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平成30年度 特許出願技術動向調査報告書 ―がん免疫療法― 平成31年2月

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平成30年度

特許出願技術動向調査報告書

―がん免疫療法―

平成31年2月

特 許 庁

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要 約

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

第1章 がん免疫療法の概要

近年、がん免疫療法は、外科手術、化学療法、放射線療法に次ぐ、がん治療の方向性を

変える革新的な技術として国際的に注目されている。特に、抗腫瘍免疫応答の要である活

性化 CD8 陽性キラーT 細胞を始めとする、免疫担当細胞に発現する共抑制分子である免疫

チェックポイント分子の阻害、もしくは免疫共刺激分子の刺激によって、抗腫瘍免疫応答

を増強できることが明らかになってきた。

2018 年、James P. Allison 教授(米国 MD アンダーソンがんセンター)、本庶 佑教授(京

都大学大学院医学研究科・医学部)の 2 名に「負の免疫調節の阻害によるがん治療の発見

(for their discovery of cancer therapy by inhibition of negative immune regulation)」

に対してノーベル生理学・医学賞を授与された。両名共に、がん免疫療法の 1 つの分野で

ある、免疫チェックポイント阻害療法の開発への貢献が認められた結果となる。

本調査における対象技術を表 1 に、技術俯瞰図を図 1 に示す。

表 1 本調査の対象技術

分野 調査対象

A 免疫調節 免疫抑制阻害(免疫チェックポイント阻害療法を含む)、

免疫増強

B 養子免疫療法 CAR-T 細胞療法、TCR-T 細胞療法、 等

C 腫瘍溶解性ウイルス療法 腫瘍溶解性ウイルス療法

D がんワクチン療法 がんペプチドワクチン療法、樹状細胞ワクチン療法、等

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 1 本調査の技術俯瞰図

調査の対象技術

A. 免疫調節 免疫増強・ 免疫抑制阻害等により、免疫系の活性化や免疫抑制シグナル伝達の阻害を図る治療法。B. 養⼦免疫療法 T細胞等を⽣体外で培養、活性化し、⽣体内に戻すことで、免疫系の活性化を図る治療法。C. 腫瘍溶解性ウイルス療法 がん細胞に感染・細胞死誘発の効果を持つウイルスを投与することにより、がんの死滅および、腫瘍抗原の拡

散による免疫系の活性化を図る治療法。D. がんワクチン療法 T細胞の活性を向上させるための、抗原提⽰細胞、あるいは抗原を⽣体外から導⼊することで、免疫系の活

性化を図る治療法。

① 細胞死したがん細胞から、がん抗原が放出される。② 放出されたがん抗原が、抗原提⽰細胞(APC)に取り込まれ、APCはその抗原を断⽚化して細胞表⾯に提⽰する。③ リンパ節において、NaiveT細胞がAPC表⾯に提⽰された抗原を認識し、抗原特異的T細胞が活性化する。④ 活性化T細胞(CTL)は、⾎流にのりがん組織に移動する。⑤ CTLががん組織へ浸潤する。⑥ CTLが、がん細胞表⾯に提⽰されている抗原を認識する。⑦ CTLが認識したがん細胞を殺傷し、がん細胞を細胞死に導く。その結果、がん細胞からがん抗原が放出され、がん免疫サイクルが亢進する。

材料⼯学

合成技術 DNA合成技術 タンパク質合成技術

AI/IoT/ロボット技術 情報解析技術 ⾃動処理システム

オミックス解析技術 ゲノム・エピゲノム/プロ

テオーム/メタボローム等

表現型解析技術

臨床⽤製造技術

モデル動物作成/解析技術

臨床解析技術 創薬スクリーニング技術

物質⽣産・精製技術

関連する他の技術遺伝⼦導⼊

サイトカイン刺激

C.腫瘍溶解性ウイルス療法

A.免疫調節

免疫抑制阻害(免疫チェックポイント阻害)

免疫増強

D.がんワクチン療法

B.養⼦免疫療法例︓ CAR-T細胞

TCR-T細胞 等例︓ 抗PD-1抗体抗PD-L1抗体抗CTLA-4抗体 等

例︓ アデノウイルスレオウイルス⿇疹ウイルス単純ヘルペスウイルス 等

例︓ ペプチドワクチン樹状細胞ワクチン 等

Treg、MDSC,TAM等

免疫記憶

がん細胞が免疫系により認識され排除されるまでの一連の流れを「がん免疫サイクル

(Cancer-immunity cycle)」1と呼び、そのメカニズムは 7 つのステップで構成されている。

がん免疫サイクルが正常に機能すれば、がん細胞は体内より排除されるが、上記①~⑦の

いずれか、もしくは複数のステップで何らかの異常が起こることでがん細胞が増殖する。

すなわち、その異常が生じている部分を、各種治療法で正常化・増強することで、がん免

疫サイクルが正常に機能してがん細胞が排除されることが期待される。

1 Chen DS, et al. OncologyMeetsImmunology:The Cancer-Immunity Cycle. Immunity. 2013 ;39(1): 1-10

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

がん免疫療法は、このがん免疫サイクルの異常を正常状態へ回復あるいはがん免疫サイ

クルの亢進を支援するものであり、大きく「患者が本来持っている免疫力を高める(アク

セルを踏む)、または抑制機構を解除して免疫力を高める(ブレーキを解除する)」ものと、

「患者が本来持っていない免疫機能を付与することでがんへの攻撃性を高める」ものの 2

つのコンセプトに分類できる。

以下表 2 に、各コンセプトに分類される主な治療法を示す。

表 2 がん免疫療法の分類2

患者が本来持っている免疫力を高める 患者が本来持っていない免疫機能を付与する

■アクセル

・ TIL 療法、CTL 療法等の従来型の養子免疫

療法

・ がんワクチン療法

・ 共刺激分子に対するアゴニスト抗体 等

■ブレーキ解除

・ 免疫チェックポイント阻害剤

・ Treg を標的とする治療法 等

■攻撃力を付与した免疫細胞の注入

・ 遺伝子改変 T 細胞療法

・ iPS 細胞由来 T 細胞 等

■新しい免疫機能の付与

・ 腫瘍溶解性ウイルス療法 等

本調査においては、上記技術俯瞰図に示すように、がん免疫サイクルの各ステップに寄与

する A.免疫調節、B.養子免疫療法、C.腫瘍溶解性ウイルス療法、D.がんワクチン療法の 4

つの技術を対象とする。

第1節 免疫調節

免疫システムには、以下表 3 に示すように、免疫応答を活性化する“アクセル”の役

割を担う共刺激分子と、抑制する“ブレーキ”の役割を担う共抑制分子が存在する。が

んへの抵抗力の向上を目指すために、前者の共刺激分子を活性化するものが「免疫増強」、

後者の共抑制分子を阻害するものが「免疫抑制阻害」となる。また、両者を包含する概

念が、「免疫調節」である。

2 慶応技術大学病院 医療・健康情報サイト がん免疫療法~免疫チェックポイント阻害薬~

―先端医科学研究所―

http://kompas.hosp.keio.ac.jp/sp/contents/medical_info/presentation/201810-01.html

(2019.02.26 アクセス)

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第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

表 3 代表的な共刺激分子と共抑制分子、及びそれらのリガンド3 4 5 6

リガンド 分子

(レセプター)

共抑制分子

CD80 または CD86 PD-L1 または PD-L2

ガレクチン-9 HVEM

MHC クラスⅡ複合体 CD155

VSIG-3/IGSF11 MHC クラス I 分子

B7-H3、B7-H4

CTLA-4 PD-1 TIM-3 BTLA LAG-3 TIGIT VISTA KIR 不明

共刺激分子

CD80 または CD86 OX-40L GITRL

CD137L CD70

CD28 OX-40 GITR CD137(4-1BB) CD27

1.免疫抑制阻害

共抑制分子は、リガンドとの結合により T 細胞の不活性化やアポトーシスなどを誘導

するシグナルを伝達する。中でも、免疫恒常性を保つために T 細胞反応を抑制する分子

群を免疫チェックポイント分子と呼ぶ。以下に表 3 に記載した代表的な共抑制分子とそ

れらのリガンドについて解説する。

(1)CTLA-4 (cytotoxic T-lymphocyte-associated protein 4)7

CTLA-4 は、定常状態の T 細胞には発現されていないが、エフェクターCD4+T 細胞お

よびエフェクターCD8+T細胞の活性化に伴ってダイナミックに発現される共抑制分子

である。そのリガンドは主に抗原提示細胞に発現される CD80、CD86 であり、これら

は代表的な共刺激分子である CD28 のリガンドでもある。CD28 は特異抗原を認識した

エフェクターT 細胞を活性化するが、CTLA-4 はその活性化によって発現が誘導され、

圧倒的に高い結合親和性によって CD80 と結合して CD28 と競合し、かつ抑制シグナル

をエフェクターT 細胞に伝達する。制御性 T 細胞(Treg)には CTLA-4 は恒常的に発

現されており、その抑制機能を担っている。Treg 上の CTLA-4 は、抗原提示細胞上の

CD80、CD86 に対する逆シグナルによって、抗原提示細胞の機能を減弱させたり、直

接的にエフェクターT 細胞の機能を減弱させたりする。

抗 CTLA-4 抗体は、がん治療の目的で使用され、明らかな効果が認められた初めて

の免疫チェックポイント阻害剤である。その作用点は主に、がん免疫の誘導相のエフ

ェクターT 細胞および Treg と考えられている。

3 Ira Mellman et al.,(2011)Cancer immunotherapy comes of age. Nature.480(7378): 480–489. 4 石井直人著、(2014) Costimulatory/coinhibitory 分子の免疫学的役割とその臨床応用日呼吸誌 3(5)

643-649 5 珠玖洋監修、がん免疫療法-What’s now and what’s next?-、株式会社メディカルドゥ p43-48 6 Drew M. Pardoll(2012) The blockade of immune checkpoints in cancer immunotherapy Nature Reviews

Cancer 12,252–264 7 がん免疫療法のメカニズム解明と臨床への展開 がんと免疫 編集坂口志文、西川博嘉

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

(2)PD-1 (programmed cell death-1)7

PD-1 は、エフェクターCD4+T 細胞およびエフェクターCD8+T 細胞の活性化に伴って

ダイナミックに発現される共抑制分子であり、その代表的なリガンドは主に抗原提示

細胞やがん細胞に発現される PD-L1 である。PD-L1 は T 細胞受容体(TCR)で抗原を

認識して活性化したエフェクターT 細胞が放出するサイトカイン、IFN-γにより腫瘍

上にダイナミックに発現される。したがって、がん特異的 T 細胞が腫瘍を攻撃する効

果相において、PD-1 と PD-L1 の結合による T 細胞の抑制が強く働く。実際、がんに

浸潤するがん抗原特異的細胞障害性 T 細胞(CTL)は選択的に PD-1 による抑制を受け

ていることが明らかにされた。PD-1 は Treg には恒常的に発現されており、その分化

や機能維持を担うことが示唆されている。

抗PD-1抗体は抗CTLA-4抗体に次いで臨床応用された免疫チェックポイント阻害剤

である。その作用は主にがん免疫の効果相におけるがん特異的エフェクターT 細胞の

活性化と考えられている。

上記に加えて、表 3 で挙げた他のチェックポイント分子や、共抑制分子以外の免疫抑

制作用を有する分子である COX2、A2AR、IDO、Arginase、サイトカイン・ケモカイン受

容体である TGF-β、PI3K、IFN-γ、ケモカイン受容体 CXCR、CSF-1R 等の阻害剤等に関

する研究も進められている。

2.免疫増強

共刺激分子を介するシグナルは T 細胞の活性化、増殖、生存を促すことから、共刺激

分子によるシグナルを増強することによって抗腫瘍活性をもつ T 細胞応答を増強できる

可能性が示唆されている。共刺激分子に対するアゴニスト抗体により、抗腫瘍効果の誘

導を目指す治療法の開発も進められている。Immunoglobulin superfamilyに属するCD28、

TNF superfamily に属する OX-40、4-1BB、CD27、GITR 等が代表的な共刺激分子として挙

げられる。

共抑制分子・共刺激分子以外の抗腫瘍免疫応答の増強作用も研究されている。岡山大

学大学院医歯薬学総合研究科らの研究グループは、糖尿病治療薬メトホルミンが糖代謝

の解糖系を促進することにより、がんに存在する制御性 T 細胞の代謝バランスを崩壊さ

せてアポトーシスを誘導することを見出した8。このがんに局所的に存在する制御性 T 細

胞のみを抑制するメトホルミンは、糖代謝改善を介した新たながん免疫療法として注目

されている。

STING(stimulator of interferon genes)、Toll 様受容体(Toll-like receptor:TLR)

は、自然免疫においてウイルス・細菌の構成成分を認識する、生体防御において重要な

役割を果たす膜貫通タンパク質である。STING、TLR ともに複数のシグナル伝達経路を活

性化させ、インターフェロン産生の誘導、樹状細胞の成熟化による T 細胞の活性化等の

作用をもたらすことが報告されており、これらのアゴニストの投与による免疫増強の研

究開発が進められている。

8岡山大学 プレスリリース https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id507.html

(2018.08.16 アクセス)

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第1部

第2部

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第4部

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資料編

第6部

その他の免疫増強として、T 細胞増殖因子(T cell growth factor:TCGF)や、細胞

傷害性 T 細胞等の活性化作用を有するインターロイキン 2(Interleukin-2:IL-2)、NK

細胞活性化作用を有するインターロイキン 15(Interleukin-15:IL-15)、顆粒球-マク

ロファージコロニー刺激因子(granulocyte-macrophage colony-stimulating factor:

GM-CSF)等、免疫細胞を増殖・分化させる機能を有するサイトカインによる、免疫増強、

及びアジュバント活性を介したがん免疫療法の研究開発が進められている。

第2節 養子免疫療法

養子免疫療法とは、がん患者自身、あるいはドナーの免疫細胞を採取し、体外で培養

して刺激、増殖させることでがん細胞に対する傷害活性を有する免疫細胞を大量に誘導

した後に、それらをがん患者に投与する治療法を指す。遺伝子改変 T 細胞を用いた養子

免疫療法は主に、T 細胞に対して遺伝子改変技術を用いて腫瘍抗原特異的なキメラ抗原

受容体(CAR)遺伝子を導入する治療法(CAR-T 細胞療法)や T 細胞受容体(TCR)遺伝

子を導入する治療法(TCR-T 細胞療法)に分けられる。

CAR は、がん細胞表面の抗原を認識するモノクローナル抗体由来の L 鎖及び H 鎖の可

変部領域を直列に結合させた一本鎖抗体(scFv)と、TCR の CD3ζ鎖を結合させたキメラ

タンパクから構成される。scFv と CD3ζ鎖の間には、細胞外ヒンジドメイン、膜貫通ド

メイン、シグナル伝達に必要となる細胞内ドメインが存在する。CAR は細胞内ドメイン

の構造によって第一世代~第三世代に分類される。その中でも、CD28 に代表されるよう

な細胞内ドメインにさまざまな免疫機能分子のシグナル伝達ドメインが追加された第二

世代 CAR、CTL へのメモリー機能の付与を目的として CD28 に加えて 4-1BB、ICOS、OX-40

等のシグナル伝達ドメインを細胞内ドメインへ追加した第三世代 CAR に関する研究がな

されており、CAR-T 細胞の細胞増殖や細胞死の抑制、サイトカイン分泌促進、CAR-T 細胞

による CTL からメモリーT 細胞の誘導能を有することが知られている9。

CAR-T 細胞療法は、特に B 細胞性の血液がんに対して 80%を超える寛解率が報告される

等、これまでのがん治療ではみられない優れた治療効果が確認されている。しかしその

一方で、課題も複数存在する。例えば、CAR-T 細胞療法における重篤な有害事象の一つ

としてサイトカイン放出症候群(CRS)が報告されている。これに対して FDA は、2017

年 8 月、ロシュの Actemra/RoActemra(tocilizumab)静注製剤を、成人及び 2 歳以上の

小児患者における CAR-T 細胞療法に伴う重度もしくは生命を脅かす CRS に対して承認し

た10。その他、CD19 を標的とする CAR-T 細胞療法において、CD19 はがん細胞だけではな

く正常 B 細胞表面にも発現しているため、正常 B 細胞の消失が起こる。この現象は

on-target off-tumor toxicity と呼ばれる有害事象の代表例であるが、免疫グロブリン

補充療法により対処が可能とされている。

9 中川岳志ら、(2013) キメラ抗原受容体 (CAR) 発現細胞傷害性 T 細胞(CTL)を用いた次世代養子免疫療

法の開発、Drug Delivery System 28-1、p35-44 10 Le RQ et al., (2018) FDA Approval Summary: Tocilizumab for Treatment of Chimeric Antigen Receptor

T Cell-Induced Severe or Life-Threatening Cytokine Release Syndrome. Oncologist.23(8):943-947

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第1部

第2部

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資料編

第6部

我が国では iPS 細胞由来 T 細胞を用いたがん免疫療法に関する研究11や、幹細胞とメ

モリー細胞の両方の性質を持つ「誘導性ステムセルメモリーT 細胞(iTSCM)」をがん治

療に応用する研究12も行われている。

第3節 腫瘍溶解性ウイルス療法

腫瘍溶解性ウイルス療法とは、ウイルスが本来もつ感染した細胞・組織内で増殖しな

がらそれを死滅させる性質をがん治療に応用するというコンセプトの治療法であり、悪

性腫瘍に対する次世代医療として近年注目を浴びている。

1900 年代の初めより、ウイルスを用いたがん治療の研究開発は実施されていたが、当

時は正常細胞でも増殖能を保持した野生型に近いウイルスを用いていたため、安全面の

懸念等により普及しなかった。近年の遺伝子組換え技術やウイルス及びがんに関する研

究の進歩により、ウイルスが本来持ち合わせている正常組織に対する病原性を排除しつ

つ、がん細胞のみで増殖させることができるウイルスが開発され、がんを標的とするウ

イルス療法が確立されつつある。

腫瘍溶解性ウイルスは、まず感染したがん細胞や組織内で増殖伝播しながら、それら

をアポトーシスやネクローシスを介して腫瘍溶解・死滅させる。次に破壊されたがん細

胞がウイルスと共に抗原提示細胞に取り込まれることで、ウイルスタンパク自体による

アジュバント効果と相まって、腫瘍特異的な細胞傷害性 T 細胞の活性化を伴う、全身性

の抗腫瘍免疫が賦活される。すなわち、腫瘍溶解性ウイルスを局所投与することにより、

遠隔のがんに対しても抗腫瘍効果を及ぼすことが期待される治療戦略である。

第4節 がんワクチン療法

がん抗原を標的とするがんワクチン療法は、理論的には重篤な有害事象が生じる可能

性が低く、魅力的な治療法と考えられている。数多くのがん抗原が同定され、それらを

標的とするがんワクチン療法の臨床試験が多数実施されているが、現時点で世界で承認

されているものは樹状細胞ワクチン 1 製品のみである。

1991 年に、Boon らによってメラノーマ抗原 MAGE が同定され、細胞傷害性 T 細胞が TCR

を介してがん細胞表面の MHC/ペプチド複合体を認識し、がん細胞を殺傷していることが

示された13。それ以降、がん細胞に特異的に発現し、かつ発現頻度の高い様々ながん種

に対するがん抗原(gp100、WT1、NY-ESO 等)が同定された。がんワクチン療法として代

表的なものには、ペプチドワクチン、樹状細胞ワクチン等が挙げられる。また、がん細

胞の遺伝子異常により新たに生成される抗原である「ネオアンチジェン」をターゲット

にしたワクチン開発も進んでいる。

11 京都大学 iPS 細胞研究所 ニュースリリース

https://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/pressrelease/news/181116-010000.html(2019.02.27 アクセス) 12 日本医療研究開発機構 ニュースリリース

https://www.amed.go.jp/news/release_20170522.html(2019.02.27 アクセス) 13 van der Bruggen P et al., (1991) A gene encoding an antigen recognized by cytolytic T lymphocytes

on a human melanoma. Science. 13;254:1643-1647.

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第2部

第3部

第4部

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資料編

第6部

第2章 がん免疫療法の市場環境

第1節 がん免疫療法市場の現状

1.免疫調節関連の動向

現在、免疫調節関連では、免疫チェックポイント分子である CTLA-4、PD-1、PD-L1 に

対する阻害剤(抗体)が上市されており、ブリストル・マイヤーズスクイブ/小野薬品工

業、米メルク(MSD)、ロシュ-ジェネンテック-中外製薬、独メルク/ファイザー、アスト

ラゼネカの 5 グループを中心に開発が進められてきた。免疫チェックポイント阻害剤以

外の免疫抑制阻害療法、及び免疫増強については未上市である。そのため、本稿では免

疫チェックポイント阻害剤の市場について記述する。

抗 CTLA-4 抗体 Yervoy(ipilimumab)は、前治療歴のある切除不能または転移性メラ

ノーマを適応症として 2011 年 3 月に FDA より承認された。その後、日本及び欧州におい

ても同様の適応で承認されている。Yervoy(ipilimumab)の単剤における適応症は、現

時点でメラノーマのみであり、その他の腫瘍に対する適用での承認はされていない。

抗 PD-1 抗体である Opdivo(nivolumab)は、根治切除不能なメラノーマを適応症とし

て2014年 7月に厚生労働省より承認された。Opdivoに次いで承認された抗PD-1抗体は、

米メルク(MSD)の Keytruda(pembrolizumab)である。同剤は、進行もしくは切除不能

のメラノーマを適応症として 2014 年 9 月に FDA より迅速承認された。これら 2 製品は、

その後各国・地域において、様々ながんを適応症として承認されている。さらに、上記

5グループに加えて、2018 年 9月にリジェネロン/サノフィの Libtayo(cemiplimab-rwlc)

が皮膚の扁平上皮がんを適応症として FDA より承認された。この他、2018 年 12 月にシ

ャンハイ ジュンシー バイオサイエンスィズの Tuoyi(toripalimab)、イノベント・バ

イオロジクス/イーライリリーの Tyvyt(sintilimab)がそれぞれメラノーマ及びホジキ

ンリンパ腫を適応症として、相次いで中国国家薬品監督管理局(National Medical

Products Administration:NMPA)より承認された。

抗 PD-L1 抗体は、2018 年 7 月時点で 3 製品が承認されている。世界で初めて上市され

た抗 PD-L1 抗体は、ロシュ―ジェネンテックの Tecentriq(atezolizumab)である。同

剤は、プラチナ製剤ベースの化学療法施行中または施行後に病勢進行を認めた、または

プラチナ製剤ベースの化学療法による術前または術後補助化学療法を行い 12 カ月以内

に病勢進行を認めた局所進行または転移性尿路上皮がんを適応症として 2016 年 5 月に

FDA より迅速承認された。Tecentriq に次いで承認された抗 PD-L1 抗体は、独メルク/フ

ァイザーの Bavencio(avelumab)である。同剤は、12 歳以上の転移性メルケル細胞がん

を適応症として、2017 年 3 月に FDA より迅速承認された。次いで承認されたのは、アス

トラゼネカの Imfinzi(durvalumab)である。同剤は、プラチナ製剤を含む全身一次化

学療法による治療中あるいは治療後に病勢進行が認められた、あるいはプラチナ製剤を

含む術前、もしくは術後補助化学療法を受けてから 12 カ月以内に病勢進行が認められた

局所進行あるいは転移性尿路上皮がんを適応症として 2017年 5月に FDAより迅速承認さ

れた。これら 3 製品は、その後各国・地域において、適応症を拡大、もしくはそれに向

けた臨床試験が実施されている。

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第3部

第4部

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資料編

第6部

免疫チェックポイント阻害剤の単独投与による奏効率は 20~30%程度であり14、さらな

る奏効率の向上を目的として、他の化学療法剤やがん免疫療法との併用療法の開発が盛

んに行われている。現時点では、Yervoy と Opdivo との併用療法が根治切除不能なメラ

ノーマ等を適応症として承認されている。

2018 年 12 月時点で、日本、米国、欧州、中国、韓国で承認されている免疫チェック

ポイント阻害剤を以下表 4、免疫チェックポイント阻害剤の併用療法を表 5 に示す。

表 4 承認されている免疫チェックポイント阻害剤(2018 年 12 月時点)

標的 一般名 製品名 開発企業 承認国・地域 対象疾患

CTLA-4 ipilimumab Yervoy

ブリストル・マイヤーズスクイブ 小野薬品工業

日本 メラノーマ 米国 メラノーマ

欧州 メラノーマ

PD-1

nivolumab Opdivo

小野薬品工業 ブリストル・マイヤーズスクイブ

日本

メラノーマ、非小細胞肺がん、腎細胞がん、ホジキンリンパ腫、頭頸部がん、胃がん、胸膜中皮腫

米国

メラノーマ、非小細胞肺がん、腎細胞がん、ホジキンリンパ腫、頭頸部がん、尿路上皮がん、肝細胞がん、大腸がん

欧州

メラノーマ、非小細胞肺がん、腎細胞がん、ホジキンリンパ腫、頭頸部がん、尿路上皮がん

中国 非小細胞肺がん

韓国

メラノーマ、非小細胞肺がん、腎細胞がん、ホジキンリンパ腫、頭頸部がん、尿路上皮がん、胃がん

pembrolizumab Keytruda 米メルク(MSD)

日本

メラノーマ、非小細胞肺がん、ホジキンリンパ腫、尿路上皮がん、MSI-high 腫瘍

米国

メラノーマ、非小細胞肺がん、頭頸部がん、ホジキンリンパ腫、MSI-high 腫瘍、尿路上皮がん、子宮頸がん、B細胞性リンパ腫、胃がん、肝細胞がん

欧州

メラノーマ、非小細胞肺がん、ホジキンリンパ腫、尿路上皮がん、頭頸部がん

中国 メラノーマ

韓国

メラノーマ、非小細胞肺がん、頭頸部がん、ホジキンリンパ腫、尿路上皮がん

14 清家 正博、(2017) 肺癌に対する免疫 Check Point 阻害剤の有効性、日医大医会誌 2017; 13(3)p145-149

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

標的 一般名 製品名 開発企業 承認国・地域 対象疾患

aemiplimab-rwlc Libtayo サノフィ リジェネロン

米国 扁平上皮がん

toripalimab Tuoyi

シャンハイ ジュンシー バイオサイエンスィズ

中国 メラノーマ

sintilimab Tyvyt

イノベント・バイオロジクス イーライリリー

中国 ホジキンリンパ腫

PD-L1

atezolizumab Tecentriq

ロシュ (ジェネンテック) 中外製薬

日本 非小細胞肺がん

米国 非小細胞肺がん、尿路上皮がん

欧州 非小細胞肺がん、尿路上皮がん

avelumab Bavencio 独メルク ファイザー

日本 メルケル細胞がん

米国 メルケル細胞がん、尿路上皮がん

欧州 メルケル細胞がん

durvalumab Imfinzi アストラゼネカ

日本 非小細胞肺がん

米国 尿路上皮がん、非小細胞肺がん

各社ホームページより取りまとめ。Yervoy はブリストル・マイヤーズスクイブ、Opdivo は小野薬品工業、

Keytruda・Bavencio はメルク、Libtayo はサノフィ、Tecentriq はロシュ、Imfinzi はアストラゼネカの

登録商標である。

表 5 承認された免疫チェックポイント阻害剤併用療法(2018 年 12 月時点)

標的 併用薬 1 併用薬 2 開発企業 承認国・地域 対象疾患

CTLA-4 PD-1

Yervoy Opdivo

ブリストル・マイヤーズスクイブ 小野薬品工業

日本 メラノーマ、腎細胞がん

米国 メラノーマ、腎細胞がん、MSI-high 腫瘍または MMR 欠損大腸がん

欧州 メラノーマ

韓国 メラノーマ

各社ホームページより取りまとめ。Yervoy はブリストル・マイヤーズスクイブ、Opdivo は小野薬品工業の

登録商標である。

本調査の対象である 4 つの技術分野において、 も大きな市場を既に形成しているの

は免疫チェックポイント阻害剤である。2017 年の免疫チェックポイント阻害剤の世界市

場は 113 億 4,300 万ドル、約 1 兆 2,500 億円と推測される。2017 年までに承認されてい

る免疫チェックポイント阻害剤 6 製品のグローバル売上推移を以下表 6、図 2 に示す(一

部推計を含む)。

免疫チェックポイント阻害剤で も売上の多い製品は Opdivo である。2017 年の世界

での売上は約 57 億 6,900 万ドルであり、市場の約 50%を占めている。Opdivo が発売され

て以降 2017 年までは世界売上高において、Opdivo は Keytruda を圧倒している。しかし、

2018 年 4~6 月期の売上高を比較すると、Opdivo が 18 億 3,400 万ドル(日本・韓国・台

湾を除くと 16 億 2,700 万ドル)であるのに対し、Keytruda は 16 億 6,700 万ドルであり

拮抗している。

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

表 6 免疫チェックポイント阻害剤のグローバル売上推移(2011 年~2017 年)15

(単位:100 万ドル)

製品名 2011 年 2012 年 2013 年 2014 年 2015 年 2016 年 2017 年

Yervoy 360 706 960 1,308 1,126 1,053 1,244

Opdivo 0 0 0 22 1,040 4,589 5,769

Keytruda 0 0 0 50 566 1,402 3,809

Tecentriq 0 0 0 0 0 159 492

Bavencio 0 0 0 0 0 0 10

Imfinzi 0 0 0 0 0 0 19

合計 360 706 960 1,380 2,732 7,203 11,343

1 米ドル=110 円、1€=1.16 米ドル、1CHF=1.01 米ドル

図 2 免疫チェックポイント阻害剤のグローバル売上推移(2011 年~2017 年)15

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年

Yervoy Opdivo Keytruda Tecentriq Bavencio Imfinzi

15 各社公開データをもとに作成。

(100万ドル)

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

表 7 に 2017 年 5 月に EvaluatePharma が発表した 2022 年の世界医薬品売上予想上位

20 品目を示す。免疫チェックポイント阻害剤として Opdivo(抗 PD-1 抗体)、Keytruda

(抗 PD-1 抗体)、Tecentriq(抗 PD-L1 抗体)の抗体 3 製品が含まれている。2016 年の

売り上げと比較した 2022 年における各製品の売り上げの増加率は Opdivo:約 2.1 倍、

Keytruda:約 6.8 倍、Tecentriq:約 31 倍であり、免疫チェックポイント阻害剤市場は

今後さらに拡大することが予想されるが、先行して承認された抗 PD-1 抗体が市場におい

ては優位に立つと考えられる。

表 7 2022 年の世界医薬品売上予想上位 20 品目16

製品名 薬理学的分類

2016年売上実績

(100万ドル)

2022年売上予想

(100万ドル)

世界 米国 世界 米国

1 Humira 抗TNF-α抗体 16,515 10,432 15,901 12,043

2 Revlimid immunomodulator 6,974 4,417 14,197 10,147

3 Opdivo 抗PD-1抗体 4,735 2,664 9,912 4,421

4 Keytruda 抗PD-1抗体 1,402 792 9,509 4,767

5 Eliquis Xa因子阻害剤 3,343 1,963 8,486 5,105

6 Xarelto Xa因子阻害剤 4,986 2,288 8,131 3,296

7 Imbruvica BTK阻害剤 2,218 1,580 7,499 4,368

8 Eylea VEGF阻害剤 5,539 3,323 7,171 4,296

9 Ibrance CDK4/6阻害剤 2,135 2,068 7,074 4,632

10 Januvia/Janumet DPP-4阻害剤 6,440 3,270 5,989 3,000

11 Darzalex 抗CD38抗体 572 471 5,833 3,496

12 Prevnar 13 pneumococcal vaccine 6,034 3,645 5,749 3,153

13 Prolia/Xgeva 抗RANKL抗体 3,459 2,164 5,632 3,609

14 Triumeq NRT阻害剤及びHIVインテグラーゼ阻害剤 2,350 1,570 5,376 3,389

15 Enbrel TNF-α阻害剤 9,248 5,719 5,276 3,623

16 Perjeta 抗HER2抗体 1,874 919 5,240 2,263

17 Dupixent 抗IL-4/ IL-13抗体 ― ― 4,938 2,869

18 Tecentriq 抗PD-L1抗体 159 156 4,937 2,651

19 Xtandi アンドロゲン受容体シグナル伝達阻害剤 2,332 1,218 4,883 2,706

20 Stelara 抗IL-12/23p40抗体 3,232 2,263 4,858 3,379

*青色のハイライトは免疫チェックポイント阻害剤を示す。

2.養子免疫療法関連の動向

養子免疫療法として現時点で承認されているのは CAR-T 細胞のみである。CAR-T 細

胞療法として、米国で 2 製品が世界に先駆けて上市された17 18。ノバルティスの

16 EvaluatePharma® World Preview 2017, Outlook to 2022P36, 2022: Top 50 Selling Products in the World

http://info.evaluategroup.com/rs/607-YGS-364/images/WP17.pdf (2018.08.08 アクセス) 17 Kymriah patient site https://www.us.kymriah.com/treatment-center-locator/(2019.02.21 アクセス)

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

Kymriah は世界で初めての CAR-T 細胞療法として、B 細胞性急性リンパ芽球性白血病

(25 歳以下)を適応症として 2017 年 8 月に FDA より承認された。さらに、再発・難

治性の大細胞型 B 細胞リンパ腫を 2 つ目の適応症として、2018 年 5 月に FDA より承

認された。もう一つの CAR-T 細胞療法として承認されているのは、カイトファーマ(ギ

リアド・サイエンシズの子会社)の Yescarta である。同製品は、成人のびまん性大

細胞型 B 細胞リンパ腫(DLBCL)を適応症として、2017 年 10 月に FDA より承認され

た。いずれの製品も第二世代の CAR-T 細胞療法であり、Kymriah は共刺激ドメインに

4-1BB を、Yescarta は共刺激ドメインに CD28 を使用している。2019 年 2 月時点で承

認されている CAR-T 細胞製品を表 8 に示す。

表 8 上市されている CAR-T 細胞製品(2019 年 2 月時点)

標的 一般名 製品名 開発企業 承認国 対象疾患

CD19 tisagenlecleucel Kymriah ノバルティス

米国 欧州 カナダ スイス オーストラリア 日本

B 細胞性急性リンパ芽球性白血病、大細胞型 B細胞リンパ腫

CD19 Axicabtagene ciloleucel

Yescarta カイトファーマ(ギリアド・サイエンシズ)

米国 欧州

びまん性大細胞型 B 細胞リンパ腫

各社ホームページより取りまとめ。Kymriah はノバルティス、Yescarta はカイトファーマの登録商標であ

る。

国内では Kymriah は 2019 年 2月 20日に再発または難治性の B細胞性急性リンパ芽

球性白血病、及び再発または難治性のびまん性大細胞型 B 細胞リンパ腫を適応症とし

て製造販売承認された。なお、Kymriah は、CD19 陽性 B 細胞性急性リンパ芽球性白血

病、CD19 陽性びまん性大細胞型 B 細胞リンパ腫、CD19 陽性濾胞性リンパ腫の適応に

対して、希少疾病用再生医療等製品の指定を受けている。

米国では、ノバルティスの Kymriah の価格は 475,000 ドル、カイトファーマの

Yescarta の価格は 373,000 ドルと設定されている19。いずれも高額の薬価が設定され

ているが、各社は患者が治療を受けられるように保険会社等への働きかけを行ってい

る。ノバルティスは Kymriah について、現行の規制要件下で価値に基づく医療

(value-based care)の効率的な提供と、患者の治療薬へのアクセスを確保するため、

米国メディケア・メディケイドサービスセンター(Centers for Medicare and Medicaid

Services:CMS)と「達成された臨床アウトカムに基づき適応ごとの医薬品の薬価を

設定すること(indication-based pricing)」を開始することを発表した。また、対

18 Gilead sciences announces third quarter 2018 financial results

http://investors.gilead.com/static-files/626555e9-1c0c-44c5-b494-ab215c645464 (2019.02.21 アクセ

ス) 19 経済産業省、伊藤レポート 2.0~バイオメディカル産業版~「バイオベンチャーと投資家の対話促進研究

会」 終報告 2018 年 4 月 27 日 http://www.meti.go.jp/press/2018/04/20180427005/20180427005-2.pdf

(2018.08.20 アクセス)

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

象患者が、治療後 1 カ月終了までに効果を認めた場合のみ支払いを受けるという、臨

床アウトカムに基づく取組を CMS と協力している20。

両製品の 2018 年第 1 四半期から第 3 四半期の売上を、以下表 9 に示す。Kymriah

は 4,800 万ドルであったのに対し、Yescarta は 1 億 8,300 万ドルであり、CAR-T 細胞

療法の市場は 2 億 3,100 万ドルとなる。各製品の売上額をシェアに換算すると、図 3

に示すように Kymriah は 21%、Yescarta は 79%となる。

表 9 2018 年の CAR-T 細胞製品の売上推移(2018 年第 1—第 3 四半期)21 (単位:100 万ドル)

2018年

第1四半期 2018年

第2四半期 2018年

第3四半期 2018年

第1—第3四半期

Kymriah 12 16 20 48

Yescarta 40 68 75 183

図 3 CAR-T 細胞製品の世界シェア(2018 年第 1—第 3 四半期)22

3.腫瘍溶解性ウイルス療法関連の動向

2018 年 7月時点で、世界で承認されている腫瘍溶解性ウイルス製剤は 2製品である(表

10)。世界初の腫瘍溶解性ウイルス製剤は、シャンハイ サンウエイ バイアテクの

Oncorine である。同剤は、鼻咽頭がんを適応症として、2005 年 4 月に中国国家薬品監督

管理局(State Food and Drug Administration(現 NMPA))より承認されている。もう

一つの製品は、アムジェンの Imlygic である。同剤は手術後に再発したメラノーマの切

除不能な皮膚、皮下、節部の病変に対する局所治療を適応症として、2015 年 10 月に FDA

より承認されており、また、ステージⅢB、ⅢC、ⅣM1a 期メラノーマにおける切除不能

な局所転移の治療を適応症として、同年 12 月に欧州医薬品庁(European Medicines

Agency:EMA)より承認された。

20 ノバルティス ニュースリリース

https://www.novartis.co.jp/news/media-releases/prkk20170913 (2018.08.20 アクセス) 21 公開情報より作成(Financial Results Q1-Q3 2018 – Novartis 及び http://investors.gilead.com/) 22 公開情報より作成 (Financial Results Q1-Q3 2018 – Novartis 及び http://investors.gilead.com/)

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第6部

表 10 上市されている腫瘍溶解性ウイルス製剤(2018 年 7 月時点)

一般名 製品名 投与方法 開発企業 承認国 対象疾患

不明 Oncorine 腫瘍内投与 シャンハイ サンウエイ バイアテク

中国 鼻咽頭がん

talimogene laherparepvec

Imlygic 腫瘍内投与 アムジェン 米国 欧州

メラノーマ

各社ホームページより取りまとめ。Imlygic は Amgen の登録商標である。

Oncorine の価格は治療 1 コース当たり 2 万 5,000~3 万ドルとなっている23。アムジェ

ンの Imlygic は、米国における販売価格を 65,000 ドル/回に設定している24。また、処

方対象となる患者の薬剤アクセスを向上させるため、保険未加入患者に対する無料提供

プログラムや保険加入患者に対する co-pay coupon プログラムを提供している。

Oncorine の現在の売上については不明である。また、Imlygic 単体の製品売上は公表

されていないが、Evaluate は Imlygic の世界での売上高は、2016 年は 4,500 万ドルであ

り、2022年には 2億 5,000万ドルまで成長するとのコンセンサス予測を報告している25。

4.がんワクチン療法関連の動向

現在上市されているがんワクチンは、抗原提示細胞ワクチンである Provenge のみであ

る(表 11)。2010 年 4 月、FDA はデンドレオンが開発した Provenge(sipuleucel-T)を、

ホルモン療法抵抗性転移性前立腺がんを適応症として承認した。また、米国での承認に

次いで、2013 年 9 月、欧州においても販売承認を取得した。

しかし、2014 年 11 月、デンドレオンは経営破たんした26。その後、2015 年、カナダ

ヴァレアント ファーマシューティカルズ(現ボシュヘルスカンパニーズ)がデンドレオ

ンを 4 億 9,500 万ドルで買収した27。さらに、2017 年 1 月には、中国のサンパワーグル

ープはヴァレアント ファーマシューティカルズより Provenge に関する事業について、

約 8 億 2,000 万ドルで買収しており、現在 Provenge にかかる事業主体はサンパワーグル

ープとなっている28。

なお、商業上の理由とするデンドレオンの要請により、Provenge の欧州での製造販売

承認は 2015 年 5 月に撤回されている29。

23 Alex Kudrin (2012) Business models and opportunities for cancer vaccine developers, Human

Vaccines & Immunotherapeutics 8:10, 1431-1438 24 アムジェン ニュースリリース

https://www.amgen.com/media/news-releases/2015/10/fda-approves-imlygic-talimogene-laherparepve

c-as-first-oncolytic-viral-therapy-in-the-us/ (2018.08.08 アクセス) 25 Edison Viralytics Cavatak/Yervoy combo enters thespotlight

https://www.edisoninvestmentresearch.com/?ACT=18&ID=18566&LANG= (2018.08.08 アクセス) 26 Katherine Bourzac, (2015) Therapy: An immune one–two punch, Nature volume 528, pages S134–S136 27 デンドレオン ホームページ https://www.dendreon.com/About-Us#OurHistory(2019.02.26 アクセス) 28 サンパワーグループ ホームページ http://en.sanpowergroup.com/content/details_44_3671.html

(2019.02.26 アクセス) 29 European medicines agenecy, public statement

http://www.ema.europa.eu/docs/en_GB/document_library/Public_statement/2015/05/WC500186950.pdf

(2018.08.14 アクセス)

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第4部

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第6部

表 11 上市されている抗原提示細胞ワクチン製品(2018 年 7 月時点)

一般名 製品名 投与方法 開発企業 承認国 対象疾患

sipuleucel-T Provenge 皮内投与 デンドレオン (サンパワーグループ)

米国 前立腺がん

Provenge はデンドレオンの登録商標である。

Provenge の 2016 年の売上は 2015 年比 10%増の 3 億 300 万ドルであった30 31。Provenge

事業を買収したサンパワーグループは、今後中国や東南アジアでの事業展開を見据えて

いる。既に中国国家薬品監督管理局(China Food and Drug Administration(現 NMPA))

との事前相談を済ませており、2019 年初めごろには中国での臨床試験が開始される見込

みとなっている。同社は、香港に Provenge やその他の細胞治療薬を製造するための施設

(1,000 ㎡)を獲得している他、上海の GMP 施設の完成も近く、それら施設から製品供

給を行う予定となっている32。

一方で、ペプチドワクチン等の抗原提示細胞ワクチン以外のがんワクチン療法として

承認された製品はなく、市場は形成されていない。

第2節 がん免疫療法の臨床試験状況

1.免疫調節

免疫調節は、その作用機序に基づき、免疫抑制阻害と免疫増強に区分され、医薬が標

的とする分子種の違いによって、さらに細分化することができる。

本項では、免疫調節について、既に上市されている免疫チェックポイント阻害分子を

ターゲットにした免疫抑制阻害、今後の上市が期待される免疫チェックポイント阻害分

子以外をターゲットにした免疫抑制阻害、免疫増強、の 3 つの治療方法に関する開発状

況を解説する。

(1)免疫チェックポイント阻害剤

免疫調節の中で研究開発の中心となっているのが免疫チェックポイント阻害剤で

ある。免疫チェックポイント阻害剤の臨床試験状況を示す(表 12)。2018 年 7 月時点

で臨床試験は 1,330 試験であった。

30 Valeant Pharmaceuticals.Fourth Quarter and Full Year 2015

SupplementalInformation(2019.02.26 アクセス)

http://ir.valeant.com/~/media/Files/V/Valeant-IR/reports-and-presentations/q4-and-fy2015-finan

cials-presentation.pdf(2019.02.26 アクセス) 31 Valeant Pharmaceuticals 4Q and FY 2016 Financial Results Conference Call

http://ir.valeant.com/~/media/Files/V/Valeant-IR/reports-and-presentations/q4-fy2016-vrx-02282

017-v1.pdf(2019.02.26 アクセス) 32 FiercePharme, Apr 2, 2018

https://www.fiercepharma.com/marketing/dendreon-expects-10-annual-provenge-growth-looks-for-ca

r-t-tcr-t-buy-chairwoman (2018.08.14 アクセス)

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表 12 免疫チェックポイント阻害剤の開発状況(2018 年 7 月時点)33

Phase 国名

Ⅰ Ⅰ/Ⅱ Ⅱ Ⅱ/Ⅲ Ⅲ

日本 26 13 10 0 65

米国 311 210 293 2 90

欧州 96 84 133 2 94

中国 52 35 24 0 43

韓国 34 17 25 0 65

その他 72 57 65 1 94

試験数合計 442 306 473 5 140

※同一試験が複数の地域で実施されている場合は、それぞれカウントしている。ゆえに、合計試験数と各

地域での実施数の合計が一致しない場合がある。試験数合計は、NCTnumber の数を示す。欧州の定義は外務

省のとおり。Not yet recruiting で、実施場所が不明のものはカウントしていない。

免疫チェックポイント阻害剤の開発は、小野薬品工業/ブリストル・マイヤーズス

クイブ、米メルク(MSD)、ロシュ-ジェネンテック-中外製薬、独メルク/ファイザー、

アストラゼネカが中心となって進めている。また、2018 年 8 月以降新たにリジェネ

ロン/サノフィ、さらに中国企業 5 社が免疫チェックポイント阻害剤開発に参入した。

各社は、各種抗がん剤やその他の治療法との併用療法に関する共同開発を様々な企業

と進めている。既に免疫チェックポイント阻害剤を上市している製薬企業は、他のが

ん種への適応や 1 次治療の適応取得を目指すための臨床試験を推進している。その他、

様々な抗がん剤、放射線療法等との併用療法の試験も実施されている。また、Phase

Ⅱ試験以降の試験のうち、CTLA-4/PD-1/PD-L1 以外の分子を標的とする免疫チェック

ポイント阻害剤に関する臨床試験は 5 試験確認された。これらは抗 LAG-3 抗体(3 試

験)、抗 TIGIT 抗体(1 試験)、抗 B7-H3 抗体(1 試験)に関するものであり、これら

の中には抗 PD-1 抗体との併用が行われている試験も存在する。

既に免疫チェックポイント阻害剤を上市している製薬企業以外が実施している

PhaseⅡ以降の臨床試験は 49 試験であり、うち 11 試験が PhaseⅢ試験であった。

免疫チェックポイント阻害剤を上市している製薬企業以外で PhaseⅢ試験を実施

している企業及び開発品目について表 13 に示す。7 社が PhaseⅢ試験を実施している

が、そのうち 5 社は中国企業であった。

33 https://clinicaltrials.gov/ より集計。大学・研究機関主体も含めた全ての試験数。

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第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

表 13 免疫チェックポイント阻害剤を上市している製薬企業以外で PhaseⅢ試験を実施している

企業及び開発品目(2018 年 7 月時点)

企業名 国籍 品目名 標的 対象疾患 併用治療

ノバルティス スイス spartalizumab (PDR001)

PD-1 メラノーマ なし

リジェネロン サノフィ

米国 cemiplimab (REGN2810)

PD-1

PD-L1陽性 非小細胞肺がん

なし

PD-L1陽性(>50%) 非小細胞肺がん

ipilimumab Chemotherapy

ジエンス ヘンルイ メデイシン

中国 camrelizumab (SHR-1210)

PD-1

ステージⅢ-ⅣA 鼻咽頭がん

なし

非小細胞肺がん (非扁平上皮がん)

pemetrexed carboplatin

ベイジーン 中国 /米国

tislelizumab (BGB-A317)

PD-1

ステージⅢB/Ⅳ 非小細胞肺がん

なし

食道扁平上皮がん なし

肝細胞がん なし

イノベント バイオ ロジックス

中国 Sintilimab (IBI308)

PD-1 非小細胞肺がん なし

シャンハイ ジュンシー バイオ サイエン スィズ

中国 JS001 PD-1 メラノーマ なし

スリーディー メディシンズ

中国 KN035 PD-L1 胆道がん gemcitabine oxaliplatin

(2)その他免疫抑制阻害療法

免疫チェックポイント阻害療法以外の免疫抑制阻害療法(以下、その他免疫抑制阻

害療法)として、COX-2 阻害剤、IDO 阻害剤、A2AR 阻害剤、Arginase 阻害剤、TGF-

β阻害剤等といった阻害剤の開発も進められている。その他免疫抑制阻害療法の臨床

試験状況を表 14 に示す。

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

表 14 その他免疫抑制阻害療法の開発状況(2019 年 3 月時点)34

Phase 国名

Ⅰ Ⅰ/Ⅱ Ⅱ Ⅱ/Ⅲ Ⅲ

日本 5 1 2 0 3

米国 31 33 29 0 4

欧州 8 14 14 0 4

中国 0 1 2 0 0

韓国 0 5 5 0 3

その他 8 11 13 0 4

試験数合計 51 36 36 0 5

臨床試験数は 128 試験が確認され、免疫チェックポイント阻害剤と比較すると少な

い状況である。また、PhaseⅢ試験 5 試験であることからその他免疫抑制阻害療法の

開発はまだ早期の段階であることが窺える。以下に PhaseⅢ試験が実施されている開

発品目を示した(2019 年 3 月時点)。

表 15 PhaseⅢ試験が実施されている開発品目企業及び開発品目(2019 年 3 月時点)

企業名 国籍 品目名 標的 対象疾患 併⽤治療

ブリストル・マイヤーズスクイブ

米国 BMS-986205 IDO 膀胱がん nivolumab

インサイト

米国 epacadostat IDO 尿路上皮がん、頭頸

部がん pembrolizumab

バイオライン RX

イスラエル BL-8040 CXCR4 多発性骨髄腫(造血幹細胞の自家移植)

G-CSF

PhaseⅢ試験では、IDO と CXCR4 を標的とした 3 つの開発品の試験が確認された。

これらの試験では抗 PD-1 抗体(pembrolizumab)または G-CSF との併用が行われてい

る。これら以外の IDO 阻害剤の PhaseⅢ試験として、メラノーマ、頭頚部がん等を対

象とした抗 PD-1 抗体との併用を含む試験が複数実施されていたが、メラノーマを対

象 と し た epacadostat と pembrolizumab 併 用 に よ る Phase Ⅲ 試 験

ECHO-301/KEYNOTE-252 の失敗35を受けていくつかの試験が中止された36。他のがんを

対象とした臨床試験は進行中である。また、協和発酵キリンは自社開発品の IDO 阻害

剤 KHK2455 とメルク/ファイザーの抗 PD-L1 抗体 avelumab との併用による PhaseⅠ

34 EvaluatePharma 及び https://clinicaltrials.gov/ より集計。大学・研究機関主体も含めた全ての試

験数。 35メルク プレスリリース

https://investors.merck.com/news/press-release-details/2018/Incyte-and-Merck-Provide-Update-on

-Phase-3-Study-of-Epacadostat-in-Combination-with-KEYTRUDA-pembrolizumab-in-Patients-with-Un

resectable-or-Metastatic-Melanoma/default.aspx(2019.03.13 アクセス) 36 Takefumi Komiya and Chao H. Huang, (2018) Updates in the Clinical Development of Epacadostat and Other Indoleamine 2,3-Dioxygenase 1 Inhibitors (IDO1) for Human Cancers Front Oncol. 8: 423.PMID:

30338242

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

試験を米国で開始する予定である37。

抗 CXCR4 抗体 BL-8040 については、転移性膵臓がんを対象とした米メルクの抗 PD-1

抗体 pembrolizumab との併用療法の開発も進められている38。

その他の主な標的における臨床試験の状況を述べる。

A2AR については、アストラゼネカはそーせいグループから導入した A2AR 阻害剤で

ある AZD4635(HTL1071)と抗 PD-L1 抗体 durvalumab との併用療法に関する PhaseⅡ試

験を開始する予定である39。Arginase については、インサイトはカリテラから固形が

ん適応とした初の低分子 Arginase 阻害剤(CB-1158)の開発・商業化の権利を得てお

り40、臨床試験を進めている41。TGF-βについては、イーライリリーが TGF-β阻害剤

LY3200882 に関する PhaseⅠ試験を進めている42。なお、イーライリリーとアストラ

ゼネカは、duvarlumab と免疫系を調整する候補化合物による併用療法の開発を目指

した提携を結んでいる43。

その他免疫抑制阻害療法の開発企業の動向を表 15 に示した。

表 16 その他免疫抑制阻害療法の開発企業の動向

標的 開発企業 提携先 動向 日付 概要

COX-2

ラドウィックがん研究所

- 学会発表

2017.08.12 プ レ スリ リ ース

米国がん学会(AACR)学会誌「Cancer ImmunologyResearch」にて、前臨 床研究においてインドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)を恒常的に発現する腫瘍はシクロオキシゲナーゼ 2(COX-2)阻害剤である Celebrexに反応し、特定の T 細胞サブセットが腫瘍に侵入しやすくなり、抗 PD1 療法に反応する可能性がより高くなる可能性があることを発表。

IDO

ブ リ ス トル・マイヤーズスクイブ

- 臨床試験結果発表

2017.11.16 プ レ スリ リ ース

Opdivo と 開 発 中 の IDO1 阻 害 剤「BMS-986205」の併用療法が、第 1/2a相試験 CA017-003 において、複数の治療歴を有する進行がんの患者で有望な奏効を示すことを発表。

37 協和発酵キリン ニュースリリース

https://www.kyowa-kirin.co.jp/news_releases/2018/20181102_01.html(2019.03.05 アクセス) 38 BioLineRx パイプライン情報

http://www.biolinerx.com/default.asp?pageid=98&itemid=41(2019.03.06 アクセス) 39 そーせい ニュースリリース

https://ssl4.eir-parts.net/doc/4565/tdnet/1661226/00.pdf (2019.03.05 アクセス) 40 カリテラニュースリリース

http://ir.calithera.com/news-releases/news-release-details/incyte-and-calithera-biosciences-an

nounce-global-collaboration?field_nir_news_date_value[min]=(2019.03.05 アクセス) 41 Clinical trial gov https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02903914(2019.03.08 アクセス) 42 イーライリリー ホームページ

http://www.lillyoncologypipeline.com/molecule/tgf-beta-r-1-kinase-inhibitor-ii/overview(2019.0

3.06) 43 アストラゼネカ プレスリリース

https://www.astrazeneca.co.jp/media/press-releases1/2015/20151027.html#(2019.02.28 アクセス)

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

標的 開発企業 提携先 動向 日付 概要

インサイト 米メルク 臨床試験結果発表

2018.04.06 プ レ スリ リ ース

インサイトとメルクは、IDO1 阻害剤 epacadostat と Keytruda(pembrolizumab)併用による切除不能あるいは転移性メラノーマを対象とする PhaseⅢ試験 ECHO-301/KEYNOTE-252において、pembrolizumab 単独療法を凌ぐ無増悪生存期間を得ることができずプライマリーエンドポイントを達成できなかったことから臨床試験を停止すると発表。

ニューリンクジェネティクス

ブ リ ス トル・マイヤー ズ ス クイブ /米メルク

臨床試験変更発表

2018.04.15 プ レ スリ リ ース

IDO1 阻害剤「indoximod」と Opdivo、Keytruda との第 3相試験 Indigo301 において、同様の臨床試験デザインでの 他社の IDO 阻害剤の臨床試験の失敗を受け、臨床試験内容を変更すること を明らかにした。

協和発酵キリン

独メルク フ ァ イ ザー

共同試験

2018.11.2 プ レ スリ リ ース

協和発酵キリンは固形がんを対象にIDO 阻害剤である KHK2455 と抗 PD-1 抗体である avelumab との併用によるPhaseⅠ臨床試験を米国で実施する契約の締結を発表。

フ レ ク サス・バイオサイエンシーズ

ブ リ ス トル・マイヤー ズ ス クイブ

買収

2015.04.08 プレ ス リリース

フレクサス・バイオサイエンシーズの買収を完了。フレクサス・バイオサイエンシーズの前臨床段階にあるリード低分子 IDO1-阻害剤 F001287の完全な権利を含む。同薬剤は、2015年度下半期に新薬治験許可申請(IND)を目指しており、IDO 選択的、IDO/TDO 二重阻害、及び TDO 選択的化合物ライブラリを含む IDO/TDO 創薬プログラムを行う予定。

A2AR

そーせいグループ ヘ プ タ レス・セラピューティクス

ア ス ト ラゼネカ

ライセンス契約

2015.08.10 プ レ スリ リ ース

アストラゼネカとそーせいグループの子会社ヘプタレス・セラピューティクス(英国)が、A2AR 拮抗剤であるHTL1071 及びその他の可能性のあるA2AR 拮抗剤化合物について、アストラゼネカが全世界における開発・製造商業化の独占権を取得するライセンス 契約を締結したと発表。

ア ス ト ラゼネカ

マイルストーン達成

2019.01.07 プ レ スリ リ ース

「HTL1071」(AZD4635)の PhaseⅡ臨床試験開始によりアストラゼネカ から 1,500 万ドルのマイルストーンを受領した。

コーバスファーマシューティカルズ

- 臨床試験開始

2019.01.08 プ レ スリ リ ース

Phse1/1b試験の第 2群の被験者登録を開始したと発表した。抗 CD73 抗体CPI-006 と A2AR 阻害剤 CPI-444 との併用療法により評価する。試験対象は非小細胞肺がん、腎細胞がん、及び標準治療が奏功しなかったがんを有する患者を登録する。CPI-006 単剤群、抗 PD-1抗体 pembrolizumab 併用群を評価する。

Arginase カリテラ

イ ン サ イト

開発への出資

2017.01.30 プ レ スリ リ ース

インサイトはカリテラより CB-1158 に関する血液疾患及びがん領域における開発・商業化の権利を得るための提携契約を締結した。インサイトは 4,500万ドルを前払いし、カリテラ 800 万ドルの株式投資を受けることに合意した。また、CB-1158 の開発について共同出資を行う。

TGF-β イーライリリー

ブ リ ス トル・マイヤー ズ ス クイブ

臨床試験提携

2015.1.28 プ レ スリ リ ース

ブリストル・マイヤーズスクイブとのnivolumab と TGFβR1 キナーゼ阻害剤galunisertib(LY2157299)を併用療法に関する臨床試験の実施を発表。

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

標的 開発企業 提携先 動向 日付 概要

ケモカイン受容体

協和発酵キリン

小 野 薬 品工業/ブリストル・マイ ヤ ー ズスクイブ

提携契約

2015.07.30 プレ ス リリース

ブリストル・マイヤーズスクイブと、協 和 発 酵 キ リ ン の 抗 CCR4 抗 体mogamulizumab と nivolumab との併用療法について、進行性または転移性の固形がんを対象としてた米国でのPhaseI/II 試験に関する提携契約を締結したことを発表。

ア ス ト ラゼネカ

開発提携契約

2014.07.30 プレ ス リリース

協 和 発 酵 キ リ ン の 抗 CCR4 抗 体Mogamulizumab とアストラゼネカの抗PD-L1 抗体 Durvalumab、もしくは抗CTLA-4 抗体 tremelimumab の併用療法に関する複数の固形がんを対象にしたPhaseⅠ/Ⅰb 臨床試験の開発提携契約を締結したことを発表。

バイオライン RX

米メルク 臨床試験提携

2016.1.12 プ レ スリ リ ース

転移性膵臓がんを対象として、バイオライン RX の CXCR4 拮抗薬 BL-8040 とpembrolizumab の併用療法を評価するための PhaseII 試験に関する提携を発表。

- オーファンドラッグ指定

2019.02.04 プ レ スリ リ ース

肝臓がんに治療に対して CXCR4 阻害剤BL-8040 が、FDA よりオーファンドラッグ指定を受けたと発表。

CSF-1R

ブ リ ス トル・マイヤーズスクイブ

フ ァ イ ブプ ラ イ ムセ ラ ピ ュー テ ィ クス

ライセンス契約

2015.10.15 ニ ュ ース リ リース

ブリストル・マイヤーズスクイブはファイブプライムセラピューティクスと、CSF-1R 阻害剤 FPA008 に関する独占ライセンス契約を締結した。

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

(3)免疫増強

免疫を増強するターゲットとして STING、TLR、4-1BB、サイトカイン等を標的とし

た治療法の開発も進められている。免疫増強の臨床試験状況を表 17 に示す。

表 17 免疫増強の開発状況(2019 年 3 月時点)44

Phase 国名

Ⅰ Ⅰ/Ⅱ Ⅱ Ⅱ/Ⅲ Ⅲ

日本 6 0 2 0 0

米国 62 29 49 0 5

欧州 21 9 14 1 7

中国 1 1 2 0 2

韓国 3 2 2 0 1

その他 12 4 6 0 5

試験数合計 73 37 67 1 9

臨床試験は 187 試験確認され、免疫増強についても免疫チェックポイント阻害療法

と比較すると少ない状況である。以下に PhaseⅢ試験が実施されている開発品目を示し

た(2019 年 3 月時点)。

表 18 免疫増強の PhaseⅢ試験が実施されている開発品目(2019 年 3 月時点)

企業名 国籍 品目名 標的 対象疾患 併用治療

ファイザー 米国 utomilumab 4-1BB 細胞型 B 細胞

リンパ腫 avelmab

ネクター ブリストル・マイヤーズスクイ

米国 NKTR-214

(Bempegaldesleukin)

CD122 (IL-2 受容体β鎖)

メラノーマ nivolumab

フィロゲン イタリア

Fibromun Darkeukin

TNF-α受容体

IL-2 受容体

メラノーマ なし

イデラ・ファーマシューティカ

ル ブリストル・マイヤーズスクイ

米国 IMO-2125 TLR9 メラノーマ ipilimumab

モロジェン (MOLOGEN)

ドイツ

lefitolimod TLR9 転移性大腸が

ん なし

エーザイ ドクター・レッディースラボラ

トリー

日本 インド

E7777 IL-2 受容

体 皮膚 T 細胞 リンパ腫

なし

44 EvaluatePharma 及び https://clinicaltrials.gov/ より集計。大学・研究機関主体も含めた全ての

試験数。

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

PhaseⅢ試験では、4-1BB、IL-2 受容体、TLR9 を標的とした 5 品目の試験が確認さ

れた。このうち 3 つの開発品については抗 PD-1 抗体との併用が行われている。抗

4-1BB 抗体 utomilumab については、ファイザーは抗 PD-1 抗体 pembrolizumab との併

用療法に関する PhaseI 試験も実施しており、同試験において奏功性が認められたこ

とを報告している45。以下にその他の主な標的における臨床試験の状況を述べる。

TLR は他のターゲットとして TLR7 の開発も進んでおり、大日本住友製薬の子会社

であるボストン・バイオメディカルは TLR7 アゴニストである DSP-0509 に関して、固

形がんを適応とした臨床試験を米国で進めている46。

STING については、アデュロ・バイオテックはノバルティスと提携し、進行性・転

移性固形がんまたはリンパ腫を適応とした STING アゴニスト(ADU-S100)と抗 PD-1

抗体 ipilimumab もしくはノバルティスの治験用抗 PD-1 抗体である PDR001 との併用

療法に関する臨床試験を進めている47。米メルクは進行性固形がんまたはリンパ腫を

適応として STING アゴニスト(MK-1454)と pembrolizumab との併用療法に関する臨

床試験を実施している48。

OX-40 については、グラクソ・スミスクラインは OX-40 阻害剤 GSK3174998 と米メ

ルクの抗 PD-1 抗体 pembrolizumab との併用療法の臨床試験を進めている49。

免疫増強の開発企業の動向を表 19 に示した。

表 19 免疫増強の開発企業の動向

標的 開発企業 提携先 動向 日付 概要

TLR

ボストン・バイオメディカル

- 臨床試験開始

2018.9.13 プレスリリース

ボストン・バイオメディカルは治験薬DSP-0509(TLR7 アゴニスト)の治験を開始したと発表した。標準治療に抵抗性の進行性固形がんを適応とする。

チェックメイトセラピューティクス

独メルク ファイザ

ー 提携契約

2018.09.05 プレスリリース

独メルク、ファイザーと提携し、avelmab と CMP-001 の併用療法を評価することを発表。進行性頭頸部扁平上皮がんを対象とする。

イデラファーマシューティカルズ

- 前臨床研究

2016.04.19 プレスリリース

前臨床がんモデルにおいて、IDO1 阻害剤と組み合わせた IMO-2125 を腫瘍内投与することで全身性抗がん活性の増強を示す新しい前臨床データを発表した。

45 ファイザー ニュースリリース

https://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2016/2016_06_15.html(2019.2.28 アクセス) 46 ボストン・バイオメディガル ニュースリリース

https://www.bostonbiomedical.com/news-and-media/20180913_bostonbiomedical-announces-first-pati

ent-dosed-dsp-0509/(2019.3.5 アクセス) 47 Aduro Biotech パイプライン

https://www.aduro.com/pipeline/clinical-trials/ (2019.02.26 アクセス) 48米メルク ニュースリリー

https://investors.merck.com/news/press-release-details/2018/First-Presentation-of-Early-Data-f

or-Mercks-Investigational-STING-Agonist-MK-1454-in-Patients-with-Advanced-Solid-Tumors-or-Lymp

homas-at-ESMO-2018-Congress/default.aspx(2019.02.26 アクセス) 49 https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02528357(2019.2.28 アクセス)

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

標的 開発企業 提携先 動向 日付 概要

モロジェン - 前臨床研究

2017.02.27 プレスリリース

前臨床in vivoデータの結果より、TLR9アゴニストである EnanDIMと、チェックポイント阻害剤抗 PD-1 抗体の併用により抗腫瘍効果を有意に示し、マウス結腸がんモデルにおける生存期間延長を示した。

STING

アデュロ・バイオテック

ノバルティス

提携契約

2015.3.30 プレスリリース

アデュロ・バイオテックは STING をターゲットとした開発・商業化に関してノバルティスと提携契約を締結した。ノバルティスはアデュロ・バイオテックに対して 2 億ドルの前払いを行い、開発マイルストーン達成時に追加で 5億ドル支払う。

臨床試験開始

2017.9.26 プレスリリース

アデュロ・バイオテックは進行性・転移性固形がんまたはリンパ腫を対象としたSTINGアゴニストADU-S100とノバルティスの抗 PD-1抗体 PDR001の併用療法に関する PhaseⅠ試験をアメリカ、ヨーロッパ、日本等で実施することを発表した。

臨床試験結果公表

2018.11.9 プレスリリース

STING アゴニスト ADU-S100 の PhaseⅠ試験の途中経過を報告した。ADU-S100単剤で治療された治療された 40 人の患者のうち 2 人に部分奏効が認めらた。ADU-S100 と PDR001 の併用試験については現在進行中である。

米メルク - 臨床試験結果公表

2018.10.20 プレスリリース

進行性固形がんまたはリンパ腫を対象とした STING アゴニスト(MK-1454)の単剤療法と pemobrolizumab との併用療法に関する臨床試験の途中経過をESM2018 で発表した。PhaseⅠ試験について、単剤では完全奏効、部分奏効が認められず、併用療法では 25 名中 6名に部分奏効が認められた。

4-1BB

ファイザー

- 臨床試験結果公表

2016.6.15 プレスリリース

ファイザーは抗 4-1BB抗体 utomilumabと抗PD-1抗体pembrolizumabの併用療法に関する PhaseⅠb 試験のデータを公表した。23 例中 6 例の治療奏効が認めら、うち2例は完全奏効だった。

NCI 共同研究

2016.11.14 プレスリリース

ファイザーは NCI とがん免疫療法に関する共同研究開発契約を締結した。ファイザーの抗 OX40(CD134)抗体、抗4-1BB(CD137)抗体、avelumab、抗 PD-L1抗体 PF-06834635(MSB0010718C)を用いて治療成績を評価する。

ブリストルマイヤーズスクイブ

- 臨床試験結果発表

2016.11.18 プレスリリース

血液がん及び固形がん患者を対象とした urelumab と nivolumab 併用療法のPhaseⅠ/Ⅱ試験において有効性を示した。悪性メラノーマ患者 46 例中、奏効率は 50%(23 例/46 例)であった。全患者群 138 例において、nivolumab 単剤療法と比較して、urelumab とnivolumab の併用療法に顕著な安全性への影響は認められなかった。

OX-40 グラクソ・スミスクライン

米メルク 臨床試験開始

2015.11.3 プレスリリース

グラクソ・スミスクラインと米メルクは GSK3174998 単独療法、及びpembrolizumab との併用療法に関する PhaseⅠ試験の開始を発表した。対象はpembrolizumab治療後の進行性、再発性、もしくは転移性の固形がんである。

IL-15 アルター バイオサイエンス

- Fast Track への指定

2017.05.02 プレスリリース

IL-15 アゴニスト複合体であるALT-803 と BCG の併用療法について、FDA から筋層非浸潤性膀胱がんを適応とした Fast Track 指定を受けた。

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- 26 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

標的 開発企業 提携先 動向 日付 概要

IL-2 エーザイ

ドクターレディースラボラトリーズ

権利譲渡

2016.02.31 プレスリリース

エーザイはドクターレディースラボラトリーズに、E7777 の全世界の独籍的開発・販売権(日本・アジアを除く)を譲渡する契約を締結。

その他

フィロゲン

セルジーン 提携契約

2019.01.23 プレスリリース

フィロゲンはセルジーンとがん免疫療法に関して提携契約・ライセンス契約を締結。

ノバルティス

提携契約

2019.01.23 プレスリリース

ノバルティスと新たなクラスの免疫調節療法開発のための提携契約を締結。

ロシュ - 臨床試験結果

2017.05.18 プレスリリース

CD3 と CEA を標的とする bispecific 抗体を用いた PhaseI 試験の結果を発表した。対象は CEA を過剰発現し、少なくとも 2 つの化学療法レジメンの後に進行したマイクロサテライト安定転移性結腸直腸がんを対象にした。CEA-TCBを検討した。Atezolizumab との併用療法も検討しており、単剤療法、併用療法ともに良好な安全性が示されている。

このように、本項で述べた免疫調節関連の臨床試験状況から、現在は免疫チェックポイ

ント阻害剤を用いた併用療法の開発が活発化していることが窺える。

2.養子免疫療法

養子免疫療法の研究開発は、CAR-T細胞療法と TCR-T細胞療法を中心に行われており、

本節では、これら 2 つの治療方法に関する開発状況を解説する。

(1)CAR-T 細胞療法

2018 年 7 月時点で、PhaseⅡ試験以降の臨床試験数は 23 試験あり、第 2 章第 2 節(1)

で述べた免疫チェックポイント阻害療法と比較すると、著しく少ない状況であった(表

20)。

表 20 CAR-T 細胞療法の開発状況(地域別)50

Phase 国名

CAR-T 細胞療法

Ⅰ Ⅰ/Ⅱ Ⅱ Ⅱ/Ⅲ Ⅲ

日本 0 1 1 0 0

米国 99 21 10 0 1

欧州 11 10 5 0 1

中国 59 82 4 3 0

韓国 0 0 0 0 0

その他 0 3 2 0 1

試験数合計 171 113 18 3 2

前記 23 試験のうち企業が関与しているものは 11 試験であり、Kymriah に関するもの

を除くとカイトファーマ-ギリアド・サイエンシズ(3 試験) 、セルジーン(2 試験) 、

50 https://clinicaltrials.gov/ より集計。大学・研究機関主体も含めた全ての試験数。

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

セルジーン/ジュノ セラピューティクス(1 試験) 、ミルテニー バイオテック (1 試

験)、上海ユニカーセラピーバイオメディカルテクノロジー (1 試験)の 5 つの開発品

に関するものである。既に承認を取得しているノバルティス、カイトファーマ/ギリア

ド・サイエンシズの他、ジュノ・セラピューティクスを買収したセルジーン等が CAR-T

細胞療法開発において先行している。また、臨床試験数をがん種別にみると、CAR-T 細

胞療法では血液がんを標的とした開発が多いことがわかる(表 21)。

表 21 CAR-T 細胞療法の開発状況(がん種別)51

Phase がん種

CAR-T 細胞療法

Ⅰ Ⅰ/Ⅱ Ⅱ Ⅱ/Ⅲ Ⅲ

固形がん 61 32 1 0 0

血液がん 110 81 17 3 2

試験数合計 171 113 18 3 2

ノバルティスは再発/難治性びまん性大細胞型 B 細胞腫を対象として、Kymriah と

pembrolizumab との併用治療の臨床試験を進めている52。

カイトファーマは Yescarta に続き、新規 CAR-T 細胞として CD19 を標的とした

KTE-X19、B-cell maturation antigen(BCMA)を標的とした KITE-585 の臨床試験を進

めている53。セルジーンも、メラノーマを対象として、BCMA を標的とした CAR-T 細胞

(bb2121、bb212117、JCARH125)の臨床試験を進めている54。

近年国内企業の CAR-T 細胞療法への参入も多く、既に臨床試験を開始している企業

もでてきている。国内大手製薬会社の武田薬品工業や第一三共、ニプロは、国内外の

ベンチャー企業のシーズを導入して CAR-T 細胞療法へ参入した55 56 57。また、小野薬

品工業はセリアド及びフェート セラピューティクスより他家 CAR-T 細胞療法に関する開

発・商業化の権利を取得し、CAR-T 細胞療法へ参入している58。

武田薬品工業が導入したノイルイミューンの次世代 CAR-T 細胞療法技術は、玉田耕

治教授(山口大学)により開発された技術で、ノイルイミューンが独占的に権利を有

する基盤技術である。IL-7 及び CCL19 を産生する CAR-T 細胞であり、固形がん組織へ

免疫細胞の浸潤を誘導することにより抗がん作用を発揮することができる 55。本性質

から論文発表時は 7×19 CAR-T 細胞と呼ばれていたが、現在は Prime CAR-T 細胞と命

名されている。

51 https://clinicaltrials.gov/ より集計。大学・研究機関主体も含めた全ての試験数。 52 Novertis pipeline

https://www.novartis.com/our-science/novartis-global-pipeline (2019.03.15 アクセス) 53 KITE Pharma pipeline

https://www.kitepharma.com/our-research/pipeline/ (2019.03.15 アクセス) 54 Celgene pipeline

https://www.celgene.com/research-development/pipeline-pdf/ (2019.03.15 アクセス) 55 武田薬品工業 ニュースリリース

https://www.takeda.com/jp/newsroom/newsreleases/2017/20170904_7828/ (2018.08.14 アクセス) 56 第一三共 ニュースリリース

https://www.daiichisankyo.co.jp/news/detail/006910.html (2019.02.25 アクセス) 57 ニプロ ニュースリリース

https://www.nipro.co.jp/news/document/180207.pdf (2018.08.14 アクセス) 58 小野薬品工業 ニュースリリース

https://www.ono.co.jp/jpnw/PDF/n18_0918.pdf (2019.02.15 アクセス)

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

また、武田薬品工業は 2019 年 1 月、メモリアル・スローン・ケタリングがんセンタ

ーと、CAR-T 細胞療法の創出と開発に関する共同研究を実施することを発表した59。

第一三共はカイトファーマから Yescarta の国内における開発、製造、販売の独占的

権利を取得し、CAR-T 細胞の開発を進めている。Yescarta は、びまん性大細胞型 B 細

胞リンパ腫、原発性縦隔(胸腺)大細胞型 B 細胞リンパ腫、形質転換濾胞性リンパ腫、

及び高悪性度 B 細胞リンパ腫を対象として 2018 年 10 月に希少疾病用再生医療等製品

に指定された 56。

ニプロが共同開発契約を締結したティーシーバイオファームの技術は、ガンマデル

タ(γδ)T 細胞をベースとして遺伝子改変することによって、がん細胞を選択的に

攻撃し、正常細胞には影響が低いという特徴があり、CAR-T 細胞療法で課題とされて

いる強い副作用を低減することが期待される技術である 57。

(2)TCR-T 細胞療法

2018 年 7 月時点で、PhaseⅠ/Ⅱ試験は 22 試験、PhaseⅠ試験は 30 試験と、CAR-T

細胞療法と比較すると臨床試験数は少ない状況となっており、PhaseⅡ以降の臨床試験

は行われていない(表 22)。

表 22 TCR-T 細胞療法の開発状況(がん種別)60

Phase がん種

TCR-T 細胞療法

Ⅰ Ⅰ/Ⅱ Ⅱ Ⅱ/Ⅲ Ⅲ

日本 2 1 0 0 0

米国 19 15 5 0 0

欧州 2 6 1 0 0

中国 5 1 0 0 0

韓国 0 0 0 0 0

その他 4 1 0 0 0

試験数合計 29 22 6 0 0

世界的に見て、 も積極的に TCR-T 細胞療法の標的の研究開発を進めているのはア

ダプティミューンである。アダプティミューンは TCR-T 細胞治療に特化した会社であ

り、MAGE-A10、MAGE-A4、AFP を標的とした TCR-T 細胞療法の臨床試験を進めており 、

グラクソ・スミスクラインと提携をしている 。ベリカム ファーマシューティカルズ

はライデン大学よりPRIMEを標的とするTCR-T細胞技術のライセンスを取得している 。

イミュノコアは抗 CD3エフェクター機能と TCRを標的とする ImmTAC分子と呼ばれる技

術を有し 、アダプティミューンと同様グラクソ・スミスクラインと提携をしている 。

現在、国内で開発を行っている企業はタカラバイオの 1 社のみである。2017 年 1 月

よりタカラバイオが滑膜肉腫を対象疾患として国内治験を進めている NY-ESO-1・

siTCR 遺伝子治療薬(TBI-1301)は先駆け審査指定制度の対象品目に指定されており、

世界に先駆けた TCR-T 細胞療法として早期商業化が期待されている。

59 武田薬品工業 ニュースリリース

https://www.takeda.com/jp/newsroom/newsreleases/2019/20190104-8035/ (2019.02.20 アクセス) 60 https://clinicaltrials.gov/ より集計。大学・研究機関主体も含めた全ての試験数。

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

また、臨床試験数をがん種別にみると、CAR-T 細胞療法では血液がんを標的とした

試験の割合が多かったのに対し、TCR-T 細胞療法では、各種固形がんを標的とした試

験の割合が多いという特徴がある。

表 23 TCR-T 細胞療法の開発状況(がん種別)61

Phase がん種

TCR-T 細胞療法

Ⅰ Ⅰ/Ⅱ Ⅱ Ⅱ/Ⅲ Ⅲ

固形がん 24 15 6 0 0

血液がん 6 7 0 0 0

試験数合計 29 22 6 0 0

以下、TCR-T 細胞療法の開発企業の動向として、タカラバイオの動向を表 24 に、ア

ダプティミューンの動向を表 25 に示す。

表 24 タカラバイオの動向(TCR-T 細胞療法関連の動向)

提携先 動向 日付 概要

三重大学医学部附属病院

共同研究契約

2005.03 プレスリリース

タカラバイオ株式会社と三重大学が T 細胞受容体(TCR)遺伝子治療の臨床開発を推進するために三重大学医学部に寄附講座を設置することに合意。

三重大学医学部附属病院

臨床研究 2010.08.18 プレスリリース

食道がんに対する TCR 遺伝子治療の臨床研究において、第一例目の被験者への投与を実施。(国内初の TCR遺伝子治療の臨床研究)

天津医科大学・天津市腫瘍病院

共同研究契約

2011.07.27 プレスリリース

難治性がんを対象とした TCR 遺伝子治療の臨床研究を実施するために共同研究契約を締結。

― 先駆け指定

2018.03.27 プレスリリース

滑膜肉腫を対象疾患として国内で治験を進めているNY-ESO-1・siTCRTM 遺伝子治療薬(TBI-1301)が、「先駆け審査指定制度」の対象品目として指定。

大塚製薬 共同開発・独占販売契約

2018.04.09 プレスリリース

大塚製薬と NY-ESO-1・siTCR 遺伝子治療薬(TBI-1301)及び CD19・CAR 遺伝子治療薬(TBI-1501)の、日本国内における共同開発・独占販売に関する契約を締結。

表 25 アダプティミューンの動向(TCR-T 細胞療法関連の動向)

提携先 動向 日付 概要

サーモ・フィッシャーサイエンティフィック

ライセンス契約

2012.12 SEC filing

サーモ・フィッシャーサイエンティフィックのDynabeadsCD3/CD28 技術について、がん、感染症、自己免疫疾患の治療のために改変 TCRを含有したヒト T細胞を ex vivo で活性化・増殖させる用途における 独占的ライセンスを得る契約を締結。

ネオステムPCT セルセラピー

製造委受託

2013.01.16 プレスリリース

ネオステム及び子会社の PCT セルセラピーとの間で、 NYESO-1c259-T 細胞療法の複数のがん種を適応症とした開発をサポートするための、製造委受託契約を締結。この契約により、PCT は、アダプティミューンが開発したNYESO-1c259-T 細胞の製造プロセスを、自社のニュージャージー州の製造施設に移管し、臨床試験 向けの製造を行うことになった。

61 https://clinicaltrials.gov/ より集計。大学・研究機関主体も含めた全ての試験数。

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第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

提携先 動向 日付 概要

グラクソ・スミスクライン

戦略的提携、ライセンス契約

2014.06.02 プレスリリース

TCR-T 療法のリード開発品の開発・商業化のための戦略的提携とライセンス契約を締結。本契約により、両社はNY-ESO-1 臨床プログラムを共同開発するとともに、製造の 適化に取り組む。また、PoC 臨床試験後に、グラクソ・スミスクラインは本プログラ ムの独占的ライセンスを獲得できるオプション権を持つ。さらに、両社は本提携において、NY-ESO-1 以外をターゲットとした TCR プログラムの共同開発と、改変TCR 製品の更なる 適化に取り組む。

ユニバーサルセルズ

ライセンス契約

2015.12.01 プレスリリース

ドナーT 細胞を用いた off the shelf の高親和性 TCR 療法の開発のため、Universal Cells のヌクレアーゼ フリー・ゲノム編集技術を用いた製品・サービスを T 細胞免疫療法の分野で使用、販売、供給、製造、輸出、開発するための独占的ライセンスを得る契約を締結。

グラクソ・スミスクライン

戦略的提携、ライセンス契約

2016.02.02 プレスリリース

リード開発品である NY-ESO-1 標的の高親和性 TCR-T(GSK3377794)について、滑膜肉腫に対するピボタル試験をより早期に実現させるため、2014 年 2 月に締結した TCR-T 療法に関する戦略的提携を促進・拡大することで合意。また、本合意により、両社は NY-ESO-1 プログラムについて、粘液型円形細胞脂肪肉腫の適応での開発を模索する他、チェックポイント阻害剤を始めとした免疫修飾薬との併用療法について、 大 8 の POC 試験を実施することになった。

サーモ・フィッシャーサイエンティフィック

製造用ビーズの供給

2016.06.21 プレスリリース

サーモ・フィッシャーサイエンティフィックのDynabeads CD3/CD28 Cell Therapy System (CTS)について、10 年間(2025 年末まで)の供給契約を締結。うち 5 年間において、アダプティミューンは他社のCD3/CD28 magnetic bead 製品を購入せず、Thermo-Fisher製品のみを購入する義務を負う。

PCT セルセラピー

製造委受託

2016.09.19 プレスリリース

SPEAR (Specific Peptide Enhanced Affinity Receptor) T細胞療法の供給に関して、5 年間の戦略的な製造委受託契約を締結。本契約により、アダプティミューンはPCT の FDA 及び EU に準拠した特定の製造ユニットとスタッフに対して、独占的にアクセスできる。

テキサス州立大学 MDアンダーソンがんセンター

戦略的提携

2016.09.26 プレスリリース

新規の養子 T 細胞療法の開発を促進するための複数年の戦略的提携を締結。本提携では、アダプティミューンによる固形がん・血液がんの標的同定と、これら標的に対する選択性と 適化した有効性を備えた高親和性TCR の開発を可能とするために、テキサス州立大学 MDアンダーソンがんセンターの前臨床・臨床チームと、アダプティミューンの科学者及び SPEAR T 細胞技術プラットフォームを合わせる。

米メルク

併用療法に係る臨床試験提携

2016.10.27 プレスリリース

NY-ESO SPEAR T 細胞療法と、MSD の抗 PD-1 抗体pembrolizumab の併用療法について、多発性骨髄腫における有効性と安全性を検証するための臨床試験を実施する提携を締結。本提携ではアダプティミューンが臨床試験の資金を提供する。

ベリカム ファーマシューティカルズ

戦略的提携

2016.12.19 プレスリリース

SPEAR T 細胞技術と、ベリカム ファーマシューティカルズの GoTCR 技術 (inducible MyD88/CD40 co-stimulation, or iMC)を融合した次世代 T 細胞療法を評価、開発、商業化するための戦略的提携を締結。両社の提携は、前臨床 PoC 試験の結果次第で、2 つの標的に対する共同開発・商業化 Phase に進むことになる。

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第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

提携先 動向 日付 概要

グラクソ・スミスクライン

戦略的提携、ライセンス契約

2017.01.09 プレスリリース

2014 年 6 月に締結した戦略的提携に基づき、グラクソ・スミスクラインが NY-ESO-1 に続く 2 つ目の標的がんペプチドとして、PRAME を選択したことを発表。これにより、アダプティミューンは PRAME を標的とした SPEAR T細胞の研究開発を実施し、グラクソ・スミスクラインはIND 申請後に独占的ライセンスを取得できるオプション権を持つ。

グラクソ・スミスクライン

戦略的提携、ライセンス契約

2017.09.07 プレスリリース

グラクソ・スミスクラインが 2014 年 6 月にアダプティミューンと締結した戦略的提携におけるオプション権を行使し、NY-ESO SPEAR T 細胞療法プログラムの研究、開発、商業化に係る独占的ライセンスを得た。

セルアンドセラピーカタパルト

製造施設入居

2018.01.05 プレスリリース

セルアンドセラピーカタパルトが英国に整備した CGT Manufacturing Centre において、アダプティミューンの SPEAR T 細胞用ベクターの製造するための専用スペースを構えるための契約を締結。アダプティミューンは当該製造スペースにおいて、2020 年以降、治験用 SPEAR T 細胞のためのベクター製造を行う予定。

グラクソ・スミスクライン

戦略的提携、ライセンス契約

2018.07.24 プレスリリース

2017 年 9 月にグラクソ・スミスクラインが独占的ライセンスのオプション権を行使した NY-ESO SPEAR T 細胞療法プログラムについて、アダプティミューンからグラクソ・スミスクラインへの移行を発表。

3.腫瘍溶解性ウイルス療法

2018 年 7 月時点での腫瘍溶解性ウイルス療法の臨床試験状況を表 26 に示す。PhaseⅡ

以降の臨床試験は、18 試験であった。PhaseⅢ試験は 1 試験のみで、韓国シラジェン

(Sillagen)が肝細胞がんを対象として実施している。

表 26 腫瘍溶解性ウイルス療法の開発状況(2018 年 7 月時点)62

Phase 国名

Ⅰ Ⅰ/Ⅱ Ⅱ Ⅱ/Ⅲ Ⅲ

日本 2 0 1 0 0

米国 26 8 15 0 1

欧州 10 9 1 0 1

中国 1 0 0 0 0

韓国 1 1 0 0 1

その他 4 3 0 0 1

試験数合計 42 18 17 0 1

海外では、アムジェンが既に腫瘍溶解性ウイルス製剤の承認を取得しているが、現在、

腫瘍溶解性ウイルスと免疫チェックポイント阻害剤の併用療法に関する臨床試験が進行

中である。例えば、メラノーマに対する Imlygic と抗 CTLA-4 抗体 Yervoy の併用療法に

関する PhaseIb 試験では、安全性が確認され、各単独療法と比較してより高い抗がん効

果が示されている

62 https://clinicaltrials.gov/ より集計。大学・研究機関主体も含めた全ての試験数。

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第4部

第5部

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第6部

シラジェンは腫瘍溶解性ウイルス開発に特化した企業であり、ワクシニアウイルスを

利用した腫瘍溶解性ウイルス PEXA-VEC(JX-594)を肝細胞がんを対象に臨床試験を進め

ている。またチェックポイント阻害剤との併用療法の臨床試験も進めている。

日本において、腫瘍溶解性ウイルス療法の開発を積極的に推進しているのは、タカラ

バイオ、オンコリスバイオファーマ、アステラス、第一三共の 4 社である。タカラバイ

オは単純ヘルペスウイルス 1 型の弱毒化株である Canerpaturev(C-REV)について、

メラノーマ(日本、米国)、膵がん(日本)を対象に臨床試験を進めている。オンコリス

バイオファーマは腫瘍細胞特異的に増殖する 5 型のアデノウイルスであるテロメライシ

ン(OBP-301)の臨床試験を進めている。アステラスは、2013 年にアムジェンと戦略的

提携に関する契約を締結し、合弁会社アステラス・アムジェン・バイオファーマを設立、

既に欧米で承認されている Imlygic の国内 PhaseⅠ試験の実施を進めている63。さらに、

鳥取大学と免疫賦活遺伝子搭載腫瘍溶解性ウイルスの開発・商業化に関する全世界にお

ける独占的ライセンス契約を締結した。また、第一三共は藤堂教授(東京大学医科学研

究所)の開発した腫瘍溶解性ウイルス G47Δを導入し、同領域へ参入した。G47Δは悪性

神経膠腫を対象として 2017 年 7 月に希少疾病用再生医療等製品に指定されている。

表 27 に、国内企業の腫瘍溶解性ウイルス療法に関する動向としてタカラバイオ、オン

コリスバイオファーマ、アステラス、第一三共の動向の腫瘍溶解性ウイルス療法に関す

る動向を示す。

表 27 国内の腫瘍溶解性ウイルス療法開発企業の近年の動向

国内企業 提携先 動向 日付 概要

タカラバイオ

エムズサイエンス

買収 2010.11.30 プレスリリース

「腫瘍溶解性ウイルス HF10」に関する事業を買収。

名古屋大学 臨床研究開始 2013.03.21 プレスリリース

HF10 の臨床研究 4月以降開始。切除不能局所進行膵がん患者を対象に、HF10 と既存の抗がん剤との併用時の安全性、体内動態、及び腫瘍縮小効果等の評価を行う。

― 臨床試験 開始

2015.08.04 プレスリリース

「表在性病変を有する固形がん患者(メラノーマ、皮膚の扁平上皮がん等)を対象としたTBI-1401(HF10)の第Ⅰ相腫瘍内反復投与試験」において、一例目の被験者への投与を実施。

大塚製薬 独占的ライセンス契約

2016.12.15 プレスリリース

腫瘍溶解性ウイルス HF10 の日本国内における、開発及び販売に関する独占的ライセンス契約を締結。

63 アステラス・アムジェン・バイオファーマ ホームページ

https://www.aabp.co.jp/jp/about-aabp/clinical-development-programs/ (2019.02.27 アクセス)

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国内企業 提携先 動向 日付 概要

― 臨床試験 開始

2017.05.29 プレスリリース

「根治切除不能または転移性メラノーマ患者(ステージIIIB、IIIC 及び IV)を対象とした TBI-1401(HF10)とイピリムマブとの併用療法のPhaseⅡ試験」において、一例目の被験者への投与を実施。

― 臨床試験

開始

2017.09.27

プレスリリ

ース

「治癒切除不能な膵がん患者(Stage III または IV)を対象とした TBI-1401(HF10)の化学療法併用 PhaseI 試験」において、一例目の被験者への投与を実施。

東亜 ST(韓国) ライセンス契約

2018.08.22 プレスリリース

腫瘍溶解ウイルス「C-REV」の韓国における独占的な開発と販売を許諾するライセンス契約を締結。

オンコリスバイオファーマ

岡山大学 臨床研究開始 2013.12.06 プレスリリース

「頭頸部・胸部悪性腫瘍に対するテロメライシンを用いた医師主導の臨床研究」において、一例目の被験者(食道がん)への投与を実施。

メディジェン 臨床試験 開始

2014.01.22 プレスリリース

OBP-301(テロメライシン)の肝臓がんに対するPhaseI/Ⅱ臨床試験を韓国において開始。

メディジェン 臨床試験 開始

2014.11.19 プレスリリース

メディジェンと共同で、OBP-301(テロメライシン)の肝臓がん(既存治療に抵抗性の肝細胞がんを対象)に対するPhaseI/Ⅱ臨床試験を台湾において開始。

マクマスター大学(カナダ)

共同研究契約 2015.09.24 プレスリリース

Karen Mossman 教授(マクマスター大学)の研究グループと、OBP-301(テロメライシン)とチェッ クポイント阻害剤の併用に関する共同研究を開始。

名古屋大学大学院医学系研究科

共同研究契約 2016.07.05 プレスリリース

OBP-301(テロメライシン)とチェックポイント阻害剤の併用効果検討に関する共 同研究契約を締結。

国立がん研究センター東病院

医師主導治験開始

2016.08.10 プレスリリース

進行性または転移性固形がん患者を対象とした OBP-301(テロメライシン)と他の治療法との併用による効果検討に関する医師主導治験契約を締結。

江蘇恒瑞医薬 中国ライセンス契約

2016.11.30 プレスリリース

OBP-301(テロメライシン)の中国、香港、マカオにおける独占的ライセンス契約を締結。

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国内企業 提携先 動向 日付 概要

メディジェン 戦略的アライアンス改訂契約

2017.03.24 プレスリリース

OBP-301(テロメライシン)の戦略的アライアンスに関する改訂契約の締結。2008 年 3 月に締結したアライアンス契約に基づき、メディジェンは、韓国及び台湾においてPhaseI/II臨床試験(肝細胞がん)を進めているが、それに加え食道がん及びメラノーマの共同開発権を付与。

大阪大学 共同研究契約 2017.03.28 プレスリリース

水口裕之教授(大阪大学)の研究グループと、次世代テロメライシン及び次世代テロメスキャンの設計・作製を目的とした共同研究を開始することを決議。

― 臨床試験 開始

2017.07.28 プレスリリース

メラノーマ(メラノーマ)を対象とするテロメライシン(OBP-301)の PhaseⅡ企業治験において、第一例目の被験者への投与が開始。

国立がん研究センター東病院

医師主導治験開始

2017.11.23 プレスリリース

進行性または転移性固形がん患者を対象とするテロメライシン(OBP-301)と抗 PD-1 抗体Pembrolizumabの併用に関する医師主導治験において、第一例目への投与開始。

アンリーシュ 資本提携及び株式譲受契約

2018.02.16 プレスリリース

新規腫瘍溶解アデノウイルス開発に特化した米バイオベンチャーアンリーシュと資本提携及び株式譲受契約を締結。

スタビリテック

ライセンス契約

2018.05.23 プレスリリース

テロメライシン(OBP-301)の保存安定製剤のための技術導入を目的としたライセンス契約を締結。

アステラス

アムジェン 戦略的提携 2013.05.29 プレスリリース

先端の医薬品を日本市場に提供するため、戦略的提携に関する契約を締結。アムジェン由来の 5 つの開発品についての、日本での共同開発と共同商業化に関する長期提携、及び合弁会社「アステラス・アムジェン・バイオファーマ」の設立が含まれる。

鳥取大学 独占的ライセンス契約

2018.03.06 プレスリリース

免疫賦活遺伝子搭載腫瘍溶解性ウイルスの開発・商業化に関する全世界における独占的ライセンス契約を締結。

第一三共 東京大学医科学研究所

技術導入 時期不明

先端医療研究センター先端がん治療分野の藤堂具紀教授(東京大学医科学研究所)が開発中のがん治療用ウイルスであるG47Δを導入。

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資料編

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国内企業 提携先 動向 日付 概要

― 先駆け指定 2016.02.10 プレスリリース

藤堂具紀教授(東京大学医科学研究所)と共同で申請したがん治療用ウイルス(G47Δ)が、先駆け審査指定制度の対象品目に指定された。

― 希少疾病用再生医療等製品指定

2016.07.11 プレスリリース

がん治療用ウイルス G47Δ(DS-1647)が、悪性神経膠腫を対象として、厚生労働省より希少疾病用再生医療等製品に指定された。

4.がんワクチン療法

2018 年 7 月時点でのがんワクチン療法の臨床試験状況を表 28 に示す。

表 28 がんペプチドワクチン療法及び樹状細胞ワクチン療法の開発状況(地域別)64

Phase 国名

がんペプチドワクチン療法 樹状細胞ワクチン療法

Ⅰ Ⅰ/Ⅱ Ⅱ Ⅱ/Ⅲ Ⅲ Ⅰ Ⅰ/Ⅱ Ⅱ Ⅱ/Ⅲ Ⅲ

日本 2 0 1 0 0 0 0 0 0 0

米国 140 6 29 0 6 34 4 38 0 3

欧州 16 2 4 0 5 2 1 19 4 4

中国 4 0 0 0 0 2 0 1 0 0

韓国 0 0 1 0 1 0 0 0 0 0

その他 10 1 4 0 3 1 1 3 0 2

試験数合計 158 8 37 0 6 36 4 59 4 6

国内におけるがんワクチン療法の開発は大学・研究機関主導で進められており、い

くつかの開発品はベンチャー企業へ導出されている。さらに近年は大手製薬会社へと

開発が引き継がれ、PhaseⅢ試験が実施されているものも出てきている。

がんペプチドワクチン療法の開発に積極的な大学・研究機関としては、久留米大学、

東京大学医科学研究所、大阪大学、三重大学等が挙げられる。これらの大学のうち、

久留米大学はグリーンペプタイド(現ブライトパス・バイオ)、東京大学医科学研究所

はオンコセラピー・サイエンス、三重大学はイミュノフロンティアといったベンチャ

ー企業を設立し、開発品の承認取得に向けた臨床開発を進めている。表 29 に示すよう

にいくつかの大学のペプチドワクチンについては、塩野義製薬、小野薬品工業、大日

本住友製薬、富士フイルム等の製薬企業に導出され、製薬会社が主体となって現在臨

床試験を進めているものと65 66、主要評価項目未達、開発中止されたものがある67 68。

64 https://clinicaltrials.gov/ より集計。大学・研究機関主体も含めた数字。 65 大日本住友製薬 ニュースリリース

https://www.ds-pharma.co.jp/rd/clinical/pdf/pro20190131.pdf(2019.02.26 アクセス) 66オンコセラピーサイエンス 開発パイプライン

https://www.oncotherapy.co.jp/research-development/clinical-development-pipelines/(2019.3.5 ア

クセス)

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第6部

表 29 がんペプチドワクチン療法の開発企業・大学

大学 ベンチャー企業 導出先製薬企業69

久留米大学 グリーンペプタイド70

(現 ブライトパス・バイオ) 富士フイルム

東京大学 医科学研究所 オンコセラピー・サイエンス 大塚製薬、塩野義製薬、小

野薬品工業

大阪大学 ― 大日本住友製薬

三重大学 イミュノフロンティア ―

また、NEC は 2016 年 12 月 19 日のプレスリリースにて、ヘルスケア事業強化のため

に AI 技術を活用した新薬候補物質の発見並びに実用化支援の事業開始を発表すると

ともに、がんペプチドワクチン事業を推進する会社としてサイトリミック株式会社の

設立を発表した71。現在、サイトリミックは山口大学との共同研究により、ペプチド

ワクチンである CYT001 を用いた進行・再発固形がんを対象とした臨床研究(YNP01 試

験) を実施しており、高い頻度でペプチド反応性 CTL が誘導されることを報告してい

る72。

67 小野薬品工業 平成 30 年 3 月期第 1 四半期決算 カンファレンスコール要旨

https://www.ono.co.jp/jpnw/ir/pdf/k_setsumei/170818_1.pdf(2019.02.26 アクセス) 68 富士フイルム ニュースリリース

https://www.fujifilm.co.jp/corporate/news/articleffnr_1296.html(2019.02.26 アクセス) 69 既に、開発権を返還しているものも含まれる。 70 グリーンペプタイドは、2017 年 7 月に、ブライトパス・バイオに会社名を変更。 71 NEC ニュースリリース

https://jpn.nec.com/press/201612/20161219_02.html (2019.01.31 アクセス) 72 サイトリミック ニュースリリース

https://www.cytlimic.com/news/20180929.html (2019.01.31 アクセス)

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第3章 政策動向

第1節 科学技術政策

1.国内の科学技術政策

(1)科学技術基本法・科学技術基本計画

我が国では「科学技術基本法」(1995 年 11 月 15 日施行)に基づき、政府は研究開

発の推進に関する総合的な方針、研究施設及び研究設備の整備、研究開発にかかる情

報化の促進その他の研究開発のための環境整備等を目的とした「科学技術基本計画」

を策定している。平成 28 年度から平成 32 年度までは第 5 期科学技術基本計画が進め

られており、計画では以下の 4 つの目指すべき国の姿を掲げている73。

1. 持続的な成長と地域社会の自律的発展

2. 国及び国民の安全・安心の確保と豊かで質の高い生活の実現

3. 地球規模課題への対応と世界の発展への貢献

4. 知の資産の持続的創出

医療関連では科学技術基本計画の「第 3 章 経済・社会的課題への対応 ②超高齢

化・人口減少社会等に対応する持続可能な社会の実現、ⅰ)世界 先端の医療技術の

実現による健康長寿社会の形成」の項において以下の目標を掲げている74。

「健康・医療戦略推進本部の下、健康・医療戦略及び医療分野研究開発推進計画に

基づき、国立研究開発法人日本医療研究開発機構を中心に、オールジャパンでの医薬

品創出・医療機器開発、革新的医療技術創出拠点の整備、再生医療やゲノム医療など

世界 先端の医療の実現、がん、認知症、精神疾患、新興・再興感染症や難病の克服

に向けた研究開発などを着実に推進する。」

(2)厚生労働省「がん対策推進基本計画」

厚生労働省のがん対策推進基本計画(2018 年 3 月)では、2017 年度から 2022 年度

までの 6 年程度の期間の全体目標のうちの一つとして、「2. 患者本位のがん医療の実

現」の「(2)がんの手術療法、放射線療法、薬物療法及び免疫療法の充実」の中に「(エ)

科学的根拠を有する免疫療法について」という項が設けられている。同項目では現

状・課題並びに取り組むべき施策について記載されており、がん免疫療法が今後注力

される領域であることが示されている75。

(現状・課題)

「免疫チェックポイント阻害剤」等の免疫療法は、有力な治療選択肢の一つとな

っている 73 内閣府 科学技術基本計画

https://www8.cao.go.jp/cstp/kihonkeikaku/index5.html(2019.01.30 アクセス) 74 科学技術基本計画、2016 年1月22日閣議決定 75厚生労働省、がん対策推進基本計画(2018 年 3 月)

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000196975.pdf(2019.01.30 ア

クセス)

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第6部

しかしながら、免疫療法と称しているものであっても、十分な科学的根拠を有す

る治療法とそうでない治療法があり、これらは明確に区別されるべきとの指摘が

ある 国民が免疫療法に関する適切な情報を得ることが困難となっている 免疫療法には、これまでの薬物療法とは異なった副作用等が報告されており、 そ

の管理には専門的な知識が求められている 免疫療法については、近年、新たな作用機序を持つ抗体医薬品など、単価が高く

市場が大きい医薬品が登場している

(取り組むべき施策)

国は、薬事承認を受けた免疫療法が提供される際には、安全で適切な治療・副作

用対策が行われるよう、関係団体等が策定する指針等に基づいた適切な免疫療法

の実施を推進する 関係団体は、免疫療法の科学的根拠の形成に努める 国は、免疫療法に関する適切な情報を患者や国民に届けるため、情報提供のあり

方について、関係団体と連携して検討を行う 国は、革新的であるが非常に高額な医薬品について、適切で、効果的な使用のあ

り方を検討し、周知を図る

(3)がん研究 10 か年戦略

文部科学大臣、厚生労働大臣、経済産業大臣は、「がん対策推進基本計画」(2012

年 6 月閣議決定)に基づき、我が国全体で進めるがん研究の今後のあるべき方向性と

具体的な研究事項等について「がん研究 10 か年戦略」を定め、がんの本態解明研究

とこれに基づく革新的な予防、早期発見、診断、治療に係る技術の実用化をめざした

臨床研究に取り組むとしている76。具体的研究事項は下記のとおりとしている。

がんの本体解明に関する研究 アンメットメディカルニーズにこたえる新規薬剤開発に関する研究 患者に優しい新規医療技術開発に関する研究 新たな標準治療を創るための研究 ライフステージやがんの特性に着目した重点研究領域 小児がんに関する研究、高齢者のがんに関する研究、難治性がんに関する研究、

稀少がん等に関する研究 がんの予防法や早期発見手法に関する研究 充実したサバイバーシップを実現する社会の構築をめざした研究 がん対策の効果的な推進と評価に関する研究

76 厚生労働省、「がん研究10か年戦略」について

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/gan/gan_kenkyu.html

(2019.01.30 アクセス)

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(4)国立研究開発法人日本医療研究開発機構

2015 年 4 月に国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が設立され、医療

分野の研究開発及びその環境の整備、研究機関における医療分野の研究開発及びその

環境の整備の助成等の業務を行うことを目的とした活動が開始された。がんや遺伝子

細胞治療関連の事業としては次の事業を推進している。

次世代がん医療創生研究事業(P-CREATE)77

次世代のがん医療の創生に向け、がんの生物学的特性の解明に迫る研究と、

がん患者のデータに基づいた研究及びこれらの融合研究を推進することによ

り、革新的な治療薬や診断・予防のためのバイオマーカー等の開発・実用化を

目的とした研究の加速化を目指す。

革新的がん医療実用化研究事業78 がんの予防・早期発見手法の開発、新規薬剤・医療機器開発、各治療法を組

み合わせた標準治療の開発、ライフステージに応じた治療法の開発等を行う。

遺伝子・細胞治療研究開発基盤事業79

遺伝子・細胞治療の実用化のため、我が国の要素技術を集め、中核となる遺

伝子・細胞治療用ベクター大量製造技術の開発拠点を確立、先端的技術研究拠

点と大量製造技術開発拠点を連携させることで遺伝子・細胞治療研究ネットワ

ーク構築を目指している。

また、AMED による研究機関の支援としては、導出活動に割くリソースが必ずしも

十分でないアカデミア等研究機関を主な対象とした導出戦略支援・知財コンサルテー

ション業務を担う AMED 知財リエゾン80や、医療分野における大学・研究機関発のシ

ーズと企業のニーズを早期にマッチングするためのシーズ・ニーズマッチングシステ

ムである AMED ぷらっと81等がサポート体制として存在する。

(5)ベンチャー支援

我が国では上記がん研究支援に加えてバイオベンチャー支援に関する政策も実施

している。ベンチャーの支援体制としては、厚生労働省医政局経済課に医薬品・医療

機器・再生医療等製品等の研究開発を行うベンチャー企業等の支援策の企画立案等を

行う「ベンチャー等支援戦略室」を設置している(2017 年 4 月 1 日)82。また、事業

77 日本医療研究開発機構、次世代がん医療創生研究事業(P-CREATE)

https://www.amed.go.jp/program/list/01/03/003.html(2019.01.30 アクセス) 78 日本医療研究開発機構、革新的がん医療実用化研究事業

https://www.amed.go.jp/program/list/01/03/002.html (2019.01.30 アクセス) 79 日本医療研究開発機構 医薬品研究課 遺伝子・細胞治療研究開発基盤事業

https://www.amed.go.jp/program/list/06/01/006.html(2019.02.01 アクセス) 80 日本医療研究開発機構、知財リエゾン

https://www.amed.go.jp/chitekizaisan/chizai_riezon.html (2019.01.30 アクセス) 81 https://www.amed.go.jp/chitekizaisan/amed_plat.html(2019.01.30 アクセス) 82 厚生労働省、医療系ベンチャー等の支援について

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000132762.html (2019.01.30 アクセス)

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の一環として総合ポータルサイトである「医療系ベンチャー・トータルサポートオフ

ィス(Medical Innovation Support Office:MEDISO)」を開設し、技術の実用化に向

けて課題を抱えるベンチャー企業、大学・研究機関等と、アドバイスを行う専門家を

マッチングし、研究開発の段階から、臨床現場での実用・保険適用、グローバル市場

への進出・普及までを総合的・俯瞰的に見据えた上で、各段階に応じた相談・支援を

行っている83。

AMED におけるベンチャー関連の支援としては、医療研究開発革新基盤創成事業

(Cyclic Innovation for Clinical Empowerment:CiCLE)、及び同事業のスタートア

ップ型支援(Venture Innovation for Clinical Empowerment:ViCLE)により、産学

官連携によって医療現場のニーズに対応する研究開発の実施や創薬等の実用化の加

速化、医療分野でのオープンイノベーション・ベンチャー育成が促進される環境の創

出を図っている。

特許庁では、創業期のベンチャーに対して専門家チームより適切なシーズ・出口戦

略の支援を受けることができる「知財アクセラレーションプログラム(IPAS)84」を

進めている。

(6)我が国の大学・研究機関における知的財産権取得支援

JST が将来的に技術移転活動及び特許利用に繋がる可能性が高いと判断された大

学・研究機関の発明に関して、大学の研究成果に基づく外国特許出願支援を行うとい

うものである。この事業は平成 15 年度以降継続的に行われており、平成 30 年度にお

いても、大学等知財基盤強化支援(権利化支援)を実施している85。平成 30 年度は

「先端技術分野で世界をリードしうる技術に関する国際出願」あるいは「医薬・材料、

その他発展の見込める科学技術分野において有望な技術を有し且つ特に支援の必要

性が高い大学等への支援」の 2 つの観点より支援を行っている。また、特許庁におい

ても、大学・研究機関向けに「審査請求料」、「特許料(1~10 年分)」、「国際出願

に係る手数料」の減免制度が制定されている。

独立行政法人工業所有権情報・研修館による「知的財産プロデューサー派遣事業」86や「産学連携知的財産アドバイザー派遣事業」87が知られている。「知的財産プロ

デューサー派遣事業」は産学官連携型の研究開発プロジェクトを推進している大学や

公的資金が投入された国の研究開発プロジェクトに対して、実務経験を有する知的財

産プロデューサーを派遣する事業であり、「産学連携知的財産アドバイザー派遣事業」

は地域の中堅・中小企業等との連携の実施、スタートアップ創業等の産学連携を展開

する大学に向けて知的財産の専門家として産学連携知的財産アドバイザーを派遣す

83 医療系ベンチャートータルサポート事業 https://mediso.mhlw.go.jp/ (2019.01.30 アクセス) 84 特許庁「知財アクセラレーションプログラム(IPAS)」https://www.ipas.go.jp/(2019.02.01 アクセス) 85 科学技術振興機構、知財活用支援事業 https://www.jst.go.jp/chizai/pat/p_s_00summary.html

(2019.01.30 アクセス) 86 独立行政法人工業所有権情報・研修館「知的財産プロデューサー派遣事業」

http://www.inpit.go.jp/katsuyo/ippd/index.html(2019.02.01 アクセス) 87 独立行政法人工業所有権情報・研修館「産学連携知的財産アドバイザー派遣事業」

http://www.inpit.go.jp/katsuyo/uicad/index.html(2019.02.01 アクセス)

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る事業である。これらの施策を通して、大学・研究機関における特許出願戦略や特許

活用戦略等の知的財産戦略の策定を支援している。

(7)iPS を含む再生医療・細胞製剤関連の施策等

2012 年の山中伸弥教授(京都大学)のノーベル医学・生理学賞受賞をきっかけと

して、我が国では iPS 細胞を含む再生医療の施策や法整備が進められ、細胞製剤を開

発する環境が整いつつある。

2030 年までの目標の一つに iPS 細胞ストックを柱とした再生医療の普及を掲げ、

2010 年に京都大学 iPS 細胞研究所が設立され、再生医療用 iPS 細胞ストックプロジ

ェクトを進めている88。

AMED 戦略推進部 再生医療研究課により再生医療産業化に向けたプロジェクトが

進められており、「再生医療の産業化に向けた評価基盤技術開発事業(再生医療等の

産業化に向けた評価手法等の開発)」、「再生医療の産業化に向けた評価基盤技術開発

事業(再生医療の産業化に向けた細胞製造・加工システムの開発)」といった細胞製

造に向けたプロジェクトが進行中である89 90。

2014 年 11 月の薬事法改正により新たに制定された「医薬品、医療機器等の品質、

有効性及び安全性の確保等に関する法律」の中で再生医療等製品に関する規定が定め

られた。また、再生医療等製品の安全性確保、特定細胞加工物の製造許可等の制度を

定めること等を目的として「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」が制定され

た91。医薬品医療機器総合機構(PMDA)においては、再生医療等製品(加工細胞等)

の治験計画届に関して関連通知を交付しており、臨床試験に関して指針を示している92。

2.海外の科学技術政策

(1)米国

米国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の FY19 の予算は 392

億ドルと莫大であり、80%以上は、2,500 以上の大学、医学校、及びその他の研究機

関の 30 万人以上の研究者に、約 5 万件の競争的獲得資金として与えられている93。

NIH の一部である米国立がん研究所(National Cancer Institute:NCI)は 57.4

億ドルの予算を得ている94。重点分野として以下を掲げ、がんに関する研究をリード

している95。

88 京都大学 iPS 研究所ホームページ https://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/about/(2019.02.26 アクセス) 89 日本医療研究開発機構ホームページ

https://www.amed.go.jp/program/list/01/02/003.html(2019.02.26 アクセス) 90 日本医療研究開発機構ホームページ

https://www.amed.go.jp/program/list/01/02/004.html(2019.02.26 アクセス) 91 厚生労働省 ホームページ

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/saisei_iryou/index.html

(2019.02.26 アクセス) 92 医薬品医療機器総合機構 ホームページ

https://www.pmda.go.jp/review-services/trials/0006.html(2019.02.26 アクセス) 93 National Institute of Health, Budjet https://www.nih.gov/about-nih/what-we-do/budget

(2019.01.30 アクセス) 94 National Cancer research institute, Budjet ttps://www.cancer.gov/about-nci/budget/plan

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基礎科学 …斬新なアプローチと技術推進のための基礎科学への取組みの再確 認

労働力開発 …がん研究者の育成 ビッグデータ…データ集約と解釈を増やし、がん企業全体の業務加速を図る 臨床試験 …革新的デザイン、管理、及び分析を革新する

また、オバマ政権のもとがん研究を加速させることを目的とした予算である

「Cancer Moonshot」に対し、7 年間で 18 億ドルの資金拠出を承認している。2017

年度に NCI に 3 億ドル、2018 年度に 3 億ドル、そして 2019 年度に 4 億ドルが割り当

てられている96。

NCI は 2020 年度には 2019 年度に対して約 6.6 億ドルの予算増額を提示している。

がん治療に 8,500 万ドル、がんのメカニズム解明とがん予防に各々7,000 万ドル、公

衆衛生に 5,000 万ドル、がん研究企業の強化に 3,500 万ドル、がんの発見と診断に

3,000 万ドルといった内容になっている97。

なお、2016 年にがん免疫研究における NCI の役割として、以下のような研究を支

援することが示されている98。

免疫療法が一部の患者には効果的だが、同じがんの患者には効果がない理由を理

解する 免疫療法の使用をより多くの種類のがんに拡大する 標的療法、化学療法、放射線療法等の他の種類のがん治療と組み合わせることで

免疫療法の有効性を高める 何人かの患者がなぜ毒性の副作用を発症するのか、そしてそれらをどのように予

測し緩和するのかを理解することによって免疫療法の安全性を改善する

(2)欧州

Horizon 2020 は、研究とイノベーションを結び付けることを目的とした研究開発

関連のフレームワークプログラムであり(2014 年~2020 年、予算約 800 億ユーロ)99、

バイオテクノロジーは、競争力があり、持続可能で、安全で革新的な工業製品及びプ

ロセスを開発するため、農業、林業、食料、エネルギー、化学、健康、バイオ経済と

いった分野のイノベーション推進力として注力する分野とされている100。また、①疾

https://www.cancer.gov/about-nci/budget (2019.01.30 アクセス) 95 NCI Annual Plan & Budget Proposal For Fiscal Year 2020

https://www.cancer.gov/about-nci/budget/plan (2019.01.30 アクセス) 96 National cancer institute, Cancer

Moonshothttps://www.cancer.gov/research/key-initiatives/moonshot-cancer-initiative

(2019.01.30 アクセス) 97 National cancer institute, Annual Plan & Budget Proposal For FY 2020 At a Glance

https://www.cancer.gov/about-nci/budget/plan/nci-annual-plan-aag-2020.pdf(2019.01.30 アクセス) 98 National cancer institute, NCI’s Role in Immunotherapy Research

https://www.cancer.gov/research/key-initiatives/immunotherapy(2019.01.30 アクセス) 99 European Commission, What is Horizon 2020?

https://ec.europa.eu/programmes/horizon2020/what-horizon-2020#Article(2019.01.30 アクセス) 100 European Commission,Horizone 2020, Biotechnology

https://ec.europa.eu/programmes/horizon2020/en/area/biotechnology(2019.01.30 アクセス)

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病研究(慢性病、感染症等)、②特定課題(医療システムの効率化、新たな医薬やワ

クチンの開発、医療の公平化)、③方法論、ツール、技術の開発(希少疾患の治療法、

オーダーメイド医療、遠隔医療等)の優先事項も挙げられている101。

2007 年、欧州委員会は、欧州医薬品産業連盟(EFPIA)との間の官民パートナーシ

ップ(Public–private partnership:PPP)である Innovative Medicines Initiative

(IMI)を組織した。Horizon 2020 では IMI2 が 2014 年から 2020 年にかけて運営さ

れ、総予算は 大 32.76 億ユーロとなっている。予算の半分は欧州の Horizon 2020

から、残りの多くは EFPIA とその加盟企業から提供されている102。

また、欧州委員会は Horizon 2020 の終了に向け、次期 7 年間のプログラムとして

Horizon Europe(2021 年~2027 年、予算 1,000 億ユーロ)を提案しており103、方針

としては以下の 3 つを掲げている104。

欧州全体のイノベーションの可能性を 大化 オープン化 新世代の欧州パートナーシップ及び他の欧州プログラムとの連携の強化

(3)中国

2006 年 2 月に国務院から発表された「国家中長期科学技術発展計画綱要(2006~

2020 年)」に中国の科学・イノベーション政策の基本方針が記載されており、注力す

べき先端技術 8 分野の中に「バイオ技術」が含まれている105。加えて、2016 年 8 月

には今後 5 年間の中国科学技術の振興に係わる「中国科学技術イノベーション第 13

次五カ年計画(2016~2020 年)」を発表し、重点的に進めるべき科学技術分野を網羅

的にリストアップし、2020 年までに中国のイノベーション創出能力を世界 15 位まで

に引き上げること、イノベーション型国家の仲間入りを果たす等の目標を設定した106。

また、優秀な研究者を集めるため海外で博士号をもつ者に対して上級ポスト、戸籍等

住居環境の優遇措置を与える「千人計画」があり107、優秀な研究者を集める施策を推

し進めている。

101 国立研究開発法人 科学技術振興機構 研究開発の俯瞰報告書 主要国の研究開発戦略(2018 年) 102 Innovative Medicines Initiative, History – the IMI story so far

https://www.imi.europa.eu/about-imi/history-imi-story-so-far(2019.01.30 アクセス) 103 European Commission, The Commission's proposal for Horizon Europe

https://ec.europa.eu/info/designing-next-research-and-innovation-framework-programme/what-shap

es-next-framework-programme_en (2019.01.30 アクセス) 104 European Commission プレスリリース

http://europa.eu/rapid/press-release_IP-18-4041_en.htm (2019.01.30 アクセス) 105 独立行政法人経済産業研究所イノベーション強国となる中国―先進国のレベルに近づく研究開発能力―

https://www.rieti.go.jp/users/china-tr/jp/ssqs/161205ssqs.html (2019.01.30 アクセス) 106 科学技術振興機構研究開発戦略センター デイリーウォッチャー

http://crds.jst.go.jp/dw/20161004/201610049475/(2019.01.30 アクセス) 107 科学技術振興機構、Science Portal China

http://www.spc.jst.go.jp/policy/talent_policy/callingback/callingback_05.html(2019.01.30 アクセ

ス)

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

(4)韓国

韓国科学技術情報通信部は 2017 年 9 月、「第 3 次生命工学育成基本計画(バイオ経

済革新戦略 2025)」を確定し発表した108。目標として世界におけるバイオ市場におけ

る韓国のシェアを 2017 年の 1.7%(27 兆ウォン)から、2025 年に 5%(152 兆ウォン)

に拡大をさせることを掲げている。また、具体的な 4 大目標として「①国産新薬の開

発:世界的な新薬候補物質を 100 個創出、1 兆ウォンの国産ブロックバスターを 5 個

創出」「②雇用の創出:新規雇用 12 万人の創出」「③世界的な技術移転の成果向上:

技術輸出額 500%増」「④社会問題の解決への貢献:バイオ研究開発の寄与数の増加」

を挙げている。

第2節 規制制度

1.薬事関連制度

2014 年 6 月に厚生労働省は、我が国での開発が世界に先駆けて見込まれる医薬品、医

療機器、再生医療等製品を迅速に承認するための「先駆け審査指定制度」、そして未承

認・適応外薬の開発要請の対象を欧米の未承認薬へ拡大する「未承認薬迅速実用化スキ

ーム」の二つを柱とする「先駆けパッケージ戦略」を発表した109。先駆け審査指定制度

では、治療薬の画期性、対象疾患の重篤性、対象疾患に係る極めて高い有効性、世界に

先駆けて日本で早期開発・申請する意思という条件を満たせば、優先相談、事前評価、

優先審査といった優遇を受けることができる。

現在、我が国にはがん免疫療法の開発に特化したガイドラインは存在しない。平成 25

年度に「がんワクチン・免疫療法の臨床開発に関するガイドライン案の提案」がなされ、

実際に同年度から平成 28 年度までがんワクチンの臨床有効性、安全性の評価方法等が検

討された110 111。この中では、厚生労働省の革新的医薬品・医療機器・再生医療製品実用

化促進事業の一環として非臨床試験・臨床試験の考え方が下記に示した報告書により提

案されている。

がん免疫療法開発のためのガイダンス(早期臨床試験)報告書

がん免疫療法開発のガイダンス 2015 早期臨床試験の考え方~安全で効果的な開

発を目指して~ 報告書

がん免疫療法開発のガイダンス 後期臨床試験の考え方 報告書

がん免疫療法開発のガイダンス 2016 がん治療用ワクチン・アジュバント 非臨床

試験ガイダンス 報告書

108 第 3 次生命工学育成基本計画(バイオ経済革新戦略 2025)(韓国語)

https://www.rndpolicy.org/wp-content/uploads/2018/06/%EB%B0%94%EC%9D%B4%EC%98%A4%EA%B2%BD%EC%A

0%9C-%ED%98%81%EC%8B%A0%EC%A0%84%EB%9E%B5-2025.pdf(2019.01.30 アクセス) 109 医薬品医療機器総合機構 https://www.pmda.go.jp/review-services/drug-reviews/0002.html

(2019.02.01 アクセス) 110 医薬品等審査迅速化事業費補助⾦ (⾰新的医薬品・医療機器・再⽣医療製品実⽤化促進事業) 平成 25

年度応募 https://www.pmda.go.jp/files/000163545.pdf (2018.08.01 アクセス) 111 医薬品医療機器総合機構レギュラトリーサイエンス推進業務 革新的医薬品・医療機器・再生医療製品

実用化促進事業 https://www.pmda.go.jp/rs-std-jp/facilitate-developments/0013.html(2018.08.01 ア

クセス)

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

がん免疫療法開発のガイダンス 2016 ~がん免疫療法に用いる細胞製品の品質、非

臨床試験の考え方~ 報告書

一方、米国・欧州ではがん免疫療法に関連するガイドラインとしては下記が存在する。

米国

Clinical Considerations for Therapeutic Cancer Vaccines(2011 年 10 月)

Preclinical Assessment of Investigational Cellular and Gene Therapy Products

(2013 年 11 月)

Considerations for the Design of Early-Phase Clinical Trials of Cellular and

Gene Therapy Products(2015 年 6 月)

Clinical Considerations for Therapeutic Cancer Vaccines(2011 年 10 月) 欧州

Guideline on Potency Testing of Cell Based Immunotherapy Medicinal Products

for the Treatment of Cancer(2007 年 10 月)

米国では CAR-T 細胞療法に対し、具体的にどのような臨床、薬事規制対応を行うかに

ついての FDA の見解を示す資料も提示されている112。また EU においては、養子免疫療法

の開発における規制上の課題等の検討が行われている113。その中では、遺伝子組換え細

胞を含む医療製品に関するガイドラインの作成が必要なこと等が示されている。

我が国は欧米と同様の優先審査制度を有するものの、がん免疫療法領域において欧米

とハーモナイズできるガイドラインが公布されていない状況である。

2.カルタヘナ議定書・カルタヘナ法

2000 年 1 月に、生物多様性条約の締約国会議において「生物の多様性に関する条約の

バイオセーフティに関するカルタヘナ議定書(カルタヘナ議定書)」が採択され、2003

年 6 月に締結された。カルタヘナ議定書では、遺伝子組換え生物の国境を越える移動に

おいて、生物多様性への悪影響を防止するために、遺伝子組換え生物の安全な移送、取

り扱い及び利用について、十分な保護を確保するための措置が規定されている。締約国

は、生物多様性に対するリスクを規制、管理、制御する制度を確立しなければならない

ことが規定されている。

日本でカルタヘナ議定書を履行するため、2003 年 6 月に「遺伝子組換え生物等の使用

等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(カルタヘナ法)」が公布され、2004

年 2 月に施行された。

112 FDA, Scientific and Regulatory Considerations for Gene Modified T Cell Therapy

https://pharm.ucsf.edu/sites/pharm.ucsf.edu/files/cersi/media-browser/Graeme%20Price%20and%20K

ristin%20Baird.pdf(2019.01.31 アクセス) 113 Medicines & Healthcare Products Regulatory Agency, Regulatory and Scientific Considerations on

Adoptive Cell Immunotherapies:The View of the Committee for Advanced Therapies

http://cartcr-europe.com/wp-content/uploads/sites/158/2017/03/Day-2-1700-Christiane-Niederland

er-YES-.pdf(2019.01.31 アクセス)

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

ヒトに使用する医薬品は対象外とすることがカルタヘナ議定書の第 5 条で明記されて

いる一方、日本のカルタヘナ法は、医薬品を対象外とする規定を設けていない。

ウイルスベクター等の遺伝子組換え生物等を用いた遺伝子治療の臨床試験を実施する

場合、カルタヘナ法に基づいた申請と生物多様性影響評価が求められるが、承認までに

非常に時間がかかること、また投与後の患者からのウイルス排出の拡散防止措置として

患者を個室管理しなければならないとされることについて、大学・研究機関や産業界か

ら規制緩和の要望が挙げられていた114 115。

治験実施時等における遺伝子導入細胞中の遺伝子組み換えウイルスの考え方を示すた

め、2013 年 12 月に「遺伝子導入細胞の製造に用いられた非増殖性遺伝子組換えウイル

スの残存に関する考え方について(2013 年 12 月 16 日薬事・食品衛生審議会 生物由来

技術部会資料)」にて、ex vivo 遺伝子導入細胞については、一定の要件を満たす場合、

遺伝子導入細胞に遺伝子組換えウイルスは残存しないものとの判断でカルタヘナ一種使

用申請は不要との運用見直しが行われた。

2014 年 7 月に「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関す

る法律に基づく手続の見直しについて(2014 年 7 月 14 日 薬生発第 0714 第 2 号)」にて、

遺伝子治療製品を含め、医薬品、再生医療等製品等に係るカルタへナ法の大臣承認・確

認の手続きに関して運用の見直しが行われた。これにより、PMDA での事前審査後に厚生

労働省 薬事・食品衛生審議会における審議(第二種はリスクに応じて実施しない場合あ

り)がなされた後に、大臣承認・確認を行っていた手続きが、薬事・食品衛生審議会の

審査を経ずに承認・確認を行うこととなり、審査手続きの簡素化、審査日程の短縮化が

図られた。

2016 年 7 月にカルタヘナ法の確認・承認手続の運用の見直しがされ、薬事・食品衛生

審議会における審議を経ずに承認・確認を行うことにより、審査手続きを簡素化し、審

査日程の短縮化が図られている116。また、第一種使用規程の個室管理の記載が排出の実

態に基づき試験の途中で変更できるような柔軟な記載が可能となるように改められた。

114 遺伝子組換え技術応用医薬品の利用における生物多様性の確保に係る規制のあり方に関する研究 総括

研究報告書 https://www.amed.go.jp/content/files/jp/houkoku_h27/0502053/h27seika_026.pdf

(2019.01.31 アクセス) 115 欧州製薬団体連合会 カルタヘナ法に係る要望書について

http://efpia.jp/link/BiP1.pdf (2019.02.26 アクセス) 116 カルタヘナ法の確認・承認手続の運用改善(2016 年7月)

https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/suishin/meeting/wg/iryou/20180116/180116iryou06-2.pdf

(2019.01.31 アクセス)

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

第4章 がん免疫療法の特許出願動向

第1節 調査範囲と分類・解析に当たっての留意点

1.調査対象

調査対象とする特許文献は、特許協力条約(Patent Cooperation Treaty:PCT)に基

づく国際出願、及び、日本、米国、欧州、中国、韓国をはじめとする各国(各地域)へ

の特許出願、日本、米国、欧州、中国、韓国をはじめとする各国(各地域)での登録特

許とし、これらに対し、全体動向、技術区分別動向、出願人別動向、注目出願人の出願

動向、注目特許に関する調査を行う。時期的範囲としては、優先権主張年ベースで 2002

年から 2016 年を対象とした。

本調査において、「欧州への出願」については、欧州特許庁(European Patent Office:

EPO)への出願、及び欧州特許条約(European Patent Convention:EPC)加盟国 38 カ国

のうち、本調査で使用するデータベース(Derwent World Patent Index:DWPI)の収録

対象国のうち 20 か国(オーストリア、ベルギー、スイス、チェコ、ドイツ、デンマーク、

スペイン、フィンランド、フランス、イギリス、ハンガリー、アイルランド、イタリア、

ルクセンブルク、オランダ、ノルウェー、ポルトガル、ルーマニア、スウェーデン、ス

ロバキア)への出願を対象とした。

「出願人国籍」は、「日本国籍」「米国籍」「欧州国籍」「中国籍」「韓国籍」の 5 か国(地

域)を表記し、それ以外の国は「その他」とした。「欧州国籍」の定義は、EPC 加盟の 38

か国(2018 年 8 月時点:アルバニア(AL)、オーストリア(AT)、ベルギー(BE)、ブル

ガリア(BG)、スイス(CH)、キプロス(CY)、チェコ(CZ)、ドイツ(DE)、デンマーク(DK)、

エストニア(EE)、スペイン(ES)、フィンランド(FI)、フランス(FR)、イギリス(GB)、

ギリシャ(GR)、クロアチア(HR)、ハンガリー(HU)、アイルランド(IE)、アイスラン

ド(IS)、イタリア(IT)、リヒテンシュタイン(LI)、リトアニア(LT)、ルクセンブル

ク(LU)、ラトビア(LV)、モナコ(MC)、マケドニア旧ユーゴスラビア(MK)、マルタ(MT)、

オランダ(NL)、ノルウェー(NO)、ポーランド(PL)、ポルトガル(PT)、ルーマニア(RO)、

セルビア(RS)、スウェーデン(SE)、スロベニア(SI)、スロバキア(SK)、サンマリノ

(SM)、トルコ(TR))とした。

出願国籍別件数は、公報に記載されている筆頭出願人の住所を出願人の国籍とした。

また、米国公開公報に多く認められる出願人の記載のない公報については、パテントフ

ァミリー情報から出願人が判明した場合はその国籍を、それ以外は筆頭発明者の住所を

出願人の国籍とした。

また、出願人別の出願・登録件数上位ランキングについては、複数の出願人による共

同出願の場合は、各出願人それぞれ 1 件とカウントした。また、出願人の属性で、「大学」、

「研究機関」にはその知的財産管理・技術移転管理「部門」(TLO 等)を含むこととした。

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

2.使用したデータベース

「がん免疫療法」に関する出願を抽出するために用いた、本調査において対象技術と

した「免疫調節」「養子免疫療法」「腫瘍溶解性ウイルス療法」「がんワクチン療法」と用

いた検索式を示す。

使用したデータベースは、特許分類による検索、優先権主張年(優先権主張日)、出願

先国(公報発行国)、出願人住所、発明者住所、出願人名、発明者名等による検索、英文

抄録に対する英語テキスト検索を行うことができる商用データベースとして、Derwent

innovation(Derwent World Patent Index(DWPI)は Clarivate Analytics の登録商標

である)を用い、2018 年 9 月 27 日に検索を実施した。調査対象ファミリー件数は 42,224

件である。

3.分類及び解析に当たっての留意点

分類及び解析に当たっての留意点を下記にまとめる。

(1)分類の付与

フラグの付与ルールは、1 つの特許文献に対し、「薬効成分に関する技術」において、

1 つ以上にフラグを付与することとした。同一 DWPI ファミリーに属する特許について

は、基本的に同じ技術分類を付与した。

(2)解析の対象

今回の調査で対象としたデータベース DWPI は、国により収録開始時期及び収録分野、

収録率が異なっているので、本調査は検索時のデータベースの収録範囲内で行われた

ものであることに留意する必要がある。

(3)出願あるいは登録件数

出願あるいは登録件数は、調査対象国あるいは日米欧中韓へ出願、登録された件数

をそれぞれ1件ずつ公報単位で集計した。

(4)出願動向

出願件数推移グラフでは、出願年(優先権主張年)で 2002 年~2016 年までプロッ

トしているが、データベース収録までのタイムラグがあり、全データを収録している

年が各国で異なる。そのため、2014 年以降は全データを取得していない場合があると

思われる。特に PCT に基づく国際出願(PCT 出願)では国内移行までの時間が長く、

公表公報発行時期が国内出願の公開(1 年 6 カ月)より遅くなるため、PCT 出願比率が

高い技術分野では未収録データ件数が多い。グラフを見る際はこの点に留意する必要

がある。

(5)登録動向

登録については、各特許庁において審査請求制度、審査処理に要する期間、審査基

準等が異なり登録されるまでのタイムラグがあり、特に優先権主張年ごとに登録件数

推移を集計した場合、直近年のデータは減少傾向になることに留意する必要がある。

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

(6)出願人別動向

本調査の解析対象期間(2002 年~2016 年)中に企業が、買収・合併を行っている場

合、出願人のランキングでは買収・合併の結果や 適化譲受人に関する情報を反映し

て、企業名の名寄せを行った場合がある。

第2節 全体動向

「がん免疫療法」に関する出願を抽出するために、がん免疫療法関連技術に関連する

キーワード等を組み合わせて検索を行った。特許公報の目視での確認により「がん免疫

療法」に関する出願かどうかを判断し、技術分類を付与した。

出願人国籍別 PCT 出願件数推移及び出願件数比率を図 4-1 に示す。

図 4-1 出願人国籍別 PCT 出願件数推移及び出願件数比率(出願年(優先権主張年):2002~2016

年)

302 285 253 268

302

242 245 215 263 224 262

310

500

699

906

0

100

200

300

400

500

600

700

800

900

1,000

0

100

200

300

400

500

600

700

800

900

1,000

200

2

200

3

200

4

200

5

200

6

200

7

200

8

200

9

201

0

201

1

201

2

201

3

201

4

201

5

201

6

合計

出願件数

出願年( 優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計

優先権主張

2002-2016年

出願人国籍(地域)

日本国籍

379件7.2%

米国籍

2,572件48.7%

欧州国籍

1,616件30.6%

中国籍

196件3.7%

韓国籍

98件1.9%

その他

415件7.9%

合計

5,276件

がん免疫療法に関する PCT(特許協力条約)に基づく国際出願件数(出願年(優先権

主張年):2002 年~2016 年)は 5,276 件であった。米国籍出願人が 2,572 件で 48.7%の

シェアを有し、欧州国籍出願人が 1,616 件で 30.6%、中国籍出願人が 196 件で 3.7%、韓

国籍出願人が 98 件で 1.9%であった。日本国籍出願人は 379 件、7.2%であった。

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

出願人国籍別ファミリー件数推移及びファミリー件数比率を図 4-2 に示す。

図 4-2 出願人国籍別ファミリー件数推移及びファミリー件数比率(出願年(優先権主張年):2002

~2016 年)

586 545 504 475 436

417 396 381

450

397 431

545692

1,098

1,292

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

200

2

200

3

200

4

200

5

200

6

200

7

200

8

200

9

201

0

201

1

201

2

201

3

201

4

201

5

201

6

合計

ファミリー件数

出願年( 優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計

優先権主張

2002-2016年

出願人国籍(地域)

日本国籍

671件7.8%

米国籍

3,555件41.1%

欧州国籍

2,213件25.6%

中国籍

1,247件14.4%

韓国籍

279件3.2%

その他

680件7.9%

合計

8,645件 注:2015 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で、全データを反映していない

可能性がある。

がん免疫療法に関するファミリー出願件数(日米欧中韓その他への出願、出願年(優

先権主張年):2002 年~2016 年)は 8,645 件であった。米国籍出願人が 3,555 件で 41.1%

のシェアを有し、欧州国籍出願人が2,213件で 25.6%、中国籍出願人が 1,247件で 14.4%、

韓国籍出願人が 279 件で 3.2%であった。日本国籍出願人は 671 件、7.8%であった。件数

の推移に関しては、2002 年から 2011 年までは、2010 年を除きゆるやかな減少傾向にあ

ったが、2012 年に増加傾向に転じた後に、2013 年からは急激な増加傾向を示している。

この急激な増加傾向は、米国籍出願人、欧州国籍出願人、中国籍出願人による出願数の

増加が一因となっている。

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

出願先国別-出願人国籍別出願件数を図 5-1 に示す。

図 5-1 出願先国別-出願人国籍別出願件数(日米欧中韓その他への出願、出願年(優先権主張

年):2002~2016 年)

2,133(70.8%)

930(30.9%)

443(14.7%)

377(12.5%)

217(7.2%)

166(5.5%)

880(29.2%)

10,865(66.8%)

1,236(7.6%)

5,842(35.9%)

2,112(13.0%)

995(6.1%)

680(4.2%)

5,406(33.2%)

7,743(65.1%)

977(8.2%)

1,853(15.6%)

3,685(31.0%)

741(6.2%)

487(4.1%)

4,143(34.9%)

1,572(91.8%)

32(1.9%)

74(4.3%)

54(3.2%)

1,390(81.2%)

22(1.3%)

140(8.2%)

583(89.7%)

45(6.9%)

72(11.1%)

43(6.6%)

56(8.6%)

367(56.5%)

67(10.3%)

1,590(52.7%)

255(8.4%)

549(18.2%)

405(13.4%)

260(8.6%)

121(4.0%)

1,429(47.3%)

出願先国

出願人国籍(地域)

日本

米国

欧州

中国

韓国

その他

日米欧中韓

日本

米国

欧州

中国

韓国

その他

他国・地域への出願では、米国籍出願人、欧州国籍出願人は日米欧中韓以外の「その

他」の国に対しても積極的に出願をしているのに対し、欧米と比較して、日本国籍出願

人は「その他」の国に対しては、出願は若干少ない傾向にある。中国籍出願人、韓国籍

出願人は自国への出願が高い傾向にある。

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

出願先国別-出願人国籍別出願件数収支を図 5-2 に示す。円の大きさ、線の太さは件

数に比例して表示してある。

図 5-2 出願先国別-出願人国籍別出願件数収支(日米欧中韓その他への出願、出願年(優

先権主張年):2002~2016 年)

日本

443 5.0%

米国

5,842 66.1%

欧州

1,853 21.0%

中国

74 0.8%

韓国

72 0.8%

その他

549 6.2%

日本930

26.8%

米国1,236 35.6%

欧州977

28.1%

中国32

0.9%

韓国45

1.3%

その他255

7.3%

日本

377 5.6%

米国

2,112 31.6%

欧州

3,685 55.2%

中国

54 0.8%

韓国

43 0.6%

その他

405 6.1%

日本217

5.9%米国995

27.2%

欧州741

20.3%

中国1,390 38.0%

韓国56

1.5%

その他260 7.1%

日本166

9.0%

その他121

6.6%

米国680

36.9%欧州487

26.4%

中国22

1.2%

韓国367

19.9%

欧州への出願6,676件

日本への出願3,475件

米国への出願8,833件

中国への出願3,659件

韓国への出願1,843件

995件

74件

22件

56件

43件

487件

977件

377件

1,236件

443件

680件

72件

2,112件

1,853件

32件

217件

54件

741件

45件

166件

出願先国別-出願人国籍別出願件数収支を図として表した場合、米国、欧州、中国へ

の出願は、いずれも自国出願人からの出願が も多いのに対し、日本、および韓国への

出願は、米国籍出願人からの出願が多い状況にある。

また、米国と欧州で相互に向いている矢印が特筆して太く、米国から日本、中国に対

する矢印や、欧州から日本に対する矢印が他の矢印と比較して太い状況にある。中国か

らの矢印は他の矢印と比較して細く、中国籍出願人は他国に対して出願をしていないこ

とが窺える。

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

出願先国別-出願人国籍別の登録件数収支を図 5-3 に示す。円の大きさ、線の太さは

件数に比例して表示されている。

図 5-3 出願先国別-出願人国籍別登録件数収支(日米欧中韓その他への出願、出願年(優

先権主張年):2002~2016 年)

23件

日本273

23.1%

米国376

31.8%

欧州407

34.4%

中国11

0.9%

韓国22

1.9%

その他94

7.9%

日本

203 8.0%

米国

1,368 53.8%

欧州

725 28.5%

中国

23 0.9%

韓国

29 1.1%

その他

194 7.6%

日本

179 7.9%

米国

719 31.6%

欧州

1,158 50.9%

中国

9 0.4%

韓国

20 0.9% その他

190 8.4%

日本103 9.7%

米国210

19.8%

欧州250

23.6%

中国404

38.1%

韓国22

2.1%

その他72

6.8%

日本での登録1,183件

米国での登録2,542件 欧州での登録

2,275件

韓国での登録523件中国での登録

1,061件

日本74

14.1%

米国122

23.3%

欧州122

23.3%

中国5

1.0%

韓国175

33.5%

その他25

4.8%

407件179件

376件

203件

210件

5件

22件

20件

122件

719件

725件

122件

29件

11件

103件

250件

9件

22件

74件

出願先国別-出願人国籍別登録件数収支を図として表した場合でも、出願と同様に、

米国、欧州、中国での登録は、いずれも自国出願人からの登録が も多いのに対し、日

本、および韓国での登録は、米国出願人が多い状況にある。

また、米国と欧州で相互に向いている矢印が特筆して太く、米国から日本に対する矢

印や、欧州から日本に対する矢印が他の矢印と比較して太い状況にある。中国からの矢

印は他の矢印と比較して細く、中国籍出願人は他国での登録件数が少ないことが窺える。

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

出願人属性別ファミリー件数推移及びファミリー件数比率及び共同出願の内訳を図 6 に

示す。

図 6 出願人属性別ファミリー件数推移及びファミリー件数比率(出願年(優先権主張年):2002

~2016 年)、及び共同出願の内訳

図 6-a.日本国籍出願人

0

5

10

15

20

25

30

35

40

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

ファミリー件数

出願年(優先権主張年)

企業 大学 研究機関 個人 共同出願

優先権主張

2002-2016年

出願人属性

企業

291件

43.4%

大学

113件

16.8%

研究機関

26件

3.9%

個人

6件

0.9%

共同出願

235件

35.0%

合計

671件

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 6-b.米国籍出願人

0

50

100

150

200

250

300

35020

02

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

ファミリー件数

出願年(優先権主張年)

企業 大学 研究機関 個人 共同出願

優先権主張

2002-2016年

出願人属性

企業

1,645件

46.3%

大学

721件

20.3%

研究機関

549件

15.4%

個人

25件

0.7%

共同出願

615件

17.3%

合計

3,555件

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 6-c.欧州国籍出願人

0

50

100

150

200

250

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

ファミリー件数

出願年(優先権主張年)

企業 大学 研究機関 個人 共同出願

優先権主張

2002-2016年

出願人属性

企業

1,312件

59.3%

大学

162件

7.3%

研究機関

146件

6.6%

個人

28件

1.3%

共同出願

566件

25.6%

合計

2,214件

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 6-d.中国籍出願人

0

50

100

150

200

25020

02

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

ファミリー件数

出願年(優先権主張年)

企業 大学 研究機関 個人 共同出願

優先権主張

2002-2016年

出願人属性

企業

625件

50.1%

大学

279件

22.4%

研究機関

239件

19.2%

個人

14件

1.1%

共同出願

90件

7.2%

合計

1,247件

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 6-e.韓国籍出願人

0

2

4

6

8

10

12

14

16

1820

02

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

ファミリー件数

出願年(優先権主張年)

企業 大学 研究機関 個人 共同出願

優先権主張

2002-2016年

出願人属性

企業

84件

30.1%

大学

114件

40.9%

研究機関

40件

14.3%

個人

2件

0.7%

共同出願

39件

14.0%

合計

279件

注:2015 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で、全データを反映していない

可能性がある。

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

出願人の属性は「企業」、「大学」、「研究機関」(大学以外の研究機関)、「個人」、これ

らの「共同出願」とし、共同出願の内訳も示した。

韓国籍を除く各国出願人に関して、いずれも企業からの出願人の割合が大きくなって

いるが(日本国籍出願人:43.4%、米国籍出願人:46.3%、欧州国籍出願人:59.3%、中国

籍出願人:50.1%)、企業からの出願件数の増加が見られた時期について確認すると、米

国籍出願人と欧州国籍出願人が 2014 年であるのに対し、日本国籍出願人と中国籍出願人

は米国・欧州から 1 年後の 2015 年となっている(ただし、2015 年以降はデータベース

収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で、全データを反映していない可能性がある。

また、日本国籍出願人の出願件数は、米国籍出願人、欧州国籍出願人、中国籍出願人と

比較し母数として少ないことに留意する必要がある)。

図 6-f.共同出願の内訳

共同出願詳細

日本国籍

出願人

米国籍

出願人

欧州国

籍出願人

中国籍

出願人

韓国籍

出願人

件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合

企 - 企 58 24.7% 136 22.1% 137 24.2% 44 48.9% 5 12.8%

企 - 大 87 37.0% 100 16.3% 110 19.4% 9 10.0% 6 15.4%

企 - 研 20 8.5% 79 12.8% 43 7.6% 20 22.2% 5 12.8%

企 - 個 36 15.3% 86 14.0% 98 17.3% 3 3.3% 13 33.3%

大 - 大 14 6.0% 35 5.7% 12 2.1% 2 2.2% 1 2.6%

大 - 研 6 2.6% 74 12.0% 74 13.1% 4 4.4% 4 10.3%

大 - 個 6 2.6% 18 2.9% 12 2.1% 0 0.0% 0 0.0%

研 - 研 3 1.3% 32 5.2% 41 7.2% 3 3.3% 0 0.0%

研 - 個 3 1.3% 17 2.8% 4 0.7% 0 0.0% 0 0.0%

個 - 個 2 0.9% 16 2.6% 23 4.1% 4 4.4% 3 7.7%

企 - 研 - 個 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0%

大 - 研 - 個 0 0.0% 1 0.2% 1 0.2% 0 0.0% 0 0.0%

企 - 大 - 研 0 0.0% 17 2.8% 10 1.8% 1 1.1% 1 2.6%

企 - 大 - 個 0 0.0% 3 0.5% 1 0.2% 0 0.0% 1 2.6%

企 - 大 - 研 - 個 0 0.0% 1 0.2% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0%

合計 235 100.0% 615 100.0% 566 100.0% 90 100.0% 39 100.0%

共同出願比率* 35.0% 17.3% 25.6% 7.2% 14.0%

全体のうち企 - 企比率 8.6% 3.8% 6.2% 3.5% 1.8%

* 図 6 a-e の「共同出願」を参照。

共同出願の内訳の記載として、「企」は企業、「大」は大学、「研」は研究機関、「個」

は個人を表す。

全体の出願のうち、共同出願の「企-企」の出願によるものは、日本国籍出願人は 8.6%

であるのに対し、米国籍出願人は 3.8%、欧州国出願人籍は 6.2%となる。件数だけでは、

日本国籍出願人は「企-企」は少なくみえるが、「出願全体」からの割合を取ると、日本

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

は他国と比較して割合が大きい。

一方、我が国と他国との大きな違いとなっているのは、「大-研」や「研-研」の割合

の低さである。米国籍出願人では「大-研」が 12.0%、欧州国籍出願人では 13.1%となっ

ており、日本国籍出願人の 2.6%とは約 5 倍程度の違いが生じている。「研-研」に関し

ても我が国と米国・欧州では同様の傾向がみられる。

第3節 技術区分別動向

技術区分別(大項目)ファミリー件数推移を図 7 に示す。

図 7 技術区分別(大項目)ファミリー件数推移(出願年(優先権主張年):2002~2016 年)

14 18 24 26 17 9 24 12 18 2542 72 118 169 264

47 52 46 57 59 65 52 53 51 31 35 44 67 96 104

123 144 139 134 107 100 100 74 96 83 72 99 114 144 165

2026 32

1729 22 22 31 35 40 65 78 156 251 326

64 51 50 33 32 45 30 39 51 42 37 65 41 51 98

291 228 183 195 171 164 151 151 159 150 157 170 158 360 268

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

2017

技術区分

出願年(優先権主張年)

優先権主張 2002-2016年

A(免疫チェックポイン

ト阻害療法)

A(その他免疫抑制阻

害阻害療法)

A(免疫増強)

B養子免疫療法

C腫瘍溶解性ウイル

ス療法

Dがんワクチン療法

注:2015 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で、全データを反映していない

可能性がある。

技術区分として、がんワクチン療法、免疫増強、その他免疫抑制阻害療法、腫瘍溶解

性ウイルス療法については、2002 年より一定数のファミリー出願が行われている。2013

年以降、免疫チェックポイント阻害療法、養子免疫療法に対するファミリー出願が盛ん

になっている。

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第2部

第3部

第4部

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資料編

第6部

技術区分別(大項目)-出願人国籍別ファミリー件数及び比率を図 8 に示す。

図 8 技術区分別(大項目)-出願人国籍別ファミリー件数及び比率(出願年(優先権主張年):

2002~2016 年)

27(4.1%)

82(12.5%)

163(24.9%)

61(9.3%)

44(6.7%)

278(42.4%)

469(14.0%)

383(11.4%)

730(21.8%)

533(15.9%)

234(7.0%)

1,004(29.9%)

157(7.4%)

260(12.2%)

428(20.1%)

272(12.8%)

157(7.4%)

853(40.1%)

111(9.2%)

56(4.6%)

151(12.5%)

206(17.0%)

154(12.7%)

534(44.1%)

7(2.6%)

30(11.2%)

89(33.3%)

15(5.6%)

40(15.0%)

86(32.2%)

81(12.9%)

48(7.7%)

133(21.2%)

63(10.1%)

100(16.0%)

201(32.1%)

技術区分

出願人国籍(地域)

日本

米国

欧州

中国

韓国

その他

A(免疫チェックポイント

阻害療法)

A(その他の阻害療法)

A(免疫増強)

B養子免疫療法

C腫瘍溶解性ウイルス

療法

Dがんワクチン療法

全区分それぞれにおいて、米国籍出願人による出願が も多く、欧州国籍出願人が続

いている状況にある。その後に、免疫チェックポイント阻害療法、養子免疫療法、腫瘍

溶解性ウイルス療法、がんワクチン療法においては中国籍出願人が、その他免疫抑制阻

害療法、免疫増強では日本国籍出願人が続いている。また、日本国籍出願人、米国籍出

願人、欧州国籍出願人においては、区分としてはがんワクチンに対する出願が も多く、

次に免疫増強が多い状況にある。

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第2部

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技術区分別-出願人国籍別ファミリー件数推移及び比率を図 9 に示す。

図 9 技術区分別-出願人国籍別ファミリー件数推移及び比率(出願年(優先権主張年):2002

~2016 年)

図 9-a.免疫チェックポイント阻害療法

14 18

24 26

17 9

24

12 18

25 42

72

118169

264

0

50

100

150

200

250

300

0

50

100

150

200

250

300

200

2

200

3

200

4

200

5

200

6

200

7

200

8

200

9

201

0

201

1

201

2

201

3

201

4

201

5

201

6

合計

ファミリー件数

出願年( 優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計

優先権主張

2002-2016年

出願人国籍(地域)

日本国籍

27件3.2%

米国籍

469件55.0%

欧州国籍

157件18.4%

中国籍

111件13.0%

韓国籍

7件0.8%

その他

81件9.5%

合計

852件

CTLA-4阻

111件13.0%

PD系阻

463件…

CTLA-4+PD系阻害

66件7.7%

CTLA-4、PD系阻害以外

212件24.9%

合計

852件

注:2015 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で、全データを反映していない

可能性がある。

免疫チェックポイント阻害療法の出願件数に関しては、2012 年以降から急激に出願件

数が増加しており、米国籍出願人や欧州国籍出願人における出願件数増加と連動してい

る。日本国籍出願人や中国籍出願人、韓国籍出願人は 2014~2015 年まではまとまった出

願は行われていなかったが、2016 年は出願件数が増加傾向にある。特に中国籍出願人に

関しては、2015 年以降では、欧州国籍出願人と比肩するまでの出願件数となっている(た

だし、2015 年、2016 年については暫定値であることに留意する必要がある)。シェアは

米国籍出願人 55.0%、欧州国籍出願人 18.4%、中国籍出願人 13.0%、日本国籍出願人 3.2%、

韓国籍出願人 0.8%となっている。

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- 63 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

免疫チェックポイント阻害療法のターゲット別の出願件数シェアは、CTLA-4 阻害が

13.0%、PD 系阻害が 54.3%、CTLA-4+PD 系阻害が 7.7%を占めている。

※CTLA-4+PD 系阻害:CTLA-4 阻害と PD 系阻害の両者について記載のある出願

図 9-a-1.CTLA-4 阻害

34

15

107

1

6

4 2

7

11

10

27

34

36

0

5

10

15

20

25

30

35

40

0

5

10

15

20

25

30

35

40

200

2

200

3

200

4

200

5

200

6

200

7

200

8

200

9

201

0

201

1

201

2

201

3

201

4

201

5

201

6

合計

ファミリー件数

出願年( 優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計

優先権主張

2002-2016年

出願人国籍(地域)

日本国籍

4件2.3%

米国籍

115件65.0%

欧州国籍

27件15.3%

中国籍

20件11.3%

韓国籍

1件0.6%

その他

10件5.6%

合計

177件

注:2015 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で、全データを反映していない

可能性がある。

CTLA-4 阻害に関する出願件数は、2014 年以降において大幅な増加傾向にある。特に米

国籍出願人が大きな存在感を示しており、出願全体のうち 65.0%もの割合を占めている。

米国籍出願人に続くのが欧州国籍出願人 15.3%、中国籍出願人 11.3%であり、2014 年以

降において大幅な件数増加がみられる。日本国籍出願人に関しては、全体のわずか 2.3%

にとどまり、劣勢である。

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- 64 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 9-a-2.PD 系阻害

4 2 0 14 6 2 13 3 9 12

23

57

81

124

179

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

200

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

200

200

2

200

3

200

4

200

5

200

6

200

7

200

8

200

9

201

0

201

1

201

2

201

3

201

4

201

5

201

6

合計

ファミリー件数

出願年( 優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計

優先権主張

2002-2016年

出願人国籍(地域)

日本国籍

19件3.6%

米国籍

265件50.1%

欧州国籍

98件18.5%

中国籍

82件15.5%

韓国籍

6件1.1%

その他

59件11.2%

合計

529件

注:2015 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で、全データを反映していない

可能性がある。

PD 系阻害とは PD-1 と、そのリガンドである PD-L1、PD-L2(PD 系分子という)の機能

を阻害する作用を指す。PD 系阻害は免疫チェックポイント阻害療法に関連する特許出願

の中で高い割合を占めており、2012 年以降の免疫チェックポイント阻害療法全体の特許

出願の増加を牽引している。シェアは米国籍出願人 50.1%、欧州国籍出願人 18.5%、中国

籍出願人 15.5%、日本国籍出願人 3.6%となっている。近年では米国籍出願人による出願

が非常に多くなっているが、中国籍出願人の出願件数も増加傾向にある。

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- 65 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 9-b.その他免疫抑制阻害療法

47 52 46 57 5965

52 53 51

31 35

44

67

96

104

0

20

40

60

80

100

120

0

20

40

60

80

100

120

200

2

200

3

200

4

200

5

200

6

200

7

200

8

200

9

201

0

201

1

201

2

201

3

201

4

201

5

201

6

合計

ファミリー件数

出願年( 優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計

優先権主張

2002-2016年

出願人国籍(地域)

日本国籍

82件9.5%

米国籍

383件44.6%

欧州国籍

260件30.3%

中国籍

56件6.5%

韓国籍

30件3.5%

その他

48件5.6%

合計

859件

注:2015 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で、全データを反映していない

可能性がある。

その他免疫抑制阻害療法に関する出願件数は、2011 年、2012 年に減少したものの、2014

年に回復し、以降の出願数は増加している。特に 2014 年以降は米国籍出願人の増加が顕

著である。シェアは米国籍出願人 44.6%、欧州国籍出願人 30.3%、日本国籍出願人 9.5%、

中国籍出願人 6.5%となっている。

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 9-c.免疫増強

123

144

139 134

107

100 100

74

9683

72

99

114

144

165

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

200

2

200

3

200

4

200

5

200

6

200

7

200

8

200

9

201

0

201

1

201

2

201

3

201

4

201

5

201

6

合計

ファミリー件数

出願年( 優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計

優先権主張

2002-2016年

出願人国籍(地域)

日本国籍

163件9.6%

米国籍

730件43.1%

欧州国籍

428件25.3%

中国籍

151件8.9%

韓国籍

89件5.3%

その他

133件7.9%

合計

1,694件

注:2015 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で、全データを反映していない

可能性がある。

免疫増強における特許出願については、2003 年から 2009 年にかけ、減少が続いてい

たが、2012 年以降は増加傾向にある。出願人国籍別では、米国籍出願人と欧州国籍出願

人による出願が多くなっており、これらの出願人の出願件数と出願総数の傾向が連動し

ている。シェアは米国籍出願人 43.1%、欧州国籍出願人 25.3%、日本国籍出願人 9.6%、

中国籍出願人 8.9%となっている。

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- 67 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 9-d.養子免疫療法

20 26 32 17 29 22 22 31 35 40

65 78

156

251

326

0

50

100

150

200

250

300

350

0

50

100

150

200

250

300

350

200

2

200

3

200

4

200

5

200

6

200

7

200

8

200

9

201

0

201

1

201

2

201

3

201

4

201

5

201

6

合計

ファミリー件数

出願年( 優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計

優先権主張

2002-2016年

出願人国籍(地域)

日本国籍

61件5.3%

米国籍

533件46.3%

欧州国籍

272件23.7%

中国籍

206件17.9%

韓国籍

15件1.3%

その他

63件5.5%

合計

1,150件

注:2015 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で、全データを反映していない

可能性がある。

養子免疫療法における特許出願については、2013 年を境に増加している状況にあり、

特に米国籍出願人、欧州国籍出願人、中国籍出願人がこれを牽引している。シェアは米

国籍出願人 46.3%、欧州国籍出願人 23.7%、中国籍出願人 17.9%、日本国籍出願人 5.3%

となっている。

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- 68 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 9-d-1.抗原受容体の配列設計・改変

5 3 9

2

8 3 3 7 17 9

26 29

84

117

123

0

20

40

60

80

100

120

140

0

20

40

60

80

100

120

1402

002

200

3

200

4

200

5

200

6

200

7

200

8

200

9

201

0

201

1

201

2

201

3

201

4

201

5

201

6

合計

ファミリー件数

出願年( 優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計

優先権主張

2002-2016年

出願人国籍(地域)

日本国籍

8件1.8%

米国籍

221件49.7%

欧州国籍

123件27.6%

中国籍

73件16.4%

韓国籍

4件0.9%

その他

16件3.6%

合計

445件

注:2015 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で、全データを反映していない

可能性がある。

抗原受容体の配列設計・改変とは CAR 改変、TCR 改変、CDR、細胞膜ドメイン、シグナ

ル伝達ドメイン、その他の設計・改変の技術区分を指す。出願件数は 2014 年以降に大き

く増加している。この要因としては、米国籍出願人、欧州国籍出願人、中国籍出願人に

よる大幅な出願件数の増加が挙げられる。シェアは米国籍出願人が 49.7%と約半分を占

め、次いで欧州国籍出願人 27.6%、中国籍出願人 16.4%、日本国籍出願人が 1.8%となっ

ている。

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 9-d-2 導入遺伝子/ターゲット

5 3 9 76 6 6 14 13

1619

35

92

113

132

0

50

100

150

0

50

100

150

200

2

200

3

200

4

200

5

200

6

200

7

200

8

200

9

201

0

201

1

201

2

201

3

201

4

201

5

201

6

合計

ファミリー件数

出願年( 優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計

優先権主張

2002-2016年

出願人国籍(地域)

CAR298件62.6%

TCR150件31.5%

CAR+TCR9件

1.9%

CAR、TCR以外の導入

遺伝子/ターゲット

19件4.0%

合計

476件

養子免疫療法のうち、導入遺伝子/ターゲットに特徴がある特許出願の件数である。

ここで、T 細胞等に対して遺伝子改変技術を用いて腫瘍抗原特異的な遺伝子導入したこ

とに特徴を有する出願のうち、キメラ抗原受容体(CAR)遺伝子が導入された出願が CAR

に、T細胞受容体(TCR)遺伝子が導入された出願が TCRに分類される。内訳は CARが 62.6%、

TCR が 31.5%、CAR+TCR が 1.9%を占めている。

※CAR+TCR:CAR と TCR の両方について記載がある出願

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 9-d-2-1.CAR

0 2 2 1 1 0 1 1 3 7

11

25

78

85

90

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

200

2

200

3

200

4

200

5

200

6

200

7

200

8

200

9

201

0

201

1

201

2

201

3

201

4

201

5

201

6

合計

ファミリー件数

出願年( 優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計

優先権主張

2002-2016年

出願人国籍(地域)

日本国籍

7件2.3%

米国籍

154件50.2%

欧州国籍

81件26.4%

中国籍

52件16.9%

韓国籍

2件0.7%

その他

11件3.6%

合計

307件

注:2015 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で、全データを反映していない

可能性がある。

2013年以降、急激な増加を示している。特に米国籍出願人 50.2%、欧州国籍出願人 26.4%

が割合として多いが、2016 年においては暫定値ながら、中国籍出願人が米国籍出願人と

同等まで出願件数を伸ばしている。シェアは米国籍出願人 50.2%、欧州国籍出願人 26.4%、

中国籍出願人 16.9%、日本国籍出願人 2.3%となっている。

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- 71 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 9-d-2-2.TCR

5 1

7

6 5 6 5

13

7 78 8

18

26

37

0

5

10

15

20

25

30

35

40

0

5

10

15

20

25

30

35

40

200

2

200

3

200

4

200

5

200

6

200

7

200

8

200

9

201

0

201

1

201

2

201

3

201

4

201

5

201

6

合計

ファミリー件数

出願年( 優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計

優先権主張

2002-2016年

出願人国籍(地域)

日本国籍

12件7.5%

米国籍

71件44.7%

欧州国籍

54件34.0%

中国籍

16件10.1%

韓国籍

0件0.0%

その他

6件3.8%

合計

159件

注:2015 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で、全データを反映していない

可能性がある。

2004 年~2013 年は 2009 年を除き概ね 7 件程度の出願であったが、2014 年以降増加し

ている。2014 年は米国籍出願人、2015 年、2016 年は欧州国籍出願人による出願件数が

多い傾向にある。シェアは米国籍出願人 44.7%、欧州国籍出願人 34.0%、中国籍出願人

10.1%、日本国籍出願人 7.5%となっている。

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- 72 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 9-e.腫瘍溶解性ウイルス療法

64

51 50

33 32

45

30

39

51

4237

65

41

51

98

0

20

40

60

80

100

120

0

20

40

60

80

100

120

200

2

200

3

200

4

200

5

200

6

200

7

200

8

200

9

201

0

201

1

201

2

201

3

201

4

201

5

201

6

合計

ファミリー件数

出願年( 優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計

優先権主張

2002-2016年

出願人国籍(地域)

日本国籍

44件6.0%

米国籍

234件32.1%

欧州国籍

157件21.5%

中国籍

154件21.1%

韓国籍

40件5.5%

その他

100件13.7%

合計

729件

注:2015 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で、全データを反映していない

可能性がある。

腫瘍溶解性ウイルス療法の出願は暫定値ながら 2016 年に急激に増加している。この理

由としては、米国籍出願人や欧州国籍出願人、その他の国籍(地域)の出願人からの出

願件数が大きく伸びたためである。出願件数自体は、米国籍出願人が も多くなってい

るものの、欧州国籍出願人、中国籍出願人からの出願も一定割合存在しており、存在感

を示している。日本国籍出願人に関しては、2000 年初頭には中国籍出願人と同程度の出

願件数となっていたが、現在は非常に少なくなっている。シェアは米国籍出願人 32.1%、

欧州国籍出願人 21.5%、中国籍出願人 21.1%と拮抗しており、次いで日本国籍出願人 6.0%

となっている。

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- 73 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 9-f.がんワクチン療法

291

228

183195

171 164

151 151 159 150 157

170

158

360

268

0

50

100

150

200

250

300

350

400

0

50

100

150

200

250

300

350

400

200

2

200

3

200

4

200

5

200

6

200

7

200

8

200

9

201

0

201

1

201

2

201

3

201

4

201

5

201

6

合計

ファミリー件数

出願年( 優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計

優先権主張

2002-2016年

出願人国籍(地域)

日本国籍

278件9.4%

米国籍

1,004件34.0%

欧州国籍

853件28.9%

中国籍

534件18.1%

韓国籍

86件2.9%

その他

201件6.8%

合計

2,956件

注:2015 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で、全データを反映していない

可能性がある。

がんワクチンについては、2002 年~2014 年の期間では、出願件数が減少傾向であった

が、暫定値ながら 2015 年に欧州国籍出願人、米国籍出願人、中国籍出願人が出願件数を

伸ばしている。シェアは米国籍出願人 34.0%、欧州国籍出願人 28.9%、中国籍出願人18.1%、

日本国籍出願人 9.4%となっている。

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- 74 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 9-f-1.ペプチドワクチン

90

74 69 66 6557 50

38

5949

61 6347

203

87

0

50

100

150

200

250

0

50

100

150

200

25020

02

200

3

200

4

200

5

200

6

200

7

200

8

200

9

201

0

201

1

201

2

201

3

201

4

201

5

201

6

合計

ファミリー件数

出願年( 優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計

優先権主張

2002-2016年

出願人国籍(地域)

日本国籍

163件15.1%

米国籍

309件28.7%

欧州国籍

418件38.8%

中国籍

128件11.9%

韓国籍

17件1.6%

その他

43件4.0%

合計

1,078件

注:2015 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で、全データを反映していない

可能性がある。

ペプチドワクチンにおける全体の傾向は横ばい~減少傾向であったが、2015 年に出願

件数が 4.31 倍(47 件から 203 件)へと急増している。この理由は欧州国籍出願人の大

幅な増加(18 件から 140 件)が挙げられる。特にイマティクス・バイオテクノロジーズ

という一企業からの出願(92 件)が多くを占めている。また、米国籍出願人や中国籍出

願人においても出願件数が増加しており、2016 年においても暫定値ながら 2014 年の出

願件数を上回っている。シェアは欧州国籍出願人 38.8%、米国籍出願人 28.7%、日本国籍

出願人 15.1%、中国籍出願人 11.9%となっている。

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- 75 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 9-f-2.タンパク質ワクチン

72

52

28

45

3933

25

32

30 2823 28

2527

66

0

10

20

30

40

50

60

70

80

0

10

20

30

40

50

60

70

80

200

2

200

3

200

4

200

5

200

6

200

7

200

8

200

9

201

0

201

1

201

2

201

3

201

4

201

5

201

6

合計

ファミリー件数

出願年( 優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計

優先権主張

2002-2016年

出願人国籍(地域)

日本国籍

36件6.5%

米国籍

195件35.3%

欧州国籍

142件25.7%

中国籍

113件20.4%

韓国籍

19件3.4%

その他

48件8.7%

合計

553件

注:2015 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で、全データを反映していない

可能性がある。

タンパク質ワクチンはペプチドワクチン(図 9-f-1)と比較して出願件数が少なく、

かつ減少傾向にある。2016 年に中国籍出願人が突出した件数を出願しており、図 9-f-1

(ペプチドワクチン)とは異なり特定の企業による特許出願が多いという傾向はみられ

ない。シェアは米国籍出願人 35.3%、欧州国籍出願人 25.7%、中国籍出願人 20.4%、日本

国籍出願人 6.5%となっている。

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- 76 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 9-f-3.抗原提示細胞ワクチン

43

30

33

1915

32

23

20

26

2125

30

28

74

26

0

10

20

30

40

50

60

70

80

0

10

20

30

40

50

60

70

80

200

2

200

3

200

4

200

5

200

6

200

7

200

8

200

9

201

0

201

1

201

2

201

3

201

4

201

5

201

6

合計

ファミリー件数

出願年( 優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計

優先権主張

2002-2016年

出願人国籍(地域)

日本国籍

82件18.4%

米国籍

129件29.0%

欧州国籍

78件17.5%

中国籍

105件23.6%

韓国籍

23件5.2%

その他

28件6.3%

合計

445件

注:2015 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で、全データを反映していない

可能性がある。

抗原提示細胞ワクチンにおける全体の傾向は 15~43 件程度で推移していたが、2015

年に中国籍出願人が 45 件もの特許出願を行っており、全体の出願件数が急増している。

シェアは米国籍出願人 29.0%、欧州国籍出願人 17.5%、中国籍出願人 23.6%、日本国籍出

願人 18.4%となっている。

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- 77 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 9-g-1.バイオマーカー

6 9

15

3

6

17

6

13

16 15 1420

28 2730

0

10

20

30

40

50

0

10

20

30

40

50

200

2

200

3

200

4

200

5

200

6

200

7

200

8

200

9

201

0

201

1

201

2

201

3

201

4

201

5

201

6

合計

ファミリー件数

出願年( 優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計

優先権主張

2002-2016年

出願人国籍(地域)

日本国籍

14件6.2%

米国籍

123件54.7%

欧州国籍

66件29.3%

中国籍

5件2.2%

韓国籍

4件1.8%

その他

13件5.8%

合計

225件

注:2015 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で、全データを反映していない

可能性がある。

バイオマーカーは免疫調節、養子免疫療法、腫瘍溶解性ウイルス療法、がんワクチン

療法の全てにおける、臨床応用に関する技術の患者選別法に区分されるものを集計した

ものである。出願件数は 2012 年以降に緩やかながら増加傾向を示している。シェアは米

国籍出願人 54.7%、欧州国籍出願人 29.3%、日本国籍出願人 6.2%、中国籍出願人 2.2%と

なっている。

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- 78 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 9-g-2. ネオアンチジェン(ネオエピトープ)

4 5 53

8

3 1 2

8

35 4

11

24

35

0

5

10

15

20

25

30

35

40

0

5

10

15

20

25

30

35

40

200

2

200

3

200

4

200

5

200

6

200

7

200

8

200

9

201

0

201

1

201

2

201

3

201

4

201

5

201

6

合計

ファミリー件数

出願年( 優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計

優先権主張

2002-2016年

出願人国籍(地域)

日本国籍

10件8.3%

米国籍

59件48.8%

欧州国籍

29件24.0%

中国籍

17件14.0%

韓国籍

2件1.7%

その他

4件3.3%

合計

121件

注:2015 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で、全データを反映していない

可能性がある。

ネオアンチジェンは、養子免疫療法、がんワクチン療法の中の「ネオエピトープ」に

関連する技術区分を集計したものである。出願件数は 2014 年以降急激に増加している。

シェアは米国籍出願人 48.8%、欧州国籍出願人 24.0%、中国籍出願人 14.0%、日本国籍出

願人 8.3%となっている。

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- 79 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 9-h.免疫チェックポイント阻害療法における併用剤

1 1 5 30 0

30

36

8

20

37

59

74

0

20

40

60

80

100

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

200

2

200

3

200

4

200

5

200

6

200

7

200

8

200

9

201

0

201

1

201

2

201

3

201

4

201

5

201

6

合計

ファミリー件数

出願年( 優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計

優先権主張

2002-2016年

出願人国籍(地域)

日本国籍

5件2.3%

米国籍

147件66.8%

欧州国籍

44件20.0%

中国籍

11件5.0%

韓国籍

1件0.5%

その他

12件5.5%

合計

220件

注:2015 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で、全データを反映していない

可能性がある。

2013 年を境に免疫チェックポイント阻害療法と併用剤に関する特許出願が急激に増

加している。シェアに関しては、米国籍出願人 66.8%、欧州国籍出願人 20.0%、中国籍出

願人 5.0%、日本国籍出願人 2.3%となっている。

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- 80 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

技術区分別-技術区分別 ファミリー件数集計を図 10 に示す。

図 10 技術区分別-技術区分別 ファミリー件数集計(出願年(優先権主張年):2002~2016 年)

図 10-a.技術区分(大項目)別-技術区分(併用剤)別ファミリー件数集計(出願年(優先権主

張年):2002~2016 年)

13

5

28

2

5

32

2

4

50

31

68

10

20

81

12

36

44

23

61

11

13

85

10

14

16

7

21

4

6

215

3

7

9

6

15

2

28

5

1

2

2

4

5

1

13

23

125

2

2

4

2

5

1

2

6

1

39

13

21

2

6

6

8

38

3

8

40

1 2

544

1

主剤

技術区分

(併用剤+

アジュバント)

アジュバント

との混合

その他

温熱療法

がんワクチン

腫瘍溶解性

ウイルス

養子免疫療法

免疫増強

免疫抑制阻害

化学療法

放射線療法

A(免疫チェックポイント

阻害療法)

A(その他免疫抑制阻害

療法)

A(免疫増強)

B養子免疫療法

C腫瘍溶解性ウイルス

療法

Dがんワクチン療法

A(CTLA-4)

A(PD系)

技術区分(大項目)別-技術区分(併用剤)別ファミリー件数により、がん免疫療法

以外の化学療法と、免疫チェックポイント阻害療法、免疫増強、がんワクチン療法との

併用が多く取り組まれていることが明らかになった。また、がん免疫療法との併用につ

いては、免疫増強とがんワクチン療法の併用が主剤、副剤問わず多く取り組まれている

ことや、免疫抑制阻害と免疫チェックポイント阻害療法、免疫増強、がんワクチン療法

の併用が多く取り組まれていることが示された。一方、養子免疫療法、腫瘍溶解性ウイ

ルス療法について、併用療法の出願件数が少ないことが示された。

主剤が免疫チェックポイント阻害療法であり副剤ががんワクチンである特許出願件数

は 13 件、主剤ががんワクチン療法であり副剤が免疫抑制阻害である特許出願件数のうち、

副剤が免疫チェックポイント阻害療法である特許出願件数は 85 件中 56 件であったこと

から、免疫チェックポイント阻害療法とがんワクチン療法の併用療法に関する特許出願

件数は全体で 69 件(7.3%)であった。

特許出願件数に着目すると、がんワクチン療法におけるアジュバントとの混合(544

件)や免疫増強との併用(215 件)、免疫増強におけるがんワクチン療法との併用(125

件)に関する件数が多くなっている。

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- 81 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 10-b.国籍別-技術区分(大項目)別-技術区分別(併用)併用剤集計

A.免疫調節

6

3

1

1

7

2

28

86

90

24

21

2

101

1

44

9

30

20

13

5

1

27

2

19

2

3

2

4

1

6

1

5

1

9

2

5

13

7

1

9

5

併用先

出願人国籍(地域)

日本

米国

欧州

中国

韓国

その他

放射線療法

化学療法

免疫抑制阻害

免疫増強

養子免疫療法

腫瘍溶解性

ウイ ルス療法

がんワクチン

療法

温熱療法

その他

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

B.養子免疫療法

1

1

5

5

2

1

3

5

1

1

1

1

2

1

1

1 1

併用先

出願人国籍(地域)

日本

米国

欧州

中国

韓国

その他

放射線療法

化学療法

免疫抑制阻害

免疫増強

養子免疫療法

腫瘍溶解性

ウイ ルス療法

がんワクチン

療法

温熱療法

その他

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- 83 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

C.腫瘍溶解性ウイルス療法

1

1

3

3

7

7

2

1

1

2

6

4

2

1

2

1

4

1

1

2

2

2

1

1

併用先

出願人国籍(地域)

日本

米国

欧州

中国

韓国

その他

放射線療法

化学療法

免疫抑制阻害

免疫増強

養子免疫療法

腫瘍溶解性

ウイ ルス療法

がんワクチン

療法

温熱療法

その他

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- 84 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

D.がんワクチン療法

2

6

1

1

1

21

39

57

112

7

3

3

5

1

5

30

16

25

2

1

4

1

5

4

58

18

1

3

5

5

3

11

1

併用先

出願人国籍(地域)

日本

米国

欧州

中国

韓国

その他

放射線療法

化学療法

免疫抑制阻害

免疫増強

養子免疫療法

腫瘍溶解性

ウイ ルス療法

がんワクチン

療法

温熱療法

その他

免疫調節と免疫調節の併用は多く認められるが、その他の領域においては、主剤とは

異なる領域のがん免疫療法との組み合わせによる併用療法が、盛んに特許出願されてい

る。国籍別の出願人動向に目を向けると、免疫調節とがんワクチン療法のいずれかを主

剤とする併用療法に関しては、米国籍出願人からの出願が も多く、次いで欧州国籍出

願人が多いという傾向がみられる。ただし、主剤をがんワクチンとした際の免疫増強と

の併用に関しては、中国籍出願人からの特許出願も多くなっている。

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 10-c.免疫調節-国籍別-技術区分(薬効成分)別集計

54

37

82

31

24

6

4

5

40

558

207

371

215

106

17

17

20

71

247

124

269

72

56

7

7

10

26

118

57

64

32

21

2

1

3

31

14

18

49

24

9

3

8

1

10

73

46

91

33

19

5

4

4

26

技術区分

出願人国籍(地域)

日本

米国

欧州

中国

韓国

その他

抗体

タンパク質

低分子

核酸

ペプチド

細胞

細菌

ウイルス

その他

免疫調節における薬効成分は、各国とも抗体が比較的多い状況にある。また、低分子、

核酸、タンパク質等の薬効成分に関する出願も多くなされている。国籍別の出願人動向

としては、米国籍出願人がいずれの技術区分でも も多く、抗体、タンパク質、低分子、

核酸、ペプチド、細胞、細菌、ウイルスについては欧州国籍出願人が続いている。

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 10-d.養子免疫療法-国籍別-技術区分(大項目 薬効に関する技術 における中項目)別集計

2

1

8

22

47

4

21

12

22

221

9

225

322

36

140

2

11

123

2

138

168

10

50

1

9

73

71

160

11

91

2

1

4

3

11

3

7

3

16

1

17

43

3

23

技術区分

出願人国籍(地域)

日本

米国

欧州

中国

韓国

その他

癌特異的に

発現する抗原や

ネオエピトープの探索

抗原受容体の探索

抗原受容体の

配列設計・改変

オン・オフスイッチ

導入遺伝子・ターゲット

エフェクター細胞

細胞の機能改変

細胞の製造技術

(自動培養、大量生産、

性質解析のアッセイ法等)等

養子免疫療法の技術区分において、導入遺伝子・ターゲットや、エフェクター細胞、

抗原受容体の配列設計・改変、細胞の製造技術等の技術開発に特徴を有する特許出願は、

米国籍出願人、欧州国籍出願人、中国籍出願人が中心となっている。

図 10-e.養子免疫療法-国籍別-技術区分(大項目 製剤化に関する技術 における中項目)別集

229

1

750

2 3

技術区分

出願人国籍(地域)

日本

米国

欧州

中国

韓国

その他

賦形剤

剤形

容器

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

製剤化に関する特許出願は少ない傾向にある。剤形については、中国籍出願人、米国

籍出願人に特許出願が集中している。

技術区分別 ファミリー件数推移を図 11 に示す。

図 11 技術区分別 ファミリー件数推移(出願年(優先権主張年):2002~2016 年)

図 11-a.免疫チェックポイント阻害療法の各項目

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

200

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

ファミリー件数

出願年(優先権主張年)

CTLA-4阻害 PD系阻害 LAG-3阻害TIM-3阻害 TIGIT阻害 BTLA阻害KIR阻害 VISTA阻害 B7-H3阻害B7-H4阻害 その他チェックポイント阻害

優先権主張

2002-2016年

A.免疫調節⇒免疫チェックポイント阻害

注:2015 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で、全データを反映していない

可能性がある。

PD 系阻害に関するファミリー出願は 2012 年、CTLA-4 阻害に関するファミリー出願は

2014 年を境に増加している。また、その他免疫チェックポイント阻害関連のファミリー

出願は 2014 年より増加傾向にある。一方、次世代の免疫チェックポイント阻害における

ターゲットとして、TIM-3 阻害、TIGIT 阻害等が挙げられるが、PD 系阻害や CTLA-4 阻害

のような急激な増加傾向はみられない。

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 11-b.免疫調節-その他免疫抑制阻害療法の各項目

0

5

10

15

20

25

30

35

40

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

ファミリー件数

出願年(優先権主張年)

A2AR阻害 IDO阻害TGFβ阻害 CSF1R阻害Arginase阻害 PI3K阻害IFN-γ阻害 KIR阻害CoX2阻害 Treg阻害MDSC/TAM/CAF阻害 抑制性サイトカイン(TGFβ,IL-10)阻害

優先権主張

2002-2016年

A.免疫調節⇒その他免疫抑制阻害

注:2015 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で、全データを反映していない

可能性がある。

その他免疫抑制阻害療法の各項目では、どの項目にも分類されないその他阻害が多く

を占める。IDO 阻害が 2010 年以降増加している。

図 11-c.免疫増強の各項目

0

20

40

60

80

100

120

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

ファミリー件数

出願年(優先権主張年)

STINGアゴニスト TLRアゴニスト

サイトカイン・ケモカイン(抑制性を除く) 免疫代謝増強剤(メトホルミン)その他

優先権主張

2002-2016年

A.免疫調節⇒免疫増強

注:2015 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で、全データを反映していない

可能性がある。

免疫増強の各項目では、どの項目にも分類されないその他の項目が多くを占める。次

いで、サイトカイン・ケモカイン(抑制性を除く)と TLR アゴニストが拮抗している。

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目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 11-d.免疫調節―その他の各項目

0

5

10

15

20

25

30

35

40

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

ファミリー件数

出願年(優先権主張年)

新規標的分子探索 薬効成分の改変⇒修飾薬効成分の改変⇒ヒト化 薬効成分の改変⇒多機能性薬効成分の改変⇒その他 薬効成分の製造技術⇒生産株薬効成分の製造技術⇒精製方法 薬効成分の製造技術⇒その他

優先権主張

2002-2016年

A.免疫調節⇒その他

注:2015 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で、全データを反映していない

可能性がある。

免疫調節-薬効成分に関する技術のその他の各項目(新規標的分子探索、薬効成分の

改変、薬効成分の製造技術)では、2014 年以降、薬効成分の改変における多機能性の項

目の増加が顕著である。

図 11-e.臨床応用に関する技術-併用剤の各項目

0

20

40

60

80

100

120

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

ファミリー件数

出願年(優先権主張年)

放射線療法 がん免疫療法以外の化学療法がん免疫療法-免疫調節-免疫抑制阻害 がん免疫療法-免疫調節-免疫増強がん免疫療法-養子免疫療法 がん免疫療法-腫瘍溶解性ウイルスがん免疫療法-がんワクチン 温熱療法その他 アジュバントとの混合

優先権主張

2002-2016年

臨床応用に関する技術-併用剤 など

注:2015 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で、全データを反映していない

可能性がある。

2013 年を境に、免疫抑制阻害療法との併用や、がん免疫療法以外の化学療法との併用

に関する特許出願件数が大きく増加している。

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 11-f.ウイルスの種類の各項目

0

10

20

30

40

50

60

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

ファミリー件数

出願年(優先権主張年)

アデノウイルス アデノ随伴ウイルス ワクシニアウイルスレオウイルス 単純ヘルペスウイルス1型 パルボウイルス麻疹ウイルス コクサッキーウイルス Newcastle病ウイルス水疱性口内炎ウイルス その他ウイルス

優先権主張

2002-2016年

C.腫瘍溶解性ウイルス⇒ウイルスの種類

注:2015 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で、全データを反映していない

可能性がある。

腫瘍溶解性ウイルス療法におけるウイルスの種類では、アデノウイルスに関する出願

が も多く、その他ウイルス、単純ヘルペスウイルス 1 型、ワクシニアウイルスが続い

ている。

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 12 は、薬効成分の改変に関する特許出願を対象に、国籍毎に出願されている特許を

薬効成分の種類と薬効成分の改変の種類によって分類し、サンキ―ダイアグラム117で示

したものである。図 12-a は、薬効成分の種類と薬効成分の改変の両方に該当する特許を

対象とした解析であること、図 12-b は、PD 系阻害と薬効成分の種類の両方に該当する

特許を対象とした解析であることに留意をする必要がある。

図 12 出願人国籍別-技術区分別(小分類)-技術区分別(小分類)解析図及び出願人国籍別フ

ァミリー件数比率

図 12-a.薬効成分の種類-薬効成分の改変(免疫調節:出願年(優先権主張年):2002~2016 年)

薬効成分の種類

細胞ウイルスその他

出願⼈国籍(地域) 薬効成分の改変

抗体

タンパク質

多機能性

修飾

ヒト化

その他改変

核酸

中国

欧州

⽶国

⽇本

その他

韓国

低分⼦

ペプチド

日本国籍

4件4.8%

米国籍

36件42.9%

欧州国籍

28件33.3%

中国籍

11件13.1%

韓国籍

1件1.2%

その他

4件4.8%

合計

84件

免疫調節において抗体を薬効成分とし、かつ薬効成分の改変の種類として多機能性に

関する特許出願のシェアが多いことが示された。また、出願人国籍シェアは米国籍出願

人が 42.9%、欧州国籍出願人が 33.3%、中国籍出願人が 13.1%、日本国籍出願人が 4.8%

を占めている。

117 工程間における流量を示す図のこと。

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 12-b.PD 系阻害-薬効成分の種類(PD 系阻害:出願年(優先権主張年):2002~2016 年)

薬効成分の種類

核酸細胞

細菌ウイルスその他

出願⼈国籍(地域) PD系阻害

PD系阻害

⽶国

出願⼈国籍(地域)

中国

⽇本

その他

韓国

欧州

抗体

タンパク質

ペプチド

低分⼦

既に上市されている PD 系阻害剤(抗 PD-1 抗体、抗 PD-L1 抗体)の薬効成分の種類は

抗体であり、上記の解析図においても薬効成分の種類を抗体とする特許出願シェアが多

い。その一方で、米国籍出願人を中心に、PD 系阻害剤の抗体以外の薬効成分として低分

子、タンパク質、ペプチド等に関する出願も行われている。日本国籍出願人については、

抗体以外の薬効成分に対する出願はわずかである。

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

第4節 出願人別動向

1.出願人別ファミリー件数上位ランキング

(1)全体

日米欧中韓その他への出願件数の出願人別ランキングとして、出願人別ファミリー件

数上位 20 位までを表 30 に示す。

表 30 出願人別ファミリー件数上位ランキング(日米欧中韓その他への出願:全体 出願年(優

先権主張年):2002~2016 年)

順位 出願人名称 ファミリー

件数

1 米国保健福祉省(米国) 258

2 イマティクス・バイオテクノロジーズ(ドイツ) 193

3 ノバルティス(スイス) 148

4 ロシュ(スイス) 126

5 グラクソ・スミスクライン(イギリス) 124

6 ペンシルベニア大学(米国) 122

7 アストラゼネカ(イギリス) 117

8 ダナ・ファーバーがん研究所(米国) 99

9 フランス国立保健医学研究所(フランス) 97

10 ブリストル・マイヤーズスクイブ(米国) 95

11 ファイザー(米国) 82

12 メモリアル・スローン・ケタリングがんセンター(米国) 76

13 中国人民解放軍軍事医学科学院(中国) 75

14 中国科学院(中国) 73

15 独メルク(ドイツ) 72

16 テキサス大学(米国) 71

17 セルジーン(米国) 70

18 米メルク(米国) 68

19 カリフォルニア大学(米国) 66

20 オンコセラピー・サイエンス(日本) 64

全体としては大手製薬企業や、主要な大学・研究機関が上位を占めているが、バイ

オベンチャーとして、イマティクス・バイオテクノロジーズ、オンコセラピー・サイ

エンスもランクインしている。

1 位の米国保健福祉省は米国における政府機関の 1 つであり、米国立衛生研究所、

及びその傘下の米国立がん研究所を所管している。米国立がん研究所の領域横断的な

研究成果が上部組織である米国保健福祉省名義で出願されており、ファミリー件数が

多くなっている。

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

(2)技術区分別(大項目)-出願人別ファミリー件数上位ランキング

技術区分別の出願人別出願件数上位ランキング上位 10 位を技術区分「免疫調節(免

疫チェックポイント阻害療法・その他免疫抑制阻害療法・免疫増強)」「養子免疫療法」

「腫瘍溶解性ウイルス療法」「がんワクチン療法」別に、表 31 に示す。

表 31 技術区分別-出願人別ファミリー件数上位ランキング(日米欧中韓その他への出願:技術

区分別 出願年(優先権主張年):2002~2016 年)

表 31-a.免疫チェックポイント阻害療法

順位 出願人名称 ファミリー

件数

1 ブリストル・マイヤーズスクイブ(米国) 72

2 ロシュ(スイス) 51

3 米メルク(米国) 28

4 ダナ・ファーバーがん研究所(米国) 25

4 ドクター レディーズ ラボラトリーズ(インド) 25

6 アストラゼネカ(イギリス) 24

7 ファイザー(米国) 21

8 インサイト(米国) 16

8 ノバルティス(スイス) 16

10 ジョンズ・ホプキンズ大学(米国) 13

当該領域では、市場動向調査でも抗 PD-1 抗体、抗 PD-L1 抗体、抗 CTLA-4 抗体の研

究開発に精力的に取り組んでいることが明らかとなったブリストル・マイヤーズスク

イブ、ロシュ、米メルク、アストラゼネカ、ファイザーの 5 社(第 2 章第 1 節 1)が

ランクインしている。4 位のドクター レディーズ ラボラトリーズは子会社アウリジ

ーンで PD-L1 を標的とする低分子薬の開発を、8 位のインサイトは免疫チェックポイ

ント阻害療法の併用剤としての研究開発を進めている。

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

表 31-b.その他免疫抑制阻害療法

順位 出願人名称 ファミリー

件数

1 アストラゼネカ(イギリス) 59

2 ノバルティス(スイス) 30

3 アムジェン(米国) 25

4 グラクソ・スミスクライン(イギリス) 25

5 アクテリオン(スイス) 24

6 米国保健福祉省(米国) 24

7 ロシュ(スイス) 19

8 米メルク(米国) 15

9 インサイト(米国) 14

10 独メルク(ドイツ) 14

その他免疫抑制阻害療法では、大手民間製薬企業が出願人ランキングの上位を占めて

いる。この理由としては、当該区分の医薬候補品は IDO 阻害剤である KHK2455118、

indoximod119、navoximod120、A2AR 阻害剤である AZD4635(HTL-1071)121等、低分子である

ことが多く、大手民間製薬企業が得意とする領域であるためと推測される。

表 31-c.免疫増強

順位 出願人名称 ファミリー

件数

1 アストラゼネカ(イギリス) 55

2 米国保健福祉省(米国) 44

3 ファイザー(米国) 37

4 アイデラ・ファーマシューティカルズ(米国) 31

5 スリーエム(米国) 30

6 ノバルティス(スイス) 30

7 グラクソ・スミスクライン(イギリス) 29

8 アクテリオン(スイス) 25

9 大日本住友製薬(日本) 23

10 ロシュ(スイス) 21

118 協和発酵キリン パイプライン

https://www.kyowa-kirin.co.jp/research_development_production/pipeline/index.html

(2019.02.15 アクセス) 119PubChem https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/ 1-Methyl-D-tryptophan#section=Top

(2019.02.15 アクセス) 120PubChem https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Navoximod (2019.02.15 アクセス) 121 PubChemhttps://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/azd4635#section=Top (2019.02.15 アクセス)

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

免疫増強では、その他免疫抑制阻害療法と同様に大手民間製薬企業が出願人ランキン

グの上位を占めている。この理由としては、当該区分の医薬候補品も STING アゴニスト

である ADU-S100122、amidobenzimidazole123、TLR アゴニストである monophosphoryl

lipid A124等の低分子であることが多く、大手民間製薬企業が得意とする領域であるた

めと推測される。

日本国籍出願人として、TLR7 アゴニスト等の開発を進めている大日本住友製薬125が

ランキングの 9 位に入っている。

表 31-d.養子免疫療法

順位 出願人名称 ファミリー

件数

1 ペンシルベニア大学(米国) 78

2 米国保健福祉省(米国) 71

3 セルジーン(米国) 43

3 セレクティス(フランス) 43

5 ノバルティス(スイス) 40

6 メモリアル・スローン・ケタリングがんセンター(米国) 22

7 ベイラー医科大学(米国) 17

8 ダナ・ファーバーがん研究所(米国) 16

8 フレッド・ハッチンソンがん研究センター(米国) 16

10 アストラゼネカ(イギリス) 15

養子免疫療法では、Kymriah の開発を行ったペンシルベニア大学とノバルティスや、

Yescarta の開発を行った米国立がん研究所のファミリー出願を含む米国保健福祉省、

ジュノ セラピューティクスを買収したセルジーン(第 2 章第 2 節 2)、武田薬品工業と

CAR-T 細胞療法の開発で提携したメモリアル・スローン・ケタリングがんセンター(第

2 章第 2 節 2)等、遺伝子導入型 T 細胞療法の研究開発を進めている出願人がランキン

グの上位に含まれている。

122 Aduro Biotech パイプライン

https://www.aduro.com/pipeline/clinical-trials/ (2019.02.20 アクセス) 123Naturevolume 564, pages439–443 (2018) https://www.nature.com/articles/s41586-018-0705-y (2019.02.20 アクセス) 124P J Immunol June 1, 2018, 200 (11) 3777-3789

http://www.jimmunol.org/content/200/11/3777.long (2019.02.20 アクセス) 125 大日本住友製薬 主な開発品のプロフィール

https://www.ds-pharma.co.jp/rd/clinical/pdf/pro20190131.pdf (2019.02.20 アクセス)

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

表 31-e.腫瘍溶解性ウイルス療法

順位 出願人名称 ファミリー

件数

1 オンコリティクス・バイオテク(カナダ) 39

2 バイエル(ドイツ) 38

3 ドイツがん研究センター(ドイツ) 14

4 中国人民解放軍軍事医学科学院(中国) 13

5 セルジェネシス(米国) 12

6 メモリアル・スローン・ケタリングがんセンター(米国) 11

6 米国保健福祉省(米国) 11

6 テキサス大学(米国) 11

9 中国科学院(中国) 10

9 ウェルスタット・セラピューティクス(米国) 10

9 ヨンセ大学(韓国) 10

1 位にバイオベンチャーであるオンコリティクス・バイオテクノロジーズがランクイ

ンしている。同社は腫瘍溶解性レオウイルスを軸とした研究開発を実施しており、

Keytruda や化学療法との併用に関する臨床開発を実施している126。

同ランキングには中国の出願人も 2 者ランクインしている。他の技術区分と比較し、

出願人上位のファミリー件数は少ない傾向にある。

表 31-f.がんワクチン療法

順位 出願人名称 ファミリー

件数

1 イマティクス・バイオテクノロジーズ(ドイツ) 173

2 米国保健福祉省(米国) 89

3 オンコセラピー・サイエンス(日本) 64

4 グラクソ・スミスクライン(イギリス) 51

5 フランス国立保健医学研究所(フランス) 45

6 中国人民解放軍軍事医学科学院(中国) 39

7 独メルク(ドイツ) 38

8 イムノコア(英国) 37

9 アダプティミューン(英国) 36

10 ペンシルベニア大学(米国) 29

1 位にドイツのバイオベンチャーであるイマティクス・バイオテクノロジーズ、2 位

に米国保健福祉省、3 位に日本のバイオベンチャーであるオンコセラピー・サイエンス

126 オンコリティクス・バイオテクノロジーズ ホームページ

https://www.oncolyticsbiotech.com/technology (2019.02.15 アクセス)

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

がランクインしている。また、中国の出願人も 1 者ランクインしている。他の技術区分

と比較し、出願人上位のファミリー件数は多い状況にある。

2.注目出願人別

がん免疫療法に関する注目出願人として、各技術区分の出願人ランキング上位から 15

者を選定した。各注目出願人の、各技術区分に対する出願状況を図 13 に示す。

大手製薬企業である、ブリストル・マイヤーズスクイブ、ロシュ、米メルク、アスト

ラゼネカはがん免疫療法の幅広い各技術区分において出願を行っている。一方、養子免

疫療法におけるセレクティス、腫瘍溶解性ウイルス療法におけるオンコリティクス・バ

イオテク、がんワクチン療法におけるイマティクス・バイオテクノロジーズやオンコセ

ラピー・サイエンスのように、バイオベンチャーはそれぞれに強みのある技術区分に特

化する形で出願を進めている。

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 13 注目出願人別-技術区分別出願件数(全体 出願年(優先権主張年):2002~2016 年)

55

36

28

6

16

3

3

39

8

7

15

55

30

25

8

7

24

10

8

11

5

53

30

5

8

4

44

1

1

23

11

15

40

2

43

78

71

43

12

9

1

7

4

1

11

39

28

9

18

2

14

4

1

29

89

3

173

64

8

注目出願人

技術区分

ブリストル・

マイヤーズスクイブ

ロシュ

米メルク

アストラゼネカ

ノバルティス

アムジェン

セルジーン

ペンシルベニア大学

米国保健福祉省

セレクティス

オンコリティクス・

バイオテク

バイエル

イマティクス・

バイオテクノロジーズ

オンコセラピー・

サイエンス

大日本住友製薬

がんワクチン療法

腫瘍溶解性

ウイルス療法

養子免疫療法

免疫増強

その他

免疫抑制阻害療法

免疫チェックポイント

阻害療法

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

第5章 がん免疫療法の研究開発動向

第1節 調査対象

1.調査対象

調査対象とする非特許文献(論文・学会誌、以下、「論文」という)は、英語で書かれ

たがん免疫療法関連技術に関する原著論文とし、研究開発動向の解析を行った。総説、

解説記事、学会発表抄録、実験のプロトコール等は調査の対象外とした。時期的範囲と

しては、論文発表年ベースで 2002 年~2017 年を対象とした。

2.使用したデータベース

「がん免疫療法」に関する論文を抽出するために、がん免疫療法に関連するキーワー

ド等を組み合わせて検索を行った。

使用したデータベースは、Clarivate Analytics が提供する Derwent Innovation にお

ける学術文献検索データベース Web of Science(Web of Science は Clarivate Analytics

の登録商標である)を用い、2018 年 11 月 14 日に検索を実施した。検索式は基本的に特

許検索に用いたものと同等となるように設定した。

3.分類及び解析に当たっての留意点

分類及び解析に当たっての留意点を以下にまとめる。

(1)分類の付与

フラグの付与ルールは、1 つの論文に対し、「薬効成分に関する技術」において、1

つ以上にフラグを付与することとした。

(2)解析の対象

調査対象期間中に発表された論文であっても、データベース検索実施日時点でデータ

ベースに収載されていなかった論文、データベースの収録対象でない雑誌に発表された

論文、及び抄録が掲載されていない論文に関しては、調査対象となっていないことに留

意が必要である。

(3)研究者所属機関とその国籍

「研究者所属機関」別の論文発表件数ランキングにおいて、「研究者所属機関」とは

「筆頭著者所属機関」を、「研究者所属機関の国籍」とは「筆頭著者所属機関の所在国

籍」を表している。複数の研究機関による共同研究の場合、その論文の筆頭著者(first

author)の所属機関で代表している。所属機関については、名寄せを行った。

「欧州国籍」の定義は、特許動向調査と同様、EPC 加盟の 38 か国(2018 年 8 月時点:

アルバニア(AL)、オーストリア(AT)、ベルギー(BE)、ブルガリア(BG)、スイス(CH)、

キプロス(CY)、チェコ(CZ)、ドイツ(DE)、デンマーク(DK)、エストニア(EE)、ス

ペイン(ES)、フィンランド(FI)、フランス(FR)、イギリス(GB)、ギリシャ(GR)、

クロアチア(HR)、ハンガリー(HU)、アイルランド(IE)、アイスランド(IS)イタリ

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本編

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

ア(IT)、リヒテンシュタイン(LI)、リトアニア(LT)、ルクセンブルク(LU)、ラトビ

ア(LV)、モナコ(MC)、マケドニア旧ユーゴスラビア(MK)、マルタ(MT)、オランダ(NL)、

ノルウェー(NO)、ポーランド(PL)、ポルトガル(PT)、ルーマニア(RO)、セルビア(RS)、

スウェーデン(SE)、スロベニア(SI)、スロバキア(SK)、サンマリノ(SM)、トルコ(TR))

とした。

第2節 全体動向

2002 年~2017 年(発行年ベース)に世界で発表された「がん免疫療法」に関する論文

を抽出するために、がん免疫療法関連技術に関連するキーワード等を組み合わせて検索

を行った。「がん免疫療法」に関する論文かどうかを判断し、技術分類を付与した。

研究者(筆頭著者)所属機関国籍別論文発表件数を表 32 に、論文発表件数推移及び論

文発表件数比率(研究者所属機関国籍別)を図 14 に示す。

表 32 研究者(筆頭著者)所属機関国籍別論文発表件数(発行年:2002~2017 年)

研究者所属機関国籍

(地域) 国(地域)

論文発表

件数

研究者所属機関国籍

(地域) 国(地域)

論文発表

件数

1 米国 米国 6,491 15 スウェーデン 欧州 197

2 中国 中国 2,497 16 ベルギー 欧州 182

3 日本 日本 1,572 17 イラン その他 142

4 ドイツ 欧州 1,362 18 イスラエル その他 140

5 イタリア 欧州 621 19 フィンランド 欧州 134

6 イギリス 欧州 532 20 インド その他 132

7 フランス 欧州 518 21 オーストリア 欧州 109

8 韓国 韓国 513 22 ポーランド 欧州 109

9 カナダ その他 495 23 デンマーク 欧州 106

10 オランダ 欧州 422 24 ブラジル その他 102

11 スペイン 欧州 257 25 アルゼンチン その他 76

12 スイス 欧州 256 26 ノルウェー 欧州 73

13 オーストラリア その他 256 (以下略)

14 台湾 その他 247 合計 18,244

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 14 論文発表件数推移及び論文発表件数比率(研究者所属機関国籍別)(発行年:2002~2017

年)

637 685 773

835 992 933

1,077

1,081

1,089

1,147

1,251

1,407

1,316

1,541

1,728

1,752

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

1,800

2,000

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

1,800

2,00020

02

200

3

200

4

200

5

200

6

200

7

200

8

200

9

201

0

201

1

201

2

201

3

201

4

201

5

201

6

201

7

合計

発表件数

論文発表年

論文発表

2002-2017年

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計

研究者国籍(地域)

日本国籍

1,572件8.6%

米国籍

6,491件35.6%

欧州国籍

5,160件28.3%

中国籍

2,497件13.7%

韓国籍

513件2.8%

その他

2,011件11.0%

合計

18,244件

研究者(筆頭著者)所属機関国籍を以降、例えば米国籍研究者と記す。

がん免疫療法に関する論文発表件数(発表年:2002 年~2017 年)は 18,244 件であっ

た。米国籍研究者が 6,491 件で 2 位の中国籍研究者(2,497 件)、3 位の日本国籍研究者

(1,572 件)、4 位のドイツ国籍研究者(1,362 件)を大きく引き離している。5 位のイ

タリア以下は 700 件未満であった。日米欧中韓以外の国(地域)ではカナダ、台湾、オ

ーストラリア国籍(地域)が 250 件以上で上位に入っている。

また、年次推移でみると全期間にわたり増加傾向にある。日本国籍研究者が 8.6%であ

るのに対し、米国籍研究者は 35.6%、欧州国籍研究者は 28.3%、中国籍研究者は 13.7%で

あった。2012 年以降の中国籍研究者の論文発表件数の増加が顕著であり、2017 年には

2012 年の約 2 倍になっている。

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

第3節 技術区分別動向

日米欧中韓その他への論文発表の技術区分別論文発表件数推移を図 15 に示す。

図 15 技術区分別論文発表件数推移(発行年:2002~2017 年)

16 18 12 26 23 25 23 22 2248 49 68 91 140 269 207

73 77 87 95 102 113 149 150 178 178 194 237 240 247 241 304

58 60 92 95 115 97 102 145 115 108 138 163 175 199 201 201

47 50 47 57 60 74 87 94 102 102 121 162 125 151 206 203

100 144 157 172 215 209 223 228 248 231 287 305 274 302 296 280

338 334 378 385 474 407 487 424 407 462 439 438 405 479 465 503

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

2017

2018

論文発表年

A(免疫チェックポイント阻害

療法)

A(その他免疫抑制阻害療

法)

A(免疫増強)

B養子免疫療法

C腫瘍溶解性ウイルス療法

Dがんワクチン療法

論文発表2002-2017年

技術区分

2002 年~2017 年にかけて、がん免疫療法に関する全技術区分において増加傾向であり、

特には 2010 年以降の免疫チェックポイント阻害療法の増加が顕著である。

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

技術区分別の論文発表件数(研究者所属機関国籍別)を図 16 に示す。

図 16 技術区分別-所属機関国籍別論文発表件数(研究者所属機関国籍別)(発行年:2002~2017

年)

79(5.1%)

247(15.9%)

141(9.1%)

140(9.0%)

244(15.7%)

699(45.1%)

484(7.6%)

861(13.5%)

664(10.4%)

760(11.9%)

1,435(22.4%)

2,193(34.3%)

220(4.3%)

680(13.4%)

590(11.6%)

460(9.1%)

949(18.7%)

2,174(42.9%)

186(7.5%)

442(17.9%)

292(11.8%)

174(7.0%)

535(21.6%)

843(34.1%)

12(2.3%)

99(19.3%)

74(14.4%)

27(5.3%)

121(23.6%)

180(35.1%)

78(4.0%)

336(17.1%)

303(15.4%)

127(6.5%)

387(19.7%)

736(37.4%)

技術区分

研究者国籍(地域)

日本

米国

欧州

中国

韓国

その他

A(免疫チェックポイント

阻害療法)

A(その他の阻害療法)

A(免疫増強)

B養子免疫療法

C腫瘍溶解性ウイルス

療法

Dがんワクチン療法

日本国籍研究者はがんワクチン療法の論文発表件数が も多い。米国籍研究者と欧州

国籍研究者はがんワクチン療法、腫瘍溶解性ウイルス療法、その他免疫抑制阻害療法の

順に多い傾向にある。

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本編

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

技術区分別の論文発表件数推移及び論文発表件数比率(研究者所属機関国籍別)を図

17 に示す。

図 17 技術区分別-論文発表件数推移及び論文発表件数比率(研究者所属機関国籍別)(発行年:

2002~2017 年)

a.免疫チェックポイント阻害療法

16 18 12

26 23 25 23 22 2248 49

68 91

140

269

207

0

50

100

150

200

250

300

0

50

100

150

200

250

300

20

02

20

03

20

04

20

05

20

06

20

07

20

08

20

09

20

10

20

11

20

12

20

13

20

14

20

15

20

16

20

17

合計

発表件数

論文発表年

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計

論文発表

2002-2017年

研究者国籍(地域)

日本国籍

79件7.5%

米国籍

484件45.7%

欧州国籍

220件20.8%

中国籍

186件17.6%

韓国籍

12件1.1%

その他

78件7.4%

合計

1,059件

CTLA-4阻害

346件32.7%

PD系阻害

506件47.8%

CTLA-4+PD系阻害

22件2.1%

CTLA-4、PD系

阻害以外

185件17.5%

合計

1,059件

免疫チェックポイント阻害療法の論文発表件数は 2013 年から 2016 年にかけて急激に

増加していたが、2017 年は減少に転じている。これは米国籍研究者からの件数が減少に

転じたことが影響している。シェアは米国籍研究者 45.7%、欧州国籍研究者 20.8%、中国

籍研究者 17.6%、日本国籍研究者 7.5%となっている。

免疫チェックポイント阻害療法のターゲット別の論文発表シェアは、CTLA-4 阻害が

32.7%、PD 系阻害が 47.8%、CTLA-4+PD 系阻害が 2.1%を占めている。

※CTLA-4+PD 系阻害:CTLA-4 阻害と PD 系阻害の両者について記載のある論文

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 17-a-1.CTLA-4 阻害

11 108

16 1611

9

13 12 17

2630 30

44

54

61

0

10

20

30

40

50

60

70

0

10

20

30

40

50

60

70

200

2

200

3

200

4

200

5

200

6

200

7

200

8

200

9

201

0

201

1

201

2

201

3

201

4

201

5

201

6

201

7

合計

発表件数

論文発表年

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計

論文発表

2002-2017年

研究者国籍(地域)

日本国籍

23件6.3%

米国籍

184件50.0%

欧州国籍

90件24.5%

中国籍

34件9.2%

韓国籍

2件0.5%

その他

35件9.5%

合計

368件

CTLA-4 阻害の論文発表件数は、2011 年以降増加傾向にある。シェアは米国籍研究者

50.0%、欧州国籍研究者 24.5%、中国籍研究者 9.2%、日本国籍研究者 6.3%となっている。

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第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 17-a-2.PD 系阻害

1 5 1 6 2 7 9 6 8

1911

3041

85

182

115

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

200

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

20020

02

200

3

200

4

200

5

200

6

200

7

200

8

200

9

201

0

201

1

201

2

201

3

201

4

201

5

201

6

201

7

合計

発表件数

論文発表年

日本 米国 欧州 中国

韓国 その他 合計

論文発表

2002-2017年

研究者国籍(地域)

日本国籍

48件9.1%

米国籍

242件45.8%

欧州国籍

99件18.8%

中国籍

96件18.2%

韓国籍

8件1.5%

その他

35件6.6%

合計

528件

PD 系阻害の論文発表件数は、特許出願と同様に免疫チェックポイント阻害の多くを占

めており、2013 年以降の免疫チェックポイント阻害療法全体の増加、2017 年の減少を牽

引している。シェアは米国籍研究者 45.8%、欧州国籍研究者 18.8%、中国籍研究者 18.2%、

日本国籍研究者 9.1%となっている。

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- 108 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 17-b.その他免疫抑制阻害療法

73 77 87 95 102113

149 150

178 178194

237 240 247 241

304

0

50

100

150

200

250

300

350

0

50

100

150

200

250

300

350

200

2

200

3

200

4

200

5

200

6

200

7

200

8

200

9

201

0

201

1

201

2

201

3

201

4

201

5

201

6

201

7

合計

発表件数

論文発表年

日本 米国 欧州 中国

韓国 その他 合計

論文発表

2002-2017年

研究者国籍(地域)

日本国籍

247件9.3%

米国籍

861件32.3%

欧州国籍

680件25.5%

中国籍

442件16.6%

韓国籍

99件3.7%

その他

336件12.6%

合計

2,665件

その他免疫抑制阻害療法については、2002 年以降、論文発表件数が増加傾向にある。

特に中国籍研究者からの論文発表件数が 2010 年を境に急激に増加している。シェアは米

国籍研究者 32.3%、欧州国籍研究者 25.5%、中国籍研究者 16.6%、日本国籍研究者 9.3%

となっている。

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- 109 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 17-c.免疫増強

58 60

92 95115

97 102

145

115 108

138

163175

199 201 201

0

50

100

150

200

250

0

50

100

150

200

25020

02

200

3

200

4

200

5

200

6

200

7

200

8

200

9

201

0

201

1

201

2

201

3

201

4

201

5

201

6

201

7

合計

発表件数

論文発表年

日本 米国 欧州 中国韓国 その他 合計

論文発表

2002-2017年

研究者国籍(地域)

日本国籍

141件6.8%

米国籍

664件32.2%

欧州国籍

590件28.6%

中国籍

292件14.1%

韓国籍

74件3.6%

その他

303件14.7%

合計

2,064件

免疫増強の論文発表件数は 2015 年以降件数推移が一定となっている。シェアは米国籍

研究者 32.2%、欧州国籍研究者 28.6%、中国籍研究者 14.1%、日本国籍研究者 6.8%となっ

ている。

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- 110 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 17-d.養子免疫療法

47 50 4757 60

74 87 94 102 102121

162

125151

206 203

0

50

100

150

200

250

0

50

100

150

200

250

200

2

200

3

200

4

200

5

200

6

200

7

200

8

200

9

201

0

201

1

201

2

201

3

201

4

201

5

201

6

201

7

合計

発表件数

論文発表年日本 米国 欧州 中国韓国 その他 合計

論文発表

2002-2017年

研究者国籍(地域)

日本国籍

140件8.3%

米国籍

760件45.0%欧州国籍

460件27.3%

中国籍

174件10.3%

韓国籍

27件1.6%

その他

127件7.5%

合計

1,688件

養子免疫療法の論文発表件数は、米国籍研究者、欧州国籍研究者の論文発表件数に牽

引される形で増加傾向にある。また、2014 年以降は中国籍の論文発表件数も増加傾向で

ある。シェアは米国籍研究者 45.0%、欧州国籍研究者 27.3%、中国籍研究者 10.3%、日本

国籍研究者 8.3%となっている。

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- 111 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 17-d-1.抗原受容体の配列設計・改変

16 17 17 16

24

16

21 3143 43 43

63 62

83

97

117

0

20

40

60

80

100

120

140

0

20

40

60

80

100

120

14020

02

200

3

200

4

200

5

200

6

200

7

200

8

200

9

201

0

201

1

201

2

201

3

201

4

201

5

201

6

201

7

合計

発表件数

論文発表年

日本 米国 欧州 中国

韓国 その他 合計

論文発表

2002-2017年

研究者国籍(地域)

日本国籍

48件6.8%

米国籍

366件51.6%

欧州国籍

193件27.2%

中国籍

50件7.1%

韓国籍

1件0.1%

その他

51件7.2%

合計

709件

特許出願では 2012 年より増加傾向にあったが、論文発表では 2008 年からの増加が認

められた。シェアは米国籍研究者 51.6%、欧州国籍研究者 27.2%、中国籍研究者 7.1%、

日本国籍研究者 6.8%となっている。

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- 112 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 17-d-2 導入遺伝子/ターゲット

17 16 1414

23 1727 33

39 3946

6464

83

106

121

0

50

100

150

0

50

100

150

200

2

200

3

200

4

200

5

200

6

200

7

200

8

200

9

201

0

201

1

201

2

201

3

201

4

201

5

201

6

201

7

合計

発表件数

論文発表年

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計

論文発表

2002-2017年

研究者国籍(地域)

CAR484件66.9%

TCR192件26.6%

CAR+TCR3件

0.4%

CAR、TCR以外の導入

遺伝子/ターゲット

44件6.1%

合計

723件

養子免疫療法のうち、導入遺伝子/ターゲットに特徴がある論文の発表件数である。

内訳は CAR が 66.9%、TCR が 26.6%、CAR+TCR が 0.4%を占めている。

※CAR+TCR:CAR と TCR の両方について記載がある論文

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- 113 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 17-d-2-1.CAR

7 6 6

3

9 7 9 1722 25

33

51 48

6676

102

0

20

40

60

80

100

120

0

20

40

60

80

100

120

200

2

200

3

200

4

200

5

200

6

200

7

200

8

200

9

201

0

201

1

201

2

201

3

201

4

201

5

201

6

201

7

合計

発表件数

論文発表年

日本 米国 欧州 中国

韓国 その他 合計

論文発表

2002-2017年

出願人国籍(地域)

日本国籍

19件3.9%

米国籍

276件56.7%

欧州国籍

116件23.8%

中国籍

31件6.4%

韓国籍

1件0.2%

その他

44件9.0%

合計

487件

CAR の論文発表件数は 2009 年ごろより増加傾向にあり、近年では米国籍研究者に牽引

される形で大きな増加を示している。シェアは米国籍研究者が 56.7%と特に高く、欧州

国籍研究者 23.8%、中国籍研究者 6.4%、日本国籍研究者 3.9%となっている。

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- 114 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 17-d-2-2.TCR

87 6

1012

8

14

11

1514

12

9

1513

2318

0

5

10

15

20

25

0

5

10

15

20

25

200

2

200

3

200

4

200

5

200

6

200

7

200

8

200

9

201

0

201

1

201

2

201

3

201

4

201

5

201

6

201

7

合計

発表件数

論文発表年

日本 米国 欧州 中国

韓国 その他 合計

論文発表

2002-2017年

研究者国籍(地域)

日本国籍

20件10.3%

米国籍

76件39.0%

欧州国籍

78件40.0%

中国籍

13件6.7%

韓国籍

0件0.0%

その他

8件4.1%

合計

195件

TCR の論文発表件数は 2017 年でも 18 件と、CAR と比べると依然少ない。シェアは欧州

国籍研究者 40.0%、米国籍研究者 39.0%、日本国籍研究者 10.3%、中国籍研究者 6.7%とな

っている。

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- 115 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 17-e.腫瘍溶解性ウイルス療法

100

144 157172

215

209223 228

248231

287 305274

302 296280

0

50

100

150

200

250

300

350

0

50

100

150

200

250

300

35020

02

200

3

200

4

200

5

200

6

200

7

200

8

200

9

201

0

201

1

201

2

201

3

201

4

201

5

201

6

201

7

合計

発表件数

論文発表年

日本 米国 欧州 中国

韓国 その他 合計

論文発表

2002-2017年

研究者国籍(地域)

日本国籍

244件6.6%

米国籍

1,435件39.1%

欧州国籍

949件25.9%

中国籍

535件14.6%

韓国籍

121件3.3%

その他

387件10.5%

合計

3,671件

腫瘍溶解性ウイルス療法の論文発表件数はなだらかな上昇傾向にあったが、2012 年以

降は 300 件程度で推移している。シェアは米国籍研究者 39.1%、欧州国籍研究者 25.9%、

中国籍研究者 14.6%、日本国籍研究者 6.6%となっている。

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- 116 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 17-f.がんワクチン療法

338 334378 385

474

407

487424

407

462 439 438

405

479 465503

0

100

200

300

400

500

600

0

100

200

300

400

500

600

200

2

200

3

200

4

200

5

200

6

200

7

200

8

200

9

201

0

201

1

201

2

201

3

201

4

201

5

201

6

201

7

合計

発表件数

論文発表年

日本 米国 欧州 中国

韓国 その他 合計

論文発表

2002-2017年

研究者国籍(地域)

日本国籍

699件10.2%

米国籍

2,193件32.1%

欧州国籍

2,174件31.9%

中国籍

843件12.4%

韓国籍

180件2.6%

その他

736件10.8%

合計

6,825件

がんワクチン療法の論文発表件数は 2002 年以降漸増である。がんワクチンについては

他の技術区分と比較して日本国籍研究者からの論文発表件数が多い傾向にある。また、

2009 年以降中国籍研究者からの論文が増加傾向にある。シェアは米国籍研究者 32.1%、

欧州国籍研究者 31.9%、中国籍研究者 12.4%、日本国籍研究者 10.2%となっている。

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- 117 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 17-f-1.ペプチドワクチン

123 142

173

148

175

167

173

163

132

168145 144 137

159 158 168

0

50

100

150

200

250

0

50

100

150

200

250

200

2

200

3

200

4

200

5

200

6

200

7

200

8

200

9

201

0

201

1

201

2

201

3

201

4

201

5

201

6

201

7

合計

発表件数

論文発表年

日本 米国 欧州 中国

韓国 その他 合計

論文発表

2002-2017年

研究者国籍(地域)

日本国籍

372件15.0%

米国籍

801件32.4%

欧州国籍

837件33.8%

中国籍

229件9.3%

韓国籍

31件1.3%

その他

205件8.3%

合計

2,475件

ペプチドワクチンにおける全体の傾向は横ばいではあるが、日本国籍研究者のシェア

は他の技術区分と比較して高く 15.0%を占める。欧州国籍研究者 33.8%、米国籍研究者

32.4%、中国籍研究者 9.3%となっている。

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- 118 -

本編

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 17-f-2.タンパク質ワクチン

4

8

4

1

3

2

7

5

3

7

4 4

2

87

3

0

2

4

6

8

10

12

0

2

4

6

8

10

12

20

02

20

03

20

04

20

05

20

06

20

07

20

08

20

09

20

10

20

11

20

12

20

13

20

14

20

15

20

16

20

17

合計

発表件数

論文発表年

日本 米国 欧州 中国

韓国 その他 合計

論文発表

2002-2017年

研究者国籍(地域)

日本国籍

2件2.8%

米国籍

35件48.6%

欧州国籍

16件22.2%

中国籍

6件8.3%

韓国籍

2件2.8%

その他

11件15.3%

合計

72件 タンパク質ワクチンはペプチドワクチンや抗原提示細胞ワクチンと比較し少なく、傾

向としても横ばいである。シェアは米国籍研究者 48.6%、欧州国籍研究者 22.2%、中国籍

研究者 8.3%、日本国籍研究者 2.8%となっている。

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- 119 -

本編

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 17-f-3.抗原提示細胞ワクチン

22 24

13

30

31

3335 38

29 33

39

31

41 44

32 32

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

200

2

200

3

200

4

200

5

200

6

200

7

200

8

200

9

201

0

201

1

201

2

201

3

201

4

201

5

201

6

201

7

合計

発表件数

論文発表年

日本 米国 欧州 中国

韓国 その他 合計

論文発表

2002-2017年

研究者国籍(地域)

日本国籍

65件12.8%

米国籍

137件27.0%

欧州国籍

137件27.0%

中国籍

90件17.8%

韓国籍

32件6.3%

その他

46件9.1%

合計

507件

抗原提示細胞ワクチンの全体の傾向は漸増ではあるが、日本のシェアは他区分と比較

し高く 12.8%を占める。シェアは米国籍研究者 27.0%、欧州国籍研究者 27.0%、中国籍研

究者 17.8%、日本国籍研究者 12.8%となっている。

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- 120 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 17-g-1.バイオマーカー

8 7 2 7 4 7 7

17 12 1518

25 23

35

55

72

0

10

20

30

40

50

60

70

80

0

10

20

30

40

50

60

70

80

200

2

200

3

200

4

200

5

200

6

200

7

200

8

200

9

201

0

201

1

201

2

201

3

201

4

201

5

201

6

201

7

合計

発表件数

論文発表年

日本 米国 欧州 中国

韓国 その他 合計

論文発表

2002-2017年

研究者国籍(地域)

日本国籍

38件12.1%

米国籍

100件31.8%

欧州国籍

92件29.3%

中国籍

47件15.0%

韓国籍

6件1.9%

その他

31件9.9%

合計

314件

バイオマーカー全体の論文発表件数は 2014 年以降急激な増加傾向を示している。これ

は米国籍研究者、欧州国籍研究者、中国籍研究者からの論文が増加したことが要因であ

る。シェアは米国籍研究者 31.8%、欧州国籍研究者 29.3%、中国籍研究者 15.0%、日本国

籍研究者 12.1%となっている。

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- 121 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 17-g-2.ネオアンチジェン(ネオエピトープ)

0 01 1 1

01

0 01 1 2

3 3

13

20

0

5

10

15

20

25

0

5

10

15

20

25

200

2

200

3

200

4

200

5

200

6

200

7

200

8

200

9

201

0

201

1

201

2

201

3

201

4

201

5

201

6

201

7

合計

発表件数

論文発表年

日本 米国 欧州 中国

韓国 その他 合計

論文発表

2002-2017年

研究者国籍(地域)

日本国籍

2件4.3%

米国籍

24件51.1%

欧州国籍

19件40.4%

中国籍

1件2.1%

韓国籍

0件0.0%

その他

1件2.1%

合計

47件

ネオアンチジェンの論文発表件数は全体で47件と他の技術区分と比較して少ない状

況にある。ただ、2016 年と 2017 年は発表数が増加おり、米国籍研究者と欧州国籍研究

者からの論文発表を増やしている。シェアは米国籍研究者 51.1%、欧州国籍研究者 40.4%、

日本国籍研究者 4.3%、中国籍研究者 2.1%となっている。

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- 122 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

技術区分別-技術区分別論文発表件数集計を図 18 に示す。

図 18 技術区分別-技術区分別論文発表件数集計(発行年:2002~2017 年)

図 18-a.技術区分(大項目)別-技術区分別(併用)論文発表件数集計

4

2

5

11

15

4

2

4

4

19

7

22

26

22

1

3

5

6

12

9

6

7

1

4

5

2

7

10

5

39

1

3

1

2

4

9

1

2

1

2

9

12

1

2

1

1

1

3

2

1

1

3

4

4

3

14

103

技術区分

技術区分

(併用剤+アジュバント)

アジュバント

との混合

その他

温熱療法

がんワクチン療法

腫瘍溶解性

ウイルス療法

養子免疫療法

免疫増強

免疫抑制阻害

化学療法

放射線療法

A(免疫チェックポイント

阻害療法)

A(その他免疫抑制阻

害療法)

A(免疫増強)

B養子免疫療法

C腫瘍溶解性ウイルス

療法

Dがんワクチン療法

A(CTLA-4)

A(PD系)

技術区分(大項目)別-技術区分(併用剤)論文発表件数により、がん免疫療法を主

剤としたときのがん免疫療法以外の化学療法や放射線療法との併用や、免疫抑制阻害、

免疫増強の併用が多く取り組まれていることが示された。一方、養子免疫療法、腫瘍溶

解性ウイルス療法について、併用療法の論文発表件数が少ないことが示された。

論文発表件数に着目すると、がんワクチン療法におけるアジュバントとの混合(103

件)や免疫増強との併用(39 件)に関する件数が多くなっている。

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 18-b.国籍別-技術区分(大項目)別-技術区分別(併用)論文発表件数集計

A.免疫調節

2

1

2

1

1

7

16

11

7

2

5

1

2

5

9

1

5

1

5

1

3

1

1

1

1

3

2

2

1

1

併用先

研究者国籍(地域)

日本

米国

欧州

中国

韓国

その他

放射線療法

化学療法

免疫抑制阻害

免疫増強

養子免疫療法

腫瘍溶解性

ウイ ルス療法

がんワクチン

療法

温熱療法

その他

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

B.養子免疫療法

2

7

1

1

2

3

5

5

5

1

1

2

1

3

2

4

1

3

1

2

1

3

3

1

3

41

1

3

1

1

1

1

併用先

研究者国籍(地域)

日本

米国

欧州

中国

韓国

その他

放射線療法

化学療法

免疫抑制阻害

免疫増強

養子免疫療法

腫瘍溶解性

ウイ ルス療法

がんワクチン

療法

温熱療法

その他

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

C.腫瘍溶解性ウイルス療法

1

4

7

14

3

1

3

2

2

2

2

5

3

1

1

1

1

3

併用先

研究者国籍(地域)

日本

米国

欧州

中国

韓国

その他

放射線療法

化学療法

免疫抑制阻害

免疫増強

養子免疫療法

腫瘍溶解性

ウイ ルス療法

がんワクチン

療法

温熱療法

その他

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

D.がんワクチン療法

1

7

2

2

7

5

15

1

1

2

1

2

1

6

1

2

1

1

7

1

4

5

1

1

3

2

1

1

1

6

併用先

研究者国籍(地域)

日本

米国

欧州

中国

韓国

その他

放射線療法

化学療法

免疫抑制阻害

免疫増強

養子免疫療法

腫瘍溶解性

ウイ ルス療法

がんワクチン

療法

温熱療法

その他

特許出願と同様に、免疫調節と免疫調節の併用は多く認められるが、その他の領域に

おいては、主剤とは異なる領域のがん免疫療法との併用療法の検討が盛んに進められて

いる。

国籍別の論文発表動向に目を向けると、免疫調節、腫瘍溶解性ウイルス療法、がんワ

クチン療法を主剤とする併用療法に関しては、米国籍研究者からの発表が も多いとい

う傾向が見られる。ただし、主剤を養子免疫療法とした際のがん免疫療法以外の化学療

法との併用に関しては、日本国籍研究者からの発表が多くなっている。

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- 127 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 18-c.免疫調節-国籍別-技術区分(薬効成分)別論文発表件数集計

37

20

65

18

2

2

3

4

3

288

55

211

80

12

11

6

11

7

154

33

147

52

10

5

5

9

11

65

14

100

47

10

2

4

2

10

3

26

3

1

1

3

3

2

52

17

126

28

5

6

5

2

技術区分

研究者国籍(地域)

日本

米国

欧州

中国

韓国

その他

抗体

タンパク質

低分子

核酸

ペプチド

細胞

細菌

ウイルス

その他

免疫調節では薬効成分として各国籍とも抗体が多い傾向が認められた。また、低分子、

核酸といった別の薬効成分に関する論文も幅広く発表されている。

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- 128 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 18-d.養子免疫療法-国籍別-技術区分(大項目 薬効に関する技術 における中項目)別論文

発表件数集計

6

1

48

4

45

133

11

45

13

6

366

66

371

727

60

140

19

5

193

25

203

435

57

103

5

1

50

6

47

166

21

33

1

1

1

1

26

2

5

3

51

8

53

116

6

26

技術区分

研究者国籍 (地域 )

日本

米国

欧州

中国

韓国

その他

癌特異的に

発現する抗原や

ネオエピトープの探索

抗原受容体の探索

抗原受容体の配列設計・改変

オン・オフスイッチ

導入遺伝子・ターゲット

エフェクター細胞

細胞の機能改変

細胞の製造技術

(自動培養、大量生産、

性質解析のアッセイ法等)等

各国において抗原受容体の配列設計・改変、導入遺伝子・ターゲット、エフェクター

細胞の技術開発に関する論文が多い傾向にある。細胞の製造技術は米国籍、欧州国籍の

研究者による発表が多い。

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- 129 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 18-e.養子免疫療法-国籍別-技術区分(大項目 製剤化に関する技術 における中項目)別論

文発表件数集計

82

72 1

技術区分

研究者国籍(地域)

日本

米国

欧州

中国

韓国

その他

賦形剤

剤形

容器

製剤化に関する論文発表件数は少ない傾向にある。剤形については、米国籍研究者、

中国籍研究者に論文発表が集中している。

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- 130 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

技術区分別の論文発表件数推移を図 19 に示す。

図 19 技術区分別 論文発表件数推移(発行年:2002~2017 年)

図 19-a.免疫チェックポイント阻害療法の各項目

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

200

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

2017

発表件数

論文発表年

CTLA-4阻害 PD系阻害

LAG-3阻害 TIM-3阻害

TIGIT阻害 BTLA阻害

論文発表

2002-2017年

免疫チェックポイント阻害療法

PD 系阻害、CTLA-4 阻害の論文発表は 2010 年頃を境に増加している。また、PD 系阻害

に関する論文発表は 2015 年、2016 年に大きく増加したが、2017 年は減少に転じている。

一方、TIM-3 阻害、TIGIT 阻害等の次世代の免疫チェックポイント阻害療法については、

特許出願と同様に(図 11-a)、PD 系阻害や CTLA-4 阻害のような増加傾向は見られない。

図 19-b.その他免疫抑制阻害療法の各項目

0

10

20

30

40

50

60

70

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

2017

発表件数

論文発表年

A2AR阻害 IDO阻害 TGFβ阻害CSF1R阻害 Arginase阻害 PI3K阻害IFN-γ阻害 KIR阻害 CoX2阻害Treg阻害 MDSC/TAM/CAF阻害 抑制性サイトカイン阻害その他阻害

論文発表

2002-2017年

その他免疫抑制阻害

その他免疫抑制阻害療法の各項目では、特許出願では IDO 阻害が 2014 年以降増加して

いるが(図 11-b)、論文発表では Treg 阻害、MDSC/TAM/CAF 阻害、TGFβ阻害の増加が顕

著である。

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- 131 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 19-c.免疫増強の各項目

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

200

2

200

3

200

4

200

5

200

6

200

7

200

8

200

9

201

0

201

1

201

2

201

3

201

4

201

5

201

6

201

7

発表件数

論文発表年

STINGアゴニスト TLRアゴニスト

サイトカイン・ケモカイン(抑制性を除く) 免疫代謝増強剤(メトホルミン)

その他

論文発表

2002-2017年

免疫増強

免疫増強の各項目では、各項目ともに増加傾向である。特に、その他の項目とサイト

カイン・ケモカイン(抑制性を除く)が拮抗しており、次いで TLR アゴニストが多くな

っている。

図 19-d.免疫調節―その他の各項目及び研究者(筆頭著者)所属機関国籍別論文発表件数比率(多

機能性抗体)

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

2017

発表件数

論文発表年新規標的分子探索 薬効成分の改変-修飾薬効成分の改変-ヒト化 薬効成分の改変-多機能性薬効成分の改変-その他 薬効成分の製造技術-生産株

論文発表

2002-2017年

A.免疫調節-その他

日本国籍

2件6.3%

米国籍

9件28.1%

欧州国籍

15件46.9%

中国籍

5件15.6%

韓国籍

0件0.0%

その他

1件3.1%

合計

32件

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- 132 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

免疫調節-薬効成分に関する技術のその他の各項目(新規標的分子探索、薬効成分の

改変、薬効成分の製造技術)では、全体的に論文数が少ないが、新規標的分子探索や薬

効成分の改変における多機能性の項目が比較的多い状況にある。多機能性抗体の論文発

表シェアは、欧州国籍 46.9%、米国籍 28.1%、中国籍 15.6%、日本国籍 6.3%だった。

図 19-e.臨床応用に関する技術-併用剤の各項目

0

2

4

6

8

10

12

14

16

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

2017

発表件数

論文発表年

放射線療法 がん免疫療法以外の化学療法がん免疫療法-免疫調節-免疫抑制阻害 がん免疫療法-免疫調節-免疫増強がん免疫療法-養子免疫療法 がん免疫療法-腫瘍溶解性ウイルスがん免疫療法-がんワクチン 併用剤-温熱療法

論文発表

2002-2017年

臨床応用に関する技術-併用剤など

併用剤に関する論文発表件数は、がん免疫療法以外の化学療法や、免疫免疫抑制阻害

に関する併用が増加傾向にある。

図 19-f.ウイルスの種類の各項目

0

20

40

60

80

100

120

140

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

2017

発表件数

論文発表年

アデノウイルス アデノ随伴ウイルス ワクシニアウイルスレオウイルス 単純ヘルペスウイルス1型 パルボウイルス麻疹ウイルス コクサッキーウイルス New castle病ウイルス水疱性口内炎ウイルス その他ウイルス

論文発表

2002-2017年

ウイルスの種類

腫瘍溶解性ウイルス療法におけるウイルスの種類では、特許出願と同様にアデノウイ

ルスに関する出願が も多く、その他ウイルス、単純ヘルペスウイルス 1 型、ワクシニ

アウイルスが続いている。

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- 133 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

第4節 大学・研究機関発のシーズ開発事例

がん免疫療法において世界で上市されている製品は、免疫チェックポイント阻害療

法 9 製品、養子免疫療法 2 製品、腫瘍溶解性ウイルス療法 2 製品、がんワクチン療法

1 製品であり、研究開発が活発になっている中においても製品化に至った事例は限ら

れている。

我が国のがん免疫療法の研究開発は、第 5 部の研究開発動向の結果からみて他国に

遅れをとっている状況にあるといえる。その一方で、上市に至った製品の一つ、Opdivo

(nivolumab)は本庶 佑教授による PD-1 分子の発見が製品化に結び付いたものであり、

我が国におけるがん免疫療法の成功事例といえる。また、大学・研究機関発のシーズ

をもとに研究開発が進められ、臨床試験が実施されている事例も存在し、例えば

DS-1647(G47Δ)、 C-REV(canerpaturev)、 TBI-1301/TBI-1201(NY-ESO-1/MAGE-A4・

siTCR)は、Opdivo に続く我が国発のがん免疫療法として、製品化が期待される事例

である。

本章では、 DS-1647( G47Δ)、 C-REV( canerpaturev)、 TBI-1301/TBI-1201

(NY-ESO-1/MAGE-A4・siTCR)及びOpdivoの4つを例に、それぞれの開発経緯を分析し、

その成功要因について考察した。

1.DS-1647(G47Δ、腫瘍溶解性ウイルス療法)(藤堂教授(東京大学))

図 20 DS-1647(G47Δ)の開発経緯

2001年 2015年

文科省

「がんTR事業」採択

2004年

文科省

「橋渡し研究支援推進プログラム」採択

2007年

ハーバード大学/東京大学で研究開発 第一三共と共同開発

大量生産に向けた製造設備を

デンカ生研に委託

日本でのP

haseⅡ

医師師主導治験を開始

対象疾患:膠芽腫

2016年

希少疾病用再生医療等製品に指定

対象疾患:悪性神経膠腫

2017年

PCT/US2002/009512特願2002-574742(藤堂/メディジーン/ザジェネラル ホスピタル/ジョージタウン大学)

関連特許

特願2006-511831(藤堂)特願2006-512495(藤堂)

先駆け審査指定制度の対象品目に指定

第一三共と共同開発を開始

PCT/JP2010/001078特願2012-500393(藤堂)特願2010-227413(藤堂)※ウイルス投与用のニードル装置

ハーバード大学にて「G47Δ」開発

※改良前の「G207」はハーバード大学にて臨床開発

日本での臨床研究を開始

対象疾患:膠芽腫

2009年

藤堂具紀教授(東京大学)

日本での臨床研究を開始

対象疾患:前立腺がん・嗅神経芽細胞腫

2013年

特願2008-242828(藤堂)

G47Δは、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)の 3 つのウイルス遺伝子を改変した

世界初のがん治療用第三世代遺伝子組換え HSV-1 である。対象となる疾患は悪性度の

高い膠芽腫(グリオブラストーマ)である。国内年間発症患者数は約 1,000 人である

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

が、標準治療による 5 年生存率は 10%未満である127 。研究開発経緯は、以下のとおり

である128。

・ 2004 年度~2008 年度:文部科学省「がんトランスレーショナル・リサーチ事業

― 革新的ながん治療法等の開発に向けた研究の推進―」

・ 2007 年度~2011 年度:文部科学省「橋渡し研究支援推進プログラム

・ 2009 年度~2013 年度:内閣府「 先端研究開発支援プログラム」

・ 2012 年度~2014 年度:文部科学省「橋渡し研究加速ネットワークプログラム」

・ 2012 年度~2014 年度:厚生労働省「革新的がん医療実用化研究事業」

・ 2013 年:前立腺癌や嗅神経芽細胞腫を対象とした臨床試験を実施

・ 2015 年:膠芽腫患者を対象とした PhaseⅡ医師主導治験を開始

・ 2016 年 2 月:医療機器・対外診断用医薬品・再生医療等製品の先駆け審査指定制

度の対象品目に指定(第一三共と共同申請)

・ 2017 年 7 月:悪性神経膠腫に対する希少疾病用再生医療等製品の指定獲得

2009 年から 5 年間、膠芽腫を対象疾患とした臨床試験が実施され、2015 年からは

PhaseⅡ医師主導治験が実施されている。また、2013 年からは前立腺癌や嗅神経芽細

胞腫を対象疾患とした臨床試験の実施もなされた。

2016 年には厚生労働省の先駆け審査指定制度の対象品目に選定がなされ、2017 年に

は悪性神経膠腫に対する希少疾病用再生医療等製品に指定されている。なお、先駆け

審査指定制度については第一三共との共同申請であったが、共同開発の開始時期につ

いてはプレスリリース等では確認できない。

特許出願に関しては 2002 年に藤堂教授とメディジーン、ザジェネラル ホスピタル、

ジョージタウン大学との共同出願がなされており、2006 年、2008 年には藤堂教授を出

願人とした、2010 年、2012 年には東京大学を出願人とした出願がなされている。

127 東京大学、プレスリリース

http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/files/141218.pdf(2019.01.31 アクセス) 128 東京大学、プレスリリース

http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/files/180802g47d.pdf(2019.01.31 アクセス)

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

2.C-REV(canerpaturev)(HF10、腫瘍溶解性ウイルス療法)(西山教授(名古屋大学)

-エムズサイエンス-タカラバイオ-大塚製薬)

図 21 C-REV(canerpaturev)の開発経緯

PCT/JP2006/308317特願2007-514646(西山)特願2007-169020(西山)

2003年1995年 2017年

米国での臨床試験を開始

対象疾患:固形がん

エムズサイエンスから

タカラバイオに事業譲渡

2010年

エムズサイエンスと共同開発

2009年 2018年

特願2004-156475(西山)

関連特許

米国での臨床試験(i

pilimu

mab

併用)

対象疾患:メラノーマ

タカラバイオと共同開発

2016年

特願2001-19129(西山/エムズサイエンス)PCT/JP2002/004547特願2002-589692(エムズサイエンス/西山)

日本での臨床研究を開始

対象疾患:乳がん・頭頸部がん・膵臓がん

日本での臨床研究を開始

対象疾患:再発乳がんの皮膚転移

西山 幸廣 教授(名古屋大学)

2004年 2014年

日本での臨床試験を開始

対象疾患:メラノーマ

2015年

前臨床試験で抗腫瘍効果を確認

HSV-1弱毒株の選定

大塚製薬と共同開発

タカラバイオと東亜ST(

韓国)

が韓

国での開発・販売の独占的ライセン

ス契約を締結

米国での医師主導治験(

nivol

umab

用)

開始

対象疾患:メラノーマ

日本での臨床試験(i

pilimu

mab

併用)

開始

対象疾患:メラノーマ

日本での臨床試験(

化学療法併用)

開始

対象疾患:膵がん

大塚製薬と日本での開発・販売

独占的ライセンス契約を締結

C-REV(canerpaturev)は、単純ヘルペスウイルス 1 型(HSV-1)の弱毒化株で、

がん局所に注入することにより抗腫瘍作用を示す。基になったのは、西山幸廣教

授(名古屋大学)の研究である。研究開発経緯は、以下のとおりである。

・ 1980 年代:単純ヘルペスウイルスの DNA 複製に関与する蛋白質の同定及びその

機能等に関する研究

・ 1990 年代:ヘルペスウイルス感染の制御に関する分子的基盤の解明(未来開拓学

術研究推進事業)

・ 2000 年代:単純ヘルペスウイルスの増殖と病原性発現の分子基盤(科研費特定領

域研究等、2001 年、2002 年、2004 年、2007 年に特許出願、2003 年に前臨床試験

で抗腫瘍効果を確認)

・ 2003 年:日本での臨床研究を開始(対象疾患:再発乳がんの皮膚転移)

・ 2004 年:日本での臨床研究を開始(対象疾患:乳がん・頭頸部がん・膵臓がん)

・ 2009 年:エムズサイエンスとの共同開発で米国での臨床試験を開始(対象疾患:

固形がん)

・ 2010 年:エムズサイエンスからタカラバイオに事業譲渡

・ 2010 年~2012 年:単純ヘルペスウイルスの増殖を制御する宿主因子の同定とそ

の役割の解明

・ 2014 年:米国での臨床試験(ipilimumab 併用)開始(対象疾患:メラノーマ)

・ 2015 年:日本での臨床試験を開始(対象疾患:メラノーマ)

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

・ 2016 年:大塚製薬と日本での開発・販売の独占的ライセンス契約を締結

・ 2017 年:日本での臨床試験(ipilimumab 併用)開始(対象疾患:メラノーマ)、

日本での臨床試験(化学療法併用)開始(対象疾患:膵がん)、米国での医師主

導治験(nivolumab 併用)開始(対象疾患:メラノーマ)

2009 年にエムズサイエンスとの共同開発で固形がんを対象疾患とした米国での臨

床試験を開始(2010 年にエムズサイエンスからタカラバイオに事業が譲渡された後に、

米国においてメラノーマを対象疾患とした臨床試験を開始した。また、大塚製薬との

共同開発で 2017 年に膵がんを対象疾患とした臨床試験へと拡大した。

特許出願に関しては 2001 年にエムズサイエンスと共同で特許出願がなされ、2004

年、2007 年は西山氏単独での出願がされている。以後、開発はエムズサイエンスから

2010 年以降タカラバイオに引き継がれるが、2016 年にはタカラバイオと大塚製薬の

間で「腫瘍溶解性ウイルス HF10 に関する独占的ライセンス契約」が締結された。

3. TBI-1301/TBI-1201(NY-ESO-1/MAGE-A4・siTCR)(珠玖教授(三重大学)-タカラバ

イオ-大塚製薬)

図 22 TBI-1301/TBI-1201(NY-ESO-1/MAGE-A4・siTCR )の開発経緯

TBI-1301(NY-ESO-1・siTCR)

2016年

タカラバイオとTCR遺伝子治療の

臨床開発推進を発表

2005年

タカラバイオと共同開発

日本での医師主導治験を開始

対象疾患:固形がん

2017年

関連特許

特願2004-290785(珠玖/タカラバイオ)

日本での臨床試験を開始

対象疾患:滑膜肉腫

カナダでの臨床試験を開始

対象疾患:固形がん

タカラバイオと大塚製薬と日本

での共同開発・独占販売契約を

締結

PCT/JP2008/060618特願2009-519261(タカラバイオ/珠玖)

大塚製薬と共同開発

珠玖 洋 教授(三重大学)

2015年 2018年

PCT/JP2006/31773特願2007-535435(珠玖/タカラバイオ)

創薬系ベンチャー

イミュノフロンティアを設立

2004年

先駆け審査指定制度の対象品目に指定

2018年

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

TBI-1201(MAGE-A4・siTCR)

タカラバイオとTCR遺伝子治療の

臨床開発推進を発表

2005年 2009年

経産省「基礎研究から臨床研究への橋

渡し促進技術開発」採択

2010年

日本での医師主導治験を開始

対象疾患:固形がん

関連特許

特願2004-290785(珠玖/タカラバイオ)

天津医科大学・天津市腫瘍病院と

共同研究契約締結

日本での臨床研究(

1)

を開始

対象疾患:食道癌

PCT/JP2008/060618特願2009-519261(タカラバイオ/珠玖)

珠玖 洋 教授(三重大学)

2011年 2014年

PCT/JP2006/31773特願2007-535435(珠玖/タカラバイオ)

※1この時点では、siTCRではなく、通常のTCRベクターを使用以降はsiTCR使用

創薬系ベンチャー

イミュノフロンティアを設立

2004年

タカラバイオと共同開発

siTCR 遺伝子治療は、ターゲットとするがん抗原に合わせた TCR 遺伝子の選択

により、様々ながん種への適用が可能となることと、T 細胞が有する内在性 TCR

遺伝子の発現を抑制する siRNA 配列を組み込んだベクターを用いることで、目的

とする TCR遺伝子の効率的な発現が可能になることを特徴とする TCR-T細胞療法で

ある。シーズは、珠玖洋教授(三重大学)の研究に由来する。

・ 2004 年:珠玖教授とタカラバイオが共同で特許出願、珠玖洋教授らの研究に基づ

いて、がんワクチンの開発を目指す創薬系ベンチャー、イミュノフロンティア設

・ 2005 年:タカラバイオと三重大学が T 細胞受容体(TCR)遺伝子治療の臨床開発

を推進するために三重大学医学部に寄附講座を設置することに合意

・ 2009 年:経済産業省「基礎研究から臨床研究への橋渡し促進技術開発」採択

・ 2010 年:食道癌を対象とした MAGE-A4・siTCR の臨床研究を開始

・ 2011 年:TCR 遺伝子治療の臨床研究を実施するための天津医科大学・天津市腫瘍

病院と共同研究契約を締結

・ 2014 年:固形がんを対象とした MAGE-A4・siTCR の医師主導治験を開始

・ 2015 年:固形がんを対象とした NY-ESO-1・siTCR の医師主導治験を開始

・ 2016 年:カナダで NY-ESO-1・siTCR の臨床試験開始

・ 2018 年:滑膜肉腫を対象とした NY-ESO-1・siTCR 遺伝子治療薬が、厚生労働省「先

駆け審査指定制度」の対象品目に指定、タカラバイオと大塚製薬が、日本での共

同開発・独占販売契約を締結

2004 年に珠玖教授の研究開発シーズを活用するためのベンチャーとしてイミュノ

フロンティアが設立された。2005 年よりタカラバイオが三重大学内に寄附講座を設

置しており、以降 NY-ESO-1・siTCR と MAGE-A4・siTCR の開発は、三重大学とタカラバ

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

イオによって進められてきた。NY-ESO-1・siTCR については、2017 年に先駆け審査指

定制度の対象品目に指定されており、2018 年にはタカラバイオと大塚製薬の間での、

日本での共同開発・独占販売契約の締結に至っている。

特許出願は、2004 年以降タカラバイオとの共同で継続的に実施されている。

2004 年度以降、内閣府の先端医療開発特区、橋渡し研究加速ネットワークプ

ログラム事業、厚生労働科学研究費補助金、医薬基盤研究所の医薬品・医療機器

実用化研究支援事業等の比較的多額の研究費、補助金も活用されている。

4.Opdivo(nivolumab)(本庶教授(京都大学)-小野薬品工業-ブリストル・マイヤー

ズスクイブ)

1992 年、本庶佑教授(京都大学)は T 細胞の表面に発現する PD-1 を発見した。そ

の後、インタビューフォームによると、小野薬品工業と、メダレックス(現、ブリス

トル・マイヤーズスクイブ)が PD-1 の細胞外領域(PD-1 リガンド結合領域)に結合

し、PD-1 と PD-1リガンドとの結合を阻害するヒト型 IgG4 モノクローナル抗体である

Opdivo を開発した。以下、メラノーマに関する Opdivo の開発の流れを示す。

国内で小野薬品工業が進行固形がん患者を対象とした PhaseⅠ試験(ONO-4538-01

試験)を実施し、海外ではブリストル・マイヤーズスクイブが進行・再発固形がんを

対象とした単回投与 PhaseⅠ試験(CA209001 試験)及び反復投与 PhaseⅠ試験を実施

した結果、反復投与で有効であることが示唆された。さらに、ダカルバジンによる化

学療法の治療歴を有する根治切除不能な進行・再発のメラノーマ患者を対象とした国

内 PhaseⅡ試験により有効性・安全性が示された。その後 2014 年 7 月に国内での製造

販売承認を取得している。続いて 2014 年 12 月には米国、2015 年 6 月には欧州での販

売承認を取得している129。

取得した特許は下記のとおりである。

・ 特願平 4-169991:プログラムされた細胞死に関連した新規なポリペプチド及

びそれをコードする DNA(本庶教授/小野薬品工業)

・ 特願 2004-519238:免疫賦活組成物 (本庶教授/小野薬品工業)

・ 特願 2006-128058:Programmed Death 1(PD-1)に対するヒトモノクローナル

抗体及び抗 PD-1 抗体単独または他の免疫療法と併用した癌治療方法(小野薬

品工業/メダレックス)

5.考察

上記 1.から 4.で述べた 4 事例は、いずれも研究成果の知的財産化の段階や臨床研究・

治験の段階で製薬企業との提携に至っている。一つの視点として、「知的財産権の確保」

や「研究開発資金の確保」部分で、企業からの協力が得られたことがプラスに働いてい

るのではないかと推測され、大学・研究機関発のシーズをスムーズに製薬企業へ橋渡し

ていくことが、研究開発を成功に導くうえで重要であると考えられる。

129 Opdivo インタビューフォーム

https://www.opdivo.jp/basic-info/product-info/ (2018/01/14 アクセス)

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

第6章 総合分析と提言

日本の技術競争力、産業競争力について分析を加えるとともに、本調査を進めるに当た

って設けられた委員会の助言、有識者へのヒアリングを踏まえたがん免疫療法に関する総

合分析、及び提言を以下にまとめる。

第1節 総合分析

1.全体動向

(1)国籍別の優位性について

がん免疫療法において、世界で上市されている製品は、免疫チェックポイント阻害療

法 9 製品(抗 CTLA-4 抗体 1 製品、抗 PD-1 抗体 5 製品、抗 PD-L1 抗体 3 製品)、養子免

疫療法 2 製品(いずれも CD19 を標的とした CAR-T 細胞療法)、腫瘍溶解性ウイルス療法

2 製品、がんワクチン療法 1 製品(抗原提示細胞ワクチン)となる(2018 年 12 月時点)。

抗 PD-1 抗体 Opdivo については小野薬品工業/ブリストル・マイヤーズスクイブにより

開発がなされたが、他のがん免疫療法においては、海外の企業が先行している状況にあ

る(第1章、第 2 章)。

がん免疫療法に関する特許出願ファミリー件数(日米欧中韓その他への出願、出願年

(優先権主張年):2002 年~2016 年)は 8,645 件であった。米国籍出願人が 3,555 件で

41.1%のシェアを有し、欧州国籍出願人が 2,213 件で 25.6%、中国籍出願人が 1,247 件

で 14.4%、韓国籍出願人が 279 件で 3.2%であった。日本国籍出願人は 671 件で 7.8%で

あった(図 4-2)。

また、研究者所属機関国籍別論文発表件数(論文発表年:2002 年~2017 年)は 18,244

件であった。米国籍研究者が 6,491 件で 35.6%のシェアを有しており、欧州国籍研究者

が 5,160 件で 28.3%、中国籍研究者が 2,497 件で 13.7%、韓国籍研究者が 513 件で 2.8%

であった。日本国籍研究者は 1,572 件で 8.6%であった(図 14)。

特許出願ファミリー件数及び論文発表件数より、当該領域における研究開発は米国籍

及び欧州国籍が優位な状況にあり、日本国籍はそれらの国籍に対して劣位な状況である。

研究者数も、我が国のがん免疫学会の会員数は約 520 名に対して130、Society for

Immunotherapy of Cancer131の会員数は約 2,400 名であり、約 4.6 倍の違いがあり、我

が国の特許出願件数が劣位となっている要因と考えられる。また、論文/特許出願ファ

ミリー件数の比率は、研究開発力(論文発表数)を加味した上での特許出願の程度を示

す 1 つの指標であるが、日本、欧州は米国、韓国と比較し劣位であり、当該領域におい

て研究成果が十分特許化されていない状況が示唆される(表 33)。

日本の免疫チェックポイント阻害療法、その他免疫抑制阻害療法、養子免疫療法、腫

瘍溶解性ウイルス療法、がんワクチン療法において論文/特許出願数に 2 倍以上の乖離

があり、日本では大学・研究機関の成果を十分に特許化できていない可能性がある(表

33)。

130 日本がん免疫学会 https://www.jaci.jp/11p.html (2019.02.12 アクセス) 131 The Society for Immunotherapy of Cancer (SITC) https://www.sitcancer.org/aboutsitc/mission

(2019.02.12 アクセス)

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

表 33 出願人国籍別ファミリー件数・研究者所属機関国籍別特許論文発表件数(図 4-2、図 14

をもとに作成)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

合計

特許出願ファミリー件数 671 3,555 2,213 1,247 279 680

論文発表件数 1,572 6,491 5,160 2,497 513 2,011

論文/特許出願 2.3 1.8 2.3 2.0 1.8 3.0

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

免役チェッ

クポイント

阻害療法

特許出願ファミリー件数 27 469 157 111 7 81

論文発表件数 79 484 220 186 12 78

論文/特許出願 2.9 1.0 1.4 1.7 1.7 1.0

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

その他免疫

抑制阻害阻

害療法

特許出願ファミリー件数 82 383 260 56 30 48

論文発表件数 247 861 680 442 99 336

論文/特許出願 3.0 2.2 2.6 7.9 3.3 7.0

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

免疫増強

特許出願ファミリー件数 163 730 428 151 89 133

論文発表件数 141 664 590 292 74 303

論文/特許出願 0.9 0.9 1.4 1.9 0.8 2.3

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

養子免疫療

特許出願ファミリー件数 61 533 272 206 15 63

論文発表件数 140 760 460 174 27 127

論文/特許出願 2.3 1.4 1.7 0.8 1.8 2.0

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

腫瘍溶解性

ウイルス療

特許出願ファミリー件数 44 234 157 154 40 100

論文発表件数 244 1,435 949 535 121 387

論文/特許出願 5.5 6.1 6.0 3.5 3.0 3.9

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

がんワクチ

ン療法

特許出願ファミリー件数 278 1,004 853 534 86 201

論文発表件数 699 2,193 2,174 843 180 736

論文/特許出願 2.5 2.2 2.5 1.6 2.1 3.7

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

(2)特許出願及び研究開発における件数の増加要因について

特許出願ファミリー件数推移としては、2012 年まで横ばい~減少傾向にあったが、

2013 年以降に大幅な増加傾向を示しており、特に米国籍出願人、欧州国籍出願人、中

国籍出願人の増加が顕著となっている(図 4-1、図 4-2、図 6-a~e)。

出願人属性としては、米国籍出願人、欧州国籍出願人、中国籍出願人のいずれも企業

からの出願人が多くを占めており(米国籍出願人:46.3%、欧州国籍出願人:59.3%、中

国籍出願人:50.1%)、特に 2013 年以降の増加を企業が牽引している傾向にある。日本

国籍出願人においても企業からの出願が多くを占めている(日本国籍出願人:43.4%)。

日本国籍出願人は暫定値ではあるものの、2015 年以降は微増の傾向にある。一方で、

米国籍出願人、欧州国籍出願人、中国籍出願人と比較し母数としては少ない(図 6-a)。

また、「がん免疫療法の種類」別の傾向として、がんワクチン療法、免疫増強、その

他免疫抑制阻害療法、腫瘍溶解性ウイルス療法に関する特許については、一定の出願が

行われてきた一方で、免疫チェックポイント阻害療法は 2012 年以降、養子免疫療法に

関しては 2013 年以降増加傾向にある。この結果は、出願全体の 2013 年以降における増

加が免疫チェックポイント阻害療法と養子免疫療法に関する出願によって牽引された

ことを示している(図 9-a~f)。

研究開発動向としての「がん免疫療法の種類」別の論文発表件数は増加傾向が認めら

れたのが 2014 年以降であり、特許出願動向よりも増加時期は遅い傾向だった。免疫チ

ェックポイント阻害療法、養子免疫療法に関しては 2016 年にピークとなり、2017 年に

は減少している。また、腫瘍溶解性ウイルス療法に関する論文発表件数は、同領域の特

許出願件数と比較して多いことが認められた(図 17-a~f)。これは、他のがん免疫療

法は in vivo での試験結果による成果が論文発表されるのに対し、腫瘍溶解性ウイルス

は実施しやすい in vitro での試験結果を以っての論文化が可能であるためと推測され

る。

特許出願、及び研究開発の増加要因に対する分析を、以下に述べる。

免疫チェックポイント阻害療法については 2012 年に発表された nivolumab の臨床試

験結果132 133が、養子免疫療法については 2014 年に発表された CAR-T 細胞療法の臨床試

験結果が134、従来の抗がん剤と比較し非常にインパクトの高いものであったため、それ

らの発表を契機に、関連技術の研究開発を進める出願人や研究者が主体となって特許出

願・論文発表を増加させてきたと考えられる。

一方、腫瘍溶解性ウイルス療法、がんワクチン療法については上市された医薬品が限

定的であるため、免疫チェックポイント阻害療法、及び養子免疫療法のような特許出

願・論文発表の増加傾向はみられないと推測される。

132 Topalian et al., (2012) Safety, activity, and immune correlates of anti-PD-1 antibody in cancer.

N Engl J Med,366(26):2443-2454 133ブリストル・マイヤーズスクイブ ニュースリリース

https://news.bms.com/press-release/financial-news/investigational-anti-pd-1-immunotherapy-bms-

936558-showed-clinical-acti (2019.2.1 アクセス) 134 Maude et al., (2014) Chimeric Antigen Receptor T Cells for Sustained Remissions in Leukemia. N

Engl J Med.371:1507-1517

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

(3)特許出願費用の調達の課題について(その他の国への出願)

特許出願における他国・地域への出願に関しては、米国籍出願人、欧州国籍出願人

は日米欧中韓以外のその他の国(以降、「その他の国」と略称)に向けた出願を積極

的に行っているのに対し、中国籍出願人、韓国籍出願人は自国への出願比率が高い傾向

にある(図 5-1)。また、日本国籍出願人はその他の国に向けた出願件数は米国籍出願

人、欧州国籍出願人と比較し少ない状況にある(図 5-1)。

その要因を分析するため、その他の国への出願における出願人属性を算出したところ、

大学・研究機関・個人の出願人属性が、米国籍出願人においては 23.2%であるのに対し、

日本国籍出願人は 6.9%、欧州国籍出願人においては 8.4%にとどまっており、大学・研

究機関からの日米欧中韓以外の外国出願が限定的であることが判明した。出願人属性別

にみると大学・研究機関のシェアは、米国籍大学 12.7%、米国籍研究機関 10.2%、日本

国籍大学 5.8%、日本研究機関 1.0%、欧州国籍大学 5.1%、欧州国籍研究機関 2.8%であり、

圧倒的に米国籍大学・研究機関の割合が高いことが示された。大学・研究機関・個人の

出願件数は米国出願人が 1,252 件、日本国籍出願人が 61 件、欧州国籍出願人が 347 件

であり、米国籍出願件数が圧倒的に多い傾向だった(表 34、図 23)。大学・研究機関の

出願人シェア・出願件数に差があるという結果から、我が国において大学・研究機関等

における各国移行の出願費用は、米国と比較し十分に調達できていない可能性が示唆さ

れる(韓国籍出願人は 31.3%と高い割合であるが、対象数が少ないことから分析の対象

外とする)(表 34、図 23)。平成 25 年度特許庁大学知財研究推進事業「知的財産活用に

資する大学の組織的取組に関する研究報告書」では、知的財産権が利活用されない原因

として「事業化には更なる研究開発が必要であり、費用もかかる(79 校中 56 校、69%)」

という点が挙げられている。「大学知財マネジメントの重要課題」135では、大学に対す

る JST からの外国特許出願支援数の減少により、大学からの外国出願が減少する傾向、

及び外国特許出願支援数の減少に伴い大学自身からの出願費用が増加する傾向が示さ

れていることから、大学における特許出願費用負担増加が示されている。JST の調査で

は外国出願支援が減少した場合、10 大学中 1 大学は外国出願を見送り、7 大学が外国出

願を絞り込むという結果が示されている。加えて大学知財経費について、運営交付金が

平成 16 年度から平成 27 年度にかけて 11.8%減少している。これらのことから、大学に

おける特許出願のための費用の不足が示唆されている。

また、さらなる要因を分析するため企業のシェアを見ると、米国籍企業が 62.8%、日

本国籍企業が 79.3%、欧州国籍企業が 80.4%であり、米国籍企業の割合が低い。一方、

出願件数で見ると企業・共同出願件数は米国籍出願人が 4,154 件、日本国籍出願人が

891 件、欧州国籍出願人が 3,796 件であり、米国籍出願人と欧州国籍出願人の出願件数

が同程度である一方、日本国籍出願からの出願件数は少ない傾向だった(表 34、図 23)。

出願人属性別の構成が似通っている日本国籍と欧州国籍において出願件数でここまで

大きな差が生じている理由の一つとして、日本国籍出願人と欧州国籍出願人における資

金力の差が考えられる。欧州の製薬企業では医薬品研究開発費として年間約 308 億ユー

ロ(約 3.9 兆円、2014 年当時)が計上されているのに対し、日本の製薬企業の医薬品

135 科学技術振興機構、大学知財マネジメントの重要課題

https://www.jst.go.jp/tt/mext2017/pdf/20170207_j01.pdf(2019.1.30 アクセス)

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

研究開発費は年間約 1.5 兆円(2014 年当時)となっており、2.6 倍程度の差がある136。

また、政府から企業への直接支援について、ドイツ、フランス、英国と比較して日本の

場合は小規模の企業に対する支援が少ないことから137、ベンチャーを含めた中小企業に

対する支援の差が資金面に影響を与え、特許出願費用の不足につながっている可能性が

考えられる。

表 34 出願先国-その他出願人国籍別出願人属性別出願件数出願人属性別ファミリー出願件数

(図 5-1 のうち、その他の国への出願における出願人属性を算出)

出願人属性

企業・共同

出願

大学・研究

機関・個人 企業 大学 研究機関 個人 共同出願

件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合

日本 819 93.1% 61 6.9% 698 79.3% 51 5.8% 9 1.0% 1 0.1% 121 13.8%

米国 4,154 76.8% 1,252 23.2% 3,396 62.8% 684 12.7% 553 10.2% 15 0.3% 758 14.0%

欧州 3,796 91.6% 347 8.4% 3,329 80.4% 213 5.1% 118 2.8% 16 0.4% 467 11.3%

中国 132 94.3% 8 5.7% 92 65.7% 3 2.1% 5 3.6% 0 0.0% 40 28.6%

韓国 46 68.7% 21 31.3% 35 52.2% 12 17.9% 8 11.9% 1 1.5% 11 16.4%

その他 1,050 73.5% 379 26.5% 899 62.9% 117 8.2% 232 16.2% 30 2.1% 151 10.6%

図 23 出願先国-その他出願人国籍別出願人属性別出願件数出願人属性別ファミリー出願件数

日本国出願人

企業

698件

79.3%

大学

51件

5.8%

研究機関

9件

1.0%

個人

1件

0.1%

共同出願

121件

13.8%

合計

880件

中国籍出願人

企業

92件65.7%

大学

3件

2.1%

研究機関

5件

3.6%

個人

0件0.0%

共同出願

40件

28.6%

合計

140件

136 欧州製薬団体連合会

http://www.efpia.jp/link/EFPIA_Brochure_2016_J_09.pdf (2019.03.06 アクセス) 137 科学技術・学術政策研究所 科学技術指標 2017

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu4/siryo/__icsFiles/afieldfile/2017/11/13/13

97867_011.pdf(2019.03.06 アクセス)

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第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

(4)大学・研究機関の知財戦略・産学連携の課題について(出願人属性)

全体の出願に対する「企業が関与しない出願ファミリー数(「単独出願のうち企業単

独の出願以外と、共同出願のうち企業が関与する出願以外の和)」の割合は、主に大学・

研究機関のみからの出願を示すものである。米国籍出願人では出願の 42%であるのに対

し、欧州国籍出願人は 24%、日本国籍出願人は 27%であった(表 35)。

加えて「企業が関与しない出願ファミリー数」/論文発表件数は、研究開発力(論文

発表数)を加味した上での企業が関与しない特許出願の程度を示す 1 つの指標であるが、

米国籍が 4.4であるのに対し、日本国籍は8.8と 2倍程度になっている。このことから、

大学・研究機関にとっては特許化における大きな障壁があることが推測される(表 35)。

「平成 25 年度特許庁大学知財研究推進事業 知的財産活用に資する大学の組織的取

り組みに関する研究報告書」では、知的財産権が利活用されない原因として、「大学の

研究はそもそも事業化を目指しているわけではない」との意見や、「多くの教員が、特

許の価値を見い出していない、あるいは企業への技術移転に興味がない」「大きい大学

ほど、学会、論文発表が評価され、産学連携等の貢献は評価されにくく、業績評価に反

映されない」という問題点が提起されたとしており138、特許化の障壁の背景には研究組

織・研究者の「知財マインド」の低さに課題があることが窺える。

138 平成25年度特許庁大学知財研究推進事業 知的財産活用に資する大学の組織的取組に関する研究報告

書 https://www.jpo.go.jp/sesaku/pdf/daigaku_shien/13mitsubishi_all.pdf(2019.2.1 アクセス)

米国籍出願人

企業

3,396件

62.8%大学

684件12.7%

研究機関

553件

10.2%

個人

15件0.3%

共同出願

758件

14.0%

合計

5,406件

韓国籍出願人

企業

35件

52.2%

大学

12件

17.9%

研究機関

8件

11.9%

個人

1件

1.5%

共同出願

11件

16.4%

合計

67件

欧州国籍出願人

企業

3,329件

80.4%

大学

213件

5.1%

研究機関

118件

2.8%

個人

16件

0.4%

共同出願

467件

11.3%

合計

4,143件

その他国籍出願人

企業

899件

62.9%

大学

117件

8.2%

研究機関

232件

16.2%

個人

30件

2.1%

共同出願

151件

10.6%

合計

1,429件

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第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

また、有識者ヒアリング調査では、大学・研究機関において「企業が関与しない状況

での特許出願は(主に関連費用の調達の観点からも)困難である」との意見が挙げられ

ており、本調査もこれを裏付ける結果となっている。加えて、研究プロジェクト段階か

ら PhaseⅠまでの早期段階でライセンスインが行われた割合は、国内主要ファーマが

49%と海外メガファーマの 72%と比較して約 3 分の 2 であり、初期研究段階での特許

出願が企業と連携して行われる割合も海外と比較すれば低い傾向にあると推察される

139 140。

表 35 共同出願における詳細(図 6-f の共同出願情報をもとに作成)

項目 日本国籍出願人 米国籍出願人 欧州国籍出願人 中国籍出願人 韓国籍出願人

①共同出願のうち企業が関与す

る出願数 201 422 403 77 31

②企業単独の出願 291 1,645 1,322 625 84

③企業が関与する出願数

(①+②) 492 2,067 1,725 702 115

④全体 671 3,555 2,277 1,247 279

⑤企業が関与しない出願数

(④-③) 179 1488 552 545 164

⑥企業が関与する出願の割合

(③/④) 73% 58% 76% 56% 41%

⑦企業が関与しない出願の割合

(⑤/④) 27% 42% 24% 44% 59%

⑧論文数 1,572 6,491 5,160 2,497 513

⑨企業が関与しない出願/論文

数(③/⑧) 8.8 4.4 9.3 4.6 3.1

2.免疫調節

(1)免疫チェックポイント阻害療法

2017 年の免疫チェックポイント阻害療法の世界市場は 113 億 4,300 万ドル、約 1

兆 2,500 億円と推測されている。2017 年 5 月に Evaluate が発表した 2022 年の世界

医薬品売上予想上位 20品目のうち、免疫チェックポイント阻害療法として Opdivo(抗

PD-1 抗体)、Keytruda(抗 PD-1 抗体)、Tecentriq(抗 PD-L1 抗体)の抗体 3 製品が

含まれている。2016 年の売り上げと比較した 2022 年における各製品の売り上げの増

加率は Opdivo:約 2.1 倍、Keytruda:約 6.8 倍、Tecentriq:約 31 倍であり、市場は

今後劇的に拡大することが予想されるが、先行して承認された抗 PD-1 抗体が市場に

おいては優位に立つと考えられる。

近年は、各種抗がん剤やその他の治療法との併用療法が注目されており、各製薬会

社は併用療法に関する臨床開発を積極的に進めている状況である(第 2 章第 1 節 1、

第 2 節 1)。

139 医薬産業政策研究所 製薬産業を取り巻く現状と課題~よりよい医薬品を世界へ届けるために~第三部

社会環境とビジネス構造(産業レポート No.5)http://www.jpma.or.jp/opir/sangyo/201412_3.pdf

(2019.01.30 アクセス) 140 経済産業省、バイオベンチャーの現状と課題

http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/bio_venture/pdf/001_07_00.pdf(2019.01.30 アクセス)

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第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

免疫チェックポイント阻害療法は、特許出願動向調査では 2012 年、研究開発動向

調査では、2013 年以降に活発化している技術分野であることが示された(図 9-a、図

17-a)。また、この出願や論文発表の多くを、PD 系阻害(特許出願:54.3%、論文発

表:47.8%)、及び CTLA-4 阻害(特許出願:13.0%、論文発表:32.7%)、PD 系+CLTA-4

阻害(特許出願:7.7%、論文発表:2.1%)が占めている状況にある(図 9-a、図 9-a-1、

図 9-a-2、図 17-a、図 17-a-1、図 17-a-2)。特に PD 系阻害に関して特許出願や論文

発表が集中している要因は、臨床における有効性が CTLA-4 阻害と比較し高いことが

示唆されていること141、及び PD 系阻害との併用を軸とした新規がん免疫療法の開発

に注力しているためと推測される。

PD 系阻害、CTLA 阻害とは異なる免疫チェックポイント阻害療法のターゲットとし

て、LAG-3 阻害、TIGIT 阻害等が挙げられているが、特許出願動向、研究開発動向で

は、PD 系阻害や CTLA-4 阻害のような急激な増加傾向は認められない(図 11-a、図

19-a)。前述したとおり、臨床上の有効性が示されれば、PD 系阻害や CTLA-4 阻害と

同様の増加の傾向になると推測される。

(2)その他免疫抑制阻害療法・免疫増強

その他免疫抑制阻害療法・免疫増強に関する医薬品として承認された製品はない。

現時点で確認されている免疫チェックポイント阻害療法以外のターゲットの動向と

しては、PhaseⅢ試験では、IDO 阻害と抗 PD-1 抗体の併用療法、CXCR4 阻害と G-CSF

の併用療法の開発が進んでいる(第 2 章第 2 節)。近年だと特許出願では IDO 阻害に

関する出願が増加しており、論文発表では制御性 T 細胞をターゲットにした論文が

も多い(図 11-b、図 19-b)。

現在免疫増強の PhaseⅢ試験のターゲットとしては 4-1BB、IL-2 受容体、TLR9 と各

社別々の開発を進めている。また、3 製品については抗 PD-1 抗体との併用療法の開

発が実施されている。(第 2 章第 2 節)。特許出願件数はサイトカイン・ケモカイン(抑

制性を除く)と TLR アゴニストが拮抗しており、論文発表件数はサイトカイン・ケモ

カイン(抑制性を除く)が拮抗しており、次いで TLR アゴニストが多かった(図 11-c、

図 19-c)。

その他免疫抑制阻害療法・免疫増強ともに今後の臨床開発成功についてはターゲッ

トの選択が大きく鍵を握ると推察される。

3.養子免疫療法

養子免疫療法では CD19 をターゲットとした Kymriah、Yescarta が米国で先行して上市

されており、市場が形成されている(第 2 章第 1 節)。

特許出願動向調査では 2013 年を境に急増し、論文発表件数については特許出願動向調

査ほどの 2013 年以降の顕著な立ち上がりはないものの 2002 年以降継続的に増加してお

り、研究活動が活発化している技術分野であることが示された。具体的には導入遺伝子

/ターゲットに特徴がある特許出願・論文発表について、CAR は特許出願:62.6%、論文

141 Jeffrey Weber et al. (2017) Adjuvant Nivolumab versus Ipilimumab in Resected Stage III or IV

Melanoma. N Engl J Med. 377(19):1824-1835.

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

発表:66.9%、及び TCR は特許出願:31.5%、論文発表:26.6%を占めており、全体の増加

を牽引している状況にある(図 9-d-2、図 9-d-2-1、図 9-d-2-2、図 17-d-2、図 17-d-2-1、

図 17-d-2-1)。

薬効に関する技術として、特許出願では導入遺伝子・ターゲットや、エフェクター細

胞、抗原受容体の配列設計・改変、細胞の製造技術等の技術開発に特徴を有する出願は、

米国籍出願人、欧州国籍出願人、中国籍出願人が中心であり(図 10-d)、論文発表に関

しては、米国籍出願人、欧州国籍出願人が中心であった(図 18-d)。

特に抗原受容体の配列設計・改変の特許出願件数は 2014 年以降に大きな増加が認めら

れた。要因としては、米国籍出願人、欧州国籍出願人、中国籍出願人による大幅な出願

件数の増加が挙げられる(図 9-d-1)。また、論文発表件数は 2008 年からの増加が認め

られた(図 17-d-1)。特許出願・論文発表シェアは米国籍出願人・研究者、欧州国籍出

願人・研究者の割合が高いことが示されている(図 9-d-1、図 17-d-1)。

細胞の製造技術は米国籍、欧州国籍、中国籍を中心に取り組まれている傾向にある(図

10-d、図 18-d)。一方、製剤化に関する特許出願・論文発表は少ない傾向であることが

示された。また、剤形については、米国籍出願人・研究者、中国籍出願人・研究者に特

許出願・論文発表が集中していることが示された(図 10-e、図 18-e)。

この分野における我が国の特許出願及び研究開発のシェアは高いとは言えない一方で、

iPS 細胞を含む再生医療の施策や法整備が進められ、細胞製剤を開発する環境が整いつ

つある。武田薬品工業、ニプロ、タカラバイオにより新たな CAR-T 細胞療法、TCR-T 細

胞療法の開発の開発が進められている。また、京都大学 iPS 細胞研究所による iPS 細胞

由来のキラーT 細胞療法など、養子免疫療法への適用の動きもある142。

4.腫瘍溶解性ウイルス療法

2016 年の Imlygic の世界での売上高は、4,500 万ドルであり、2022 年には 2 億 5,000

万ドルという約 5.6 倍の成長が見込まれている。今後、他の臨床試験が良好な試験成績

を示すことができれば、市場は拡大していく可能性がある(第 2 章第 1 節、第 2 節)。

腫瘍溶解性ウイルス療法の上市製品である Oncorine、Imlygic のうち、適応拡大に向

けて開発を進めている Imlygic が注目に値する。現在、Imlygic と Yervoy の併用療法の

臨床試験が進行しており、有効性・安全性が認められれば強力ながん治療の選択肢の一

つとなり得る(第 2 章第 1 節、第 2 節)。

特許出願動向調査からは、暫定値ではあるが 2016 年に急激に増加をしており、研究開

発動向調査からは、全期間にわたって論文発表件数が 2002 年から 2017 年の間に 2.8 倍

と漸増していることが示された(図 9-e、図 17-e)。また、ウイルスの種類としてはいず

れもアデノウイルスが も多い状況ではあるが(図 11-f、図 19-f)、開発が進んでいる

ウイルスの種類は単純ヘルペスウイルス1型である(第 2 章第 1 節、第 2 節)。

我が国のシェアは特許出願動向・研究開発動向のいずれも 6%台と低い状況にはあるが

(図 9-e、図 17-e)、タカラバイオ、オンコリスバイオファーマ、アステラス・アムジェ

ン・バイオファーマ、第一三共等が臨床試験を進めており、国内の開発企業数は海外企

142 京都大学 iPS 細胞研究所 ニュース 研究活動

https://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/pressrelease/news/181116-010000.html

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

業に匹敵することから、我が国においても開発が活発な分野であると考えられる(第 2

章第 1 節、第 2 節)。

5.がんワクチン療法

当該領域において、抗原提示細胞ワクチンである Provenge が米国、及び欧州で承認さ

れていたが、開発企業の倒産、欧州での販売承認撤回等から市場としては限定的である

ことが窺える。(第 2 章第 1 節)

特許出願動向調査としては、2002 年~2014 年の期間では、特許出願件数が減少傾向で

あったが、暫定値ながら 2015 年に欧州国籍出願人、米国籍出願人、中国籍出願人が出願

件数を伸ばしている(図 9-f)。研究開発動向調査としては漸増の傾向にある(図 17-f)。

がんワクチン療法では他領域と比較し我が国のシェアは高いという特徴があり、特に

ペプチドワクチン(特許出願:15.1%、論文発表:15.0%)、抗原提示細胞ワクチン(特許

出願:18.4%、論文発表:12.8%)のシェアの高さが示すように、日本ががん免疫療法にお

いて継続的に研究を重ねてきた領域であることが窺える(図 9-f-1、f-2、f-3、図 17-f-1、

f-2、f-3)。我が国では久留米大学、東京大学医科学研究所、大阪大学、三重大学等がが

んペプチドワクチン療法の研究を進めており(表 29)、抗原提示細胞ワクチンは再生医

療等の安全性の確保等に関する法律のもと、第三種再生医療等製品として医療機関を中

心に利用されている。

6.その他

(1)併用に関する動向

本調査結果により、特許出願、及び論文発表のいずれにおいても、がん免疫療法と

化学療法・放射線療法等との併用、またはがん免疫療法との併用が盛んに取り組まれ

ていることが明らかになった(図 10-a、図 11-e、図 18-a、図 19-e)。特に、がん免

疫療法と、がん免疫サイクルの異なるステップをターゲットとしたがん免疫療法との

併用については、特許出願動向において併用全体のうち 64%を占める状況となってい

る(図 10-a、図 18-a)。

また、2012 年を境に免疫チェックポイント阻害療法との併用療法の特許出願は

2015 年まで増加傾向にあった(図 9-h)。現在、作用機序及び奏効率の観点から、免

疫チェックポイント阻害剤である PD-1 阻害剤が、当面の併用療法に用いられるがん

免疫療法の主役であり、このことは欧米製薬企業が各社独自の PD-1 阻害剤を開発し

ていることからも推認できる(表 4、表 13)。

特許出願件数及び論文発表件数の結果より、併用の組み合わせとして も多いのは

がんワクチン療法と、アジュバント、免疫増強であり、がん免疫療法全般と併用が多

いのは化学療法またはがんワクチン療法であった(図 10-a、図 18-a)。がんワクチン

療法は古くから研究され、併用に関する研究が進んでいることに対して、その他のが

ん免疫療法は研究の歴史が浅いことから、研究開発が行われてきた割合としては少な

いことが推察される。

免疫チェックポイント阻害療法と養子免疫療法または腫瘍溶解性ウイルス療法と

の併用に関する特許出願件数及び論文発表数は、ともに世界的に非常に少ない状況に

ある(図 10-a、図 18-a)。このような傾向は、免疫チェックポイント阻害剤を主軸と

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要約

第1部

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資料編

第6部

した併用についてだけでなく、その他のがん免疫療法同士の併用においても見られ、

免疫調節(免疫抑制阻害剤、免疫増強剤を含む)同士及び免疫調節とがんワクチンの

併用に関する特許出願件数及び論文発表数が多く、免疫調節と養子免疫療法または腫

瘍溶解性ウイルスとの併用は少なくなっている(図 10-a、図 18-a)。この結果より、

養子免疫療法または腫瘍溶解性ウイルス療法の併用に関する研究開発は始まったば

かりであることが示唆される。

(2)バイオマーカーに関する動向

バイオマーカーの特許出願件数は 2012 年以降ゆるやかな増加傾向、論文発表件数

は 2012 年以降急激な増加を示している(図 9-g-1、図 17-g-1)。この動向についても

がん免疫療法の奏効率向上を目指した動きであることが考えられる。抗体製剤である

免疫チェックポイント阻害剤は薬価が高くなる傾向があり、より治療が成功する可能

性のある患者を見出すコンパニオン診断薬・検査の手法を確立することによって、医

療費削減が狙えることから、バイオマーカーは我が国にとって研究開発の方向性の一

つとなる可能性がある。しかしながら、日本国籍のバイオマーカーの世界における特

許出願のシェアは 6.2%(図 9-g-1)であるのに対して世界における論文発表件数のシ

ェアは 12.1%(図 17-g-1)であり約 2 倍異なっており、コンパニオン診断薬・検査に

利用されるバイオマーカーは大学・研究機関において発明されることが多い一方で、

十分な特許取得のための資金がない可能性が示唆されている。

(3)高機能抗体技術に関する動向

現在開発の進んでいる免疫チェックポイント阻害療法のモダリティは抗体が大半

を占めている状況にあり、LAG-3、TIM-3 等を標的にした開発においても、抗体での

開発が進められている143。

特許出願動向の解析結果により、世界的には抗体のモダリティにおける多機能性化

への取組みが盛んになっていることが明らかになった(図 12-a)。その背景としては、

差別化を図るため bi-specific 抗体等の機能付加された改良品のニーズが高まる可

能性が推察される。

一方で、日本においては抗体の多機能性に関するファミリー出願件数の割合は

4.8%、論文発表件数の割合は 6.3%と低い状況にある(図 12-a、図 19-d)。平成 26 年

度特許出願技術動向調査「抗体医薬」においても、「新規な抗体分子」に関する日本

国籍特許出願の比率が低く、「二重特異性抗体」、「抗体医薬複合体」等に対する取組

が遅れていると指摘されており、基盤技術の脆弱性が現れる結果となっている。

(4)抗体から別のモダリティへの移行に関する動向

市場動向の結果から、現状、免疫チェックポイント阻害療法の臨床開発は外資系企

業が先行している状況にある。我が国の開発の方向性の一つとして、すでに有効性が

143 小野薬品工業 開発品(がん領域)の主な進捗状況

https://www.ono.co.jp/jpnw/ir/pdf/shincyoku/3034h_kai.pdf(2019.02.21 アクセス)

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要約

第1部

第2部

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第5部

資料編

第6部

明らかとなっているターゲットについて抗体からモダリティを変更し、より安価に製

造できるモダリティを開発することにより競争力を高めるということが考えられる。

特許出願動向の解析結果により、世界的には既に研究開発が進んでいる PD 系阻害

において、抗体以外のモダリティである核酸、低分子等の出願が幅広く認められた(図

12-b)。これらのモダリティは、ターゲットに対する特異性の程度に違いがあるもの

の、抗体と比較して安価に製造できるというメリットが存在する。一方で、我が国に

おいては同領域での抗体以外のモダリティに関する特許出願は少ない状況にある。

がん免疫療法に限定されないが、近年、分子量サイズとして低分子よりも大きく抗

体よりも小さい「中分子」というモダリティが注目されており、国内では中外製薬、

塩野義製薬が開発を進めている144 145。今後、がん免疫療法治療薬についても適用さ

れる可能性がある。

(5)がん免疫関連の規制

がん免疫療法の研究開発ガイドラインについて、欧米では既に作成されたガイドラ

インやガイダンスの運用や新たなガイドラインの検討等が行われている(第 3 章第 2

節)。一方我が国においてはがん免疫療法の研究開発に関連したガイドラインは存在

せず、平成 25 年度に「がんワクチン・免疫療法の臨床開発に関するガイドライン案

の提案」がなされ、実際に同年度から平成 28 年度までがんワクチンの臨床有効性、

安全性の評価方法等が検討された146 147。この中では、がん免疫療法開発のためのガ

イダンス(早期臨床試験)、後期臨床試験ガイダンス(案)、がん治療用ワクチン・ア

ジュバント非臨床試験ガイダンス(案)、細胞製品の品質、非臨床試験ガイダンス(案)

等を含む検討がなされている(第 3 章第 2 節)。

(6)カルタヘナ法

養子免疫療法・ウイルス療法の研究開発にはウイルスの使用が必要不可欠であるが、

我が国はカルタヘナ法の規制により医薬品を対象としたウイルス使用に対しても規

制対象となっているため、そのような規制のない欧米に比べて開発を進める上で不利

な状況にある。ウイルスベクター等の遺伝子治療に関する臨床試験を実施する場合、

カルタヘナ法に基づいた申請と生物多様性影響評価が求められるが、承認までに非常

に時間がかかること、また投与後の患者からのウイルス排出の拡散防止措置として患

者を個室管理しなければならない(第 3 章第 2 節)。

144 中外製薬 ニュースリリース

https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20180726153000_5.html(2019.2.26 アクセス) 145 塩野義製薬 シオノギの研究開発

http://www.shionogi.co.jp/ir/pdf/p180315.pdf(2019.2.26 アクセス) 146 医薬品等審査迅速化事業費補助⾦ (⾰新的医薬品・医療機器・再⽣医療製品実⽤化促進事業) 平成 25

年度応募 https://www.pmda.go.jp/files/000163545.pdf (2019.2.1 アクセス) 147 レギュラトリーサイエンス推進業務 革新的医薬品・医療機器・再生医療製品実用化促進事業 がんワ

クチンの臨床有効性、安全性の評価方法

https://www.pmda.go.jp/rs-std-jp/facilitate-developments/0013.html (2019.2.1 アクセス)

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第1部

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資料編

第6部

7.我が国の大学・研究機関発のシーズ開発事例

我が国において、がん免疫療法の研究開発、及び実用化が他国と比較し遅れている状

況にある。一方で、我が国の大学・研究機関に所属する研究者により発見されたシーズ

をもとに、企業への橋渡しが行われ臨床試験が実施されている DS-1647(G47Δ、腫瘍溶

解ウイルス)(藤堂教授(東京大学)-第一三共)、C-REV(canerpaturev)(西山教授(名

古屋大学)-エムズサイエンス-タカラバイオ-大塚製薬)、NY-ESO-1・siTCR(TBI-1301)

(珠玖教授(三重大学)-タカラバイオ-大塚製薬)、及び上市に至った Opdivo

(nivolmab)(本庶教授(京都大学)-小野薬品工業-ブリストル・マイヤーズスクイブ)

は、我が国のがん免疫療法の成功事例であるといえる。これらの事例について、「知的財

産権の確保」「研究開発資金の確保」の 2 点から、成功要因を分析した。表 36 にそのシ

ーズの成功要因を示す。

表 36 我が国の研究者由来のシーズの成功要因

製品名・開発品名

DS-164 (G47Δ)

C-REV(canerpaturev)

NY-ESO-1・siTCR(TBI-1301)

Opdivo (nivolumab)

シーズの発見者

藤堂 具紀 教授 (東京大学)

西山 幸廣 教授 (名古屋大学)

珠玖 洋 教授 (三重大学)

本庶 佑 教授 (京都大学)

連携面 PhaseⅡまで医師主導治験が実施され、第一三共との共同開発がスムーズに進展

エムズサイエンスとの研究開発 タカラバイオとの提携(同社が米国における臨床試験も実施)

2005 年、タカラバイオが三重大学に寄付講座を設置 2008 年、タカラバイオと臨床試験開始

小野薬品工業、メダレックスとの提携 ブリストル・マイヤーズスクイブによるメダレックス買収

知的財産 東京大学より特許出願

エムズサイエンスとの共同出願 タカラバイオ、中部TLO との共同出願 2016 年、大塚製薬がタカラバイオと独占的ライセンス契約

タカラバイオとの共同出願

京都大学と小野薬品工業との共同出願

資金面 文部科学省「がんTR 事業」、「橋渡し研究支援推進プログラム」等の基礎研究~臨床段階までの継続的な公的研究資金(特に臨床試験を含む AMED の多額の支援)

1980 年代から基礎研究を実施、科研費等を活用 2010 年以降はタカラバイオ及び大塚製薬と提携

タカラバイオとの提携による資金 医師主導治験における厚労科研費の活用 (2012 年) AMED の A-STEP 制度(2013 年~)等活用 タカラバイオ及び大塚製薬と提携

小野薬品工業、メダレックス・ブリストル・マイヤーズスクイブととの提携 基礎研究段階では国の研究資金を活用 医薬基盤研究所等の公的研究資金の活用

その他 先駆け審査制度の適用による開発加速化希少疾病用再生医療等製品の指定

先駆け審査制度の適用による開発加速化

(1)知的財産権の確保

上記の国内における成功事例の 4 事例中の 3 事例では、研究開発の初期段階から大

学と企業との共同出願が行われており、そこで確保された知的財産権がパイプライン

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とともに、さらに大手の製薬企業とのライセンス契約等に結びついている。このよう

に、実用的で排他的な知的財産権の確保には、研究開発初期における知財戦略の構築

が重要であり、その知見を有する企業から、共同研究等を通して研究開発初期から支

援を受けることが極めて有用である。

一方で、上述した 3 事例のように研究開発初期から企業と連携を行うことができる

ケースは稀である(第 6 章第 1 節(4)大学・研究機関のみでの出願の課題について

(出願人属性))。大学から出願される特許については、その質や管理体制等にビジネ

ス面で課題があることが指摘されており148、大学・研究機関内での、質の高い知的財

産権の確保を支援する仕組みの構築は、重要な課題として挙げられる。

(2)研究開発資金の確保

医療分野の製品開発では、基礎研究から前臨床研究、臨床研究、そして承認申請に

至るまでの長期間に渡り、継続的な研究開発費を必要とする。成功事例のうち 3 事例

C-REV、NY-ESO-1・siTCR、Opdivo は企業との提携により資金を確保している。DS-1647

では臨床試験・医師主導治験のための準備期間にて、橋渡し支援を図るグラントの活

用がなされており、臨床上の有効性・安全性に関するデータの取得を経て、企業との

連携へと繋がっている。切れ目のない研究開発を達成するための、長期的な視点での

資金的支援が重要である。

148 平成 29 年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究報告書 スタートアップが直面する

知的財産の課題及び支援策の在り方に関する調査研究報告書

https://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/chousa/pdf/zaisanken/2017_04_zentai.pdf(2019.02.01 アクセ

ス)

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第2節 提言

第 1 節に示した総合分析を基に、日本の技術競争力、産業競争力について分析を加え

るとともに、本調査を進めるに当たって設けられた委員会の助言、有識者へのヒアリン

グを踏まえたがん免疫療法に関する提言を、以下の【提言1】【提言2】【提言3】にま

とめた。

免疫系によりがん細胞が認識され排除されるまでの一連の流れを「がん免疫サイクル

(Cancer-immunity cycle)」と呼び、そのメカニズムは、①がん抗原の放出、②がん抗

原の提示、③抗原認識・活性化、④T 細胞の遊走、⑤T 細胞の腫瘍浸潤、⑥T 細胞による

がん細胞の認識、⑦腫瘍細胞の破壊、という 7 つの主要なステップで構成されている。

がん免疫サイクルが正常に機能している場合、がん細胞は体内より排除されることが

期待されるが、多くのがん患者では①~⑦の一つ以上のステップにおいて、様々な機構

による過度な抑制、機能不全が生じていると考えられている(第 1 章図 1)。がん免疫療

法においては、がん免疫サイクルのいずれかのステップの機能の正常化もしくは増強を

図ることで、がん免疫サイクル全体の循環を正常化し、がん細胞の排除に至るがん免疫

応答の活性化を目指す各種アプローチが試みられている。

メラノーマに対する画期的な治療効果をもたらすがん免疫療法として近年脚光を浴び

た免疫チェックポイント阻害剤は、主としてステップ⑦に作用する PD-1 阻害剤(抗 PD-1

抗体等)であるが、単剤による奏効率は依然 20~30%程度であり、ノンレスポンダーを

救済するには、ステップ①~⑥に作用する薬剤との併用が必要とされている。またステ

ップ⑦に作用する PD-1 阻害剤とステップ③に作用する CTLA-4 阻害剤の併用療法が我が

国を含め承認されており、更なる治療対象の拡大及び治療効果の向上という観点から、

がん免疫サイクルの異なるステップに作用する薬剤の併用療法に大きな期待が寄せられ

ている。

本調査における市場動向調査(第 2 章第 1 節表 5、表 13、表 15、表 18)、特許出願動

向調査(第 4 章第 3 節図 10-a、10-b、図 11-e)、及び研究開発動向調査(第 5 章第 3 節

図 18-a、18-b、図 19-e)の結果においても、がん免疫療法同士の併用についての研究が

世界的に盛んに実施されていることが明らかとなった。特に、ステップ③または⑦に作

用する免疫チェックポイント阻害剤とステップ②に作用するがんワクチンとの併用につ

いては、全体のうち特許出願件数では 7.3%を占める状況となっており、がん免疫サイク

【提言1-A】 研究開発の方向性 ~複合的免疫療法に向けた開発~

現在の研究開発のトレンドは PD-1 阻害剤を軸とした併用療法に移行している。現状、

がん免疫療法の併用療法の分野における研究においても欧米が先行している状況だが、

治療効果を大幅に向上する組み合わせは未だ見つかっていない。がん免疫療法を含む

様々ながん治療と養子免疫療法や腫瘍溶解性ウイルスとの併用については世界的にみて

も 先端の領域であるし、がんワクチンについては日本もこれまで研究を続けてきた分

野であることから、これらの領域で大幅な治療効果の向上をもたらすような、日本発の

併用療法が開発されることが期待される。

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ルの異なるステップに作用する薬剤の併用に関する研究開発は今後も加速的に増加して

いくと推測される。

現在、作用機序及び奏効率の観点から、免疫チェックポイント阻害剤である PD-1 阻害

剤が、当面の併用療法に用いられるがん免疫療法の主役であり、このことは欧米製薬企

業が各社独自の PD-1 阻害剤を開発していること(第 2 章第1節表 4、表 13)からも推認

できる。本調査における特許出願動向調査においては、PD 系阻害剤に関する特許出願件

数は日本 3.6%、米国 50.1%、欧州 18.5%であり(第 4 章第 3 節図 9-a-2)、この傾向は研

究開発動向調査の論文発表件数でも同様であること(第 5 章第 3 節図 17-a-2)から明ら

かなように、日本は PD 系阻害剤の開発で欧米に大きく先行されている状況である。

また、がん免疫療法同士の併用における PD-1 阻害剤を含む免疫チェックポイント阻害

剤との併用の割合をみても、日本は欧米と比較して後れをとっていることがわかる。し

かし、その内訳をみると、免疫チェックポイント阻害剤と養子免疫療法または腫瘍溶解

性ウイルスとの併用に関する特許出願件数及び論文発表数は、ともに世界的に非常に少

ない状況にある(第 4 章第 3 節図 10-a、10-b、第 5 章第 3 節図 18-a、18-b)。このよう

な傾向は、免疫チェックポイント阻害剤を主軸とした併用についてだけでなく、その他

のがん免疫療法同士の併用においても見られ、免疫調節(免疫抑制阻害剤、免疫増強剤

を含む)同士及び免疫調節とがんワクチンの併用に関する特許出願件数及び論文発表数

が多く、免疫調節と養子免疫療法または腫瘍溶解性ウイルスとの併用は少なくなってい

る(第 4 章第 3 節図 10-a、第 5 章第 3 節図 18-a)。

このように養子免疫療法または腫瘍溶解性ウイルスを用いたがん免疫療法の併用は、

世界的にみても研究開発は始まったばかりの状況であることから、我が国も参入する余

地は存在するものと推測される。加えて、日本の大学・研究機関発の養子免疫療法、腫

瘍溶解性ウイルスの研究開発が実用化間近まで進展していること(第 2 章第 2 節 2、3)、

免疫チェックポイント阻害剤とこれら療法との併用に未だ承認品目がないことを踏まえ

ると、免疫チェックポイント阻害剤とこれら療法の複合的免疫療法の早期の確立が期待

される。国立がん研究センターでは腫瘍溶解性ウイルスと Pembrolizumab の医師主導治

験を開始するといった動きがあることから、腫瘍溶解性ウイルスと免疫チェックポイン

ト阻害の併用療法は有望な組み合わせである可能性がある。

がんワクチンについては、免疫チェックポイント阻害剤との併用を含め他のがん免疫

療法との併用に関する特許出願件数及び論文発表数は、米国が多く、日本は少ない状況

であるものの(第 4 章第 3 節図 10-b、第 5 章第 3 節図 18-b)、未だ臨床において十分な

治療効果が確認され、承認された品目はない。一方で、日本では長年にわたり継続的に

がんワクチンの研究開発が進められてきたこと(第 4 章第 3 節図 9-f、第 5 章第 3 節図

17-f)を踏まえると、単剤で有効性を示す日本発のがんワクチンの開発には至っていな

いものの、その経緯も含めて日本にはがんワクチンに関する知見が蓄積されているとい

える。がん免疫サイクルにおいてがんワクチンとは異なるステップで作用し、かつ、承

認済みまたは承認が近い免疫チェックポイント阻害剤や CAR-T 細胞療法といったがん免

疫療法とがんワクチンとを併用することにより、安全かつ実用性のあるがんワクチン療

法を創製する可能性がある。

また、がん免疫サイクルに対する知見が深まるにつれ、我が国で研究開発が進められ

ているシーズ、あるいは既に製品化がなされた薬剤について、新たながん免疫サイクル

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の免疫増強作用、または免疫抑制阻害作用が見いだされる可能性もあり(第1章第1節)、

これらの薬剤と免疫チェックポイント阻害剤との併用による複合的がん免疫療法の確立

も期待される。

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2017 年に米国で 2 品目が上市された CAR-T 細胞療法は、腫瘍細胞の表面抗原を認識す

るキメラ抗原容体(CAR)を発現させた T 細胞を用いるものであり、B 細胞性の血液がん

において高い奏効率を示したことから免疫チェックポイント阻害剤に次ぐがん免疫療法

として期待されている。また、T 細胞レセプター遺伝子を導入した T 細胞を用いる TCR-T

細胞療法は、がん細胞表面に発現される HLA 及びその上に提示される腫瘍抗原由来ペプ

チドの複合体を標的としているため、表面抗原のみを標的化できる CAR-T 療法と異なり、

細胞内の腫瘍関連抗原を標的にできる。TCR-T 細胞療法は血液がんを標的とした開発が

活発なCAR-T細胞療法に相対して固形がんを標的とした開発が多く(第2章第2節表19)、

その研究開発成果に期待が寄せられている。

本調査においても、導入遺伝子に特徴がある養子免疫療法のうち、CAR または TCR に

関する特許出願件数及び論文発表数が 2012 年以降に増加していること(第 4 章第 3 節図

9-d、図 9-d-2、図 9-d-2-1、図 9-d-2-2、第 5 章第 3 節図 17-d、図 17-d-2、図 17-d-2-1、

図 17-d-2-2)、また、臨床試験数も近年増加傾向にあること(第 2 章第 2 節、表 20、表

22)が明らかとなっている。

一方、実施された臨床試験の結果や米国で上市された CAR-T 細胞療法の使用経験から、

遺伝子改変 T 細胞療法の課題として、重篤な副作用、再発の問題、高額な治療費等が浮

き彫りとなっている。

現在、抗原受容体の配列設計・改変等の技術開発が世界的になされていることが本調

査結果において明らかになったように(第 4章第 3節図 9-d-1、第 5章第 3節図 17-d-1)、

上記課題を包括的に解決しうる抗原受容体の配列設計・改変等の技術開発は、今後遺伝

子改変 T 細胞療法の普及においてますます重要性が増すものと考えられる。本調査結果

における特許出願件数及び論文発表数は、数的規模では欧米に先行されている状況であ

るものの(第 4 章第 3 節図 9-d-1、第 5 章第 3 節図 17-d-1)、日本の大学・研究機関と企

業により共同で研究開発された遺伝子改変型 T 細胞療法が実用化間近まで進展している

こと、及びネオアンチジェン等の新規腫瘍特異的抗原の発見等によって重篤な副作用の

軽減や再発の防止といった課題を克服する技術革新がなされる可能性もあることから、

日本における今後の研究開発動向が注目される。

また、高額な治療費となる大きな要因は、細胞培養やウイルスベクターの使用に関連

した製造コストとされているが、他家細胞の利用、培地の改良や自動細胞培養装置等の

細胞製造技術の改良が解決策として想定される。本調査結果においては、製造方法に関

【提言1-B】研究開発の方向性 ~遺伝子改変 T 細胞(CAR-T 細胞、TCR-T 細胞)療法

の開発推進~

CAR-T 細胞療法は、B 細胞性の血液がんに対して著効を示したことから注目を集めてい

る。研究開発は欧米が先行しているものの、副作用や費用の問題等、依然として多くの課

題を有しており、我が国で推進してきた iPS 細胞関連技術を含めた細胞製造等の技術開発

は、それらの課題解決の切り口になりうる。現状、市場としてはまだ成長段階にあり、技

術革新の余地があることから、今後これらの課題を克服する遺伝子改変 T 細胞療法の開発

が期待される。

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

する技術(特許出願:332 件、論文発表:352 件)は欧米、中国を中心に取り組まれてお

り、製剤化技術(特許出願:94 件、論文発表:20 件)は世界的にも少ないことが明らか

になった(第 4 章第 3 節図 10-d、図 10-e、第 5 章第 3 節図 18-d、図 18-e)。一方で、我

が国では、国策として iPS 細胞への研究開発に予算を投入してきたこともあり、他家細

胞を供給可能な iPS 細胞バンクの存在、細胞製剤の製造ノウハウの蓄積、臨床試験等の

法的整備の確立等細胞製剤を開発する環境は整いつつある。さらに、自家 T 細胞を用い

た治療効果は、採取元である患者の T 細胞の状態に大きく左右されることから、品質の

安定した他家 T 細胞の利用は治療効果の点においても期待される。これらの状況を踏ま

えると、我が国においても、遺伝子改変細胞の大量生産技術、製剤化技術、レギュラト

リーサイエンスに注力し、革新的な治療法の実用化及びその普及を支援するための研究

開発を継続していく必要があると推測される。

現在、世界で上市されている遺伝子改変 T 細胞療法は米国の 2 つの CAR-T 細胞療法の

みであり、PhaseⅡ以降の臨床試験が実施されている開発品も 5 製品と少ないことから

(第 2 章第 1 節 2、第 2 節 2)、遺伝子改変 T 細胞療法は開発途上の領域といえる。今後、

日本に蓄積された iPS 細胞技術や細胞製剤の製造環境を活かし、上記課題を克服する開

発品の上市が期待される。

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

がん免疫療法は、外科手術、化学療法、放射線療法に次ぐ、がん治療の方向性を変え

る革新的な技術として国際的に注目されている技術であり、2018 年にはがん免疫療法の

1 つの分野である、免疫チェックポイント阻害療法の医療への貢献として、James P.

Allison 教授(米国 MD Anderson Cancer Center)、本庶 佑教授(京都大学大学院医学研

究科・医学部)に対して、ノーベル生理学・医学賞の授与がなされている。

一方で本調査結果から、がん免疫療法における日本からの特許出願・論文発表は他国

と比較し少ない状況にあり、研究開発における競争力の低さが懸念される。(第 4 章第 2

節図 4-2、第 5 章第 2 節図 14)

がん免疫療法においては、「免疫調節」「養子免疫療法」「腫瘍溶解性ウイルス」の各領

域で承認された製品又は後期開発品があり、これらの事例では、新規革新的技術の創出

を大学・研究機関が担い、企業が引き継ぎ実用化を推進させてきた経緯がある。(総合分

析 7.我が国の大学・研究機関発のシーズ開発事例)

これらの事例に倣いつつ、知的財産権を適切に確保することで、日本の技術競争力及

び産業競争力の強化を図ることが重要である。大学・研究機関から企業への技術移転を

より円滑に進めるために必要な点として、「大学・研究機関の知財部機能の充実化」、「研

究組織・研究者の知財マインドの向上」、「知財関連費用の調達環境整備」、「研究初期段

階での早期の産学連携」、「ベンチャー企業に対する支援の強化」、「オールジャパンでの

支援体制の構築」の6点が挙げられ、以下にこれについて詳述する。

1.大学・研究機関の知財部機能の充実化

新規革新的技術の創出を担う大学・研究機関に対しては、企業とのアライアンス前の

早期段階から所属する研究者を適切に支援し、質の高い知的財産権を確保する体制の構

築が重要であり、そのためには、大学・研究機関の知財部機能を充実させる必要がある。

一方で、各大学・研究機関がそれぞれ、がん免疫療法等に専門性を有する知財人材を確

保することは困難であるため、組織外からの支援を受けることが必要である。

大学・研究機関に対する既存の知財支援制度として、例えば、独立行政法人工業所有

権情報・研修館では、産学官連携型の研究開発プロジェクトを推進している大学や公的

資金が投入された国の研究開発プロジェクトに対して、「知的財産プロデューサー派遣

事業」149や、「産学連携知的財産アドバイザー派遣事業」150を実施し、特許出願戦略や

149 独立行政法人工業所有権情報・研修館「知的財産プロデューサー派遣事業」

http://www.inpit.go.jp/katsuyo/ippd/index.html(2019.02.01 アクセス) 150 独立行政法人工業所有権情報・研修館「産学連携知的財産アドバイザー派遣事業」

http://www.inpit.go.jp/katsuyo/uicad/index.html(2019.02.01 アクセス)

【提言2】知的財産権の確保に対する支援の在り方

知的財産の取得(大学・研究機関の知財部機能の充実化、研究組織・研究者の知財マ

インドの向上)、知的財産の維持(知財関連費用の調達環境整備、研究初期段階での早期

の産学連携)、知的財産の活用(ベンチャー企業に対する支援、オールジャパンでの支援

体制の構築)を通じて、日本の技術競争力及び産業競争力の強化を図ることが重要であ

る。

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

特許活用戦略等の知的財産戦略の策定を支援している(第 3 章第 1 節(6))。また AMED

では、AMED「知財支援」「知財リエゾン」151等において、AMED 内部の知財コンサルタン

トや、外部専門人材である知財リエゾンを起用した、全国規模での知財コンサルテーシ

ョン業務等に取り組んでいる。これらの支援制度の活用等により、がん免疫療法に専門

的知識を有する知財人材の確保や育成を積極的に実施すべきである。

2.研究組織・研究者の知財マインドの向上

研究成果である知的財産の権利化による保護は、企業への技術移転、及び事業化・実

用化には極めて重要である。一方で、一般的に大学・研究機関では、研究者個人の業績

評価は論文発表数によるところが大きく、知財権が人事や業績評価の対象となるケース

は少ないと考えられ、研究者個人の特許出願に対するモチベーションの形成が必要であ

る。

研究組織全体として知財マインドを醸成するためには、取得された知的財産権がどれ

だけ産学連携に結びついたか、PCT 出願や PCT 出願からどれだけ各国移行できたかとい

う「質」を評価指標の 1 つとして組み入れることが有効である。加えて、研究者や関連

する知財の専門家(知財部・TLO)が「チーム」として取り組む必要があるため、ライセ

ンスにかかわったチームのメンバーでインセンティブを分け合う仕組みを構築すること

で、研究者、及び優秀な知財人材のモチベーション向上を図ることも有効であろう。

個別の研究者の知財マインドの醸成については、知的財産権の確保の重要性や、効率

的な産学連携に必要な法的手続き、発明の新規性確保のための留意点等といった、知財

教育を大学内で行うとともに、実務経験を重ねることが肝要である。

3.知財関連費用の調達環境整備

多くの大学・研究機関にとって、特許出願、国際出願の指定国移行、取得された知的

財産権の維持等にかかる費用は大きな負担となっており、知的財産権確保、医薬品の実

用化のために知財関連費用の調達環境を改善する必要がある。

医薬品関連の特許は、大学・研究機関で発明され将来的に大きな価値を産み出す可能

性をもつものもあるが、研究開発から特許化に至るには時間と費用を要する。また、患

者数の少ない疾患であっても、世界中の患者のニーズに応え、それに見合った価値を創

出するためには、外国特許出願が必要不可欠となる。

JST では大学の研究成果に基づく外国特許出願支援を平成 15 年度以降継続的に行い、

平成 30 年度においても、大学等知財基盤強化支援(権利化支援)を実施している(第 3

章第 1 節(6))。一方で、大学における知的財産関連の必要経費抑制の取組として、多

くの大学では保有特許を棚卸しして、権利放棄、譲渡等の対応が取られている。しかし

短期的な経費抑制の視点や早期の譲渡、技術移転のみではなく、特に医薬品関連では中

長期的な視点でシーズの価値を向上させた上での特許化、技術移転を図ることも重要で

ある。

そのためには大学・研究機関が既存の出願関連支援制度を有効に活用することに加え、

151 日本医療研究開発機構 知財リエゾン

https://www.amed.go.jp/chitekizaisan/chizai_riezon.html(2019.02.01 アクセス)

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

研究開発の初期においても、必要となる知財関連費用そのものの調達に対する支援や、

研究開発費の一部を予め知財関連費用に充当させた形でグラントを拠出する仕組みの構

築等が重要である。

特許の出願前やプレマーケティング段階での出願戦略や早期の産学連携、オプション

契約・マイルストーン契約で特許登録前から収入を確保するといった検討、対応も必要

になる。そのためには、海外を含む出願戦略や企業との提携、価値に見合った対価の交

渉、資金獲得等を実現できる人材の育成活用、一気通貫の技術移転モデルを実現できる

組織の育成も重要である152。

4.研究初期段階での早期の産学連携

世界的に製薬企業は自社単独における研究開発から、大学・研究機関のもつ革新的な

シーズを導入する方向へと移行している 。しかし、我が国で研究プロジェクト段階から

PhaseⅠまでの初期段階でライセンスインを行う企業の数は少なく、海外のメガファーマ

と比較すると約 1.5 倍の開きがある(国内主要ファーマ:49%、海外メガファーマ:72%)153 154。

我が国のシーズ開発事例でも見たように、がん免疫療法の分野では革新的な医薬品が

大学・研究機関と企業との連携により生み出されている。研究初期段階での大学・研究

機関に対する企業からの人的・資金的支援は、有用な知的財産権の確保、及び臨床開発

に至るまでの持続的な研究開発には極めて重要である。

大学・研究機関が有する研究開発シーズに対して、企業からのアクセスを促すための

方策の 1 つとして、大学・研究機関側からのシーズ情報の発信が挙げられる。例えば、

AMED が提供している「AMED ぷらっと」は、大学・研究機関のシーズと、企業のニーズの

マッチングを目指すシステムであり、学術的な情報を企業にとって判断可能な情報へと

変換する仕組みを備えている(第 3 章第 1 節(4))。このようなシーズ情報の発信を支援

し、より早期の産学連携を進めることが重要である。

5.ベンチャー企業に対する支援の強化

革新的技術であればあるほど、人的・資金的投資のための事業化の予見性・確実性は

低く、意思決定にも時間を要する。そのため、リスクを取りつつスピード感を持って事

業開発を行うベンチャー企業の存在は、大学・研究機関と大企業との橋渡しのために、

がん免疫療法の分野においても極めて重要な存在となる。

しかしながら、日本の医療関連ベンチャーは、欧米と比較し大きく出遅れており、医

薬品・医療機器分野等における日本のベンチャー企業の現時点での活躍はいまだ限定的

である155。

152大学知財マネジメントの重要課題

https://www.jst.go.jp/tt/mext2017/pdf/20170207_j01.pdf(2019.02.01 アクセス) 153 医薬産業政策研究所 産業レポート No.5 製薬産業を取り巻く現状と課題~よりよい医薬品を世界へ届

けるために~第三部:社会環境とビジネス構造

http://www.jpma.or.jp/opir/sangyo/201412_3.pdf(2019.02.01 アクセス) 154 経済産業省 バイオベンチャーの現状と課題

http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/bio_venture/pdf/001_07_00.pdf(2019.02.01 アクセス) 155 厚生労働省「医療のイノベーションを担うベンチャー企業の振興に関する懇談会」報告書

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/aaaaa8.pdf(2019.02.01 アクセス)

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本編

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

ベンチャー企業が抱える課題を適切に把握し、解決へと導き「成功事例」を生み出す

こと、その「成功事例」を関係各者が共有し、次なるベンチャー企業に対する投資を促

す、ベンチャー・エコシステムを構築していくことが極めて重要であり、そのために、

特許庁「知財アクセラレーションプログラム(IPAS)156」や厚生労働省「医療系ベンチ

ャートータルサポート事業(MEDISO)157」のような、各種支援施策を通じて我が国にお

ける医療関連ベンチャー企業の振興を図ることが必要である(第 3 章第 1 節(5))。

6.オールジャパンでの支援体制の構築

がん免疫療法に使用される医薬品を製造するには、有効成分に関する基幹技術だけで

なく、モダリティにおける製造技術や製剤技術等の多数の要素技術が必要である。とり

わけ、複合的がん免疫療法には様々な作用機序をもつがん免疫療法・がん治療の広範に

わたる技術が必要である。このような全ての技術を一機関、一企業で開発し、知的財産

権を確保することは困難であり、特定の他者特許に研究開発を妨害されないための集団

的な知財戦略を構築することが重要である。

このような集団的な知財戦略の構築には、医薬の実用化に必要な技術の研究開発を進

めてきた企業の参画が極めて重要になる。そのため、企業に対しては、「海外のメガファ

ーマと対等に戦うための競争力のあるシーズの開発」という目標の共有と、「その達成の

ためには自社の保有する知的財産を他者と共有することが必要」という意識改革を促す

必要がある。

現在、我が国では、遺伝子・細胞治療の要素技術、及び製造基盤技術を集積化させた

「遺伝子・細胞治療研究ネットワーク」の構築が進められている158(第 3 章第 1 節(4))。

がん免疫療法においても、このような大学・研究機関と企業によるエコシステムを形成

することによって、革新的なシーズを速やかに実用化に結び付けるオールジャパンでの

支援体制を構築する必要があり、基盤技術の開発とともに、国としての知的財産戦略の

構築と、それを支援するための専門的知識を有する知財人材の育成が望まれる。

156 特許庁「知財アクセラレーションプログラム(IPAS)」https://www.ipas.go.jp/(2019.02.01 アクセス) 157 厚生労働省「医療系ベンチャートータルサポート事業(MEDISO)」

https://mediso.mhlw.go.jp/(2019.02.01 アクセス) 158 日本医療研究開発機構 医薬品研究課 遺伝子・細胞治療研究開発基盤事業

https://www.amed.go.jp/program/list/06/01/006.html(2019.02.01 アクセス)

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本編

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

医薬の開発には、臨床試験及び薬事申請承認手続きが不可欠であり、これらに関する規

制制度が、研究開発のスピードに大きな影響を与える。

世界的にみると臨床試験の多くは米国で先行しており(表 12、表 14、表 17、表 20、表

22、表 26、表 28)、日本国内での開発を推し進めるためにはがん免疫療法に関する規制制

度を整備、またはその運用を改善し、日本国内での臨床試験をスムーズに進められる環境

を整備する必要がある。

1.ガイドラインの整備

一般的な医薬に関する規制制度については、我が国では、より早期に革新的技術を実

用化させるための「先駆け審査制度」や「条件及び期限付き承認制度」等の整備の取組

がなされており、欧米と遜色のない制度が整っている状態である。

一方で、我が国にはがん免疫療法におけるガイドラインが存在しない。がん免疫療法

の開発には、対象となる細胞、遺伝子の改変、アジュバントの開発・利用等多くの要素

技術が存在するため、それらを含めた新たな免疫療法製品に対応する開発ガイドライン

やガイダンスが必要である。

我が国においても、平成 25 年度に「がんワクチン・免疫療法の臨床開発に関するガイ

ドライン案の提案」がなされ、実際に同年度から平成 28 年度まで、がん免疫療法に関す

る臨床有効性、安全性の評価方法等が検討された159 160。この中では、がん免疫療法開発

のためのガイダンス(早期臨床試験)、後期臨床試験ガイダンス(案)、がん治療用ワク

チン・アジュバント非臨床試験ガイダンス(案)、細胞製品の品質、非臨床試験ガイダン

ス(案)等を含む検討がなされている。

欧米では既にガイドラインが作成され、ガイダンスの運用や新たなガイドラインの検

討等も行われている。このような欧米の検討や、過去の我が国での検討を踏まえ、我が

国においても、より新しいがん免疫療法の開発に資するガイドラインの整備が望まれる。

2.カルタヘナ法の運用改善

カルタヘナ議定書では医薬品を規制の対象外としているにも関わらず、我が国のカル

タヘナ法では医薬品を規制の対象とし、遺伝子治療に該当するがん免疫療法(遺伝子導

入型の養子免疫療法、腫瘍溶解性ウイルス等)についても、カルタヘナ法の規制を受け

る状況となっている。

一方、米国はカルタヘナ議定書未締結であり、欧州においても医薬品への制限はない

状況にある。我が国のカルタヘナ法では、産業利用上の第二種使用等のために臨床試験

159 医薬品等審査迅速化事業費補助⾦ (⾰新的医薬品・医療機器・再⽣医療製品実⽤化促進事業) 平成 25

年度応募 https://www.pmda.go.jp/files/000163545.pdf (2019.02.01 アクセス) 160 レギュラトリーサイエンス推進業務 革新的医薬品・医療機器・再生医療製品実用化促進事業

https://www.pmda.go.jp/rs-std-jp/facilitate-developments/0013.html (2019.02.01 アクセス)

【提言3】 研究開発の実施促進に繋げる環境整備

がん免疫療法に関連したガイドラインの整備、規制制度の運用上の改善等を通して、我が

国発の研究開発シーズの実用化を強力に後押しすることが望まれる。

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要約

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第4部

第5部

資料編

第6部

の事前段階で厚生労働大臣の確認を受ける必要があるのに対し、欧米において類似する

規制対応は臨床試験申請時である161。

今後は欧米の対応を参考にして、適切な環境影響評価等を行いつつ、カルタヘナ法の

柔軟な適用、手続きの簡素化を進めることにより、臨床研究・承認申請手続きをさらに

迅速化させることが望ましい162。

161 カルタヘナ法に係る申請

https://www.pmda.go.jp/review-services/drug-reviews/cartagena-act/0003.html(2019.02.01 アクセ

ス) 162 カルタヘナ法の現状について:カルタヘナ 法に基づく遺伝子治療用製品等の第一種 使用の適用と海外

動向

https://wwwr.kanazawa-it.ac.jp/wwwr/lab/iameta/pdf/20170925_Special%20lecture%20on%20biologics

%20forum.pdf (2019.02.01 アクセス)

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要約

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第4部

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資料編

第6部

~あとがき~

本報告書では、2018 年にノーベル生理学・医学賞が授与された本庶佑教授、James・P・

Allison 教授が発見した免疫チェックポイント阻害療法に関連する注目技術「がん免疫療

法」について調査を行った。報告書の内容は、日本企業における知財戦略・研究開発戦略

策定のための基礎資料としての活用を始め、研究機関及び関係省庁での活用も期待される。

本調査における有識者ヒアリングの内容や委員会での議論等から、今後の報告書の活用

において、提言に加えて、アドバイザリーボード委員長として期待すべきことを申し述べ

る。

〇産学連携型グラントによる橋渡し推進支援

事業化視点での有用な知的財産権を確保するためには、早期からの産学連携による共

同研究を促す必要がある。一方で、新規技術であればあるほど事業化の確実性は低く、

革新性があると期待されても企業の投資リスクとのバランスが合わない可能性がある。

産学連携型グラントは、企業の人的・資金的投資の要件を緩和させる有用な手段であ

る。よりハイリスクなシーズについては、大学・研究機関と企業の共同研究を促し、よ

り円滑な橋渡しを行う必要がある。また、医療分野の研究開発成果を短期(1~2 年)で

出すのは困難であることから、より長期の支援、あるいは、長期にわたって実効性が担

保されるような支援が望まれる。

〇「目利き力」を有する人材の育成について

本報告書にも示されたように、がん免疫療法の領域での研究開発投資には欧米と日本

で大きな資金的格差が存在する。そのため、研究開発領域の選択と集中を図る必要があ

り、国あるいは企業において有望な技術シーズを早期の段階から適切に評価し、価値を

大化させることができる「目利き力」を有する人材の確保が重要である。また、知財

関連業務においても、がん免疫療法や関連するモダリティの知的財産上の特性を理解し

た上で、どのように排他的な知的財産権を取得するか、どのように事業化に結び付ける

か、等の知財戦略上の「目利き力」を有する人材が必要となる。

一方、我が国のがん免疫療法の研究開発においては、このような「目利き力」を有す

る人材は現状では不足しているとの意見が、委員会の場でも有識者からのコメントでも

多く挙げられた。また、我が国では産(ベンチャー企業を含む)、官(規制当局を含む)、

学(医療機関を含む)を横断する人材の流動性が低く、多角的な視点での経験の蓄積を

しにくい環境にあることが、「目利き力」を有する人材の育成を阻害している要因の 1

つとして挙げられた。

産官学間の人材流動性を高めることは短期的には困難であるが、より研究開発の成功

確度を高めるためにも、長期的視点に立ち、相互理解を深めるための人材交流施策の実

現が望まれる。

〇GMP/GCTP 準拠の製造設備に対する支援について

がん免疫療法においては、高機能抗体(断片化抗体、二重特異性抗体等)・核酸・ペプ

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要約

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第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

チド・細胞・ウイルス等、従来の医薬品開発で取り組まれてきた低分子、タンパク質等

とは異なる、より新規なモダリティを用いた取組みが加速しつつある。

我が国において、これらのモダリティを用いた医薬品等の研究開発をより早期に推進す

るためには、リスクヘッジの観点からも、国内からのアクセスが容易な GMP(再生医療等

製品では GCTP)に準拠した複数の製造施設・設備の充実が必要である。一方で、我が国の

研究開発市場は欧米と比較して小さく、企業による受託製造業への参入度、発達度はモダ

リティによって異なるのが実状である。

そのため、受託製造企業の参入が見込める段階であれば、参入を促すための製造施設・

設備の構築等に対する相談窓口の開設や資金援助等、受託製造企業の参入が見込めない段

階であれば、国としての製造施設・設備の構築検討等、各モダリティにおける受託製造業

の発達度を考慮した、国としての支援策の策定が期待される。

アドバイザリーボード委員長

三重大学大学院医学系研究科

遺伝子・免疫細胞治療学 教授

珠玖 洋

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平成30年度特許出願技術動向調査

-がん免疫療法-

アドバイザリーボード名簿

1.委員長、委員

委員長 珠玖 洋 三重大学 大学院医学系研究科 遺伝子・免疫細胞治療学 教授

委員 河上 裕 慶應義塾大学 医学部長補佐(研究・大学院連携担当)、

先端医科学研究所 所長、細胞情報研究部門 教授

小山 信人 タカラバイオ株式会社 遺伝子医療事業部門副本部長、プロジェクト

推進部長

玉田 耕治 山口大学 大学院医学系研究科 免疫学講座 教授

中尾 慎典 アステラス製薬株式会社 研究本部

キャンディデートディスカバリー研究所

第1ユニット 主管研究員

中山 大介 小野薬品工業株式会社 研究本部 探索研究提携部・次世代創薬企画課

課長

*委員は五十音順に記載

2.特許庁

吉田 佳代子 特許庁 審査第三部 医療(バイオ医薬)室長

伊藤 基章 特許庁 審査第三部 医療 審査官

高橋 樹理 特許庁 審査第三部 医療 審査官

磯部 洋一郎 特許庁 審査第三部 医療 審査官

鳥居 敬司 特許庁 審査第三部 生命工学 審査官

松村 真里 特許庁 審査第三部 審査調査室

薄井 義明 特許庁 総務部 企画調査課 知財動向班長

小堺 行彦 特許庁 総務部 企画調査課 知財動向班 技術動向係長

関塚 千晃 特許庁 総務部 企画調査課 知財動向班 技術動向係

3.オブザーバ

門川 員浩 経済産業省 商務・サービスグループ 医療・福祉機器産業室

室長補佐

佐々木 稔 経済産業省 産業技術環境局 研究開発課 課長補佐

新階 央 経済産業省 商務・サービスグループ 生物化学産業課 研究官

名和 大輔 経済産業省 商務・サービスグループ 生物化学産業課 課長補佐

加藤 吉伸 経済産業省 製造産業局 製造産業技術戦略室 重要技術管理専門職

衣笠 静一郎 経済産業省 製造産業局 製造産業技術戦略室 課長補佐

川西 安大 経済産業省 産業技術環境局 国際標準課 工業標準専門職(医療)

野口 創 厚生労働省 医薬・生活衛生局 医療機器審査管理課 係員

神林 祐輔 日本製薬工業協会(武田薬品工業株式会社 知的財産課長代理)

**敬称略