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平成29年度 特許出願技術動向調査報告書(概要) 自動走行システムの運転制御 平成30年2月 問い合わせ先 特許庁総務部企画調査課 知財動向班 電話:03-3581-1101(内線:2155)

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平成29年度

特許出願技術動向調査報告書(概要)

自動走行システムの運転制御

平成30年2月

特 許 庁

問い合わせ先

特許庁総務部企画調査課 知財動向班

電話:03-3581-1101(内線:2155)

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

第1章 調査概要

第1節 調査の目的

現在、日本では、SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)課題の一つとして自動

走行システムが挙げられており、産学官共同で、今後の自動運転の実用化に向けて取り組

むことが図られている。また、日本のみならず米欧においても、自動走行システムに対す

る注目度は高く、国家レベルでの研究開発も盛んである。よって、今後、自動走行システ

ムに関しては、世界で開発競争が激化することが予想される。

自動走行システムについては、平成 25 年度に特許出願技術動向調査「自動運転自動車」

が実施されたが、その後、技術が急速に進化していることから、その後の新たな動向を明

らかにすることは、我が国企業が研究開発の方向性の検討あるいは戦略的な出願・権利獲

得を行う際の有力な情報となり、我が国企業の国内外での事業活動の実施及びその拡大に

資するともいえる。特に、運転制御技術(判断、操作技術)は、SIP では競争領域とされ

ており、各国、各企業の動向を把握し、発信することは、技術開発を促進する上でも有益

である。

このような背景のもと、自動走行システムに関する特許の動向を、運転制御技術を中

心に調査し、技術革新の状況、技術競争力の状況と今後の展望について検討する必要があ

る。

そこで、本調査では自動走行システムにおける技術発展状況、研究開発状況、日本及

び外国の技術競争力、産業競争力を明らかにし、日本企業及び政府機関が取り組むべき課

題、今後目指すべき研究・技術開発の方向性を検討するため、市場環境動向・特許出願動

向・論文動向について調査を行った。

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

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資料編

第6部

第2節 調査の対象範囲

本テーマにおける調査対象範囲を図 1-1-1 に示す。本テーマでは、「自動運転車」「運

転支援システム」「システム関連技術」「(自動運転、運転支援システムに関する)判断、

操作の要素技術」を調査対象範囲とした。

自動運転車は、特定の環境下に限定されずに自動運転を可能とする完全自動運転と、

特定の環境下において自動運転が可能でそれ以外はドライバによる運転に切り替えが行

われる一部自動運転のもとに分けられる。更に、自動運転車は、単独で自動運転を行う

単独走行と、他車両と隊列を形成して自動運転を行う隊列走行、管制からの指示により

走行制御がなされる車群制御(遠隔型自動運転システムを含む)にも分けられる。

運転支援システムは、車線維持支援、駐車支援、合分流支援、自動発進/停止支援、車

間距離制御、車線変更支援、右左折支援、衝突被害軽減/回避制御を含む。

システム関連技術は、ECU やソフトウェア、コネクテッドカーなどのシステム設計に

関する技術、ドライバ監視、操作状況伝達などの HMI(Human-Machine-Interface)に関

する技術を含む。

要素技術は、走行経路生成等の判断技術、制動制御や操舵制御等の操作技術を含む。

注:認知に関する要素技術については、調査対象範囲外とした。

但し、前述の調査対象範囲内の技術とともに確認されたものについては、技術区分付与及び集計

を実施。そのため、認知技術の全てを表すものではないことに留意。

図 1-1 調査対象範囲

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第1部

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資料編

第6部

第3節 自動運転車の技術概要

本調査で対象とする技術の概要を示す。

1.自動運転車

人による運転操作なく自動走行が可能な完全自動運転と、特定の環境下において自動走

行が可能でそれ以外はドライバによる運転に切り替えが行われる一部自動運転の自動運転

車。また単独で自動運転を行う単独走行と、他車両と隊列を形成して自動運転を行う隊列

走行、複数の車同士が群をなして走行制御を行う技術、車が管制からの指示により走行制

御がなされる遠隔型自動運転システム及び交通管制を含む。

2.運転支援システム

①車線維持支援

車線維持支援は、車線と自車位置との関係を認識する手段を自車に搭載し、自車が車線

に近づきすぎた場合(車線を逸脱しそうになった場合)に運転者に警報を行う、または適

正な位置に復帰するように車両制御を行う技術。

②車間距離制御

先行車両を車載センサ等で検知し、先行車との距離、先行車の車速の変化に応じて、設

定した車間距離もしくは車速を保つように車両制御を行う技術、設定車速を一定に保つよ

うに車両制御を行う技術。

③駐車支援

カメラを用いた駐車区画線の認識や、レーダによって駐車空間を検出することで、目標

駐車位置を設定し、目標駐車位置までの走行軌跡を演算して、目標駐車位置までの操舵方

向を支持することで、駐車を支援する技術。また、走行軌跡に沿って車両の制駆動力や操

舵を制御して自動で駐車させる技術。自動バレーパーキング技術も含む。

④車線変更支援

車線変更時に、死角となる後側方の障害物を検出し、障害物が存在する場合には警報を

出力する技術。また変更先の車線まで車両の制駆動力や操舵を制御して自動で車線変更さ

せる技術。

⑤合分流支援

高速道路等の合分流地点において、合流先の車両等を検出し、スムーズに合流が可能と

なるようドライバを支援したり、合流先まで車両の制駆動力や操舵を制御して自動で走行

させたりする技術。

⑥右左折支援

交差点において、信号機情報や周辺車両を検出することにより、例えば対向車が存在す

るにもかかわらず、右折しようとしている場合等において警報を出力したり、適切な右折

タイミングを出力したり、車両の制駆動力や操舵を制御して自動で右左折させる技術。

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第6部

⑦自動発進/停止支援

交差点等において、信号機の色を認識して赤信号である場合や先行車が存在する場合に

自動で停車する技術。また、信号機の色が青信号である場合や、先行車が走行を開始した

場合に、自動で発進したり、交差点を通過走行させたりする技術。

⑧衝突被害軽減/回避

車両の進行方向に障害物を検出し、障害物の存在位置及び自車両の速度や進行方向等の

情報にもとづいて、自車両と障害物が今後衝突するの可能性を判定し、衝突の可能性が高

い場合において事前に運転者に警告する、もしくは制動力の補助や自動で制動を実施する

技術。

⑨車車間協調システム

車両同士が無線通信技術を用いて、情報(自車他車位置情報、速度情報等)を共有する

技術。例えば先行車両から無線通信技術を用いて先行車両の走行情報(他車位置情報、速

度情報等)を取得して、先行車両の走行挙動を予測し、所定の車間距離を保って追従する

よう車両制御する技術。

⑩路車間協調システム

インフラからの情報(信号機情報、規制情報、歩行者情報等)を、無線通信技術を介し

て取得する技術。例えば、交差点等において車両から死角となっている場所に存在する 2

輪車の存在をインフラが認識して、車両に送信することで、車両の運転者に 2 輪車の存在

を報知、車両制御する技術。また、信号機から信号機の切り替わりタイミングを取得して、

車両の運転者に報知、車両制御するような技術。

⑪歩車間通信システム

歩行者が所持する携帯端末等と無線通信を行うことにより、歩行者の存在を認識する技

術。また、交差点や横断歩道において歩行者が所持する携帯端末から無線通信を介して、

車両が歩行者の横断動作を認識し、運転者に報知、車両制御するような技術。

3.システム関連技術

①システム設計

自動運転や運転支援システムに関連する ECU の構成や構造、OS やソフトウェア、ハード

ウェアやソフトウェアのフェールセーフや異常診断に関する技術。また、車両外部との通

信により走行制御のための情報をやりとりするコネクテッドカーに関し、データ収集や車

外へのアップロードを行う技術も含む。

②HMI(Human-Machine-Interface)

ドライバと機械とが情報をやり取りするための手段であり、ドライバや機械の監視技術、

手動運転と自動運転の切り替え技術、また機械に指示を与えるための操作手段、人と機械

の調停を担う技術等において用いられるもの。ドライバに対してのみにとどまらず、車両

外部の歩行者への操作状況伝達なども含む。

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第6部

4.要素技術

①判断技術

認知技術によって得られた車両周囲の走行環境を基に、車両の走行経路の生成や、障害

物との衝突可能性や衝突場所を判断、走行安定化のための路面推定、地図を生成、車両の

操作タイミングを判断する技術。走行場所周辺の他車両・歩行者等の動的な障害物の位置

や信号機情報等の動的な情報も地図上で取り扱うダイナミックマップを用いるものも含む。

②操作技術

判断技術によって生成された走行経路や衝突可能性等の情報に基づいて車両の制駆動力

制御、操舵制御を行い、車両を操作する技術。

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第2章 市場環境・政策動向・法規制動向

第1節 市場環境動向調査

1.自動運転システムの市場について

自動運転車の市場はその利用用途によって主に三つのカテゴリに分かれる。この三つ

はそれぞれ、自家用車、物流サービス、移動サービスである。日本政府の戦略がまとめ

られている官民 ITS 構想・ロードマップ 2017 においてもその旨が記載されている。

2.自動運転のレベル

自動運転は運転転操作がどこまでシステムによって自動化されているかに応じてレベ

ルが定義されている。日本においては、官民 ITS 構想・ロードマップ 2017 において、自

動運転レベルの定義として SAE(SAE International、以下 SAE と記載する)のレベルが

採用されることとなった。SAE による自動運転のレベル定義は以下の通りである。

表 1-1 SAE レベルとその概要

レベル 概要 安全運転に係る

監視、対応主体

SAE

レベル 1

・システムが前後・左右のいずれかの車両制御に係る運転タス

クのサブタスクを実施 運転者

SAE

レベル 2

・システムが前後・左右の両方の車両制御に係る運転タスクの

サブタスクを実施 運転者

SAE

レベル 3

・システムが全ての運転タスクを実施(限定領域内)

・作動継続が困難な場合の運転者は、システムの介入要求等に

対して、適切に応答することが期待される

システム

(作業継続困難

時は運転者)

SAE

レベル 4

・システムが全ての運転タスクを実施(限定領域内)

・作動継続が困難な場合、利用者が応答することは期待されな

システム

SAE

レベル 5

・システムが全ての運転タスクを実施(限定領域内ではない)

・作動継続が困難な場合、利用者が応答することは期待されな

システム

出典:高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部・官民データ活用推進戦略会議 官民 ITS 構想・ロー

ドマップ 2017 2017 年 5 月 30 日発行

( https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/senmon_bunka/detakatsuyokiban/dorokotsu_dai7/sankou2.p

df 5 頁【表1】自動運転レベルの定義(J3016)の概要)

3.自動運転車の市場と自動運転車の事故事例

現在では SAE レベル 1、SAE レベル 2 の車両は市場に投入されている。これらは主に自

家用車の市場である。現在市販されている代表的な運転支援システムとして、「車線維持支

援装置(Lane Keeping Assist System:LKAS、以下 LKAS と記載する)」、「車間距離制御装置

(Adaptive Cruise Control:ACC、以下 ACC と記載する)」、「衝突被害軽減制動制御装置

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(Advanced Emergency Braking System:AEBS、以下 AEBS と記載する)」といった予防安全

運転支援システムが挙げられる。LKAS、ACC、AEBS の普及率について、国土交通省 ASV 技

術普及状況調査の調査結果を利用して普及率を算出した。ここでの普及率とは当該年に生

産された車両の中で、上記の予防安全運転支援システムが搭載されている車両の割合であ

る。

LKAS について、前述の ASV 技術普及状況調査において、通称名がレーンキープアシスト

と車線逸脱警報の台数(いずれも区分は乗用)を当該年の総生産台数で除算して算出した。

日本における 2016 年のレーンキープアシスト、車線逸脱警報の普及率はそれぞれ 13%、

40%である(図 1-2 参照)。

ACC について、前述の ASV 技術普及状況調査において、通称名が高速 ACC、低速 ACC、全

車速 ACC の台数(いずれも区分は乗用)を当該年の総生産台数で除算して算出した。日本

における 2016 年の高速 ACC の普及率は 12%、低速 ACC の普及率は 13%、全車速 ACC の普及

率は 14%である(図 1-3 参照)。

AEBSについて、前述の ASV技術普及状況調査において、通称名が衝突被害軽減ブレーキ、

低速域衝突被害軽減ブレーキの台数(いずれも区分は乗用)を当該年の総生産台数で除算

して算出した。日本における 2016 年の衝突被害軽減ブレーキの普及率は 43%、低速域衝突

被害軽減ブレーキの普及率は 16%である(図 1-4 参照)。

図 1-2:日本における LKAS(車線逸脱警報ならびにレーンキープアシスト)の普及率

出典:国土交通省 ASV 技術普及状況調査(2017 年 11 月 22 日現在)

(http://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/01asv/resourse/data/H28souchakudaisuu.pdf)に示された数値

よりトヨタテクニカルディベロップメント株式会社が作成

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図 1-3:日本における ACC の普及率

出典:国土交通省 ASV 技術普及状況調査(2017 年 11 月 22 日現在)

(http://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/01asv/resourse/data/H28souchakudaisuu.pdf)に示された数値

よりトヨタテクニカルディベロップメント株式会社が作成

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図 1-4:日本における AEBS の普及率

出典:国土交通省 ASV 技術普及状況調査(2017 年 11 月 22 日現在)

(http://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/01asv/resourse/data/H28souchakudaisuu.pdf)に示された数値

よりトヨタテクニカルディベロップメント株式会社が作成

SAE レベル 2 相当の車両が 2015 年から 2016 年にかけて市場に投入されてきた。代表

的には日産自動車の ProPilot(登録商標)、テスラのオートパイロットが知られている。

ProPilot(登録商標)は高速道路の同一車線において前方車との車間距離を保持しつ

つ走行車線から外れないようにステアリング操作し、完全停止まで対応するシステムで

ある。オートパイロットは高速道路または自動車専用道路にて使用が可能であり、車線

の内側に留まりながら設定車速にて走行することが可能なものである。

SAE レベル 3 相当の機能を持つ車両として、2017 年にアウディ A8 が発表された。しか

し、このトラフィックジャムパイロットを導入するためには各国の道路交通法や車両認

証に関わる法規に適合しているかを確認する必要があり、まだ販売されていない。

SAE レベル 4、SAE レベル 5 の車両は、道路上の公共交通を始めとした移動サービスに

利用する目的の実証実験等において導入されている。しかし、一般に広く販売する目的

での市場が形成されているとは言い難い状況にある。

SAE レベル 1 のような予防安全運転支援システムを含めれば、自動運転車は徐々に普

及が進んでいる。その一方、そのシステムを過信するあまり事故につながる事例も発生

している。日本では、日産自動車の ProPilot(登録商標)を搭載した車両での事故事例

が知られている。これは販売店における試乗の際、販売店店員がこの運転者に対してブ

レーキを踏むのを我慢する旨の指示を行った。これに応じて運転者がブレーキ操作をし

なかったところ、停車中の車に追突した。

海外では 2016年 5月にテスラの Model Sがオートパイロットモード使用中に事故が発

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生し、運転者が死亡した。これを受けて、NTSB が全ての自動車メーカーに対して自動運

