における課題の整理を踏まえ、平成29年度、実証事業等が⾏われている。

スマートテキスタイル電気を通す繊維(導電性繊維)等の素材を⽤い、着るだけで⼼拍や⼼電等の⽣体データの取得や、繊維等の素材の伸縮を利⽤したモーションデータの測定ができる⾐類等。

ファッションテックFashionとTechnologyを組み合わせた造語であり、ファッション分野への新たなデジタル技術の導⼊により、⽣産性の向上や製品・サービスの⾼付加価値化を図る取組。

B to C 等におけるデジタルツールの主な活⽤パターン

検討対象分野

消費者等の⾝の回りの可視化(情報収集・センシング)

消費者へのレコメンド(提案型サービス)

消費者の好み等に個別に対応しつつ⼤量⽣産を実現(マスカスタマイゼーション)

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ファッションテックの現状 ファッションテックとは、ファッション分野に新たなデジタル技術を導⼊することにより、⽣産・流通・販売過程におけ

る⽣産性の向上や製品・サービスの⾼付加価値化を図る取組全般を指し、様々な場⾯でこの⾔葉が⽤いられている。(例)・ECプラットフォームによるレンタルやリユース等のサービス、クラウドファンディング

・⼯場のスマート化、受発注者のマッチング・プラットフォーム・顧客データとAI等を活⽤した商品開発、需要予測、⽣産・流通管理、店舗レイアウト等の構築、商品・コーディネート提案・3D技術等を活⽤したデザイン、採⼨、バーチャル試着・センシング・マスカスタマイゼーション 等

これらにより、新たな付加価値の提供、販路の拡⼤、⽣産性の向上、在庫ロスや機会ロスの低減、新たなサプライチェーンの構築等が期待されている。

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マスカスタマイゼーション個々の消費者の好みや体型等のデータに応じた個別の受注と⽣産システムをIoT等のデジタルツールで連携させることで、従来の⼤量⽣産と同様の効率性で、オーダーメイドの⼀点物を⽣産・販売する取組。

提案型サービス 消費者の⽣活や活動等に関連するデータ(利⽤データ、体型データ、位置データ、天候データ等)をAI等により分析し、消費者個⼈のニーズや嗜好に応じた商品をレコメンドする取組。

情報収集・センシング 製品を単にモノとして提供するのではなく、製品にセンサー等を内蔵し、消費者の製品の使⽤状況や動き等のデータを取得し、新しいサービスを提供する取組。

⼈材育成 ファッションテックの取組が進む⼀⽅で、デジタルツールの活⽤を推進する⼈材が不⾜しているとの声もある中、ファッションとテクノロジーの知識を備えた⼈材の育成に関する取組も⾒られる。

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ファッションテックの主な事例①

●IoTを活⽤し、消費と製造現場をつなぐ新たなビジネスモデルの構築を⽬指し、店舗でのバーチャル試着と⼯場の⽣産プロセスをつないで作るセミオーダーの洋服を提案する「Viscotecs」(ビスコテックス)を開発。

●店舗に設置するデバイス上で商品を発注すると、その情報が⼯場に即時に転送され⽣産が開始されるものであり、これにより、店舗が在庫を持つことなく、顧客が「欲しいものを、欲しい時に、欲しいだけ」⽣産するマスカスタマイゼーションのシステムを実現。

株式会社フクル(フクルSCMシステム)●複数の企業の⽣地や副資材などの在庫データ、デザインパターン、縫製⼯場等をデータベース化し、個別の顧客向けに⾐服を⽣産する「超多品種⼀点個別⽣産=オーダーメイド型マスカスタマイズ⽣産」を実現するシステムを開発。

●⼤量⽣産によるロスをなくすことで、⾼品質な⾐料を適正な価格で提供することを⽬指している。

●気象データと連動したコーディネートのレコメンドや個々⼈が所有する⾐服の登録や⽇々のコーディネートの記録を提供するサービスを実施。

●位置情報と気象データを⽤いた、AIによるコーディネート分析を通じて、利⽤するほどに当該個⼈に適した提案が⾏われるようなアプリ開発が進められている。

マスカスタマイゼーション株式会社セーレン(Viscotecs)

提案型サービス株式会社ルグラン(TNQL)

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ファッションテックの主な事例②

●TFLが運営する「東京ファッションテクノロジーラボ」では、ファッションとテクノロジーの知識を備えた⼈材の育成に取り組んでおり、社会⼈や専⾨学校⽣等を対象とし、製造・流通プロセスにおいてテクノロジーを活⽤できるビジネス創造・企画⽴案⼒等といったスキル習得に向けた教育を⾏い、ファッション産業に⼈材⾯から⾰命(ファッション教育⾰命)を起こすべく取組を進めている。

