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<特集>農業・農村の6次産業化が活力ある地域に、明日への希望に満ちた農業経営に! Ⅱ 近畿地域における6次産業化の展開 1.はじめに 近畿農政局では、平成 22 年度、6次産業化の推進にあたり、近畿の実態を踏まえ た課題や対処方法を検討するため近畿農業・農村6次産業化協議会を設置するとと もに、6次産業創出を側面的に支援する組織として近畿農業・農村6次産業倶楽部 を設置しました。 近畿農業・農村6次産業化協議会では6次産業化の課題を整理するとともに、近 畿農業・農村6次産業倶楽部においては、課題を踏まえ、農業者と企業の情報の共 有化、結びつきなどにつながる具体的な活動を実施し、意見・要望、実施効果など の把握に努めてきました。 これらの取組の結果や、議論を踏まえ、23 年3月には近畿の実情に則した「近畿 農業・農村6次産業化方策」をとりまとめました。 農業・農村の6次産業化については、「地域資源を活用した農林漁業者等による 新事業の創出等及び地域の農林水産物の利用促進に関する法律」(平成22年法律第 67 号)が施行され、今後、総合化事業計画を認定された農林漁業者等による新事業 の創出に向けた活動が行われます。近畿農政局はこれらの動きと併せ独自に「近畿 農業・農村6次産業化方策」を基本ベースとして、地域に適したきめ細かな活動を 行い、多くの農林漁業者等が6次産業化に向かって進めるよう様々な支援を行うこ ととしています。 2.近畿農業・農村6次産業化協議会、近畿農業・農村6次産業倶楽部の設置 (1)近畿農業・農村6次産業化協議会 近畿農政局では、全国に先駆けて農林漁業者等に企業的 なマインドを取り入れ、近畿の特徴である①豊かな食文化 と観光、②伝統野菜を代表とする多彩な農産物、③2千万 人を抱える大消費地、④食品産業を代表とする企業、大学 が多数あり6次産業化に適した特色を活かした、近畿地域 での農業・農村の6次産業化の方向性を検討するため、立 命館大学経済学部松原学部長を座長に、学識経験者、農業 者(団体)、観光関係者、経済団体等 12 名の委員で構成 した近畿農業・農村6次産業化協議会(以下「近畿6次化協議会」という。)を 22 年6月に設立しました。 第4回協議会(3月 18 日) (2)近畿地域農業・農村6次産業倶楽部 283 37% 164, 21% 319 42% 農林漁業者 企業 その他 倶楽部員の構成 23年3月末) 近畿地域での6次産業創出を側面的に支援す る組織として、近畿農業・農村6次産業倶楽部 (以下「近畿6次倶楽部」という。)を 22 年7 月に設置しました。 近畿6次倶楽部には、農林漁業者を始め、多 くの関係者の加入を進めたことから、23 年3月 末には 766 の団体・個人が会員となり、その内 - 12 -

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Page 1: Ⅱ 近畿地域における6次産業化の展開人を抱える大消費地、④食品産業を代表とする企業、大学 が多数あり6次産業化に適した特色を活かした、近畿地域

<特集>農業・農村の6次産業化が活力ある地域に、明日への希望に満ちた農業経営に!

Ⅱ 近畿地域における6次産業化の展開

1.はじめに

近畿農政局では、平成 22 年度、6次産業化の推進にあたり、近畿の実態を踏まえ

た課題や対処方法を検討するため近畿農業・農村6次産業化協議会を設置するとと

もに、6次産業創出を側面的に支援する組織として近畿農業・農村6次産業倶楽部

を設置しました。

近畿農業・農村6次産業化協議会では6次産業化の課題を整理するとともに、近

畿農業・農村6次産業倶楽部においては、課題を踏まえ、農業者と企業の情報の共

有化、結びつきなどにつながる具体的な活動を実施し、意見・要望、実施効果など

の把握に努めてきました。

これらの取組の結果や、議論を踏まえ、23 年3月には近畿の実情に則した「近畿

農業・農村6次産業化方策」をとりまとめました。

農業・農村の6次産業化については、「地域資源を活用した農林漁業者等による

新事業の創出等及び地域の農林水産物の利用促進に関する法律」(平成 22 年法律第

67 号)が施行され、今後、総合化事業計画を認定された農林漁業者等による新事業

の創出に向けた活動が行われます。近畿農政局はこれらの動きと併せ独自に「近畿

農業・農村6次産業化方策」を基本ベースとして、地域に適したきめ細かな活動を

行い、多くの農林漁業者等が6次産業化に向かって進めるよう様々な支援を行うこ

ととしています。

2.近畿農業・農村6次産業化協議会、近畿農業・農村6次産業倶楽部の設置

(1)近畿農業・農村6次産業化協議会

近畿農政局では、全国に先駆けて農林漁業者等に企業的

なマインドを取り入れ、近畿の特徴である①豊かな食文化

と観光、②伝統野菜を代表とする多彩な農産物、③2千万

人を抱える大消費地、④食品産業を代表とする企業、大学

が多数あり6次産業化に適した特色を活かした、近畿地域

での農業・農村の6次産業化の方向性を検討するため、立

命館大学経済学部松原学部長を座長に、学識経験者、農業

者(団体)、観光関係者、経済団体等 12 名の委員で構成

した近畿農業・農村6次産業化協議会(以下「近畿6次化協議会」という。)を 22

年6月に設立しました。

第4回協議会(3月 18 日)

