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65nmFD-SOI ϓϩηεʹΔඇԽιϑτΤϥʔ ϑϦοϓϑϩοϓͷΤϥʔධՁ ޱɹ५ ݾ1 ݹɹ५ 1 1 ɿճ࿏ͷඍԽɾߴԽʹɺҰաͷނোͰΔιϑτΤϥʔͷӨڹԽ ΔɻຊڀݚͰ 65nmSOTB (Silicon On Thin BOX) ϓϩηεʹɺඇԽιϑτΤϥʔϑϦο ϓϑϩοϓͰΔ SLCCFF (Stacked Leveling Critical Charge Flip-Flop) ΛఏҊɺதʹݧࢼΑ ΓιϑτΤϥʔΛධՁɻSLCCFF SOI ϓϩηεʹΔιϑτΤϥʔΛΔΊΠϯόʔ λॎΈͱͳΔɻಉͷ ΛͱΔ stacked FF ΑΓԆͱফඅͷΦʔόʔϔου খɻதݧࢼͷՌɺSOTB ϓϩηεͰݯѹ 0.4V ʹɺSLCCFF D-FF ʹൺ 27 ഒɺbulk ϓϩηεͷ DFF ͱൺΔͱɺ 1080 ߴιϑτΤϥʔΛɻ Evaluation of Soft Error Tolerance of a Radiation-Hardened Non-redundant Flip-Flop in a 65nm FD-SOI Process Junki Yamaguchi 1 Jun Furuta 1 Kazutoshi Kobayashi 1 Abstract: With the miniaturization of integrated circuits in recent years, the impact of soft errors has been serious. We propose SLCCFF which is a radiation hardened non-redundant flip-flop in 65 nm SOTB (Silicon On Thin BOX) process. We measured its soft error reliance by neutron irradiation. SLCCFF has the stacked structure to prevent soft errors on SOI processes while maintaining smaller delay and power overhead than conventional stacked FFs. Experimental results show that the SLCCFF is about 27x stronger than the standard DFF at 0.4V power supply in the SOTB process. It is about 1080x stronger compared with the standard DFF in the bulk process. 1. ճ࿏ඍԽ · ߴԽʹΑΓߴʹͳΓɺΕ ʹΑܭػͷΓ·ඍԽਐΉͱα ΠΫϧΛาΜͰɻɺඍԽਐΉͱͰɺ·ࠓͰ աͳӉઢʹΒΕΔӉʹͷͰ ιϑτΤϥʔͷӨڹɺͰແͰͳͳ Δɻ1980 1 νοϓΓͷ SER 1000 FIT Ҏ ԼʹΉͱҰൠతʹཁٻΕɻ1 FIT ͱɺ1 νοϓฏ ۉ10 9 ʹ 1 ճͷͰෆੜΔͱ Λɻ1000 FIT ͱɺ 114 ʹ 1 ճͷͰιϑτ ΤϥʔੜΔͱΛҙຯΔɻ1000 FIT ͷνοϓΛ 1 ༻Δ߹ʹେͳͰͳͷΑʹΈΔɻ 1 ژણҡେ γεςϜઐ ߈Department of Electronics, Kyoto Institute of Technology ɺଟͷνοϓΛΔ߹ߴ৴པٻΊ ΒΕΔߤػҩثػͳͲͰɺ1 ͷΤϥʔॏେͳ ͱͳΔɻΕΒͷ LSI ιϑτΤϥʔରඞਢͱ ͳΔ [1]ɻιϑτΤϥʔରͱɺσόΠεϨϕϧͰͷ ͱճ࿏ϨϕϧͰͷରߟΒΕΔɻσόΠεϨ ϕϧͰ SOI (Silicon On Insulator) ज़Λ༻Δͱ Δɻճ࿏ϨϕϧͰԽͳͲΒΕΔɻԽϑ ϦοϓϑϩοϓͱɺTMR[2] DICE[3]ɺBCDMR[4] ͳͲΔɺΕΒͷԽϑϦοϓϑϩοϓফඅ ໘ͷΦʔόʔϔουେมେɻͷΊԽ ʹΑΒͳιϑτΤϥʔରॏཁͰΔɻ Ͱ 65 nmFD-SOI ϓϩηεʹɺఏҊΔඇ ԽϑϦοϓϑϩοϓΕςετνοϓΛઃ ܭɺͷιϑτΤϥʔΛධՁɻୈ 2 અͰιϑτ ΤϥʔͷੜىҼͱͷରज़ʹड़Δɻୈ 3 DA シンポジウム DAS2015 Design Automation Symposium 2015/8/26 ©2015 Information Processing Society of Japan 53