●さらに、国内外のデジタルベンチャー企業等との産学共同プロジェクトを通じて、先端技術を活⽤したファッションビジネスの創出に取り組んでおり、開講2年⽬となる2018年は、社会⼈向けファッションテック教育に加えて、アパレル企業向けのファッションテック教育の提供を⾏うなど、教育対象や教育内容の更なる拡充を進めている。

⼈材育成株式会社TFL(東京ファッションテクノロジーラボ)

マスカスタマイゼーション

●ファッションデザイナーの中⾥唯⾺⽒は、⾃⾝のブランドである「YUIMA NAKAZATO」において、「オートクチュールの⺠主化」を掲げている。従来の服作りにおける⼯程を、3Dスキャナー、オートパターンメイキング、デジタルファブリックカッター等の新しい技術で再構築し、新しい⼀点⽣産システムを独⾃開発している。様々な素材をレーザーカッターで細断し、「ユニット」とよばれるパーツに成形して組み合わせることで、⼀⼈ひとりの⾝体に最適なシルエットを造作するとともに、破損やスタイルチェンジに容易に対応することのできるサステナブルなオートクチュールプロダクトを発表。

●最新技術と融合したマスカスタマイゼーションの実現により、オートクチュールを再定義することで、着る⼈だけのために仕⽴てられた究極の⼀点ものの服を世界の⼈にあまねく届けるという、⾐服のひとつの未来を提⽰しており、「やがて⾐服は⼀点ものしか存在しなくなるでしょう」と述べている。

株式会社YUIMA NAKAZATO

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ファッションテックの主な事例③

情報収集・センシングマスカスタマイゼーション 提案型サービス

「Orphe」(no new folk studio)• ⾜の動きを感知する9軸センサー等をソール部分に埋め込み、⾜の動きに応じてLEDが光ったり、⾳が出るスマートフットウェア「Orphe」を開発。

• エンターテイメント等への展開を進めており、活⽤を⼀層広げられるよう、他事業者でも⾃由にアプリを開発できるソフトウェア開発キットを公開。

「みまもりタグ」(ALSOK)• 認知症患者の⾏⽅不明対策の取組として、位置履歴データを把握できる「みまもりタグ」を開発。

• 介護靴メーカーの徳武産業と連携して「みまもりタグ」を収納した「みまもりタグ専⽤靴」を⽤い、地域の⾒守りネットワークの構築⽀援に取り組んでいる。

「interactive shoes hub」(富⼠通)• 脚に着⽬し、⽴つ、座るなどの⾏為を、センサーで把握、可視化、解析を⾏うための共創プロジェクトとして「interactive shoes hub」を開始。

• センサーシューズ「interactive shoes」を活⽤し、動きを⾳や照明に変換できるシステムの開発等、産学連携による様々な展開を⽬指している。

「ASICS Custom Apparel Service」(アシックス)• 3Dスキャナーで体型を計測した結果をもとに、タイツのカスタムオーダーができる。

• 腰周りやひざのサポートなどさまざまな機能を搭載するなど、個⼈の体型に合わせたサポート機能を付加し、デザインの変更も可能。

「ZOZOSUIT」(スタートトゥデイ)• ⾝体のサイズを計測する伸縮センサー内蔵の採⼨ボディースーツ「ZOZOSUIT」 を発表。

• ZOZOSUITにより、得られた体型データを活⽤したマスカスタマイゼーションを実現し、既製品のような⼿ごろな価格で、個々⼈にあったサイズ・仕様での製品販売を⽬指している。

「Eoluna」(ミリメーター)• ⾃社開発の3Dスキャナーで⾜の形状を計測し、3Dプリンターで⾜型を作ることで、従来の⾜型製造の⼯程を⼤幅に効率化。

• ⾰の材質、⾊、ヒール⾼、つま先の形状等を選択することができる完全フルオーダーの靴を、従来のオーダー靴に⽐して価格を抑えて製造・販売している。

「SENSY」(SENSY)• スマートフォンアプリの「SENSY CLOSET」を開発し、消費者が所有する⾐服を登録することができるデジタル・クローゼットによる管理サービス。

• 過去のコーディネートの登録に加え、AIによる新しい⾐服やコーディネート提案を⾏うことを⽬指している。

「PASHALY」(サイジニア)• 画像解析技術を活⽤し、「欲しい」と思ったファッション写真をアップロードするだけで、AIが写真上のアイテムを分類し、類似製品をレコメンドするアプリ。

