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2012 フード・アクション・ニッポン アワード 2012 実行委員会 4 アワード 2012 受賞プロジェクト事例のご紹介 フ ード・ア ク ション・ニッポ ン 大 賞 / 最 優 秀 賞 / 優 秀 賞 / 食 べて応 援しよう!賞 / 審 査 委 員 特 別 賞

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2012

フード・アクション・ニッポン アワード 2012 実行委員会

第4回

アワード 2012受賞プロジェクト事例のご紹介

フード・アクション・ニッポン

大賞/最優秀賞/優秀賞/食べて応援しよう!賞/審査委員特別賞

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フード・アクション・ニッポンとは 世界的な規模で食料問題が深刻化するなか、とりわけ食料自給率の低い日本にとって国産農産物

の消費拡大は、食料自給率の向上を実現するもっとも有用な手段です。そのためには、消費者の

啓発にとどまらず、「生産」「流通」「消費」それぞれの現場で問題意識を共有し、消費者・企業・

団体・地方公共団体などが一体となって国産農産物の消費拡大を具体的に推し進めることが重要な

課題となっています。この課題の実現を目的として、2008年度に食料自給率向上に向けた取組「フード・アクション・ニッポン」を発足させました。

 多くの消費者が、国産農産物を選択して、使い、食べることで、より多くの国産農産物が作られ、

国産農産物を使ったより優れた商品や料理、食生活が提案されるようになり、「豊かなおいしい国産

の食品に満ちたニッポン」が実現されます。「フード・アクション・ニッポン」は、その一翼を担って

いきたいと考えています。

フード・アクション・ニッポン アワード 2012とは 食料自給率向上を図る取組「フード・アクション・ニッポン」の一環として創設され、食料自給率

向上に寄与する事業者・団体などの取組を広く募集し、優れた取組を表彰することにより、

食料自給率向上活動を広く社会に浸透させ、私たちや未来の子どもたちが国産の食品を安心して

おいしく食べていける社会の実現をめざしています。

 開催4回目となる2012年度は、受賞・入賞の取組・活動を表彰すると同時に、参加者の先進的な取組をより広く紹介し、食料自給率の向上に寄与していきたいと考えています。

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3

実行委員長

東京農業大学 名誉教授

小 泉 武 夫

巻頭によせて

 日本にはすばらしい財産があります。それは、四季折々に彩りを変える自然。

 美しい田園や活気あふれる港は、私たちの原風景であり、おいしい農産物や水産資源は、まさに

自然の賜物です。そのうえ世界がうらやむほどのすばらしい食文化を祖先から受け継いでいます。

 にもかかわらず日本の食料自給率は39%(2011年度カロリーベース)に過ぎません。アメリカは

130%、フランスは121%。その他の先進主要国も軒並み60~90%の食料を自国でまかなっているのを

見るにつけ、たいへん残念な思いを禁じ得ません。

 これから先、日本の子どもたちが、さらにその次の世代の子どもたちも、安心して食卓を囲める

環境を残したい。そんな願いから20 08年「フード・アクション・ニッポン」はスタートしました。

それから4年、趣旨に賛同し、協力してくださる仲間が増えているのは、心強い限りです。

 本冊子には、「フード・アクション・ニッポン アワード 2012」に寄せられた全国の事例のなかから

優れたものをピックアップし、掲載しています。

 賞の数に限りがあって、応募事例のすべてを掲載することはかないませんが、ほとばしる情熱を

感じる取組、「その手があったか」と思わず膝をうつような取組がいくつもありました。

 このアワードを機に、すべての取組がさらに輝きを増し、その力が集まって、食に携わるすべての

人々が、そしてこの国が元気になることを願ってやみません。

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国産の米麹を焙煎した「キリン 生茶 香ばし米麹ブレンド茶」

4

目次 INDEX

北海道産飼料用米を活用したオリジナル商品「黄金そだち」8生活協同組合 コープさっぽろ

最 優 秀 賞

大 賞

商品部門[事例]

キリンビバレッジ株式会社

COOPノーザンび~ふ産直協議会

株式会社 神戸屋

ネピュレ株式会社/株式会社 榮太樓總本鋪

株式会社 セブン-イレブン・ジャパン

築野食品工業株式会社

一般社団法人 日本雑穀協会

日本たばこ産業株式会社

エイティエイト株式会社/一般社団法人 日本発芽玄米協会

サッポロビール株式会社

国産米の新しい需要創出に向けて! “お米で作ったシリアル”「全農コメフレ」

環境保全型農業と飼料自給率100%を実現した「コア・フード牛肉」

ネピュレ×榮太樓總本鋪のコラボ「素材と新技術で進化する伝統菓子」

国産の米粉、小麦粉、ライ麦粉、黒米、りんごを使用した「むぎの詩(うた)」シリーズ

小豆や米など国産原料にこだわったオリジナル和菓子への取組を強化

米糠を原料とした「こめ油」ならびに「こめ胚芽油」

岩手県オリジナル品種「半もちひえ」をベースにしたブレンド雑穀商品の企画開発

国産の米粉、米麹、果実を活用した清涼飲料水の開発、販売

米粉の特長を生かした病院・介護食「たのしい定食」

国産素材を使用したビール「日本の彩PREMIUMシリーズ」

※優秀賞の事例は各部門ごとに受賞者の五十音順で掲載しています。※各事例については、フード・アクション・ニッポン アワード 2012の応募書類と聞き取りにより作成したものです。内容については各受賞者にお問い合わせください。

三菱食品株式会社 10

12

12

12

12

13

13

13

13

11

11

食の安全と飼料自給率向上を訴える純国産鶏のたまご直売店の運営 たまご直売店「さくらともみじ」

株式会社 静鉄ストア 静農会

長崎鼻B・Kネット

石川県立翠星高等学校 食品科学研究会

株式会社 旬材

商品開発から売場開発まで米粉を通じた食料自給率向上に向けた取組

県内生産者の経済活動の活性化と就農率&食料自給率アップへの取組

景観整備の花を利用した特産品づくり

農業高校生による模擬株式会社「SUISEI-FACTORY」の取組

「日本の食と漁業を守る」新水産流通システムSTTSの開発と運用

株式会社 セブン&アイ・ホールディングス 14

16

16

16

15

15

優 秀 賞

最 優 秀 賞

流通部門[事例]

優 秀 賞

こ がね

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フード・アクション・ニッポン アワード 2012

最 優 秀 賞

販売促進・消費促進部門[事例]

福井テレビジョン放送株式会社/とんぼふぁーむ株式会社耕作放棄地を再生した おかえりマイファーム

大分市 17

19

19

19

19

20

20

20

20

18

18

北海道産小麦「きたほなみ」を使用した製パン適性の高いパン用粉「TSUBAKI(つばき)」を開発

カゴメ株式会社/国立大学法人 愛媛大学 理学部 21

23

23

23

22

22

優 秀 賞

最 優 秀 賞

研究開発・新技術部門[事例]

優 秀 賞

家庭料理にもっと米粉を! ~大分市米粉料理インストラクター制度~

農産物、食品の抗酸化活性測定法「SOAC法」の開発ソ ア ッ ク

東北を中心とする東日本産食品の販路開拓とブランディング

日本酒と焼酎の総合研究と酒文化の支援

ぎょしょく普及事業

漬物を通じて地域を活性「T-1グランプリ2011」

出汁をテーマに鹿児島の素材と料理をアピール

たかしま生きもの田んぼプロジェクト

「オークビレッジ柏の葉」における農と食を融合させた啓発の取組

米飯文化と炊飯技術を伝承するRiceサイエンスセミナー

過疎化、高齢化する地域発「葉っぱビジネス」のブランド化

一般社団法人 東の食の会

日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会/特定非営利活動法人 FBO

東京都

T-1グランプリ実行委員会

「出汁の王国・鹿児島」プロジェクト実行委員会

たかしま有機農法研究会/株式会社 アミタ持続可能経済研究所

KCJ GROUP株式会社

大阪ガス株式会社

株式会社 いろどり

大豆のかわりに新潟産玄米を使った食物アレルギー対応の「おみそ調味料」

安価な産卵器の開発によるバイ貝の産卵促進

汎用性の高い「機能性大麦粉」の開発

先端インセクトテクノロジーによる革新的循環システムの開発

日清製粉株式会社/日清製粉グループ

長岡機能性食品創造研究会

鳥取県栽培漁業センター

国立大学法人 埼玉大学大学院理工学研究科 教授 円谷陽一/教育学部 教授 川嶋かほる/オープンイノベーションセンター 特命教授 東海林義和

アビオス株式会社

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28審査委員総評

30フード・アクション・ニッポン アワード 2012 実施報告

審査委員特別賞

おむすびの絵本と童謡「きゅっころりん」

[事例]

金沢の伝統野菜、加賀野菜の生産振興と消費拡大

高校生が考案。地元食材を生かしたコンビニ商品の開発

25

25

25

25

25

25

24

24

24

24

米粉の利活用をめざす高校生の実践

健康志向パックごはん「ファンケル®発芽米ごはん」

国産材料を使用した高たんぱくマーガレットケーキ

「畑人(はるさー)」と飲食店が手を結びやんばるのおいしさを全国発信

国産牛と鶏肉をハラル製品化

さまざまな姿に変わる米のすばらしさを伝える歌

小麦製粉工場建設を契機とした地産、地加工、地消への取組

食べて応援しよう!賞[事例]