(2)近畿地域農業・農村6次産業倶楽部

283 37%

164,21%

319 42%

農林漁業者

企業

その他

倶楽部員の構成

(23年3月末) 近畿地域での6次産業創出を側面的に支援す

る組織として、近畿農業・農村6次産業倶楽部

(以下「近畿6次倶楽部」という。)を 22 年7

月に設置しました。

近畿6次倶楽部には、農林漁業者を始め、多

くの関係者の加入を進めたことから、23 年3月

末には 766 の団体・個人が会員となり、その内

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Page 2: Ⅱ 近畿地域における6次産業化の展開人を抱える大消費地、④食品産業を代表とする企業、大学 が多数あり6次産業化に適した特色を活かした、近畿地域

訳は、農林漁業者 283(全体に占める割合 37%)、企業 319(同 42%)、その他(学

識経験者、行政など)164(同 21%)となっています。

農林漁業者より企業の加入が上回っており、近畿の農業・農林水産物への企業の関

心の高さが伺われ、農林漁業者と企業の連携による高付加価値化の実現に向けた素地

があり、6次産業化を進めるには有望な地域と考えられます。

3.近畿6次化協議会における6次産業化の課題の整理

近畿6次化協議会では、先駆的な取組事例を9つに類型化して分析し、近畿におけ

る6次産業化についての課題を検討しました。

その結果、農林漁業者等や実需者の双方の意向情報が不十分であること、小規模農

業者の取り込みや行政・農業者団体等の果たすべき役割など、6つの課題が抽出され、

その具体的内容を整理しました。

課 題 具 体 的 な 内 容

情報発信・提供

・農業・農村の生産状況と企業(食品等)の需要情報が

双方に伝わっていない

・有効的な情報の発信・収集

農業者と企業との結びつけ

・他業種のニーズをいかに生産現場に伝えるか

・6次化にはリスク(資金、在庫)があることから中々

踏みこめない

地域の関係者をつなぐ者 ・地域資源をいかに活用するか

・コーディネーター、リーダーの育成

小規模農業者の取込み ・自ら販路を探すことが困難

行政、農業団体等の役割 ・6次化の取組の加速化と波及

倶楽部の活性化 ・メリット、倶楽部員同士の連携

4.課題への対応と検証(近畿6次化倶楽部の取組)

(1)有効な情報発信や農業者と企業間の情報共有を推進

先駆的な優良事例の収集と提供

6次産業化を目指している農林漁業者等の参考とするため、近畿管内の6次産業化

(高付加価値農業を含む)を展開している先駆的な事例を9分類し、その特徴や傾向

を調査・分析し、22 年6月に 55 事例、23 年3月には計 150 事例として公表するとと

もに倶楽部員へ情報提供しました(別添)。

<9分類の内容>

①原材料等にこだわった加工品や農産物を農業者が自ら販売

②農業者と企業が連携し双方のメリットを享受した商品開発

③消費者の嗜好を把握し、需要に応じた生産・加工への展開として、食品等企業が

農業へ参入

④企業のノウハウの活用や有機農業等の高付加価値型農業を実践している新規就農者

⑤伝統野菜等を活用した農家レストランや直売所の取組

⑥風景や古民家等の観光資源を活用した取組

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<特集>農業・農村の6次産業化が活力ある地域に、明日への希望に満ちた農業経営に!

⑦農業者をはじめとする複数の地域の関係者が連携し、農業施設の出資やマルシェ

等の取組

⑧国内の需要減に伴う海外へ販路拡大の展開

⑨大学等の知的財産を活用した商品の開発や高付加価値型の農業を実現にしてい

る取組

7844%

4022% 61

34% 農林漁業者

企業

その他

PRシートの作成による情報交流

近畿地域の生産状況や需要動向を把握し、

商談を効果的に進めるため、農林水産物・加

工品等販路拡大PRシート(以下「PRシー

ト」という。)を定め、倶楽部員に作成を依

頼しました。PRシートには、生産状況、代

表的な農林水産物・加工品の紹介・特徴、提

供可能な品目や量とともに、連絡先を掲載し

ています。

PRシートの作成状況は、179 件(23 年3月末)で、うち農林漁業者 61(34%)、企

業 78(44%)、その他 40(22%)となっています。PRシートにより農林水産物の生

産情報、連絡先等情報を提供できたことから、PRシートをきっかけとした商談が開

始され、事業に結びつくなど一定の成果がありました。

一方、PRシートを作成している倶楽部員の割合は 23%に留まっており、更なる作

成の働きかけや、最新情報を提供するため定期的な更新が課題となっています。

PRシート等による新たな連携の事例

PRシート作成倶楽部員 連携した取組

こと京都(株)(京都市) 九条ねぎ・カットねぎについて、飲食店と取引

天野(京都府綾部市) 万願寺とうがらしについて、大阪市の大手外食チェー

ン店と取引

(有)エス・エフ・スピリッツ

(大阪府堺市)

