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=JASTPRO広報誌電子版のご案内= 裏表紙にJASTPRO広報誌電子版のご案内を掲載しておりますので、ご参照下さい。 413 2013- 2013- 02 02 今月号の内容 記事1. 全国中小貿易業兵庫連盟講演会での講演 …………………………………………… 1 記事2. ◇連載◇ 貿易契約の諸問題(9) ………………………………………………………… 5 早稲田大学名誉教授 朝岡 良平 記事3. JASTPROからのお知らせ …………………………………………………………… 17

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=JASTPRO広報誌電子版のご案内=

裏表紙にJASTPRO広報誌電子版のご案内を掲載しておりますので、ご参照下さい。

4132013-2013-0202

今月号の内容

 記事1. 全国中小貿易業兵庫連盟講演会での講演 …………………………………………… 1

 記事2. ◇連載◇ 貿易契約の諸問題(9) ………………………………………………………… 5       早稲田大学名誉教授 朝岡 良平

 記事3. JASTPROからのお知らせ …………………………………………………………… 17

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記事1. 全国中小貿易業兵庫連盟講演会での講演~ASEANにおける貿易手続き円滑化の動きと我が国の出港前報告制度の概要~

全国中小貿易業兵庫連盟は、平成25年2月7日(木)、財団法人貿易・産業協力振興財団の後援を受け、神戸市産業振興センター(神戸市中央区東川崎町所在)において会員企業対象に約50名の参加を得て講演会を開催しました。当日は、当協会の山内常務理事が出席し、「国際物流を巡る貿易円滑化とセキュリティ強化の動き」

と題して、主にASEANにおける貿易手続きの円滑化の動きと我が国が平成26年3月から導入する予定の「出港前報告制度」の概要について講演を行いました。山内常務理事の講演内容については、まず、国連CEFACT(United Nations Center for Trade Facilitation and Electronic Business:貿易円滑化と電子ビジネスのための国連センター)の活動と、講演内容に関連して国連CEFACTの貿易及び運輸の円滑化グループが検討中であるプロジェクトとして「新勧告第36号(シングルウインドウの相互運用性の確立)」や「貿易上のセキュリティ管理強化による貿易円滑化阻害を解決するためのリスク管理」について紹介しました。また、最近の国連CEFACTの活動の特徴として、「農林水産業における食の安全と安心」に関する取組みとして四点ほど紹介しました。具体的には、まず第一に、国連CEFACTにおいて開発済みの「eCERT(動植物検疫の電子証明書)」は我が国を含む世界で10カ国以上で採用され、世界標準として運用されていること、第二に、検討中のプロジェクトとして「eFOOD Chain(農林水産業の生産管理情報の電子化による食品のトレーサビリティの信頼性向上とデータ交換・伝達の標準化)、第三に、「Flower Auction(花卉市場売買ビジネスの電子化)」及び、第四に、「Fish Traceability(鮮魚のトレーサビリティ確立のための電子化)」について説明しました。次に、ASEANにおける貿易手続き円滑化の動きとして、以下の点について説明しました(資料1)。① ASEAN共同体構想は当初は2020年の実現を目指していたが現状では2015年に前倒しされ動き出していること。② ASEAN(経済)共同体行程表(Blue Print)において、ASEANシングルウインドウ(ASW)がASEANの単一市場・単一生産拠点化を促進するための、「物品の自由な移動」政策の一環として位置付けられていること。③ ASWの定義が協定に明記され、ASWとはASEAN加盟国において各々のナショナル・シングル・ウインドウ(NSW)が稼働し、かつ相互に連携している環境にあること、と定義されていること。④ 現状におけるASEANシングルウインドウは、先発加盟国6カ国(インドネシア、シンガポール、タイ、フィリピン、マレーシア及びブルネイ)が2012年に、後発加盟国4カ国(ベトナム、ミャンマー、ラオス及びカンボジア)が2015年にそれぞれNSWをASWへと統合する予定であること。⑤ さらには、ASWが提供する文書定型データ項目仕様セット・テンプレートについて、「ATIGA(ASEAN Trade in Goods Agreement)Form-D」(ASEAN原産地証明共通様式)及び

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「ACDD(ASEAN Customs Declaretion Document)」(ASEAN輸出入通関申告共通様式)の内容について説明しました。最後に、国際物流を巡るセキュリティ強化の動きとして、我が国においては明年、平成26年3月から

実施される「出港前報告制度」の導入について、同制度のキーワードは、貨物情報に係る「早期化」、「詳細化」及び「電子化」であること、我が国が国際物流業務の電子化に向けた大きな舵取りであるとして、その概要について紹介しました。このセキュリティ強化のきっかけとなったのは、平成13年9月の米国の同時多発テロ発生であり、米国がそのテロ対策として導入した、外国港での船積み24時間前までに積荷目録情報の提出を求める、いわゆる「24時間ルール」です。その後、追加的措置として平成18年10月、危険度の高いコンテナを特定する作業の改善に向け、追加データの項目の提出を求めることを規定した「港湾安全法:Safe Port Act 2006」に基づく「10+2(輸入者への義務化する10情報、船社への追加情報2情報)」で平成22年1月26日に本格導入されました。そして、この米国の船積み24時間前ルールの導入を背景に、当該ルールの実施に伴うリードタイムと