27

27

27

27

27

27

26

26

26

26

Lele de bea(レレデビー)

やんばる畑人(はるさー)プロジェクト

株式会社 山本忠信商店

マレーシア ハラル コーポレーション株式会社

株式会社 神明

静岡県立磐田農業高等学校 生産流通科 課題研究[米粉班]

学校法人 相模女子大学/株式会社 3・SUN・TREASURE

株式会社 サークルKサンクス

株式会社 光文社 女性自身編集部

金沢市農産物ブランド協会

「もっとNippon!」~地方の元気は、日本の元気。~

旅館、農家、直売所が協力、共存し福島産食材の利用を促進

CURRY ACTION NIPPON カレーをたべよう、ニッポンをたべよう

ご当地食材を使ったメニューでの「ポイントサービスキャンペーン」

秋田特産品専門サイト「秋田ずらり」で地産地消

生産者の想いをつなげる「東北想い・宮城の大豆の豆腐」

「がんばっぺ! 茨城・福島100円試食店」

足柄茶の販売促進活動「地元かながわにおける復興支援」

秋田から東北全体を盛り上げる「京急あきたフェア」

岩手県の食材を使った商品開発と小学校などでの料理教室の開催

三菱食品株式会社

株式会社 栄楽館 ホテル華の湯

ハウス食品株式会社

ネクセリア東日本株式会社 盛岡支店

ノリット・ジャポン株式会社

株式会社 大地を守る会

株式会社 常陽銀行/日本興亜損害保険株式会社

株式会社 京急百貨店

京急あきたフェア(秋田県、JA全農あきた、京急電鉄)

GINZA kansei

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第4回

アワード 2012受賞プロジェクト事例のご紹介

フード・アクション・ニッポン

大賞/最優秀賞/優秀賞/食べて応援しよう!賞/審査委員特別賞

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大 賞

北海道産飼料用米を活用したオリジナル商品「黄金そだち」

農業に元気を! ブランド商品で休耕田の再利用を促進

所在地:北海道札幌市西区発寒11条5-10-1 電話:011-671-5797 URL:http://www.coop-sapporo.or.jp/ e-mail:[email protected]

プロジェクト:

が ねこ

生活協同組合 コープさっぽろ受賞者:

8

 広大な農地を活用した稲作が盛んで、米どころとして知られて

きた北海道だが、1970年から始まった国の減反政策や米需要低下

の影響を受けて、休耕田が増加し、北海道の農業全体が活気を

失い、関係者を悩ませてきた。

 北海道全域で共同購売活動を展開し、地元産品にこだわりながら

北海道の一次産業の活性化に努めるコープさっぽろは、休耕田の

現状を打開すべく飼料用米の利用を促すプロジェクトを立ち上げた。

従来、家畜飼料はトウモロコシなどの外国産輸入穀物に頼ってき

たが、その一部を道産の飼料用米にシフトすれば、食料自給率向上

に貢献できると考えて始めた。このプロジェクトから誕生したのが

大賞

商品部門

審査委員特別賞

食べて応援しよう!賞

流通部門

販売促進・消費促進部門

研究開発・新技術部門

食料自給率向上のためには、農地のフル活用が欠かせないが、いまだに多くの休耕田が残されたままになっている。この日本農業の抱える難題を解決すべく、日本一の耕作面積を持つ北海道のコープさっぽろが挑んだ。

休耕田問題を抱える北海道農業

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9

オリジナル商品「黄金そだち」シリーズだ。黄金そだちとは、道産

飼料用米を使って飼育した牛、豚、鶏や、それらの家畜がもらたす

牛乳、たまごなどの畜産物すべてにつけられるブランド名である。

 全国的に飼料用米を使ったブランド商品は決して目新しいものでは

ないが、酪農王国の北海道で実施する効果は極めて大きいと考え、

2010年度に検討が始まった。

 まずは、出荷作業の連携によって生産者と古くから密接にかか

わってきたコープの強みを生かし、生産者に直接呼びかけた。折し

も飼料の価格が高騰していたこともあって7人の生産者が協力に

名乗りを挙げ、プロジェクトは動き出した。

 プロジェクトを推進するうえで肝心なのは、飼料用米の仕入れ

から商品の生産、そして販売までを円滑に行うための一貫した

ネットワークの構築だ。

その第一歩として

「コープさっぽろ新規

需要米協議会」を設

置し、飼料用米の仕

入先である米出荷団

体と畜産、鶏卵関係

者の橋渡しをした。そ

の結果、初年度の

2010年度には750トン

だった飼料用米の取

扱量が、2012年度は

倍以上の1,598トンと

飛躍的に増えた。また、

波及効果として、生産

者同士の交流が盛ん

になり、北海道の農業

全体を活性化させて

いる。

 現在、力点を置くのは生産された畜産物をスムーズに消費者ま

で届けるネットワークづくりだ。活動を活性化するには、生産した

ものをいかに多くの消費者に届けるかが鍵となるだけに、喫緊の

課題として取り組んでいる。

 始動から3年目のまだ若いプロジェクトであるが、道産飼料用米の

使用量増加だけでなく、協力生産者は7人から8人に増え、商品の

ラインアップもスタート時の「黄金そだちのたまご」1アイテムから

「黄金そだちの別海牛乳」「黄金そだちの美瑛豚」「黄金そだちの

知床どり」「黄金育ちのおこっぺヨーグルト」など、加工品も含めて

17アイテムに拡大し、順調に成果を上げている。

 なかでも、音更町

の竹内養鶏場で生

産している「黄金

そだちのこめいろ

ゆめたまご」は、

99.8%が道産飼料

で、そのうち67%

が飼料用米という

自家配合飼料を使

用して生産してい

る。この配合率は、黄金そだちシリーズの中でもっとも高い。

 同養鶏場のたまごは一般的なたまごと比べ、黄身が白っぽいのが

特徴だ。まさに“こめいろ”そのもので、動脈硬化や高血圧など

生活習慣病を予防するといわれるオレイン酸の数値が高いことが

わかっている。また、体内でコレステロールに変化するリノール酸は

低い値が出ており、総合するとコレステロールが17%減少するなど、

栄養や健康面の効果も科学的に証明された。現在、さらなる栄養価

の増進や飼料用米の適正配分などを研究中だが、生産者からは

飼料用米を使い始めて家畜が元気になったという報告もあり、「黄金

そだちのこめいろゆめたまご」の科学的な裏付けが待たれている。

 現在、アイスクリーム、やきとりの缶詰などの商品化も計画されて

いる。畜産物は加

工の裾野が広いだ

けに、今後の商品

展開に特に期待が

かかる。

 商品のライン

アップが充実すれ

ば、それだけ売場

展開も広がり、知

名度もアップする。

ブランド商品への評価が高まれば、さらにプロジェクトは盛り上がり、

生産者の協力も拡大する。また、飼料用米の作付け面積の拡大、

休耕田の再利用促進、食料自給率向上というプラスの連鎖が

起きることも期待される。まだまだ、発展途上のプロジェクトでは

あるが、その将来性は極めて大きい。

大賞

商品展開の拡大で食料自給率向上をめざす 商品部門

審査委員特別賞

食べて応援しよう!賞

流通部門

販売促進・消費促進部門

研究開発・新技術部門

一貫したネットワークづくりが急務

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商品部門は、食料自給率向上に寄与する生鮮品、加工食品、外食メニューなどの製品が対象です。国産食材のおいしさや特長を新たな視点でとらえて開発した製品や、地域の食材を活用した斬新な製品が寄せられました。

商品部門

最優秀賞国産米の新しい需要創出に向けて!“お米で作ったシリアル”「全農コメフレ」

所在地:U R L:

東京都大田区平和島6-1-1(東京流通センター)http://www.mitsubishi-shokuhin.com/index.shtml

電  話:03-3767-4232

プロジェクト:

三菱食品株式会社受 賞 者:

10

 食料自給率の向上や農業活性化には欠かせない国産米の活用。

近年は米粉入りのパン、スイーツなどの商品が出回るようになった

とはいうものの、まだ日常的な食べ物としての生活者の認知度は低い

のが現状だ。そのようななか、新たな「お米の食べ方」をめざして

商品開発に乗り出したのが三菱食品だ。同社は、コーンや小麦粉など

輸入原料が多く使われているフレークで国産米を使った商品を

開発すれば、食料自給率の向上に直結し、米を使った商品として

新たなインパクトも創出できるに違いないと考え、国産米を原料と

したシリアルの商品開発に踏み出した。

 “お米で作ったシリアル”を全国で日常的に食べてもらえる商品

にするため、三菱食品は、生活者が納得する国産米のブランドで

あり、全国の米の約3分の1を取り扱うJA全農と、シリアルメーカー

大手の日清シスコと連携、共同開発を開始した。

 国産米の

消費を拡大

したいJA

全農と、シ

リアル市場

に新風を送

り込みたい

日清シスコ

の考えが三

菱 食 品の

大賞

商品部門

審査委員特別賞

食べて応援しよう!賞

流通部門

販売促進・消費促進部門

研究開発・新技術部門

新たな米のニーズ創出をめざして

原料供給、製造、流通のコラボレーション

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11

「国産米に新たなニーズを!」というコンセプトと合致。3者間のかっ

達な意見交換と度重なる試作を経て、“お米で作ったシリアル”

「全農コメフレ」が誕生した。

 全国に販路を持つ三菱食品が大々的に売り出した「全農コメフレ」

はその意外性から注目を浴びた。しかし、“お米で作ったシリアル”