大阪の難波ねぎ農業者と契約し、ねぎを練りこんだう

どんを商品開発し、大阪産(もん)として販売

楽農ファッション推進協議会

(兵庫県神戸市)

作業着・ユニフォーム専門店と連携し、商品を開発・

販売

朝来市岩津ねぎ生産組合

(兵庫県朝来市)

土付きの岩津ねぎについて、飲食店と取引

類農園(奈良県宇陀市) 奈良伝統野菜等について、大阪・兵庫のレストラン・

社員食堂と取引

王隠堂農園(奈良県五條市) 農産物について、東京都日本橋の奈良県アンテナショ

ップ「まほろば館」で販売

サンファーム(株)(大阪市) たまねぎ、紀州うすいえんどう等について、奈良、和

歌山の農業者と取引

PRシートの作成状況

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先駆的な農業者との意見交換での失敗談と解決策

6次産業化を進めている中で、農林漁業者が様々な失敗の中で解決を図った内容を

紹介します。

失 敗 談 解 決 策

仲買に概算金により、たまねぎを一括販

売委託したものの精算金を受けとれず 書面での契約が必要

惣菜を販売が赤字になり、また、人件費

が2分の1以上かかる

材料費3分の1、人件費3分の1、利益3分

の1を目安に材料費を下げるため、前日の直

売所の売れ残りを利用し、経費削減を図る

コンビニに弁当を2千食の注文があっ

たものの対応できなかった 需要をあらかじめ把握し、需要に応じた生産

販売先から異物の混入、カビなどのクレ

ームが発生

迅速に対応し、原因が不明な場合でも取引の

継続性のため誠意をもった対応が必要

(2)農業者と企業が結びつく機会の提供

勉強会

大阪市内にて、新たに6次産業化に取り組む倶楽部員や更

なる高度化を目指す倶楽部員 209 名が参加し、勉強会を開催

しました。

勉強会では、「新たな商品づくり」の視点で先駆的な農業

に取り組んでいる(株)京野菜かね正、めっけもん広場(直

売所)、(株)早和果樹園が講演を行い、また、企業側からは

「販売に効果的な広報・宣伝方法」の視点で、(株)ぐるなび、(有)まんてん堂、

NTT西日本から説明が行われました。

勉強会

参加者へのアンケートでは「参加して良かった」との回答が、9割以上と高い評価

を得ました。

現地交流会

23 年2月、日本政策金融公庫が主催したアグリフード EXPO 大阪には、商談会の雰

囲気を学ぶことを目的に 20 名の倶楽部員が参加し、情報収集を行うとともに、出展

者との商談も行いました。

また、同月には現地交流会を開催し、49 名の倶楽部員が参加しました。和歌山県か

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<特集>農業・農村の6次産業化が活力ある地域に、明日への希望に満ちた農業経営に!

20%

47%

20%

13%

大変良かった

良かった

普通

やや不満

つらぎ町で農業者自らが2千種類の加工品の開発している

「遊農」や同県紀の川市の直売所で有数の売上げ規模を有

する「めっけもん広場」を視察し、加工品開発や直売の方

法について勉強しました。また、意見交換の場において、

との要望がだされました。

参加者からは倶楽部員同士のネットワークを図ってほしい

近畿6次化倶楽部設立会

22 年7月に阪神ホ

商談会

近畿6次化倶楽部の設立会を、

ル(大阪市)で開催し、300 名以上が出席しまし

た。倶楽部員同士を結びつけ、新たな商品開発を進

めるため、60 団体がPRブースを設置し、35 団体

が壇上で自慢の農産物や食品のPRを行うなど、6

次産業化への関心の高さが共有されました。近畿6

次化倶楽部への期待として、講演会や具体的なマッ

チングの要望が寄せられました。

①商談会の開

由商談会

10 月には、倶楽部員を対象とした商談会を開催し、農業

たため、同じ加工品が隣接したブー

作物別商談会(大豆、米粉)

14 団体、企業 15 団体の計 39 団体が商談ブースを設置し、

不特定多数が参加できる自由商談を行いました。その後のア

ンケートでは、24団体のうち 13団体が商談中(商談率 54%)

との回答を得ました。

一方、自由商談であっ

となったり、商談が少ないブースがあるなどの課題もあり

ました。

て参加しやすいよう、23

拡大しスケールメリッ

されている新規需

参加しました。米粉は、農業者の生産拡大意欲はあるものの、

参加者がより明確な目的をもっ 年2月には、はじめて作物

特化した大豆商談会を実施し、80 名が参加しました。12 団体(大豆加工業者等)

がPRブースを設置し、自由商談方式で実施しましたが、生産者や実需者の出席が少

なかったため、具体的な商談が進みにくい面がありました。

また、土地利用型作物である大豆は、生産面では経営規模を

を活かす作物であること、加工面では更なる時間を要す

ることや設備投資も必要なことから、すぐに商談成立とい

うのは難しかったものと考えらます。

3月には、戸別所得補償制度で重点化

米の米粉をターゲットにした商談会を開催し、140 名が

現地交流会

米粉製品のPRブース

設立会に関するアンケート

ブースでの商談

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実需者との契約が困難なことから、実需者と結びつきを図るため 13 団体(農業者4、