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「DAシンポジウム 2015」 平成 27年8月

65nmFD-SOIプロセスにおける非冗長化耐ソフトエラーフリップフロップのエラー耐性評価

山口 潤己1 古田 潤1 小林 和淑1

概要:集積回路の微細化・高集積化に伴い、一過性の故障であるソフトエラーの影響が深刻化してきている。本研究では 65nmSOTB (Silicon On Thin BOX)プロセスにおいて、非冗長化耐ソフトエラーフリップフロップである SLCCFF (Stacked Leveling Critical Charge Flip-Flop)を提案し、中性子照射試験によりソフトエラー耐性を評価した。SLCCFFは SOIプロセスにおけるソフトエラーを抑制するためインバータが縦積みとなっている。同様の構造をとる stacked FFよりも遅延時間と消費電力のオーバーヘッドが小さい。中性子照射試験の結果、SOTBプロセスでは電源電圧 0.4Vにおいて、SLCCFFは D-FFに比べ約 27倍、bulkプロセスの DFFと比較すると、約 1080倍高いソフトエラー耐性を示した。

Evaluation of Soft Error Tolerance of a Radiation-HardenedNon-redundant Flip-Flop in a 65nm FD-SOI Process

Junki Yamaguchi1 Jun Furuta1 Kazutoshi Kobayashi1

Abstract: With the miniaturization of integrated circuits in recent years, the impact of soft errors has beenserious. We propose SLCCFF which is a radiation hardened non-redundant flip-flop in 65 nm SOTB (SiliconOn Thin BOX) process. We measured its soft error reliance by neutron irradiation. SLCCFF has the stackedstructure to prevent soft errors on SOI processes while maintaining smaller delay and power overhead thanconventional stacked FFs. Experimental results show that the SLCCFF is about 27x stronger than thestandard DFF at 0.4V power supply in the SOTB process. It is about 1080x stronger compared with thestandard DFF in the bulk process.

1. 序論

集積回路は微細化 ·高集積化により高性能になり、それによって計算機の性能が上がりまた微細化が進むというサ

イクルを歩んできた。近年、微細化が進むことで、今まで

は過酷な宇宙線にさらされる宇宙においての問題であった

ソフトエラーの影響が、地上でも無視できなくなってきて

いる。1980年代は 1チップあたりの SERは 1000 FIT以

下に抑え込むことが一般的に要求された。1 FITとは、1

チップが平均 109 時間に 1回の確率で不良が発生すること

を示す。1000 FITとは、約 114年間に 1 回の確率でソフト

エラーが発生することを意味する。1000 FITのチップを 1

つ使用する場合には大きな問題ではないかのようにみえる。

1 京都工芸繊維大学 電子システム工学専攻Department of Electronics, Kyoto Institute of Technology

しかし、多くのチップを搭載する場合や高い信頼性が求め

られる航空機や医療機器などでは、1つのエラーが重大な

問題となる。これからの LSIはソフトエラー対策が必須と

なる [1]。ソフトエラー対策として、デバイスレベルでの

対策と回路レベルでの対策が考えられている。デバイスレ

ベルでは SOI (Silicon On Insulator)技術を用いることが

ある。回路レベルでは冗長化などがあげられる。冗長化フ

リップフロップとして、TMR[2]や DICE[3]、BCDMR[4]