という新しい試みだっただけに、「かたい」「牛乳を入れてもやわら

かくならない」といった米の特性をネガティブに受け止める意見も

多く寄せられた。

 そこで、米ならではのもちっとしたやわらかい食感で、牛乳をか

けないで食べるケースも想定して歯ごたえを残したシリアルの開発に着

手した。試作品は各社の社内評価だけでなく料理学校などの外部モ

ニター調査も実施、そこで得られた意見をもとに試行錯誤を重ねた。

 最終的には、「サクッ」とした食感からフレークらしい「かる~い」

ものに変え、2012年7月に東京と大阪で開催した「三菱食品展示会

グランドフェア」で披露。ここで得た関係者の反応をもとに最後の

調整を行ってリニューアルし、10月より出荷を開始した。

 作って終わりではなく、生活者の意見や市場の動きに合わせて

柔軟に対応できるのも、それぞれに強みを持った3者が連携した

からこそである。

 三菱食品では、今後、全国のマーケットに向けて、さらなるPR

強化を企画している。将来的に「全農コメフレ」がブランドとして認知

され商品力が高まれば、米を原料にしたフレーク以外のジャンル

にも、同ブランドを

拡大させることも

視野に入れている。

 また、企業間コ

ラボレーションに

よる食料自給率の

向上に貢献する企

画を、今後も継続

テーマとして推進

していく。ジャンル

にとらわれること

なく、生活者のラ

イフスタイルを起点

としたさまざまな

企画の検討を始め

ている。

大賞

商品部門

審査委員特別賞

食べて応援しよう!賞

流通部門

販売促進・消費促進部門

研究開発・新技術部門

「サクッ」から「かる~い」へ

新たなコラボレーションを模索中

優秀賞

 エイティエイトは、米に関連する事業を幅広く展開する共和

食品グループの中で、米の加工(早炊き加工、レトルト加工、冷凍

加工、米製粉から米粉加工)を行っている企業。米粉においても

自社製粉工場をもち、幅広い商品を展開している。

 そのエイティエイトが、日本発芽玄米協会が設立した「日本の食と

疾病予防研究会」で管理栄養士たちと話すなかで生まれたプロ

ジェクトが、病院・介護食の開発である。現状の術後食や介護食は

ケミカル商品が多く、それを苦痛に感じる患者さんもたくさんいる。

全国国立病院機構149施設で実態調査した結果、病院給食における

炭水化物摂取量が少ないという傾向もあり、米加工製品による

無理のない摂取をめざして、開発がスタート。おいしい経口食は、

栄養面でも精神面で

も、回復に貢献でき

るはず、と、すべて国

産品の原材料を使

い、4種類の主食風

おかずを組み合わせ

た病院・介護食「た

のしい定食」として

販売していく予定。

 「キリン 生茶」ブランドから発売された「キリン 生茶 香ばし米麹

ブレンド茶」は、日本の伝統素材である「米麹」をキリングループ

の知見を生かして焙煎した「焙煎米麹」を使用した、カフェインゼロ

(100ml当たりカフェイン0.001g未満をカフェインゼロとしている)

のブレンド茶だ。焙煎した大麦、米、トウ

モロコシで作ったベースに、「焙煎米麹」を

加えることで、香ばしさとともに、ふくよかな

甘みを引き出している。また、朝摘みした

生の新芽のおいしさを生かした生茶葉

抽出物を加えることで、後切れのよい味わい

を実現している。

 パッケージでは、「米麹」や「焙煎米」、

「焙煎大麦」などの素材をデザインすること

で、穀物ベースのブレンド茶であることを

わかりやすく表現した。

 今後も、茶、米、麹といった、日本古来

の素材を使いながらも、その新たな利用

法を開発、提案していくことで、日本の食

文化の活性化に寄与したい、としている。

米粉の特長を生かした病院・介護食「たのしい定食」

所在地:愛知県一宮市明地字南茱之木12-1URL:http://www.group-kyowa.com/group/eightyeight/

電話:0586-69-7777e-mail:[email protected]

プロジェクト:

エイティエイト株式会社 一般社団法人 日本発芽玄米協会受賞者:

プロジェクト:

受賞者:

国産の米麹を焙煎した「キリン 生茶 香ばし米麹ブレンド茶」

所在地:東京都渋谷区神宮前6-26-1 電話:

キリンビバレッジ株式会社0120-595955(お客様相談室)

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12

 全国に約1万4,500店をもつコンビニエンスストア、セブン-イレブン

では、年齢の高い消費者を含め、幅広い層のニーズに対応するため、

オリジナル和菓子の取組を強化している。米、小豆などの主原料を

国産原料にこだわることで、味、品質、安全・安心を追求。2008年に

オリジナルチルド和菓子「七色茶屋」(2011年5月からはブランディング

により「七色茶屋」からセブン-イレブンオリジナル商品のマークに

変更)の販売を東北、関東、中京地区でスタートさせてからは、順次

販売地区を拡大して、現在では北海道をのぞく約1万3,500店で販売中。

 オリジナル和菓子の売り上げは年々伸長を続けており、2011年度

には前年比150%になった。それにともない、主要原料として使用

している小豆(飴用)、もち粉、上新粉の使用量も増加した。水よう

かん、大福、わらび餅など、不要な添加物を使わず、国産原料の

おいしさを際

立たせた、バ

ラエティ豊か

な和菓子で、

今後も国産原

料の使用量

アップに貢献

していく。

小豆や米など国産原料にこだわったオリジナル和菓子への取組を強化

所在地:東京都千代田区二番町8-8URL:http://www.sej.co.jp/

電話:03-6238-3765e-mail:[email protected]

プロジェクト:

株式会社 セブン‐イレブン・ジャパン受賞者:

 肉牛生産者と、生活協同組合および関係機関で組織された

COOPノーザンび~ふ産直協議会は、「人・牛・環境・資源」にこだ

わりを持ち、飼料自給率100%での牛肉生産に取り組んでいる。

 粗飼料主体の肉牛生産をめざし、肉質や粗飼料の利用性に優れ、

気候風土にも適したアンガス系統種を飼育。放牧を活用した仔牛

生産から肉牛出荷まで、地域内一貫体系の生産によって、粗飼料

の自給はもとより、食品副産物であるじゃがいもの皮や粕、米糠、

豆乳粕などの未利用資源までも飼料として有効活用。2007年以降、

飼料自給率100%を実現し、純国産牛肉「コア・フード牛肉」として、

北海道各地の5生産者により継続して出荷、純国産赤身牛肉の価

値観とおいしさを提案している。

 「牛まるごと1頭を

登録制(6カ月単位)

で買い支える」という

パルシステム生活協

同組合連合会の購入

システムも、生産者

と消費者の相互理解

を高める貴重な機会

となっている。

 近年、新ジャンルなどの市場が拡大する一方で、ビールに対しては

本格感やこだわりといった期待が高まっている。そんななか、

サッポロビールでは、日本の風土で手間ひまかけて作った素材を

ふんだんに使用したビール「日本の彩PREMIUMシリーズ」を開発し、

全国のコンビニエンスストアで販売している。シリーズ第1弾「夏の

香り」では、原材料として国産ホップ100%(うち一部は自社で

育種開発を行った希少な富良野産「ゴールデンスター」を使用)、米は

北海道産米「ななつぼし」を100%、麦芽についても北海道産大麦

麦芽を75%以上使用。厳選された国産素材が生み出すリッチな

おいしさが、消費者から高い評価を受けている。四季をテーマに

したシリーズ展開も話題

で、第2弾「秋の幸」も、

同様に国産の原材料を

たっぷりと使用している。

 日本の四季の美しさ、

豊かな食文化をイメー

ジしたネーミングとデザ

イン。安全・安心で良質な

商品をという消費者の

切実な思いに応えている。

環境保全型農業と飼料自給率100%を実現した「コア・フード牛肉」

所在地:東京都千代田区東神田2-9-5URL:http://www.pal-system.co.jp/syouhin/

sanchokuniku/beef/sanchi/food.html

電話:03-5821-3010e-mail:[email protected]

プロジェクト:

COOPノーザンび~ふ産直協議会受賞者:

プロジェクト:

受賞者:

国産素材を使用したビール「日本の彩PREMIUMシリーズ」

所在地:東京都渋谷区恵比寿4-20-1URL:http://www.sapporobeer.jp/

電話:03-5423-7230e-mail:[email protected]

サッポロビール株式会社

大賞

商品部門

審査委員特別賞

食べて応援しよう!賞

流通部門

販売促進・消費促進部門

研究開発・新技術部門

プロジェクト:

受賞者:

国産の米粉、小麦粉、ライ麦粉、黒米、りんごを使用した「むぎの詩(うた)」シリーズ株式会社 神戸屋

所在地:大阪府寝屋川市点野2-5-2URL:http://www.breads-studio.com/

電話:072-839-2670e-mail:[email protected]