企業9)がPRブースを設置しました。自由商談方式で行い、6団体が商談中との回

答となっています。

商談会には、農林漁業者等の参加が少ないことから、今後、意欲のある農林漁業者

等の掘り起こしが課題です。

②商談方式に関する農林漁業者へのアンケート結果

商談会への参加の意向

意欲ある農林漁業者の商談会への参加は課題のひとつですが、アンケートの結果、

参加希望は 74%と高く、参加したいという意向は確認されました。

商談の方式

希望する商談方式は、自由商談が 75%、個別商談が 26%となっており、作物(米、

野菜、果物)、業種・業態(小売や飲食店)別の商談希望は 29%となっています。

自由商談の希望理由としては、「多くのバイヤーと商談をしたい」、「バイヤーが

どのような方か不明で不安」、「商談時間に融通が効き、商談数をこなせる」等があ

りました。

一方、個別商談については、「事前に相手の情報が入手でき、準備して商談が可能」

との意見がありました。今後はこれらの意見を参考として、商談数がこなせる自由商

談と予め相手の意向を把握して最適な相手と商談できる個別商談を併せた商談方式

も検討する必要があります。

商談相手

65

21

35

79

0%

20%

40%

60%

80%

100%

現状 今後の希望

農畜水産物の販路

近畿圏

以上

府県内

農林水産物の販路先として、現状は県内向けが

65%となっているものの、今後、新たは販路として

79%が近畿圏以上の広域販売を目指していること

から、広域の商談相手と商談を進めることも重要と

考えられます。

希望する商談相手の業種は、飲食業者の希望が高

く、次いで小売業者(スーパー、百貨店等)、食品

加工製造業者、お土産等の観光業者の順となってい

ます。

商談後のフォローアップ

商談後のフォローアップとして、「商談相手の意見・反応を聞きたい」、「出展者との

意見交換を希望」のように、自己評価や新たなつながりを求めていることが伺えます。

③商談会での実需者の意向把握

食品企業等の実需者は、地場農産物について「鮮度が高く、食材にも興味がある」、

「生産者の顔か見え、お互いの気持ちが通じあえる」、「伝統野菜の歴史等を聞けば、

ストリー性を活かした料理創作ができる」などのイメージを持っており、近畿産農産

物の情報(旬な野菜、食べ方等)をタイムリーに入手したい意向が高く、商談会への

参加希望は 75%と高くなっています。

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<特集>農業・農村の6次産業化が活力ある地域に、明日への希望に満ちた農業経営に!