コストの増加が問題となり、国際貿易におけるセキュリティ強化と貿易の円滑化の調和を図るため、コンプライアンスに優れた業者を「認定された経済事業者(AEO)として認定するなど、迅速通関の方法がWCO(世界税関機構)において検討され、平成17年6月のWCO総会において「国際貿易の安全確保及び円滑化のための基準の枠組み(SAFE)」が、セキュリティ強化に関する取組みの世界標準として制定されたことを説明しました。このWCO基準の枠組みをもとにして我が国の「出港前報告制度」が形成されていること、その詳細については「平成26年3月から始まる我が国における出港前報告制度概要(資料2)」をもとに、リスク分析結果に関する「DNL(船積み取りやめ)」等の事前通知の方法、報告項目、報告期限の弾力的対応、NACCSへの接続方法等についてそれぞれ説明しました。さらには参考情報として、「国際郵便物に係る事前貨物情報(電子情報)の提出に向けた取組み」について、平成20年に万国郵便連合(UPU:Universal Postal Union)において、WCOとの協力により電子的な事前貨物情報の提出方法を検討していく旨の決議が行われたこと、平成24年10月に開催されたUPU総会において、EUより本件取組みに関するUPU条約の改正提案がなされ圧倒的多数で採択されたこと、国際郵便物のセキュリティ対策の強化に向けた国際的な動きが活発化していること等を紹介しました。

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《講演する山内常務理事》

《全中貿兵庫連盟講演会会場》

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(資料1)

(資料2) 財務省関税局作成資料

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記事2. 貿易契約の諸問題(9)

                          早稲田大学名誉教授 朝岡 良平

9. SGA第5A編の主要問題9.1 本稿の目的

本誌おいて、「消費者物品の売買および関連する保証に関するEU指令」1(以下、EU指令)、イギリスの「2002年消費者物品の売買・供給に関する規則」2(以下、2002年規則)および「2002年規則に関する小冊子」3(以下、小冊子)についてこれまでに紹介しましたので、本稿では、2002年規則の「規則5」によって挿入されたSGA第5A編(主として、第48A条~第48C条)の主要問題について説明したいと思います。

9.2 SGA第48A条

9.2.1 消費者として取引すること

第48A条は、「(a)買主が消費者として取引する、または、スコットランドにおいては、消費者契約において、買主が消費者である場合、かつ(b)物品が引渡の時に契約に適合していない場合」に適用されると規定しています(第1項)。まず、買主が「消費者として取引」する場合に適用されます。この文言は、今回の2002年規則による修正以前に1979年SGAで使用されていました。SGA第61条第5A項4は、「本法において“消費者として取引する”という文言は、the Unfair Contract Terms Act 1977の第1編に従って解釈されるものであり、かつ本法の目的のために、買主が消費者として取引していないと主張する売主は、買主が消費者として取引していない事実を証明する責任がある」と定めています。この定義の最後の部分に、同じような文言が繰り返されているのは、1977年制定法の関連する箇所をそのまま引用しているためです。それ故、本条の救済は、the Unfair Contract Terms Act 1977の第12条に規定する基準を考慮することを要します。すなわち、買主は自分自身の営業・職業などに関連した売買とは全く関係ないという立場で、取引することです。取引慣習、業者間割引など営業・職業に関連する要因が全く関係しない取引です。しかし、この文言の使用は、EU指令の意図したものとは完全に一致するものではありません。

1  The Directive 1999/44/EC of the European Parliament and of the Council of 25 May 1999 on certain aspects of the sale of consumer goods and associated guarantees, OJ L171/12, 7.7.1999, pp. 12-16.

2  The Sale and Supply of Goods to Consumers Regulations 2002 (SI 2002/3045).3  The Department of Trade and Industry, A Brief Information of the Sale and Supply of Goods to Consumers Regulations 2002.

4  同項は、the Sale and Supply of Goods Act 1994 (1995年1月3日発効)の付表2, para. 5 (9)(c)により第61条に挿入されました。

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9.2.2 物品が不適合であること第48A条は、買主が消費者として取引し、かつ「物品が契約に不適合」である場合に適用

されます。EU指令には契約への適合について詳細に規定していますが、イギリスの2002年規則では、SGA第48F条に規定するように簡単に扱っています。第48F条は「第5A編の目的のために、物品に関連して、契約の明示条項または第13条(記述売買)、第14条(品質および適合性)または第15条(見本売買)に定める黙示条項の違反がある場合には、物品は契約に適合しない」と規定しています。

9.2.3 消費者である買主の権利第48A条が適用される場合には、「買主は、(a)第48B条にもとづいて、売主に対して物品を修理または取替えを要求する権利、または(b)第48C条にもとづいて、(ⅰ)物品の購入代金から適切な金額を減額するよう売主に要求する権利、または(ⅱ)当該物品に係わる契約を解除する権利を有します」(第2項)。また、上記の第1項(b)号の目的のために、「物品が買主に引渡された日から起算して6ヵ月以内のいかなる時でも、売買契約に適合しない物品は引渡の日に適合していなかったものとみなす」と規定しています(第3項)。ただし、第3項の規定は、「(a)物品が引渡の日に適合していたことが確認された場合、および(b)これを適用することが、物品の性質または不適合の性質と矛盾する場合」には、適用されません(第4項)。

9.2.4 6ヵ月間不適合の推定規則SGA第48A条第3項に定める規則は第4項(a)号の関係で、「6ヵ月間不適合の推定規則」

と呼ぶことができます。しかし、例えば、第4項(b)号が定めるように、耐久性のない物品(例えば、生花、食料品など)には不適合の推定規則は適用されません。救済を求める買主の権利は、引渡された時における物品の瑕疵の程度によります。しかし、引渡された時に実際に瑕疵が存在したのか、あるいは、後日、損傷をもたらす原因となる隠れた(または固有の)瑕疵があったことを証明することは、請求者(消費者)にとって容易なことではありません。売主は、例えば、このような品質低下が、自然の消耗・損傷、誤った使用、不注意、手入れ不足、その他、引渡以後に生じた出来事に帰するものであると説明するかもしれません。他方、買主にとって、これに反論することは非常に難しいことです。そのために必要なことは、例えば、特定の商品は品質やデザインが良くないとか、あるいは耐久性がないということについて、専門家の証明を求めることです。また、この推定規則は、売主にとっても反論を展開することが難しいのです。物品の品質低下が、買主の主張する期間内に生じた場合、この物品が引渡の時に契約に適合していたことを立証するのは、買主でなく、売主の責任だからです。注意すべき点は、この推定期間は引渡日から起算されることです。そして、買主が消費者として取引する場合、危険は引渡日に移転するという新しい規則5が適用されることです。

5  1979年SGA第20条第4項および第32条第4項。

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9.2.5 品質保証期間ではない

第48A条の規定に従って、物品の引渡後6ヵ月間を強制的な品質の保証期間であるとみる傾向がありますが、これは保証期間ではありません。引渡の際に物品が契約に適合したか否かの証明ですが、実際に紛争が生じるのは引渡後であることです。この推定規則によって、関連する時に物品が適合していなかったことを買主は有利に主張することができます6。しかし、売主が、物品の不適合について、「使い古された、誤って使用された、きちんと維持されなかった、あるいは引渡後の事故によって生じたものである」ことを主張する場合、これを証明するのは売主の責任です。この推定規則は制定法にもとづく救済の場合に適用されるもので、コモン・ローによる救済の場合に、同様の規則が適用されるか否かは疑問です。

9.3 SGA第48B条

9.3.1 修理または取替えという救済方法

従来、1979年SGAでは、引渡された物品が契約に適合しない場合、買主は、物品を拒絶して、支払った代金の返還を請求するか、あるいは、物品を拒絶する権利がない場合、または、これを選択しない場合には、損害賠償を請求することが救済方法でした。しかし、第48A条が適用される場合、買主は、売主に対して物品の修理または取替えを要求するか(第48A条第2項(a)号)、または代金の減額または契約の解除を要求する(同第2項(b)号)ことができます。第48B条は、「第48A条が適用される場合、買主は売主に対して、(a)物品の修理または(b)物品の取替えを要求することができる」と規定しています(第1項)。そして、買主が売主に対して物品の修理または取替えを要求する場合、売主に対して、「(a)合理的な期間内に、買主に著しい不便をかけることなく、物品を修理するか、または、それぞれの場合により、物品を取替えること、および(b)そのような行為に伴って生じるすべての必要な費用(特に、すべての労働、材料または郵送に関する費用を含む)を負担すること」を義務づけています(第2項)。

9.3.2 代金減額または契約解除の条件

物品の修理または取替えは日常の実務ではよく見られますが、上記のように、従来、コモン・ローおよび1979年SGAは、買主の救済として、修理または取替えを正式には認めていませんでした。1980年ウィーン条約では、可能な場合には、契約の解除7よりも、むしろ代替物または修理の請求8を規定しています。物品の売買では、契約の解除とするコモン・ローとは少なくとも相容れません。ウィーン条約第48条は、売主に対して、引渡期日以後であっても、売主の費用により、義務の不履行を治癒する救済を認めており(同条第1項)、また、ある状況では、売主の問い合わせまたは通知は、買主が受領しないかぎり、その効果を生じないと規定しています(同条第

6  拙稿「8.6.5 挙証責任」『JASTPRO』411号 (2012-12)、18頁。7  1980年ウィーン条約第49条。8  1980年ウィーン条約第46条。

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4項)。また、ウィーン条約第49条では、売主の義務の不履行が基本的な契約違反となる場合、買主は契約の解除を告知することができます(同条第1項)。ただし、売主が物品をすでに引渡している場合には、買主が違反を知っていたか、あるいは気付くべきであったときから相当な期間内に契約の解除を告知しないかぎり、解除権を喪失すると規定しています(同条第2項)。この売主の不履行を治癒する権利と買主の契約を解除する権利との関係は明確でありません。EU指令では(したがって、2002年規則においては)、買主は、これらの権利のいずれかを売

主に対して要求することができるとしています。けれども、買主がこれを要求できた時に、要求しなかった場合には、買主は、次の代金の減額または契約の解除という第48C条に定める救済を求めることができません。何故なら、代金の減額または契約の解除(第48C条第1項(a)号および(b)号)は、同条第2項に定める条件が充足されたときにのみ、認められるからです。買主のこのような権利行使の手順は、売主がこれらの権利を行使する場合にも適用されます。売主が買主に対して他の制定法に定める救済を指示する場合、まず物品の修理または取替えを求めるか、あるいは売主が、このような機会を最初に与えられないと、次の救済を買主に示すことはできません。

9.3.3 コモン・ローによる拒絶

しかし、物品が不適合である場合、コモン・ローにもとづいて物品の拒絶という救済が一般原則として適用され得るので、買主は、上記のような手続によらないで、この原則にもとづいて拒絶できます。ただし、現行法のもとでは、第48B条の規定に従って、買主が修理または取替えをまず要求したときは、買主は、修理または取替えを行うための合理的な期間内は、物品を拒絶することができません。

9.4 修理または取替えに関する問題

9.4.1 修理または取替えを要求する権利の制限

物品の修理または取替えを要求する権利は、第48B条第3項の規定に該当する場合には、これを行使することができません。同項は、「(修理または取替えによる)救済が、(a)不可能である、(b)他の救済に比べて不相応である、または(c)第48C条に規定する代金の減額または契約の解除に比べて不相応である場合には、買主は売主に対して物品の修理または取替えを要求してはならない」と規定しています。修理または取替えができない場合に、他の救済(減額または解約)を要求できますが、修理または取替えができるか否かについて紛争が生じたときは、他の救済を要求することが難しくなります。第1項では、買主は「要求することができる(may)」と述べていますが、第3項では「要求してはならない」と、“must”という用語を使用しています。制定法の解釈に関する通常の原則によると、この第3項の規定は、買主が通常行使することができる権利(power)を行使してはならないという、義務を制限することを意味します。そこで、この権利は有効に行使できるにも係わらず、この義務の違反は損害賠償によって救済が要求されること