 イーストフード、乳化剤無添加の、ヨーロピアンタイプの本格派パン

「むぎの詩(うた)」ブランドで、国産材料を使用した商品を積極的に

開発、販売している神戸屋。特に今年度は、国産小麦を使った商品に

力を入れている。

 たとえば、国産小麦から作った「石臼挽き全粒粉」は、全粒粉

特有の臭みがまったくなく、小麦粉本来のうまみをしっかり味わえる

と好評を呼んでおり、国産小麦のおいしさをアピールすることにも

つながっている。「北海道産キタノカオリ」など、商品名に産地と

材料名を表示したり、販売員や店頭ポップによる説明に力を入れて

いることでも、国産材料への意識を高めている。

 また、東北地方で盛んに生産が行われている黒米や、ふじ

りんごを使用したパンも製造しており、東北地方の特色ある食材を

使用することで、被災地の農業をバックアップ。今後は、現在発売

している商品

の改良にも

取り組み、国

産材料の使

用比率をさら

に上げてい

く予定だ。

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13

 「ネピュレ」とは、農産物を素材そのままにピューレ状にした新しい

食品。組織破壊や栄養成分の流出を大幅に抑える新製法により、

完全無添加で、色、香り、味を損なうことなく加工することを実現

した。規格外の農産物を原料として活用でき、農作物の無駄のない

有効利用にもつながる。地方自治体にネピュレ製造装置を設置し、

産業化するプロジェクトも進行中。地域の活性化にも力を注ぐ。

 その最新食品ネピュレと、1857年創業の老舗和菓子店、榮太樓

總本鋪がコラボレーションし、新技術と伝統的な製法が融合する

ことで、進化した伝統菓子が生まれた。これまでの飴づくりには

どうしても不可欠だった着色料、香料を使うことなく、素材本来の

色と風味を生かした果汁あめ

のほか、これまでに約40種類

の商品を開発。

 あめに特化したセカンド

ブランド「あめやえいたろう」

は、和菓子に関心のなかった

消費者の注目も集めており、

食文化を継承することにも

つながっている。

ネピュレ×榮太樓總本鋪のコラボ「素材と新技術で進化する伝統菓子」

所在地:東京都中央区京橋2-11-6 7FURL:http://nepuree.com/

電話:03-3561-8600e-mail:[email protected]

所在地:東京都中央区日本橋1-2-5URL:http://www.eitaro.com/

電話:03-6880-2903e-mail:[email protected]

プロジェクト:

ネピュレ株式会社/株式会社 榮太樓總本鋪受賞者:

ネピュレ:

榮 太 樓:

 日本雑穀協会は、ヒエ、キビ、アワなどの雑穀の普及、啓発活動

を通じて、食文化の育成や食料自給率の向上など、日本農業の

発展に寄与することを目的に設立された。これまでにもさまざまな

普及活動を行ってきたが、今回は、岩手県で育種開発されたオリジナル

品種の「半もちひえ」をメインにし、その特長を生かしたブレンド

雑穀の開発を、雑穀アドバイザー、雑穀クリエイター認定者を対象

に企画した。その結果、「食べやすい雑穀ごはん~小粒プラス」

「花咲かじいさん」「わたしキ・レ・イの美かた」の3商品が開発

された。当企画は、岩手県産雑穀だけでなく、お米と組み合わせて

炊くことでごはんをさらにおいしくして、国産米の消費も伸ばそうと

している。岩手県内の駅や空港などの土産ショップのほか、ホテル

やレストランへの業

務用としても販売を

展開。岩手県花巻市

における雑穀月間

(10月、11月)には、

イベント景品にも使

用して、観光客への

認知も高めていく

予定である。

 米の可能性や、日本のさまざまな果実を活用した清涼飲料水で、

国産素材の素晴らしさを再認識してもらおうと、ユニークな製品

開発を続けている日本たばこ産業。2009年から開発、販売を

スタートした米の飲料は、現在発売中の「米づくり まろやか仕込み」

で第4弾となった。これまでも使用していた国産米の米粉に、同じく

国産米の米麹を加えた「米粉、米こうじ糖化液」を使用し、米の

うまみとまろやかさをさらに高めた味わいで、大手コンビニエンス

ストアや大手量販店でも販売されるなど、取扱量を伸ばしている。

 果実系飲料も好評で、国産の夏みかん、いよかんを使用した

清涼飲料水は長年販売を継続中。大分県日田市産の梨を限定使

用し数量限定で販売

した「The・おおいた

日田梨」も人気を得た。

さまざまな国産素材

を有効活用し、素材

のよさをアピールする

ことで、日本の農業を

応援していきたいとし

ている。

岩手県オリジナル品種「半もちひえ」をベースにしたブレンド雑穀商品の企画開発

所在地:東京都中央区日本橋兜町15-6 6FURL:http://www.zakkoku.jp

電話:03-6661-7340e-mail:[email protected]

プロジェクト:

一般社団法人 日本雑穀協会受賞者:

プロジェクト:

受賞者:

国産の米粉、米麹、果実を活用した清涼飲料水の開発、販売

所在地:東京都品川区大井1-28-1 6FURL:http://www.jti.co.jp/softdrink/

電話:03-5742-8926

日本たばこ産業株式会社

大賞

商品部門

審査委員特別賞

食べて応援しよう!賞

流通部門

販売促進・消費促進部門

研究開発・新技術部門

 1947年に精麦業を創業した築野食品工業。麦の販売先である

米屋から、精米時に発生する米糠の処分に困っていることを聞き、

米糠から「こめ油」を製造することに挑戦したのを始まりとして、

以来、米糠の高度有効利用について研究開発を続けている。

 他の植物油が輸入原料に依存しているなか、米糠から作る

「こめ油」ならびに「こめ胚芽油」は、国産原料のみで生産できる。

コレステロールの吸収を防止するなど機能性も高く、胸やけや胃もたれ

しにくいことも特長で、おいしさと安定性が評価され、ポテトチップス

などの業務用や、高級料亭などにも

普及している。学校給食や病院での

需要も増えており、今後は、高齢化

社会の食生活の質の維持、向上に

ついても提案していくつもりだという。

 商品を使った食育イベントや料理

教室の開催、米糠からの抽出成分

を配合したスキンケア製品の開発

販売など、啓発活動にも熱心だ。

国内自給率アップはもちろん、海外

輸出も増やして、農業の活性化にも

努めている。

プロジェクト:

受賞者:

米糠を原料とした「こめ油」ならびに「こめ胚芽油」

所在地:和歌山県伊都郡かつらぎ町新田94URL:http://www.tsuno.co.jp/

電話:0736-22-0061e-mail:[email protected]

築野食品工業株式会社

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流通部門は、食料自給率向上に寄与する製造、流通、フードシステムなどに関する取組が対象です。異なる領域や業種との効果的な連携や、困難な課題を解決して国産食材活用に結びつけた魅力的な事例が寄せられました。

流通部門

最優秀賞商品開発から売場開発まで米粉を通じた食料自給率向上に向けた取組

所在地:U R L:

東京都千代田区二番町8-8http://www.7andi.com/

電  話:03-6238-3000(代表)

プロジェクト:

株式会社 セブン&アイ・ホールディングス受 賞 者:

14

 近年、注目を浴びる米粉だけに、その利用促進に努める大手企業

の参入も目立ち始めた。なかでも、傘下に1万4,500店以上の小売

店を持つ流通最大手のセブン&アイ・ホールディングスが本格的

に米粉商品の普及に乗り出したことは、業界に大きなインパクトを

与えた。しかも、その取組は巨大流通網を使った米粉商品の販売

だけでなく、ヒット商品の開発による新規需要の創出、店頭フェア

の開催や大手メーカーとの連携など多岐にわたり、米粉市場の飛

躍的な拡大に貢献した。

 もっとも消費者に直結した活動が2009年にスタートした「米粉

うまっ。」フェアである。全国159店舗のイトーヨーカドーで開催す

る恒例のイベントとして位置づけられ、米粉、米粉入りカップ麺、

乾麺、マカロニ、パスタ、お菓子などさまざまなジャンルの米粉商品を

一堂に揃えると同時に、フード・アクション・ニッポンの活動の一環

である「米粉倶楽部」との連携をはかり、専用の販促ツールを活用し

ながら特設コーナーを設置。さらに『おいしい米粉を食べようキャン

ペーン』を展開、プレゼントキャンペーンも実施した。このフェアの特

集チラシでは、単に商品を掲載するのではなく、米粉の特長を生かし

たレシピとセットで紹介することで、米粉の使用方法をわかりやすく

訴求。これらの取組により、各商品の売り上げを著しく伸ばしている。

 さらに消費者の米粉に対する意識を高めるために、売場

のレイアウトも工夫。従来、から揚げ用米粉は粉類売場に、米

粉パンはパン売場と、コーナー別に陳列していたが、米粉に限って

は全米粉商品を1カ所に揃えたコーナーを全国のイトーヨーカ

ドー約80店舗で常設し、米粉の消費を拡大し、食卓で日常的に使

われることをめざしている。

大賞

商品部門

審査委員特別賞

食べて応援しよう!賞

流通部門

販売促進・消費促進部門

研究開発・新技術部門

米粉商品をより消費者の身近に

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優秀賞

15

 新たな取組として期待されるのが、セブン&アイグループのプライ

ベートブランド「セブンプレミアム」として開発したオリジナルの米粉

菓子と、明治、カルビーなどとコラボレーションし共同開発した

米粉商品類。これらはセブン-イレブン、イトーヨーカドー、ヨーク

ベニマルなど、合計約1万4,500店舗に並べられている。

 なかでもセブンプレミアムの

12アイテムの菓子が好調で、2カ月

で100万個以上売り上げたもの

もあり、累計860万個にも上った。

 一口に米粉といっても、米の

品種により、ビスケットに合うも

の、スナックに合うもの、とそれ

ぞれの原料によって味わいが

格段に違う。そのため、原料その

ものの調達にもこだわり、生産

者の協力も仰いだ。

 特に好評を博したのがライススナック「米粉のふんわり揚げ」。

2012年2月、「たらこマヨ味」「梅味」を発売したのに続き、6月には

「七味マヨ味」「チーズ味」と味のバリエーションを広げ、ファンを着

実に増やしている。

 また、米粉の魅力が伝わるよう、ネーミングやパッケージにも

工夫をこらしている。「ザクザク食感 米粉のクッキー」、「ザクザク

食感 米粉のビスケット」、「軽い食感 米粉のふんわり揚げ」、「米

粉のかりかり揚げ」など、米粉を使用していることと、米粉独特の

食感や風味が伝わる商品名をシズル感あふれる写真で訴求した。

さらにパッケージに「米粉倶楽部」のマークを入れ、フェアの店頭

POPとも連動させた。

長年蓄積されたセブン

&アイグループの商品

開発ノウハウが駆使さ

れた、流通、売場開発

までトータルな取組で、

多くの人に支持される

ヒット商品の創出に成

功した。

 今後も米粉フェア、セブンプレミアムの商品開発を継続すると

ともに、メーカーをはじめ、多くの企業との連携を推進し、米粉の

消費拡大、日常化をめざしていくという。各メーカーにとっても、

セブン&アイグループが全国規模の販路を提供する意義は大きく、

米粉ビジネス全体の底上げ効果も期待されている。

大賞

商品部門

審査委員特別賞

食べて応援しよう!賞

流通部門

販売促進・消費促進部門

研究開発・新技術部門

独自の新商品開発にも力を入れる 米粉の風味を伝えるネーミング

 石川県唯一の農業専門高校である翠星高等学校では、部活動の

一環で模擬株式会社「SUISEI-FACTORY」を設立。地産地消

の推進、食料自給率の向上、地域の素材を生かした加工食品作り

の研究などを生徒たちで行っている。

 具体的な取組としては、市場に出回らない規格外トマト、廃棄

される柚子の搾りかすや地元産大麦「こまつむぎ」などに付加価値

を与え、商品化する技術を農家や農業法人に指導することで、収穫

した食品を加工して、販売するところまでを一元的に実施する

“農業の6次産業化”を支援している。現在は、地元産トマトで

作った業務用ピューレがレストランとの間で商談が成立しつつあり、

柚子のマーマレード、こまつむぎの全粒粉を再製粉してできる製菓

材料を使ったスイーツ

も売れ行きが順調に

伸びている。また、地

元産米粉の普及活動

では、市内の洋菓子店

やレストランとの技術

交流が生まれるなど、

多岐にわたる振興が

期待されている。

 日本の民間企業で唯一、純国産鶏「さくら」と「もみじ」の

“種(=遺伝子)”を保有し、育種改良をしている株式会社 後藤

孵卵場。同社では、純国産鶏を通して日本の農業の活性化と自主性、

食料自給率の向上を促進している。その活動内容のPRを図るため、

「さくらたまご」「もみじたまご」の直売店を運営。こうした同社の

“地産地消・国産国消”の意識を国内に広めるべく、関西エリアで

純国産鶏飼育農家へのPR活動も実施している。

 また、養鶏飼料に関しても積極的に取り組んでいて、「エコフィード

の発酵利用」を掲げている。食物残渣(米糠、おから、しょう油粕

など)を利用するエコフィードは、環境負荷が少ないものの、保存性が

悪く、処理コストもかかるといった問題点はあるが、発酵させる

ことでそれらの問題を

解消しようというもの。

それに伴い、賛同養

鶏場への発酵機器

の斡旋や飼料配合

の技術的ノウハウの

向上にも取り組み、

飼料の自給率向上

が期待されている。

農業高校生による模擬株式会社「SUISEI-FACTORY」の取組

所在地:石川県白山市三浦町500-1 電話:076-275-1144e-mail:[email protected]

プロジェクト:

石川県立翠星高等学校 食品科学研究会受賞者:

プロジェクト:

受賞者:

食の安全と飼料自給率向上を訴える純国産鶏のたまご直売店の運営

所在地:兵庫県姫路市花田町勅旨36-1 電話:079-253-1071e-mail:a-kado@gotonohiyoko.co.jpURL:http://onlyone-site.com/goto-tamago/

たまご直売店「さくらともみじ」

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2012

16

 長崎鼻B・Kネットでは、耕作放棄地を再生利用する方法として、

花の作付けをして「花公園」にする活動を行っている。豊後高田市の

景勝地である長崎鼻の景観を見事に蘇らせた。同時に、花の種実

から作る植物油の生産、販売もスタート。その販売収益は花公園

整備のための資金にもなり、経済的な自立と安定も図っている。

遺伝子組み換えのない純国産「ナナシキブ」を使用した菜の花油、

高オレイン酸のひまわり油などは、地元の特産品となりつつあり、無

駄のない循環システムが定着している。耕作放棄地の活用で地域

産業の活性化を促したと同時に、土地を荒らさずにいつでも耕作可

能にしておけるという利点も生まれている。耕作希望者が現れれば、

スムーズに農地を渡すことができ、就農のハードルを下げることに

もつながっている。

 同じように耕作放

棄地に頭を悩ます地

域にとっても、解決の

足がかりとして有効な

取組だ。数年後には

製油所も設置し、地

域産業として定着させ

ることを計画している。

景観整備の花を利用した特産品づくり

所在地:大分県豊後高田市見目4060URL:http://nagasakibana.bungotakada.net

電話:0978‐54‐2200e-mail:nagasakibanab-knet@topaz.ocn.ne.jp

プロジェクト:

長崎鼻B・Kネット受賞者:

 静鉄ストアと契約する生産農家約240人で構成する静農会では、

農薬を極力減らし、安全・安心でおいしい商品を作り出している。

静岡県内の生産者と、栽培農法や経営管理などの情報を共有。

地元スーパーの店舗に地場農産物直売コーナーを設置して、消費者と

極めて近い位置で野菜の販売を行っている。地域経済の活性化や

地産地消の推進を目標とした生産管理体制の確立を図っている。

 静農会で販売する商品はすべて、生産者名が印字され、陳列も

生産者が行っている。そうすることで、生産者が直接、消費者の

意見を聞くことができたり、生産者が消費者に、農家ならではの野菜

レシピを提供したりと良好な関係性を構築している。また、青果物

相場にあまり左右されることなく、適正な利益を得られるように

努力する意志が生ま

れ、地産地消の拡大

にもつながる。商品

の価格設定も自ら行

うため、質の良いもの、

鮮度の良いものが正

当な価格で取引され、

再生産価格の確保

を実現している。

 水産物流事業の旬材は、水産、加工流通において産地情報を効率

的に消費地に伝えるため、市場を経由しない新しい水産物流システム

「STTS」を開発した。電子商取引の導入が遅れている水産業界では、

たびたび大手企業が運用システムを開発していたが、漁業界との

ネットワークが弱く機能していなかった。そこで旬材が、漁業界との

緊密なネットワークを強みに独自のシステム運用の拡充に成功した。

これにより、リアルタイムで産地情報を共有化し、規格外鮮魚を加工

食品にするなどの販路拡充にも成功した。

 ほかにも、シーフードマイスター養成や大手レシピサイトと協力

体制をとるなどして、国内水産物の需要拡大を図っている。また、

壊滅的な被害を受けた東北漁業の水揚げ状況をリアルタイムで消費

地のスーパーや外食

企業に発信し、鮮魚を

直送する復興活動も

継続している。この

ような、スピーディで

ローコストな輸送シス

テムの導入によって、

日本の漁業の活性化

が期待される。

県内生産者の経済活動の活性化と就農率&食料自給率アップへの取組

所在地:静岡県静岡市葵区古庄2‐16‐6URL:http://www.s-store.co.jp/2012_04_torikumi/seinoukai.html

電話:054-267-6816e-mail:[email protected]

プロジェクト:

株式会社 静鉄ストア 静農会受賞者:

プロジェクト:

受賞者:

「日本の食と漁業を守る」新水産流通システムSTTSの開発と運用

所在地:大阪府吹田市広芝町6-7URL:http://www.syunzai.com

電話:06‐6386‐9992e-mail:yamatsu@syunzai.com

株式会社 旬材

大賞

商品部門

審査委員特別賞

食べて応援しよう!賞

流通部門

販売促進・消費促進部門

研究開発・新技術部門

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販売促進・消費促進部門は、食料自給率向上に寄与する普及・啓発活動、地域の活性化、食育などの取組が対象です。楽しみながら国産食材のファンを増やす料理教室のほか、長期間にわたる地道な啓発活動の事例が寄せられました。

販売促進・消費促進部門

最優秀賞家庭料理にもっと米粉を! ~大分市米粉料理インストラクター制度~

所在地:U R L:

大分県大分市荷揚町2-31URL:http://www.city.oita.oita.jp/ e-mail:

電  話:[email protected]

プロジェクト:

大分市受 賞 者:

17

 米の消費量が減少している近年、全国で米粉の普及をめざした

取組がさかんに行われている。大分市はこれまで「米粉パンの

試食宣伝」「米粉料理教室の開催」「学校給食への米粉パン導入

支援」など、米粉普及活動を積極的に展開してきた。

 2009年度からは、より効果の高い方法を模索し、家庭での米粉

消費の拡大をめざし、米粉料理を指導する「大分市米粉料理イン

ストラクター」の養成に取り組んでいる。派遣を希望する市内の

地域や団体の料理教室にインストラクターがおもむき、家庭で簡単

にできる米粉料理の指導を行い、米粉の家庭料理への定着化を

推進している。

 