また、商談成立への課題は、価格面での折り合いをはじめ、ロットの確保や物流コ

スト低減、配送時間の短縮であると考えています。

商談会については、参加希望や一定の成果がある一方、商談に向けて倶楽部員の7

割が具体的な行動を取っていないというアンケート結果があり、今後の課題です。

経済団体との連携

(社)関西経済連合会(以下「関経連」という。)は、23

年1月に関経連の参画企業 10 社がバイヤーとなり、17 団

体・個人の生産者との商談を行いました。食品企業は大規

模な農業者(団体)、飲食店は多品目生産の農業者、ホテ

ルは認証農産物等のようにバイヤー側の需要を予め情報

収集したことから、アンケートでは、25 回答のうち 21 回

答が商談中(商談成立率 84%)と高い成立率となりました。 関経連と連携した商談会

一方、商談相手となる生産者をPRシートで選定することとしたものの、バイヤー

からの要望に十分対応できないこともあり、府県行政や農業団体と連携し、農業者の

推薦を行いました。また、一年一作の農産物には、商材ができるまで時間を要するも

のもあり、すぐに成果(商談成立)が得にくいものもあるなど、課題として明らかに

なってきました。

また、飲食店との商談は成立が難しく、その理由として、多品目の生産者が少なかっ

たことや、効率的な物流体系が未整備のため対応ができないとの意見がありました。

(3)農業者団体、金融機関等の役割の検討に向けた意向把握

農業者団体との意見交換では、「6次産業化により所得向上を進めたい」、「加工

施設を所有するJAは限定的だが、直売所の設置を進めていきたい」との積極的な意

向がある一方、「6次産業化に向け資金や労働力に不安」、「伝統野菜等の少量品目

は、JAで取り扱っていないものもある」などの意見もありました。

顧客のマッチングを実施している地方銀行は、「2次産業である食品加工企業から1

次・3次(小売)とのマッチング要望が高い」、「単独で実施するより行政と組んだ方

が信頼性が向上し効果的」との意見もありました。一方で、「何年も商談会をすると、

同じセラーが出席する傾向にある」、「農業者と食品企業の参加割合がアンバランスに

なっており、広域商談が必要」との発言もありました。

農林漁業者等と食品企業等との結びつきに向けて、地域の農業生産状況を熟知してい

る農業者団体やマッチングのノウハウを有している地方銀行と連携を図り、合同での商

談会を進めることで、倶楽部員に様々の商談会の場の提供をすることとしています。

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(4)近畿6次化倶楽部の活性化

若手農業者の参加の促進

ロゴマーク

6次産業化を円滑かつ効果的に推進するため、今後の農

林水産業を担う若手農業者等の意向を確認し、若手を取り

込んで進めていく必要があります。

22 年 11 月、23 年3月に若手農業者との意見交換を実施

したところ、「6次産業化に向けて農産物の高付加価値化

を進めている」という意見もあった一方で、「商談先が不

明」、「市場出荷しているが手取りが年々減少」との課題もだされました。

ロゴマークを作成し倶楽部の認知度向上

23 年2月、農政局職員から公募した 22 作品の中からロゴマー

クを決定し、倶楽部員に配布しています。倶楽部員作成のパンフ

レットや名刺など様々場所で活用され始めています。

会員への情報提供として隔週毎にメールマガジンを配信

以下「近畿HP」と

方や確認の

「もてなし郷土情報」への倶楽部員情報の掲載

9月から、近畿地域における

倶楽部会員のアンケートの把握

現地交流会、勉強会や研修会となっています。

若手農業者との意見交換

名刺での活用 パンフレットでの活用

22 年7月の倶楽部設立に併せて、近畿農政局のホームページ(

る。)に6次産業倶楽部のサイト・掲示板を開設し、倶楽部員からの相談、国の支

援策、イベント情報を掲載しています。また、23 年1月からは、リアルタイムの情報

を直接届けるため、隔週毎にメールマガジンで情報を発信しています。

掲載する情報の充実に努めるとともに、倶楽部員にはメールを持たない

慣のない方もいるため、他の媒体の検討も課題です。

都市住民が実際に足を運ぶきっかけになるよう、22 年

様でユニークな特産品や6次産業化を紹介する「もてなし郷土情報」を近畿HPに

掲載し、カテゴリー別に 211 団体を紹介しています。今後、倶楽部員へ情報掲載を働

きかけ、情報発信の場として活用していただくこととしています。

今後の倶楽部活動の希望は、商談会、

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<特集>農業・農村の6次産業化が活力ある地域に、明日への希望に満ちた農業経営に!

5 近畿農業・農村6次産業化方策の策定

6次産業化協議会での検討と倶楽部活動の取組結果を踏まえ、23 年3月に近畿の実

情に即した6次産業化方策をとりまとめ公表しました。

この中で、効果的な情報発信の方法、地域コ-ディネーター・リーダーの育成とと

もに、行政や農業者団体の役割等について効果的な手法を提示しています。

近畿農業・農村6次産業化方策の具体的な内容

項 目 課 題 経過と結果

情報発信

農業者、企業双方

からの情報発信

(定期的な情報)

・タイムリーな情報提供として、近畿HPの更新やメ

ールマガジンを隔週毎に配信

(PRシート関係)

・直接商談も開始され効果は高い

・情報更新と提出数を増やすため、成功例の発信、提

出者には優先的に商談会へ参加を配慮

(情報蓄積)

・PRシート172、先駆的事例150により、地域の農業

等取組情報を300程度提供(22年3月冊子にて配布)

農業者と企業

との結びつけ

①具体的な結びつ

け方法

②消費圏で生産量

が少なく需要が

多い

(商談会の意義)

・商談会は、①出会い、②情報収集・交換、③商品紹

介の場として、頻繁な開催が有効

(商談会の手法)

・①商談会方式の自由商談、②予め商談相手を定めた

個別商談、③①と②の併用型で実施

・参加規模、作物別、業種業態(飲食店、食品企業、

量販店等)別に配慮。(具体例:個人経営の飲食店

は、希望農産物が明確なことから、個別商談方式等)

(商談会の範囲)

・農林水産物の多様な需要に対応するため、広域商談

が必要、物流コスト削減のため、府県・地域段階の

商談も進める必要

(関係機関との連携)

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・効果的な商談会とするため、農業団体や商談ノウハ

ウのある地銀と連携を図ることも有効

(PRシートでの商談)

・PRシートを高度化(①希望する相手先、②主な事

業等の会員の概要)するとともに、定期的(半年毎)

に更新し、倶楽部員へ提供

地域のコーデ

ィネーター、リ

ーダーの育成

①関係者をつなぐ

者の育成

②地域へ波及

(リーダーを育成)

・倶楽部員の中で、地域のコーディネーターや助言で

きる人材を整理し、府県域を超えて活用

・地域のリーダーの発掘・育成に向け、地域勉強会や

若手農業者との意見交換を実施

(地域全体へ波及)

・先駆的な農業者への視察(先駆的事例の提示を含む)

・地域の活性化にリーダーの育成、支援するコーディ

ネーターを派遣

・関係者が一体となり地域をサポート

小規模農業者

の取り込み

自ら販路を探

すことが困難

(直接取引)

・直売所や飲食店等との直接取引(商談会等)を推進

(既存の集荷機能)

・農業者団体の集荷機能を活用し、ロットを集約し、

販路の開拓

行政、農業者団

体等の役割

具体的にどのよう

な支援が有効か

(行政)

①バイヤーやセラーの発掘、情報把握・蓄積・発信

②商談会及び勉強会とともに、実施後のフォローアッ

プにも対応

例えば、商談会に参加できなかったり、商談後に

連絡を取り合うことがない場合などの連絡仲介や、

アンケートによる追跡調査を実施し、新たな結びつ

きを図る

③農業者等からの6次産業化に向けた相談対応や具体

的な支援内容を説明

④6次産業化法に基づくメリットを最大限享受するた

め、総合化事業計画(農林水産大臣認定)の策定を

進める

(農業団体)

①6次産業化への農業者の育成や、販路の開拓、付加

価値の向上等自らも6次産業化(直売所・加工施設

の整備、セラーとして商談)に取り組む

②実需者の要望に対応するため、生産者グループの組

織化による大規模ロット化や顔の見える農業者など

の販売戦略を構築

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<特集>農業・農村の6次産業化が活力ある地域に、明日への希望に満ちた農業経営に!