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になります。このようなことが意図されていないことは明らかなので、本条を起草した意図は、このような状況ではこの権利を行使することが無効であると推定されることです9。この権利を行使してはならないとする状況は、まず修理または取替えが不可能であること(第3項(a)号)、または、特定の救済に比べて不相応である場合に(第3項(b)号)生じると定められています。これらの基準はまず修理と取替えの間の選択に適用されます。これらのうち何れかが第3項(a)号で不可能であるか、あるいは、そのうちの1つを行使することが、他を行使することに比べて、不相応である(第3項(b)号)、例えば、修理が取替えに比べて不相応であるか、または取替えが修理に比べて不相応であるということです。後者の場合、通常、修理はコストが少なくてすみ、取替えは大きな費用を要することが明らかです。しかし、反対に、安い電気製品の場合には、取替える方が簡単で、修理は、不可能ではないにしても、費用が多くかかることがあります。次に、修理または取替えという救済は、これが不可能である場合(第3項(a)号)、あるいは第48C条に規定する代金の減額または契約の解除という救済に比べて不相応である場合(第3項(c)号)には、行使してはならないと規定されています。この救済が不可能である場合、この権利は再び排除されることになります。不相応ということに関しては、代金の減額および契約の解除という救済は、それ自体が修理または取替えという救済が要求できないことに依拠していると明示されています。そこには、理論的循環性が感じられます。これらの規定は、売主と買主によって取決められる常識的な手続を定めるものですが、紛争が裁判所に委ねられた場合に、予想できない結果を招くことになると思われます。

9.4.2「不相応」の意味 第48B条第4項は、「ある救済が、(a)物品が不適合である場合に有したであろう価額、(b)

不適合の程度、および(c)他の救済が買主に著しい不便をかけることなく行うことができるか否かを考慮したとき、他の救済と比較して、売主にとって費用が不合理である場合に、その救済は他の救済に比べて不相応(disproportionate)である」と規定しています。このような相対的コストが重くみられることは、実際にあることですが、売主にとってのコストと、買主にとっての恩恵との間の費用対効果の分析は示唆されていません。第48B条第2項(a)号にいう著しい不便(signifi cant inconvenience)と関係があるものと考えられます。第5項は、「合理的な期間」または「著しい不便」とは、(a)物品の性質および(b)物品の購入目的を考慮して決定される問題であると規定しています。

9.4.3 修理の意味修理する義務とは、合理的な期間内に、買主に対して著しい不便をもたらすことなく10、契約

9  M. Bridge, Benjamin’s Sale of Goods , 8th ed., 2010, para. 12-079.10  1979年SGA第48B条第5項を参照。

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に定める要件11に適合させることです。簡単な例は次のようなものです。買主が売主に対して自動車の速度計の調子がおかしいので直して欲しいと要求する場合です。自動車や機械類のように大きくかつ複雑な製品の修理、あるいは地下室のボイラーの取替えなどに比べると、メーターの修理は救済として適っていると思われます。修理が売主にとって高くつくという事実だけで、修理が必ずしも第48B条第4項にいう「不相応」であると主張する口実にはならないことがあります。消費者として、買主がその物品に愛着をもっている場合、売主の立場から、費用対効果という観点から取替えた方が良いと言えないこともあり得ます。

9.4.4 取替えの意味例えば、比較的安い電子製品が、故障して動かなくなった場合、簡単に修理できないので、

むしろ取替えた方が良いと考えられます。また、買主も取替えを望むでしょう。しかし、非常に難しい場合もあります。物品が絵画のように特別なもので、修復が不可能である、あるいは修復が簡単に不相応と言えないだけでなく、他の物と取替えることができず、また非常に類似する代替品があったとしても、買主がこれを欲しない場合があります。同様に、物品が契約に適合しない理由が、SGA第14条第3項に定める「特定の目的への適合性」を有しない場合、購入または注文した如何なる種類の物品も、同種類のものと取替えることは明らかに不適切な救済です。難しい問題が生じるのは、物品が中古品とか、取替えの要求があったとき、物品がかなり使い古されていたり、通常よりも傷んでいる場合です。取替えが可能であっても、全く同じ物品でなく、類似の商品を提供することもあり得ます。2002年規則に関する小冊子によると、例えば、5年間使用したピアノに瑕疵が発見された場合、同様の仕様のピアノと取替えることができると説明しています12。ピアノや楽器類は、中古車と同様に、通常、買主がテストして選択した特定物として購入されるので、このような物品を取替えの事例とすることは疑問です。

9.4.5 買主の協力

買主が売主に対して不適合な物品の修理または取替えを要求した場合、例えば、買主は、物品を売主に送付するとか、あるいは、買主の住居で修理が行われるときは、その場所で修理ができるような便宜を与えるとか、あるいは他の場所で修理するときは、売主がその場所へ物品を移動することに協力する義務があることが、第48B条第2項に黙示されていると言われています。SGA第5A編には、物品の修理または取替えの期間内に、物品の使用ができないことに伴う損失に対して、買主が補償される旨の明示の規定はありませんが、コモン・ロー上の損害賠償請求権は妨げられないので、修理または取替えという救済とは別に、このような損失やその他の間接損害に対する請求ができます。

