〒525-0056 滋賀県草津市笠山7-4-45 tel:077-562-1121 fax ......〒525-0056...

24
106 19.経費の負担について 【 交通費 】委託される児童の移送にかかる経費は、往復とも里親が負担する。 【 生活費 】委託される児童に要する生活諸費は、里親が負担する。 【 食 費 】委託される児童の食費相当分は、児童福祉施設が負担する。 【 里親手当 】「施設入所児童ホームステイ事業実施報告書(様式6)」に基づき… 児童養護施設等に在籍する児童:施設が支払う。 福祉型障害児入所施設に在籍する児童:中央子ども家庭相談センターが支払う。 【 施設機能強化推進費 】 県子ども・青少年局は、児童養護施設等が負担した経費を支払う。 20.注意事項 * 行政における予算執行上、4 月中にホームステイを利用することは出来ません。 中央子ども家庭相談センター (担当: 川副) 〒525-0056 滋賀県草津市笠山 7-4-45 tel:077-562-1121 fax:077-565-7235 社会福祉法人小鳩会 こばと子ども家庭支援センター (担当: 廣瀬・原) 〒520-0027 滋賀県大津市錦織 1-14-25 tel:077-522-2785 fax:077-522-8264 e-mail:[email protected] 滋賀県における里親支援の取り組み(資料)

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  • 106

    経費

    等の

    手続

    19

    .経

    費の

    負担

    につ

    いて

    【 交

    通費

    委託

    され

    る児

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    経費

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    往復

    とも

    里親

    が負

    担す

    る。

    【 生

    活費

    委託

    され

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    る生

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    費は

    、里

    親が

    負担

    する

    【 食

    委託

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    相当

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    、児

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    負担

    する

    【 里

    親手

    当 】「

    施設

    入所

    児童

    ホー

    ムス

    テイ

    事業

    実施

    報告

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    様式

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    児童

    養護

    施設

    等に

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    児童

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    福祉

    型障

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    入所

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    中央

    子ど

    も家

    庭相

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    ども

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    20

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    意事

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    イを

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    子ど

    も家

    庭相

    談セ

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    当: 川

    副)

    〒525-0056

    滋賀

    県草

    津市

    笠山

    7-4-45

    tel:

    077-562-1121

    fax:

    077-565-7235

    社会

    福祉

    法人

    小鳩

    こば

    と子

    ども

    家庭

    支援

    セン

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    (担

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    瀬・原

    〒520-0027

    滋賀

    県大

    津市

    錦織

    1-14-25

    tel:

    077-522-2785

    fax:

    077-522-8264

    e-m

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    bato

    kai.o

    r.jp

    滋賀県における里親支援の取り組み(資料)

  • 107

    2014/2/14 15:15

    里親

    支援

    機関

    と子

    ども

    家庭

    相談

    セン

    ター

    との

    役割

    分担

    ●事

    業の

    企画

    ・立

    案○

    事業

    の企

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    立案

    ◇里

    親へ

    の研

    里親

    委託

    等推

    進員

    の設

    置 ・

    里親

    委託

    等推

    進員

    の設

    置 ・

    認定

    研修

    (更

    新研

    修)

    の実

    ●里

    親候

    補者

    (未

    委託

    里親

    )○

    施設

    入所

    児童

    と里

    親の

    交流

    ◇認

    定・

    登録

    に関

    する

    業務

     の

    育成

     機

    会の

    設定

    里親

    認定

    り決

    定、

    通知

    未委

    託里

    親研

    修 ・

    ホー

    ムス

    テイ

    事業

    の調

    整 ・

    里親

    の登

    録、

    更新

    、取

    消申

    請の

    受理

    里親

    の受

    入意

    向の

    照会

    、把

    ◇委

    託に

    関す

    る業

    里親

    委託

    の対

    象と

    なる

    子ど

    もの

    特定

    子ど

    もの

    アセ

    スメ

    ント

    子ど

    もに

    最も

    適し

    た委

    託里

    親の

    評価

    、選

    援助

    方針

    会議

    にお

    ける

    里親

    委託

    の決

    自立

    支援

    計画

    の策

    ●里

    親同

    士の

    支援

    ○里

    親家

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    問指

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    ◇里

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    家事

    等支

    援員

    派遣

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    育相

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    自立

    支援

    計画

    の実

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    ウン

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    ア指

    導員

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    モニ

    タリ

    ング

    ○里

    親家

    庭の

    一時

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    休憩

    実親

    (保

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    )と

    の関

    係調

    整等

     ・

    レス

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    ケア

    の調

    ●里

    親制

    度の

    普及

    啓発

    ◇里

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    解除

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    フォ

    ーラ

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    実施

    等 ・

    措置

    期間

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    る委

    託解

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    決定

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    等に

    よる

    委託

    解除

    、措

    置変

    更等

    の決

    里親

    登録

    申請

    委託

    解除

    里親

    の認

    定・

    登録

    里親

    委託

    里親

    によ

    る里

    子養

    育の

    支援

    子ど

    も家

    庭相

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    親連

    合会

    (福)小

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    当事

    者に

    よる

    同じ

    立場

    から

    の支

    援施

    設の

    専門

    性を

    生か

    した

    養育

    支援

    滋賀県における里親支援の取り組み(資料)

  • 108

    里親

    支援

    事業

    委託先:社会福祉法人小鳩会

    ●事業の企画・実施

    里親委託等推進員の設置

    ●委託里親・児童の訪問支援

    (本

    体の

    里親

    専門

    相談

    員と一

    体的

    に実

    施)

    里親委託児童心理的ケア指導員の設置

    ●委託中の里親支援

    レスパイト・ケアの調整

    施設入所児童ホームステイ事業の調整

    家事等支援員派遣/ピ

    ア・カウンセリング

    ●未委託里親を対象とした支援

    未委託里親研修

    ●一般の方を対象とした里親制度の啓発

    地域フォーラムの実施等

    里親

    支援

    事業

    委託先:社会福祉法人小鳩会

    ●事業の企画・実施

    里親委託等推進員の設置

    ●養育計画作成支援

    ●委託里親・児童の訪問支援

    (本体の里親専門相談員と一体的に実施)

    里親委託児童心理的ケア指導員の設置

    ●委託中の里親支援

    レスパイト・ケアの調整

    施設入所児童ホームステイ事業の調整

    新・重

    里親

    支援

    強化

    事業

    委託先:滋賀県里親連合会

    ●事業の企画・実施

    里親委託等推進員の設置

    ●委

    託中

    の里

    親支

    援(里

    親同

    士の

    支援

    )家事等支援員派遣

    /ピア・カウンセリング

    ●未

    委託

    里親

    を対

    象とした支

    援未委託里親研修

    ●一

    般の

    方を対

    象とした里

    親制

    度の

    啓発

    地域フォーラムの実施等

    施設

    の専

    門性

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    育支

    当事

    者による同

    じ立

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    らの

    支援

    施設等との調整

    を要するもの

    里親同士の

    交流による

    支援等

    平成24年度

    平成25年度

    <課題>

    ①今後増加が予想される要保護児童の受入体制の整備。

    → 養

    育里

    親登

    録の

    増加

    のた

    め、

    より

    効果

    的な

    里親

    制度

    の周

    知・

    啓発

    が必

    ②里親の孤立化の防止や里親委託の拡大のため、里親同士

    の相互交流の促進・未委託里親の養育技術の向上が課題。

    → 里

    親同

    士に

    よる

    支援

    の重

    要性

    ③日々様々な課題に直面する里親家庭の多様な悩みを汲み

    取り、支援に繋げるための定期的な家庭訪問が求められる。

    → 里

    親家

    庭に

    対す

    る訪

    問支

    援の

    更な

    る充

    実が

    必要

    里親支援を包括的に実施

    滋賀県における里親支援の取り組み(資料)

  • 109

    東京都における里親支援の取り組み~二葉乳児院の取り組みを中心に~

    3.里親支援機関の活動

    1

    ●概要●

    東京都では児童相談センター(中央児童相談所)にて、平成 20 年度に里親支援機関事業のモ

    デル事業を二葉乳児院に委託して開始した。平成 24 年度からは都内 11 の児童相談所全域で、4

    つの民間団体(乳児院、職能団体、NPO法人)に里親支援機関事業を委託している。

    二葉乳児院は 4か所の児童相談所で委託を受けており、その特徴は専門性の高い、そして民間

    ならではの柔軟な対応にある。4名の里親委託等推進員は傾聴やともに考えるという姿勢に加え、

    里親からの相談内容に応じて、他の社会的資源と繋げるソーシャルワークを行っている。また、

    月 1回のグループ・スーパーヴィジョンにおいて、実践の振り返りと課題の整理をするとともに、

    お互いの専門性から学び、次への取り組みに視点を向けることに役立てている。

    1.東京都の地域特性と社会的養護の資源

    日本の首都である東京都の人口は 1300 万人を超え、日本の総人口の 1 割強に当たる。児童人

    口はおよそ 181万人で、児童の人口比率は 13.7である。

    東京都で社会的養護を必要とする児童数は約 4,000 人。そのうち、「家庭養護」である里親家

    東京都では、「家庭的養護」として、児童養護施設等の小規模化を進めている。児童養護施設

    に在籍している子ども 3,095人のうち、児童養護施設本体で生活している子どもは 2,321人、グ

    ループホーム(129か所)で暮らしている子どもは 774人(約 25%)である。

    児童相談所数は 11か所。里親関係の団体としては「NPO法人東京養育家庭の会」があり、児童

    相談所ごとに支部がある。

    庭及びファミリーホームで暮らす子どもは、平成 24 年度末においては 445 人(詳しくは P.112

    「東京都の里親登録数及び委託数」の表を参照)。東京都の里親等委託率は 11.2%である(平成

    25年 3月 1日現在)。

  • 1102

    東京都の基礎情報

    人 口 1,322 万 2,760 人(外国人登録人口を除く/H25年1月 1日現在)