転機能の使用に適した道路以外での機能の作動を防ぐ措置を講じることを勧告した。

4.物流サービス、移動サービスの市場化について

前述のように、自動運転車は個人向けの自家用車としての市場だけでなく、物流サー

ビス、移動サービスに利用されることによる市場創設が期待されている。

宅配・輸送といった物流サービスへの自動運転車導入において主に検討されている事

項はトラックの隊列走行である。後続車両無人の隊列走行を行うことによる省人化が運

転者不足という問題を解決するための有力な案の一つと考えられている。日本では、ス

マートモビリティシステム研究開発・実証事業トラックの隊列走行の社会実装に向けた

実証において検討が行われている。

米国においては Peloton Technology が高速道路において CACC(Cooperative Adaptive

Cruise Control)を活用した 二台後続車両有人の隊列走行の商業運行を計画している。

ドイツにおいては、ダイムラー が Future truck 2025 構想を掲げている。この構想の

目的は高速道路で長時間運転する運転者の負担を軽減させることである。

移動サービスにおいては、自動運転車を利用したモビリティサービス等、新たなビジ

ネスが生まれると期待されている。特に欧州では MaaS が活発に議論されており、そこで

用いられる道路上の公共交通や配車サービス、カーシェアリングといったサービスにつ

いて自動運転技術を導入しようとする動きがある。

MaaS は移動対象となるヒトやモノを中心に考え、情報通信技術等を活用することでバ

ス、鉄道、地下鉄を含む公共交通機関からタクシー、ライドシェア等を含めた交通サー

ビスを統合し、目的地を指定することによって最適な手段をシームレスに提供する仕組

みである。この MaaS のコンセプトを具現化するサービスとしてフィンランドの MaaS

Global が Whim というサービスの展開を開始している。

道路上の公共交通において自動運転技術を導入しようとする動きが世界中で見られる。

日本においては内閣府や国土交通省等が主導するプロジェクトや国家戦略特区において

自動運転バスの実証実験が進められている。

さらには配車サービス・シェアリングサービスにおいてもサービス提供者が自動運転

車の導入に積極的な動きを見せている。例えば、ウーバーは 2015 年 2 月にピッツバーグ

にカーネギーメロン大学との提携によって自動運転技術を研究する Advanced

Technologies Center を設立、2016 年 5 月には公道でのテストの計画があることを発表

し、2016 年 9 月にはピッツバーグの公道を走行する自動運転車のデモンストレーション

映像を公開した。

世界一の人口を誇る中国は配車サービスでも有望な市場であり、最大手の滴滴出行は

2016 年に Uber の中国部門を買収、米国のリフト、インドの Ola、シンガポールの Grab

といった配車サービス、シェアリングサービスを行う企業とも提携し、グローバルなサ

ービス展開に乗り出している。日本への進出も 2018 年に計画されている。

中国では既に自転車のシェアリングサービスが爆発的に普及している。最大手は摩拝

単車であり、摩拝単車はカーシェアリング事業への参入計画もある。自転車のシェアリ

ングサービスの普及状況を見ると、中国ではシェアリングサービスが普及し易い下地が

あるものと考えられる。そのため、カーシェアリングも一気に普及する可能性がある。

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5.自動運転車に必要な技術

(1)位置標定技術

自動運転車では、全球測位衛星システム(Global Navigation Satellite System:

GNSS、以下 GNSS と記載する)や各種車載センサの情報と、デジタル地図情報によって

自車位置を把握して走行することが計画されている。従って、自車位置の正確に把握

することが必要となる。GNSS による自車位置の把握は誤差が大きいため、他の情報を

使ってより詳細な位置情報を取得する必要がある。現在では LiDAR(Light Detection

and Ranging)と呼ばれるレーザーレーダーの使用が主流になると考えられている。こ

れを利用することで、物体までの距離だけでなく、その物体がどこにあり、どのよう

な形状をしているのかまで把握できる。これにより、市街地においてランドマーク検

出による位置標定が可能となる。

(2)高精度デジタル道路地図(ダイナミックマップ)

現在もカーナビゲーションシステムにおいて、道路地図情報はデジタル化され利用

されている。しかし、自動運転車を成立させるためには自車の位置を非常に精密に把

握する必要がある。例えば、現在では道路を上下線合わせて1本の線で表現している

が、自動運転を考えた場合、自動運転車がどの車線を走っているかまで認識する必要

があるため、車線ごとの経路データが必要となる。また、道路は高さ方向において交

差していることがある。地上を走る一般道路と高架を走る高速道路が緯度経度で見た

場合には同じ位置にあるが、実際には地上高方向で見れば別道路であるため、その違

いの識別が必要となる。さらに、自動運転車を成立させるためには、その時々で変化

する事象を正確に捉える必要がある。信号機の有無だけでなく、信号機の状態、周囲

に何が存在するかの情報、交通規制等の情報を参照できることが望ましい。このよう

な背景からダイナミックマップを整備する取組が行われている。ダイナミックマップ

とは静的情報である地図情報に周辺車両や歩行者、信号情報といった動的情報、事故

情報や渋滞情報の準動的情報、交通規制情報等の準静的情報を重畳したリアルタイム

で更新される地図である。静的情報は三次元高精度地図情報であり、これに前述の情

報を紐付け作成することとなる。

日本においては自動車メーカーや地図メーカーが出資してダイナミックマップ基盤

企画株式会社が 2016年 6月に設立された。実運用に向けたデータ仕様やシステム構想、

メンテナンス使用等の立案、関係機関先との調整及び実証を行うとともに、永続的な

持続整備を行うことを前提とした場合の事業性に関する企画検討を進めるとしている。

(3)状況判断技術

システムが自律的に運転を実施する場合、様々な運転環境で的確な状況判断を行う

必要がある。近年、人工知能(Artificial Intelligence:AI、以下 AI と記載する)

の発達により、車両周囲の状況を認知し状況判断を行なう精度も向上しつつある。特

に、2010 年代にはディープラーニング(深層学習)が普及し始め、学習によって AI

がより正確な判断を下せるようになってきている。ディープラーニングは物体認識を

中心に活用が行われており、自車の周囲を検知する必要のある自動運転車を技術的に

成立させるためにはこのような AI の発展と導入が不可欠と考えられている。例えば、

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現在普及している予防安全技術において、前方に障害物が存在する場合、センサによ

ってその障害物の存在を捉えた場合には制動制御によって衝突を回避しようとする。

しかし、実際には「その障害物が何か?」という点まで把握して制動制御を実行する

必要がある。仮に、車両が踏んでも問題ないような障害物を捉えたのであれば、後続

車両からの追突を避けるために制動制御による減速を避けるような運転制御が望まし

いと考えられる。人工知能を認知技術に応用することで何を認知したのかをより正確

に捉え、さらに人工知能を判断技術に応用することでどのような判断を行うべきかを

決定することが必要となる。

それでも全ての判断をシステムに任せることができる状況には至っておらず、どう

対処すべきか正確に判断できない場面も発生している。例えば、事故現場等で警察官

が交通整理をしている場合、信号機に従わず、警察官の手信号に従うことが必要とな

る。このとき、システムは警察官の手信号の動きは認識できるが、その動きが何を意

味するのか、どのように車両を走行制御させればよいのか、ということを判断するこ

とが難しい。このような事象を解決する技術が必要となる。

また、AI には過学習という現象が知られている。これは学習を過度に行なった場合

に正しい判断を下せなくなる現象である。こういった現象を防ぐために、どのように

学習をさせるのかということも検討する必要がある。

トヨタ自動車、本田技研工業などの日本企業は米国のシリコンバレーに拠点を設立

して AI の研究開発を行なう動きがある。

(4)ヒューマンマシンインターフェース

自動運転車においては、運転者がシステムを監視する必要のある SAE レベル 3、監

視の必要がない SAE レベル 4 以上がある。既存の自動車における運転者の役割が通用

しなくなるため、自動運転車と運転者をつなぐ新たなヒューマンマシンインターフェ

ース(Human Machine Interface)HMI が必要となる。また、現在においても車両から

外部に対して何らかの意思表示をすることがある。例えば、運転者が歩行者や自転車

に対して行う意思表示(先に横断歩道を渡るよう促す動作など)や、対向車両に対し

て行う意思表示(車線合流や進路を譲る際に動作など)が行われている。このように、

自動運転車と車両外部とをつなぐインターフェースの構築も必要である。

SAE レベル 3 の自動運転では、運転者はシステムを監視することが求められ、シス

テムの作動継続が困難である場合は、運転者が運転動作を引き継ぐことになる。その

ため、運転者はシステムの機能そのものや、システムの動作状態とその限界を理解す

ることが必要となる。従って、これを補助するための HMI コンセプトが必要となる。

このような HMI コンセプトの開発に当たっては、システムの動作状況を適切に運転者

に伝達することが可能であり、運転者の受容性が高いシステムが望まれる。さらに、

自動運転から手動運転に切り替わる際、運転者が安全に運転動作を引き継げるような

HMI も必要となる。

また、運転者が自分の運転を楽しみたいとの欲求を持つ場合、SAE レベル 3 の機能

を搭載した車両であっても、SAE レベル 2 以下相当の機能にシステムの動作を下げる

ことが考えられる。そのような場合、異なる自動化レベルへの遷移状態を把握可能な

HMI コンセプトが必要である。例えば、レベル遷移時のシステム変更内容を運転者が

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本編

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

短時間で正確に理解できるシステムが望まれる。

その他、運転者がシステムを監視する必要があることについて、運転者がシステム

監視を継続できるような状況を作り出す工夫も行われる必要がある。

自車両がどのような挙動を示すのか(交通標識があるために停車するなど)を歩行

者や非自動化車両が知るための HMI コンセプトが必要となる。例えば、他の利用者(歩

行者、自転車等の車両周囲に存在する人、非自動運転車両)がシステム搭載車の意図

を理解できるシステムが望まれる。また、システム搭載した車両同士の HMI も必要と

考えられる。

(5)運転者監視

SAE レベル 3 の自動運転においては、運転者が運転を引き継ぐ必要があるため、シ

ステムの動作状況や車両周囲の状況を監視する必要がある。しかし、運転者が常に監

視動作をしているかどうかは不明であり、別の作業を行っており監視が疎かになるこ

とが懸念されている。そのような場合に、突然、運転を引き継ぐことは難しい。従っ

て、運転を引き継ぐ場合でも、運転者の状態に合わせて運転の引き継ぎ方を変える(例

えば、運転者の状態に合わせて何秒後に運転権限を引き渡すかを変える)といったこ

とが必要となる。これを達成するためには、運転者が監視を行っているかどうかをシ

ステムが監視する必要がある。

また、運転者の運転能力が低下した場合は、システムに運転を任せたほうがよいと

の考え方もある。例えば、国土交通省は運転者の健康状態が急変し、運転の継続が困

難になった場合に自動車を自動で停止させる「運転者異常時対応システム(減速停止

型)」のガイドラインを 2016 年 3 月に発表している。これによれば、システムによっ

て運転者異常が自動的に検知された場合、一定時間運転者の応答がない場合に運転者

異常と確定判断し、車両を減速させ停止させる制御を開始することとしている。この

ようなシステムを導入する場合も運転者監視技術の開発が重要な課題となる。

(6)システムの安全性

人間の認知・判断・操作をシステムに任せることになり、事故の発生を防ぐために

は高い安全性・信頼性を確保する必要がある。自動車の電子機能安全規格には

ISO26262 があり、自動運転にもこの規格を適用することが考えられている。ソフトウ

ェアレベルの製品開発においては、ISO26262 のエンジニアリングプロセスである V 字

モデルに従って試験、検証が行われる。現在、自動運転に適用するソフトウェアの研

究開発においてはディープラーニングの導入が進められている。しかし、この深層学

習を利用したソフトウェアは学習によって変化するため、ISO26262 の V 字モデルに沿

わなくなり、規格に適合しない可能性がある。これを回避するために、深層学習を利

用せずに自動運転車を停止させるような別システムを追加することが考えられている。

(7)ネットワークセキュリティ技術

自動運転車に限らず、以前より自動車メーカーは車両のハッキング対策について議

論、検討を行っている。現在でもコネクテッドカーのような概念が形成され、車外の

システムとネットワークを介してつながることが想定されている。自動運転車であれ

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要約

第1部

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資料編

第6部

ば、システムのアップデートや、交通情報を管理するデータベースとの通信が行われ

る。外部と接続することは自動運転車の機能維持に有用である反面、外部からの侵入

経路が開かれるということでもある。このため、ネットワークセキュリティ技術によ

る対策が必須となる。

この懸念に対して、各国で取組が展開されている。日本においては、内閣サイバー

セキュリティセンターに設置されているサイバーセキュリティ戦略本部において、自

動車分野における IoT(Internet of Things:モノのインターネット)システムのセ

キュリティに係る総合的なガイドラインの整備が議論されている。また、公益社団法

人自動車技術会の電子・電装部会情報セキュリティ小委員会が「TP-15002:2015 自動

車-情報セキュリティ分析ガイド」を発行し、リスク評価等の議論が行われている。ま

た戦略的イノベーション創造プログラム(Cross-ministerial Strategic Innovation

Promotion Program:SIP、以下 SIP と記載する)「自動走行システム」における情報セ

キュリティ技術領域は、SIP「重要インフラ情報セキュリティ」と連携して進めること

としている。

米国においては、自動車のサイバーセキュリティに関するイベントである

CyberAuto Challenge が毎年開催されている。これは、自動車メーカーがハッキング

させる車両を提供し、参加者にハッキングさせる。そこで発見された脆弱性は車両提

供した自動車メーカーに報告される。これによって、車両の脆弱性を見つけ、自動車

のホワイトハッカーを養成する取組である。

欧州においては、第7期フレームワークプロジェクトである PRESERVE にて

Vehicle-to-Anyting(V2X、以下 V2X と記載する)システムの実用化に向けて、セキュリ

ティに関する技術開発と実証が行われた。

(8)公共交通における安全性

自動運転バスを公共交通として導入することが様々な場所で検討されている。しか

し、バスの運行は旅客を扱うということであり、旅客の安全を守る責務が発生する。

この点は個人が所有することを想定した自動運転車と異なる部分であり、旅客の安全

を確保するための技術的な工夫が必要となる可能性がある。

6.自動運転車に利用される技術の標準化活動

自動車に関するデジュール標準を決める活動は主に ISO にて行われている。自動車に

関しては古くから ISO/TC22 が標準化活動を行ってきた。一方で自動運転車に不可欠であ

る ITS に関しては ISO/TC204 にて標準化活動が行われている。近年の技術発展に伴い自

動運転技術に関する標準化活動が活発に進められているが、ISO/TC22 と ISO/TC204 の間

に重複領域が存在するとの問題が浮上してきた。このため、両者で連携手順を取り決め

た覚書が締結されており、今後は調整を図りながら標準化活動が行われるものと期待さ

れる。

自動運転車は ITS を活用することから、無線通信技術の標準化も必要となる。そのた

め、国際電気通信連合(International Telecommunication Union:ITU 以下、ITU と

記載する)や IEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers、公式

な日本語名称はなく、アイ・トリプル・イーと呼称される)といった団体での標準化活

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要約

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第6部

動も行われている。

(1)ISO/TC204/WG1:システム構成機能

ITS に関わる用語やその定義、データ記述方式等、ITS 関係者が共有すべき情報や手

法に関わる標準化を行う作業部会である。日本がドラフト作成に積極的に関わってい

る項目としては ITS におけるウェブサービスの利用、システムアーキテクチャを活用

した ITS 展開導入計画の作成手順がある。ISO/TC204/WG1 のワークアイテム一覧を図

1-5 に示す。

図 1-5:ISO/TC204/WG1 ワークアイテム一覧

出典:公益財団法人自動車技術会発行 ITS の標準化 2017 2017 年発行

(http://hq.jsae.or.jp/its/2017_bro_j.pdf 9 頁 WG1 ワークアイテム一覧)

(2)ISO/TC204/WG3:ITS データベース技術

地理情報プロバイダ間の情報交換フォーマットや、高速検索可能な格納フォーマッ

ト等の標準化を行う作業部会である。この作業部会において、ローカルダイナミック

マップの機能要件や静的情報等の標準化が行われる見込みである。日本がコンビーナ

(議長)を務めている。

地理データファイル(Geographic Data Files:GDF)が既に GDF 5.0(ISO 14825)と

して標準化されている。この標準化の作業において、日本は大きく貢献している。日

本において広く普及している物理的格納構造の提案の基礎となった KIWI(カーナビゲ

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要約

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資料編

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ーション用地図ディスクの(データ)格納フォーマット)から発展した日本デジタル

道路地図協会の新標準 KIWI+を基にした時間管理のできる構造を日本から提案し、日

本提案の最終ドラフトに対しても欧米の賛同を取り付けて標準化に漕ぎ着けている。

現在では協調 ITS、マルチモーダルナビゲーション、自動運転システム等の新規アプ

リケーションに対応するために GDF 5.0 の改訂作業が進められている。

地図配信データ構造(ISO 24099)の標準化にも日本は大きな役割を果たした。これ

は地図データの鮮度向上に対応するためのもので、必要なときに必要な地図データを

送信する方式について、日本主導で地図配信データ構造とプロトコルを提案し承認さ

れている。

その他の自動運転システムに関連する標準化活動について、協調 ITS における地図

データベース仕様の拡張(ISO 14296)はローカルダイナミックマップの静的情報もカ

バーする形で標準化されている。現在では、自動運転システムに必要な静的地図デー

タの論理データモデルの標準化も予備業務項目 (Preliminary work item:PWI、以下

PWI と記載する)として検討が進められている。この PWI は PWI 22726 として進められ

ており、渋滞情報、事故情報、天候情報といった準静的データ、準動的データについ

ても論理データモデル定義が進められる予定である。

ISO/TC204/WG3 のワークアイテム一覧を図 1-6 に示す。

図 1-6:ISO/TC204/WG3 ワークアイテム一覧

出典:公益財団法人自動車技術会発行 ITS の標準化 2017 2017 年発行

(http://hq.jsae.or.jp/its/2017_bro_j.pdf 11 頁 WG3 ワークアイテム一覧)

