6.影響想定海域の設定 6.1 影響想定海域の設定方法図6.1...

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添付書類 2-21 6.影響想定海域の設定 6.1 影響想定海域の設定方法 浚渫土砂の海洋投入処分が排出海域及びその周辺海域の海洋環境に影響を及ぼす要因 としては、以下の内容が考えられる。 ①浚渫土砂の堆積による影響 ②浚渫土砂の濁りによる影響 したがって、影響想定海域の設定については、1 回または海洋投入処分期間における浚 渫土砂の堆積範囲(堆積厚と堆積幅)、あるいは 1 回の投入による濁りの拡散の範囲のい ずれかにより設定する。 資料:「沿岸の海の基本図 6363-2 野島埼」(1995 海上保安庁)、「6366-8 鴨川湾」(2000 海上保安庁) より作成 6.1 浚渫土砂排出海域 海洋投入に関する計画(項目): 排出海域の範囲A(辺の長さあるいは直径)(図 6.1):直径 600m 1 回当たりの投入量 q200 ③浚渫土砂の中央粒径 d50(表 1.2):0.0480.165 mm ④浚渫土砂のシルト・粘土分の割合:2.264.7⑤排出海域の水深 D(図 6.1):約 600m ⑥排出海域の流速 v(第 5.2 (2)):26cm/s ※流速 v の設定にあたっては、第三管区海洋速報沿岸流況図より排出海域の流速は年間 を通して 0.5 ノット以下であったので、最大をとって 0.5 ノット≒26cm/s とした。 離岸距離:約 15,000m

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Page 1: 6.影響想定海域の設定 6.1 影響想定海域の設定方法図6.1 浚渫土砂排出海域 海洋投入に関する計画(項目): ① 排出海域の範囲A(辺の長さあるいは直径)(図6.1):直径600m

添付書類 2-21

6.影響想定海域の設定 6.1 影響想定海域の設定方法

浚渫土砂の海洋投入処分が排出海域及びその周辺海域の海洋環境に影響を及ぼす要因

としては、以下の内容が考えられる。 ①浚渫土砂の堆積による影響

②浚渫土砂の濁りによる影響 したがって、影響想定海域の設定については、1 回または海洋投入処分期間における浚

渫土砂の堆積範囲(堆積厚と堆積幅)、あるいは 1 回の投入による濁りの拡散の範囲のい

ずれかにより設定する。 資料:「沿岸の海の基本図 6363-2 野島埼」(1995年 海上保安庁)、「6366-8 鴨川湾」(2000年 海上保安庁)

より作成 図 6.1 浚渫土砂排出海域

海洋投入に関する計画(項目): ① 排出海域の範囲A(辺の長さあるいは直径)(図 6.1):直径 600m ② 1 回当たりの投入量 q:200 ㎥ ③浚渫土砂の中央粒径 d50(表 1.2):0.048~0.165 mm

④浚渫土砂のシルト・粘土分の割合:2.2~64.7% ⑤排出海域の水深 D(図 6.1):約 600m ⑥排出海域の流速 v(第 5.2 章(2)):26cm/s ※流速 v の設定にあたっては、第三管区海洋速報沿岸流況図より排出海域の流速は年間

を通して 0.5 ノット以下であったので、最大をとって 0.5 ノット≒26cm/s とした。

離岸距離:約 15,000m

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添付書類 2-22

(1)浚渫土砂の堆積範囲の推定による影響想定海域の設定 排出海域における浚渫土砂の堆積範囲の推定には、「浚渫土砂の海洋投入処分及び有

効利用に関する技術指針(改訂案)」(平成 25 年 7 月、国土交通省)にある、簡易予測

による堆積厚の推定手順を参考に算出した。

手順 1:1回当たりの投入による堆積幅 B の設定

図 6.2 に、堆積幅の推定に必要な簡易予測図を示す。なお、簡易予測図は浚渫土砂の

中央粒径により、粗砂・中砂・細砂の 3 種類あるが、当該浚渫土砂は中央粒径が No.1 は

0.048mm、No.2 及び No.3 は 0.164~0.165mm であり、No.1 はシルト、No.2 及び No.3 は

細砂(0.075~0.25mm)に該当する。シルトのような粘性土はある程度水分を含むと粘着

力を発揮し、土塊となって水中を落下するため、拡散の度合いが砂質土より小さくなる

ことが考えられるので、細砂の簡易予測図を使用することとする。

1 回当たりの投入量、排出海域の水深と図 6.2 から、1 回当たりの投入による堆積幅B

を推定すると、約 670mである。なお、排出海域の水深は 600m であり、簡易予測図に当

該排出海域の水深がないため、簡易予測図で最も近い 200m を使用した。

資料:「浚渫土砂の海洋投入及び有効利用に関する技術指針(改訂案)」

(平成 25 年 7 月、国土交通省)より作成

図 6.2 1回の土砂投入による堆積幅の簡易予測図(細砂)

670m

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添付書類 2-23

手順 2:影響想定海域の範囲 L(距離)の設定 排出海域の範囲 A と 1 回当たりの投入による堆積幅 B から、

L=排出海域と中心を同じとして直径 A+B の範囲 として設定する。

よって、L=A+B=600m+670m=1,270m

出典:「浚渫土砂の海洋投入及び有効利用に関する技術指針(改訂案)」(平成 25 年 7 月、国土交通省)

図 6.3 堆積幅、堆積厚の考え方(投入範囲が円形の場合)