    児童の人口(0~17歳) 180 万 6,473 人(H25 年 1月 1日現在)

    児童の人口比率 13.7%(H25年 1月 1日現在)

    面 積 2,188.67 ㎢(23区、26市、5町、8村/H25 年 1月 1日現在)

    主管課 東京都福祉保健局少子対策部育成支援課里親係(8人)【注 1】

    児童相談所数 11 か所

    児童福祉司の数 196 人(H25年度)

    養育家庭専門員(非常勤) 15 人【注 2】

    里親支援機関の数 4団体

    里親委託等推進員の配置数 11 人

    児童養護施設数

    都立施設(東京都社会福祉事業団に委託)6か所

    民間施設 56か所(旧虚弱児施設含む) 計 62か所

    在籍者 合計 3,095 人(都立施設 406 人、民間施設 2,689 人)

    そのうち、養護児童グループホームは 129 ホーム(774人)【注 3】、

    専門機能強化型児童養護施設は 38施設【注 4】

    (定員 3,211 人/入所率 96.4%)

    乳児院数 10 か所(在籍者 441 人/定員 491人/入所率 89.1%)

    情緒障害児短期治療施設数 0か所

    里親支援専門相談員配置施設 31 施設

    児童自立支援施設 2か所(在籍者 171 人/定員 252 人)

    自立援助ホーム 18 か所(現員 83人/定員 120 人)

    母子生活支援施設 36 か所(入所 559 世帯/定員 721世帯)

    一時保護所 6か所(定員 192 人) なお、乳児は乳児院に一時保護委託

    里親会 特定非営利活動法人 東京養育家庭の会【注 5】

    (日付のないものは、平成 25年 3月 31日現在のデータ)

    【注1】福祉保健局少子社会対策部育成支援課里親係では、里親制度の推進のための総合調整・普及啓発、

    里親開拓に関する企画立案、里親の認定及び登録、里親に対する経費の支出などを行う。平成 24年度から

    は旧児童相談センター里親担当と組織統合し、新規家庭調査、養育家庭・専門養育家庭と子どもの組み合

    わせ・交流に関する調整・里親制度の運用についても一体的・効果的に行っている。

    【注2】「養育家庭専門員」は、養育家庭担当児童福祉司と共に地域内の養育家庭からの相談に応じ、家庭

    状況を把握するほか、養育家庭同士の相互交流を実施している。

    【注3】養護児童グループホーム:児童養護施設入所児童のうち、地域の中で家庭的雰囲気のもと、施設

    から独立した家屋において、6 人程度の児童を養育している。平成 24 年度末において、129 ホーム(定員

    778 人)を設置している。

    【注4】専門機能強化型児童養護施設:治療的・専門的ケアが実施できる体制を整備し、課題を抱えた児

    童の入所の増加に対応するとともに、児童の自立促進を図る。

  • 111

    東京都における里親支援の取り組み

    3

    2. 東京都の里親支援

    1)東京都の里親支援の特徴

    東京都の特徴としては、独自の制度展開と里親支援の資源の多さが挙げられる。

    昭和 48 年、東京都は独自の「養育家庭制度」を発足させた。制度の目的は「養護に欠ける児

    童に、より個別的な処遇を与えるため、家庭での養育が望ましい児童を、期間を決めて里親に委

    託し、専門性を持った養護施設との協働のもとで養育する」ことであった。東京都は、当時から

    養子縁組を前提とせずに委託児童を育てる里親を「養育家庭」と定義づけ(現在の国の養育里親)

    ていた(現在「ほっとファミリー」の愛称で推進)。

    あわせて、「養育家庭センター」を都が指定した児童養護施設・乳児院に敷設し、養育家庭(養

    育里親、この稿では「養育家庭」と表記)になる受付・申し込みや養育家庭への支援を担う機関

    とし、ワーカーを配置した。養育家庭センターは当初4か所だったが、その後 9か所まで増設さ

    れた。平成 14 年 3 月、都の方針変更により養育家庭センターは廃止され、里親支援は児童相談

    所が直接行うこととなった。

    平成 16年度から、地域の養育家庭支援体制を強化するために「養育家庭専門員」(非常勤)が

    各児童相談所に配置された(東京都の単独事業)。その後、平成 20年度から里親支援機関事業の

    モデル事業を実施し、平成 24 年度からは全都において里親支援機関事業を展開している(P.113

    参照)。また、委託児童への児童心理司の関わりの確保、親担当児童相談所のコーディネイト機

    能の強化、自立支援計画の改定など、養育家庭への支援体制を充実させた。里親支援専門相談員

    も都内の児童養護施設、乳児院に配置されており、平成 25年度においては 31施設となっている。

    【注】東京都の里親制度

    身近な地域で短期間の養育ニーズに応える「養育家庭(短期条件付き)」、レスパイト・ケア対象児童を

    専門に養育する「養育家庭(レスパイト限定)」も養育家庭のひとつの形態として制度化している。各児童

    相談所には、地域の子供担当者と別に里親担当者を置き、地域の子供担当や他の児童相談所の子供担当と

    役割を分担している。

    【注5】特定非営利活動法人 東京養育家庭の会:東京都の養育家庭とその関係者で運営する。養育家庭

    制度の推進、地域社会での理解増進に取り組む。平成 17年度から、里親に対する研修、養育家庭の交流会、

    養育家庭の身近な悩みに対してアドバイスを行うなどの事業を東京都から委託されている。事務所は子供

    家庭総合センターのなかにある。

    【注6】東京都には児童家庭支援センターがなく、地域との連携のために「子供家庭支援センター」(東京

    都単独の事業)がある。18歳未満の子どもや子育て家庭のあらゆる相談に応じるほか、ショートステイ、一

    時預かりなど在宅サービスの提供やケース援助、サークル支援やボランティア育成等を行っている。地域

    の子育てに関する情報も多い。平成 24年末で実施しているのは、23区、26市、10町村(計 59センター)。

  • 1124

    ◆東京都における里親支援体制図◆

    【注】矢印は、「連携」と「相談支援」を表わす。

    ※参考 「東京都における里親制度の現状について」平成 25年 5月 6日 東京都福祉保健局 少子社会

    対策部育成支援課

    東京養育家庭の会

    支部(11)

    養育家庭居住地の児童相

    談所(一義的相談窓口)

    【親担当児童福祉司、養

    育家庭専門員】

    里親支援機関

    【里親委託等推進

    員】

    児童相談所(親担当)

    里親家庭・委託児童

    児童の措置児童相談

    所【子供担当児童福祉

    司、児童心理司】

    東京養育家庭の会

    東京都育成支援課

    【制度運営・支援

    総括】

    児童養護施設・

    乳児院

    【里親支援専門

    相談員】

    地域の関係機関

    (子供家庭支援センター

    学校、保育所、幼稚園等)

    児童相談所(子供担当)

    東京都の里親登録数及び委託数

    養育家庭等登録及び委託状況

    (平成 25年 3月 31日現在・ファミリーホームは平成 25年 3月 1日現在)

    区 分 登録家庭数 委託家庭数 委託児童数(人)

    養育家庭 456 267 352

    専門養育家庭 15 2 2

    養子縁組里親 178 17 17

    親族里親 3 3 3

    ファミリーホーム - 14 71(定員 84)