(3)ISO/TC204/WG8:公共交通

公共交通に関わる情報の標準化を行う作業部会である。公共交通にはバス、電車、

路面電車のような公共交通機関はもちろん、緊急車両も含まれている。公共交通が重

要な標準化テーマの一つであることの理由は、旅客、貨物輸送の自動車への過度な依

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存は社会と生活に大きな打撃を与える可能性があることが挙げられる。自動車への依

存を改めるため、自動車に依存していた交通手段を徒歩や自転車、公共交通へ転換し

ていくことが必要である。公共交通への転換を促進するためには公共交通の魅力を高

める必要があり、公共交通について標準化を進める意義は大きい。

ISO/TC204/WG8 のワークアイテム一覧を図 1-7 に示す。

図 1-7:ISO/TC204/WG8 ワークアイテム一覧

出典:公益財団法人自動車技術会発行 ITS の標準化 2017 2017 年発行

(http://hq.jsae.or.jp/its/2017_bro_j.pdf 23 頁 WG8 ワークアイテム一覧)

(4)ISO/TC204/WG14:走行制御

車載センサや通信によって取得した外部情報を利用し、運転者への注意等の提示、

さらには事故回避のための車両制御といった車両走行制御技術に関して標準化作業を

行っている。現在、自動運転システムに関連する技術で標準化作業が進められている

項目としては、歩行者検出・被害軽減ブレーキシステム、協調型車間距離制御システ

ム、路外逸脱防止システム、車線内部分的自動運転システム、部分的自動駐車システ

ム、部分的自動車線変更システム、自転車検出および衝突軽減ブレーキシステム、交

通事象通知システム、限定運行条件の低速自動走行システム等がある。これらの内、

日本は歩行者検出・被害軽減ブレーキシステム、路外逸脱防止システム、部分的自動

駐車システムの提案を行っている。なお、コンビーナは日本が務めている。

ISO/TC204/WG14 のワークアイテム一覧を図 1-8 に示す。

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図 1-8:ISO/TC204/WG14 ワークアイテム一覧

出典:公益財団法人自動車技術会発行 ITS の標準化 2017 2017 年発行

(http://hq.jsae.or.jp/its/2017_bro_j.pdf 29 頁 WG14 ワークアイテム一覧)

(5)ISO/TC204/WG16:広域通信

ITS で使用される広域通信システム、プローブ情報システムの標準化を行っている。

プローブ情報システムについては既に ISO が発行されたもの、技術仕様書(Technical

Specification:TS、以下 TS と記載する)が発行されたものがある。プローブ情報(ISO

22837)はプローブデータ要素やプローブメッセージを定義するための方法、プローブ

情報システムの構成、プローブ情報の意味構造等について標準化されているものであ

る。プローブ報告制御(TS 25114)では車両群に対するプローブ情報送信に関する指

示である報告制御について、プローブ情報の送信開始・停止の指示、送信するプロー

ブ情報の種類の指定、送信の必要性を判断するための閾値の調整について定められて

いる。こうした技術上の定めによって、必要以上のデータ送信を抑制できる効果があ

るとされている。ISO/TC204/WG16 のワークアイテム一覧を図 1-9 に示す。

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図 1-9:ISO/TC204/WG16 ワークアイテム一覧

出典:公益財団法人自動車技術会発行 ITS の標準化 2017 2017 年発行

(http://hq.jsae.or.jp/its/2017_bro_j.pdf 33 頁 WG16 ワークアイテム一覧)

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(6)ISO/TC204/WG18:協調 ITS

協調 ITS とは車車間通信や路車間通信、路側の機器間通信を統合して活用すること

である。WG18 での主な検討項目としては、ローカルダイナミックマップ、車内標識、

信号現示情報、停止線の位置や交差点形状などのトポロジー情報、公共交通や緊急車

両の優先制御情報、車内情報提供等がある。ローカルダイナミックマップについては、

ローカルダイナミックマップのコンセプトに関する現状の整理として TS17424 が発行

された。これを踏まえ、コンセプトの完成形としての定義の検討が行われ、ローカル

ダイナミックマップのグローバルなコンセプト定義が 2015年に TS18750として発行さ

れている。信号現示情報、停止線の位置や交差点形状などのトポロジー情報等につい

ては、信号制御された交差点に関するアプリケーションのための路車間通信メッセー

ジとして TS19091 が発行された。

WG18 においてはサブワーキンググループ(SWG)が二つ設置されている。その内、

SWG2 のリーダーは日本が務めている。SWG は今後の作業項目の候補について抽出、検

討を行うことが役割である。

WG18 のワークアイテム一覧を図 1-10 に示す。

図 1-10:ISO/TC204/WG18 ワークアイテム一覧

出典:公益財団法人自動車技術会発行 ITS の標準化 2017 2017 年発行

(http://hq.jsae.or.jp/its/2017_bro_j.pdf 41 頁 WG18 ワークアイテム一覧)

(7)ISO/TC22

ISO/TC22 は道路を走行する車両の構成部品の標準化を行う専門委員会であり、1947

年の ISO 創設と同時に組織された。ISO/TC22 のスコープは「次に示す自動車および装

置の性能評価のための用語および試験方法(器材の特性を含む)に主に関連する適合

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性、互換性、安全性に関する標準化。モペット、モーターサイクル、自動車、トレー

ラ、セミトレーラ、軽トレーラ、コンビネーション車、連結車両」である。ISO/TC22

の傘下には 11 の SC(Sub Comittee)がある。この内、SC32 電子・電装部品/システム

と SC38 モーターサイクル・モペットにおいて日本がコンビーナを務めている。自動車

に関する技術の標準化活動は ISO/TC22 が推進してきた。一方で、運転支援技術や自動

運転技術には情報技術等の要素を用いた ITS が不可欠である。現在ではこれらの技術

発達に伴う標準化作業が具体化してきている。こうした背景から、ISO/TC204 と

ISO/TC22 の作業領域において重複領域が存在するという問題が顕在化した。これを受

けて、2014 年 6 月には ISO/TC204 と ISO/TC22 の間で連携手順を取り決めた覚書が締

結された。この覚書においては、両 TC のスコープは変更せずに両 TC 間のリエゾンを

今まで通りとすること、重複する規格開発がある場合には両 WG 間で問題を解決するこ

と、WG 間で解決できない場合には両 TC 議長間で解決するといった手順が記載されて

いる。

ISO/TC22/SC39/WG8 に設置された自動運転 HMI タスクフォースにおいて日本はタス

クフォースリーダーを務めており、ここでも主導的な役割を果たしている。運転者の

運転交代準備状態および運転能力に関する評価指標と計測方法に関する用語定義に関

して提案を行い承認されている。

(8)ITU

自動運転車は ITS を活用することから、無線通信技術の標準化も必要となる。その

ため、ITU や IEEE といった団体での標準化活動も行われている。

自動運転車の通信に関わる部分については ITU にて勧告作成等の標準化活動が行わ

れている。ITU 勧告は通信システムならびに通信機器が守るべき技術要件等を勧告と

して定めるものである。各国、各企業はこの勧告を必須条件として採用していくこと

になる。

(9)各国・地域における標準化組織

日本においては、ISO/TC204 および ISO/TC22 の国内審議団体として公益社団法人自動

車技術会が日本工業標準調査会から承認を受けている。ISO/TC204 は公益社団法人自動

車技術会に設置された ITS 標準化委員会が、ISO/TC22 は公益社団法人自動車技術会に設

置された規格委員会がそれぞれ標準化活動を推進している。

ITS 標準化委員会の技術委員会と規格委員会の規格運営委員会との間において、TC204

および TC22 の情報共有と課題検討を行うための自動運転標準化連絡会が設置され、情報

共有を行っている。

国土交通省は 2016 年 5 月、自動運転の国際基準化にオールジャパンで対応するため、

官民からなる連携組織である自動運転基準化研究所を設立することを発表した。自動運

転基準化研究所の役割の一つに標準化活動との連携が挙げられている。自動運転基準化

研究所は先に挙げた自動運転標準化連絡会とともに、日本自動車工業会に設置されてい

る自動運転検討会とも連携して、対応を検討している。

米国では SAE が自動運転の定義・分類を制定(SAE J3016)した。この他にも、自動運

転試作車の公道試験ガイドライン(SAE J3018)、DSRC メッセージセット辞書(SAE J2735)、

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車載 V2V 安全システム性能要件(SAE J2945)等の自動運転車に関連する規格を制定して

いる。また、SAE は ISO/TC22、ISO/TC204 を対象とした規格共同開発組織合意を締結し

ており、同じ技術分野で競合する標準規格を作成しないようにし、協力して共通の規格

を作成することとしている。

また、米国に本拠を置く IEEE にも注目する必要がある。米国公益法人法で公益法人に

指定されている。自動運転に関連する標準化の例として、IEEE 802.11p がある。IEEE

802.11 のタスクグループ p が ITS の使用環境に合うよう IEEE 802.11 無線 LAN 方式を機

能強化し、IEEE 802.11pとして標準化した(2010 年 6 月に最終承認、同年 7 月に出版)。

米国では 2014 年にこの IEEE 802.11p を用いた車車間通信機器を小型車両の新車に搭載

する制度化に向けての手続きが開始された。

欧州の代表的な標準化団体は CEN、CENELEC、ETSI がある。これらの団体は欧州の統一

規格を発行しており、それは EN 規格と呼ばれる。自動運転に関連する項目としては

Coorperative ITS が挙げられる。CEN と ETSI は欧州委員会から Coorperative ITS の基

本仕様となる規格制定を要請されたことを受けて、2014 年 2 月に第一次基本規格のパッ

ケージを欧州規格として発行した。

また、中国では工業情報省がスマートカー技術の国家規格制定に向けて意見公募を開

始した。この国家規格は自動車のインテリジェントネットワークの標準システムに関す

るものである。項目は基礎、一般仕様、アプリケーション、関連規格の四つからなり、

合計 95 の項目の規格として提案されている。

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第2節 政策動向調査

1.日本

日本のロードマップは官民 ITS 構想・ロードマップであり、最新版は 2017 年に発表さ

れている。これは SIP 自動走行システム推進委員会との合同会議を含めて作成されたも

のである。官民 ITS 構想・ロードマップ 2017 に記載された実証実験は SIP 自動走行シス

テムによって実施されることとなっている。

官民 ITS 構想・ロードマップ 2017 では自動運転システムのレベル区分として、SAE

International の J3016 の定義を採用し、SAE レベル 3 以上の自動運転システムを高度自

動運転システムと呼ぶ等の定義付けを行った。

このロードマップでは、社会面では 2030 年までに「世界一安全で円滑な道路交通社会」

を構築・維持することを目指し、産業面では官民の連携により、ITS に係る車両・イン

フラの輸出を拡大し、2020 年以降、自動運転システム化(データ基盤の整備を含む)に

係るイノベーションに関し、世界の中心地となることを目指すとしている。世界一安全

で円滑な道路交通社会は具体的には、自動運転システムの普及により交通事故がほとん

ど起こらない社会、自動運転システムの活用により革新的に効率的な物流システムが実

現される社会、運転に不安を感じる高齢運転者等でも自動運転システムを活用すること

によって気軽に外出し社会参加できる社会とされている。

自動運転システムの普及と市場化期待時期は、自家用車、物流サービス、移動サービ

ス毎に戦略が立てられている(図 1-11 参照)。自家用車については、SAE レベル 2 の市

場化等期待時期が 2020 年までと示されており、まずは高速道路における SAE レベル 2

の自動運転システムの市場化を踏まえて一般道路での自動運転も可能な自動運転システ

ムの市場化を見込むとされている。SAE レベル 3 については高速道路での自動運転の市

場化等期待時期が 2020 年目途と示されている。SAE レベル 4 については、高速道路での

完全自動運転の市場化等期待時期が 2025 年目途と示されている。

物流サービスにおいては、2017 年度からは後続車両が有人である2台の隊列走行につ

いて公道実証実験を開始、2018 年度には後続車両が無人である隊列走行について公道実

証実験を開始するとされている。そして、2020 年度には新東名高速道路での後続無人隊

列走行を実現、2022 年度以降に東京大阪間の高速道路の長距離輸送等において、後続車

両が無人の隊列走行の事業化実現を目指すとされている。

移動サービスにおいては 2020 年までに限定地域での公共交通等における無人自動運

転を利用した移動サービスの実現、2025 年以降に全国展開を目指すとされている。

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図 1-11:2025 年完全自動運転を見据えた市場化・サービス実現のシナリオ

出典:高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部・官民データ活用推進戦略会議 官民 ITS 構想・ロー

ドマップ 2017 2017 年 5 月 30 日発行

( https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/senmon_bunka/detakatsuyokiban/dorokotsu_dai7/sankou2.p

df 25 頁【図 11】2025 年完全自動運転を見据えた市場化・サービス実現のシナリオ)

上記の市場化等期待時期を達成するため、SIP 自動走行システムにおいて、大規模社

会実証に取り組むとされている。試験内容は、高速道路において、ダイナミックマップ

の有効性や精度検証、車々間通信による分合流部走行支援に係る検証、2~3 時間の連続

走行を行った際の運転者状態の検証が掲げられている。また、一般道においては、次世

代都市交通システム試作車を用いた走行検証や、公共車両優先システムを用いた機能検

証、インフラから提供される動的情報と配信されたダイナミックマップデータの車載機

上での紐付けの検証が掲げられている。

また、SIP 自動走行システム 2020 年の高速道路での自動運転可能な自動車の市場化の

実現に向けて、運転者がシステムの能力を過剰に信頼することにより事故リスクが高ま

るというようないわゆる「過信」問題等 HMI に係るガイドラインの必要性の検討とい

った制度面の課題や、自動運転に係る運転者、消費者への理解の増進等といった社会需

要面での課題、ダイナミックマップ、情報通信インフラの整備等といった技術・インフ

ラ面での課題についても引き続き取り組むとされている。

SIP 自動走行システムは他の会議体とも連携している。国土交通省と経済産業省が共

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同開催する自動走行ビジネス検討会は日本の自動走行における競争力を確保し交通事故

の削減に積極的な貢献をするために現状課題の分析と必要な取組の検討を行う会議体で

ある。自動走行ビジネス研究会において、競争・協調領域の戦略的切り分けといった取

組方針が出されている。この他にも、自動走行ビジネス検討会の報告に基づき、国際競

争力の確保のため、国際基準化等の議論を主導する組織として自動運転基準化研究所が

設立されている。このように、各組織または会議体が連携し自動運転車の実現に向けて

動いている。

この他にも経済産業省および国土交通省が実施を進める実証実験や、国家戦略特区や

各自治体において行われている実証実験がある。

2.米国

米国では USDOT が ITS 整備に関する 5 ヵ年計画である ITS Strategic Plan 2015-2019

を公表している。実行プログラムとして、コネクテッドカー、自動化、データ、相互運

用性、ITS の活用と展開が掲げられている。

この他にも連邦レベルでは USDOTが Smart City Challengeや Connected Vehicle Pilot

Deployment Program といった取り組みを進めている。Smart City Challenge はコロンバ

ス市において実験が行われており、自動運転システム、コネクテッドカー、スマートセ

ンサを交通ネットワークに組み込んだスマートシティの実現を目指している。

Connected Vehicle Pilot Deployment Program はニューヨーク市、タンパ市、ワイオ

ミング州において行われているプログラムであり、V2V を利用した交通システムについ

て検討が進められている。

各州でも取り組みが行われており、ミシガン州、アリゾナ州、カリフォルニア州等で

積極的な取り組みが行われている。中でもミシガン州は 2016 年にミシガン州運輸局傘

下の組織として、Michigan Council on Future Mobility を設立した。ここでは政策や

業界標準の策定に取り組むとされている。

3.欧州

欧州では、欧州フレームワークプログラムが代表的なプロジェクトであり、2014 年か

らは Horizon 2020 に引き継がれている。Horizon 2020 の作業プログラム 2016-2017 の

中に 2016-2017 Automated Road Transport(ART)が計画されている。これが自動運転

車に関連するものである。自動運転の取り組みとしては、2017 年から L3Pilot と

AUTOPILOT がそれぞれ開始された。

L3Pilot は駐車、都市交通、地方交通、高速道路を試験対象とし、それぞれの対象に

おいて SAE レベル 3 および SAE レベル 4 に関する大規模な実証実験を行うものである。

日本からもトヨタ自動車と本田技研工業の現地法人が参加している。また、このプロジ

ェクトで特徴的なのは国境間での実証実験が企画されていることであり、小さな国が集

まっておりかつ陸続きである欧州ならではの実証実験である。

AUTOPILOT は IoT を活用した安全な自動運転の実現を目指すもので、四つの運転モー

ド(都市交通、自動駐車、高速走行、隊列走行)において七つの自動運転サービス(自

動運転ルート最適化、交通弱者検出、無人自動車の再配置、実時間カーシェアリング、

高精度地図、プローブ情報収集、第六感での運転)を評価する。

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

4.ドイツ

ドイツでは 2015 年 9 月に自動運転に関する戦略である Strategy for Automated and

Connected Driving が発表された。これによれば、移動通信インフラ整備、自動運転実

現のための法整備、実証実験環境の設置、サイバーセキュリティに関する基準開発、自

動運転において収集されるデータの保護について検討することが掲げられている。

さらに、自動運転車の安全性評価方法の開発について議論が進められており、それを

行う PEGASUS PROJEKT が推進されている。自動運転車を市場投入するために必要な安全

性評価の基準や評価手法が確立されていない現状がある。こういった課題に対して、自

動運転車の性能要件とその評価手法をシナリオ分析と品質対策、実施工程、試験、結果

の反映と埋め込みという 4 つのアプローチで検討しようとしている。

5.フランス

フランスは自動運転の国家プログラムである The New France Industy Autonomous

Vehicle を 2015 年に策定した。これに基づいて PFA(Platform of the Automotive Sector)

が組織され活動が行われており、2020 年までに自動運転車を実現させるとしている。こ

のプログラムの目標は 5 つであり、法的枠組みと自動運転のエコシステムの構築、安全

性の実証、主要技術への投資、実験を通じた社会的効用の実証、社会受容性の醸成であ

る。

6.イギリス

イギリスでは 2015 年から完全自動運転車の実証実験が開始されている。実証実験はグ

リニッジ、ブリストル、コベントリー、ミルトンキーンズの 4 都市であり、グリニッジ

で行われた実証実験には一般市民も参加した。

7.スウェーデン

スウェーデンでは官民共同の実証実験プロジェクトである Drive Me が行われている。

2017年にヨーテボリ市の複数車線のバイパス区間にて 100台の自動運転車を一般運転者

が利用して実施されることが計画された。実験参加希望が 4,000 世帯に達し、一般市民

の関心の高さが伺えた。

8.中国

中国では 2017 年 4 月に中国工業・情報化部、国家発展改革委員会、中国科学技術部の

連名で「自動車産業中長期発展計画」が発表された。この中で、2020 年までに、DA(運

転補助)、PA(一部自動運転)、CA(一定の状況下での自動運転)といった各自動運転シ

ステムの新車装着率を 50%以上にすること、インターネットを通じた自動運転補助系統

の装着率を 10%にすること、2025 年までには、DA、PA、CA の各システムの新車装着率

を 80%とし、そのうち PA と CA 系統の新車装着率を 25%にし、高度且つ完全自動運転車

を市場に投入するといった目標が掲げられている。

9.韓国

韓国では 2017 年 2 月、国土交通部より自動運転車の商用化に向けたロードマップとな

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

る「第二次自動車製作基本計画(2017~2021)」が発表された。2020 年を目途に高速道

路での SAE レベル 3 相当の自動運転の実現を目指し、そのための技術開発、法制度整備

を進めることが計画されている。

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

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資料編

第6部

第3節 法規制動向調査

1.全体俯瞰

各国における道路交通に関する法規はほとんどの場合、自動車の定義や車両の交通方

法等について定めた日本の道路交通法に相当するもの、車両の安全基準を定めた日本の

道路車両運送法に相当するものから構成されている。自動運転車の導入においてはこれ

らの両面からの議論が必要である。

各国の道路交通法に相当する法律は多国間条約であるウィーン道路交通条約、ジュネ

ーヴ道路交通条約に従い定められている。いずれの条約も人が運転することを前提とし

ていたため、自動運転の実用化を見据えた場合には条約改正の必要性があった。これら

の道路交通条約の改正は国連欧州経済委員会(United Nations Economic Commission for

Europe:UN-ECE、以下 UN-ECE と記載する)の道路交通安全作業部会(WP1、以下 WP1 と記

載する)において進められており、当面、後述のように解釈の変更で急速に進展する自

動運転の技術開発及び公道試験に対応することで合意している。

車両の保安基準等について定めている道路運送車両法に相当する法律についても改正

が必要である。例えば、自動運転車特有の装置に対する技術基準の適合が必要になる。

自動運転に係る保安基準や型式認証の国際基準に関しては UN-ECE の自動車基準調査世

界フォーラム(WP29、以下 WP29 と記載する)が議論している。WP29 には六つの専門分

科会を有しており、その中のブレーキと走行装置(GRRF)専門分科会において、2015 年

に自動操舵専門家会議が設立された。その中で自動操舵(車線維持、車線変更)に関す

る規則改正について検討を行っている。

これらを受けて各国においても道路交通法に相当する法律、道路運送車両法に相当す

る法律に関しての議論が行われている。

2.UN-ECE WP1 による運転者の取扱いに関する議論

ほとんどの国の道路交通法に相当する法律は多国間条約であるウィーン道路交通条約、

ジュネーヴ道路交通条約に従い定められている。いずれの条約も車両内に運転者の存在

を前提としていたため、自動運転の普及を見据えた場合には条約改正の必要性があった。

これらの道路交通条約の改正は UN-ECE WP1 において進められている。

ウィーン道路交通条約の 2014 年 3 月の改正案は、車両の運転方法に影響する車両シス

テムに対し、運転者がオーバーライドまたはスイッチオフできる場合は、運転者が車両

を制御できているものとみなすという内容である。これにより、自動運転として許容さ

れる範囲が広がった。しかし、運転者による操作介入が可能、機能停止可能という要件

があるため、SEA レベル 4 以上のレベルの自動運転は許容されないと解釈され得る。

さらに、2016 年 4 月には WP1 は新たな解釈上の合意を確認した。それによれば、現行

の道路交通条約の解釈上、自動運転の公道実証実験に関して、運転者は自動車内に存在

するか否かは問わないこととした。この合意により、現行の道路交通条約にて遠隔操作

による公道実証実験が可能であると確認された。

ジュネーヴ道路交通条約は日本も批准している。これについても、2015 年 3 月に改正

案が採択された。その改正案によれば、車両の運転方法に影響を及ぼす車両システムは、

多国間協定に適合するか、運転者により操作介入が可能であり、または機能を停止でき

るときは、運転者が車両を適正に操縦、車両の速度制御をしているものとみなすとされ

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要約

第1部

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第4部

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資料編

第6部

る。さらに、条約の解釈についてもウィーン道路交通条約と同等の解釈が可能という確

認が行われた。これらにより、ジュネーヴ道路交通条約の下でも、SAE レベル 3 の自動

運転、遠隔操作による公道実証実験が可能と解釈される。

3.UN-ECE WP29 による基準の検討

自動運転に係る保安基準や型式認証の国際基準に関しては UN-ECE WP29 で検討されて

いる。2017 年 3 月に行われた UN-ECE WP29 の第 171 回会合では、運転者がステアリング

ホイールを握った状態であれば自動車線維持が認められるとした。これに伴って、運転

者の手放し運転を監視して警報を出すことや手動運転に切り替えるといった要件が定め

られた。また、遠隔での駐車支援に関わる規定も追加され、車両とリモコンの通信距離

は最大 6m と決められた。

4.日本

現行の法制度において、車両内に運転者が存在するのであれば公道実証実験をするこ

とが可能である。2017 年現在、道路運送車両法に則した保安基準に適合した車両を用い、

道路交通法を始めとする関係法令を遵守して走行し、緊急時の対応が可能な形態であれ

ば、自動運転のどの SAE レベルであっても、警察への事前の調整や許可は不要である。

車両内に運転者がいない場合について、2017 年 6 月の警察庁の通達により、遠隔運転

者がいれば公道実証実験が可能となった。これに基づき、2017 年 12 月には愛知県なら

びに東京都にて遠隔の自動運転による実証実験が行われた。

5.米国

米国では自動運転車を公道上で走行させることに関する法律は州車両法が基本となる。

従って、自動運転車の走行に関する法規制は州によって異なる。一方、自動運転機能を

搭載した車両については連邦政府として統一的なガイダンスや法律が存在する。

車両についてのガイダンスは 2016 年 9 月に NHTSA が公表した Federal Automated

Vehicle Policy、2017 年 9 月に USDOT が公表した A Vision for Safety 2.0 がある。い

ずれも自動運転システムの試験方法やシステム失陥時の対応等について安全評価項目を

定めるものである。

安全性保証に関する法律として、2017 年 9 月に SELF DRIVE Act と呼ばれる法案が可

決された。各州にて施行される自動運転システムの設計や性能に関する法令における各

種基準は SELF DRIVE Act に規定される基準と同一のものとされる必要があることを定め

るものである。

以上のように、連邦政府としてのガイダンスや法律は主に自動運転車そのものについ

てのものである。自動運転車を走行させてよいかどうかについては各州政府の管轄であ

り、ルールが制定され自動運転車の導入に積極的な州とそうでない州がある。自動運転

車の導入に比較的積極的かつ法的整備が進んでいる州として、ミシガン州、カリフォル

ニア州が挙げられる。

ミシガン州では州認定の専用ナンバープレートを装着し、ミシガン州が認めた保険に

加入し、自動車メーカーの従業員によって運行され、車両の走行について監視し、必要

に応じて運転操作ができる人が乗車すれば自動運転車の実証実験を行うことが可能であ

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要約

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第2部

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資料編

第6部

る。カリフォルニア州車両管理局は自動運転車の公道実験に関する規制緩和の修正案を

公表した。これによれば、無人の自動運転車を公道上で走行させることが可能になる。

現行の規制では緊急対応を行う人間が乗車する必要があり、全体で約 1,000 名のテスト

ドライバーが認可を受けている。

6.ドイツ

SAE レベル 3 相当の自動運転を実用化する観点から、道路交通法の改正案を閣議決定

した。さらに 2017 年 5 月にはドイツ連邦議会で可決された。高度完全自動運転機能を備

えた車両の運行、運転者の義務、車両が備えるべき装置の義務について定められている。

また、2017 年 8 月には自動運転車を対象とする法的なガイドラインが公表された。こ

のガイドラインは倫理、法律、技術の各方面の専門家から構成された倫理委員会によっ

てまとめられたもので、自動運転車に搭載されるソフトウェアは人の殺傷を回避するこ

とを最優先とすることを義務付けたものである。

保険についても法律で定められた。高度完全自動運転機能の使用により損害が生じた

場合、対人賠償の上限を 1000 万ユーロ、対物賠償の上限を 200 万ユーロに設定する。現

行はそれぞれ 500 万ユーロ、100 万ユーロである。

7.フランス

フランスでは法規制の枠組みを自動運転向けに検討するためのワーキンググループが

設置された。主な検討課題は保険、製造物責任についてである。

8.イギリス

イギリスでは自動運転車の法整備に関して、運行過程の一部ないし全てをシステムが

担う自動運転車の実現に向けた保険制度の見直しが行われる見込みである。強制自動車

保険の補償の範囲を拡張し、自動運転車による事故も含み、単一保険会社モデルを創設

することとした。

9.中国

2017 年 12 月、北京市交通委員会、北京市公安局公安交通管理局、北京市経済和信息

化委員会は共同で、北京市内での自動運転車の公道試験に関する規則を制定したと発表

した。これによれば、試験車両の自動運転システムが故障や警告を発する状態となった

ときには運転者が物理的に運転を実施することが求められる。

10.韓国

自動運転車の実験運行には突発状況に備え、運転者を含む最低二人以上の乗車が必要

である。

11.オーストラリア

オーストラリアは車両の保安基準に関して型式認証を採用しているが、自動運転車に

関しては国際的に標準化された技術や制度が確立されるまでの当面の間自己認証制度を

採用する方針である。

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要約

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第2部

第3部

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資料編

第6部

第3章 特許出願動向調査

第1節 調査方法・調査対象・技術区分

1.調査方法

国内外特許文献とも日立総合特許情報システムが提供する特許検索データベース

Shareresearch で検索を行った。検索を実施したのは 2017 年 7 月である。各国での公開

からデータベースへ収録されるまでには、発行国からのデータ提供にかかるタイムラグ

と、データベース会社の作業期間が必要である。また、PCT 出願の各国移行のずれ等で

全データを反映していない可能性がある。したがって、本調査報告における 2014 年、2015

年の出願のデータは真の数値より少ない可能性があることに留意されたい。

2.調査期間と調査対象文献及び調査対象国

(1)調査期間

2010 年-2015 年(優先権主張年ベース)

(2)調査対象文献

PCT(特許協力条約)に基づく国際出願(以下「PCT 出願」という。)

日本、米国、欧州、中国、韓国、ほか各国・地域への特許出願及び登録特許

(3)調査対象国(出願先国)

日本、米国、欧州(独除く)、独国、中国、韓国

(4)解析対象

解析の対象とした出願人国籍は、日本、米国、欧州(独除く)、独国、中国、韓国、

の 6 ヶ国・地域であり、それ以外は「その他」とした。

出願人国籍を「欧州国籍」とする国は、欧州特許条約(EPC)加盟国のうち独国を除

いた EPC 加盟 37 ヶ国である。また、出願先として「欧州」とするのは、欧州特許条

約(EPC)加盟国のうち独国を除いた DWPI 収録国である 20 ヶ国と欧州特許庁(EPO)で

ある。

3.調査対象技術

本テーマにおける調査対象技術は第1章調査概要で示した通りである。

4.技術区分

設定した技術区分を表 1-2~表 1-16 に示す。

表 1-2 自動運転車の技術区分とその説明

大区分 中区分 小区分 説明(中区分・小区分)

ドライバーなしドライバーなしを狙ったものであることが明らかな技術ドライバーがいなくとも、全ての運転タスクの実施が可能な技術

ドライバーありドライバーがいる前提での自動運転車ただし、ドライバーなしを狙ったものであることが明らかでない場合はここに含む

ドライバーなしドライバーなしを狙ったものであることが明らかな技術先頭車以外が無人車両、全車両が無人車両ドライバーがいなくとも、全ての運転タスクの実施が可能な技術

ドライバーありドライバーがいる前提での自動運転車全ての車両が有人である隊列走行、有人・無人の関係が示されていないもの

車群走行 複数の車両同士が群をなして走行を行う技術

交通管制管制からの指示等により、交通流を最適化する技術渋滞緩和等

その他 上記以外の技術

自動運転車

単独走行

隊列走行

注:文献の記載から SAE レベル 3 以上相当と判断されるものに付与を行う。SAE レベル 1 または 2 相当と判

断されるものには付与しない。

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

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資料編

第6部

表 1-3 運転支援システムの技術区分とその説明

大区分 中区分 小区分 詳細区分 説明(中区分・小区分または詳細区分含む)車線維持支援(LKAS) 車線維持のための支援機能に関する技術

先行車軌跡追従Adaptive Cruise Controlに関する技術であり、先行車両の移動軌跡に追従して走行する技術

その他 Adaptive Cruise Controlに関する技術であり、上記以外のもの

自動バレーパーキングドライバーが車内にいない状態あるいは車内にいても自ら運転操作をしない状態でシステムが自動的に駐車を行う技術

その他 駐車シーンにおける支援機能に関する技術であり、上記以外のもの車線変更支援 車線変更シーンにおける支援機能に関する技術合分流支援 道路の合流地点における支援機能に関する技術右左折支援 右左折シーンにおける支援機能に関する技術

自動発進/自動停止支援(信号機、停止線)

信号や停止線といった交通法規に従っての発進・停止を行うための支援機能に関する技術ACC機能による先行車追従の結果としての発進・停止は含まない

ブレーキ(AEBS) 衝突被害軽減ブレーキに関する技術操舵 操舵による衝突被害軽減または回避に関する技術その他 衝突被害軽減/回避に関する技術であり、上記以外のもの

車車間協調システム 車車間にて協調して運転支援を行う技術路車間協調システム 路車間にて協調して運転支援を行う技術歩車間協調システム 歩車間にて協調して運転支援を行う技術走行安定化システム ECS等の挙動安定化に関する技術その他 上記以外の運転支援システムに関する技術

運転支援システム

運転負荷軽減システム

定速走行・車間距離制御(ACC)

駐車支援

予防安全システム 衝突被害軽減/回避

表 1-4 シーン・場所の技術区分とその説明

大区分 中区分 説明(中区分)混在環境① 非自動運転車との混在環境混在環境② 異なるタイプの車両(バス、路面電車、救急車等)との混在環境隊列編成 隊列編成時、隊列解除時、隊列内車間距離変更等渋滞 渋滞路や渋滞時交通整理 人による手信号や誘導が行われている道路環境障害物回避 路肩停車車両等、道路上に障害物が存在する環境専用道 自動運転車や運転支援システムのための専用道路カーブ カーブまたはカーブ手前交差点 交差点合流・分流 道路への合流や道路の分流に関する技術であり、一般道も含む環境適合性① 路面状況に応じるもの環境適合性② 温度、湿度、高度、天候、日照等に応じるもの死角 車載センサやドライバーが認知できない死角への対応

バス運行管理バスの運行(定時性、速達性、輸送力)への対応正着技術等、バス停での技術も含む

タクシー運行管理 タクシーの運行管理、利用に関するものカーシェアリング運行管理 カーシェアリングの運行管理、利用に関するもの交通システム連携 鉄道、航空等、他の公共交通との連携駐車場 駐車場内における制御ラストワンマイル 戸口への移動または輸送その他の特定の交通状況下 上記に該当しない特定の環境下を特徴としたもの

シーン・場所

表 1-5 課題の技術区分とその説明

大区分 中区分 説明(中区分)快適性向上 快適性全般の課題省エネルギー エネルギー消費を抑えるもの全般の課題(燃費向上、省電力化等)インフラ不要化 路車間通信を不要にするという課題低コスト 低コストに関する課題走行安定性(スリップ防止等) スリップや挙動安定化に関する課題安全性 交通事故の低減、防止に関する課題省人化 ドライバーの低減、隊列走行等の被牽引車両の無人化に関する課題交通制約者対応① 移動について、困難を伴う高齢者や障害者に関する課題交通制約者対応② 移動について、困難を伴う高齢者や障害者以外に関する課題(旅行移動者等)初心者 自動運転システムを扱う経験の乏しい利用者に関する課題運転負荷低減 運転負荷の低減に関する課題交通流の改善 渋滞緩和等を目的とした交通流の改善・制御に関する課題緊急避難 ドライバーの急病時、災害時に車両を制御するもの、事故後の走行制御等その他 上記以外の課題

課題

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第1部

第2部

第3部

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資料編

第6部

表 1-6 判断技術の技術区分とその説明 大区分 中区分 小区分 詳細区分 説明(中区分・小区分または詳細区分含む)

ダイナミックマップ 自己位置同定 ダイナミックマップを利用して自車位置を判断する技術

GNSSGPS、GLONASS、Galileo、準天頂衛星等の衛星測位システムを利用して自車位置を判断する技術

横方向位置同定自車両の横方向位置を検出・同定する技術、車線と自車両との距離を同定する技術

データベース整備 運転行動や事故発生状況のデータベースを構築、整備するための技術データベース利用 運転行動や事故発生状況のデータを状況判断に利用する技術

生成(ダイナミックマップ)ダイナミックマップの情報を参照して走行時の最適な車線内での走行軌跡や、障害物を避けるための走行軌跡を生成する技術

生成(人工知能)人工知能により走行時の最適な車線内での走行軌跡や、障害物を避けるための走行軌跡を生成する技術

生成(上記以外)走行時の最適な車線内での走行軌跡や、障害物を避けるための走行軌跡を生成する技術(ダイナミックマップ、人工知能を利用することが明確でない技術)

優先順位 走行進路を複数生成し、衝突回避等の観点から優先順位を設定している技術その他 上記以外の技術

目的地経路 目的地までの最適なルートを生成する技術自車 自車両の挙動(位置、方向、速度等)に基づき衝突可能性を推定する技術他車 他車両の挙動(位置、方向、速度等)に基づき衝突可能性を推定する技術歩行者 歩行者の挙動(位置、方向、速度等)に基づき衝突可能性を推定する技術その他 上記以外の技術自車 自車両の挙動(位置、方向、速度等)に基づき衝突可能性を推定する技術他車 他車両の挙動(位置、方向、速度等)に基づき衝突可能性を推定する技術歩行者 歩行者の挙動(位置、方向、速度等)に基づき衝突可能性を推定する技術その他 上記以外の技術自車 自車両の挙動(位置、方向、速度等)に基づき衝突可能性を推定する技術他車 他車両の挙動(位置、方向、速度等)に基づき衝突可能性を推定する技術歩行者 歩行者の挙動(位置、方向、速度等)に基づき衝突可能性を推定する技術その他 上記以外の技術

その他 衝突可能性をモデルやMAP以外に基づいて推定する技術車体の衝突部位 自車両への衝突部位がどこかを判断している技術操作タイミング 操作のタイミングを判断する技術運転嗜好 ドライバーの運転の仕方等、ドライバー独自の嗜好を判断する技術

路面状況推定 μ推定、摩擦円、タイヤモデルを使った推定技術等重心・重量推定 車両の重心や重量を推定する技術その他 上記以外の推定技術

その他 上記以外の判断技術

走行安定化のための推定

判断技術

データベース

走行経路走行進路

衝突可能性

モデル推定

MAP判断

学習

表 1-7 システム設計の技術区分とその説明

大区分 中区分 小区分 詳細区分 説明(中区分・小区分または詳細区分含む)GPU 画像処理用演算プロセッサ(Graphics Processing Unit:GPU)に関する技術

その他自動運転システムや運転支援システムに関連するECUの構成や構造に関する技術、複数のECU間で連携して走行制御を行う技術

データ処理ダイナミックマップやデータベースといった外部より配信される情報を車載機上で処理するための技術

上記以外自動運転システムまたは運転支援システムに関連するOSやソフトウェアに関する技術であり、上記以外の技術

フォールトトレランス/フェールソフト

自動運転システムや運転支援システムの一部機能が失われても、二重系等の対策により車両制御を続行する技術

フェールセーフ自動運転システムや運転支援システムの一部機能が失われても、車両を停止させる等の安全側への制御を行う技術

フールプルーフ自動運転システムや運転支援システムに対してドライバーが間違った操作をした場合でも安全側への制御を行う技術

異常診断 自動運転システムや運転支援システムにおける異常診断技術

ブラックボックスシステム作動状況、運転状況の記録装置や、その記録装置の車両への搭載に関する技術

安全性評価 自動運転システム、ソフトウェア、パッケージ等の安全性評価を行う技術セキュリティ 車両システムにおけるセキュリティ技術

モジュール化/パッケージ化自動運転システムに利用可能なハードウェアをモジュールまたはパッケージとして構成することに関する技術

車両データ車間距離、制動距離、走行速度、加速度、減速度、操舵角等、車両走行に関わるデータを収集または受領することに関する技術

車両データ以外車両の走行位置、座標、経路、天候、気温、事故情報等のデータを収集またはコンテンツ等を受領することに関する技術

アップロード 収集した情報を車両側がアップロードすることに関する技術ダウンロード 車両側が情報をダウンロードすることに関する技術その他 上記以外の技術運転制御 遠隔で自動運転システムの制御を行う技術安全性向上 路上の問題をドライバーに伝達する等、安全性を向上させることに関する技術車両管理 保守点検のモニタリング等を行う技術

走行管理収集した情報に基づいて、走行ルート、走行制御等の提案を行う技術例えば、より早く到着するルートの提案、より乗り心地のよい走行制御の提案等

その他 上記以外の技術その他 上記以外の技術

その他 上記以外のシステム設計に関する技術

データ関連

機能

システム設計

ECU

OS/ソフトウェア

失陥対応

コネクテッドカー

表 1-8 操作技術の技術区分とその説明

大区分 中区分 小区分 説明(中区分・小区分)制動(ブレーキ自動制御) 制動制御の自動化に関する技術操舵(ハンドル、操舵角自動制御) ステアリング制御の自動化に関する技術駆動力(アクセル、エンジン、モーター、変速比制御)

駆動力制御の自動化に関する技術

サスペンション制御 サスペンション制御の自動化に関する技術

複数を同時に操作する技術制動制御・操舵制御・駆動力制御・サスペンション制御のいずれか複数を同時に操作する技術

その他制動制御・操舵制御・駆動力制御・サスペンション制御以外の走行制御の自動化に関する技術

車内警報 車載ディスプレイ上への表示警告や車内スピーカからの音声警告等車外警報 車車間通信や歩車間通信を利用した車外の車両や歩行者への警告等その他 上記以外の警報

その他 上記以外の操作技術

操作技術

走行制御の自動化

警報

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第1部

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第6部

表 1-9 HMI の技術区分とその説明

大区分 中区分 小区分 詳細区分 説明(中区分・小区分または詳細区分含む)ドライバー → 車両システム ドライバーが車両の状態を監視するための技術

覚醒度ドライバーの覚醒度合い(居眠り有無、意識低下有無、集中力低下有無)をシステムが監視するための技術

視線ドライバーがどこを見ているか(脇見していないか)をシステムが監視するための技術視線を誘導する技術もここに含む

体調ドライバーの疾病に関する状況をシステムが監視する技術ただし、覚醒度は除く

ドライバー操作状況ドライバーの車両操作状況を把握するための技術例えば、ステアリングの把持状態等を検知する技術

その他 上記以外のシステムがドライバーを監視するための技術その他 上記以外の監視技術手動運転 → 自動運転 ドライバーの手動運転から自動運転への切り替えに関する技術自動運転 → 手動運転 自動運転からドライバーの手動運転への切り替えに関する技術その他 上記以外の切替技術

対人車両外に存在する歩行者、ドライバー等に対して、自動運転車のシステム意図を伝達する技術

対非自動運転車 周囲の非自動運転車に対して、自動運転車のシステム意図を伝達する技術対自動運転車 周囲の自動運転車に対して、自車のシステム意図を伝達する技術その他 上記以外の対車両外部に意図を伝達する技術音声認識 ドライバーの声により操作を行う技術ジェスチャ認識 ドライバーの手や目の動きにより操作を行う技術遠隔操作 遠隔操作により車両の走行を制御する技術その他 上記以外の操作技術ナビゲーション系 ナビゲーション、経路、地図等に関する情報を出力する技術周辺状況 周辺状況に関する情報を出力する技術警告/ワーニング 警告に関する情報を出力する技術

現在の支援内容 現在のシステム支援状態について出力する技術次に行う支援内容 未来のシステム支援状態について出力する技術故障、診断情報等 故障、診断情報等について出力する技術その他 上記以外の技術

自動運転レベル把握現在の自動化レベルの状態を示したり、自動化レベルが切り替わる場合にその遷移状態を示すための技術例.SAEレベル4→SAEレベル3に遷移した場合にそのことを通知する技術

その他 上記以外の事項について表示や音声出力に関する技術調停 機械とドライバーの調停 人とシステムが行う事項(認知、判断、操作等)について調停を行う技術その他 上記以外のHMIに関する技術

操作方法

表示/音声内容システム状態

HMI

監視 車両システム → ドライバー

切替

対車両外部

表 1-10 ダイナミックマップの技術区分とその説明

大区分 中区分 小区分 詳細区分 説明(中区分・小区分または詳細区分含む)静的情報(路面情報、車線情報など) 静的情報の生成、取得、利用に関する技術準静的情報(交通規制情報、道路交通情報など)

準静的情報の生成、取得、利用に関する技術

準動的情報(事故情報、渋滞情報など) 準動的情報の生成、取得、利用に関する技術動的情報(周辺車両/歩行者、信号情報など)

動的情報の生成、取得、利用に関する技術

車載機上 ダイナミックマップに関する情報を車載機上で処理する技術クラウド(データセンタ、サーバ) ダイナミックマップに関する情報を車外で処理する技術通信プロトコル(フォーマット) ダイナミックマップに関する情報を授受するための規則

路車間通信 ダイナミックマップに関する情報を路車間通信により授受する技術車車間通信 ダイナミックマップに関する情報を車車間通信により授受する技術歩車間通信 ダイナミックマップに関する情報を歩車間通信により授受する技術

交差点 交差点においてダイナミックマップの情報を参照する技術カーブ カーブにおいてダイナミックマップの情報を参照する技術専用道路 専用道路においてダイナミックマップの情報を参照する技術合流・分流 合流・分流においてダイナミックマップの情報を参照する技術その他 上記以外の場所においてダイナミックマップの情報を参照する技術

三次元地図 三次元地図の高精度化に関するものその他 上記以外の技術

ダイナミックマップ

生成情報

データ加工

情報伝達手段通信経路

利用場面(シーン・場所)

表 1-11 人工知能の技術区分とその説明

大区分 中区分 小区分 詳細区分 説明(中区分・小区分または詳細区分含む)車両 車両制御において人工知能を利用している技術ドライバー/搭乗者 ドライバー、搭乗者に対する制御において人工知能を利用している技術単体 車外の単独の車両の認知または判断において人工知能を利用している技術

複数(交通流全体/車群)車外の複数車両(交通流全体または車群)の認知または判断において人工知能を利用している技術

道路の車線/形状 道路車線や形状の認知または判断において人工知能を利用している技術路面状況 路面状況の認知または判断において人工知能を利用している技術

その他 上記以外の対象物に関する技術車両 車両の特徴量を入力として用いる技術ドライバー/搭乗者 ドライバー、搭乗者の特徴量を入力として用いる技術位置/座標 周辺車両の位置または座標の特徴量を入力として用いる技術右左折 周辺車両の右左折における特徴量を入力として用いる技術割り込み 周辺車両の割り込みにおける特徴量を入力として用いる技術車線変更 周辺車両の車線変更における特徴量を入力として用いる技術飛び出し 周辺車両または歩行者の飛び出しにおける特徴量を入力として用いる技術道路車線/形状 道路車線や道路形状の特徴量を入力として用いる技術路面状況 路面状況の特徴量を入力として用いる技術制動/駆動 人工知能による演算結果の出力として制動制御または駆動制御を行う技術操舵 人工知能による演算結果の出力として操舵制御を行う技術報知/警告 人工知能による演算結果の出力として報知や警告を行う技術走行軌跡/経路 人工知能による演算結果の出力として走行軌跡や走行経路を決定する技術

交差点 交差点での状況について人工知能による演算を行う技術カーブ カーブでの状況について人工知能による演算を行う技術専用道 専用道での状況について人工知能による演算を行う技術合流・分流 合流・分流での状況について人工知能による演算を行う技術駐車場 駐車場での状況について人工知能による演算を行う技術

論理・知識型例えば、Decision Tree学習、ルール学習、機能論理プログラミング、強化学習、オントロジーを用いる技術

理論・知識とデータ融合型 例えば、ベイジアンネット、サポートベクターマシンを用いる技術データ駆動型 例えば、クラスタリング、データマイニングを用いる技術脳型AI 例えば、ニューラルネットワーク、ディープニューラルネットワークを用いる技術

その他上記以外のアルゴリズム例えばファジィアルゴリズム、遺伝的アルゴリズムなど

その他 上記以外の技術

自車

場所

手法

人工知能

対象物

自車

周辺車

環境

入力

自車

周辺車/歩行者

環境

出力

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

表 1-12 サービスの技術区分とその説明

表 1-13 車載センサの技術区分とその説明

大区分 中区分 小区分 説明(中区分・小区分)

単眼カメラ単眼カメラを用いて車両外の環境認識を行う技術(単眼カメラであることが明確に記載されている場合に付与)

複眼カメラ複眼カメラを用いて車両外の環境認識を行う技術(複眼カメラであることが明確に記載されている場合に付与)

単眼/複眼区別なし

カメラであるが、単眼カメラまたは複眼カメラの区別がつかないものカメラの個数について言及がないもの(単眼/複眼の種別の記載がされていない場合、カメラの個数が明記されていない場合に付与)

ミリ波レーダー ミリ波レーダーを用いて車両外の環境認識を行う技術マイクロ波レーダー マイクロ波レーダーを用いて車両外の環境認識を行う技術レーザーレーダー(LiDARを含む) レーザーレーダーを用いて車両外の環境認識を行う技術GNSS(GPS等) GNSS(GPS等)を用いて車両位置の認識を行う技術超音波センサ 超音波センサを用いて車両外の環境認識を行う技術磁気センサ 磁気センサを用いて車両外の環境認識を行う技術音響センサ 音響センサを用いて車両外の環境認識を行う技術赤外センサ 赤外センサを用いて車両外の環境認識を行う技術電波/電界センサ 電波/電界センサを用いて車両外の環境認識を行う技術フュージョン 複数の異種のセンサにより1つの対象物を認知しているものその他センサ 上記以外のセンサで、その種別が明確に特定できる技術

車載センサ

カメラ

表 1-14 ハードウェアの技術区分とその説明

大区分 中区分 説明(中区分)事故後安全保障 事故後の安全を確保するために使われるハードウェア自動運転における構造最適化 自動運転に利用されるハードウェアの構造を最適化するための技術その他 上記以外の技術

ハードウェア

表 1-15 車両タイプの技術区分とその説明

大区分 中区分 小区分 説明(中区分・小区分)電気自動車(HV含む)

駆動系の動力源としてバッテリを搭載している車両

その他 上記以外の車両小型カート 一人乗りモビリティ等の小型の移動手段として想定されている車両トラック 荷物を運搬することが主目的として想定されている車両バス 旅客の乗車が主目的として想定されている車両その他 上記以外の車両

車両タイプ

乗用車

表 1-16 自動化レベルの技術区分とその説明

大区分 中区分 説明(中区分)

SAEレベル11方向のみの運転支援(小区分)制動+(小区分)操舵+(小区分)駆動力-(中区分)SAEレベル2-(中区分)SAEレベル3-(中区分)SAEレベル4-(中区分)SAEレベルその他

SAEレベル22方向以上の運転支援技術(でありSAEレベル3以上に該当しないもの){(小区分)制動×(小区分)操舵×(小区分)複数を同時に操作する技術+(小区分)駆動力×(小区分)操舵×(小区分)複数を同時に操作する技術}-(中区分)SAEレベル3-(中区分)SAEレベル4-(中区分)SAEレベルその他

SAEレベル3 (小区分)自動運転車ドライバーあり×(中区分)HMI切替

SAEレベル4 (小区分)自動運転車ドライバーなし

その他SAEレベル3以上かつ明確に分類することができないもの(大区分)自動運転車-(中区分)SAEレベル3-(中区分)SAEレベル4

自動化レベル

大区分 中区分 小区分 詳細区分 説明(中区分・小区分または詳細区分含む)乗り心地重視 ドライバー、搭乗者の乗り心地を重視した走行を行う技術到着時間、燃費重視 目的地への到着時刻や燃費向上等を目指した走行を行う技術

経路選択 ナビゲーション情報を利用して経路選択を行うことに関する技術駐車場 駐車場におけるサービスに関する技術メンテナンス メンテナンスサービスに関する技術

サービス情報受領自動運転システムを利用した公共交通サービスの存在を知らせるための技術例えば、運行情報等を公開し広く一般に知らしめるための技術

オンデマンド(予約システム) 自動運転システムを利用した公共交通サービスを利用するための技術管理者側 オペレーション/運行管理 公共交通システム全体あるいは一部を管理、運営するための技術

サービス情報受領自動運転システムを利用したカーシェアリングサービスの存在を知らせるための技術例えば、運行情報等を公開し広く一般に知らしめるための技術

オンデマンド(予約システム) 自動運転システムを利用したカーシェアリングサービスを利用するための技術管理者側 オペレーション/運行管理 公共交通システム全体あるいは一部を管理、運営するための技術

配送拠点間輸送物流拠点間での配送において、自動運転システムを利用する場合のサービスに関わる技術例えば、車群制御、到着時間制御といった技術

戸口輸送

物流拠点から戸口への輸送(ラストワンマイル)において、自動運転システムを利用する場合のサービスに関わる技術例えば、再配達に関わる方法やその方法を利用するためのアプリケーションといった技術

移動式店舗 自動運転システムを利用して、移動式店舗を展開するための技術

車両外 歩行者事故防止歩行者と車両との事故を防止するためのアプリケーションに関する技術例えば、歩行者端末と歩車間通信とを利用した警報アプリケーションといった技術

上記以外の自動運転アプリケーション 上記外の技術の自動運転に関するアプリケーションコンテンツビジネス コンテンツビジネスを目的とする技術保険 自動車保険に関する技術広告 自動運転車内に広告を表示するための技術その他 上記以外の技術

物流

サービス

自家用車

走行制御

公共交通ユーザー側

カーシェアリング(タクシー含む)ユーザー側

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本編

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

第2節 全体動向調査

全体の出願動向を見ると、本テーマの調査対象技術に関する特許の日米欧独中韓への出

願件数は 15,631 件で、日本を出願先国とする出願が最も多く 27.2%を占めており、次い

で、米国(20.8%)、中国(18.3%)となっている(図 1-12)。

また、出願人国籍別に見ると日本国籍による出願が最も多く 44.6%を占めており、次

いで、独国籍(19.3%)、米国籍(15.8%)、欧州(独除く)国籍(6.7%)、中国籍(6.7%)、

韓国籍(6.6%)となっている(図 1-13)。

さらに、出願先国別-出願人国籍別の出願件数を図 1-14 に、出願先国別出願人国籍別

の出願件数収支を図 1-15 に示す。出願先国別-出願人国籍別の出願件数では、いずれの

国籍においても自国への出願が最も多く、その中でも、中国籍は他国籍と比べて自国への

出願比率が最も高い。出願先国別出願人国籍別の出願件数収支を見ると、日本、欧州(独

除く)、独国、中国、韓国への出願は、自国籍出願人による出願比率が最も高い。特に日

本への出願は、日本国籍出願人が 91.8%を占めている。一方、米国への出願は日本国籍が

37.8%、米国籍が 36.8%であり日本国籍の出願人による出願比率が最も高い。

図 1-12 出願先国別の出願件数推移及び出願件数比率(日米欧独中韓への出願、出願年(優先権

主張年):2010~2015 年)

注:2014 年以降はデータベース収録遅れ等で全データを反映していない可能性があるため、点線にて示す。

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 1-13 出願人国籍別の出願件数推移及び出願件数比率(日米欧独中韓への出願、出願年(優先

権主張年):2010~2015 年)

注:2014 年以降はデータベース収録遅れ等で全データを反映していない可能性があるため、点線にて示す。

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 1-14 出願先国別-出願人国籍別の出願件数(日米欧独中韓への出願、出願年(優先権主張

年):2010~2015 年)

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 1-15 出願先国別出願人国籍別の出願件数収支(日米欧独中韓への出願、出願年(優先権主張

年):2010~2015 年)

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本編

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

第3節 技術区分別動向調査

本節においては、平成 25 年度特許出願技術動向調査報告書「自動運転自動車」(以下、

前回調査)の調査結果との関係に基づき、技術区分別動向分析を行う。具体的には、4

年前の前回調査時には、技術区分として設定されていなかった、ダイナミックマップ、

人工知能、サービスなどの動向を中心に、近年の注目すべき特許出願動向をまとめる。

<技術区分:ダイナミックマップ>

ダイナミックマップの出願件数推移及び出願件数比率(図 1-16)を見ると、ダイナミ

ックマップの出願件数は増加傾向にあり、技術区分(中区分)別では、情報伝達手段に

関する出願比率(36.4%)が最も高く、次いで、生成情報に関する出願比率(34.6%)

が高い。また、ダイナミックマップの出願人国籍別出願件数(図 1-17)を見ると、日本

国籍や米国籍では、生成情報に関する出願件数が最も多い。一方、欧州(独除く)国籍

や独国籍では、情報伝達手段に関する出願件数が最も多い。

ここで、より詳細に、ダイナミックマップ(生成情報)の出願人国籍別出願件数(図

1-18)を見ると、米国籍は、静的情報(路面情報、車線情報など)の出願件数が多いの

に対し、中国籍は、すべての出願が動的情報(周辺車両/歩行者、信号情報など)に関す

る出願である。これらは、ダイナミックマップに対する、国籍間の注力技術の相違が特

許に表れているものと考えられる。

図 1-16 技術区分(ダイナミックマップ)別出願件数推移及び出願件数比率(日米欧独中韓への

出願、出願年(優先権主張年):2010~2015 年)

注:2014 年以降はデータベース収録遅れ等で全データを反映していない可能性がある。

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 1-17 技術区分(ダイナミックマップ)別-出願人国籍別出願件数(日米欧独中韓への出願、

出願年(優先権主張年):2010~2015 年)

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 1-18 技術区分(ダイナミックマップ(生成情報))別-出願人国籍別出願件数(日米欧独中

韓への出願、出願年(優先権主張年):2010~2015 年)

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

<技術区分:人工知能>

人工知能の出願件数推移及び出願件数比率(図 1-19)を見ると、人工知能の出願件数

は増加傾向にあり、特に、2012 年に大きく増加している。これは、人工知能を自動車に

適用した技術開発を行うウェイモやグーグルからの出願件数が大きく増加した時期と重

なる(図 1-20、図 1-21)。2012~2013 年頃は、第 3 次 AI ブームの始まりの時期とされ

ているが、第 3 次 AI ブームの始まりの時点で、人工知能活用の場としての自動車が、す

でに注目されていたことが、特許から確認されたものと考えられる。

一方、人工知能に関する出願を技術区分(中区分)別に見ると、対象物に関する出願

比率が 41.6%で最も高く、次いで、手法に関する出願比率(40.1%)が高い。

ここで、より詳細に、人工知能(対象物)の出願人国籍別出願件数(図 1-22)を見る

と、日本国籍では、自車や周辺車を対象とする出願件数が多いの対し、米国籍では、自

車や環境を対象とする出願件数が多い。国籍間の注力技術の相違が特許に表れているも

のと考えられる。

図 1-19 技術区分(人工知能)別出願件数推移及び出願件数比率(日米欧独中韓への出願、出願

年(優先権主張年):2010~2015 年)

注:2014 年以降はデータベース収録遅れ等で全データを反映していない可能性がある。

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第1部

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資料編

第6部

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 1-20 注目出願人(ウェイモ)別―出願先国別の出願件数推移及び出願件数比率(日米欧独中

韓への出願、出願年(優先権主張年):2010~2015 年)

注:2014 年以降はデータベース収録遅れ等で全データを反映していない可能性があるため、点線にて示す。

注:ウェイモは、2016 年にグーグルの自動運転車の開発部門が分社化して誕生した。そのため、ウェイモの

出願としてカウントされている特許文献は、出願当時はグーグル名義の出願である。2016 年のウェイモ

設立後、出願人名義変更等により、調査時点で、出願人名の中にウェイモを含む特許文献をカウントし

ている。

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 1-21 注目出願人(グーグル)別―出願先国別の出願件数推移及び出願件数比率(日米欧独

中韓への出願、出願年(優先権主張年):2010~2015 年)

注:2014 年以降はデータベース収録遅れ等で全データを反映していない可能性があるため、点線にて示す。

注:米国への出願件数が 1 件しか確認されていないが、これは、グーグルから分社化したウェイモへ、米国

への出願を対象とした名義変更等が実施されているためである。

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第1部

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第4部

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資料編

第6部

図 1-22 技術区分(人工知能(対象物))別-出願人国籍別出願件数(日米欧独中韓への出願、

出願年(優先権主張年):2010~2015 年)

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

<技術区分:サービス>

サービスの出願件数推移及び出願件数比率(図 1-23)を見ると、サービスの出願件数

は増加傾向にあり、技術区分(中区分)別では、自家用車に関する出願比率が 33.2%で

最も高く、次いで、カーシェアリング(タクシー含む)に関する出願比率(12.8%)が

高い。自家用車に関する出願が継続的に行われているのに対し、カーシェアリング(タ

クシー含む)に関する出願は、2014 年に出願件数が大きく増加している。

また、サービスの出願人国籍別出願件数(図 1-24)を見ると、日本国籍では、自家用

車、公共交通、カーシェアリング(タクシー含む)に関する出願が多く、米国籍では、

物流、自家用車に関する出願が多い。なお、多くの技術区分(中区分)で日本国籍の出

願が最も多い中、物流に関する出願では米国籍が最も多く、保険に関する出願では欧州

(独除く)国籍が最も多い点は、注目すべきである。

ここで、より詳細に、米国籍の出願が多い物流について、サービス(物流)の出願人

国籍別出願件数(図 1-25)を見ると、配送拠点間輸送に関する出願が最も多く、次いで、

戸口輸送に関する出願件数が多い。

尚、市場環境調査では、欧州においては、MaaS を中心としたサービスに関する開発が

盛り上がりを見せていることが確認されたが、本調査においては、調査対象を車に絞っ

た背景からか、その盛り上がりを特許動向から確認することはできなかった。

図 1-23 技術区分(サービス)別出願件数推移及び出願件数比率(日米欧独中韓への出願、出願

年(優先権主張年):2010~2015 年)

注:2014 年以降はデータベース収録遅れ等で全データを反映していない可能性がある。

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第1部

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第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 1-24 技術区分(サービス)別-出願人国籍別出願件数(日米欧独中韓への出願、出願年(優

先権主張年):2010~2015 年)

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資料編

第6部

図 1-25 技術区分(サービス(物流))別-出願人国籍別出願件数(日米欧独中韓への出願、出

願年(優先権主張年):2010~2015 年)

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資料編

第6部

<技術区分:運転支援システム(運転負荷軽減システム)>

運転負荷軽減システムの出願件数推移及び出願件数比率(図 1-26)を見ると、運転負

荷軽減システムの出願件数は増加傾向にある。また、技術区分(小区分)別では、定速

走行・車間距離制御(ACC)に関する出願比率が 45.9%で最も高く、次いで、駐車支援

に関する出願比率(22.8%)、車線維持支援(LKAS)に関する出願比率(18.9%)の順で

ある。

また、出願比率の高い上記 3 つの技術区分(小区分)別に見ると、車線維持支援(LKAS)

や定速走行・車間距離制御(ACC)はすでに製品化が進んでいる技術である。さらに、別

の観点から見ると、出願の技術区分(運転支援システム)と技術区分(シーン・場所)

との相関(図 1-27)においては、運転負荷軽減システムの活用の場としては、駐車場が

最も注目を集めていることが確認されている。

ここで、より詳細に、駐車支援について、運転支援システム(運転負荷軽減システム(駐

車支援))の出願人国籍別出願件数推移(図 1-28)を見ると、自動バレーパーキングに

関する出願件数が増加傾向にあり、出願人国籍別にみると(図 1-29)、独国籍や韓国籍

が多い。このことから、今後、独国籍や韓国籍からの自動バレーパーキングに関する技

術を中心に、製品化が活発になるものと予想される。

図 1-26 技術区分(運転支援システム(運転負荷軽減システム))別出願件数推移及び出願件数

比率(日米欧独中韓への出願、出願年(優先権主張年):2010~2015 年)

注:2014 年以降はデータベース収録遅れ等で全データを反映していない可能性がある。

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第1部

第2部

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資料編

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図 1-27 出願の技術区分(運転支援システム)と技術区分(シーン・場所)との相関(日米

欧独中韓への出願、出願年(優先権主張年):2010~2015 年)

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第1部

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資料編

第6部

図 1-28 技術区分(運転支援システム(運転負荷軽減システム(駐車支援)))別出願件数推移(日

米欧独中韓への出願、出願年(優先権主張年):2010~2015 年)

注:2014 年以降はデータベース収録遅れ等で全データを反映していない可能性がある。

図 1-29 技術区分(運転支援システム(運転負荷軽減システム(駐車支援)))別-出願人国籍別

出願件数(日米欧独中韓への出願、出願年(優先権主張年):2010~2015 年)

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本編

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

<技術区分:システム設計(失陥対応)>

失陥対応の出願件数推移及び出願件数比率(図 1-30)を見ると、失陥対応の出願件数

は増加傾向にあり、失陥対応に関する出願を技術区分(小区分)別に見ると、異常診断

に関する出願比率が 45.0%で最も高く、次いで、フェールセーフに関する出願比率

(35.3%)が高い。自動運転車において、システムに異常が発生した場合の失陥対応方

法としては、フェールセーフを活用した対応方法の数的な優位性が確認されるが、フォ

ールトトレランス(異常発生時にシステム機能を縮小せずに継続させる)やフェールソフ

ト(異常発生時にシステム機能を縮小してでも継続させる)に関する特許出願も 2014

年から確認されている。

尚、フォールトトレランス/フェールソフトは、本テーマの調査範囲においては、日本

国籍からのみ確認されている(図 1-31)。今後、出願件数がどのように推移していくの

か、他の国籍からの出願が確認されるようになるのか等の観点に基づき、今後の動向に

注目すべきである。

図 1-30 技術区分(システム設計(失陥対応))別出願件数推移及び出願件数比率(日米欧独中

韓への出願、出願年(優先権主張年):2010~2015 年)

注:2014 年以降はデータベース収録遅れ等で全データを反映していない可能性がある。

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 1-31 技術区分(システム設計(失陥対応))別-出願人国籍別出願件数(日米欧独中韓への

出願、出願年(優先権主張年):2010~2015 年)

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

<技術区分:システム設計(コネクテッドカー(機能))>

コネクテッドカーの機能別の出願件数推移及び出願件数比率(図 1-32)を見ると、コ

ネクテッドカーの機能に関する出願件数は増加傾向にあり、コネクテッドカーの機能に関

する出願を技術区分(詳細区分)別に見ると、運転制御に関する出願比率が 51.2%で最

も高く、次いで、安全性向上に関する出願比率(27.5%)が高い。

また、コネクテッドカーの機能別の出願人国籍別出願件数(図 1-33)を見ると、多く

の国籍で運転制御に関する出願比率が高い。

今後のコネクテッドカー開発においては、世界的に注目を集める運転制御関連の技術と

ともに、日本の強みとなる可能性のある安全性向上関連の技術の2つの側面から、開発の

方向性を検討すべきである。

図 1-32 技術区分(システム設計(コネクテッドカー(機能))別出願件数推移及び出願件数比

率(日米欧独中韓への出願、出願年(優先権主張年):2010~2015 年)

注:2014 年以降はデータベース収録遅れ等で全データを反映していない可能性がある。

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第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 1-33 技術区分(システム設計(コネクテッドカー(機能)))別-出願人国籍別出願件数(日

米欧独中韓への出願、出願年(優先権主張年):2010~2015 年)

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資料編

第6部

<技術区分:HMI(対車両外部)>

対車両外部の出願件数推移及び出願件数比率(図 1-34)を見ると、対車両外部の出願

件数は増加傾向にあり、対車両外部に関する出願を技術区分(小区分)別に見ると、特

許文献の記載に基づいて対象を判別できたもの中では、対非自動運転車に関する出願比

率が 19.5%で最も高く、次いで、対人に関する出願比率(15.7%)が高い(その他につ

いては、特許文献の記載に基づいて対象を明確に判別できなかったものがほとんど)。

また、対車両外部の出願人国籍別出願件数(図 1-35)を見ると、日本国籍では、対人

に関する出願件数が多く、米国籍では、対非自動運転車に関する出願件数が多い。

一方、市場環境調査から、ISO/TC22/SC39/WG8 の活動において、米国は「自動運転車

の外向き HMI」の提案国であることがわかっている。

これらを勘案すると、米国が HMI の対車両外部、特に非自動運転車に対して注力する

様子が伺われるため、今後の動向に注目すべきである。

図 1-34 技術区分(HMI(対車両外部))別出願件数推移及び出願件数比率(日米欧独中韓への出

願、出願年(優先権主張年):2010~2015 年)

注:2014 年以降はデータベース収録遅れ等で全データを反映していない可能性がある。

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第1部

第2部

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第4部

第5部

資料編

第6部

図 1-35 技術区分(HMI(対車両外部))別-出願人国籍別出願件数(日米欧独中韓への出願、出

願年(優先権主張年):2010~2015 年)

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第6部

第4節 出願人別動向調査

1.全体

日本、米国、欧州(独除く)、独国、中国、韓国への出願件数上位の出願人ランキング

を表 1-17 に示す。上位 10 社すべてが自動車関連企業である。うち 8 社が自動車メーカ

ーであり、トヨタ自動車が 1 位となっている。ほか 2 社は自動車部品メーカーであるデ

ンソー(2 位)、ロバート・ボッシュ(3 位)である。日本国籍は上位 10 社中、5 社ラン

クインしている。米国籍と独国籍は、それぞれ 2 社ランクインしている。韓国籍は 1 社

のみランクインしており、中国籍はランクインしていない。

表 1-17 出願人別出願件数上位ランキング-全体(日米欧独中韓への出願、出願年(優先権主張

年):2010~2015 年)

全体への出願順位 出願人 国籍 属性 件数

1 トヨタ自動車 日本 企業 2,2302 デンソー 日本 企業 1,1063 ロバート・ボッシュ 独国 企業 9414 フォード・グローバル・テクノロジーズ 米国 企業 7145 本田技研工業 日本 企業 6076 ゼネラル・モーターズ 米国 企業 5917 スバル 日本 企業 4928 日産自動車 日本 企業 4849 現代自動車 韓国 企業 475

10 ダイムラー 独国 企業 414

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第1部

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第6部

2.出願先国別

出願先国別の日本、米国、欧州(独除く)、独国、中国、韓国への出願件数上位の出願人

ランキングを表 1-18 に示す。

日本への出願については、上位 10 出願人すべてが日本国籍である。米国や中国への出願

も、日本国籍の出願人による出願が多く、上位 10出願人のうち 5出願人が日本国籍である。

独国や韓国への出願については、それぞれ、自国籍の出願人による出願が多い。

表 1-18 出願先国別の出願人別出願件数上位ランキング-全体(日米欧独中韓への出願、出

願年(優先権主張年):2010~2015 年)

日本への出願 米国への出願順位 出願人 国籍 属性 件数 順位 出願人 国籍 属性 件数

1 トヨタ自動車 日本 企業 1,035 1 トヨタ自動車 日本 企業 4462 デンソー 日本 企業 603 2 ウェイモ 米国 企業 2563 本田技研工業 日本 企業 299 3 フォード・グローバル・テクノロジーズ 米国 企業 2354 日産自動車 日本 企業 288 4 デンソー 日本 企業 2295 スバル 日本 企業 258 5 ゼネラル・モーターズ 米国 企業 1946 三菱電機 日本 企業 132 6 本田技研工業 日本 企業 1497 日立オートモーティブシステムズ 日本 企業 100 7 ロバート・ボッシュ 独国 企業 1298 アイシンAW 日本 企業 94 8 現代自動車 韓国 企業 1139 マツダ 日本 企業 91 9 スバル 日本 企業 82

10 いすゞ自動車 日本 企業 78 10 日産自動車 日本 企業 70

欧州への出願 独国への出願順位 出願人 国籍 属性 件数 順位 出願人 国籍 属性 件数

1 ロバート・ボッシュ 独国 企業 211 1 ロバート・ボッシュ 独国 企業 3952 トヨタ自動車 日本 企業 186 2 ダイムラー 独国 企業 3273 ジャガー・ランド・ローバー イギリス 企業 128 3 フォード・グローバル・テクノロジーズ 米国 企業 2114 スカニア スウェ ーデン 企業 93 4 ゼネラル・モーターズ 米国 企業 2085 アウディ 独国 企業 87 5 BMW 独国 企業 1846 フォード・グローバル・テクノロジーズ 米国 企業 80 6 トヨタ自動車 日本 企業 1757 ボルボ スウェ ーデン 企業 68 7 アウディ 独国 企業 1718 日産自動車 日本 企業 55 8 デンソー 日本 企業 1419 プジョー フランス 企業 43 9 フォルクスワーゲン 独国 企業 122

10 本田技研工業 日本 企業 41 10 コンチネンタル・テーベス 独国 企業 109

中国への出願 韓国への出願順位 出願人 国籍 属性 件数 順位 出願人 国籍 属性 件数

1 トヨタ自動車 日本 企業 343 1 現代自動車 韓国 企業 2372 フォード・グローバル・テクノロジーズ 米国 企業 188 2 現代モービス 韓国 企業 2333 ゼネラル・モーターズ 米国 企業 164 3 現代オートロン 韓国 企業 544 ロバート・ボッシュ 独国 企業 151 4 トヨタ自動車 日本 企業 455 デンソー 日本 企業 102 5 グーグル 米国 企業 336 現代モービス 韓国 企業 81 6 デンソー 日本 企業 237 スバル 日本 企業 74 7 コンチネンタル・テーベス 独国 企業 228 現代自動車 韓国 企業 74 8 韓国電子通信研究院 韓国 研究機関 219 本田技研工業 日本 企業 73 9 起亜自動車 韓国 企業 11

10 日産自動車 日本 企業 64 10 ジャガー・ランド・ローバー イギリス 企業 8

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

第4章 研究開発動向調査

第1節 調査方法・調査対象・技術区分

1.調査方法

本調査のデータベースには株式会社ジー・サーチが提供する JDreamⅢを使用した。

JDreamⅢは、日本及び外国における学術雑誌や専門誌、学術会議で発表された論文を検索

可能な科学技術文献データベースである。キーワードを用いた検索式により得られた集合

から調査対象論文を検索した。

2.調査期間と調査対象文献

(1)調査期間

2010 年-2016 年(発表年)

(2)調査対象文献

JDreamⅢに収録されている日本及び外国における学術雑誌や専門誌、学術会議で発表

された論文

(3)解析対象

解析の対象とした出願人国籍は、日本、米国、欧州(独除く)、独国、中国、韓国、の

6 ヶ国・地域であり、それ以外は「その他」とした。

所属機関国籍を「欧州国籍」とする国は、欧州特許条約(EPC)加盟国のうち独国を除い

た以下に示す EPC 加盟 37 ヶ国である。

【「欧州国籍」とする EPC 加盟 37 ヶ国】

アルバニア、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、スイス、キプロス、チェコ、デ

ンマーク、エストニア、スペイン、フィンランド、フランス、イギリス、ギリシャ、

モナコ、クロアチア、ハンガリー、アイルランド、アイスランド、イタリア、リヒテ

ンシュタイン、リトアニア、ルクセンブルグ、ラトビア、マケドニア、マルタ、オラ

ンダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スウェーデン、スロヴニ

ア、スロヴァキア、サン・マリノ、トルコ、セルビア

3.調査対象技術

本テーマにおける調査対象技術は第1章調査概要で示した通りである。

4.技術区分

技術区分は第3章特許出願動向調査にて示した内容と同一である。

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

第2節 全体動向調査

本テーマの調査対象技術に関する発表言語が英語である研究者所属機関国籍別論文発

表件数推移及び論文発表件数比率を図 1-36 に示す。欧州、米国の論文発表件数が多く、

中国がそれに次ぐ発表件数となっている。ドイツの論文発表件数は 2016 年に 88 件とな

り、一気に増加している。中国の論文件数は 2014 年まで一桁だったが、2015 年に 19 件、

2016 年に 76 件と大きく増加している。

日本の論文件数は韓国を下回っている。日本語での論文発表に比べ英語での論文発表が

少なく、研究成果を国際的に注目される形態で発表できていないものと推測される。

図 1-36 研究者所属機関国籍別論文発表件数推移及び論文発表件数比率(発表言語英語、論文発

表年:2010-2016 年)

注:「その他」には所属機関が不明なものを含む

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第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

第3節 技術区分別動向調査

図 1-37 には、技術区分(判断技術)における中区分別の論文発表件数推移(発表言語

英語)を示す。2016 年の状況と 2015 年以前の状況を比較すると、2016 年にはほとんど

の技術区分についての論文発表が行われている一方、2015 年以前では論文発表件数が少

ない。判断技術について、研究対象項目が増加している様子が窺える。

図 1-37 技術区分(判断技術)における中区分別の論文発表件数推移(発表言語英語、論文発表

年:2010~2016 年)

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第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 1-38 には、技術区分(HMI)における中区分別の論文発表件数推移(発表言語英語)

を示す。対車両外部は 2015 年から論文発表が見られ、2016 年には 7 件と大きく増加し

ている。比較的近年に注目され始めた技術区分であることが窺える。

図 1-38 技術区分(HMI)における中区分別の論文発表件数推移(発表言語英語、論文発表年:

2010~2016 年)

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第1部

第2部

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第4部

第5部

資料編

第6部

図 1-39 には、技術区分(システム設計)における中区分別の論文発表件数推移を示す。

2016 年においては安全性評価についての論文発表が最も多くなっている。

図 1-39 技術区分(システム設計)における中区分別の論文発表件数推移(発表言語英語、論文

発表年:2010~2016 年)

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第1部

第2部

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第4部

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資料編

第6部

図 1-40 には、技術区分(ダイナミックマップ)における中区分別の論文発表件数推移

を示す。論文発表件数は少なく、一番多い技術区分(中区分)は生成情報に関するもの

である。2015 年以降の論文発表がほとんどであり、研究テーマとして近年に注目された

技術区分であることが窺える。

図 1-40 技術区分(ダイナミックマップ)における中区分別の論文発表件数推移(発表言語英語、

論文発表年:2010~2016 年)

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資料編

第6部

図 1-41 には、技術区分(人工知能)における中区分別の論文発表件数推移を示す。2010

年以降、手法を対象にした論文発表が一定数継続的に行われている。2016 年には対象物、

出力についての論文発表が見られる。研究対象とする技術区分が広がってきている様子

が窺える。

図 1-41 技術区分(人工知能)おける中区分別の論文発表件数推移(発表言語英語、論文発表年:

2010~2016 年)

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第6部

第4節 研究者所属機関・研究者別動向調査

研究者所属機関別の論文発表件数上位ランキング(発表言語英語)を表 1-19 に示す。

東京大学からの論文が最多である。二位は中国の清華大学、三位は漢陽大學校である。

上位 10 位に日本国籍の所属機関は東京大学しかなく、他は米国、欧州(独除く)、独国、

中国、韓国の機関である。

表 1-19 研究者所属機関論文発表件数上位ランキング(発表言語英語、論文発表年:2010~2016

年)

全体への論文発表順位 所属機関 国籍 属性 件数

1 東京大学 日本 大学 222 清華大学 中国 大学 203 漢陽大學校 韓国 大学 194 ソウル大学校 韓国 大学 165 カリフォルニア大学バークレー校 米国 大学 155 チャルマース工科大学 欧州 大学 155 スタンフォード大学 米国 大学 155 カーネギーメロン大学 米国 大学 159 ダイムラー 独国 企業 139 ミュンヘン工科大学 独国 大学 13

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第4部

第5部

資料編

第6部

第5章 提言

第1節 「安全」を強みとする自動運転技術の開発

【提言1】

自動運転の時代においては、「安全」は競争力の源泉になり得る。システムによる安全な

自動運転を実現するため、我が国がこれまで培ってきた自動車技術と、AIに代表される

情報処理技術及び、移動通信技術を高度に融合させるべきである。

また、自動運転が社会に安心して受け入れられるように、システム失陥時の安全確保や、

自動運転のリスク分析についても研究を進める必要がある。

《提言詳細》

1.情報技術・通信技術と自動車産業固有の技術の融合による自動運転車の開発

自動運転車をより安全なものとするため、自動車産業が蓄積してきた技術をより発

展させていくとともに、情報技術・通信技術を活用することが必要である。また、自

動運転車が安全であることを実証するための基準作りと安全性評価手法を確立し、デ

ータを積み上げ、社会に受け入れられるようにしなければならない。

自動運転車の開発は我が国を始め世界各国で進められているが、自動運転車を成立

させるためには、運転に必要な認知、判断、操作の全てを自動化することが必要であ

る。操作に関わる車両挙動の制御技術は成熟してきており、認知・判断に関して情報

技術を利用して高度化することが重要テーマになっている。そのため、情報技術を研

究主体とする企業のこの分野への参入が相次いでいる。

自動運転車を社会に導入するためには安全性の確保が重要である。自動車の安全は

そもそも事故を起こさないようにすることが必要であり、そのためには車両単独での

対応が難しい状況に対処するために、通信技術を活用して周辺の車両やインフラと協

調するシステムを構築することが必要である。

しかし、先進技術を組み合わせても事故発生を完全になくすことは困難である。万

が一の事故に備えて、乗員の安全を確保すること、事故の相手側の保護、特に交通弱

者の保護することも重要である。

それには、自動車産業が積み上げてきた知見が非常に有用である。事故の発生を抑

制するために通信技術を活用するのみならず、乗員保護、交通弱者保護といった自動

車産業が持つ有用な技術を活用し、より安全な車両を実現させるべきである。

また、事故の抑制、死傷者の抑制に向け、自動運転車に向けた研究開発成果を市販

されている手動運転車にも順次適用するべきである。

本特許出願動向調査の結果によれば、課題の中では安全性の出願が最も多く、環境

適合性②(天候や日照等に応じるもの)を意識した出願が最も多い。一方で、合流・

分流における安全性についての出願は相対的には少ない。合流・分流の動作は他車両

との連携した動きが必要になり、自車両だけの制御では難しい側面もある。こうした

制御を行なうためには情報技術・通信技術を活用する必要がある。

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第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

2.システム失陥時の対応に関する技術開発

システムが失陥した場合でも事故の発生を防ぐ、または事故被害の程度を最小限に

留めるための技術開発を行うべきである。

自動運転の動作はシステムが正常に作動することが前提となるが、システムの失陥

は起こりうる。従って、自動運転車においても信頼性設計を行う必要がある。システ

ムの失陥が起きたとしても、車両を安全に停止できるフェールセーフ技術や、一系統

が故障しても運転を続けることが可能なフォールトトレラント設計について積極的に

技術開発を行うことが必要である。

米国では Federal Automated Vehicle Policy や A Vision for Safety 2.0 において、

予備的手段(問題発生時、安全動作不可能時にリスク最小化状態へと移行する方法)

についての安全評価を行うことを求めている。今後、米国においてもシステム失陥時

の対応について研究開発が進むことが予想される。

本特許出願動向調査の結果によれば、失陥対応の出願は 2013 年、2014 年にかけて

増加しており、失陥対応技術に対して注目されつつあることが窺える。また、2014 年

からフォールトトレランス/フェールソフトの出願が行われている(図 1-30 参照)。さ

らに、失陥対応の出願は、全体的に日本国籍の出願が多く、フォールトトレランス/

フェールソフトに関しては日本以外の出願人の出願がない(図 1-31 参照)。現時点で

日本は異常があってもシステム機能を継続させる技術の開発では先行しており、今後

もこの研究開発を継続するべきである。

3.自動運転車のリスクを受容する社会的システムについての検討

自動運転車が社会に大きな効用をもたらすことが期待されているが、技術開発によ

って完全に解決することのできないリスクもあると考えられる。

事故発生を限りなくゼロに近づける技術開発はもちろん必要であるが、それでも残

存してしまうリスクを社会が受け入れるような仕組みを構築することも必要である。

自動運転車における潜在的なリスクを科学的データで定量的に示し、自動運転がもた

らす社会的効用との関係から議論を重ね、社会として受容するための仕組みを構築す

ることが必要である。一例として、自動運転車を対象にした保険についても社会的な

制度設計を行う動きがある。

技術区分(サービス)別出願件数推移及び出願件数比率(図 1-23 参照)を見ると、

保険に関する出願は今回の調査において技術区分を設定した中で三番目の出願件数が

ある。技術区分(サービス)別-出願人国籍別出願件数(図 1-24 参照)を見ると、保

険は欧州の出願が最も多い。これらのことから、欧州では保険に関して研究開発が進

んでおり、日本は後れを取っている可能性があることが窺える。

今後、日本においても、自動運転車の潜在的なリスクを科学的に分析するとともに、

事故原因の特定を迅速、確実に行う技術の開発をすべきである。

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第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

第2節 人と自動運転システムの協働

【提言2】

人と自動運転システムの関係を最適化する技術開発に一層注力すべきである。具体的に

は自動運転車と搭乗者、自動運転車の外部、それぞれをつなぐ HMI の開発を急ぐべきであ

る。

また、人の自動運転システムに対する過度な依存を防ぐための技術開発も重要である。

《提言詳細》

1.自動運転車と運転者をつなぐ HMI の開発

SAE レベル 3 および 4 の自動運転車を実現するために必要となる運転者とシステム

の間での運転権限の移譲を安全かつ確実に行うための課題解決に一層注力すべきであ

る。

自動運転車が完全に無人で公道上を走行できるように技術が成熟し走行環境や制度

整備が整うまでには相当の時間が必要であると考えられる。それが実現されるまでの

間は、運転者とシステムが相互に補完する形で自動運転車の実用化が進むと考えられ

る。従って、自動運転車の公道走行を実現するために、運転者とシステムをつなぐ HMI

の開発が当面の重要課題である。

自動運転に関する HMI は ISO/TC22/SC39/WG8 に組織された自動運転 HMI タスクフォ

ースにて議論が進められている。自動運転に関する HMI は様々なトピックスがあり、

例えば運転者特性とその評価法、運転者状態監視、運転状態の遷移、権限移譲の捉え

方、自動運転の状態評価、テイクオーバー(運転者による運転権限の獲得)の定義が

ある。ここで日本はタスクフォースリーダーに就任し、主導的な役割を果たしている。

SAE レベル 3 では通常の動作状態で運転操作の主体はシステムにあるが、システム

の作動継続が困難な場合には運転者がシステムの介入要求(テイクオーバー・リクエ

スト)等に対して適切に応答することが期待されるものとされている。このような運

転の権限移譲を安全に行うには運転者が運転の準備を整えている必要がある。権限移

譲は非常に困難であるとの考えもあるが、自動運転技術を社会のために活用する場合、

これを解決することが非常に重要である。

そのためにはシステムが運転者の様子を監視し、運転の準備が整っていることを確

認する技術が必要であり、研究対象とされている。

本特許出願動向調査の結果によれば、HMI においては表示/音声内容の出願が最も多

く、監視がそれに次いで多い。国・地域別で見ると、中国を除く国・地域では表示/

音声内容の件数が最も多い。日本は監視の件数でも多くなっているが、今後は表示/

音声内容(警報)への研究開発のみならず、監視についての研究開発に力を入れてい

くべきである。

2.自動運転車と外部とをつなぐ HMI 開発

SAEレベル 4、SAEレベル 5の自動運転車では運転者と呼ばれる存在が不要(ただし、

SAE レベル 4 では限定地域内)であることから、自動運転車の行動意思を車両外部の

道路利用者へ伝達する必要がある。この新たな課題に対して一層注力すべきである。

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

自動運転車が完全に無人で公道上を走行するまでには相当の時間が必要である。し

かし、いずれ無人の自動運転車が実用化され運転者と呼ばれる人の存在が不要になる

時が来る。その時には自動運転車と外部の人をつなぐ HMI が必要であるとの課題認識

が進んでいる。具体的には現状の交通において実施されている人同士のアイコンタク

トや手振り等を交えたコミュニケーションを技術によって代用することなどである。

本特許出願動向調査の結果によれば、HMI においては日本の対車両外部の件数は他

の国・地域に比べて多い。しかし、米国は ISO/TC22/SC39/WG8 において自動運転車の

外向き HMI を提案する動きがあり、それに沿った重要な特許出願がなされる可能性が

ある。米国の提案によって標準必須特許を抑えられることのないよう、対車両外部の

HMI の研究開発にも注力すべきである。

3.システムへの過度な依存を防止する技術開発と啓発活動

SAEレベル 1相当の予防安全運転支援システムは普及の一途を辿っている。しかし、

予防安全運転支援システムを過信した結果、事故が発生する事例が見られる。こうし

た事態を防ぐため、人のシステムへの過度な依存を防止する技術を開発するとともに、

システムの適切な使い方を広く周知するための啓発活動を行うことが必要である。

現状でも SAE レベル 1、SAE レベル 2 相当の車両が既に市場に投入されている。将来

的には SAE レベル 3 の車両も必要な制度が整備されれば市場に投入されることが予測

されている。これらの車両では運転者が車両挙動に対して責任を持つ必要があり、運

転者がシステムの動作を正しく理解し、適正に運転操作を行うことができる状態を維

持しなければならない。

UN-ECE WP29 にて採択されたかじ取装置にかかる協定規則(R79)の改訂によれば、

運転者がステアリングホイールを握った状態であれば自動車線維持が認められる一方、

運転者の手放し運転を監視して警報を出すことや手動運転に切り替えるといった要件

が定められた。これを受けて、国土交通省は 2019 年 10 月以降の自動運転機能を備え

た新型車両を対象として、車線維持機能が動作している状態で運転者がステアリング

ホイールから 65 秒以上手を離すと手動運転に切り替わるような仕組みを導入するこ

とを発表している。このように、システムへの過度な依存を防止するための規制が検

討されており、そのために運転者の行動を監視することが行われている。また、今後、

ハンドルを放した状態での車線維持や運転者のウインカー操作を起点とする自動車線

変更について議論が行われる予定である。こうした背景から監視についての研究開発

に力を入れていくべきである。

さらに、システムの機能や性能の限界を正しく理解して過度に依存することがない

ようにするため、自動車関連産業が連携して基本的な技術内容の周知を図る啓発活動

を拡充し、個々の企業は顧客に対して自社製品について丁寧な説明を行う活動を従来

以上に充実させるべきである。

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

第3節 自動運転技術に係る国際基準・認証の議論先導、協調領域での研究開発

【提言3】

自動運転車の安全性確保やその評価に関して科学的知見を積み重ねるとともに技術的手

段を具現化し、基準、認証といった制度作りの議論を主導する役割を果たすべきである。

また、大胆な連携による協調領域での研究開発を推進すべきである。

《提言詳細》

1.科学的知見に基づいた基準の設定と認証技術の開発、議論の先導

自動運転車の実用化に向けて、安全性を確保するために具備すべき機能やそれらの

性能水準に関する基準を作り、それらの基準を満たしていることを検証するための評

価手法の確立が大きな課題となっている。そのためには、自動運転車の安全に関する

科学的知見を積み上げ、国際的な議論を主導して、こうした知見や技術を基準や認証

といった制度に組み込む作業に貢献するとともに、産業分野でも主要な役割を果たす

べきである。

我が国では道路運送車両法で自動車の安全確保及び環境保全上の技術基準が定めら

れている。これを道路運送車両の保安基準といい、公道を走行する車両はこの保安基

準を満たす必要がある。この基準に適合していることを確認するために、型式認証制

度が設けられている。世界の多くの国がこれに準じた制度を採用しているが、米国の

ように自己認証を行う国もある。

認証制度のある国で自動運転車が安全であることを公的機関が確認するためにどの

ような技術基準を設けて評価試験を行えばよいのかという議論や、公的機関が認証を

行う技術や制度を確立することは難しいため、自動車メーカーによる自己認証を組み

合わせる必要があるというような議論が見られる。いずれにしても、具体的にどのよ

うな安全確保のための要件や水準を設定するのかが課題となる。

本特許出願動向調査の結果によれば、システム設計においては安全性評価に関する

出願は非常に少ないが、2015 年から出願件数が急増している。2015 年頃より研究開発

が本格化しつつあることが窺える。また、安全性評価では米国の件数が最多であり、

日本はそれに次ぐ件数である。

本研究開発動向調査の結果によれば、システム設計においては、安全性評価は 2016

年に論文数が一気に増加し(図 1-39 参照)、特に米国とドイツの論文発表件数が多い。

さらに詳しく見ると、ドイツは安全性評価の論文が他国、他地域よりも多い。安全性

評価の研究はドイツが先行していると推測される。ただし、日本も日本語での論文発

表は行っており、研究は行われている。日本が他国に追いつき、さらに国際的な議論

を主導する立場となるためには、安全性評価の研究開発を推し進めるべきである。ま

た、ルール作りに積極的に貢献し、ビジネスにおいて主要な役割を獲得できるよう研

究成果の国際的な発信を積極的にすべきである。

2.大胆な連携による協調領域の技術開発

SIP 自動走行システムの研究開発では競争領域と協調領域を切り分けて、協調領域

については国のプロジェクトの中で研究開発が進められる。自動運転の実用化には、

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第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

技術分野横断で研究開発が必要であることに加えて、広範囲に渡り多様な可能性を検

証するために膨大なリソースを投入しなければならない。日本が諸外国に先駆けて自

動運転車を実現し市場で優位な立場を得るためにも、自動運転車の開発に携わる企業

が今までよりも強固な協力体制を構築して従来よりも踏み込んで協調した研究開発を

行うべきである。

日本の自動車メーカー、自動車部品メーカーはグローバルな事業活動を行っており、

基盤技術もグローバルに統一的に利用可能なものとして開発する必要があり、国際連

携も重要である。経済産業省と国土交通省の下で組織された自動走行ビジネス検討会

において、自動走行の実現に向けて競争領域と協調領域の切り分けが示されている。

また SIP 自動走行システムにおいても、競争領域と協調領域を切り分けて研究開発が

進められている。

協調領域の開発において、日本が世界を主導する立場を獲得している領域もある。

地図データに関する標準化を行う ISO/TC204/WG3、および走行制御に関する標準化を

行う ISO/TC204/WG14 において、日本はコンビーナを務めている。また、HMI の標準化

を行う ISO/TC22/SC39/WG8 に組織された自動運転 HMI タスクフォースにてタスクフォ

ースリーダーを務めている。

このように、日本は協調領域の開発において具体的な動きがあり、国際的な議論を

主導できる立場にもある。こうした環境の中で、自動運転車の開発に携わる企業は今

までよりも強固な協力体制を構築して従来よりも踏み込んで協調した研究開発を行う

べきである。

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第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

第4節 自動運転車導入に伴う新規ビジネスの技術的課題の解決

【提言4】

自動運転車を利用した新たな移動サービス事業を構想し、そのサービスを実現するため

の技術開発を行うべきである。

《提言詳細》

1.世界での移動サービスの展開状況の注視と技術開発

世界各国において、自動運転車を利用した移動サービス、物流サービスが広がって

いくと予測されている。移動サービスはその国、地域によって発展形態が異なるもの

と予測される。日本のみならず国際的にもビジネスを行うことが可能なサービスを提

供するため、世界での展開状況を注視しつつ、サービス提供に必要な技術開発を行う

べきである。

日本では 2020 年に限定地域での公共交通における自動運転を利用した移動サービ

スの実用化を目指している。また、世界各国において公共交通への自動運転車の導入

を目指した取り組みが進められている。フィンランドで生まれた統合的交通サービス

MaaS やウーバーによるオンデマンド配車サービス等、既に市場に導入されている移動

サービスに対しても今後自動運転が導入されるものと見られる。これらが実現すれば、

自動運転車関連の新たな市場が誕生することとなる。

ただし、このような移動サービスは各国毎の社会環境等によってその発展形態が異

なるものと予測される。日本企業がこの分野の市場に参入するためには、世界各国で

の運用形態に柔軟に適合可能な基盤的技術開発を行うことが必要である。そのため、

各地で新規参入が相次ぐ革新的移動サービスの動向を注視しつつ、戦略的に技術開発

を推し進めるべきである。

また、一般利用者に受け入れられるためには、既存の移動サービスの事業形態にと

らわれることなく、潜在的なニーズや利便性に対する欲求を的確に捉え、かつ、車両

などのリソースの利用効率を画期的に高めることが重要である。様々な分野において、

スマートフォン上で動作するアプリケーションで多くのサービスを受けられるように

なっているが、ナビゲーションや乗換案内など既存の輸送手段を前提にしたものに留

まっている。Drive Sweden というプロジェクトでは、自動運転を活用して都市構造や

ライフスタイルが大きく変わり、個人の時間や土地などの社会的リソースの高付加価

値利用が進展する姿を描いている。そのような社会の前提となる移動サービスやそれ

を支える基盤技術の研究開発が期待される。

技術区分(サービス)別-出願人国籍別出願件数(図 1-24 参照)を見ると、カーシ

ェアリング、公共交通では日本の件数がトップであるが、その内容は防犯や利用者認

証に関するものが多い。今後は一般消費者が交通システムを利用するためのアプリケ

ーションについても開発を進めるべきである。

2.物流サービス、移動サービスにおける自動運転車導入の技術的課題の解決

物流サービス、移動サービスにおける個々のサービス事業固有の課題を解決する技

術を開発するべきである。例えば、物流サービスでは積荷の特性に応じて破損や荷崩

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

れ等を防止するための走行制御、移動サービスでは多様な旅客の安全を第一に考えた

走行制御技術、乗員保護技術等がある。

物流サービスにも自動運転車を導入する国内の取組として、ヤマト運輸が自動運転

を活用した「ロボネコヤマト」の実験を行っている。米国では Peloton Technology

が 2017 年から高速道路において CACC(Cooperative Adaptive Cruise Control)を

活用した 2 台後続車両有人の隊列走行の商業運行を計画しており、ドイツではダイム

ラーが高速道路で長時間運転する運転者の負担を軽減する目的で Future truck 2025

構想を掲げている。

技術区分(サービス)別-出願人国籍別出願件数(図 1-24 参照)を見ると、物流は

米国からの出願が見られるが、日本、ドイツからの出願は見られない。物流に関して、

米国に遅れを取っている状況である。日本は今後、物流サービスで自動運転車を活用

する際に必要となる課題に特化して研究開発を行い、実用化で先鞭をつけることが必

要である。

また、移動サービスでも同様に自動運転車を活用する際の特有の課題に関して研究

開発を進めるべきである。例えば、旅客の安全が第一となるため、その安全確保のた

めの走行制御技術を開発すべきである。

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