• 利⽤者と類似の趣味・嗜好を持つコミュニティを導き出すことで、潜在的なニーズにマッチしたレコメンドも⾏っている。

「おまかせ定期便・⾃分サイズ検索」(スタートトゥデイ)• 「ZOZOTOWN」では、「ZOZOSUIT」で計測した体型データを活⽤し、個々⼈に合ったサイズの商品を検索できるサービスを開始。

• また、体型データと好みを分析してコーディネート提案を⾏うサービスも開始している。

「マックスパス スマート」(エース)• IoTスマートラゲージ「マックスパス スマート」は、スマートフォンと連動し、Bluetoothを利⽤して置き忘れ等で距離が離れるとアラームが鳴ることにより、製品の紛失を防ぐ機能等を備えたものとなっている

「APEX‐3及びホールガーメント」(島精機)• コンピューターグラフィックス技術を⽤いたバーチャルニットデザインシステムと、ニット製品をまるごと編み上げることができるホールガーメントを連携。

• デザイン提案、サンプリング、編みパターンの作成から⼀点ごとの製品の⽣産までをシームレスにつなぎ、マスカスタマイゼーション⽣産を⽬指す。

「⾼性能3Dフットスキャナー」(Flicfit)• ⾜と既存靴の3Dデータをマッチングさせるシステムを開発し、⼩売店で消費者の⾜にフィットする靴の提案サービスを⾏う。

• 従来困難とされた靴の内⼨の計測を可能としており、計測した3Dデータをクラウド上で管理し、スマートフォンで確認できるシステム。

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ファッションテックの課題 ⽣活製品産業においてIoT等のデジタルツールの活⽤を⼀層進めていく際には、業務の効率化や⽣産・流通プ

ロセスの最適化といった観点だけではなく、顧客に新たにどのようなソリューションを提供できるか、そして、そのソリューションをどのようにビジネスモデルとして構築していけるかが重要となる。

同時に、デザイン性やファッション性の確保、消費者の⽬に⾒える取組も重要である。

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ソリューション志向1

⼈材の育成4

異分野連携の促進2

☞ IoT等は、課題解決や体験価値等の新たなソリューションを消費者本位で提供するために⾮常に有効な⼿段である。他⽅、IoT等を活⽤しても、消費者に新たな価値を提供するものでなければ、単なる「事業者本位」であり、消費者に受け⼊れられない。

☞ IoT等の発展がもたらす⼤きな構造変化の中、従来のビジネスモデルの持続可能性を⾒極め、IoT等を活⽤して新たにいかなるソリューションを提供することができるか、不断に追及することが不可⽋。

☞ ⾃前主義に拘泥するのではなく、積極的に異分野連携を進め、ものづくりの知⾒、通信やデータ分析等のデジタルの知⾒、消費者の課題等を掘り起こし、ビジネスモデルを構築できる知⾒等を効果的に組み合わせることが重要。

☞ 単なる技術開発に終始せず、最終的な製品・サービスを実⽤化するためのビジネスモデルを構築する観点から、連携を進めることが重要。

☞ 従来型の繊維・ファッション産業においては、デジタルツールの活⽤を念頭においた⼈材育成について、必ずしも⼗分には取り組まれていない。

☞ ファッションとしてのクリエイティビティ等の能⼒とデジタル技術の双⽅の⼈材・能⼒の掛け合わせ、多様な視点での議論や交流を通じた、⼈材の育成・確保が重要。

☞ デジタルツールの活⽤は、膨⼤な消費者データの収集を可能とするが、こうしたデータをAI等によって分析し、より価値のあるデータとして活⽤する取組は必ずしも⼗分に⾏われていない。

☞ AI等の活⽤により、リアルタイムで消費者の好み等を分析し、需要予測等を⾏い、商品企画・⽣産プロセスへの迅速なフィードバック、個々の好み等に合った商品提案、将来的な商品企画や提案等への活⽤といった、新たなビジネスモデルの構築が期待される。

データの利活⽤3

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ファッションテックの将来像 AIによる提案型サービスや需要予測は、IoT等を通じた多品種⼩ロット化の⼀層の推進、最終的にはマスカスタ

マイゼーションとあいまって、従来のアパレル産業等のビジネスモデルを抜本的に変⾰していく可能性がある。

マスカスタマイゼーションにより、⽣産性の向上、価格の合理化、環境負荷の低減等を図るサステナブルなサプライチェーンの実現について、効果検証を進め、本格的な社会実装を図ることが必要である。