③需要量の多いカット野菜への対応など消費者ニーズ

への変化に対応

④産地化を進め、府県を超えたリレー供給体制を構築

倶楽部の活性化

① メリット

② 倶楽部員同士

の連携

(倶楽部員を募集)

・様々需要に対応するため引き続き倶楽部員を募集

(倶楽部員を募集)

・ロゴマーク、ポスター等の作成

(6次産業化の取組深度別)

・基礎・応用別に勉強会を開催

(ネットワーク化)

・勉強会等の際に同じ目的の者、同業種、作物等別な

ど、親睦する場を設定

(倶楽部員の励み)

・6次産業化の取組への励み・波及を図るため、優良

な取組に対し表彰事業の創設

6 今後の取組方向

以上の近畿農業・農村6次産業化方策を実践するため、今後、近畿農政局として、

本方策に基づき、関係機関との連携を強化して農林水産業・農村漁村の6次産業化の

取組を積極的に展開していきます。

具体的には、地域勉強会や広域商談会を頻繁に開催することで、地域ビジネスの展開

や新たな産業の創出を図り、商品倶楽部員同士のネットワーク化を進めていきます。

(1)近畿6次産業化・地産地消連絡会議を設置

23年3月に、近畿管内の農林漁業団体、観光関係者、金融機関、経済団体、行政等の

関係機関の93団体を構成員とした近畿6次産業化・地産地消連絡会議を設置しました。

本連絡会議では、関係者との連携のもと、農林漁業者・農山漁村の6次産業化の取組

を地域への波及や倶楽部員等が6次産業化に向けた取組を支援することとしています。

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(2)地域段階での勉強会

農林漁業者等の6次産業化への意欲・質的向上を目指して、地域からの要望を踏ま

産物の結びつきを求めている食品企業や飲食店をはじめ、倶楽部

ことで更なる結びつきを進めることしています。

わせて、青年農業者や女性起業者の意向を確認し、様々視点から6次産業化への

としています。

水産物を生産し、豊富な食材を提供しているものの、都市近郊

めていることから、

さらに、農業団体や地銀等金融機関と連携を図るほか、倶楽部員が主催の商談会に

員に様々な商談の場を提供することとしています。

参加者のPRシートの配布、ま

、6次産業化への優良な取組に対し近畿農政局長賞の創設などにより倶楽部員同士

います。

必要です。農

化に係る支援策の説明会、JAや農業法人等担い手たる農業

者の団体の会合など機会あるごとに倶楽部員募集、倶楽部活動の資料を配付し説明す

ることとしています。

、6次産業化への展開及び地域の課題に対応した勉強会を、集落単位から地域段階

(市町村)を範囲として頻繁に開催することを目指すこととしています。

その際に、地場農

の中から先駆的な農林漁業者や学識経験者等を講師にするなど連携強化を図るこ

ととしています。

また、勉強会の際にPRシートの提出を求めるなど、地場農産物の生産情報や今後

の意向を把握し、倶楽部員に提供する

進展を模索すること

(3)広域商談会

近畿は、多様な農林

業で消費圏であることから、実需者や消費者の要望に十分な生産量で対応すること

が困難な状況です。

また、滋賀は土地利用型作物、和歌山は果樹の生産比率が高く、実需者が少ないとこ

ろもあり、農林漁業者や企業も近畿圏以上の広域での直接取引を求

域商談会を進めることとし、特に、野菜・畜産物・果樹・土地利用型作物等の作目別、

食品企業、飲食店等の業種業態別に実施することとしています。

も積極的に参画するなど、倶楽部

(4)倶楽部員同士の連携強化

PRシートによる商談もはじまるなど、新たな取引が開始できるシステムの中で、

更なる倶楽部員同士の連携を進めることとしています。

具体的には、メールマガジンで倶楽部員の取組を発信するとともに、地域勉強会や

商談会等の際に倶楽部員同士の意見交換の場の設定、

の集まる場を有効的に活用することとして

(5)農林漁業者等の倶楽部会員の拡大

6次産業化に向けて、農林漁業者等が自ら農業関連2次・3次産業に携わっていく

ためには、倶楽部による活動も農林漁業者等の参画を進めていくことが

漁業者等の参画は企業と比較して少なく、情報発信も少ないことから、農林漁業者

等が参画しやすい環境作りや情報提供の強化を図ることが重要です。

具体的には、6次産業

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<特集>農業・農村の6次産業化が活力ある地域に、明日への希望に満ちた農業経営に!

(別添)

近畿の先駆的な取組を7分類別にピックアップしたものです。

<概要>生産と消費を直接結び付ける産直や梅干し等の

加工製造を実施。また、自家農園の旬の野菜を使用した

創作山村料理が味わえるレストランを展開。平成8年、

パンドラグループを設立し、生産と業務を分離するとと

もに、現在は奈良をはじめ、三重、和歌山、高知の生産

者と連携を図っている。

<将来展望>「食を育て、食に育てられる」運動と事業

に特化した生産協同組織として、国内の食料自給率向上

や、農業を目指す方々が誰でも参加できる農業の仕組み

づくりを目指す。

王隠堂グループ(奈良県五條市) 農業者自ら加工・販売

㈱ロックフィールド 農業者と企業が連携して商品の開発・販売

(兵庫県神戸市)

<概要> 自社で企画・製造した惣菜を、全国のデパ地下や

駅ナカ(約 310 店舗)での店舗展開を図る。

近畿管内の野菜を使用した特色ある商品(滋賀産野菜入り

緑の 30 品目サラダ、京都産堀川ごぼうのサラダたっぷり九条

ねぎソース、大阪産しろ菜のサラダ 等)をシリーズ化し

販売している。

<将来展望>高品質な SOZAI(「惣菜」と「素材」)の 2つの意味)を追求し続け、近畿をはじめ全国の生産者 との取組をさらに充実させ、食育の推進や国産食材の 価値向上にも貢献を目指す。

<概要>京野菜・地場野菜の業務卸事業及び小売事業を

展開し、様々な農産物が流通する中で、生産者の不安を

取り除くため、販売側と生産者が連携してお客様のニー

ズを把握し、販売技術・生産技術を向上させ、生産者

の商品に対する想いを伝える連携システムの構築を図っ

ている。 <将来展望>今までにない調理方法を導入し、異なる 業種とコラボレーションなども行いながら、新たな商品 開発に取り組んでいる。 また、安全・安心で新鮮な農産物の安定供給と農産物

の美味しさを追求し、消費者のニーズに応えられる農業 地域の確立を目指す。

かね正グループ(京都府京都市) 食品企業が農業へ参入し加工・販売

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農事組合法人遊農

(和歌山県かつらぎ町)

<概要> 東京で写真関係の仕事をしていたが、昭和

55 年に地元に戻り就農。

人気の「こんにゃく」をはじめ、漬け物、ソース、

菓子、ケーキ、梅ジュース、ジャム、あんぽ柿、柿酢

など約2千種類の商品を開発。加工品の販売額は

5千万円で、全体の5割弱を占めている。

<将来展望>販路及び加工事業を拡大していくことで、

地場農産物の生産拡大、地域の農業振興に役立つよう

取り組む。また、企業と連携し、新たな加工技術の導入

新規就農者として農業に参入

や商品開発を進める。

おうみんち(滋賀県守山市)

<概要> 県下最大級の規模を誇る農産物直売所で、農業者の出荷登録会員

数は約 550 名にのぼり、地元で収穫された“安心・安全”そして“新鮮”

な農産物を提供している。

また、地域食材バイキングでは、地元の女性農業者等が、

地場農産物を使用した料理を提供している。

オープンから3年目となる 22 年度の売上げは、

当初の目標を大きく上回り 10 億円に達する予定。

<将来展望>消費者志向に沿うファーマーズマーケット

を展開することにより、農業者の生産意欲・農業所得の

向上を図り、地域農業の持続的な発展を目指す。

伝統野菜等を活用した農家レストランや直売所

岸和田観光農園(大阪府岸和田市)

<概要>温室ハウス(8棟 80a)を使ったイチゴ狩り

農業者が地域資源を観光に活用

の体験農園及び水なすの栽培を行っている。

イチゴ出荷には収穫作業やパック詰めなど人手が

必要になることから味覚狩りに着目。また、減農薬

農業に取り組むとともに、自社厨房を設置し水なす漬

の加工も行う。

生産・加工・販売・体験まで一貫して行う6次産業

のビジネスモデルを確立している。 <将来展望>現在、水なすの生産量の約5割を加工し ているが、全て加工にまわせるよう販路拡大を図る。

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<特集>農業・農村の6次産業化が活力ある地域に、明日への希望に満ちた農業経営に!

秋津野ガルデン(和歌山県田辺市)

<概要> 地元住民の出資により直売所「きてら」

やジュース工場「俺ん家ジュース倶楽部」を建設。

平成 19 年に「農業法人(株)秋津野」が誕生し、

約4千万円の資本金の6割近くは地区住民が、残り

は元住民や支援者が出資している。

20 年、地元の廃校舎を改装したグリーンツーリズム

施設「秋津野ガルテン」をオープンし、年間 12 万人

以上が訪れ、1.8 億円の売上げとなっている。

<将来展望>グリーンツーリズムや6次産業化へのつ

農業者をはじめ地域の関係者が連携

ながりで、一過性で終わらない持続可能な活動を目指す。

<概要>地場産の完熟小麦を原料とした手延素麺「揖保乃糸」

の製造及び販売を主たる業務とし、産地の発展・品質向上等

を目的に活動するとともに、販路拡大として平成 18 年から

手延素麺「揖保乃糸」について北米地域を中心に輸出を

はじめ麺類最大の輸出先であるハワイ、アメリカ合衆国に

ターゲットを絞り、日系スーパーで秋冬期を中心に店頭試

食イベントを行う。

<将来展望>海外への輸出量拡充(全体量の1割)及び新規

販路開拓に取り組み、揖保乃糸国内ブランド価値の更なる向

上、組合員及び関係各社、地域経済の発展とともに国内素麺

業界全体の活性化を目指す。

兵庫県手延素麺協同組合(兵庫県たつの市) 農林水産物の輸出拡大

立命館大学(滋賀県草津市) 大学・企業等の知的財産

<概要> 大学の知と農と企業が連携し、それを活用・普

及する研究組織として、平成 22 年6月に立命館大学琵琶湖

Σ研究センター傘下のコンソーシアム組織として、「明日の

農と食を考える研究会」を立ち上げた。農業等の6次産業化

による新たなビジネスモデルの創出等を活動目標に掲げ、

民間企業を中心に、JA・農業関係者、行政関係者、大学関係者など、約 25

機関で構成されている。

<将来展望>立命館大学が提案する土壌肥沃度診断(SOFIX)やたい肥品質

診断(MOI)の普及を軸に、サイエンスに基づく有機農業技術の確立や地域農

産物のブランド化、農業の6次産業化モデルの確立などを進めていく。

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《参考》 倶楽部会員等を対象としたアンケート

近畿における6次産業化を積極的に展開するため、倶楽部加入の農林漁業者

における消費者側への情報のPR内容、経営の取組状況を把握し、倶楽部の今

後の取組方向に資することを目的としてアンケートを実施。

(1)農産物の取引で重要な点

農林漁業者等を対象としたアンケート(84 回答)では、農産物の取引で重要な点は

「安定した需要先」(78%)、次いで「価格・数量」(72%)となっており、安定し

た取引の希望が多くなっています。 単 位

①価格・ 数量

②現金化のスピード

③安定した需要先

④その他 19.8

77.8

11.1

71.6

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90

(2)消費者に伝えたいこと

「安全・安心な農産物であること(生産履歴等)」(86%)であることや、「味・

風味等」(60%)を伝えたい意向となっています。自身が生産した自慢の農産物をし

っかり伝えていきたい意向が高くなっています。

11.3

28.8

22.5

60.0

86.3

0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 90.0 100.0

① ①安全・安心な農産物であ

ること(生産履歴等)

②味・風味等

③料理方法

④旬や栽培の苦労話(農産

物のいわれなど)

⑤その他

単位:(%)

(3)飲食店に伝えたいこと

「安全・安心な農産物であること(生産履歴等)」(83%)、「味・風味等」(65

%)を伝えたい意向が強く、また、「旬や栽培の苦労話(農産物のいわれなど)」(30

%)など、農業者は自らの生産状況や想いを伝えたい意向も見受けられます。

単位:(%)

①安全・安心な農産物であること(生産履

歴等)

②味・風味等

③料理方法

④旬や栽培の苦労話(農産物のいわれなど)

⑤その他 9.1

29.9

22.1

64.9

83.1

0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 90.0

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(4)6次産業化(直売、加工、農家レストラン等)を取り組んでいる農業者

① 6次化の有無は売り上げに影響しているのか

売上げが、5年前と比較して伸びている農業者は、55%(45/82)となっていま

す。売上げ伸びている農業者のうち6次産業化を取り組んでいる割合は、78%

(35/45)と非常に高くなっています。さらに直売や加工等の複数を取り組んでい

る者が 66%(23/35)となっており、売上げの向上に密接に結びついています。

取り組んでい

る77.8%

複数取り組んでいる65.7%

売上増加 54.9%

② 作物別の傾向は(野菜、果樹、土地利用型作物等)

売上げが伸びている農業者は、野菜が一番多く(80%)、続いて果樹(69%)とな

っている一方、米価等の低迷により土地利用型作物では 43%に留まっています。

経営形態が土地利用型作物の単一経営に比べ、野菜との複合の場合は、売上げの伸

びている割合が、1.5 倍程度と顕著にその効果は現れています。

伸びている

野菜+土地利用型作物

土地利用型作物

果樹

野菜

0% 20% 40% 60% 80% 100%

③ 取組項目別(例:加工、直売等)に売上げの傾向

複数項目の取組を含めて、売上げ増加に寄与しているものは、直売が最も高く 39

%、加工 29%、観光農園 12%、農家レストラン6%となっています。

これは、全体に比べ、特に加工の取組による売上げが増加との回答が高く、直売

でも同様の傾向となっています。一方、6次産業化に取り組んでない者は、全体 17

%に比べ6次産業化の取組 12%と比較して多く、6次産業化は売上げ増加に有効な

傾向となっています。

全体 売上げが増加した取組

39%

29%

12%

6%

1%

1%12%

直売

加工

観光農園

農家レストラン

農家民宿

輸出

取り組んでない

36%

26%

10%

8%

1%

2%

17%