などがあるが、これらの冗長化フリップフロップは消費電

力や面積のオーバーヘッドが大変大きい。そのため冗長化

によらないソフトエラー対策が重要である。

本稿では 65 nmFD-SOIプロセスにおいて、提案する非

冗長化フリップフロップが搭載されたテストチップを設計

し、そのソフトエラー耐性を評価した。第 2節ではソフト

エラーの発生起因とその対策技術について述べる。第 3節

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図 1 ソフトエラー発生機構

では提案する非冗長化フリップフロップの回路構造につい

て述べる。第 4節では中性子線起因の SEUについて、実

測方法と結果を述べる。第 5節では本稿の結論を述べる。

2. ソフトエラー

2.1 ソフトエラーとは

ソフトエラーとは、集積回路 (LSI)に粒子線が通過、ま

たは衝突することにより電子正孔対が生成され、一時的に

メモリの保持値やフリップフロップの論理値が反転するエ

ラーのことである。粒子線によるソフトエラー発生機構を

図 1に示す。半導体チップや電子回路に物理的な損傷が生

じるハードエラーとは異なり一過性のエラーであるので、

コンピュータの再起動やデータの書き換えによって正常な

動作が回復する。近年の集積回路の微細化にともなう集積

化や電源電圧の低下によって、ソフトエラーの影響が顕在

化してきた。これからの集積回路にとってソフトエラー対

策は不可欠であるといえる。

2.2 SEE (Single Event Effect)

SEE (Single Event Effect)は粒子線の衝突または突入に

より発生する一時的もしくは定常的な故障を指す。SEE

は大きく分けてソフトエラーとハードエラーに大別され

る。ソフトエラーには SEU (Single Event Upset)と SET

(Single Event Transient)などがある。SEUはラッチなど

のデータを保持している部分に電子正孔対が収集されるこ

とによって、データが反転するものであり、ラッチなどの

データ保持部以外の組み合わせ回路に電荷が生じパルス

を発生するものを SET (Single Event Transient)と呼ぶ。

一方でハードエラーには SEL (Single Event Latch-up)が

あり、粒子線の衝突が原因で電源と GNDが短絡状態とな

り、その結果大電流が流れデバイスが故障してしまうこと

を指す。

ソフトエラーは 1bitエラーの SBU (Single Bit Upset)と

複数 bitエラーの MBU (Multiple Bit Upset)に大別され

る。MBUとは一度の粒子の通過、衝突により複数のデー

タ保持部が反転するエラーである。発生機構としては電荷

共有や寄生バイポーラ効果などがあり、いずれも素子間の

n n n n

particle hit

図 2 電荷共有

p-bulk

tap-cell n n n n

particle hit

図 3 寄生バイポーラ効果

n+

p-Si

electron

hole

Large noise

particle hit

p-Si

Small noise

Source

Gate

Drain

particle hit

Bulk SOI

n+ n+ n+ n+

BOX

[D. Kobayashi.,ECS Transaction, 2011]

図 4 バルクと SOI に粒子線が突入した様子

距離に強く依存し、素子が隣接していると発生しやすくな

る。nMOSでは電子起因、pMOSでは正孔起因であり、電

子の移動度は正孔に比べ大きいので、nMOSのほうがソフ

トエラーが発生しやすくなっている。よって本稿では電子

起因のものについてのみ考える。

2.3 ソフトエラー対策

SOI (Silicon On Insulator)はプレーナ型の CMOS回路

構造の一種である。チャネルに不純物を添加しないで済む

ため特性のばらつきを抑えやすく、22 nm世代以降のトラ

ンジスタ技術の有力候補となっている。シリコン基板とト

ランジスタ (表面シリコン)の間に、絶縁物の層(BOX層,

Buried OXide)を挿入する。絶縁物としては主に SiO2 が

用いられる。SOIに粒子線が突入した様子を図 4に示す。

SOIは BOX層を挿入することにより、トランジスタの寄

生容量を小さくすることができる。高速または低消費電力

動作が可能であり、ソフトエラー耐性も強い。粒子線の衝

突により発生した電荷は、従来のバルク構造ではドレイン

領域に収集されてしまう。対して SOI構造では、SOI層で

発生した電荷はドレイン領域に収集されてしまうものの、

基板で発生した電荷は BOX層により遮られるため、収集

されることなく基板へ逃げる。[5]

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Gate

Substrate bias

Substrate

SOI (~12 nm)

BOX (10 nm)

Body

図 5 SOTB

2.4 薄膜BOX SOI (SOTB: Silicon On Thin BOX)