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【ファッションテックの発展により実現される将来像のイメージ】 従来のアパレル産業は、基本的に⼀定の規格品を⼤量⽣産・⾒込み⽣産するものであるが、⾒込み外れ等から過剰供給や不良在庫等の問題を常に抱えており、「繊維業界では6割売れれば⼤成功」とも⾔われる。不良在庫の値引き販売は消費者からの価格の信頼性を損ないかねない。廃棄は環境負荷を⼀層⾼める。値引きと廃棄を前提とするビジネスモデルの持続可能性を疑問視する向きもある。

これに対し、マスカスタマイゼーションは、IoT等を活⽤し、個々⼈の体型や好み等にきめ細かく対応した製品、究極的には⼀点物が⼤量⽣産の既製品と同様の価格で⼊⼿できるというソリューションを提供することを可能とするのみならず、受注⽣産により不良在庫に伴う値引きや廃棄を最⼩化することで、価格の合理化(コストパフォーマンスの向上)や信頼性の確保、サステナビリティにも資する。

また、マスカスタマイゼーションは、消費者のデータやトレンド等についてのAIによる分析に基づくより合理的な需要予測や提案型サービス、ICTプラットフォームを介した作り⼿と使い⼿の双⽅向のやりとり等を通じ、更に⾼付加価値のソリューションを提供できる可能性がある。

ファッションテックは、今後、繊維・ファッション産業を抜本的に変⾰する可能性を秘めている。

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スマートテキスタイルの現状 国内では、繊維・素材メーカー、スポーツアパレル、スタートアップ企業や⼤学発ベンチャー等により、⽣体データ(⼼拍・⼼電、

筋電、呼吸数等)やモーションデータ(⾝体の動き)を取得するスマートテキスタイルの製品開発が進められている。

⽇本は電極としての性能を保ちつつ着⼼地や快適さを追求した製品開発に強みがあるものの、出⼝を意識した具体的な⽤途やユーザーの開拓に苦慮し、製品化に⾄らない事例が⾒られ、海外と⽐較して実⽤化が遅れている。

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電極(センサー)

ウェア

サービス提供の流れ

トランスミッター

アルゴリズム・システムの構築

サービス提供

スマートテキスタイルを⽤いたサービス提供までの流れ

主なプレイヤー

繊維・素材メーカー

通信機器メーカー

ネットワーク事業者ソフト開発事業者⼤学 等

スポーツアパレルフィットネスクラブ介護事業者医療関係者 等

ベンチ

企業等︵ワンスト

プでのサ

ビス提供︶

⽇本

海外

☞⽣体データのセンシングにおいて重要な技術要素となる電極としての性能を保ちつつ、⾐類としての着⼼地や快適さも同時に追求した製品開発は⽇本がリード

☞トランスミッター部分のデバイスとしての性能の⾼さも⽇本の強み

☞電極の性能やウェアとしての着⼼地や快適さよりも、具体的な⽤途開発、迅速な製品化、短い製品サイクルでの市場への投⼊等、出⼝を明確に意識して開発

☞製品・サービスの実⽤化が進展⇒⽇本の実⽤化は海外に⽐べて遅れている

⽇本と海外の⽐較

ウェアラブル端末におけるスマートテキスタイルの優位性

スマートテキスタイルには、リストバンド型やメガネ型等のウェアラブル端末には無い優位性があり、これらの優位性を活かしたソリューション展開が市場形成の鍵となる。

☞ 軽量化やフレキシブル化が容易であり、⾝体の動きへの追従性に優れる伸縮性、通気性、洗濯耐久性等も付与可能

☞ 電極(センサー)を体表⾯(特に⼼臓部)に密着させることで、他のウェアラブル端末に⽐べて精度の⾼い⽣体データ等が取得可能

☞ 体を覆うことができ、複数個所での計測や全⾝の動きの測定が可能☞ 「服を着る」という⽇常的な⾏動の中で着⽤ストレスが少なく⽣体データを

取得可能であり、⻑時間の測定に適する

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同社製の銀めっき繊維「Agposs」を電極として使⽤した着⾐型ウェアラブルデバイスにより、⼼拍・⼼電、呼吸数等を計測。ウェアの製造には、島精機の無縫製のニットウェアシステム(ホールガーメント)技術を採⽤。

建設作業員の健康管理、ボクシングやバスケットボール等のプロスポーツ選⼿の体調管理、介護施設の⼊居者の⾒守り等の実証実験を実施。また、フランスの企業とも連携し、「てんかん発作を予測するシャツ」として、欧州医療機関でも利⽤されている。