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添付書類 2-24

(2) 濁りの拡散範囲の推定による影響想定海域の設定 排出海域における濁りの拡散範囲の推定には、「浚渫土砂の海洋投入処分及び有効利用

に関する技術指針(改訂案)」(平成 25 年 7 月、国土交通省)にある、簡易予測図を用い

た濁りの拡散範囲の推定手順に従った。

手順 1:1回当たりの投入による拡散範囲 R の設定 図 6.4 に、濁りの拡散範囲の推定に必要な簡易予測図を示す。なお、簡易予測図は浚渫

土砂に含まれるシルト・粘土分の割合により、粗粒土(50%以下)、細粒土(50%以上)

と分かれており、さらに細粒土の簡易予測図は、使用する船舶の種類(土運船・ドラグサ

クション船)によって 2 種類ある。また、それぞれ SS 濃度別(+2mg/L・+5mg/L・+10mg/L)に 3 種類あるため、全部で 9 種類の簡易予測図がある。 当該浚渫土砂は、シルト・粘土分が No.1 地点は 64.7%、No.2~3 地点は 2.2~2.6%であ

るため、安全側をみて細粒土の簡易予測図を用いた。また、排出海域の状況から水産生物

に対する人為的な濁りの影響を無視できないので最小の SS 濃度 2mg/L の簡易予測図を用

いた。

資料:「浚渫土砂の海洋投入及び有効利用に関する技術指針(改訂案)」(平成 25 年 7 月、国土交通省)

より作成

図 6.4 濁りの拡散に関する簡易予測図(土運船・細粒土)

排出土砂の水深は 600m と深く、簡易予測図に当該排出海域の水深がないため、簡易予

測図で一番深い 200m を使用した。 1 回当たりの投入による拡散範囲を R とすると、

q=500m3のとき R=680m

680m

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添付書類 2-25

なお、簡易予測図は排出海域の流速を 0.2m/s の場合で設定しているため、当該排出海域

の流速で補正を行う。 流速v1のときの拡散範囲をR1とすると、

R1=R×v1/0.2 =680×0.26/0.2 =884m

となる。 手順 2:影響想定海域の範囲 L(距離)の設定 排出海域の範囲Aと 1 回当たりの投入による拡散範囲R1から、

L=排出海域と中心を同じとして直径A+2R1の範囲 として設定する。 よって、L=A+2R1=600m+2×884m=2,368m 出典:「浚渫土砂の海洋投入及び有効利用に関する技術指針(改訂案)」(平成 25 年 7 月、国土交通省)

図 6.5 濁りの拡散範囲の考え方(投入範囲が円形の場合)

<影響想定海域の範囲「L」> L:排出海域と中心を同じとして 直径を(A+2R1とする範囲(円形)

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添付書類 2-26

表 6.1 影響想定海域の推定

推定方法 拡散範囲(直径)

(1)土砂の堆積範囲による 1,270m

(2)濁りの拡散範囲による 2,368m

(1)、(2)より、「土砂の堆積範囲」による影響よりも「濁りの拡散範囲」による

影響が大きいと想定されるため、ここでは「濁りの拡散範囲」を用いて影響想定海域

を設定することとする。 以上により設定した排出海域及び影響想定海域を図 6.6 に示す。

資料:「海図 W87 東京湾至犬吠埼」(2004 年 海上保安庁)より作成

図 6.6 浚渫土砂の排出海域及び影響想定海域

影響想定海域 半径:1,184m

34°59′47″N 140°10′20″E を中心とした 半径 300mの範囲

勝浦漁港沖(許可番号 14-002)の排出海域 35°04′40″N、140°19′12″E を中心とした半径 200mの海域

浜荻漁港沖(許可番号 8-011)の排出海域 35°02′44″N、140°12′30″E を中心とした半径 300mの海域

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添付書類 2-27

平成 26 年 6 月時点での海洋投入処分の許可発給状況を図 6.7 に示す。 影響想定海域周辺での許可発給状況は、排出海域から約 6.5km 北東の浜荻漁港沖(許

可番号 8-011、平成 20 年 8 月 1 日~平成 21 年 3 月 31 日)及び約 16km 北東の勝浦漁

港沖(許可番号 14-002、平成 26 年 5 月 16 日~平成 29 年 3 月 31 日)である。

資料:「環境省 HP」(平成 27 年 6 月確認)より作成

http://www.env.go.jp/water/kaiyo/ocean_disp/3hakkyu/map_japan.html

図 6.7 海洋投入処分の許可発給状況

影響想定海域

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添付書類 2-28

6.2 浚渫土砂の堆積状況の推定 海洋投入処分による影響想定海域の変化を明らかにするため、堆積厚について検討を行

った。 なお、和田漁港における浚渫実施計画(表 3.1)では、1 年間の海洋投入処分量は 14,000㎥であり、選定基準の 100,000 ㎥未満である。 海底における土砂の堆積厚は、「浚渫土砂の海洋投入及び有効利用に関する技術指針(改

訂案)」(平成 25 年 7 月、国土交通省)にある、簡易予測による堆積厚の推定手順を参考

に推定した。 海洋投入に関する計画(項目): ② 出海域の範囲A(辺の長さあるいは直径):直径 600m(半径 300m) ③ 年間投入量Q(3.1 項): 14,000 ㎥ 年間平均堆積厚Hは、排出海域の範囲Aと年間投入量Qから、以下の式により推定した。 H=Q/A 排出海域の面積A:3002×π=282,743[㎡] 本事業によって推定される、年間平均堆積厚Hは、 H=14,000[㎥]/282,743 [㎡] ≒0.0495[m] ≒5.0[cm] となる。 以上より、海洋投入処分期間内(単位期間内)の海底への堆積厚は、スクリーニング判

定基準の 30cm 未満である。