SOTBを図 5に示す。通常の SOIの BOX層の厚みはお

およそ 100 nmであるのに対し、SOTBはシリコン基板の

上に 10 nm程度の極薄の絶縁膜(シリコン酸化膜からなる

埋め込み絶縁層)とおおよそ 12 nmのシリコン薄膜(SOI

層)が形成された SOI基板上に形成されたトランジスタ

である。トランジスタの動作を行うシリコン薄膜には、不

純物が極めてわずかしか含まれないため、SOTBではトラ

ンジスタ特性のばらつきを大幅に減らすことが可能となっ

た。SOTBの特徴として BOX層の下の基板に電圧を印加

することでしきい値電圧を制御でき、逆バイアスの印加で

リーク電流を低減できることが挙げられる。[6]

3. 提案回路の構造と遅延時間ならびに消費エネルギーの評価

本節では提案する非冗長化耐ソフトエラーフリップフ

ロップの回路構造とその遅延時間、消費エネルギーを評価

し、通常のフリップフロップと比較する。

3.1 Stacked Inverter

図 6に通常の Inverterと、トランジスタを縦積みにした構

造の Stacked Inverterを示す。完全空乏型 SOI (FD-SOI)

プロセスでは Stacked Inverterはソフトエラーに強靭で、全

ての論理回路をこの構造にすることで SET (Single Event

Transient)が発生しないという報告がある [7]。縦積みされ

たトランジスタは STI (Shallow Trench Isolation)と BOX

層で完全に分離されている。そのため寄生バイポーラ効

果やチャージシェアリングの影響を受けにくく、通常の

Inverterに比べソフトエラーに強靭である。

3.2 Stacked Leveling Critical Charge FF

図 7に標準的な stacked FFを示す。面積のオーバーヘッ

ドを削減するため、マスターラッチとスレイブラッチのイ

ンバータのみ縦積み構造となっている。しかし、縦積みし

た Inverterは通常のものに比べ、遅延時間は大きく、通常

の DFFよりも大きくなってしまう。

図 8 に提案回路である SLCCFF を示す。SLCCFF と

stacked FFでは、IS0とトランスミッションゲートの接続

が異なる。SLCCFFでは遅延時間を削減するため、トラン

D Q

(a) Inverter

D Q

(b) Stacked Inverter

図 6 Inverter and Stacked Inverter

D Q

CLK

CLK

CLK

CLK

CLK

CLK

CLK

CLK

T0 IS0

T1

TG

IS1

T2

0 01

図 7 stacked FF

D

CLK

CLK

CLK

CLK

Q

T0 IS0

T1

TG IS1

T2

CLK

CLK

CLK

CLK

p

n

0 01 c

NT1

NIS0

図 8 SLCCFF (Stacked Leveling Critical Charge Flip-Flop).

スミッションゲートは図 8中のノード nとノード pに接続

した構造となっている。

3.3 遅延時間ならびに消費エネルギーの評価

滑降シンプレックス法 [8]により SLCCFFと stacked FF

の ED積を評価した。ED積が最小になるようトランジス

タサイズを変更し、シミュレーションを行った。図 9に滑

降シンプレックス法による立ち上がり遅延時間と消費エネ

ルギーの関係を示す。表 1は ED積が最小となるときの遅

延時間、消費エネルギーを DFFを 1として規格化し比較

したものである。SLCCFF の面積は stacked FFの約 1.1

倍であるが、遅延時間は約 16%、消費エネルギーは約 11%

低い数値となっている。

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1

1.5

2

2.5

3

3.5

1 1.2 1.4 1.6 1.8 2 2.2

Energ

y [norm

aliz

ed]

Rise Delay Time [normalized]

SLCCFF

Stacked FF

DFF

図 9 遅延時間ならびに消費エネルギーの評価 (DFF を 1 として規

格化)

表 1 Energy, Delay and Area Comparison

Energy Delay Area Power

Stacked FF 2.13 2.00 1.12 1.07

SLCCFF 1.89 1.67 1.24 1.13

105,984bit

DFF Array

99,360bit

stacked Array

185,472bit

SLCCFF Array

1.3mm

5mm

図 10 テストチップのフロアプラン

4. 中性子照射試験によるソフトエラー耐性評価

本節では作成したテストチップの概要と実験方法、中性

子起因 SEUの実験結果について述べる。

4.1 テストチップ

非冗長化フリップフロップのソフトエラー耐性を評価す

るため、テストチップを設計し、中性子照射試験を行った。

テストチップは 65 nm bulkおよび SOTBプロセスで、全

く同様のレイアウトパターンで試作した。図 10にテスト

チップの詳細を示す。テストチップの FFARRAY部は 1.3

mm×5 mm であり、計 390,816個のフリップフロップが

搭載されている。内訳は DFFが 105,984bit、stacked FF

が 99,360bit、SLCCFFが 185,472bitとなっている。各フ

リップフロップはアレイ状に配置されており、全てのフ

リップフロップをシフトレジスタとして接続した。

Distance: 10cm

Stacked DUT boards

図 11 Radiation test by neutron

4.2 中性子照射試験

中性子照射試験は大阪大学 RCNP (Research Center for

Nuclear Physics)で行った。図 11に試験の様子を示す。中

性子線によるソフトエラーは、中性子線が Si原子と核反応

を起こすことによって発生した荷電粒子が電子正孔対を生

成することにより発生するため、α線に比べソフトエラー

が発生しにくい。限られた実験時間内でより多くのソフト

エラーを観測するため、複数ボードをスタックすること

で測定を行った。1ボードに 4チップが搭載された DUT

(Device Under Tests)ボードを 6枚積層した。SLCCFFは

stacked FFのマスターラッチの接続を変更した構造になっ

ているため、マスターラッチがラッチ状態となる (DATA,

CLK)=(0, 1)、(1, 1) の条件下で測定を行った。(DATA,

CLK)=(0, 1)では NT1 の NMOSトランジスタ、(DATA,

CLK)=(1, 1)では NIS0 で起こると考えれるエラーを観測

する。本稿では NMOSトランジスタの方が PMOSよりも

放射線に脆弱であることを前提としている [9]。

4.3 中性子照射試験結果

図 12と図 13に bulkプロセスにおける中性子起因 SERs

(Soft Error Rates) を示す。(DATA,CLK)=(0, 1) がマス

ターラッチのインバータ部、(DATA, CLK)=(1, 1)がマス

ターラッチのトライステートインバータで発生する可能

性のあるエラーである。電源電圧を 1.2 Vから 0.6 Vに下

げると、SERは約 3倍となっていることがわかる。bulk

プロセスでは stacked FF と SLCCFF の SERは DFFと

同等もしくは低い結果となった。(DATA,CLK)=(0, 1)の

条件下では顕著な差はみられなかった。一方で (DATA,

CLK)=(1, 1)、VDD=0.6 Vの条件下で DFFと比較する

と、stacked FFで約 12%、SLCCFFで約 33%低いことが

わかる。

図 14と図 15に SOTBプロセスの試験結果を示す。bulk

プロセスの DFFに比べ、SOIプロセスにおける stacked

FFと SLCCFFの SERははるかに低いことがわかる。特

に (DATA, CLK)=(1, 1)における SLCCFFの SERはい

ずれの電源電圧においても非常に低く 3FIT/Mbit であ

り、VDD=0.4 V では DFF の SER の約 1/27 であった。

stacked FFと比較しても同等あるいは低い SERを示した。

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800

1000

1200

1400

0.6 0.8 1.0 1.2

SE

R[F

IT/M

bit]

VDD[V]

DFFstacked FF

SLCCFF

図 12 bulk (DATA, CLK)=(0, 1)

0

200

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600

800

1000

1200

1400

0.6 0.8 1.0 1.2

SE

R[F

IT/M

bit]

VDD[V]

DFFstacked FF

SLCCFF

図 13 bulk (DATA, CLK)=(1, 1)

しかし (DATA, CLK)=(0, 1)では stacked FFと SLCCFF

に顕著な差はみられなかった。設計した SLCCFFはイン

バータ部のみ縦積み構造としたが、トライステートイン

バータも縦積みにすることで面積、遅延時間、消費電力の

オーバーヘッドはあるものの、よりソフトエラー耐性を高

めることができる。

5. 結論

本稿では完全空乏型 SOI (FD-SOI)の一種である 65 nm

SOTBプロセスを用いた非冗長化フリップフロップを設計

し、中性子照射試験によりソフトエラー耐性を評価した。

回路の冗長化により高いソフトエラー耐性を得ることがで

きるが、面積、遅延時間、消費エネルギーのオーバーヘッ

ドが大きくなってしまう。本稿では FD-SOIプロセスにお

いて、提案する非冗長化耐ソフトエラーフリップフロップ

である SLCCFFの各特性を評価した。シミュレーション

から SLCCFFの遅延時間、消費エネルギーはラッチ部分

のインバータのみ縦積み構造にした stacked FF よりも、

遅延時間は約 16%、消費エネルギーは約 11%小さいこと

がわかった。ソフトエラー耐性評価にあたっては、白色中

性子ビームを用いた。試験結果から SOTBプロセスにお

いて SLCCFFは通常の DFFに比べ SERが約 1/27であ

り、ソフトエラーに対し強靭であった。SOTBプロセスに

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

0.4 0.6 0.8 1.0 1.2

SE

R[F

IT/M

bit]

VDD[V]

DFFstacked FF

SLCCFF

図 14 SOTB (DATA, CLK)=(0, 1)

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

0.4 0.6 0.8 1.0 1.2

SE

R[F

IT/M

bit]

VDD[V]

DFFstacked FF

SLCCFF

図 15 SOTB (DATA, CLK)=(1, 1)

おける DFFの SERは bulkプロセスの約 1/40 であった

ことから、SOTBプロセスの SLCCFFは bulkプロセスの

DFFよりも 1080倍高いソフトエラー耐性を有することが

わかった。

謝辞

本研究は JSPS科研費 15H02677、26889037、STARC共

同研究の助成を受けて実施したものである。本研究に用い

た TEG設計は東京大学大規模集積システム設計教育セン

ターを通して行われ、シノプシス株式会社、日本ケイデン

ス株式会社とメンター株式会社の協力で行われたもので

ある。

参考文献

[1] 戸坂義春, “知っておきたいソフトエラーの実態”, 日経エレクトロニクス, 2005年 7月 24日号, (2005).

[2] L. Anghel, D. Alexandrescu, and M. Nicolaidis, “Evalua-tion of a Soft Error Tolerance Technique Based on Timeand/or Space Redundancy”, SBCCI ’00 , p. 237, (2000).

[3] D. Krueger, E. Francom, and J. Langsdorf, “Circuit de-sign for voltage scaling and SER immunity on a quad-coreItanium processor”, ISSCC , (2008), pp. 94–95.

[4] R. Yamamoto, C. Hamanaka, J. Furuta, K. Kobayashi,and H. Onodera, “An Area-efficient 65 nm Radiation-Hard Dual-Modular Flip-Flop to Avoid Multiple Cell Up-sets”, IEEE Trans. Nucl. Sci., Vol. 58, No. 6, pp. 3053 –3059, (2011).

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[5] D. Kobayashi et al., “Radiation-Induced Pulse Noise inSOI CMOS Logic”, ECS Transactions vol.35 , (2011).

[6] Neil H.E. Weste and David Harris, “CMOS VLSI DE-SIGN A circuts and systems perspective Forth Edition”,Addison Wesley , (2010), pp. 120, 360 –365.

[7] A. Makihara, M. Midorikawa, T. Yamaguchi, Y. Iide,T. Yokose, Y. Tsuchiya, T. Arimitsu, H. Asai, H. Shin-dou, S. Kuboyama, and S. Matsuda, “Hardness-by-designapproach for 0.15 mu;m fully depleted CMOS/SOI digitallogic devices with enhanced SEU/SET immunity”, IEEETrans. Nucl. Sci., Vol. 52, No. 6, pp. 2524 – 2530, (2005).

[8] R. John Koshel, “Enhancement of the downhill simplexmethod of optimization”, Breault Research Organization,Inc., Suite 350, 6400 East Grant Road, Tucson, AZ85715 , (2002).

[9] P. Hazucha, T. Karnik, J. Maiz, S. Wal-STRA,B. Bloechel, J. Tschanz, G. Dermer, S. Hareland, P. Arm-stro ng, and S. Borkar, “Neutron soft error rate mea-surements in a 90-nm CMOS process and scaling trendsin SRAM from 0.25µm to 90-nm generation”, IEDM ,(2003), pp. 523–526.

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