同社は、今年3⽉に、今後、「hamon」を⼀般消費者向けに展開することを発表。「hamon」を無料で提供した上で、データ確認⽤のスマートフォンアプリを⽉額利⽤料制とすることとしている。

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スマートテキスタイルの主な事例①

(株)ミツフジ 「hamon」

国内では、①⽣体データの取得による、⾼齢者、建設作業員やドライバー等の⾒守りや、アスリートの体調管理や運動負荷量のモニタリング等への⽤途開発、②モーションデータの取得による、スポーツ分野におけるアスリートの体の動きの分析やゲーム等のモーションコントローラー等への⽤途開発が進められている。

⼀部の企業においては、サービスの本格提供を視野に⼊れた積極的な実証事業や⼀般消費者への展開に向けた取組が⾒られている。

東京⼤学(染⾕隆夫研究室)発のベンチャーとして2015年に創業。ウェアの上に形成した伸縮性回路により、着るだけで体の情報をセンシング。⾼い伸縮性、引張耐久性、洗濯耐久性を持つことが特徴。

スポーツ分野を中⼼に国内外で既に100着程度を販売しているとともに、2018年1⽉に⽶国で開催されたCES2018ではドイツ「HUGOBOSS」と連携し、ゴルフ⽤e‐skinのプロトタイプを発表。

ゲームやスポーツ⽤途のみならず、ドイツ・エッセン⼤学に「e‐skin pajama」を提供し、パーキンソン病や認知症患者の歩き⽅を捉える実証実験にも活⽤される予定であるとともに、⾚ちゃんや⾼齢者の⾒守り、⼯場での安全管理の実証、予防医療等への応⽤も⽬指している。

(株) Xenoma 「e‐skin」 モーションデータ

⽣体データ

⽣体データ

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スマートテキスタイルの主な事例②グンゼ(株)「筋電WEAR」、「美姿勢チェック」

同社が有する編み技術や着⽤安全性、快適性の評価技術に加え、電⼦回路形成や表⾯加⼯技術を融合し、導電性繊維をニット⽣地にした「ニット電極」及び「ニットセンサー」を開発。

ニット電極により測定した筋電情報からトレーニング中等の筋⾁の動きを可視化できる「筋電WEAR」や、ニットセンサーの伸縮から着⽤者の姿勢を計測し、姿勢改善や腰痛・肩こり予防等、ユーザーのニーズに応じたプログラムを提案する「美姿勢チェック」等の開発に取り組む。

姿勢や⼼拍・⼼電、筋電等、様々な⽣体データを取得できるツールを持つという強みを⽣かし、更なる⽤途開拓や実証、サービス構築を進めている。

モーションデータ⽣体データ

(株)倉敷紡績 「Smartfit」 「Smartfit」により、着⽤者の⼼拍数、⾐服内の温度、加速度等の⽣体データを測定。着⽤者の⽣体データと作業現場地域の気象データとを独⾃のアルゴリズムにより解析し、着⽤者の熱中症リスクや体調変化等を評価。

⼤阪⼤学、信州⼤学、(⼀財)⽇本気象協会、ユニオンツール(株)、KDDI(株)、(株)セックと共同開発体制を構築。2018年4⽉頃にサービスの提供を開始予定。

全員が「Smartfit」を着⽤していなくても、そのエリア(集団)の熱中症リスクを推定できるシステムも開発中。将来的にはオリンピックやパラリンピック、野球・サッカー等の野外⼤規模イベントでの活⽤や、⾼齢者等の熱中症リスク管理等も視野に⼊れながら、開発を進めている。

⽣体データ

エーアイシルク(株) 「フレキシブルシルク電極」 ⽣体データ

東北⼤学発ベンチャーとして2015年に創業。導電性の絹⽷及び⽣地センサーである「フレキシブルシルク電極」を製造。絹を⽤いているため、肌触りや吸⽔性に優れることが特徴。

2018年1⽉には、アシックスの投資⼦会社であるアシックス・ベンチャーズ(株)より出資を受けることを発表。両社の技術を融合し、⽣体データ等を取得できるスポーツアパレルの開発を⽬指す。

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スマートテキスタイルの主な事例③

(参考)スマートテキスタイル関連技術︓太陽光発電繊維・テキスタイル 超薄型有機太陽電池(理化学研究所、東京⼤学)厚さ3μmの超薄型有機太陽電池。⼗分なエネルギー変換効率に加え、洗濯可能な伸縮性・耐⽔性を有する。⾐服に貼り付けるなどにより、ウェアラブル端末⽤電源等の⽤途が想定される。

