2.6.2 薬理試験の概要文 2.6.3 薬理試験の概要表2.6.2.2.2...
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MK-954H
2.6.2 薬理試験の概要文
2.6.3 薬理試験の概要表
2.6.2 薬理試験の概要文 ................................................................................................... 1 2.6.3 薬理試験の概要表 ................................................................................................. 17
2.6.2 薬理試験の概要文
2.6.2.1 まとめ
効力を裏付ける試験として、ロサルタンと HCTZ の併用投与(以下、ロサルタン・HCTZ)に
よる試験を実施し、両剤の配合意義を検討した。ロサルタン・HCTZ の副次的薬理試験は実施し
なかったが、各単剤における一般薬理試験での成績及び反復経口投与毒性試験(トキシコキネテ
ィクス(以下、TK)評価を含む)より、両剤の併用により新たに懸念される薬理作用について
検討した。また、「安全性薬理試験ガイドライン」(平成 13年 6月 21日 医薬審発第 902号)に準
拠したロサルタン・HCTZ の安全性薬理試験は実施しなかったが、単回及び反復経口投与毒性試
験より、生命維持に関わる器官系に及ぼす影響について考察した。
効力を裏付ける試験
自然発症高血圧ラット(以下、SHR)において、ロサルタン投与により有意な降圧効果がみら
れた。HCTZ 投与では降圧効果がほとんどみられなかったが、ロサルタンと併用投与することに
より顕著な降圧効果を示した。その効果は、ロサルタン又は HCTZ の単剤投与と比較して有意で
あった。ロサルタンは高レニンモデルである腎性高血圧ラットにおいて顕著な降圧効果を示した
が、低レニンモデルであるデオキシコルチコステロンアセテート(以下、DOCA)-食塩高血圧
ラットにおいては降圧効果を示さなかった。ロサルタンの降圧効果は、正常 SHR 又は正常イヌ
と比較し、それぞれフロセミド処置の SHR 又はイヌにおいてより顕著であった。以上より、レ
ニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(以下、RAAS)の活性化状態において顕著な降圧
効果を示すロサルタンと RAAS を活性化させる HCTZ との配合意義の科学的合理性が示された。
副次的薬理試験
ロサルタン及びその主活性代謝物である E-3174(カルボン酸体)を用いた一般薬理試験におい
て、臨床上問題となる薬理作用は観察されなかった。HCTZ の一般薬理試験においても、臨床上
問題となる薬理作用は報告されていない。ロサルタンと HCTZ の併用投与による毒性試験におい
て、各成分の全身曝露量は十分に維持されていたが、新たな毒性作用の発現及び問題となる毒性
学的相互作用はみられなかった。以上より、ロサルタンと HCTZ との併用により新たに臨床上問
題となる薬理作用は発現しないものと考えた。
安全性薬理試験
中枢神経系、心循環系、呼吸器系に及ぼす影響を、ロサルタンと HCTZの併用投与による単回及
び反復経口投与毒性試験において検討した。ラット及びイヌを用いた単回投与毒性試験で一般症状
観察を行った。ラットではロサルタン 1000 mg/kg・HCTZ 250 mg/kg[以下、ロサルタン・HCTZ
(L1000 mg/kg・H250 mg/kg)]、イヌではロサルタン・HCTZ(L160 mg/kg・H40 mg/kg)まで中枢神
経系(活動性の亢進及び減少、常同行動、よろめき歩行、振せん、体姿勢異常、痙攣、鎮静、過敏
性、反応性鈍化、体温低下及び正向反射の消失等)及び呼吸器系(呼吸緩徐、頻呼吸、不整呼吸
及び呼吸困難等)に関連する異常は観察されなかった。イヌを用いた反復投与毒性試験において、
2.6.2 薬理試験の概要文 - 1 -
最高用量のロサルタン・HCTZ(L125 mg/kg・H31.25 mg/kg)によっても心拍数及び心電図異常はみ
られなかった。以上より、広い安全域が存在すると考えられた。
2.6.2.2 効力を裏付ける試験
2.6.2.2.1 SHRにおけるロサルタン・HCTZ(併用投与)、ロサルタン及びHCTZの降圧効果
[方法]ロサルタン、HCTZ及びロサルタン・HCTZの降圧効果を SHRを用いて評価した。雄性
SHR(21~23週齢)を用いて、tail-cuff法により覚醒下で血圧を測定した。ロサルタン(3
mg/kg)、HCTZ(10 mg/kg)及びロサルタン・HCTZ(L3 mg/kg・H10 mg/kg)は 1日 1回、7日