    里親等委託率 11.2%

    資料:東京都福祉保健局少子社会対策部育成支援課

  • 113

    東京都における里親支援の取り組み

    5

    里親支援機関の里親委託等推進員は、里親担当が所属する児童相談所に配置されている。「子

    供担当」と呼ばれる措置児童の担当児童福祉司は、別の児童相談所にいることが多い(同じ児童

    相談所に親担当と子供担当がいることもある)。

    児童相談所、里親支援機関、乳児院・児童養護施設、地域の関係機関、里親会、東京都のそれ

    ぞれの位置づけや役割については、P.128資料「各機関における養育家庭支援(作成・育成支援

    課)」参照。

    2)里親支援のモデル事業

    平成 21 年 2 月、東京都は「里親支援機関事業」をモデル事業として開始した。東京都の児童

    相談センター(中央児童相談所にあたる)に「里親委託等推進員」を新たに設置し、児童相談セ

    ンター管内(9 区及び島しょ)の養育家庭、専門養育家庭、親族里親、養子縁組里親、ファミリ

    ーホームを対象に支援を行うというものである。これを二葉乳児院が受託、施設職員より里親委

    託等推進員を選出し、業務にあたることとなった。

    ●モデル事業の内容

    平成 20年度から二葉乳児院に委託されたモデル事業では、1名の里親委託等推進員が児童相談

    センター内に勤務し、管内の里親支援に係る業務として里親委託等推進委員会の運営や養育体験、

    里親による相互交流事業などを実施してきた。

    これらの活動を通じて、児童相談所との信頼関係及び連携を深めていく中、平成 22 年度から

    は里親支援をより充実させるため、里親委託等推進員による訪問支援を開始した。

    3)平成 24年度から里親支援機関事業を全都で実施

    里親支援機関事業の目的は、民間団体の持つノウハウを活かして、里親制度の普及促進や里親

    家庭への訪問等による相談支援、里親委託を推進するなど業務を総合的に実施することである。

    モデル事業での効果検証を経て、東京都は平成 23年に都内 3か所に拡大し、3団体に事業を委託。

    平成 24 年 4 月からは全所で里親支援機関事業を開始した。事業を委託されたのは 4 団体で、各

    団体から都内 11か所の児童相談所に里親委託等推進員(計 11人)を派遣している。定期巡回訪

    問、育児家事援助者派遣、夜間土日養育相談を新たに加え、訪問事業を中心とした支援体制を展

    開している。

    ●里親支援機関4団体の内訳

    里親支援機関事業を受託しているのは、二葉乳児院のほか、一般社団法人東京臨床心理士会、

    NPO 法人こども福祉研究所、NPO 法人キーアセットの 4 団体である。通常はそれぞれが担当する

    児童相談所にて業務を行い、事業内容に応じて、団体内の合同企画や、他団体と連携しての企画

    等も実施している。4 団体は月に 1 度、都の担当者同席のもと、連絡会議を持ち、情報の共有や

    課題の整理を行っている。各団体の担当は以下の表のとおり。二葉乳児院は東部ブロックの 4児

    童相談所を担当している。

  • 1146

    【注】江東児童相談所は、平成 25年 4月に江東区に移転、それまで「墨田児童相談所」だった。

    昭島市

    あきる野市

    稲城市

    青梅市

    清瀬市

    国立市

    小金井市国分寺市

    小平市

    狛江市

    立川市

    多摩市

    調布市八王子市

    羽村市

    東久留米市

    東村山市

    東大和市

    日野市府中市

    福生市

    町田市

    三鷹市

    武蔵野市

    武蔵村山市

    西東京市

    足立区

    荒川区

    板橋区

    江戸川区

    大田区

    葛飾区

    北区

    江東区

    品川区

    渋谷区

    新宿区杉並区

    墨田区

    世田谷区

    台東区

    中央区

    千代田区

    豊島区

    中野区

    練馬区

    文京区

    港区

    目黒区

    奥多摩町

    日の出町

    檜原村

    瑞穂町

    昭島市

    あきる野市

    稲城市

    青梅市

    清瀬市

    国立市

    小金井市国分寺市

    小平市

    狛江市

    立川市

    多摩市

    調布市八王子市

    羽村市

    東久留米市

    東村山市

    東大和市

    日野市府中市

    福生市

    町田市

    三鷹市

    武蔵野市

    武蔵村山市

    西東京市

    足立区

    荒川区

    板橋区

    江戸川区

    大田区

    葛飾区

    北区

    江東区

    品川区

    渋谷区

    新宿区杉並区

    墨田区

    世田谷区

    台東区

    中央区

    千代田区

    豊島区

    中野区

    練馬区

    文京区

    港区

    目黒区

    奥多摩町

    日の出町

    檜原村

    瑞穂町

    足立児童相談所

    墨田児童相談所

    品川児童相談所

    世田谷児童相談所多摩児童相談所

    八王子児童相談所

    立川児童相談所

    小平児童相談所

    児童相談センター

    杉並児童相談所

    北児童相談所

    ※資料提供 東京都都福祉保健局少子社会対策部育成支援課

    3. 二葉乳児院の里親支援機関事業

    1)二葉乳児院の里親支援の沿革

    二葉乳児院は、社会福祉法人二葉保育園が運営する乳児院である。

    二葉保育園は、明治 33(1900)年に設立され、現在は総合児童福祉施設として、二葉南元保育

    園と二葉くすのき保育園、二葉乳児院(定員 40 人)、児童養護施設である二葉学園(定員 52人)

    と二葉むさしが丘学園(定員 61 人)を運営している。

    昭和 61 年に二葉乳児院が「養育家庭センター」を設置して以来、30 年以上に渡る里親支援の

    歴史を持つ。都内の乳児院で養育家庭センターを設置したのは、二葉乳児院だけであった。開設

    から 16年後の平成 14年 3月、養育家庭センターは廃止されたが、二葉乳児院ではその後も、補

    助金などを活用して、様々な形で里親支援を行っていた。

    平成 17年、18年には、「東京都家庭的養護推進モデル事業」を受託し、その事業のひとつとし

    ブロック 里親支援機関 担当児童相談所立川児童相談所小平児童相談所八王子児童相談所多摩児童相談所品川児童相談所世田谷児童相談所杉並児童相談所児童相談センター江東児童相談所北児童相談所足立児童相談所

    多摩北部ブロック (特非)キーアセット

    東部ブロック (社福)二葉保育園 二葉乳児院

    中部ブロック (一社)東京臨床心理士会

    多摩南部ブロック (特非)こども福祉研究所

  • 115

    東京都における里親支援の取り組み

    7

    て、乳幼児を受託する里親の養育スキルの向上を目的とした里親勉強会テキスト『すくすく』『の

    びのび』を作成し、平成 19 年 3 月に『乳児院による里親支援マニュアル』を作成・配布した。

    また、二葉保育園独自のものとして、『里親養育テキスト――里親家庭での心理的親子関係を作

    るには』を出している。

    2)二葉乳児院の里親支援体制

    二葉乳児院は、4 か所の児童相談所に 4 人の里親委託等推進員を送っている。二葉乳児院の里

    親支援の特徴は、月 1回の外部スーパーヴァイザーによるスーパーヴィジョン体制の確保や個々

    の里親委託等推進員の資格や職歴などに基づく専門性の高さ、そして民間ならではの柔軟な対応

    である。児童相談所の職員とは連携しつつ、児童相談所とは少し違う立場とスタンスで、里親と

    児童相談所と橋渡しをしながら里親に寄り添う傾聴やともに考える姿勢でアプローチすること

    に加え、里親からの相談内容に応じて、他の社会的資源と繋げるソーシャルワークの展開を行っ

    ている。「長く勤めて、里親と児童相談所の接着剤になってほしい」という施設長の考えにより、

    4 人とも常勤職員である。4 人の経歴は、臨床心理士、社会福祉士、スクールカウンセラー、児

    童養護施設の児童指導員及びファミリーソーシャルワーカー、婦人相談員、乳児院や児童養護施

    設の心理療法担当職員、児童相談所の虐待対応相談員など多岐に渡っており、様々な分野におけ

    る相談援助の経験がある。

    ・里親委託等推進員(A):平成 17 年二葉乳児院に里親担当ケースワーカー(非常勤)として入

    職。心理療法担当職員(常勤)を経て、平成 20年 2月より現職(常勤)。

    ・里親委託等推進員(B):平成 23年 8月より平成 24年 3月末まで、現職(非常勤)として、二

    葉乳児院に入職。平成 24年 4月より常勤採用。

    ・里親委託等推進員(C):平成 22 年 3 月より、二葉むさしが丘学園に心理職(常勤)として入

    職、平成 24年4月に二葉乳児院に異動となり、現職。

    ・里親委託等推進員(D):平成 24年 4月より現職(常勤)として、二葉乳児院に入職。

    里親委託等推進員の 4 人は、週1回二葉乳児院に戻り、打ち合わせや個々の業務の振り返り、

    合同での研修やサロンの企画・運営を行っている。それぞれの専門性を活かし、里親のニーズに

    合わせた企画を行っている。

  • 1168

    3)二葉乳児院の担当地域(東部ブロック)の人口と面積

    二葉乳児院が担当する4つの児童相談所管内の人口と面積は以下の表の通りである。

    児童

    相談所

    区 人口(人) 面積

    (㎢)

    児童

    相談所

    区 人口

    (人)

    面積

    (㎢)

    児童相

    談セン

    ター

    千代田区 48,839 11.64 北児童

    相談所

    北区 333,850 20.59

    中央区 130,073 10.18 荒川区 205,085 10.20

    港区 209,641 20.34 板橋区 536,766 32.17

    新宿区 327,988 18.23 計 1,075,701 62.96

    文京区 209,716 11.31 江東(元墨田)

    児童相談所

    墨田区 249,499 13.75

    台東区 180,514 10.08 江東区 469,691 39.99

    渋谷区 209,619 15.11 江戸川区 673,809 49.86

    豊島区 287,907 13.01 計 1,392,999 103.60

    練馬区 717,405 48.16 足立児童相談

    足立区 685,152 53.20

    島しょ 27,335 405.78 葛飾区 440,052 34.84

    計 2,349,037 563.84 計 1,125,204 88.04

    (平成 25年 1月 1日現在)

    4)二葉乳児院における里親支援の基本的な姿勢

    乳児院など施設で生活する子どもたちのこれからを繋ぐ、「変わらない特別な人」として里親

    を捉え、切れ目のない養育のバトンを渡せるよう心掛けている。また、委託後も、子育ての伴走

    者となるように考えている。そのような二葉乳児院の姿勢を、里親支援機関事業においても大切

    にしている。

    4. 平成 24年度の里親支援機関事業の実施内容

    二葉乳児院では事業内容を説明するものとして「東京都 里親支援機関事業について」のパン

    フレットを作成し、配布している(P.129資料参照)。

    1)新規委託時フォローアップ(家庭訪問)

    対象:子どもを新しく迎えた養育家庭(里親移行型ファミリーホーム含む)、専門養育家庭、

    親族里親及び養子縁組里親

    目的:交流中(長期外泊開始)から委託後半年間を目安に重点的に家庭訪問を実施。委託後 1

    か月までは 2週間に 1回程度、以降1か月に1回程度の家庭訪問を里親委託等推進員が

    実施。

  • 117

    東京都における里親支援の取り組み

    9

    成果:委託当初の子どもの状態に合わせた支援やサービスの調整をすることが可能。また、委

    託当初より、子どもや里親に関わることによって、関係がとりやすく、子どもの状況や

    変化も理解できるため、その後の相談に繋がりやすい。

    課題:委託後まもなくは、児童相談所職員や里親委託等推進員による訪問も多く、里親側とし

    ては、何の相談を誰にすればいいのか混乱してしまう。これに対しては、役割分担につ

    いて、その都度説明しているが、受けた相談は、一旦受け止め、課題の整理を行い、支

    援者同士で役割の分担するようにしている。必要に応じて、関係機関に引き継ぐ場合も

    ある。

    2)里親サポートプログラム(里親カウンセリング)

    対象:希望する委託中の養育家庭、専門養育家庭、親族里親及び養子縁組里親。

    目的:里親が子どもの成長に伴い直面する課題について、必要に応じて、里親委託等推進員が

    集中的に話を聞き、課題を整理し、対応を一緒に考える。里親委託等推進員が希望家庭

    を訪問するほか、児童相談所等にてプログラムを実施することもある。

    成果:定期巡回で訪問した里親家庭の状況により、里親サポートプログラムへ移行する場合も

    ある。里親からの相談は、従来、児童相談所が受けてきたが、継続集中的な相談援助と

    なると、職員側の時間的制約のなかで、難しい場合も多くみられた。それを補完する役

    割を担うことができている。

    課題:子どもに対する心理療法等を担当するのは、里親支援機関事業ではなく、児童相談所の

    子供担当の児童心理司となっているため、話を聴き、整理をすることだけで解決しない

    場合には、児童相談所との連携が必要となってくる。管轄の児童相談所が違うことや児

    童相談所に席があっても他機関であるということもあり、里親の了承を得て、児童相談

    所へ報告するなどの手続きが必要となるため、子どもの専門的ケアに、即応的な対応が

    できていない。しかし、以前よりも、児童相談所担当者との連携の流れができてきてい

    るので、連携がスムーズになってきている。

    3)定期巡回訪問

    対象:委託中の全ての養育家庭、専門養育家庭、親族里親及び養子縁組里親

    目的:里親委託等推進員が、半年に 1回以上定期的に家庭訪問し、よりきめ細やかな継続した

    支援を行う。

    成果:委託中の全ての家庭を訪問することが可能となり、長期に委託中で、それほど丁寧に経

    過を追っていなかった家庭に対しても、定期的に状況把握を行う機会を得ることができ

    る。それによって、緊急ではないが、継続的な課題を抱えている里親家庭に対して、必

    要に合わせた情報提供や、課題の整理を行うことができる。また、定期的に必ず訪問す

    課題:

    ることにより、少しずつ関係を深めることが可能となり、必要な相談に繋がる基礎をつ

    くれてきていると考えられる。

    経験豊富な里親家族にとっては、「いまさら?」と受け止める里親もいる。その部分を打

  • 11810

    4)里親による訪問支援

    対象:希望する養育家庭、専門養育家庭、親族里親及び養子縁組里親

    目的:ピアサポート。里親として養育経験のある人から希望者を募り、研修後、「里親訪問支

    援員」として登録。里親委託等推進員は、里親家庭からの訪問希望に応じ、「里親訪問

    支援員」を派遣する。マッチングや調整、「里親訪問支援員」のスーパーヴィジョンを

    行う。

    成果:利用件数は少ないものの、利用者からは、「同じ立場の人に話を聞いてもらえてよかっ

    た」「言ってもらった言葉でほっとした」という声も多い。特別養子縁組里親同志、子

    どもに発達の課題がある人同志、自立させた経験のある「里親訪問支援員」と話をした

    いなどのニーズもあり、ニーズに応じた対応ができている。

    課題:利用実績は多くない。里親支援機関事業だけでなく、児童相談所の訪問回数もここ数年

    増えており、また、サロンの充実も図られていることなどが要因と考えられる。

    5)育児家事援助者派遣

    対象:希望する委託中の養育家庭(ファミリーホーム除く)、専門養育家庭、親族里親及び養

    子縁組里親。

    目的:育児(保育・送迎)や家事の援助者を派遣して、里親を援助する。里親委託等推進員は

    その広報及び申し込みの受け付け、援助者との連絡調整を行う。

    内容:「育児」は、原則小学生までの委託児童のいる里親家庭が外出等の理由により保育等が

    必要な場合に活用できる。「家事」は、委託後まもない場合や養育者の入院等、家事支

    援が必要な場合に、児童相談所からの提案により、利用できる。

    成果:委託当初の養育負担の中で、短時間でも保育してもらうことで、心理的な負担軽減に繋

    がっている。また、複数委託を受けている場合には、行事等の際の保育として活用され

    ている。

    課題:「家事」の利用は、二葉乳児院の担当管内では 0 件、都内でもそれほど多くはないが、

    子どもとの関係を集中的につくる時期や、里親のケガ等で家事が困難な場合に利用可能

    であるなど有用性は認められる。「育児」や「家事」の対象をどの範囲までとするのか

    など、事業自体が始動したばかりのため、その都度、個々の事情を踏まえながら、援助

    者や都と協議して派遣調整を行っている段階である。里親家庭の役割を損なわず、しか

    し、里親家庭の日々の生活を支えられるような枠組みと整理が必要と考えている。

    開しながら、訪問を継続し、関係を繋いでいくことが求められる。里親支援機関事業の

    取り組みについて、独自にパンフレットを説明し、提供できるサービス等を伝えながら、

    日々の様子を聞き、ニーズに合わせたサポートができるよう心掛けることによって、関

    係が深まるよう取り組んでいる。

  • 119

    東京都における里親支援の取り組み

    11

    6)学習ボランティア開拓・派遣事業

    対象:養育家庭、専門養育家庭、親族里親で受託中の児童

    目的:子どもたちの学習補助や遊び相手や話し相手となることで、家族や学校等の友人とはま

    た違う立場のお兄さんお姉さん的な人との関わりの機会をつくる。学習ボランティアの

    派遣調整については、里親支援機関事業導入以前から、児童相談所単位で実施していた

    が、ボランティア開拓やコーディネイト等の業務を担うことが難しい状況であったため、

    「学習ボランティアの開拓・登録および派遣調整」の部分を里親支援機関事業が主に担

    当することとなった。

    募集方法:大学や専門学校等の講義の際にチラシを配布し募集したほか、都や区のボランティ

    ア市民活動センターで配布。また、大学等のボランティアサークルに募集をかけてい

    る。

    成果:それぞれの子どもの年齢や状況に合わせて、学習ボランティアを選定。子どもの話し相

    手、相談相手になるほか、高校生にとっては、自立後、進学後のモデルにもなっている。

    課題:派遣希望家庭が増えていることから、ボランティアの数が足りていない。また、里親制

    度への理解や守秘義務等の説明を先にする必要がある。派遣後も、定期的に情報交換す

    ることで、ボランティアが子どもとの関係で追い込まれないよう支援し、長く継続でき

    るよう対応することが必要。

    7)新規開拓・普及啓発

    目的:里親家庭の制度についての認知がまだ低いこと、子どもの個々のニーズに合わせた里親

    家庭を選定するには、里親家庭数が少ないことから、地域で生活をする里親家庭への理

    解を促し、里親と子どもを支える人が増えること、里親家庭の登録数が増えることを目

    的としている。

    ① PRチラシ(地域配布用普及啓発チラシ)とともにグッズ(風船、付箋、シール、クリ

    アファイル)を配布。担当地区の地域まつりや子育て関連のイベント等でも出展し、広

    報を実施。また、里親支援専門相談員が配置されている施設と連携して、チラシや広報

    物の配布等を行っている。

    ② 出前講座「里親制度と里親支援」

    内容:希望の場所(原則として東京都内)に里親委託等推進員が出向き、「里親になるに

    は?」「里親と里親家庭の子どもを支える」「社会的養護と家庭養護」等について話す。

    30分~2時間程度。必要に応じて、事前の打ち合わせで内容や進め方を調整する。

    ③ 養育家庭体験発表会の運営協力

    東京都では毎年、10月、11月の里親月間を中心に、関係区市町村と協力し、養育家庭で

    の子育て体験を聞くことができる「養育家庭体験発表会」を都内各地で開催している。

  • 12012

    平成 25年度は 9月~12月まで都内 51 か所で開催。

    8)夜間土日電話養育相談

    目的:里親が安心して養育することができるように、児童相談所が開所していない夜間及び休

    日に電話による相談を行っている。

    方法:夜間(17 時 45 分~22 時)は毎日、土・日・祝は 10 時~22 時まで実施。4 つの支援機

    関が交代で電話相談を受け付けている。二葉乳児院の担当は火・金・土の夜間。

    成果:子ども個人のケースワークに関わることなど具体的な対応が必要な場合には、電話相談

    では十分な対応は難しい。この場合、相談しようとした思いに寄り添いながら、丁寧に

    話を聴いたうえで、児童相談所の担当者へ相談するように伝えている。

    課題:匿名だと、実際の里親子の状況が把握しきれず、対応が難しく、役割が果たせていない

    と感じることもある。しかし、特定の相談員が、決まった曜日にそこに居てくれると思

    うことで、「いつでも相談できる」「その日まで、頑張ろうと思える」と言った里親がお

    り、励まされた。4 つの支援機関が輪番で行っているため、時間や曜日によって電話番

    号が異なっており、里親への周知が課題である。

    9)里親委託等推進委員会の運営事務

    目的:児童相談所ごとに里親委託等推進員委員会を設置。その運営事務を行う。業務内容は、

    委員会の日程調整、開催通知や資料等の準備、会場設営等で、児童相談所と協議の上で

    行っている。委員は児童相談所職員、有識者、里親、関係機関、里親委託等推進員等で、

    それぞれの地域に即した里親普及啓発等の取り組みについて協議し、里親の委託促進と

    里親家庭数の増加を目指す。

    方法:児童相談所ごとに、里親支援及び普及啓発に関する課題を整理し、それについて協議し

    ていく。北児童相談所、足立児童相談所では、地域の関係機関との連携に取り組んでお

    り、江東児童相談所(旧墨田児童相談所)では、里親支援専門相談員との連携の取り方

    などについて取り組んでいる。また、児童相談センターでは、乳幼児の委託促進に取り

    組み、乳児院入所児童に対する委託促進のあり方を、児童福祉司や乳児院の里親支援専

    門相談員や家庭支援専門相談員、学識経験者、里親等の委員で協議している。

    5. 東部ブロック合同事業

    東部ブロック合同事業は、二葉乳児院の里親委託等推進員が配置されている児童相談センター、

    北児童相談所、江東児童相談所、足立児童相談所の4児童相談所管内で実施している。

  • 121

    東京都における里親支援の取り組み

    13

    1)養育体験事業

    目的:未委託里親に、子どもの年齢ごとの成長や発達の様子、生活の内容や遊びについて知り、

    また、子どもと関わる時の自分自身を知ってもらうこと。

    方法:主に未委託の里親が、乳児院(5 か所)や児童養護施設(4 か所)を訪問して、子ども

    たちの生活場面に入り、また、施設職員と交流する事業で、半日~1 日のプログラム。

    平成 24年度は 13回実施した。プログラムは、当日、オリエンテーションを行い、守秘

    義務等に関する誓約書を書いてもらう。施設の担当職員から、入所している子どもたち

    全てが里親委託や養子縁組の対象児ではなく、家庭復帰を目指している子どもも多いこ

    となど、施設の状況等を説明する。養育体験が終わった後、施設職員や里親委託等推進

    員同席のもとで振り返りを行っている。

    成果:施設の現場で働く職員には、里親に出会った経験のない職員も多く、「里親に出会う機

    会となってよかった」「家庭に子どもを迎える里親の思いが分かった」という声が聞か

    れる。里親からは、「施設や施設職員がどんなことをしているのかが分かり、身近に感

    じられた」という感想がある。また、「子どもの年齢ごとの成長の様子が見られてよか

    った」「施設がいかに大切で大変な仕事をしているか分かった」などの意見も多い。終

    了後はアンケートに記入してもらい、企画に活かしている。

    課題:「子どもの委託を待ち望んでいても紹介がない」「こんなに施設には子どもがいるのにな

    ぜ紹介してもらえないのか」など、未委託だからこその悩みや想いを話されることも多

    い。そのため、施設の職員に養育体験事業を全て任せるのではなく、質疑応答の際には

    里親委託等推進員が同席し、その想いを受け止めつつ、入所児童の現状や、委託状況な

    どを説明している。また、半日や 1日ではなく、数日に渡って実施して欲しいと言う希

    望もある。施設で生活している子どもの状況や養育体験の内容等を整理しながら、今後

    の検討課題と考えている。

    2)里親による相互交流事業

    目的:里親同士の交流の場の提供、養育力の向上及び里親が感じる課題解決のための研修会を

    開催することでの不安の解消等を目的として、従来の里親研修で企画されていないテー

    マや、ニーズに合わせた研修や行事などを企画・運営。

    内容:平成 24 年度は、二葉乳児院の施設見学・里親支援機関事業説明会、隅田川の水上バス

    ツアー、小児科医による思春期をテーマとした講演会、研修会等を行った。

    成果:自分の地区の支部活動に参加できない(しにくい)里親もいるので、他の地域の里親と

    出会えることは、里親にとって交流の機会が広がり、大きなメリットとなっている。ま

    た、4 つの児童相談所管内の里親家庭を対象とすることで規模が大きくなり、単独の規

    模ではできなかった企画等にも取り組むことができている。また、職員も複数で対応す

    ることができ、役割分担して運営ができるほか、他地域の里親の状況等も把握でき、電

    ※P.133~137 資料「子どもたちの現状を知ろう」「養育体験のしおり(参加者用)」「養育体験の実施に

    ついて(施設用)」参照

  • 12214

    話相談等の時に役立っている。

    課題:他の事業が増え、訪問回数など相談業務も増えているなか、研修会や行事の企画を行う

    ための時間が制約されている。しかし、訪問などで知りえたニーズに合わせた企画を、

    間をおかずに開催することで、里親の早い段階での不安解消にも繋がっている。

    3)養子縁組里親の相互交流事業 「ほっと☆のんびり茶話会」

    東京都の児童相談所では、特別養子縁組が成立すると、支援が終了するため、養子縁組里親家

    庭からの希望がなければ、支援が継続しない状況であった。そのため、当初より、支援機関事業

    の取組として養子縁組里親や特別養子縁組成立後家庭への支援を行っている。

    内容:対象は、支援機関事業の開始時期や児童相談所ごとの状況にもよるが、概ね、過去3年程

    度以内に特別養子縁組が成立した里親家庭及び、現在、交流中または委託中の特別養子縁

    組里親。毎月開催。平日の午前中(10~12時)に行うことが多い。土曜日午後に開催する

    と、里父の参加や子ども達の参加も増える。会場は二葉乳児院内にある地域子育て支援セ

    ンターの一室を利用。1DKの部屋の和室部分に机を囲んでおしゃべりをする。託児があり、

    子ども同伴で参加できる。託児は、里親委託等推進員が行い、人数が多い月には、学生ボ

    ランティアも活用している。平成 25 年 3 月は隅田川の水上バスツアーを企画し、参加者

    には好評だった。

    お互いに否定や評価などせず、考えを尊重し、話を聞くこと、この話をしてみようかなと

    思うことを話すことがルールである。進行役のファシリテーターとして、里親委託等推進

    員が必ず 1人入っている。

    成果:養子縁組の人は、出産のエピソードなど、地域の「ママ友」と共有できない話もあり、同

    じ立場同士で自由に話し合える場の提供が大切である。真実告知のこと、家庭裁判所への

    申し立てのこと、施設との関係についてなどの情報交換の場となっている。

    縁組成立後家庭のなかには、案内の送付を断った家庭もあるとのこと。一方で、「声をかけ

    てもらうと、忘れられてないと思ってホッとする」「何かあったときに、あそこに行けば良

    いと思える場所があるのはうれしい」という参加者の声があった。

    課題:それぞれの家庭に事情や考え方が違うなか、否定的にならずに、参加者それぞれの想いを

    大切にできるような場づくりが重要であり、ファシリテーターとして、場の雰囲気づくり

    が求められる。また、サロン場面だけでは、解消されない悩みや不安については、サロン

    後に個別に相談を実施している。

    6. 相談援助の姿勢と専門性の構築

    1)時間の制限を設けず、里親の話を丁寧に聴く

    定期巡回訪問は昨年度から実施され、少なくとも半年に1回は訪問することとされている。開

    始時、「いまさら」と、訪問を拒む里親もいたが、趣旨を説明し、「都の方針として年に 2回訪問

  • 123

    東京都における里親支援の取り組み

    15

    することとなりました。まずはご挨拶させてください」「来てほしくないという想いも含めてお

    話を聞かせてください」と訪問を行っている。

    訪問では、里親の話を丁寧に聴くことを基本にしているため、特に時間制限をしていない。「短

    い時間でもいいので、顔を出させてください」と前置きをするが、2時間程度になることも多い。

    4 時間半に及んだこともあった。多くの想いを抱えて、話したいことが溜まってしまっている里

    親もいる。里親のなかには、「困っていること、想い、子どものことを知ってほしい、聞いてほ

    しい」という人もいる。困っていても、一時保護を求めたり、措置解除を求めているわけではな

    く、「まず、話を聞いてほしい」「誰に相談していいか分からない。でも、ちょっと気になってい

    ることがある」という人が多い。

    児童相談所に相談して、悩みを伝えることができる里親は、多くないと感じている。児童相談

    所の職員が家庭訪問をする場合、自立支援計画の作成や更新手続きなどといった目的性の高い訪

    問が多いが、里親委託等推進員は理由なく訪問できるため、里親との自由な話題から相談ニーズ

    を引き出せることがある。継続して丁寧に話を聴くことで、里親の困り感やニーズに気づくこと

    ができ、里親養育の課題の解決に繋がっている。

    2)訪問時の配慮と児童相談所など他機関との連携

    ●訪問の方法

    訪問は、里親委託等推進員1名で行う。児童相談所の担当者が同行するのは初回の家庭訪問時

    だけのことが多い。しかし、状況に応じて、児童相談所の里親担当職員や子ども担当の職員と一

    緒に訪問することもある。男性の里親委託等推進員は、里父がいない家に訪問することに配慮が

    必要である。場合によっては、里父母がそろっている土日や子どもが学校から帰ってくる時間帯

    に行く、または、近所の子供家庭支援センターで会う等の配慮も念頭においている。

    ●連携の方法

    訪問前には、児童相談所の里親担当職員に訪問する旨を伝え、伝言や知っておかなければいけ

    ない近況等を把握する。訪問後には、訪問した際に、里親から児童相談所へ伝言等を伝えたり、

    また、里親から調整を委ねられたことについて、里親担当職員、必要に応じて子どもを担当する

    福祉司や心理司と話をする。

    ●報告の方法と配慮

    児童相談所にどのように報告するかを心配する里親も多い。その都度、里親支援機関事業がど

    ういったものなのか、訪問がどういった目的で、どのような立ち位置で行われているのかを説明

    している。家庭訪問の記録は、都の書式に従って記入。記録原本は支援機関事業側が保管する。

    都には、訪問件数等の報告を含む、支援機関事業の月次報告として行う。

    ●成果

    定期的な訪問のなかで、児童相談所とは違う民間の立場で、里親の想いを聴き取り、整理する

    ことが可能である。また、「ちょっとした悩みや不安」の段階で、里親委託等推進員がそれぞれ

  • 12416

    の専門性に即しながら、課題の整理や里親自身の振り返りを支えることで、早期に不安の軽減等

    を図ることができる。

    ●課題

    児童相談所職員とは異なる立場で関わることによって、里親家庭の見方や子どもの状態把握の

    見方に相違が生じる場合がある。その場合には、打ち合わせを行うなどして、相互理解に努めて

    いる。

    訪問支援では、相談内容を他の社会的資源と必要なタイミングで適切な形で繋げていく「ソー

    シャルワーカー的な働き」が求められることも多い。里親の悩みや不安、子どもの状況を受けて、

    どのようにコーディネイトすればよいか、また、どのように子供担当の児童福祉司や里親担当職

    員に伝えていけばよいのかを考えなければならない。

    相談内容には、児童相談所が中心に動かなければ解決できないことが少なくない。しかし、里

    親委託等推進員の所属が里親担当の児童相談所であるため、別の児童相談所に子供担当がいる場

    合に、迅速な対応ができにくい面がある。

    3)里親からの相談にどう応えるか?

    ●よく聞かれること

    相談内容は子どもに関するものが多い。発達や心理状態のこと、試し行動や子育ての方法、真

    実告知まで幅広い。ときには、事務的な書類に関する質問や地域の関係機関の仕組みや役割内容

    に至ることもある。臨床心理士の資格を有している職員が多いことから、子どもの心理状態や発

    達状況について所見を求められることもある。しかし、即応するのではなく、「里親はどう感じ

    ているのか」「なぜそういった質問がでてきたのか」などを踏まえながら、「どこに焦点をあてる

    か」を大切にして話を聴くことを優先している。特に、心理所見については、子ども担当の児童

    心理司が継続的に関わり、経過を追ったデータの蓄積があるため、具体的な回答は控えている。

    必要に応じて、児童相談所へ繋ぎ、児童心理司から回答してもらえるようにしている。里親委託

    等推進員は、里親と一緒に考え、里親の想いを整理していくことが重要な役割であると考えてい

    る。

    ●分からないことを聞かれた場合の対応

    すぐに回答できることについては伝え、不明なことについては、持ち帰って、後日伝えている。

    例えば、その地域を担当している子供家庭支援センターや近隣の子育て情報について、次回には

    用意した資料を持っていき説明を行う。

    また、里親担当職員が担当している手続きやケースワーク的な内容については、児童相談所に伝

    えることについて里親から了承を得たうえで、報告し、児童相談所と直接やりとりするよう調整

    している。「児童相談所には話したくない」時には、その想いを受け止めながら、児童相談所と

    の連携がそれでも必要と思われる場合には、その旨の説明を丁寧に行っている。

  • 125

    東京都における里親支援の取り組み

    17

    ●助言や指導ではない関わり

    里親委託等推進員の関わりは、里親への助言や指導、スーパーヴァイズではなく、コンサルテ

    ーション的な関わりと考えている。子どもたちがどう感じ、どう生活しているのか、また、里親

    やその家族がどう感じ、どう考えて関わっているのかを里親とともに確認しながら、「その子ど

    もにとってどういった関わりや対応が良いのか」を一緒に考えている。ときには、里親の関わり

    が適切ではないと感じることがある。そういった時には、「うまくいっていないこと、うまくい

    くこととその時の関わり」を整理し、また、いくつかの「里親宅でうまくいったときの方法」な

    どを提示しながら、「その里親が取り組める、子どもにとって良い方法」を一緒に考え、取り組

    み、振り返りをするようにしている。

    4)里親委託等推進員の専門性の構築

    二葉乳児院の里親委託等推進員のうち 3名は、この職に就くまで、里親支援の職は未経験であ

    った。継続した里親支援に取り組むにあたって、「専門性の構築」と「質の担保」、そして、里親

    支援のノウハウの積み重ねが必要となってくる。そのため、それぞれの経験を踏まえた専門性を

    伸ばし、また、里親支援に関係する研修等への参加を通して、里親家庭や子どもに対する支援の

    バリエーションを増やすことと、その知識が深められるように取り組んでいる。

    ●スーパーヴィジョン・相互支援

    月 1回、外部講師にスーパーヴァイザーを依頼し、グループ・スーパーヴィジョンを実施。ま

    た必要に応じて随時、個別スーパーヴィジョンを受けられる体制も整えている。

    推進員は1人で家庭訪問することが多いため、グループ・スーパーヴィジョンは、里親とのや

    りとりや見立てがよりよいものとなっているか、関わりの方法として適切であるかを振り返る場

    となっている。また、里親に対しどういった伝え方がよかったか、里親家庭への支援にあたりど

    のような資源があるのか、などの意見を出し合いながら検討する場となっている。スーパーヴァ

    イズを受けることで、振り返りができ、違った角度から関わりをみることができる。また、グル

    ープで行うため、それぞれの専門性から学ぶことができる。

    週に1度、二葉乳児院で、4 名の里親委託等推進員が集まり、打ち合わせや報告、相談等を行

    っており、振り返りを定期的に行っている。その際に、施設長も参加し、現状について共有や二

    葉乳児院としての方向性の確認を行っている。普段それぞれが担当する児童相談所で勤務をして

    おり、同じ職種の職員との話の場が限られているため、毎週の振り返りは、「里親支援機関事業

    として何ができるか」「里親委託等推進員の役割は何か」「児童相談所や関係機関との役割分担の

    整理」などを確認する大切な機会となっている。

    日本にはスーパーヴィジョンの取り組みがなかなか根づいていないが、相談援助をする人は、

    業務上の悩みや迷い等を吐き出せる場が必要であり、スーパーヴィジョンを受けることで、今ま

    での振り返りと、次への取り組みに視点を向けることができると里親委託等推進員は感じている。

    ●研修

    年数回、外部の里親支援に関わる研修への参加が勤務として認められている。東京都や児童相

  • 12618

    談所、里親会が企画している研修への参加も、多くの場合、希望すれば可能となっている。これ

    まで、IFCO大阪世界大会を始めいくつかの都外の研修にも参加した。また、二葉乳児院内の研修

    にも参加している。また、それぞれの専門に関わる研修会等には、自主的に参加し、スキルアッ

    プを図っている。

    7. 里親委託等推進員から見た里親支援の今後の課題

    1)児童相談所との連携

    民間の職員である里親委託等推進員が、児童相談所内で勤務するということに戸惑った児童相

    談所職員も当初はいたとのこと。児童相談所職員の異動が毎年あり、現在でも、里親委託等推進

    員の立場や役割が十分に認知されていないところがある。しかしながら、里親委託等推進員は児

    童相談所内に机があり、そこでの勤務が多いため、職員と顔を合わせる回数が多く、ちょっとし

    たことで意見交換や打ち合わせを重ねることができ、認知や連携のスムーズさに繋がっている。

    里親委託等推進員に対する認識は、児童相談所によって、職員によってまちまちであり、情報

    の共有の仕方や内容もまちまちである。また、どこまでが里親委託等推進員の仕事で、どこから

    が児童相談所の仕事なのかなどの役割分担が明確ではなく、その都度整理をしながら、連携して

    いる。

    2)里親支援専門相談員との連携

    東京都では、平成 24 年秋に里親支援専門相談員が施設に配置され始めたばかりで、全施設で

    の配置には至っていないことから、その業務内容も、効果も含めて精査されているものではない。

    里親委託等推進員と里親支援専門相談員との連携はこれからの課題である。また、里親支援専門

    相談員の多くは、施設での経験が豊富であることから、特に、乳児院での乳幼児との愛着形成や

    成長に合わせた子育ての方法や理解、児童養護施設での 18 歳以降の自立に向けた取り組みなど

    は里親の参考になる。そういったお互いの長所を連携させながら、里親家庭への支援に繋げてい

    きたいと考えている。

    二葉乳児院には、里親支援機関事業とともに、里親支援専門相談員も配置されている。それぞ

    れの役割を自覚し、そのうえで、普及啓発や養育体験などの事業を合同で取り組み、里親委託等

    推進委員会への出席やその他の事業への参加や講師としての協力を得ている。その都度、情報共

    有しながら取り組んでいる。

    3)子どもへの支援をどう手厚くしていくか?

    里親委託等推進員は現在、主に里親への支援を通して、子どもや里親家庭への支援をするとい

    うアプローチになっている。しかし、それだけではなく、「子どもに直接、アプローチをする場

  • 127

    東京都における里親支援の取り組み

    19

    合も必要となってくるのではないか」と感じることが少なくない。

    子供担当児童福祉司の訪問は、基本的に年数回である。自立支援計画を立てる時や更新の時に

    訪問するだけとなってしまうことが多く、十分ではない。「子どもとゆっくり話せたら、もっと

    よい支援ができるかもしれない」と思うことがあり、「子どもへの支援をどう手厚くしていくの

    か?」が大きな課題である。

    里親担当の児童福祉司と子供担当児童福祉司が異なるため、情報共有が難しいことも多く、里

    親担当の職員と子供担当の児童福祉司、児童心理司、また、子どもに関わる学校等を含む関係者

    間の連絡・連携の取り方が課題となってくると思われる。そこに、どのように里親委託等推進員

    が関わり、役割を担うことができるかが今後の課題である。

    8. 平成 25年度、26年度の新しい企画

    ●25年度

    25 年度は、24 年度の定期巡回訪問等で里親が困っていると思われた課題の解消に力を入れて

    いる。①9月に連続講座で、親子のコミュニケーション力を伸ばすワークショップ形式の講座「こ

    ●26年度

    26年度は里親家庭へアンケートを行う予定である。今年度、東京都が里親支援機関事業に関す

    るアンケートを、全ての里親家庭および児童相談所、里親支援機関事業に対して行っており、そ

    の結果を踏まえて構成し、定期的に里親や子どものニーズを知って、支援や研修などに活かして

    いきたいと考えている。

    とばキャンプ」を開催(P.138の資料参照)。②12月~1月にかけて 3回連続で行う、発達障害の

    子どもの特徴(聞こえ方、見え方)の疑似体験やロールプレイを通して学び合う企画(P.139の資

    料参照)。③「プレ子育て学習会」は、8月から 9月に開催した未委託の特別養子縁組里親を対象

    とした 4 回連続講座。これは、「子どもとの交流が始まるまでに知っておいて欲しいこと」など

    をテーマとして設定し、それぞれのテーマに沿った講師からの話とともに、参加者それぞれの子

    育て観や、現在の不安などを話せる場とすることを目的としている(P.140の資料参照)。

  • 128

    各機

    関における養

    育家

    庭支

    援(注)具体的な支援内容のうち、●は、24年度からの新たな取組内容を表す。下線部の支援内容は、里親支援専門相談員の配置に伴う新たな取組内容を表す。

    子担

    当親

    担当

    児童

    を措

    置する児

    童相

    談所

    養育

    家庭

    の居

    住地

    を管

    轄する児

    童相

    談所

    里親

    への

    委託

    等を推

    進するために東

    京都

    が委

    託した事

    業者

    地域

    支援

    の拠

    点機

    能を有

    し、里

    親等

    への

    支援

    を行

    う施

    設地域において子供と家庭に関する支

    援ネットワークを構築し、福祉の向上を

    目的とした区市町村が設置する機関

    当事者唯一の当事者団体

    制度総括組織

    子供

    と実

    親の

    支援

    養育

    家庭

    の一

    義的

    な相

    談窓

    口民

    間団

    体の

    ノウハ

    ウを活

    かした日

    常的

    な寄

    り添

    い支

    援施

    設機

    能を活

    かした地

    域支

    援、アフターケア

    子供と家庭に関する総合相談、子供家

    庭在宅サービス等の提供・調整等

    養育技術の向上や里親の孤立化

    の防止

    制度運営、地域児童相談所支

    援総括

    ◇児

    童の

    委託

    ・解

    除、援

    助方

    針の

    決定

    ◇児

    童の

    心理

    面接

    等の

    養育

    相談

    支援

     等

    ◇養

    育状

    況の

    把握

    ◇各

    機関

    と連

    携した支

    援◇

    里親

    家庭

    への

    訪問

    支援

    等◇

    夜間

    休日

    電話

    相談

    ◇普

    及啓

    発 等

    ◇入

    所児

    童の

    里親

    委託

    の推

    進・委

    託後

    のア

    フターケアとしての

    里親

    支援

    ◇地

    域の

    里親

    等支

    援◇

    普及

    啓発

     等

    ◇子供家庭総合ケースマネージメント

    (総合相談、在宅サービス等の提供・

    調整)

    ◇要支援家庭サポート事業

    ◇地域住民への養育家庭制度普及

    ◇養育家庭に関する交流及び研

    修会の実施

    ◇機関紙等による情報提供

    ◇経験豊富な養育家庭による相

    談 等

    ◇制度施行事務

    ◇認定登録・取消、研修の実

    施 ◇各児童相談所の養育家庭業

    務の支援・調整

    ◇措置費支弁

    子供

    担当

    児童

    福祉

    司児

    童心

    理司

    親担

    当児

    童福

    祉司

    養育

    家庭

    専門

    員里

    親委

    託等

    推進

    員里

    親支

    援専

    門相

    談員

    子供家庭支援ワーカー等

    養育家庭

    里親係

    交流

    ●施

    設の

    自立

    支援

    計画

    の策

    定に

    当たっての

    調整

    〇委

    託候

    補児

    童の

    決定

    〇委

    託候

    補家

    庭の

    決定

    ○候

    補家

    庭へ

    の訪

    問○

    管内

    児童

    の引き合

    わせ

    ○交

    流中

    の状

    況把

    握と助

    言●交流中カンファレンスの開催

    〇委

    託候

    補家

    庭の

    推薦

    ○候

    補家

    庭へ

    の訪

    問○

    引き合

    わせ

    の立

    会い

    ○交

    流中

    の状

    況把

    握と助

    言●交流中カンファレンスへの参加

    ●交流中カンファレンスへの参加

    ○新

    規委

    託の

    交流

    時(長

    期外

    泊開

    始~

    )か

    らの

    フォローアップ訪

    ●入

    所児

    童の

    状況

    把握

    、里

    親委

    託候

    補児

    の選

    定・打

    診●

    交流

    中の

    状況

    把握

    と助

    言、児

    童相

    談所

    への

    連絡

    ●交流中カンファレンスへの参加

    --

    ○候補家庭への訪問

    ○引き合わせの立会い

    〇マッチング、交流に関する調

    整 ●交流中カンファレンスへの参

    里親

    制度

    の普

    及等

    -○

    制度

    の広

    報(体

    験発

    表会

    等)