 指導するレシピはインストラクター自らが考案し、もっちり感や

焼きあげたときのカリッとした歯ごたえなど、米粉ならではの風味が

楽しめるレシピを提案している。特に、家庭で日々楽しめる料理に

こだわり、米粉パンや揚げピザ、ブラマンジェ、ロールケーキなど、

主食からデザートまで多彩なレシピを教材にしている。教室で

使用する米粉以外の食材も、地元で手に入るものを中心に利用、

老若男女問わず多くの人に安心して食べてもらえるよう工夫している。

 2012年10月現在、34人を数える米粉料理インストラクターは、

全員が制度開始以前から「大分市食生活改善推進員」として、食を

通じた健康づくりなどで活躍してきた。生徒5~6人に1人の割合で

大賞

商品部門

審査委員特別賞

食べて応援しよう!賞

流通部門

販売促進・消費促進部門

研究開発・新技術部門

インストラクターが家庭向け米粉料理を指導 米粉ならではの風味を楽しめるレシピ

ていねいな講義で市民の意識向上

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インストラクターを派遣するので、テーブルごとにインストラク

ターがついて、ていねいに教えてくれると受講者に好評だ。

 米粉は、パンにしたときのふくらみ方や、揚げ物に使ったときの

表面の風合いなどが独特で、小麦粉を使い慣れている人でも戸惑う

ことがある。こうした事情に配慮し、教室では米粉の性質や扱い

方のコツも詳しく教えている。

 さらに米粉の消費量増加が食料自給率向上にどれだけ寄与

するかなど、米粉料理を推進する意義についても講義し、市民の

意識を高めることにも努めている。

 制度が始まった2009年度以来、同制度は市民に好評を博しており、

年間約50の申請枠は常に埋まっている。現在までに、述べ3,000人

以上の市民に米粉料理

の指導を行っている。

 また、この取組のなか

で、受講者の多くから

「県産の米粉が欲しい

が、市内で手に入りに

くい」という声が寄せ

られ、県内の米粉製粉

優秀賞

 いろどりの本拠地がある徳島県上勝町は、人口1,892名、874世帯、

高齢者比率48.7%(2012年9月1日現在)で、過疎化と高齢化が

進む町。町の人口は年々減少し、主な産物である木材や温州みかん

は、輸入自由化や産地間競争に押されて伸び悩んでいた。

 高齢者が活躍できるビジネスを模索した結果、日本料理を美しく

彩る季節の葉や花、山菜などの“つまもの”に着目し、いわゆる

「葉っぱビジネス」として、1987年にスタートした。現在の年商は

2億6,000万円と急成長、年収1,000万円を稼ぐ女性高齢者もいる

という。ビジネスを支えているのは、パソコンとインターネット。高齢

者たち自身がパソコンを駆使して、全国の市場情報を収集、日々、

需要にマッチする量の商品を全国に出荷している。売り上げ順位な

どの確認ができるた

め、相互に刺激し合

い、さらなる発展へ

つながっている。

 全国でも有数の

地域活性型農商工

連携のモデルとなり、

海外からも注目され

ている。

 大阪ガスでは、次世代への食育活動のため、2011年度よりPTA

などを対象として学校の家庭科室にて、サイエンス教室を実施して

いる。ごはんの炊き方だけではなく、米がごはんになる過程を

科学的、理論的に解説。また、ごはんがおむすびという料理になる

おいしさの科学についても理解を深められる内容としている。また

災害時や停電時、避難所などでは、コンロ炊き技術が不可欠で

あったことから、平常時も非常時も役に立つガスコンロを使った

炊飯手法を伝授している。同時に火の文化の大切さや、エネルギー

選択の重要性を伝えている。さまざまな種類の鍋で炊いて、おいしさ

の違いを実感してもらうユニークなセミナーも開催。

 セミナーはこれまでに80回実施して、約2,000人が参加。「ごはん

の持つ甘味を再確認

した」「炊飯の火加減

の時間も論理的に

考えることができ、

炊飯の深さを学べた」

といった声が多数

寄せられ、高い評価

を受けている。

過疎化、高齢化する地域発「葉っぱビジネス」のブランド化

所在地:徳島県勝浦郡上勝町福原字平間71-5URL:http://www.irodori.co.jp/

電話:0885-46-0166e-mail:[email protected]

プロジェクト:

株式会社 いろどり受賞者:

プロジェクト:

受賞者:

米飯文化と炊飯技術を伝承するRiceサイエンスセミナー

所在地:大阪府大阪市中央区平野町4-1-2URL:http://www.osakagas.co.jp/shokuiku/

電話:06-6205-4649e-mail:[email protected]

大阪ガス株式会社

業者に伝えたところ、市内のスーパーが協力して販売するように

なった。こうした生産者と消費者をつなぐ役目にも、積極的に取り

組んでいく予定だ。

 さらに、子どもたちの関心を高め、米粉の普及につなげようと、

小学校の家庭教育学級などへのインストラクター派遣も今後、

積極的に推進する予定で、子どもと保護者が一緒に米粉料理に

触れる機会を設け、家庭に米粉文化を根付かせていくきっかけを

つくっていきたいという。

 一連の活動は近隣自治体にも波及、大分県内各地からインスト

ラクターの派遣要請が相次いでいる(市外は個人対応)。派遣を

通して、自治体の枠を超えて取組を活性化し、幅広く米粉を普及

していきたいと考えている。

大賞

商品部門

審査委員特別賞

食べて応援しよう!賞

流通部門

販売促進・消費促進部門

研究開発・新技術部門

好評を受けて近隣自治体にも波及

18

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19

 日本の食文化の大きな特長のひとつである出汁。鹿児島県は

その出汁の素材であるかつお節の生産量や、豚、鶏の飼育数で

高いシェアを有している。「出汁の王国・鹿児島」プロジェクト実行

委員会では、鹿児島県内外に出汁を楽しむファンを増やすべく、

イベント、学術研究、食育などの施策を実施。戦略的な産業の活

性化と、地域ブランド化をめざしている。

 県の未来を担う産業人を育てる「かごしまものづくり郷中塾」の

メンバーが発起人となり、2011年から準備を開始。2012年

6月には「出汁を学ぶツアー in 枕崎(かつお節)」を開催。11月に

「本物出汁の旅 鹿児島フォーラム」、「本物出汁トレードショー」を

予定しており、鶏出

汁、豚出汁などの

「出汁を学ぶツアー」

も企画中。日本食文

化を世界無形遺産

へ登録しようという

国の動きとも連動し

て、活動を発展させ

たいとしている。

 日本の伝統食であり、地域や家庭それぞれに個性を持つ漬物。

そのチャンピオンを決定するのがT-1グランプリだ。漬物を通じて、

地産地消をはじめとした地域活性化と食文化の発展をめざす。

第1回は北海道にエリアを限定していたが、2回目の「T-1グランプリ

2011」では全国からレシピを募集。応募総数は544、全国決勝

大会の来場者数は約4,500名に及んだ。

 法人部門のグランプリ受賞作品は「ガツンと辛い山わさび粕漬け」。

大会終了後には購入希望者が殺到し、完売。その後、生産者は通常

の3倍規模で生産した。北海道ブロック選出で、個人審査員特別賞を

受賞した「サラダ風ニシン漬け」を商品化したところ、3月下旬から6月

末までの販売数は6万個に達した。商品化の際には地元食材を積極

的に使用した。

 漬物の“伝統と

革新”の双方を応援し、

全国の農業生産者

だけでなく、加工業者、

流通、販売店を巻き

込んで地域の魅力を

全国にアピールする

ことに成功している。

出汁をテーマに鹿児島の素材と料理をアピール

所在地:鹿児島県鹿児島市谷山港2-2-21URL:http:/www.facebook.com/dashikagoshima

電話:099-261-5557e-mail:[email protected]

プロジェクト:

「出汁の王国・鹿児島」プロジェクト実行委員会受賞者:

プロジェクト:

受賞者:

漬物を通じて地域を活性「T-1グランプリ2011」

所在地:東京都渋谷区渋谷3-3-5NBF渋谷イーストURL:http://t1gpx.com/

電話:03-6820-0956e-mail:[email protected]