間経口投与した。溶媒として 0.5%メチルセルロース水溶液を使用した。血圧は Day 1(投与開
始日)、Day 3及び Day 7の投与前と投与後 5、24時間に測定した。
[成績] SHR において、ロサルタン(3 mg/kg)により血圧は有意に低下したが、HCTZ (10
mg/kg)では血圧はほとんど低下しなかった。ロサルタン・HCTZ(L3 mg/kg・H10 mg/kg)によ
り顕著な血圧低下を示し、その効果は各単剤投与群における降圧効果と比較して有意であっ
た(図2.6.2.2.1-1)。また、Day 1初回投与後から Day 7投与 24時間後までの全測定ポイン
トにおける血圧の平均値は、溶媒(0.5%メチルセルロース)群(179±2 mmHg)、ロサルタン
群(166±2 mmHg; p<0.05 vs. 溶媒群、HCTZ群)、HCTZ群(178±2 mmHg)及びロサルタン・
HCTZ群(150±2 mmHg; p<0.05 vs. 溶媒群、ロサルタン群、HCTZ群)であった。なお、心拍
数は各群間で有意な差はなかった[4.2.1.1]。
130
140
150
160
170
180
190
200Day 1 Day 3 Day 7
0 12 24 0 12 24 0 12 24
* * *
* **
* *
** *
†
† †‡
‡ ‡
‡‡
‡‡
‡‡収
縮期
血圧
(mmHg)
(時間)
溶媒
ロサルタン(3 mg/kg)
HCTZ(10 mg/kg)
ロサルタン+HCTZ(3+10 mg/kg)
図 2.6.2.2.1-1 覚醒 SHR におけるロサルタン、HCTZ 及びロサルタン・HCTZ(併用投与)の
経口投与による降圧効果
(分散分析、Tukey test、平均±標準誤差、*p<0.05 vs. 溶媒群、†p<0.05 vs. ロサ
ルタン単独群、‡p<0.05 vs. HCTZ 単独群、 n=8)
2.6.2 薬理試験の概要文 - 2 -
2.6.2.2.2 腎性高血圧ラットにおけるロサルタンの降圧効果
[方法]ロサルタンの降圧効果を高レニン高血圧ラットを用いて評価した。雄性 SD系ラット(体
重 300~350 g)をヘキソバルビタールで麻酔し、左腎動脈を完全に結紮した。6日後、動物を
ヘキソバルビタールで麻酔し、頸静脈(薬物注入用)及び頸動脈(血圧モニター用)にカテー
テルを挿入し、動物が麻酔から完全に回復した後(手術後少なくとも 2~2.5時間)覚醒下で試
験を行った。
a) ロサルタン(0.1~10 mg/kg)を 15分間隔で累積的に静脈内投与し、終了後カプトプリル(3
mg/kg)を静脈内投与した。
b) 生理食塩水(1 mL/kg)又はプロプラノロール(1 mg/kg)を静脈内投与し、その 30分後にロ
サルタン(3 mg/kg)を静脈内投与した。
[成績]血漿レニン活性(以下、PRA)は偽手術群で 5.4±0.6 ng AI/mL/hr、腎動脈結紮群では 26.8
±5.5 ng AI/mL/hrであった。
a) ロサルタンの累積静脈内投与により、平均血圧は用量依存的に低下し、最高用量の 10 mg/kg
静脈内投与で正常血圧レベルまで低下した。その後カプトプリル(3 mg/kg)を静脈内投与し
ても、血圧はそれ以上低下しなかった(図2.6.2.2.2-1)。
b) 生理食塩水(1 mL/kg)の前投与によりロサルタンの降圧効果に変化はなかった。一方、プ
ロプラノロール(1 mg/kg)の前投与によりロサルタンの降圧効果は低下した。生理食塩水群
ではロサルタン 3 mg/kgの静脈内投与により投与前値からの最大血圧低下は 83±6 mmHgで
あったが、プロプラノロール群におけるロサルタン 3 mg/kg静脈内投与による最大血圧低下
は 43±7 mmHgであった(図2.6.2.2.2-2)[4.2.1.2]。
0.1 0.3 1 3 10mg/kg,iv
*
*
*
3mg/kg,iv
ロサルタン カプトプリル
-30 0 30 60 90 120 150 180 210
60
80
100
120
140
160
180
(分)
平均
血圧
(mmHg)
図 2.6.2.2.2-1 一側腎動脈結紮高血圧ラットにおけるロサルタンの累積静脈内投与による降圧
効果
(Student t-test、平均±標準誤差、*p<0.05, n=5)
2.6.2 薬理試験の概要文 - 3 -
生理食塩水
ロサルタン ロサルタン
プロプラノロール
-30 -15 0 15 30 45 60 75 90
60
80
100
120
140
160
180
200
(分)
平均
血圧
(mmHg)
-30 -15 0 15 30 45 60 75 90
60
80
100
120
140
160
180
200
(分)
平均血
圧(mmHg)
図 2.6.2.2.2-2 一側腎動脈結紮高血圧ラットにおけるロサルタン 3 mg/kg 静脈内投与による