    ○里

    親委

    託等

    推進

    委員

    会へ

    の参

    加○

    里親

    委託

    等推

    進委

    員会

    の運

    営○

    里親

    新規

    開拓

    、広

    報●

    関係

    機関

    と連

    携した啓

    発行

    事の

    実施

    ●施

    設行

    事での

    制度

    普及

    ●里

    親委

    託等

    推進

    委員

    会へ

    の参

    加(依

    頼が

    ある場合のみ)

    ○制度の広報(体験発表会等)

    ○里親委託等推進委員会への参加

    (依頼がある場合のみ)

    ○機

    関紙

    やホームページを利

    用した制度普及等

    ○制度の普及啓発及び里親の

    開拓に関する企画立案・実施

    乳児

    院・児

    童養

    護施

    設地域の関係機関

    *以下は子供家庭支援センターの説明

    具 体 的 な 支 援 内 容位置

    づけ

    役割

    主な業務

    対応職

    里親

    委託

    、里

    親支

    援・

    指導

    児童

    相談

    所里

    親支

    援機

    関事

    ○里

    親委

    託の

    措置

    や措

    置解

    除の

    決定

    ○自

    立支

    援計

    画の

    作成

    ・決

    定●

    委託

    後アフターケア訪

    問の

    状況

    把握

    と助

    言●施設の地域支援に関する相談

    状況

    の把

    握○

    委託

    更新

    時訪問

    ○一

    時保

    護○

    実親

    対応

    ●自

    立支

    援計

    画作

    成に合

    わせ

    た心

    理診

    断、面

    ○新

    規委

    託時

    の状

    況把

    握と助言

    等●

    自立

    支援

    計画

    作成

    への

    関与

    ●委

    託後

    アフターケア訪

    問前

    (後

    )の

    施設

    との

    打合

    せ●

    委託

    後アフターケア訪

    問の

    状況

    把握

    と助

    言、子

    担当

    への

    情報

    提供

    ●委

    託6か

    月後

    の来

    所面

    接○

    里親

    サロン等

    の企

    画・運

    営(●

    新規

    受託

    家庭

    の里

    親サ

    ロンへ

    の参

    加義

    務化

    )○電話・里親サロン・里親会行事等での養

    育状

    況の

    把握

    ・指

    導助

    言○レスパイトケアの相談、対応

    ●子

    供家

    庭支

    援センターへ

    の里

    親情

    報提

    供と連

    携●

    学校

    、保

    育所

    等へ

    の訪

    問●

    施設

    の地

    域支

    援に関

    する相

    談状

    況の

    把握

    、子

    担当

    へ情

    報提

    供●

    施設

    実習

    を受

    けさせたい里

    親の

    認定

    ●施

    設実

    習施

    設の

    選定

    、依

    頼●

    実習

    終了

    後の

    施設

    からの

    実習

    報告

    書の

    受領

    ●地

    域支

    援における関

    係者

    会議

    の開

    ○新規委託時(委託後6か月位まで)から

    のフォローアップ訪

    問●

    定期

    巡回

    訪問

    (半

    年に1回

    程度

    )○里親カウンセリング

    ○里親による訪問支援事業

    ●育

    児家

    事援

    助者

    派遣

    事業

    ・育

    児(保

    育、保

    育園

    等の

    送迎

    )、家

    事を

    行う援

    助者

    を派

    遣・24年度利用上限:育児・家事あわせて1

    家庭

    あたり14時

    間・1回

    当たりの

    利用

    時間

    :原

    則2時

    間●

    夜間

    土日

    養育

    電話

    相談

    ・相

    談時

    間:平

    日夜

    間17:45~

    22:00、土

    日祝

    日10:00~

    22:00

    ・里

    親支

    援機

    関が

    輪番

    制で実

    施○

    里親

    交流

    会の

    企画

    ・運

    営○

    養育

    体験

    の企

    画・運

    営○

    学習

    ボランティア開

    拓・派

    遣調

    東京養育家庭の会

    育成支援課

    ○身近な相談機関としての支援

    ○在宅サービス等の提供・調整

    ●委託児童を「支援を要する児童」とし

    て位置づけ、児童相談所と連携して支

    〇里親への研修実施(●受託後

    研修の必修化)

    ○養育家庭支援員による相談等

    ○里親サロン等の企画・運営

    ○支部活動による里親交流会

    ○措置費の支払い

    ○制度の運用にかかる児童相

    談所間の調整

    ○親担当児童相談所の家庭訪

    問に必要に応じて同行

    ○関係者意見相違の際の調整

    等の支援

    ●委

    託後

    アフターケア訪

    問前

    (後

    )の

    児童

    相談

    所との

    打合

    せ●

    委託

    後アフターケア訪

    問(委

    託6か

    月~

    2年目までは半年に1回、その後は必要に応

    じて実

    施)、児

    童相

    談所

    への

    連絡

    ●求めに応じた相談援助

    ・来所や電話による相談、児童相談所への

    連絡

    ●施

    設の

    研修

    会・勉

    強会

    等の

    開催

    ●施

    設実

    習の

    受入

    れ、児

    童相

    談所

    への

    実習

    報告

    書の

    提出

    ●児

    童向

    け自

    立支

    援研

    修の

    開催

    ●レスパイトケアの支援

    ●都

    事業

    への

    協力

    (里

    親サ

    ロン等

    の実

    施に

    伴う場

    の提

    供等

    )●

    地域

    支援

    における関

    係者

    会議

    への

    参加

    東京都における里親支援の取り組み(資料)

  • 129

    東京都における里親支援の取り組み(資料)

    会福

    祉法

    人二

    葉保

    育園

    二葉

    乳児

    国は

    、社

    会的

    養護

    を必

    要と

    する

    子ど

    も達

    が、

    より

    家庭

    的な

    環境

    で愛

    着関

    係の

    形成

    を図

    るこ

    とが

    でき

    るよ

    う里

    親委

    託を

    推進

    して

    いま

    す。

    里親

    委託

    を促

    する

    にあ

    たっ

    ては

    、里

    親制

    度に

    対す

    る人

    々の

    理解

    深め

    、里

    親を

    育て

    、支

    える

    体制

    を整

    える

    こと

    がと

    も重

    要で

    す。

    東京

    都は

    ,こ

    の取

    り組

    みの

    一環

    とし

    て、

    平成

    20

    年度

    から

    「里

    親支

    援機

    関事

    業」

    をモ

    デル

    事業

    とし

    開始

    し、

    平成

    24

    年度

    から

    は、

    都内

    全て

    の児

    童相

    所で

    展開

    して

    いま

    す。

    1

    —児

    童相

    談所

    と里

    親支

    援機

    関の

    連携

    里親

    さん

    の一

    義的

    窓口

    であ

    る親

    担当

    児童

    相談

    所と

    連携

    して

    、そ

    れぞ

    れの

    支援

    機関

    の特

    色を

    生か

    した

    支援

    、里

    親委

    託促

    進に

    取り

    組み

    ます

    連携

    ★親

    担当

    児童

    福祉

    ★養

    育家

    庭専

    門員

    養育

    状況

    の把

    握、

    各機

    関と

    連携

    して

    支援

    定・

    登録

    流・

    委託

    まで

    の援

    託後

    の援

    (状

    況把

    握・

    助言

    、自

    立支

    援計

    画、

    スパ

    イト

    ケア

    、養

    育家

    庭交

    流会

    等運

    など

    係機

    関と

    の連

    (学

    校や

    保育

    園、子

    ども

    家庭

    支援

    セン

    ター

    、施

    設等

    など

    及啓

    発(

    体験

    発表

    会の

    調整

    など

    ★里

    親委

    託等

    推進

    民間

    団体

    のノ

    ウハ

    ウを

    生か

    した

    日常

    的な

    寄り

    添い

    支援

    育体

    験…

    p.1

    互交

    流…

    p.1

    談支

    援…

    p.2

    -3