T-1グランプリ実行委員会

 キッザニアの運営で知られるKCJ GROUPは、千葉県「オーク

ビレッジ柏の葉」で、体験型の貸農園のほか、農園レストランや

カフェ&パティスリー、農園ウエディングを運営している。コンセプト

は、「とれたての野菜のおいしさを味わうことができる」。カフェ&

パティスリーのランチタイムには行列ができるほどだ。農園ウエディング

とはカップル自ら育てた野菜を招待者に食べてもらうという試みで、

予約も好調だ。そのほか、有名シェフを招いての料理教室や、年間を

通じて楽しめる野外BBQや子供向けイベントを開催。養蜂による

ハチミツ生産とそれを材料としたスイーツ作りも行い、地産地消、

フードマイレージの短い農産物を食することの啓発を行っている。

 教育機関とも連携し、千葉大学の正課となるインターンシップの

受け入れや、東京

大学中邑賢龍教授

の「アグリケーション

塾」、発達障がい

を持つ生徒の職業

訓練など、幅広く

農業の楽しさや食

文化の理解を広げ

ている。

 田んぼは本来、環境や多くの生き物を育み、人と人の絆を結ぶ

機能を持っていることに注目。お米の産地の物語を積極的に発信

することで持続可能な農業を構築するプロジェクト。

 各農家が自分の耕作地の生き物を観察し、それらが暮らしやすい

環境を育む活動を展開している。環境保全型の農業を推進すること

で、里山田園の生物多様性と、京阪神圏の水がめである琵琶湖の

水を守り育むことをめざしている。その結果、高品質の農産物に

豊かな物語を付加価値として添えることを実現し、消費者や市場

との結びつきを強めている。無農薬、無化学肥料の「たかしま生き

もの田んぼ米」を中心に、餅や納豆、みそなども商品化。また、

米殻店と協働で、米1キログラムを売り上げるごとに8円の基金を

積み立て、水田魚道

を設けるなど、消費

者による環境整備の

機会を創出している。

 ほかに宮城県原産

の希少米ササニシキ

の栽培にも取り組み、

その復興と特産化を

めざしている。

「オークビレッジ柏の葉」における農と食を融合させた啓発の取組

所在地:東京都中央区佃1-11-8 3FURL:http://www.ov-k.jp/

電話:03-3532-1867e-mail:[email protected]

プロジェクト:

KCJ GROUP株式会社受賞者:

プロジェクト:

受賞者:

たかしま生きもの田んぼプロジェクト

所在地:滋賀県高島市安曇川町四津川614(たかしま有機農法研究会)

075-255-4526(株式会社アミタ持続可能経済研究所)

URL:http://www.ikimonotanbo.jp/電話:e-mail:[email protected]

たかしま有機農法研究会 株式会社 アミタ持続可能経済研究所

大賞

商品部門

審査委員特別賞

食べて応援しよう!賞

流通部門

販売促進・消費促進部門

研究開発・新技術部門

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20

 東の食の会は、震災で甚大な被害を受けた東日本の食産業の

復興と創造を目的として、東日本の食の生産事業者と食品関連企業

のマッチング事業やブランディング事業を行っている。また、日本

の食文化を育み、世界に誇れるブランドとして確立することもめざ

している。

 マッチング事業においては、生産者側と販売企業側をつなぎ、

Win-Winの関係を築いて、生産者に正当な利益が出る形の販路開拓

を支援している。2012年4月から8月の期間だけで、大手小売や外食

チェーンにおける販売等、100件以上のマッチングを成立させた。

 ブランディング事業においては、東日本の食に対する付加価値を

高め需要を喚起するためのプロデュース活動を行っており、「東北

6県ROLL(ロッケンロール)プロジェクト」では、東北6県に地元の

食材を使った巻物グルメを生み出すブランディングを行い、全国から

注目を集めた。

 今後5年の中期

目標として、マッチ

ング事業で500件、

活動全体で200億

円の経済効果創出

をめざしている。

 福井テレビでは、2010年から視聴者参加型の農業体験番組

「おかえりマイファーム」をレギュラー放映している。同名の体験農園

も運営。耕作放棄によって、農家の知恵と食文化も放棄されている

ことを憂慮して、土地をよみがえらせる取組を行い、その過程を

番組内で紹介。農村の事情を広く伝えている。

 視聴者と同じ目線で農業に取り組んでいるため、中には農作業の

失敗もあるが、すべて番組中で見せることによって、共感と関心を

高めている。2012年度には、伝統の地域ブランド「しらやま西瓜」

をクローズアップ。丹精込めた

農産物の価値を伝えるため、

地元生産グループに教わり

ながら、産地の歴史や栽培

法の工夫、作り手の理念を

番組中に盛り込み、食文化と

しての地産振興で高い評価

を得た。体験農園12区画の

うち契約は9割以上、賛同する

参加者は年間延べ360人に

達している。

東北を中心とする東日本産食品の販路開拓とブランディング 

所在地:東京都品川区東五反田1-13-12 10FURL:https://www.higashi-no-shoku-no-kai.jp/

電話:03-5447-2688e-mail:[email protected]

プロジェクト:

一般社団法人 東の食の会受賞者:

プロジェクト:

受賞者:

耕作放棄地を再生したおかえりマイファーム

所在地:福井県福井市問屋町3-410URL:http://www.fukui-tv.co.jp/myfarm/

電話:0776-21-2240e-mail:[email protected]

福井テレビジョン放送株式会社 とんぼふぁーむ株式会社

 東京都では、東京産水産物に対する安全・安心や、正しい理解

を醸成することをめざして「ぎょしょく普及事業」を行っている。

 水産業に詳しい職員がゲストティーチャーとなる出前講座を行って

おり、講座受講者数は2011年度で3,343名を数える。また、小中

学校の栄養教諭や栄養職員が都の水産業や東京産水産物へ理解

を深めることができるよう、生産現場を体験する機会も創出してい

る。これまで、東京産水産物の学校給食への提供は、ミンチ、切身

といった形態で、調理の手間が負担になっていたが、2012年度、

学校給食用食材の取扱業者と生産者が、東京産水産物を使用し

た新たな冷凍加工品を製品化して、提供することとなった。全体

として学校給食への東京産水産物の採用は進んでおり、都内小中学

校から生産者へ

の注文は、2008年

度には8 . 6トンで

あったが、2011年

度は17. 8トンと倍

増した。波及効果

として島しょ地域

の活性化が期待さ

れている。

 日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会は、消費者視点を

もった「国酒(日本酒と焼酎を合わせた呼称)」提供販売のプロ

フェッショナル育成をめざし、1991年より「唎酒師(ききさけし)」、「焼酎唎酒師」の認定を行い、また消費者を対象とした啓発活動をしている。資格の取得過程で、各地に伝わる日本酒や焼酎の正しい

知識と提供方法を学ぶ。その結果、食との相性を見極める感覚を

養うこととなり、地域ごとの伝統料理についても造詣を深めること

につながっている。

 各地で日本全国の蔵元を招き、盛大な試飲会を開催。全国津々

浦々の土地の味わいを感じられる催しとして知られるようになった。

2011年の試飲会ではチャリティーコーナーを設置し、売上金の全額

を東日本大震災の被

災地支援として募金

を行った。そのほ

か、「世界唎酒師コンクール」を実施し、

世界に日本食文化を

正しく広めてくれる

オピニオンリーダー

の輩出も行っている。

ぎょしょく普及事業

所在地:東京都新宿区西新宿2-8-1東京都庁第一本庁舎31F 中央

URL:http://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.jp/norin/suisan/電話:03-5320-4848e-mail:[email protected]

プロジェクト:

東京都受賞者:

プロジェクト:

受賞者:

日本酒と焼酎の総合研究と酒文化の支援

所在地:東京都北区堀船2-19-19 2FURL:http://www.sakejapan.com/

電話:03-3912-2194e-mail:[email protected]

日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会 特定非営利活動法人 FBO

大賞

商品部門

審査委員特別賞

食べて応援しよう!賞

流通部門

販売促進・消費促進部門

研究開発・新技術部門

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食料自給率向上に寄与する研究、新技術などの開発に関する取組が対象です。国産食材の生産や流通拡大につながる新技術や、国産食材をよりおいしく楽しめる新手法が寄せられました。

研究開発・新技術部門

最優秀賞農産物、食品の抗酸化活性測定法「SOAC法」の開発

所在地:U R L:

東京都中央区日本橋浜町3-21-1http://www.kagome.co.jp e-mail:

電  話:

ソ ア ッ ク

[email protected]

プロジェクト:

カゴメ株式会社 国立大学法人 愛媛大学 理学部受 賞 者:

21

 酸素は人間にとって不可欠だが、体内に取り込むと一部が活性

酸素に変化する。活性酸素は、体内の毒物や細菌、ウイルスを分解

してくれる一方、多すぎると正常な細胞やDNAを攻撃し、動脈硬化、

がんなどの病気の原因になる。また、紫外線や大気汚染といった

環境要因、ストレスや喫煙といった生活習慣によっても増加する

ことが知られている。

 本来、人間の体には、活性酸素に対抗するため抗酸化作用と

いう働きが備わっている。しかし、現代人は日常生活のいたるところ

で活性酸素が発生しやすい環境にさらされているため、健康を

考えるうえで大きな問題になっている。

 そこで多方面で研究が進み、野菜や果物のなかに抗酸化活性を

有する物質が多く含まれることが解明され、さらに、これらの食品を

効果的にとることで、活性酸素を原因とするさまざまな生活習慣病

の予防や、老化を遅延させアンチエイジングにも有効に働くことが

明らかになってきた。

 これを受け、食品業界は高い抗酸化活性を備えた食品の開発、

販売に積極的に乗り出しており、消費者の間でもより活性酸素の

消去活性が高い食品を求める傾向が見られ始めている。

 一口に活性酸素といっても、違った性質を持つものがいくつか

あり、効果のある抗酸化物質もそれぞれ異なる。たとえば、ブドウ

などに多く含まれるポリフェノールも抗酸化物質のひとつで、活性

酸素の一種フリーラジカルを消去する。赤や黄色の野菜に多く含

まれるリコピンやβ-カロチンは、総称してカロテノイドと呼ばれ、一重

大賞

商品部門

審査委員特別賞

食べて応援しよう!賞

流通部門

販売促進・消費促進部門

研究開発・新技術部門

活性酸素を消去する「抗酸化活性」

カロテノイドを含む農産物の抗酸化活性を正確に測定

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優秀賞

22

項酸素という活性酸素に作用することがわかっている。

 ところが、これまで農産物に含まれる抗酸化活性の測定法は、

ポリフェノールに着目したものしかなかった。つまり、カロテノイドの

抗酸化活性を正確に測る方法がなかったため、カロテノイドを豊富

に含むトマトやニンジンといった農産物は、抗酸化活性が低く見積も

られてきたのだ。

 そこに着目してカゴメが愛媛大学と共同で開発したのが、カロテノイド

を簡易的に測定できる「SOAC法」だ。これは一重項酸素により分解

する指示薬と農産物中の一重項酸素を消去する抗酸化物質との競争

反応に着目し、指示薬の吸光度を経時的に測定(下の写真参照)する

だけで一重項酸素の消去活性の算出を可能にした簡易な測定法だ。

 この測定法の確立により、農産物の抗酸化活性を産地別、品種別

に比較して、より活性酸素の消去活性が高いものを見つけること

が可能になった。

将来的には、高抗

酸化活性という

付加価値を持った

農産物の開発や

ブランド化の促進

につながり、ひい

ては農業の活性化

や食料自給率向上への貢献も期待される。

 さらに、農産物だけでなくさまざまな食品の抗酸化活性の測定

も可能であるため、食品産業においても抗酸化活性の高い食品の

開発が進むと考えられる。

 すでにSOAC法は、100社を超える協賛企業や、国立研究所、

大学などによって設立された食品の抗酸化に関する研究会「アンチ

オキシダントユニット(AOU)研究会」において、食品の抗酸化

活性測定法のひとつとして採用されている。SOAC法の開発や同法

を用いた抗酸化活性の測定は学術論文誌にも複数回掲載され、そ

の科学的信頼性は高く評価されている。

 現在、農林水産省、食品産業技術振興協会の主導で、東日本

大震災の被災地復興を目的とした「食料生産地域再生のための

先端技術展開事業」が実施されている。

 その事業のひとつ「生体調節機能成分を活用した野菜、果実生産

技術の実証研究」のうち、「抗酸化能力の高い野菜類の開発」と

いう課題では、SOAC法が抗酸化活性を評価する信頼できる測定法

として採用された。信頼性の高い測定法により抗酸化活性を評価、

自主表示することで宮城県産の農産物の消費を拡大させ、復興

支援につなげることをめざしている。

 家畜の排泄物などの有機廃棄物は、通常微生物によって、2~3

カ月かけて堆肥となる。しかし、イエバエを活用して、わずか1週間

で、有機肥料と飼料タンパク質が一度に生産できるという革新的な

システムを開発したのが、環境技術の企画、開発を行うアビオスだ。

 まず、簡単に人工培養ができるイエバエの卵を排泄物に接種。

孵化した幼虫が、排泄物を有機肥料に変化させる。この工程は、

低農薬で高品質な有機農作物を作ることにも役立つ。幼虫自体も

良質な国産タンパク源として活用できるので、従来、輸入魚粉に

頼ってきた飼料をこれで補うことが可能となり、飼料自給率アップ

に寄与する。この肥料を農家で使用したところ、糖度上昇、収量増加

などの成果が上がった。また幼虫を養鶏や養殖魚の飼料として

使用したところ、成長促進、免疫力向上など、こちらも好結果が

報告された。

今後は事業拠

点を拡大し、

有機物の循

環型社会モデ

ルの普及をめ

ざす。

 埼玉大学は、大学における研究の成果や創出された知的財産を、

地域や企業と共有し、新たな産業の芽を生み出すことをめざしている。

 このたび注目したのは大麦。大麦に含まれる水溶性食物繊維は、

整腸作用や動脈硬化予防、免疫調整機能など、生活習慣病予防

に効果があると内外の研究成果でも明らかになっている。しかし、

おいしくないというイメージや、加工食品にしづらい性質など、さま

ざまな要因が重なり、ここ50年で栽培量は10分の1以下に激減。

 そこで大麦の需要拡大に寄与するため、水溶性食物繊維をより

多く含む大麦新品種を使用し、小麦粉との配合特性に優れた「機

能性大麦粉」を開発した。

 さらにそれを原料とした「おいしい大麦食品」を考案した。独自

技術で小麦粉に近い

粒子径に粉砕した大

麦粉は、小麦粉、米

粉に次ぐ第3の穀物

粉としての注目度も

高く、学校給食や高

齢化社会の健康維

持力強化にも期待が

寄せられている。

先端インセクトテクノロジーによる革新的循環システムの開発

所在地:宮崎県児湯郡都農町川北7650-1URL:http://abies-japan.com

電話:0985-88-5325e-mail:[email protected]

プロジェクト:

アビオス株式会社 国立大学法人 埼玉大学受賞者:

プロジェクト:

受賞者:

汎用性の高い「機能性大麦粉」の開発

所在地:埼玉県さいたま市桜区下大久保255

大学院理工学研究科 教授 円谷陽一教育学部 教授 川嶋かほるオープンイノベーションセンター 特命教授 東海林義和

URL:http://www.saitama-u.ac.jp/coic/index.html電話:048-858-9354e-mail:[email protected]

大賞

商品部門

審査委員特別賞

食べて応援しよう!賞

流通部門

販売促進・消費促進部門

研究開発・新技術部門

抗酸化活性評価で被災地復興を支援

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2012

23

 鳥取県西部などの祝い事に欠かせないバイ貝は、水深30メートル

以浅の海域に生息する巻貝。かつては県内漁獲量が80トン以上

あったが、1985年ごろから環境ホルモンの影響で資源が枯渇。その

後、環境改善がなされ漁獲量は上昇したが、乱獲などによる減少が

再び問題となり、2010年に「鳥取県バイ資源回復計画」を策定。

その一環として効率的に産卵を促す産卵器をセンターが開発した。

 バイ貝は海底の貝殻、流木などに卵塊を産みつけるが、海底にこ

のような基質が不足している場合、成熟しても産卵を行わない習性

がある。そこで、安価で手に入りやすい素材であるプラスチックパイプ

で産卵器を開発(右下の写真参照)。2012年、これを用いて美保湾

で漁業者が促進に取り組んだところ、約1.9億粒の産卵に成功した。

 安価かつ簡易と

あって、漁業経営が

厳しいなかでも「設置

したい」という声が

高まった。今後は県内

全域に普及を拡大し、

漁獲量の増加、さら

にはバイ貝の全国販

売をめざしている。

 日本人の主食である米の機能性に着目し、食物アレルギーを持つ人

でも食べられる食品を研究開発している長岡機能性食品創造研究会。

 バリアフリーな食品を開発するきっかけとなったのは、新潟県

中越大震災および東日本大震災。多くの人が避難生活を送るなか、

食物アレルギーを持つ人が食べられる食事の供給、備蓄がない

事態に直面した。日本伝統調味料のみそやしょう油を大豆から

ではなく、玄米を原料にすることで、さまざまなアレルギー食開発

が可能になる。また、米生産者にとっては、戸別所得補償制度を

活用して米の生産ができ、多収米などを効率的に作付けできる

ことで、水田をフル活用できる。

 また、みそは主に輸入大豆を原料にしているが、その原料を

新潟産玄米に切り

替えることで、使用

分だけ確実に食料

自給率が上昇する。

一般の人でもおいしく

食べられる製品は、

全国への展開が期待

されている。

安価な産卵器の開発によるバイ貝の産卵促進

所在地:鳥取県東伯郡湯梨浜町石脇1166URL:http://www.pref.tottori.lg.jp/dd.aspx?menuid

=154187#itemid648893/

電話:085-834-3321e-mail:[email protected]

プロジェクト:

鳥取県栽培漁業センター受賞者:

プロジェクト:

受賞者:

大豆のかわりに新潟産玄米を使った食物アレルギー対応の「おみそ調味料」

所在地:新潟県長岡市脇川新田町字前島970-100URL:http://www.eco-rice.jp/

電話:0258-66-0446e-mail:[email protected]

長岡機能性食品創造研究会

大賞

商品部門

審査委員特別賞

食べて応援しよう!賞

流通部門

販売促進・消費促進部門

研究開発・新技術部門

 国内産小麦流通量においてトップシェアを誇る日清製粉。全体

の約4割を占める高いシェア率やその経験を生かして行っている

小麦粉の開発、販売が、国内産小麦の普及に大きく貢献している。

 現代日本の食文化を大きく支える小麦。食料自給率向上への

関心が高まる昨今では、国産小麦に対するニーズも上昇している。

特にパン業界ではその傾向が顕著だ。しかし、国産小麦は製パン適性

の高い品種の流通量が少ない。この現状を打破するため、流通量

が多く品質安定性に優れた北海道産小麦の代表品種「きたほなみ」

を使用した製パン適性の高い

「TSUBAKI(つばき)」の開発

に着手。3年を費して、原料小麦

は「きたほなみ」100%を使用し、

パン用粉(小麦粉、粉末麦芽、

増粘剤(ペクチン))を開発。ソフト

な食感、老化耐性など、国産

小麦をパンにした場合の課題点

をクリアした製品は食パン、菓子

パン、ハード系など幅広い商品

の製造を可能にし、食料自給率

向上をめざす方針だ。

北海道産小麦「きたほなみ」を使用した製パン適性の高いパン用粉「TSUBAKI(つばき)」を開発

所在地:東京都千代田区神田錦町1-25URL:http://www.nisshin.com/

電話:03-5282-6650(広報部)

プロジェクト:

日清製粉株式会社 日清製粉グループ受賞者: