5.プラズマ揺動とct計測 -...

20
灘雛 聾穫ズマの揺動解析入F『V 5.プラズマ揺動とCT計測 山好夫 (核融合科学研究所) Plasma Fluctuation and CT Diagnostics NAGAYAMA Yoshio Mzあo惣zl動s渉露%陀」めプE%舘07z S擁6フz66,To削509-5292,ノ吻)召% (Received26August1998) Abstract Imaging techniques lnclu(1ing the X-ray CT,the ECE-CT,and the ECE f scribed.The Fourier expansion technique is popular in plasma diagnos data are missing in some ang玉es.Alt血ough the strict X-ray CT tec血nique us has not been use(l in plasma tomography,this tec虹nique is describe(l sin complete(1X-ray(1ata set is taken from any direction.The ECE-CT is more because ECE continuously measures local electron temperature.Never because it shows the behavior of heavy metal impurities.Experimental r scribed,since CT diagnostics have contributed significantly to MHD画ys Keywords: plasma diagnostics,tomography,imaging,CT,X-ray,ECE,MHD 5.1 はじめに コンピュータトモグラフィ(CT,断層写真)は人体 の断面像の測定のために発達した診断技術である.扇形 のX線ビームを人体の1断面の周りで回転させて,あ らゆる方向からのX線透視撮影を行う.その透視画像 からコンピュータの計算によって人体断面のX線吸収 率分布を求めるのがX線CTである[1].X線CTは 脳出血や脳腫瘍などの診断に威力を発揮している.一方, 人体の1断面の各点で異なった磁場にしておき,核磁気 共鳴の周波数から位置を同定し,強度から共鳴する原子 核の密度を求めるのがMagneticResonancelmaging (MRI)である.これは密度を直接計測できる局所的測 定である.例えば,椎間板はX線写真には写らないが, MRI画像には鮮明な椎間板が写る.そのためMRI登場 以来,椎間板ヘルニアの診療は著しく進歩した.また MRIは局所的測定法であるため画像が鮮明であり,ガ ンの早期発見に役立っている.このように診断法によっ て得意不得意があるが,CT診断によって医療は格段の 発達を遂げている. プラズマの不安定性の中には,プラズマの温度や密度 のかなりの変化を伴うものがある.例えば,電磁流体力 学的(MRD)不安定性は磁気面の変形を引き起こす. 温度や密度は磁気面上でほとんど一定であるため,温度 や密度の等高線も変形する.したがって,温度や密度の 等高線の変形を測定することでMHD不安定性を調べ ることができる.医療診断で発達したCT診断技術を 召z拡ho7む6一〃zα乞1’7z㎎¢ソごz〃zごz@n躯40か 1158

Upload: others

Post on 02-Nov-2019

3 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 5.プラズマ揺動とCT計測 - jasosx.ils.uec.ac.jpjasosx.ils.uec.ac.jp/jspf/jspf_text/jspf1998/jspf1998_10/jspf1998_10-1158.pdf · 講 座 5.プラズマ揺動とCT計測

 灘雛聾穫ズマの揺動解析入F『V

5.プラズマ揺動とCT計測

長 山好夫(核融合科学研究所)

Plasma Fluctuation and CT Diagnostics

       NAGAYAMA YoshioMzあo惣zl動s渉露%陀」めプE%舘07z S擁6フz66,To削509-5292,ノ吻)召%

      (Received26August1998)

Abstract Imaging techniques lnclu(1ing the X-ray CT,the ECE-CT,and the ECE fluctuation imaging are de-

scribed.The Fourier expansion technique is popular in plasma diagnostics because it is useful when

data are missing in some ang玉es.Alt血ough the strict X-ray CT tec血nique using the Fourier trans五〇rm

has not been use(l in plasma tomography,this tec虹nique is describe(l since it can be useful when the

complete(1X-ray(1ata set is taken from any direction.The ECE-CT is more powerful than the X-ray CT

because ECE continuously measures local electron temperature.Nevertheless,the X-ray CT is usefu三

because it shows the behavior of heavy metal impurities.Experimental results using CTs are also(ie-

scribed,since CT diagnostics have contributed significantly to MHD画ysics.

Keywords:plasma diagnostics,tomography,imaging,CT,X-ray,ECE,MHD

5.1 はじめに

 コンピュータトモグラフィ(CT,断層写真)は人体

の断面像の測定のために発達した診断技術である.扇形

のX線ビームを人体の1断面の周りで回転させて,あ

らゆる方向からのX線透視撮影を行う.その透視画像

からコンピュータの計算によって人体断面のX線吸収

率分布を求めるのがX線CTである[1].X線CTは

脳出血や脳腫瘍などの診断に威力を発揮している.一方,

人体の1断面の各点で異なった磁場にしておき,核磁気

共鳴の周波数から位置を同定し,強度から共鳴する原子

核の密度を求めるのがMagneticResonancelmaging

(MRI)である.これは密度を直接計測できる局所的測

定である.例えば,椎間板はX線写真には写らないが,

MRI画像には鮮明な椎間板が写る.そのためMRI登場

以来,椎間板ヘルニアの診療は著しく進歩した.また

MRIは局所的測定法であるため画像が鮮明であり,ガ

ンの早期発見に役立っている.このように診断法によっ

て得意不得意があるが,CT診断によって医療は格段の

発達を遂げている.

 プラズマの不安定性の中には,プラズマの温度や密度

のかなりの変化を伴うものがある.例えば,電磁流体力

学的(MRD)不安定性は磁気面の変形を引き起こす.

温度や密度は磁気面上でほとんど一定であるため,温度

や密度の等高線も変形する.したがって,温度や密度の

等高線の変形を測定することでMHD不安定性を調べ

ることができる.医療診断で発達したCT診断技術を

召z拡ho7む6一〃zα乞1’7z㎎¢ソごz〃zごz@n躯40か

1158

Page 2: 5.プラズマ揺動とCT計測 - jasosx.ils.uec.ac.jpjasosx.ils.uec.ac.jp/jspf/jspf_text/jspf1998/jspf1998_10/jspf1998_10-1158.pdf · 講 座 5.プラズマ揺動とCT計測

講 座 5.プラズマ揺動とCT計測 長山

プラズマ診断にも応用できないかとは誰しも考えること

であろう.実際に行ったのは,プリンストン大学プラズ

マ物理研究所(PPPL)のSautho鉦達である.Sautho丘

達は一次元に並べたX線検出器列を用いたが,プラズ

マのポロイダル方向の剛体回転を仮定することで,1978

年,PLT(Princeton Large Tokamak)トカマクプラズ

マの〃2=2磁気島構造のX線CTを撮ることに成功し

た[2].以来,世界中の核融合実験装置にX線CTが

普及した.現在では,多数の検出器列を設置し,回転を

利用しないトモグラフィも行われている[3].

 医療診断のMRIに相当するのは,電子サイクロトロ

ン放射(ECE)のCTである.プラズマ中の電子は磁

場強度に比例した電子サイクロトロン周波数で円運動を

するので,磁場と直角方向から見ると振動電気双極子モ

ーメントを持つ.これは電子サイクロトロン周波数の整

数倍,特に第二高調波,で電磁波をよく吸収ので,その

周波数では黒体とみなすことができ,温度に比例した強

度で電磁波を放射する.これをECEとよぶ[4].トカ

マクプラズマ中では磁場はトーラス外側にいくほど弱く

なるので,周波数と位置は一対一対応する.したがって,

ECEはMRIと同じ局所的測定である.高次モードを

線積分すると,信号変化は極めて小さくなる.そのため

X線CTには高次モードMHD不安定性は観測しにく

い.一方ECE-CTを用いると局所的測定であるため,

高次モードMHD不安定性も鮮明に画像化できる.

 本稿では,X線CTとECEの回転トモグラフィにつ

f(P,Φ)

S

yA

P

X

いて詳述する.はじめに,医療で用いられている厳密的

解法を説明する.これは,現在測定ポートの制約による

データ欠損のためにやむなく級数展開法が用いられてい

るが,今後撮像素子の発達によりデータ欠損のないトモ

グラフィが可能となった時,必ず厳密的解法を利用する

ことになると思われるためである.ついで,級数展開法,

ECEの回転トモグラフィ技術について紹介し,最後に

CTを用いて得られた実験的成果を紹介する.

5.2X線CT5、2.1厳密的解法

(a〉フーリエ変換法

 x線測定の模式図をFig.1に示す.x線の通り道は

直線であり,これを視線と呼ぶ.視線は中心からの垂線

の長さρと垂線と∬軸のなす角φとによって一意的に

定まる.X線測定量∫(ρ,φ)は,X線の発光密度g(7,

θ)の,視線方向L上の線積分である.

  ∫(ρ,φ)一五9(7,θ)ds    (1)

X線CTは,積分値∫(ρ,φ)からこの積分方程式を解

いて,g(7,θ)を求めることである.

 今Fig.1に示すように直交座標系κ0ッ上にプラズマ

があり,それを角度φ回転した新しい直交座標系ρOs

上で測定するとする.視線は3方向である.(劣,y)と(ρ,

s)との変換は,

劣二ρCOSφ一3sinφ

ツニρsinφ+3COSφ

O

(2)

である.g(κ,ッ)の二次元フーリエ変換G(ξ,η)は次

のように表される.