11  1979年SGA第61条第1項に定める定義を参照。おそらく、ここに引用される基準は、満足される品質、外観および仕上げ、ならびに満足される品質などの要件に完全に合致することを含みます。

12  拙稿「8.5.3 修理または取替え」『JASTPRO』411号 (2012-12)、15頁。

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9.4.6 裁判所による執行

修理または取替えの義務は、裁判所に、これについて特定履行(specifi c performance)の命令を行う権限を付与することにより確保されます。これはSGA第48E条により行われ、第52条(特定履行)に規定するものと性質が異なる、幅の広い権限を付与しています。このような権限がこれまで存在したか否かは不確実であるということです。裁判所は、このような命令を行う義務はありませんが、第48E条に従って、適切であると判断するときは、SGAにもとづいて他の救済を与える権限を有します。

9.4.7 修理または取替え作業中の危険

物品が取替えられる場合、2度目の引渡、すなわち取替えられた物品の引渡が行われるまで、物品の危険は売主が負担しなければなりません。さもなければ、売主は取替えることができません。しかし、物品が修理のために送付されているとき、修理中、または修理が終わって返送される途中で生じるかもしれない危険の問題は言及されていません。消費者保護という観点から、SGA第5A編の一般的趣旨は、最初に不履行から始まったのであるから、すべて売主の負担であると考えられます。もしこれが正しいとしたら、修理するために物品が、売主に送付するため、または指定された他の者に送付するため通常の運送手段に託された場合、運送中に生じた滅失または損傷についても、売主はこれを負担して、物品の修理または取替えをしなければなりません。同様のことは、滅失または損傷が物品の修理中に、あるいは取替えた物品または修理された物品が同じ運送手段によって買主に返送される途中で生じた場合にも適用されます。買主が修理または取替えを要求した時、物品の危険はその時点で、買主から売主に戻ることも明らかです。物品が修理または取替え中に、買主の過失によらずに、破損または損傷を被った場合にも、この規則が適用されるか否かは、物品を拒絶する場合に適用される一般の規則によって解決されると推定されています。

9.4.8 修理または取替え中、物品を使用できないことによる損害

買主が物品から利益を得ることを期待する場合、売主が約定の引渡期日にこのような物品の引渡を履行できず、かつ買主が後日の引渡を承諾したときは、買主は引渡遅延の間に喪失した利益を売主に請求することができます。買主は使用者の利益、すなわち、物品が約定期日に引渡された(と仮定した)時から実際に引渡された日までの期間内に、その物品の使用により得たであろう利益の損失に対して損害賠償を請求できます13。物品の修理の場合にも、同様の規則が適用されます。Victoria Laundry(Windsor)Ltd. v. Newman Industries Ltd.事件14において、損害賠償を請求した原告は洗濯業兼染色業を営んでおり、事業を拡大するために大型ボイ

13  Steam Herring Fleet Ltd. v. V.S. Richards & Co. Ltd. (1901) 17 L.T.R. 731.14  Victoria Laundry (Windsor) Ltd. v. Newman Industries Ltd. [1949] 2 K.B. 528.

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ラーを設置したいと考えました。被告はエンジニアで、原告に大型ボイラーを売る契約を結び、後日、引渡期日を1946年6月5日と決定しました。新しいボイラーを取り付けるために、古いボイラーが解体されたので、原告は仕事ができなくなりましたが、新しいボイラーが原告に引渡されたのは1946年11月8日でした。注文したボイラーと同型のものは市販されていませんでした。そこで、原告は、引渡遅延に対する損害賠償を求める訴訟を提起し、損害額の算定にあたり、次の点を特に考慮しました。(1)引渡期日に大型ボイラーが設置されたならば、それにより以前よりも大勢の新規顧客が来店したであろこと、および(2)英国軍需省との特別契約にもとづいて特に「有利な利益」を得ることができたであろうことを根拠として損害額を算出しました。被告は、原告が洗濯業であり、直ぐにもボイラーを必要としていることを知っていました。これに対して、控訴裁判所は、通常の者は上記(1)のような事実を知っていれば、引渡遅延により営業損失が生じるであろうことを予想できるであろうが、(2)については、被告は実際に知ることができない特別の状況であるから、英国軍需省との特約による利益の損失を予想することはできないと判示しました。そこで、原告は、このような契約に関連して、現実に被った損害額(actual loss)を回復できませんでしたが、洗濯業兼染色業としての契約に関連して合理的に予想し得たと考えられ通常の営業損失(loss of business)についてのみ賠償を得ることができました。これから類推すると、消費者である買主は、物品の修理または取替え期間中に、これを使用できないことにより生じた損失を証明できるときは、理論上、損害賠償を請求することができます。しかし、消費者がこのような「損失」を証明することは難しいことです。例えば、自動車の修理または取替え期間中に、これが使用できないために、ハイヤーを利用した場合、契約への不適合を生じた契約違反を事由とする損害賠償を請求することができます。しかし、その損失が、不快感(annoyance)、失望(disappointment)、または欲求不満(frustration)である場合、裁判所は損害賠償を認めません。同様に、消費者が短期間に経験した(生活環境の)「快適性」(amenity)の喪失のようなものに対して、損害賠償を請求することはできません。欧州司法裁判所(the European Court of Justice)は、Guelle A.G. v. Bundesverband der Verbraucherzentralen und Verbraucherverbande事件15において、不適合に対する救済を扱いました。これは通信販売により購入した“Stoveset”に関連する事件で、オーブン内部のエナメル塗装の一部が剥げ落ちたので、消費者が修理を依頼しました。しかし、修理が不可能であるというので、購入後17ヶ月経過していましたが、買主は最初に購入した“Stoveset”を売主に返送して、取替えを要求しました。間もなく、新品が買主に届きましたが、売主は、EU指令の導入により修正されたドイツ民法典(B.G.B.)に従って16、最初の“Stoveset”を17ヶ月間使用したことに関連した諸費用を買主に請求しました。欧州司法裁判所の意見によると、EU指令第3条が国内法の規定を排

15  Guelle A.G. v. Bundesverband der Verbraucherzentralen und Verbraucherverbande (C-404/06) [2008]E.C.R. I-2685; [2008] 2 C.M.L.R. 49.

16  特に、B.G.B.第439条第4項および第346条第1項と第2項。

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除するか否かというのが基本的な問題ということですが、同裁判所は、EU指令による排除について、同指令の前文の(15)項に「加盟国は消費者へ代金の返還について、消費者が物品の引渡を受けた後、これを使用したことを考慮して減額することができる;また、契約の解除に関する詳細な取決めについては国内法に定めることができる」と述べられており、消費者は不公正な利益を享受できないというルールを明確にしています。他方、EU指令第5条第1項により、売主も、原則として2年間という制限期間(time limit)により保護されており、また物品の取替えが不相応であると考えられる場合には、その救済方法を拒絶することができます17。

9.4.9 契約への適合の義務および6ヵ月間不適合推定の再開始 

修理された物品または取替えられた物品が消費者に引渡された時、物品が契約に適合する旨の義務および不適合の場合における買主の救済権がその時に再び始まることは、2002年規則と矛盾しないと考えられます。同様に、「6ヵ月間不適合の推定」もその時に再び開始することになります。イギリスの法律委員会(Law Commissions)18は、修理の場合には止めて、取替えの場合にのみ再開始すべきであると提言しています。しかし、物品が引渡されてから5ヶ月後に修理された場合、あるいは異なる瑕疵が異なる時に生じた場合などには、難しい問題が起き得ると思われます。

9.5 SGA第48C条

9.5.1 代金減額または契約解除

第48C条は、「第48A条が適用される場合、買主は、第2項の条件が充足されたときは、(a)物品の購入代金から適切な金額を減額するよう売主に要求すること、または(b)物品に係わる契約を解除することができる」と規定しています(第1項)。この条件とは、「(a)第48B条第3項の規定により、買主が物品の修理または取替えを要求できないこと、または(b)買主は売主に対して物品の修理または取替えを要求したが、売主が第48B条第2項(a)号に定める合理的な期間内に、買主に著しい不便をかけることなくこれを行うという要件に違反したこと」です(第2項)。また、第5A編の目的のために、買主が契約を解除するときは、買主に対する返済は、物品が買主に引渡されてから使用されたことを考慮に入れて減額することができます(第3項)。

9.5.2 代金減額または契約解除という救済方法 

この2つの救済方法は、コモン・ローでは新しいものですが、ローマ法の「代金減額訴訟」(actio quanti minorisおよびactio redhibitoria)に由来するもであるということです19。契約違

17  M. Bridge, op. cit ., para. 12-088.18  The Law Commission and the Scottish Law Commission, Consumer Remedies for Faulty Goods , (Law Com.

No.317)(Scot. Law Com. No.216), 2009.19  M. Bridge, op. cit ., para. 12-091.

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反に対して、物品の拒絶および契約の解除は多くの点で同じで、コモン・ロー上の訴訟手続ではよく知られています。制定法によるこれらの救済方法について、SGA第48C条第2項は、買主が修理または取替えを要求する権利がない場合、あるいは買主が修理または取替えを要求したが、売主が合理的な期間内に、買主に著しい不便を与えることなくこれを行うことができない場合にのみ、行使することができると規定しています。後者の買主に与える不便に関する申立ては、売主がこのような不便を生ずることなく修理または取替えを行うことができないという状況だけでなく、売主は修理または取替えはできるが、著しい不便を避けることができないという状況が考えられます。修理または取替えが行われても、その間に買主が不便を被ったという理由で、これが拒絶されることがあり得ることを意味します。第48C条第2項(b)号の規定から、このような場合、買主は訴訟手続によらないで、この救済を要求することができます。

9.5.3 コモン・ロー上の救済へ切り替え

第48C条規定は、SGA第5A編にもとづく代金減額または契約解除の権利の行使に関するものです。この時点で、買主が、これに代えて、コモン・ローにもとづいて、条件違反に対する物品拒絶および損害賠償請求の訴訟を行う決心をした場合、SGA第5A編に規定されているコモン・ロー上の権利、すなわち第48D条の規定に従うことになります。この規定は、買主が、拒絶する前に、売主に対して物品の修復または修理を行うために合理的な期間を与えることを定めています。けれども、買主が、正式に手続を進めるよりは、第48B条にしたがって、非公式に物品の修理を要求する場合には、適用されないように思われます。このような場合には、消費者はまた、SGA第35条第6項により、物品を受領したものとみなされることから守られることにもなります。

9.5.4 瑕疵の修復による遅延 

消費者の権利について特に心配なことは、自動車や電気製品では必ずしも珍しいことではありませんが、修理のために一定期間にわたって物品を売主に託する場合、これによって物品の受領が黙示されるとか、あるいは、これが売主の所有権と矛盾する行為であるとか、または、拒絶に認められる期限が経過したなどの理由で、買主が拒絶する権利を喪失するかも知れないことです。上級裁判所の判決が、このような問題に関する有益な指針を提供していますが、下級裁判所が、SGAの規定を文字通り受け止めて、このような状況を衡平法上、不公正とみなして拒絶を禁ずるおそれが考えられます。満足される品質に関するガイドラインについて、このような問題に対する特別の規定を設けることが最善の方法であると考えられます20。SGA第35条第6項は、「買主が、売主との取決めにより、物品の修理を求めるという理由だけでは、物品を受領したものと見做されない」と規定しています21。

20  The Law Commission and the Scottish Law Commission, Sale and Supply of Goods , (Law Com. No.160) (Scot. Law Com. No.104), 1987,paras. 5.26 ~ 5.31.

21  1979年SGA第35条第6項は、the Sale and Supply of Goods Act 1994の第2条第1項により挿入された規定です。

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9.5.5 代金の減額

SGA第48C条第1項(a)号は、「買主は、当該物品の購入代金から適切な金額を減額するよう売主に要求することができる」と定めています。一般原則では、代金を支払った後でも、減額を要求することができます。第48C条第1項(a)号の文言は、「当該物品の購入代金から適切な金額を減額するよう売主に要求すること」ができると規定しており、第48A条第2項(b)号(i)の規定と、「当該」という文言を除いて、同一文言です。代金の減額は、英法では全く新しい救済方法ですが、ヨーロッパ大陸諸国の法体系では広く一般に利用されており、SGA第48C条第1項(a)号の規定も、上記のように、ローマ法の「代金減額訴訟」から派生したものです。この救済方法は、物品が契約に適合しないにもかかわらず、買主が売主による引渡提供を受領したので、売主の履行が部分的であることを推定しています。1980年ウィーン条約第50条(代金の減額)について、「代金減額の根底にある原理は、売主にとって、引渡された物品が契約に不適合である場合に、買主がこの物品を保持して、契約を新しい状態に調整するということである。すなわち、代金減額というのは、契約の目的物が最初から契約に合致していなかった場合に、契約代金と実際に引渡された物品の価額との差額を調整するということである。したがって、代金減額は、損害賠償でもないし、また契約の部分的無効でもなく、むしろ契約の調整である」という意見があります22。しかし、契約への不適合は、明示条項、記述、数量、品質、引渡期日、その他に関連しています23。したがって、物品が、買主の期待した主要な機能を発揮できない場合、あるいは特定の目的に適合しない場合は、第48E条第3項およびお第4項に定めるように、裁判所が「あたかも買主によって売主に対して要求されたかのように」代金減額という救済手続を行うことは適切でないと思われます。品質に瑕疵がある場合には、その物品が買主の予想した使用に十分に適合しないという点で、代金の減額は適切であると考えられます。しかし、品質が著しく劣る場合には、取替えまたは契約の解除という救済の方がむしろ適切であると思われます。 9.5.6 従来の法からの類推 

第5A編の制定以前、SGAには、第48C条の規定と同様の効果のある規定が幾つか設けられていました。保証違反に対する損害賠償請求の代替手段として、第53条第1項は、「買主が代金の減額(diminution)または抹殺(extinction)をもって売主に対抗することができる」と規定しています。品質に関する保証違反に対する損害賠償の算定は、原則として(a)引渡期日および引渡場所における瑕疵のある物品の価額と、(b)その物品が完全に保証を充足していたときに有したであろう価額との差額です。新しい救済手段は、損害賠償請求に代替するものですが、売主が損害賠償の責任を免れる場合でも、この救済手段が存続します。まだ代金が支払われていない場合には、代金減額という新しい救済は、1979年SGA第53条第1項から相殺という

22  Schlechtriem, Commentary on the UN Convention on the International Sale of Goods , 2nd ed., 2005, pp.596-597.23  1979年SGA第48F条を参照。

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効果を類推できます。すでに代金の全額(または一部)を支払った買主は、後日「適切な」金額を差し引かれたときの「減額された価格」を超過する金額が支払われた場合、買主は、その超過した金額を売主から回収することができる旨の第48C条の規定から推定できます。

9.5.7 減額する額

第48C条第1項(a)号により、減額される代金の額は「適切」であるべきということです。第5A編には、この用語について、解釈の指針となるようなものはありません。しかし、損害賠償額の評価に関する規則が、減額を評価するために参考になり得ると考えられます。SGA第53条第3項は、品質に関する保証違反に対する損害賠償額について、原則として、引渡時に引渡場所における瑕疵のある物品の価額(低い方)と、契約に合致した場合に物品が有したであろう価額(高い方)との差額をもって損失と推定すると規定しています。代金は契約締結時に決まっていますが、損害賠償請求時には、市価が変動しているので、その時点における(瑕疵のある)物品の価額と契約に合致した場合に有したであろう価額との差額をもって、損害賠償額と評価します。しかし、1980年ウィーン条約第50条は、「買主は、現実に引渡された物品が引渡された時の価額と、その時に契約に適合する物品が有していたであろう価額の割合に応じて、代金を減額することができる」と規定しています。したがって、「差額」に代えて、「割合」を用いて減額する金額を算定することもできます。しかし、ウィーン条約の規定は、引渡時における相対的価値による割合を、最初の契約代金に掛けるものです。換言すると、契約代金を上限として、それから減額される金額を差引いたものが違反に対する損害賠償額となります24。SGA第53条第3項は、「代金」には言及しないで、「(引渡時における)保証に合致していたら有したであろう物品の価額(value)」と定めています。そこで、売買契約の締結日時と物品引渡の日時の間に物品の価額が上がった場合、SGA第53条第3項に基づいて支払われる損害賠償額は、「代金」を上限とする場合よりも高い補償金額を買主に支払うことになります。反対に、物品の価額が下がった場合、代金減額による救済は、請求者に対して損害賠償額より低い金額を支払うことになります。このように、SGA第53条第3項の規定によると、契約締結後に物品の価額の下落による危険を買主の負担とし、反対に、物品の価額の上昇による危険を売主の負担としています。例えば、大量の物品の引渡に数量不足が生じ、契約に定めた数量と引渡された(不足)数量との割合に応じて、代金の減額を算出する場合もあります25。

(続)

24  これは間接的損害(consequential loss)に対する損害賠償額と考えられるので、「適切な代金の減額」の算定には使用できません。

25  1979年SGA第30条を参照。

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記事3. JASTPROからのお知らせ

国連欧州経済委員会(UNECE)は、勧告第16号(UNLOCODE-港及び地名コード(*))に基づき、貿易に関連する貨物の移動のために使用される「港」、「空港」、「内陸通関デポ」、「貨物ターミナル」及び「貨物の受け渡し場所」の名前をコード表示するため、貿易関係者間において必要とされる各地点の登録を受付けています。この「港」や「空港」などの貿易に利用される我が国での地点の登録の受付けは、直接UNECEに対しWEBにより登録申請するケースと、当協会に登録申請の上、当協会に設置されている「国連CEFACT標準促進委員会(JUS)」での審査を経て、当協会からUNECE事務局に正式申請する二つのケースがあります。当協会において受付けた登録申請については、国連LOCODEとして既に登録されている標準コードとの重複がないかなどを審査するのに対し、UNECEに直接登録申請する場合は、UNECEでの審査が困難なため、UNECEからの依頼に基づき、その適否につきJUS委員会が審査したうえで、UNECEの事務局に報告を行っております。 今年度につきましては、下記のように、新設については12件、変更については1件の承認がありました。その他のコードを含め、詳細は以下のURLをご参照願います。

 http://www.unece.org/fi leadmin/DAM/cefact/locode/jp.htm

上記で記述しましたとおり、我が国においては、国連CEFACT標準促進委員会(事務局JASTPRO)が設置され、日本国内及び公海上の地点に関し、コード新設の申請につき審査・承認を行っておりますので、貿易関係において新たに必要とされる地点の登録のための申請は、その登録の早期処理のためにも、JASTPRO宛に行っていただけるようお願いいたします。

(*)UNLOCODE:国名アルファベット2桁(日本の国名コードはJP)とその国内固有のアルファベット3桁との合計5桁で構成される国連が定める標準コードのことであり、NACCSにおける地点コードとして活用されております。

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新設

変更

UN Log Number Name Code 地名 取扱い

UN-2012-29708 Higashimurayama HGM 東京都東村山市 承認

UN-2011-28149 Iruma IRA 埼玉県入間市 承認

UN-2012-28580 Isehara Shi ISR 神奈川県伊勢原市 承認

UN-2012-29045 Kashihara KHA 大阪府柏原市 Kashihara, Osakaとして承認

UN-2012-28945 Kawagoe WAG 三重県三重郡川越町 Kawagoe, Mieとして承認

UN-2012-29295 Koga KGQ 茨城県古河市 Koga, Ibarakiとして承認

UN-2012-29045 Moriyama MYM 滋賀県守山市 Moriyama, Shigaとして承認

UN-2011-28436 Muta MYX 長崎県牟田 JPSDAとして承認

UN-2012-29722 Nagareyama NYM 千葉県流市 承認、Subdivisionを12(千葉県)とする

UN-2012-30136 Okegawa OK1 埼玉県桶川市う 承認

UN-2012-30136 Soka SOK 埼玉県草加市 承認

UN-2012-29044 Yonezawa YON 山形県米沢市 承認

UN-2012-19975 Iwata IAT 静岡県磐田市 Subdivisionを06(山形県)から22(静岡県)に変更

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本協会の事業は、財団法人JKA、

日本財団、一般財団法人貿易・産

業協力振興財団からの助成金等、

関係業界からの寄付金および賛助

会費ならびにコード事業の収入に

よって行われております。

JASTPRO 第38巻 第11号 通巻第413号

・禁無断転載

平成25年2月26日発行 JASTPRO刊12-12

発 行 所 (財)日本貿易関係手続簡易化協会 東京都中央区八丁堀2丁目29番11号       八重洲第五長岡ビル4階 電  話  03-3555-6031(代) ファクシミリ  03-3555-6032 http://www.jastpro.org編 集 人 山 本 達 見

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協会ホームページのリンク集のご案内

http://www.jastpro.org/l ink/index.html

当協会のホームページのリンク集には、当協会の活動と日本輸出入者コードのユーザの方々の

お役に立つと思われる関係諸機関・団体のホームページへのリンクを下記の分類で掲載しており

ますので、ご活用下さい。

s当協会に関係する我国の官公庁・公的機関(独立行政法人を含む)

s輸出入関係手続きに関係する業界団体等

s輸出入関係手続きに〔国内物流〕関係する情報源と用語集

s国際空港の公式ページ

s国際貿易港の公式ページ

s貿易振興・簡易化や電子商取引の標準化活動を行なっている国内組織・団体

s貿易振興・簡易化や電子商取引の標準化活動を行なっている海外組織・団体

s貿易振興・簡易化や電子商取引の標準化に関係する国際機関

sその他の組織・機関

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JASTPRO広報誌電子版のご案内

電子版につきまして、2012年11月号より当協会ウェブページのお知らせ欄にてご覧いただけるように

致しました。

   http://www.jastpro.org/topics/index.html

掲載通知をご希望の皆様には、メールにてその旨ご案内申しあげますので、ご希望の方は毎月20日

までに次の内容を下記のアドレスにお知らせくださいますようお願いいたします。

  sご所属の組織名称 

  s所属されている部署

  s申込者氏名

  s連絡先電話番号

  s送達をご希望のメールアドレス

 【申込み宛先】

   (財)日本貿易関係手続簡易化協会

   業務第三部長 石垣 充

   E-mail address: [email protected]

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