布帛型太陽電池(住江織物株式会社、東京⼯業⼤学、信州⼤学)⾦属線へ薄層をコーティングした繊維状の有機薄膜電池。室内光での発電や曲⾯への設置が可能。ウェアラブル端末の電源や、カーテン等に⽤いて光量を検知するセンサーとして活⽤すること等が想定される。

太陽光発電テキスタイル(松⽂産業株式会社、スフェラーパワー株式会社、ウラセ株式会社、福井⼤学、福井県⼯業技術センター)直径1.2㎜の球体である太陽光発電素⼦を織り込んだ織物。防⽔加⼯されているため、屋外での使⽤も可能。防災⽤太陽光発電テントとしても使⽤。

企業名/製品名 概 要1.⽣体データ帝⼈(株)・関⻄⼤学「圧電組紐」

• ポリ乳酸繊維を使⽤したウェアラブルセンサー。介護・医療分野での⾒守り⽤途に加え、ゴルフのスイングコーチングを⾏うことも可能である。また、2018年1⽉には本技術を応⽤した「圧電刺繍」も開発している。

東洋紡(株)「COCOMI」

• 導電性シートを絶縁シートで挟んだ電極。COCOMIを⽤いた「スマートセンシングウェア」により、バス運転⼿向けの眠気検知システムや、カーレーサーの体調管理・運動負荷量のモニタリング、産後うつの研究等の実証実験を⾏うとともに、競⾛⾺の⼼拍数測定⽤腹帯カバーにも採⽤。

東レ(株)・NTT(株)「hitoe」

• 東レとNTT物性科学基礎研究所が共同開発した繊維製の電極。• hitoeを⽤いたスマートテキスタイル「hitoeウェア」により、建設現場作業員の熱中症対策システム、ドライバー向け眠気探知システムや安全運転⽀援システム、⾶⾏機内での⾚ちゃんモニタリングシステム等、様々な⽤途及び連携先との実証実験に取り組む。

2.モーションデータヤマハ(株)・カジナイロン(株)「データグローブ」

• グローブに伸縮性センサーを組み込むことで、⼿の動きを解析できるグローブを開発。ピアノ演奏者の演奏解析・評価ツールへの応⽤や、VR・モーションキャプチャー⽤グローブとしての展開を想定。

StretchSense・(株)スタートトゥデイ「ZOZOSUIT」

• StretchSense社(ニュージーランド)の技術である伸縮型シリコンセンサーを⽤い、体型を計測するウェア。計測されたデータは、胸部に取り付けられたデバイスにスマートフォンをかざすことで、専⽤アプリを通じて確認できる。

H2L(株)・NTT(株)「触感型インターフェース」 • hitoeを介して腕に電気刺激を与えることにより、VRゲーム等での触感型デバイスとしての⽤途を提案。

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スマートテキスタイルの課題 現状では開発・実証段階のものが多く、今後、実⽤化や製品・サービスの普及を図っていくことが必要。その際、

単に技術を⾼め、製品を完成させるだけではなく、サービス・ソリューションの提供や、新たなビジネスモデルの構築、異分野連携等が求められる。

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要素技術の開発1☞センサー機能の向上と装着感の最⼩化に向けた電極素材、配線材料の開発等が必要。☞⾃⽴型電源、通信技術、⽤途別のアルゴリズムやアプリケーション等、周辺技術の開発がスマートテキスタイルの普及拡⼤に向けて重要。

ソリューションの創出とビジネスモデルの構築

☞開発した技術ありきで⽤途探索を⾏うのではなく、⾃前主義からの脱却も念頭におき、社会的課題やニーズを把握した上で出⼝イメージを明確にし、ビジネスモデルを構築することが求められる。特に、繊維・素材メーカーによるサービス化の取組も⼀層促されることが必要。

☞現状は便益と費⽤のバランスが⾒合う分野(B to B to C 等)での実証事業が多くを占める中、将来的には⽤途に応じて、B to C ビジネスを展開し、スマートテキスタイルの裾野の拡⼤が期待される。

協調領域と競争領域の設定4

☞データ標準化等、協調領域での同業者間での連携は、各社による取組の重複や負担を軽減し、製品開発の効率性の向上につながる。

☞各社が協調領域と競争領域を区分し、可能な部分は他社と連携していくことが必要であり、こうした領域の設定のためには、ワークショップやフォーラム(「スマートテキスタイル推進会議(仮称)」)の開催等も有効。

☞繊維・素材と電気・電⼦機器の両業界の技術の融合が不可⽋であり、更にはセンサー技術やネットワーク技術、アルゴリズム解析、アプリケーション開発、セキュリティ対策等、幅広い技術の組み合わせが求められる。