  ・(ξη)一∫コ。.此9(∬,ツ)e-i(ぴ+ηy)⑩(3)

(x,y)

ここで,直交座標系(ξ,η)から極座標系(ω,φ)に

変換する.すなわち,

ξ=ωCOSφ

η鷲ωsinφ

Fig.1Schematic view of X-ray CT.

とする.式(3)は

・(ξη)一!コ。.!コ。.9@,y)

(4)

脚{一・[響轟懸、)1}⑩

一几{五9(罪・ッ)ds/e-iψ⑫ (5)

1159

Page 3: 5.プラズマ揺動とCT計測 - jasosx.ils.uec.ac.jpjasosx.ils.uec.ac.jp/jspf/jspf_text/jspf1998/jspf1998_10/jspf1998_10-1158.pdf · 講 座 5.プラズマ揺動とCT計測

プラズマ・核融合学会誌 第74巻第10号  1998年10月

となる.式(1)に示されたように,密度g(∬,』y)のs方

向の積分は,測定値∫(ρ,φ)であるから,

  ・(ξη)一π。.∫(ρ,φ)e-iψ⑫  (6)

となる.すべてのφについて,測定値∫(ρ,φ)が得ら

れたなら,密度g(ヱ,ッ)の二次元フーリエ変換0(ξ,η)

が求められる.それを

9(卑,y)一412此∫二・(ξη)ei( ηツ)dξdη(7)

のようにフーリエ逆変換することによって,密度分布

g(劣,y)が求められる.これが,フーリエ変換法と呼ば

れるトモグラフィ計算法である[1].

(b)フィルタ補正逆投影法

 測定値∫(ρ,φ)は極座標表示であるが,密度分布の

フーリエ変換0(ξ,η)は直交座標表示であるので,こ

れを求めるのに補間計算が必要である.これはわずらわ

しいだけでなく,再構成像上のエラー(アーチファクト)

の発生原因にもなる.そこですべて極座標表示にするこ

とを考える.式(7)を極座標表示すると

  9(劣,ツ)一412胤。。・(ξη)eiω㎞φ φ)ωdωdφ

一4姜2烈兀。。・(ξη)eiψωdωldφ

一、淵∫耽∫(ρ・φ)e圃

     1ωlei砂dω}dφ

となる.ただし,

P=劣COSφ+二ysinφ

(8)

(9)

である.これは極座標のまま計算できる形をしている.

 式(8)を見ると,∫(ρ,φ)のフーリエ変換に,フィル

タ関数∬(ω)

E(ω)=1ω1 (10)

をかけたものをフーリエ逆変換した形になっている.た

だし,1ω1はωについて発散する形をしているので,

実際の計算ではそのまま使えない.そこで,ωの大き

な領域で零になるように変形したフィルタ関数を用い

る.これが,フィルタ補正逆投影法(痘1tered back pro-

jection)と呼ばれるトモグラフィ計算法である[1]。

(c)重畳積分法

 式(8)を書き直すと,

9(劣,y)一8嘉2卿ン(ω・φ)∬(ω)eiψdω}dφ(11)

ここで,.F(ω,φ)は∫(ρ,φ)のρ方向の一次元フーリ

エ変換

F(ω,φ)一!コ。.∫(ρ,φ)e一i砂Φ(12)

である.∬(ω)はh(ρ)のフーリエ変換とすると

h(カ)一毒∫ン(ω)ei砂Φ   (・3)

である.たたみこみ定理

  412∫ン(ω,φ)H(ω)ei砂dω

   一∫1♂(X,φ)h(ρ一X)dX   (14)

を用いると,式(11)より,

9α,ツ)一凱翫[∫ユ∫(X,φ)h(ρ一X)d刈dφ(15)

を得る.これは,フーリエ変換を含まない形になってい

る.これが,重畳積分法(convolution)と呼ばれるト

モグラフィ計算法である[1].

 以上,たくさんの数式を用いて長々と説明してきたの

がトモグラフィの厳密的解法である.この計算方法はデ

ータ数が多くなるにしたがって高分解能になるので,医

療用や産業用のCTで用いられている.いずれプラズ

マにおいても適当な補間法を組み合わせてこれらの計算

法を使う必要がでてくるだろう.

5.2.2プラズマで使われるX線C’rの数学的手法

(a)フーリエ級数展開

 歴史的にプラズマでは上記の厳密的解法は用いられて

いない.理由はトカマクの測定ポートの位置が限られて

いるため,データ欠損が多すぎて厳密的解法ではまとも

な再構成像が得られないためである.英国EMI社の

Go鵡ey HounsfieldがCTスキャナを初めて開発した当

時,用いたトモグラフィ法はAlgebraicReconstruction

Technique(ART)法と呼ばれる逐次近似法であった.

これは,再構成領域をメッシュで区切り,そこに密度分

布を仮定し,線積分する.投影データを線積分値と比較

して密度分布に補正を加えていき,ついには線積分値を

投影データに一致させるという方法である.この方法は

厳密解を与えるものではないが画素数が少ないとき有効

であった.しかし現在の高解像度のCTではフーリエ

変換法を基にした厳密解を求める方法が用いられてい

る.また,ART法のようにメッシュで画素を区切る方

法では,データ欠損のところで大きなアーチファクトが

1160

Page 4: 5.プラズマ揺動とCT計測 - jasosx.ils.uec.ac.jpjasosx.ils.uec.ac.jp/jspf/jspf_text/jspf1998/jspf1998_10/jspf1998_10-1158.pdf · 講 座 5.プラズマ揺動とCT計測

講座 5.プラズマ揺動とCT計測 長山

発生するので,プラズマでは大抵の場合使うことができ

ない.

 データ欠損がある場合はそれを補う何かが必要であ

る.プラズマの場合,平滑性と対称性が仮定できるので,

これらでデータ欠損を補う.平滑性があれば,高次の微

分が可能なので,解析関数で展開可能である.プラズマ

は基本的に円柱であるので,中心軸の周りでフーリエ展

開可能である.極座標表示を用いると,

 9(7,θ)=ΣΣ偽,剛9々,別(7)ei勉θ       (16)

      た 加

と書ける.これを式(1)のように線積分すると

 ∫(.ρ,φ)=ΣΣ磯,磁,挽(ρ,φ)       (17)

      々 鋭

をえる.ただし,

 五,窺(ρ,φ)一五9海,窺(7)ei窺θds  (18)

である.計測データを式(17)に最小自乗法でフィットす

ることで,展開係数磯,勉を求める.それを式(16)に代

入することで,求めるべき密度分布g(プ)を得ることが

できる.この方法も無限個の項を取ることができれば厳

密解を与える.しかし,項数が多くなれば,信号におけ

る雑音,デジタル化時の打ち切り,較正誤差,および数

値計算の有効桁等のために数値演算上のエラーが発生す

るだけでなく,計算時問が加速度的に長くなる.したが

って,分解能はかなり犠牲となる.そのため,厳密的解

法とは呼ばれない.しかし,データ欠損を補う強力な手

法である.

 それではなぜフーリエ展開によって角度方向に欠損の

あるデータからトモグラフィが可能なのであろうか.一

つの検出器列からは,半径方向にはすべてのデータが,

角度方向にはφ=0,πの2方向のデータを得ることが

できる.プラズマがトーラス外側ヘシフトしている場合

は,COSφ成分を持つ.この場合,垂直ポートにおかれ

た一つの検出器列のデータだけで再構成可能である.ま

た,プラズマがトーラス外側ヘシフトしているだけでな

く〃F2のモードの不安定性を持つ場合は,垂直ポー

トと水平ポートがあればよい.なぜなら,角度方向には

φ=0,π/2,π,3π/2の4方向のデータを得ることが

できるのに対し,必要な展開項は,1,cosφ,cos2φ,

sin2φの4つだからである.このように,検出器列の数

に応じて展開項を決めることによって,それなりのトモ

グラフィが必ず可能なのである.

(b)補間

 プラズマ半径の半分より外側ではX線放射強度が非

常に弱く,しばしば検知器すら置かないことがある.こ

のように半径方向にデータ欠損がある場合そのまま級数

展開法を用いると,特にCormack法のように外側の方

に零点の多い展開関数を用いた場合などでは,外側の像

に大きなアーチファクトが発生する.これを補うために

は,測定データを滑らかに補間する[5].

 今,座標誇での投影データを乃とする.2点(zブ,乃),

(み+1,乃+1)を滑らかに補間するには,各点での微分

係数も連続でなくてはいけない.一番簡単なのは三次関

数で,

ツー(壽紛)3[σ鋤・∋(紛+吻

          一2蛎+、一甥]

+(詣霧)2[3切+・一ツH瞭y回

         (之ブ+1一勾)]

+め(9-zノ)+澱        (19)

である.

ヅノ=

微分係数は例えば

傷一ッゴー、)(言ゴ+、一9ゴ)2一@y+、)(2ゴーZH)2

      (衿+1一初(Zガ2ブー1)(紛+1一紛一1)

のように求められる.微分係数は,端では,0としてよ

いはずである.

(c)最小自乗法とAIC

 次に最小自乗法について説明する.フィットするべき

展開式(17)を便宜上簡単化して

(20)

 ∫(z)=Σ筋(2)        (21)    ノと書き,投影データをッ声ッ(之♂)と書く.最小自乗法は

琴陶一囲2一孝(多嚇(2づ)一の2-min・(22)

であるので,式(22)の偏についての微分が零になる.

すなわち,

琴(写幅)一ッゴ)ψ党(z歪)一・

             ,々ニ1,2,...,%(23)

である.書き換えると,

Cαニわ (24)

ただし,召は求めるべき展開係数のベクトル表示であり,

Cの行列要素は

qた=Σ吻(2ぢ)晦(紛)

  f(25)

1161

Page 5: 5.プラズマ揺動とCT計測 - jasosx.ils.uec.ac.jpjasosx.ils.uec.ac.jp/jspf/jspf_text/jspf1998/jspf1998_10/jspf1998_10-1158.pdf · 講 座 5.プラズマ揺動とCT計測

  δゐ=Σψ乃(z∫)y∫

    fである.したがって,展開係数は

α=C-1δ

で求められる.

プラズマ・核融合学会誌 第74巻第10号  1998年10月

(26)

(27)

 展開関数俄,規(7)の取り方は自由のようだが,正規

直交系を使わないと高次の展開をした場合,展開係数

砺,駕を求めるときの行列Cが正則でなくなり,逆行列

が得られなくなる.そこで,半径を規格化し,Fig.1に

おいてプラズマの領域は半径1の単位円内にあるとし,

その外側では密度は零とする.プラズマで用いられてい

る代表的な展開関数はZemickeの多項式(Cormack

法)とBessel関数(Fourier-Bessei展開法)である.

このほか角度方向をフーリエ級数,半径方向をスプライ

ン関数[6]で展開した例もある.

 フーリエ展開を用いると,展開式上に複素関数exp

(i〃zθ)やexp(i〃zφ)が現れるが,これは簡便な書き方

であり,実際の計算では

  Σσ倣9励(カ)ei泌θニΣ轟た9窺為(カ)COS規θ  解=一〇〇               規謂〇

          +Σ姦為9励(ρ)sin規θ   (28)

          規需1

のようにするのはもちろんである.

 展開項をどこで打ち切るかが間題である.Akaikeに

よると最小自乗法の項数gは,実験データの数をπと

したとき,

∬C=刀lnSer+29

が最小になるときが,最良である[7].

自乗残差であり

(29)

ここで,Serは

    だ  だ  Se,=ΣΣ〔yぎ一∫(紛)]2           (30)

    f=1∫=1

である.これはIwamaによってプラズマのトモグラフ

ィに導入された[6].

(d)Cormack法

 Cormack法では展開関数としてZemickeの多項式ノ~ぞ(7)

      ”・(一1)プ(餅物一ブ)1■+2規吻  ノ~忽(7)=Σ              (31)     ノ旨・ ブ1(為+規一ゴ)!(規一ゴ)!

を用いる.線積分式(18)の詳しい計算はCormackの原

著論文[8]を参照してもらうことにして,結果は

      ・…  2sin[(ゐ+2〃z+1)cos-1カ]  ∫(ρ・φ)一規峯。.混隔  々+2規+1 ei卿

                     (32)

 9(プ,θ)諾ΣΣ偽,郷1~ぞ(r)ei規θ     (33)     泌昌一〇〇々=0

である.

 最小自乗法式(22)において,基底関数ψ(z)を

     2sin[(々+2〃z+1)cos-1ρ]  ψ(z)一 々+2窺+、 e三卿

z=(ρ,φ) (34)

とし,前節に述べたたように,計測データを式(17)に最

小自乗法でフィットすることで,展開係数娠窺を求め

る.それを式(33)に代入することで,求めるべき密度分

布g(7,φ)を得る.

 Cormack法は解析解を用いるので計算プログラムが

簡単であり今でも愛用されている.ただし,Zernicke

の多項式は端近くに零点が集まっており,かつ端で零で

はない.プラズマの場合,端には興昧がないので測定点

がなく,端では当然密度が零である.そのため単純に

Cormack法を用いるといろんな不都合が生じる.例え

ば,端近くで振動する大きなアーチファクトが発生する.

そこで,単位円をプラズマより十分大きくし,プラズマ

の端から単位円まで零の疑似データを入れる.そして,

展開項を多くするといったテクニックが必要である.そ

のようにしても,AICの極小点はしばしば現れない.

(e)Fourier-Bessel展開法

 上記のCormak法の欠点を補うものとして,展開関

数としてBesse1関数を用いるFourier-Bessel展開法が

考案された[9].これは考案者の名前を取って

Nagayama法とも呼ばれるが,Cormack法の改良であ

る.円柱トカマクプラズマの平衡解はBessel関数であ

り,一般のトカマクプラズマの場合でもFourier-Bes-

se1展開で平衡解が求められる.したがって,Fourier-

Besse1展開はトカマクプラズマにおいては極めて自然

な展開法である.また,円形膜の振動方程式の解も

Fourier-Bessel展開で得られる.Bessel関数の零点は

比較的一様である.なにより良い点は,Besse1関数は

端で零である.Fourier-Besse1展開の展開項の数は

Cormak法の2/3で同じ精度がある.また,AICの極

小点がしばしば存在するので,展開項の打ち切りを決め

やすい.したがって,Fourier-Bessel展開法はプラズ

マのトモグラフィに適した計算法である.

 Fourier-Besse1展開法では,密度分布をFourier-

Bessel展開する.すなわち,

9(7,θ)=ΣΣα別届規(λ励7)e吻θ

   “:=一〇〇々篇1

(35)

1162

Page 6: 5.プラズマ揺動とCT計測 - jasosx.ils.uec.ac.jpjasosx.ils.uec.ac.jp/jspf/jspf_text/jspf1998/jspf1998_10/jspf1998_10-1158.pdf · 講 座 5.プラズマ揺動とCT計測

講 座 5.プラズマ揺動とCT計測 長山

ここで∫海(z)は規次のBessel関数,λ磁は∫規(z)の

た番目の零点である.線積分(18)を数値的に実行する方

法もあるが,解析解もある.線積分の詳しい解析的計算

は論文[10]を参照してもらうことにして,結果は

∫(♪,φ)=ΣΣ召窺蔽た(汐)ei卿

    規=一〇Q禿=OQ

 ん々(ρ)ニ2(1一ρ2)1/ケ郷(λ解々)

     ×裁δ轟(λ襯)鵡一λ彿ψ)

     ×(砺轟(ρ)+砺嵩(ρ))

ただしδπは

錫一{112認

であり,砺(2)は第二種Tschebyscheff級数,

     sin[(〃z+1)cos-1之]  砺(β)=       (1-92)1/2

である.

5.2.3回転トモグラフィ

(a)はじめに

(36)

(37)

(38)

(39)

 最初にプラズマでCTを行ったSauthoff達は,一次

元に並べたX線検出器列を使い,あらゆる方向からの

X線を測定するためにプラズマのポロイダル方向の剛

体回転を仮定した[2].本当にプラズマが剛体回転して

いるならばこれは大変に有効な手段である.実際,プラ

ズマの中の磁気面構造は剛体と仮定できるほど強固であ

る.ただし,ポロイダルではなく,トロイダル方向に回

転する.しかし,シングルヘリシティのヘリカル対称性

が仮定できるなら,トロイダル回転でもポロイダル回転

でも同じことである.Sauthoff達の扱った現象は,〃z=

2磁気島構造であった.これは,飽和しているので定常

的で,かつシングルヘリシティのヘリカル構造である.

したがって,上記の仮定が成り立ち,はじめてのプラズ

マのX線CTに成功したのである.

 トカマクでの測定ポートの配置は限られているので,

JolntEuropeanTorus(JET)やTokamakFusionTest

Reactor(TFTR)でのように垂直ポートと水平ポート

の二箇所にX線検出器列を置くことが多い.JETでは

4つのフーリエ成分を用いてComack法でトモグラフ

ィを行い,ホローな分布が得られたので,鋸歯状波崩壊

ではキンク流によって冷たいプラズマが外側から中心部

に引き込まれる,といった結論を出した[11].しかし,

シフトした点状光源を4つのフーリエ成分でトモグラフ

イを行うと,同じような分布が得られる.鋸歯状波崩壊

は翅=1モードが引き起こすので,窺=1までのフーリ

エ成分があればよい,というのは間違った考え方である.

正しい分布をえるには高次の項までとらなければならな

い.角度方向の分解能はフーリエ成分のみで決定される

からである.そこでプラズマの剛体回転を利用すること

によって,角度成分を増やし,高次の項まで用いてトモ

グラフィを行う.TFTRではこのようにして,鋸歯状

波崩壊におけるより正確なトモグラフィを行い,ホット

スポットが半径方向に伸びた楕円形であることを見いだ

した[12].また,JETにおいても楕円プラズマについ

て回転トモグラフィを行いTFTRと同様の結果を得ている[13].

(b)回転角度

 時間的に変化しない平衡配位の上に,シングルヘリシ

ティの磁気面構造を持つ揺動があるとき,プラズマパラ

メータッはヘリカルパラメータτの関数であるので,

 ツ=∫(τ), τニ〃3θ+御      (40)

と書ける.ただし,窺とπとはそれぞれポロイダルモー

ド数およびトロイダルモード数である.今,揺動がトロ

イダル方向に角速度β,初期位相で回転しているとする

と,トロイダル角度は

卯=β!+90 (41)

である.

τ一勉(等+の吻・   (42)

であるので,τ=τo(一定)となるポロイダル角度は

θ=イ麗+θo (43)

ただし

    πβ   τo一脚o  、0=一r  θo=        (44)     規          〃z

となる.すなわち,揺動が窺乃2一定の単一ヘリカル構

造であれば,トロイダル回転していてもポロイダル回転

とみなすことができる.

 プラズマは本当に剛体回転しているのだろうか?

TFTRでの測定では,不純物イオンが壁で零になるよ

うに半径方向に速度が変化しているのに対し,揺動の磁

気構造は剛体として振る舞う[14].また,揺動が作る磁

気島の場所の不純物イオン速度とモードの速度はほぼ同

じである.おもしろいことに,外部磁場と磁気島の相互

作用で磁気島の回転にブレーキがかかるロックドモード

1163

Page 7: 5.プラズマ揺動とCT計測 - jasosx.ils.uec.ac.jpjasosx.ils.uec.ac.jp/jspf/jspf_text/jspf1998/jspf1998_10/jspf1998_10-1158.pdf · 講 座 5.プラズマ揺動とCT計測

プラズマ・核融合学会誌 第74巻第10号  1998年10月

という現象が発生すると,不純物イオン速度も低下す

る[15].逆に,スーパーショットなどの改善閉じ込めモ

ードでは不純物イオン速度が速くなるにつれて,磁気島

の回転速度も速くなる.

(c)楕円度の補正

非円形断面トカマクプラズマにおいて回転トモグラフ

ィを実行するとき,単純に回転させると楕円ごと回転す

るので大きなエラーを引き起こす.回転するのは揺動で

あって平衡配位ではないから,楕円度を補正すればよ

い[16].これはステラレータプラズマでも同じことであ

る.今,Fig.2(a)のように,プラズマが楕円度κで縦に

伸びた楕円とする.現実の座標系を(X,y)とし,新

しい座標系を(鑑,ッ)とし,X線カメラのスリットの位

置座標をそれぞれ(U,の,(%,∂)とする.線形変換,

劣=X,ツ=y7κ,麗=U,FP7κ (45)

を行う.それぞれの座標系での視線とX軸とのなす角

をα,βとすると,

(a)  Y  且Ou ¥

¥ApαV

X

Aperture

ye u

1¥V

X

(b) 1

α

△X

Y

y

X

Fig.2(a)The geometry for the transformation from an elliptic pIasma to a circular

  plasma.(b)The geometry for the transformation from an circular plasma with

  the Sれafranov shift to a circular plasma without the Sねafranov shift.

1164

Page 8: 5.プラズマ揺動とCT計測 - jasosx.ils.uec.ac.jpjasosx.ils.uec.ac.jp/jspf/jspf_text/jspf1998/jspf1998_10/jspf1998_10-1158.pdf · 講 座 5.プラズマ揺動とCT計測

講座 5.プラズマ揺動とCT計測

     tanα  tanβ寵           (46)     κとなる.線積分値は距離が変わるので,

価(c・s2α+sillα)翅  (47)

となる.この変換によって,プラズマは円形断面として

扱え,回転トモグラフィが可能となる[13].

(d)Shafranovシフトの補正

 トカマクプラズマの磁気軸は,最外殻磁気面の中心よ

り外側にずれており,これをShafranovシフトという.

単純にプラズマを回転させるとShafranovシフトごと

回転するので大きなエラーを引き起こす.回転するのは

揺動であって,平衡配位ではないから,Shafranovシフ

トを補正しなくてはならない.今,Fig.2(b)のように,

X方向に∠だけシフトしている規格化した半径ρの円

形磁気面は

(X一∠)2+y2=ρ2

と書ける.そこで,座標変換

κ鵠X一∠,y=y

(48)

(49)

を行うことによって,磁気面は同心円になり,回転トモ

グラフィが可能となる⊂17,18].ここで,4はρの関数

である.∠oを磁気軸上のシフトとすると,実験式は,

小∠。(1ψ2)

である[14].視線の長さで線積分値を補正すると,

∫ニ

2あ

1+[・一(ρ+響)2ド

(50)

(51)

となる.この補正は,非線形変換であるため正確ではな

いが,大変役に立つ.

5.2.4 疑似CT

 検出器列の数が足りないときは回転トモグラフィをせ

ざるを得ないが,事象の変動速度に対して回転速度が足

りない場合や,マルチヘリシティの場合で,ポロイダル

回転の仮定を使えない場合がある.これもデータ欠損の

ある場合のトモグラフィといえるが,級数展開法が使え

ないほどデータ欠損がはなはなだしい.しかし,物理的

考察を加えることによって,データ欠損を補うことがで

きる.この場合は,分布を仮定してトロイダル回転させ,

線積分と信号波形が一致するように,分布を変化させる.

これは,鋸歯状振動の研究[19]やモード混合したディス

長山

ラプションの研究[20]に古くから用いられてきた方法

で,疑似CTというべきものであろう.最近では,

GAMMA lOタンデムミラーにおいて疑似CTが円柱プ

ラズマの反磁性ドリフト回転の同定に用いられた[21].

この方法の要点は,物理的洞察に基づいて最適な関数形

を作り出すことにある.

 ここでは,TFTRにおいてバルーニングモードのX線

像を得るために用いた手法を説明する[22,23].今,X

線発光密度分布g(7,θ)を極座標表示して,

幽の一{簾撫・ (プs+4<7)

(7s一卿<7<7s)

 (others) (52)

とする.ここで7,は有理面の半径,ωは平らな領域の

幅,且は揺動の大きさ,4はバルーニングの張り出しの

大きさである.Shafranovシフト∠=∠o(1一ノ)と楕円

度κを取り入れるために,(κ,ッ)座標系と(プ,θ)座標

系との変換は,

プCOSθ二劣て∠, κ7sinθニy

とする.平衡部分90(7)は

卿一{。☆,←罫)_)

とし,揺動部分は

9、(7,θ)=9S(7,θ)9b(θ)9c(τ)9P(τ)

(53)

とする.αは平衡部分の尖り具合を表す.g,(プ,θ)はバ

ルーニングの張り出し具合を表現するもので,

一・☆儒回(54)

ただし

プm一[(総C・Sθ+4)2+7ξsin2θ1祀・7h一総一4

とする.9b(θ)は揺動の内外非対称を表すもので,

9b(θ)一(cosl+2)β   (55)

とする.9。(τ)はShafranovラムダ辺の効果を考慮に

入れるためのもので

1165

Page 9: 5.プラズマ揺動とCT計測 - jasosx.ils.uec.ac.jpjasosx.ils.uec.ac.jp/jspf/jspf_text/jspf1998/jspf1998_10/jspf1998_10-1158.pdf · 講 座 5.プラズマ揺動とCT計測

7p~ ;~7 ' ~;~~l!A~~~:~:A1~~P#u 1998~1;10;~

(a)

(b)

bottom

40

(cm)

O

-40

plasma center

horizontal camera

X

(7, 6)

model

top

bottom

#3 6

vertical camera shot 5401 8

out

in

out

6

#68

#7 2

6

#68 (9, 6)

model

#3 6

. #7

top In 0.27 0.37 0.27 (t=3.77977s) t' (ms) (t=3.77987s)

Fig. 3 (a) The wave packet model source function at the poloidal cross section,

where soft X-ray cameras are set. It is assumed that the major radius of R=245 cm and the minor radius of a=85 cm. The Cartesian coordinates (x, y), the slit

position (x*, y*) , and the angle between the view line and the x-axis, c, are in-

dicated. (b) The observed soft X-ray signals (thick line) from the horizontal/

vertica[ cameras, and the simulated waveforms (thin line) from the horizontal/

vertical cameras by the (m,n) = (7,6) and (9, 6) models. The raw data of Ch.36

is missing.

0.37

1166

Page 10: 5.プラズマ揺動とCT計測 - jasosx.ils.uec.ac.jpjasosx.ils.uec.ac.jp/jspf/jspf_text/jspf1998/jspf1998_10/jspf1998_10-1158.pdf · 講 座 5.プラズマ揺動とCT計測

講 座 5.プラズマ揺動とCT計測 長山

9c(τ)皿0.5(1+cosτ)+0.125(1-cosτ)B (56)

とする.ただし,τはトロイダル方向の回転と,S始f

ranovラムダノ1の効果を考慮に入れたヘリカル座標で,

τ=郷θ*+πφ(渉)

ただし,

θ*=θ切7,sinθ, φ(!)一φ。+ω渉

(57)

である.ここでβはバルーニングモードの尖り具合を

表す.9p(τ)はヘリカル方向τ1<τ<τ3に局在し,τ=

τ2で最大値をとることを表現するもので,

卿一{1+璽毒三誌卵(58)

である.ここでγは局在の尖り具合を表す.

 Fig.3(a)に座標系,測定配置および得られたバルーニ

ングモードのX線像を示す.X線カメラのピンホール

の座標を(劣c,ッc)とし,ピンホールを通る視線と∬軸

とのなす角を濯とすると,視線を表す方程式は,

鍔tanπ(劣一劣。)+y。 (59)

である.式(57)にしたがって計算した時間毎のτにつ

いて視線(59)に沿って線積分(1)を実行し,時間毎の信

号を模擬する.Fig.3(b)に模擬信号と測定した信号を示

す.水平カメラと垂直カメラの両方について,模擬信号

が実験とあうのは(〃z,π)ニ(7,6)の時であることが分

かる.このようにして,局所的モードのモード数を同定

’することができた.

5.3ECEの画像解析5.3.1回転トモグラフィ

 この稿で扱うECEは,プラズマからの電子サイクロ

トロン周波数での黒体輻射であり,赤道面上大半径(R)

の関数としての電子温度丁,(R,渉)と同等である.トー

ラス内側と外側は測定されているが,上下の情報はない.

そのため,ECE-CTはプラズマの剛体回転を仮定して

行う.プラズマの回転周波数はTFTRでも10kHzに

なるので,高速サンプリングが必要である.ナイキスト

周波数はサンプリング周波数の半分であるため,角度分

解能は最良の場合でもπ×回転周波数/サンプリング周

波数である.現在使われているECE計測器は,高速走

査マイケルソン干渉計,多チャンネル回折格子分光器

(GPC),ヘテロダインラジオメータの3種類である.後

二者は高速サンプリング可能であるが,検出器の数が多

すぎて温度較正が困難である.そこで検出器が1つであ

るマイケルソンを絶対較正し,他の計測器をマイケルソ

ンと相対較正することはよく行われる.

 今,角周波数0で反時計回りに回転しているプラズ

マについて,時刻云でのECE二次元画像を回転トモグ

ラフィで得ることを考える[14,18].Fig.4(a)に示すよ

うに1つの回転円周上にはトーラス外側(一P1)と内側

(一P2)の2箇所に測定点があるとし,時刻渉1にP1に居

たプラズマが回転によって時刻!に点Pに移り,さら

に時刻!2には点一P2に移るとする.点Pでの電子温度

はjp1とP2との二点での測定から求めるしかない.最

も単純な方法はどちらか一点だけでの電子温度を用いる

(a)

P(r,θ)

θ2

rθ1

P20

P1 R

O C(△) Q1(η)Q2(ら)

Q3(r3)  Q4(%)

ro訟tion

(b)

ぼ邸qbの

●お

Q山P1

P

SI S2

P2

tl t t2 time

Fig.4(a)Schematic view for the determination of the

  temperature at point P from temperatures at iηside

  pQlnt PI and at Qutside pointρ2,which are on a circle

  with tねe radius ofρand the center C,Geometry of

  point P surrounded by points Qi witねradius of ri is

  also shown,(b)Schematic time evolution of signals.

  SI is that measured at outside chanηel,and S2the

  inside.The angleθ1andθ2correspond tothe time右

  andオ2,respectively,

1167

Page 11: 5.プラズマ揺動とCT計測 - jasosx.ils.uec.ac.jpjasosx.ils.uec.ac.jp/jspf/jspf_text/jspf1998/jspf1998_10/jspf1998_10-1158.pdf · 講 座 5.プラズマ揺動とCT計測

プラズマ・核融合学会誌 第74巻第10号  1998年10月

ことである.しかし,Fig。4(b)に示すように,これら2

点での電子温度は時間的に少しずつ変化している.した

がって,常識的には,両者を補問によって求めるべきだ

ろう.プラズマはしばしば急激な変化をすることも考え

ると,高次の補間法はあまり意味がないように思える.

そこで,簡単に線形補問をする.点・Pでの電子温度Te

は,

       1θ11Te(72,∫2)+1θ21Te(71,∫1)  Te(7,θ,渉)ニ          (60)           1θ、i+1θ21

で得られる.

 実際には任意の点Pを通る円上に測定点があるわけ

ではない.例えばP1についてはその近傍にある二点

Q1,Q2から線形補間で求める.あるいは,四点Q1,

Q2,Q3,Q4から式(19)で示した三次補間で求める.

 プラズマはしばしば楕円なので,前章で述べたような

線形変換を用いて円形断面とする.さらに,点Pを通

る円は,Shafranovシフトを考慮して求めなければなら

ない.簡単には,二次式(50)を用いる.より厳密には,

ECE測定で求めた電子温度分布から各円のシフト量∠

と半径ρを求める.ところがECE測定の欠点として,

三次高調波がかぶるため内側の分布のかなりの部分を得

ることができない.そこで電子温度分布を,滑らかな解

析関数,例えば,ベッセル関数

      L            /v 9(7,θ)瓢Σ砺10(λ0々)+Σわ々∫1(λ1々)COSθ

     々=1          た冒1

に最小自乗法

Σ[Tei-9(η,θづ)]2→min.ご

(61)

で近似することで,逐次近似法などで容易に任意の点を

通る円の∠とρを求めることができる.

 ECEトモグラフィはしばしば激しいMHD不安定性

の研究に用いられる.磁束分布がほとんど変化しない場

合には,MHD不安定性発生以前の滑らかな温度分布に

ついてこの操作を行い回転円を求める.Shafranovシフ

トが急激に変化する場合にはそれなりの工夫が必要であ

る.

 回転周波数は時問的に一定ではないのでそれも考慮に

入れる必要がある.TFTRでの回転トモグラフィでは

時刻ごとの回転周波数の表をまず作り,それを三次補間

して回転周波数を得た.角度は回転周波数を積分して得

た.

5.3.2電子温度分布の時問変化

 プラズマの断面像はポロイダル断面だけではない.プ

ラズマはトロイダル方向に回転し,ECE計測点は赤道

面上にあるので,単純に電子温度分布の時間変化を等高

線表示することで,何の仮定なしにトロイダル断面像を

得ることができる.このとき,空間的には三次補問する

ことで,より滑らかな像を得ることができる.また,前

節で述べたように,時問的には線形補間し,トロイダル

方向に接続することで,トロイダル断面像を得ることが

できる[14].

5.3.3 揺動成分の画像表示

 揺動成分を図示化する二つの方法を紹介する.一つは,

普通の考え方であるが,信号から時問平均を除いたもの

が揺動であるとするものである.すなわち

  躍か礁渉)号工脇箕(瓦∫)d!(62)

である.ここで,Tは積分時間であるが,変動の周期

の整数倍にとるとその周期変動成分が見やすくなる[22].

 第二の方法は,信号からある時問区間,時刻aから時

刻bまで,の最小値を除いたものである[24]。すなわち,

∠Te(R,∫)漏Te(R,!)一min[Te(R,!)]吃 (63)

である.これは熱が移動する様を図示化する.Fig.5(a)

に鋸歯状崩壊の前後の電子温度分布を示す.網掛け部分

が両者の最小値である.Fig.5(b)にこの部分を除いたも

のを示す.鋸歯状崩壊の前後で中心部の熱が周辺部に移

ったことがわかる.時間的に続けて二次元表示をすると,

この熱の空問的移動の時間変化がこの手法によって表示

できる.

   (a)ECE(total)        ,,。,、餌7。

 6(keV)

4

2

0丁

㎞魏欝

before crash

 after crash

(b)ECE(dif6erence)

 1(keV)

0

before crash

  aftercrash

250R(cm) 300

Fig.5Definition of the base line(Min[発(r,の]),which is

  the profile with“atched area,and t“e inversion and

  mixing radii。

1168

Page 12: 5.プラズマ揺動とCT計測 - jasosx.ils.uec.ac.jpjasosx.ils.uec.ac.jp/jspf/jspf_text/jspf1998/jspf1998_10/jspf1998_10-1158.pdf · 講 座 5.プラズマ揺動とCT計測

講座 5.プラズマ揺動とCT計測 長山

5。4 二次元画像解析を用いた実験

5.4.1磁気島の観測

 Sa滋hof{達の世界最初のX線CTのターゲットは吻

=2磁気島であった[2].そこでわれわれも窺=2磁気

島の観測から始めよう.Fig.6にTFTRのOHプラズ

マに固体重水素ペレットを入射した後に発生し成長した

勉=2磁気島の二次元画像を示す[25].Fig.6[A]に磁

気島が上下にあるとき,Fig.6[B]に磁気島が左右にあ

るときの,ECE-CT,ECE揺動成分およびX線CTを

示す.ECE-CTには教科書にあるようなきれいな三日

月型の磁気島が写っている.温度が低いせいかX線

CTはきれいではない.磁気島らしきものがかろうじて

見えるだけである.低エネルギーまで測定できるX線

検出器ならばよかったのかもしれない.ECE揺動成分

は,角度方向にも正負があり,半径方向にも正負がある.

平均的な境目を破線の円で示す.すると,ホットスポッ

トは外側へ伸びようとし,磁気島は内側へ縮もうとする

ことがわかる.このようなことは教科書には書いていな

いけれども実験的観測で初めてわかることである.なぜ

そうなるかの解明には,今後の理論的進展が望まれる.

5.4.2 揺動のECE画像

 次に揺動のECE画像を紹介する.これはTFTRに

おいて,NBI30MWをπe=2×1013cm-3のOHプラズ

マに入射加熱して,π.誠8×1013cm-3,βp=0.95にした

時のものである.Fig.7(a)に電子温度分布の時問変化の

等高線図を示す.これでは揺動の様子がよくわからない.

3.70253

AECE(t。ta1)

ECE(perturbati・n)

屡緯『』☆撫

鰭攣℃

soft X-rayshot45512

3.7035260

パ9ε

N

0

.60

B

220

繊R(cm) 340

薯無

喪◎》

臼g.6Contour plot of electron temperature pro柑e IECE(total)],the perturbation on the temperature[ECE

  (perturbation)1,and tわe soft X-ray tomograpわy[soft X-rayl of the(2,1)mode in the Ohmic plasma

  with deuterium peile重呵ection.’『he contour step size is60eV for the ECE(total),8eV for ECE

  (perturbation).The dotted contour indicate negative value.ln the soft X-ray tomography,only1/60f

  peak emission is sわown and the contour step size is1/1200f the peak emission.The numbers on the

  left shoulder of the{igures indicate the reconstruction time in seconds,The broken circular line indi-

  cates the estimatedσ=2surface.

1169

Page 13: 5.プラズマ揺動とCT計測 - jasosx.ils.uec.ac.jpjasosx.ils.uec.ac.jp/jspf/jspf_text/jspf1998/jspf1998_10/jspf1998_10-1158.pdf · 講 座 5.プラズマ揺動とCT計測

プラズマ・核融合学会誌 第74巻第10号  1998年10月

(a)ECE(total)SHOT55807

(b)ECE(perturbation)

3。0

パ∈)匡

2.5

A    ((イ3.4600time(sec)

    心

・1ドリ

ll◎、1◎

59

トく〉◇ら90

  ρ臼1・

幾鍵囎灘3.4604 3.4600

o △○

o  D

絢〔塵燵       。 

4’9,

time(sec)

鰍曜

一ウ

1織

匹◎・

3.4604

尋q=t67尋mlnニ313 +413+513

m/n=313q=1

m/n=413

q=t33mln=513qニ1.67

Fig.7(a)Time evolution of electron temperature profile during the mode mixing phenomena(b)Time

  evolution of perturbation in the electron temperature profiles.

Fig。7(b)に式(62)を用いて得た揺動成分の時間変化を示

す.実線の等高線が正,点線の等高線が負を示す.トー

ラス外側ではひとかたまりのモードがトーラス内側(R

が小の方向)で三つに分離しているのが観測できる.こ

れらのモードはトロイダルモード数が同じで,ポロイダ

ルモード数が一つ異なっているものである.モードの境

目もきれいに見える.この境目が有理面である.

5.4.3バルーニングモードの観測

 Fig.8にTFTRプラズマにおけるβ崩壊過程におい

てバルーニングモードが発生しているときの,X線分

布,式(62)を用いて得た揺動成分,電子温度分布の時間

変化の等高線図を示す[22,23].X線図には上から下に

走る三筋のモードが見える.揺動成分の等高線図にはト

ーラス外側に三筋のモードに対応する三塊のモードがあ

る.これは電子温度分布にも明らかに現れている.プラ

ズマはトロイダル方向に剛体回転しているので,X線

カメラのポートとECE測定ポートの角度差∠φおよび

時間遅れ窃秒と振動の周期丁秒からトロイダルモー

ド数がわかり,

   2π∠∫  %ニ                (64)    T∠φ

である.

 バルーニングモードは極めて局在しているので,通常

のCTでは断面像を再現できない.そこで,5.2.4項で

述べた疑似CTを用いる.結果はFig.3(a)に示したとお

りである.この画像解析によって,バルーニングモード

の姿を初めてとらえることができた.バルーニングモー

ドの理論から四半世紀後のことである.また,この実験

には,画像解析の手法は相手を見ながら臨機応変に使用

しなければならないという教訓も含まれている.

5.4、4部分的鋸歯状崩壊

 Fig。9(a)に二重鋸歯状波振動が起こる時の中心部とそ

れより少し外側そしてg瓢1有理面外側の3箇所の

ECE信号を示す[26].二重鋸歯状波振動とは鋸歯状波

振動一周期の問に二度崩壊が起こる現象である.はじめ

の崩壊は部分的鋸歯状崩壊であり,次に起こるのは全鋸

歯状崩壊である.部分的鋸歯状崩壊というのは,このよ

うにプラズマ中心の温度は変化しないのに,少し外側の

温度が急減する現象である.規=1モードが崩壊を引き

起こすのであれば,外側から崩壊が始まったにしても中

心部まで崩壊が続くはずなのに,なぜ途中で止まってし

まうのかは長い問謎であった.

 Fig。9(b)に電子温度分布の時間変化を示す。時刻!4

後,幅の広い〃z=1磁気島が生成されたことがわかる

が,それ以前の様子は明確ではない.ところが,Fig。9

(c)に示すように,式(62)を用いて得た揺動成分の空間分

布の時間変化を等高線表示すると,明らかに,時刻且

付近で,〃z=1モードの二倍の周波数のモードが現れ,

特に,時刻且で大半径外側に非常に強くなることが観

測される.すなわち,従来考えられたこととは異なり,

1170

Page 14: 5.プラズマ揺動とCT計測 - jasosx.ils.uec.ac.jpjasosx.ils.uec.ac.jp/jspf/jspf_text/jspf1998/jspf1998_10/jspf1998_10-1158.pdf · 講 座 5.プラズマ揺動とCT計測

講座 5.プラズマ揺動とCT計測 長山

Z(cm)

30

0

一30

300

R(cm)

250

300

R(cm)

250

(a)soft X-ray(horizontal view)shot54018

(7,6) (1,1)

..磁縛

 姥鰯擁素

(b)モ)(perturbation) T △t

  く二〉   。   .D Q  QΩ06Q)@◎◎曾@

11や,◎・lil51=…6)’4.,

乙◎蒋…露・。診    〔)。     口     く

@σC>・・:・ く二⊃

(c)electron temperature

 0.2(t=3.7797s)

0.3t★(ms〉

0.4

Fig.8Contour pbts ofthe time evolution ofthe soft X-ray and ECE pro-

  files during the minor disruption:(a)electron temperature pro-

  file;thecontourstepsizeis300eV,(b)pe直urbationofelectron  temperature;integration timeγ謹35ms in Eq.(62),(c)soft X-ray

  profile.The period of the bal[ooning mode isア=21、4ms,and its

  time delay between tわe soft X-ray and the ECE is∠ホ=6.4ms.

(規,%)=(2,2)モードが部分的鋸歯状崩壊を引き起こ

していたのである.したがって,もちろん中心まで崩壊

が進むことはない.

5.4.5全鋸歯状崩壊

 全鋸歯状崩壊とは通常鋸歯状崩壊と呼ばれていて,プ

ラズマ中心部の温度分布が平らになる現象である.1986

年までこれはKadomtsevの全再結合モデル[27]で説明

できるとされていた.このモデルは以下のようである.

窺置1モードが成長する過程でg=1有理面の内側と外

側の磁力線同士が互いに再結合し,三日月型の平らな磁

気島と丸くて熱いホットスポットが発生する.結局,磁

気島がホットスポットをg=1有理面に押しつけ,接触

部でホットスポットの磁力線と有理面外側の磁力線との

再結合がおき,ホットスポットの熱が磁力線に沿って外

1171

Page 15: 5.プラズマ揺動とCT計測 - jasosx.ils.uec.ac.jpjasosx.ils.uec.ac.jp/jspf/jspf_text/jspf1998/jspf1998_10/jspf1998_10-1158.pdf · 講 座 5.プラズマ揺動とCT計測

プラズマ・核融合学会誌 第74巻第10号  1998年10月

R=

260

R(cm)

(a)ECE

200

 (c)ECE(perturbation)

shot56407

260

R(cm)

200

    2.95ECE(total) 3.OO        3.02

7

440magnetiCaXiS.併_Ω登Ω。総4群’〈)6                   ◇

(2,2) (1,1)

織糠騰灘漿 magnetic axis                     藤        …亭

・・麟鞭嚢轍鷹醗 

2.974A B

2.9755C time(s)

2.977

Fig.9(a)ECE signals ofa double sawtooth oscillation in a Ohmic plas-

  ma.(b)Time evolution of electron temperature profile during the

  partial sawtooth crash.The contour step size is100eV.(c)Time

  evolution of perturbation in the electron temperature profiles.The

  contour step size is14eV.

に逃げていく.ところが1986年,JETにおいて崩壊時

間が全再結合モデルよりも桁違いに短いことが発見され

た[11].同じ頃,TEXTORトカマクでのプラズマ内部

磁場測定によって磁束変化が全再結合モデルよりもかな

り少ないことが発見された[28].そのため,1986年以来

鋸歯状崩壊を理解する新たな取り組みが世界中で行われ

てきている.

 一例として,TFTRのNBI加熱フ。ラズマにおける鋸

歯状崩壊について,Fig.10(a)にECE-CTを,Fig.10(b)

にX線CTを示す.明らかにECE-CTの方がX線CTよりも鮮明である.X線CTにはフーリエ展開に起

因する角度方向に並ぶ六つの丸いアーチファクトが見ら

れる.ホットスポットの位置は同じだが,ホットスポッ

トにおけるX線放射強度は非常に強い.X線カメラに

1172

Page 16: 5.プラズマ揺動とCT計測 - jasosx.ils.uec.ac.jpjasosx.ils.uec.ac.jp/jspf/jspf_text/jspf1998/jspf1998_10/jspf1998_10-1158.pdf · 講 座 5.プラズマ揺動とCT計測

,'ii~~ ~~ 5. ~~~;~7~,~~*"~)J~ CT ~~'-'~fi~lJ

ShOt

49543

time (s)

4. 1 6908

4. 1 7247

4. 1 7269

4. 1 7276

(a) ECE (total)

220 R (cm)

Te

(keV)

6

4

2

O

300

(b) soft X-ray

220 R (cm) 300

Fig. 10 (a) Series of ECE images during the full sawtooth crash in the

NBI heated plasma. (b) Series of soft X-ray tomographic im-

ages in the same time.

1173

~~ l~

Page 17: 5.プラズマ揺動とCT計測 - jasosx.ils.uec.ac.jpjasosx.ils.uec.ac.jp/jspf/jspf_text/jspf1998/jspf1998_10/jspf1998_10-1158.pdf · 講 座 5.プラズマ揺動とCT計測

プラズマ・核融合学会誌 第74巻第10号  1998年10月

用いられているベリリウム膜によるカットオフは3keV

であり,電子温度は5keV以上なので,電子温度依存

性は弱い.分光データも考慮し,結局,X線放射強度

分布は重金属イオン密度分布を表すものとされた.重金

属イオンは閉じ込めが良く乱流程度ではなかなか拡散し

ない.内外の磁力線が再結合し,磁力線に沿って重金属

イオンが逃げていると推定される.再結合が起こったと

き,磁力線に沿って重金属イオンが逃げる速度は電子よ

り二桁遅いので,等発光密度面は等磁気面よりやや遅れ

る.このためECE画像とX線画像には差が現れるは

ずである.ところで,最後のフレームでは磁気島とホッ

トスポットの電子温度の差はないが,X線CTには明

らかなホットスポットが見られ,上記の推論どおりであ

る.このようにX線CTの分解能は悪くても,ECE-CTとは異なった情報が得られるのである.電子

温度の等高線は磁気面を表すので,この実験から鋸歯状

崩壊過程で再結合が確かに起きていることがわかった.

それならば,なぜ磁束変化が少ないのかが謎である.こ

れが,1986年以来MHD物理学者を悩ませ続けたパズ

ルである.

 細かなところを調べるのにはECE-CTが適してい

る.Fig.11にTFTRにおけるNBI加熱時に起きた周期

の長い鋸歯状波振動における全崩壊時のECE-CTを示

す[29].Fig.11(a)にホットスポットがトーラス内側にあ

(a)ECE(total)

Good curvature side

(b)ECE(difference)

53湘(D

譲 撒縄勢               難               4

Bad curvature side40

(c)ECE(perturbation)

         shot48470

ハヨ

3N

0

一40

220 R(cm)

 ノ蟹:講雛雛灘

  難萎◎.灘難

,z、

雛凝 、貰霧勇””- 嚢ン;{麟轟∫郵ウ’ 弱、

   ’鰹i蓑…萎雛籍萎i・ノ

、   愚綬窪、 、  、   ㌧ 贈 躾難聯・

1   2

,,

,b

I

ノノ

 ,一__、   3。36572

     、’             、

      、       、        、        、

、ノ

、、

、            ’ 、 陶一 ’

ノノ

300

Fig.11Comparison of the reconstructed ECE images when the hot spot is on the good curvature side and

   on the bad curvat幾re side.(a)The co“tour plot ofthe electron temperature profile;the contour step

   size is250eV,and the hatched region indicates71e=6-6.25keV.(b)The contour piot ofthe tem-

   perature difference;the contour step size is100eV and the hatched region indicates less than300

   eV.(c)The contour plot ofthe perturbation ofthe electron temperature;the contour step size is60

   eV.The dashed circles indicate(1)tれe mixing radius,(2)the i口versio口radius.The regions indicate

   (3)the hot spot,(4)the isIand,and(5)the cool region between the hot spot and the island.

1174

Page 18: 5.プラズマ揺動とCT計測 - jasosx.ils.uec.ac.jpjasosx.ils.uec.ac.jp/jspf/jspf_text/jspf1998/jspf1998_10/jspf1998_10-1158.pdf · 講 座 5.プラズマ揺動とCT計測

講座 5.プラズマ揺動とCT計測 長山

る時と外側にある時のECE-CTを示す.Fig.11(b)に式

(63)で定義した温度の差動成分を示す.これは熱の移動

を示す.ホットスポットにたまっていた熱が外の反転半

径と混合半径の間のリング状領域に移動している様子が

よくわかる.Fig.11(c)に式(62)で定義した温度の揺動成

分を示す.差動成分も揺動成分もどちらもホットスポッ

トがトーラス内側にある時は引っ込んでいるのに,ホッ

トスポットが外側にある時は外側に大きく張り出してい

る様子がよくわかる.このように変動成分だけ取り出し

て二次元表示することによって,全体図では見えないこ

とが見えてくる.ホットスポットとgニ1面の接触点を

X点と呼び,磁気島の中心を0点と呼ぶ.これらの像

を見ると,熱はトーラス外側のX点を通って内から外

へ逃げ,内側のX点は閉じているように思われる.

 全体像で面白い点は,ホットスポットが半径方向に伸

びた楕円形をしていること,磁気島が周囲より暖かいこ

と,ホットスポットと磁気島との間に溝があることであ

る.ホットスポットは磁気島の膨張圧力や〃zニ1キン

ク流によって外側へ押しつけられるので,理論的には角

度方向へ伸びていくはずである.

 別のショットを眺めてみる.Fig.12にTFTRにおけ

るICRF加熱時に起きた鋸歯状崩壊時のECE-CTを示

す[29].今度は磁気島は暖かくない.したがって,

Fig.11のように磁気島が暖かいことは本質的ではない.

ホットスポットは今度も半径方向に伸びた楕円形をして

いる.一方,ホットスポットそのものは小さくなってい

くのにそれを包む大きな〃z=1磁気面があることに気

がつく.磁気面の大きさは磁束の大きさに対応するので,

50Bad curvature side sho‡56421

パ…i

ε

N

0

一50

A 3.64304

C 3・64381E   \

3.64425

越    r    ■    ,    .

    甲    ,    ■    ■    ,    ,    ,    ■

5.6

Good curvature side50

0

一50

B 3.64325

緯 

D

3.64404 F 3.64448

麟     2=:::;雲    ド ロ    じ ロ コ じ ロ    ■,,  , ■, ,’ [

    ,    ■    ,    ,    ,    ,  keV

220 R(cm) 320

Fig.12Series of ECE images when theわot spot is on the bad and tわe good curvature sides duri湾g tれe slow

   sawtQot柄crash in ardCRH heated plasma.The contour step size is400eV。The numbers on the

   rigわtshoulderoftれefigures indicatethe reconstructiontime in second.Absence oftbe ECEcわanneI

   at月・=295cm makes a deformation拍the reconstructed ECE images.Tねe thlck co口tour indicates7乙

   ==5.2keV.The hatched region indicates7も=4.8-5.2keV、

1175

Page 19: 5.プラズマ揺動とCT計測 - jasosx.ils.uec.ac.jpjasosx.ils.uec.ac.jp/jspf/jspf_text/jspf1998/jspf1998_10/jspf1998_10-1158.pdf · 講 座 5.プラズマ揺動とCT計測

プラズマ・核融合学会誌 第74巻第10号  1998年10月

これは,磁束はそれほど減少しないというTEXTOR

の測定と対応する.あらためて,Fig。11(a)をながめて,

ホットスポットを包む大きな〃z=1磁気面を探すと,

磁気島の中心側の縁がそれに対応するようである.

 この実験結果を信用して外側のX点だけで内外の磁力

線の再結合が起きると仮定しよう[30].それなら磁束変

化はあまり起きないはずである.また,電子は光速に近

い速さで磁力線に沿って動いているので,接続された内

外の磁気面の温度は等しくなるが,はじめの再結合で生

じた温度とその次に起こった再結合で生じた温度が等し

い保証はない.g=1磁気面より外側で急に温度が低下

する分布であるなら,最初の再結合で生じた温度が一番

高く,後になるほど低くなるはずである.その結果,磁

気島の温度は周りより暖かくなる.これがFig.11(a)に

示した例であろう.逆に,外側の温度がなだらかに落ち,

中心部に向かっては急上昇するような温度分布の場合

は,最初の再結合で生じた温度が一番低く,後になるほ

ど高くなるはずである.これがFig.12に示した例であ

ろう.

 このように,ECE-CT測定によって鋸歯状崩壊のパ

ズルは解けた.次の疑間はこの局所的再結合を引き起こ

すメカニズムである.横長のホットスポットの形から,

バルーニングモードが引き起こしているのではないかと

思われるが確証はまだない.より精密な測定法の開発が

望まれる.

5、5 おわりに

 X線CTやECE-CTの登場によって,トカマクプラ

ズマのMHD不安定性の研究は非常に進歩した.X線

は重イオンが発光し,ECEは電子が発光するため,X

線画像とECE画像からは異なった情報が得られる.こ

の差を用いて鋸歯状波振動現象の研究が行われた[12].

高加熱プラズマでは,圧力駆動型不安定性がMHD現

象を支配するが,バルーニングモードに代表されるよう

にこれは局所化しやすく,かつ高次モードである.実際,

ECE-CTによってバルーニングモードは発見され[22,23],難間だった部分鋸歯状崩壊は高次モードに

よるものであることが見い出された[26].また,

ECE-CT画像は,局所的測定であるため,低次モード

の磁気島構造についても格段に鮮明である[25].

 現在のX線CT計測では,真空容器の中に超小型X

線検出器を設置し,角度の盲点なしにX線計測をする

方向である.このようなデータ欠損がない場合には従来

のフーリエ級数展開法を使用する必要はない.従来の級

数展開法では,特有のアーチファクトを取り除くことは

困難である.測定器の数は医療用のCTに近くなるの

で,フーリエ変換を利用した計算方法が使用されると思

われる.

 従来,ECE計測は赤道面だけの一次元計測であった.

そのため,上記のECE-CTは,プラズマの剛体回転を

仮定して行われた.トーラス内側と外側は測定されてい

るが,上下の情報はない.そのため,Z方向にECE計

測器を並べ,二次元的ECE計測を行うことが試みられ

ている[31].

 プラズマの拡散は古典的ではない.もし古典的であれ

ば核融合は極めて安価に行うことができる.そのためプ

ラズマの異常拡散の解明は,炉心プラズマ物理学の最重

要課題である.プラズマの異常拡散は微小不安定性ある

いは乱流が引き起こしていると考えられている.微小不

安定性を可視化することは,異常拡散の研究者の夢であ

る.ECEの二次元計測ができたら,プラズマ中に温度

変動を引き起こす微小不安定性や乱流が可視化可能であ

る.プラズマは導体であるため,マイクロ波はプラズマ

によって反射される.反射されるマイクロ波の周波数は,

電子密度によって一意的に決まる.プラズマ中に密度揺

動があれば,反射したマイクロ波にその揺動が反映され

る.したがって,反射マイクロ波の二次元計測ができた

一ら,プラズマ中の密度揺動を引き起こす微小不安定性や

乱流が可視化可能である.ECEと反射計の同時二次元

計測ができればさらに強力である.現在は,同じ領域か

ら反射されるマイクロ波と発光するECEを同時に測定

して,密度揺動と温度揺動の相関解析を行っている段階

である[32].

 プラズマにトモグラフィが導入されて20年が過ぎた

が,以上に述べたように画像解析の主たる活躍の場は

MHD不安定性の研究であった.炉心プラズマ物理学の

二大研究テーマが拡散とMHDであるから,今後は拡

散の研究でも活躍することが望まれる.そのためには画

像解析に適した計測器の開発がより必要である.揺動の

画像解析は本章に述べたよりももっと多くの実りがある

に違いない.

         参考文献

[1]岩井善典:CTスキャナ(コロナ社,東京,1979).

[2]N.R。Sauthoff,S.von Goeler and W.Stodiek,Nuc1.

  Fusion 18,1445 (1978);N.R.Sauthoff an(i S.von

  Goeler,IEEE Trans.Plasma Sci、PS-7,!41(1978).

[3]C.Janicki,R.Decoste an(l C.Simm,Phys.Rev.Lett.

1176

Page 20: 5.プラズマ揺動とCT計測 - jasosx.ils.uec.ac.jpjasosx.ils.uec.ac.jp/jspf/jspf_text/jspf1998/jspf1998_10/jspf1998_10-1158.pdf · 講 座 5.プラズマ揺動とCT計測

~~~i~

62, 3038 (1989).

L 4 1 I.H. Hutchinson, Principles of Plasma Diagnostics

(Cambridge University Press, Cambridge, 1987) .

L 5 1 Y. Nagayama. Jpn. J. Appl. Phys. 24, 787 (1985).

L 6 1 H. Takami, N. Iwama, S. Takamura and T. Tsukishi-

ma. Kakuyugo Kenkyu 56, 278 (1986).

L 7 1 H. Akaike, IEEE Trans. Autom. Control. AC-19, 78

(1974) .

[ 8 1 A.M. Cormack, J. Appl. Phys. 34, 2722 (1963) ; A.M.

Cormack. J. Appl. Phys. 35, 2908 (1964).

L 9 1 Y. Nagayama, J. Appl. Phys. 62, 2702 (1987).

[10] L. Wang and R.S. Granetz. Rev. Sci. Instrum. 62, 842

(1991) ; L. Wang and R.S. Granetz. Rev. Sci. Instrum.

62, 1115 (1991).

[1l] A.W. Edwards, D.J. Campbell, W.W. Engelhardt,

H.-U. Fahrbach. R.D. Gill, R.S. Granetz. S. Tsuji,

B.J.D. Tubbing, A. Weller. J. Wesson and D. Zasche,

Phys. Rev. Lett. 57, 210 (1986).

L12] Y. Nagayama, K.M. McGuire, M. Bitter, A. Cavallo,

E.D. Fredrickson. K.W. Hill, H. Hsuan, A. Janos, W.

Park. G. Taylor and M. Yamada. Phys. Rev. Lett. 67,

3527 (1991).

L13] Y. Nagayama and A.W. Edwards, Rev. Sci. Instrum.

63, 4757 (1992).

L14] Y. Nagayama. Rev. Sci. Instum. 65, 3415 (1994) .

[15] J.A. Snipes, D.J. Campbell, P.S. Hynes. T.C. Hender,

M. Hugon. P.J. Lomas, N.J. Lopes Cardozo, M.F.F.

Nave and F.C. Schuller, Nucl. Fusion 28, 1085 (1988) .

L16] S. Tsuii. Y. Nagayama. K. Kawahata, N. Noda and S.

Tanahashi, Nucl. Fusion 22, 1082 (1982) .

L17] R. Buchse, private communication.

L18] Y. Nagayama, R. BUchse, A. Cavallo, E.D. Fredrick-

son, A. Janos, K.M. McGuire, G. Kuo Petravic, C. Sule

and G. Taylor. Rev. Sci. Instrum. 61, 3265 (1990).

L19~ M.A. Dubois. A.L. Pecquet and C. Reverdin, Nucl.

Fusion 23, 147 (1983).

[20] S. Tsuji, Y. Nagayama, K. Miyamoto, K. Kawahata,

N. Noda and S. Tanahashi, Nucl. Fusion 25, 305

~~ ~7~,"*i-~,~J ~ CT ~fi~.U ~~'LLI (1985) .

LZl] K. Ikeda, Y. Nagayama, T. Aota, M. Ichimura. K.

Ishii, T. Ishijima, Y. Kiwamoto. A. Mase, T. Tokuza-

wa, N. Yamaguchi. M. Yoshikawa and T. Tamano, Phys. Rev. Lett. 78, 3872 (1997).

L22] Y. Nagayama, S.A. Sabbagh, J. Manickam. E.D. Fred-

rickson, M. Bell. R.V. Budny, A. Cavallo, A.C. Janos,

M.E. Mauel, K.M. McGuire, G.A. Navratil, G. Taylor

and M. Yamada, Phys. Rev. Lett. 69, 2376 (1992).

[23] Y. Nagayama, M. Yamada, S.A. Sabbagh, J. Manick-

am, E.D. Fredrickson, M. Bell, R.V. Budny, A. Caval-

10, A.C. Janos, M. Mauel, K.M. McGuire, G.A. Navratil

and G. Taylor, Phys. Fluids B 5, 2571 (1993).

L24] M. Yamada, F.M. Levinton, N. Pomphrey. R. Budny,

J. Manickam and Y. Nagayama, Phys. Plasmas l, 3269 (1994).

L25] Y. Nagayama. G. Taylor. E.D. Fredrickson, R.V. Bud-

ny, A.C. Janos, K.M. McGuire and M. Yamada, Phys.

Plasmas 3, 2631 (1996).

L26i Y. Nagayama, G. Taylor, M. Yamada, E.D. Fredrick-

son, A.C. Janos and K.M. McGuire, Nucl. Fusion 36,

521 (1996).

[27] B.B. Kadomtsev, Fiz. Plazmy l, 710 (1975) ; Sov. J.

Plasma Phys. l, 389 (1975).

[28] H. Soltwisch, Rev. Sci. Instrum. 59, 1599 (1988) ; H.

Soltwisch and H.R. Koslowski, Plasma Phys. Control.

Fusion 37, 667 (1995) ; H.R. Koslowski, H. Soltwisch

and W. Stodiek, Control. Fusion 38, 271 (1996) ; H.

Soltwisch and H.R. Koslowski, Control. Fusion 39,

341 (1997).

[29] Y, Nagayama, M. Yamada. W. Park, E.D. Fredrick-

son, A.C. Janos, K.M. McGuire and G. Taylor, Phys.

Plasmas 3, 1647 (1996).

L30] Y. Nagayama, J. Plasma. Fusion Res. 73, 712 (1997).

L3l] B.H. Deng et al., to be published in Rev. Sci. Instrum.

70 (1999).

[32] M. Hase, H.J. Hartfuss and M. Hirsch, to be published

in Rev. Sci. Instrum. 70 (1999).

1177