☞既存の業種の枠を超えて、ユーザーとも連携し、潜在的なリソースを探索できるオープンイノベーションの場づくりが必要。

異分野連携の促進3

国際標準化の推進5☞スマートテキスタイルの実⽤化や利⽤拡⼤に向けて、⽤語、性能、評価⽅法等の標準化が必要。☞協調領域と競争領域を⾒極めた上で、標準化を通じて⽇本の強みを⽣かしつつ、市場を創出・拡⼤することが重要。

⽇仏共同プロジェクトの推進6

☞スマートテキスタイルは、⽇仏繊維協⼒において戦略的な分野に位置付けられており、今後、両国で共同開発プロジェクトを組成していくことになっている。

☞両国の産業界等には、フラッグシップとなるような両国の優れた技術を⽤いたイノベーティブな開発テーマの提案が期待される。

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スマートテキスタイルの将来像 スマートテキスタイルは、⾐服にセンサーという全く新たな機能を付与するものであり、⾐服の歴史において、新た

なページを開くもの。

従来の「固い」センサーではなく、柔軟性や伸縮性を持つ「柔らかい」センサーが普及し始めており、リストバンド、メガネ等に次いで、⾐服がセンサーとなるのは⾃然の流れ。

将来的に私たちの⾐服に対する認識を根本的に変えていく可能性を有している。

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【スマートテキスタイルの発展により実現される将来像のイメージ】 今まで以上に⾃らの体を知り、向き合うことで、未来のための選択や⾏動ができる。例えば、毎⽇の体調管理により、体調不良を予測

する。睡眠時のデータを蓄積し、睡眠の質の向上につなげる。 ⾼齢者の健康状態を遠隔に住む家族が知るとともに、かかりつけ医による健康状態の遠隔管理が可能となり、⻑期間のモニタリング

を通じた病気の予防や未病の検知といった医療サービスが提供される。 スポーツ分野においては、プロスポーツ選⼿のトレーニング強化や体調管理に加え、プロの理想のフォームを定量的に分析することで、

⼀般のユーザーでも同様の動きを再現したトレーニングを受けられる。 建築現場や⼯場等の過酷な労働環境下にある作業員が着⽤することで、作業現場における体調管理を可能にするとともに、⼀般の

職場でもストレス状況や疲労度の計測等を通じた職場環境の改善に貢献する。 ゲームのコントローラーとして着⽤者の動きをリアルタイムにゲーム画⾯に反映したり、触れるだけで⾐服が光や⾳を発するファッション

やコミュニケーション⽤途として活⽤される。 電極から微弱電流を流し、体に電気刺激を与え、あたかも物に触れているような感覚を与えることで、ゲームにリアル感を持たせたり、

⼈⼯筋⾁等のアクチュエーターとしてリハビリテーション等に活⽤される。 精密に常時計測された⽣体データに関するビッグデータの蓄積・活⽤は、医学等の発展や様々なソリューションの開発にも寄与す

る。例えば、今まで全く気付かなかった兆候や予兆、メカニズムが明らかになるかもしれない。

スマートテキスタイルの未来は、まだ事業者も消費者も気づいていない、私たちの⽣活をより⼀層豊かにする、あるいは⼀変させる新しい「価値」を提供できる無限の可能性を秘めている。

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⽣活製品におけるIoT等の活⽤に共通する課題 IoT等の活⽤に関し、両分野を含め⽣活製品全般に共通する課題として、データ利活⽤の環境整備及びス

タートアップ企業に対する⽀援がある。

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データ利活⽤の環境整備

スタートアップ企業に対する⽀援

① データの利⽤権限経済産業省等では、「データの利⽤権限に関する契約ガイドライン」 を策定し、契約に基づく取引に関連して創出されるデータに関する権限を定める際の考え⽅が整理されている。本ガイドラインを活⽤しながら、データ利活⽤が進むことが期待される。

② データポータビリティ等に関する動向の把握EUでは、GDPR(⼀般データ保護規則)の施⾏が2018年5⽉に予定されており、企業が有する個⼈データの権利の保護や、個⼈による事業者間でのデータの移転の権利(データポータビリティ)等が⽣じる。こうした中では、単なる個⼈データの囲い込みによるビジネスモデルは成⽴しなくなる可能性があり、取得データの活⽤や他社と差別化といった、⼆次的なデータ利⽤を念頭に置いたビジネスモデルの構築が不可⽋となる。

ベンチャー企業や異分野からの参⼊は、既存の産業を刺激し、新たな市場を創出するために重要。スタートアップ企業が、⼤企業との対等な連携を通じて事業展開を⾏い、概念検証(Proof of Concept)や試⾏錯誤を繰り返すことで、新規事業者が発展し、産業の新陳代謝が進むと考えられ、これを⽀える環境づくりも重要である。

スタートアップ企業による新技術の実証等に対しては、NEDO、中⼩企業庁等の⽀援があり、これらを活⽤した技術開発等を通じ、実⽤化が進み、新たな市場が創出されることが期待される。

新技術を有するスタートアップ企業に対する⼤企業の出資等を通じ、新市場に参⼊する事業者が増加し、市場の活性化が進むことが期待される。

③ データ共有事業に対する⽀援「⽣産性向上特別措置法案」 において、データ共有事業者等の取組を、セキュリティ確保等を要件として国(経産・総務・事業所管⼤⾂)が認定し、データ共有に係るIoT等の設備投資に対する減税措置、国等が有するデータの提供を要請できるスキーム等の⽀援を⾏うこととしている。

④ データの不正取得等に対する保護「不正競争防⽌法等の⼀部を改正する法律案」 において、ID・パスワード等により管理しつつ相⼿⽅を限定して提供するデータを不正に取得、使⽤、提供する⾏為を、「不正競争⾏為」に位置づけ、差⽌請求権や損害賠償の特則等の⺠事上の救済措置を講じることとしている。

第四次産業⾰命の下、企業の付加価値や競争⼒の源泉は、データやその分析⽅法、これらを活⽤した製品やビジネスモデルに移り変わりつつある。こうした中、取得されたデータや⼆次加⼯データを利⽤する場合に、データの権利や事業者間での契約関係等、従来のビジネスモデルでは考慮する必要のなかった課題が⽣じる可能性がある。

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終わりに

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経済のグローバル化や新興国の台頭等は、単なるものづくりを容易にコモディティ化し、低価格競争に陥れてきた。⾼機能・⾼性能の製品も短期間のうちにコモディティ化する。第四次産業⾰命におけるIoT等のデジタルツールの発展はこうした厳しい競争を更に加速させていく。特に従来型の⽣活製品産業においては、こうした傾向は歴史的にも必然であり、顕著である。

同時に、IoTやAI等の発展は、これまで不可能だった膨⼤なデータの収集・分析等を可能にすることにより、新たな付加価値やソリューションを創出・提供するための有効な⼿段であり、競争⼒の源泉となるものである。グローバルを視野に、スピード感を持って、単なる従来の延⻑上ではない取組が求められる。

⽣活製品産業においても、消費者のニーズや嗜好が単にモノ⾃体の所有ではなく、課題解決や体験価値等に多様化するとともに、IoT等のテクノロジーが急速に発展していくなど、事業環境が構造的に⼤きく変化する中、B to C であれ、B to B であれ、これまでのビジネスモデルが今後も持続可能かをよく⾒極め、単なるモノの製造・販売、要素技術や品質の追求のみではなく、IoT等の活⽤により「サービス化」を図り、消費者の⽣活の質の向上に寄与するソリューション志向の新たなビジネスモデル(ソリューション・ビジネス)を構築していくことが重要である。

我が国の製造業は国際的にも最⾼⽔準の技術シーズを多く有している。しかしながら、サービス化が遅れると、こうした技術シーズを活かせなくなることを認識すべきである。そのためには、出⼝となる付加価値やソリューションを明確に意識することが不可⽋であり、その際、各事業者が異分野連携等により垣根を超えてネットワーク化すること、サービス化の中で更に新たな技術が⽣まれるという好循環を⽣み出すことが重要である。これにより、thingsの強み(モノの強み)をIoTの強みに活かし、企業間・産業間のつながりをConnected Industriesの実現に結びつけていくことが重要である。

本研究会では、⾝近な⽣活製品においても、IoT等のデジタルツールを活⽤することにより、私たちの⽬に⾒える形で⽣活の質の向上をもたらすことができるという問題意識から、主にファッションテックやスマートテキスタイル等について議論してきた。いずれも、現時点では緒についたところであるが、将来的には、⾐服というモノの概念を根本的に変⾰し、これまでは到底不可能だった様々なサービスやソリューションを提供できる無限の可能性を秘めている。本研究会においては、本報告書をスタートラインとして、今後も継続的に関係者の取組をフォローしていきたい。

我が国の⽣活製品産業が、こうしたIoT等のテクノロジーの進展がもたらすチャンスをものにして、私たちの⽣活の質の向上をもたらすソリューション・ビジネスを展開して更に発展できるか、このチャンスを逃して何もせず取り残されるか、それは今まさに⽬前に迫られている選択である。