降圧効果に及ぼすプロプラノロールの影響
左図:生理食塩水(1 mL/kg, i.v.; n=6)処置
右図:プロプラノロール(1 mg/kg, i.v.; n=5)処置 (平均±標準誤差)
2.6.2.2.3 DOCA-食塩高血圧ラットにおけるロサルタンの降圧効果
[方法]ロサルタンの降圧効果を低レニン高血圧ラットを用いて評価した。雄性 SD系ラット(体
重 100~125 g)をペントバルビタールで麻酔し、皮下に DOCA ペレットを埋め込んだ。餌は
標準食を与え、飲料水は 0.1%食塩水溶液を 7~8週間与え、高血圧を発症させた。実験当日、
ヘキソバルビタールで麻酔し、右頸静脈(薬物注入用)及び頸動脈(血圧モニター用)にカテ
ーテルを挿入し、動物が麻酔から完全に回復したのち(手術後 2.5時間以上)覚醒下で試験を
行った。薬物はロサルタン(10 mg/kg)、次いでヒドララジン(0.3 mg/kg)を静脈内投与した。
[成績]DOCAを埋め込んで 7~8週間の高血圧ラットにおける PRAは 0.47±0.44 ng AI/mL/hrであ
った。
ロサルタン(10 mg/kg)の静脈内投与により、DOCA-食塩高血圧ラットの平均血圧は変化し
なかった。血管拡張剤のヒドララジンは降圧効果を示した(図2.6.2.2.3-1)[4.2.1.3]。
2.6.2 薬理試験の概要文 - 4 -
ロサルタン10mg/kg,iv
ヒドララジン0.3mg/kg,iv
-15 0 15 30 45 60 75 90 105 120 135
80
100
120
140
160
180
(分)
平均血
圧(
mmHg)
図 2.6.2.2.3-1 DOCA-食塩高血圧ラットの血圧に及ぼすロサルタン 10 mg/kg 静脈内投与の影響
(平均±標準誤差、n=12)
2.6.2.2.4 フロセミド処置SHRにおけるロサルタンの降圧効果
[方法]ロサルタンの降圧効果を利尿薬であるフロセミドで処置した SHR を用いて評価した。雄
性 SHR(18~21週齢)をヘキソバルビタールで麻酔し、頸静脈(薬物注入用)及び頸動脈
(血圧モニター用)にカテーテルを挿入し、動物が麻酔から完全に回復したのち(手術後 2.5
時間以上)覚醒下で実験を行った。フロセミド(10 mg/kg)は、ロサルタン(3 mg/kg)静脈内
投与の 22及び 4時間前に皮下投与し、フロセミドの初回投与後、絶水させた。
[成績]投与前の血圧値は対照 SHR群とフロセミド処置 SHR群の間で有意差はなかった。
ロサルタン(3 mg/kg)静脈内投与により対照 SHRでは約 20 mmHg、血圧が低下したが、
フロセミド処置 SHR群の平均血圧は、投与後 75~120分で投与前値より約 50 mmHg、血圧が
低下した(図2.6.2.2.4-1)[4.2.1.4]。
-30 -15 0 15 30 45 60 75 90 105 120
100110120130140150160170180
対照群
フロセミド処置群
(分)
平均血圧(mmHg)
* **
*ロサルタン3mg/kg,iv
図 2.6.2.2.4-1 フロセミド処置覚醒 SHR におけるロサルタン 3 mg/kg 静脈内投与の降圧効
果
(Student t-test、平均±標準誤差、*p<0.05 vs 対照 SHR 群)
対照 SHR 群:n=11、フロセミド処置 SHR 群:n=9
2.6.2 薬理試験の概要文 - 5 -
2.6.2.2.5 フロセミド処置イヌにおけるロサルタン及びE-3174の降圧効果
[方法]ロサルタンの降圧効果をフロセミド処置したイヌを用いて評価した。雌雄の雑種イヌ(8
~13 kg)をチオペンタールナトリウム及びハロタンで麻酔し、右大腿動脈(血圧モニター用)
及び静脈(薬物注入用)にカテーテルを挿入し、手術後 2日以上経過してから覚醒下で実験に
用いた。フロセミド処置イヌはフロセミド(10 mg/kg)を実験の 18及び 2時間前に筋肉内投与
し、フロセミド初回投与以後絶食・絶水することにより作成した。
a) 対照イヌ及びフロセミド処置イヌに、ロサルタン 0.3~3 mg/kgを累積的に静脈内投与し、次
いでカプトプリル(0.3 mg/kg)を静脈内投与した。
b) フロセミド処置イヌに、ロサルタン(1、3 mg/kg)又は E-3174(0.1、0.3、1 mg/kg)を静脈
内投与し、平均血圧及び心拍数に及ぼす影響を投与後 180分まで観察した。別の群に、ロサ
ルタン(10、30 mg/kg)又は E-3174(3、10 mg/kg)を経口投与し、8時間観察した。
[成績] PRAは対照イヌ群で 1.5±0.5 ng AI/mL/hr、フロセミド処置イヌ群で 19.9±7.2 ng AI/mL/hr
であった。
a) 対照イヌでは、ロサルタン 0.3~3 mg/kgの累積静脈内投与により血圧は低下はしなかった。
フロセミド処置イヌでは、同用量範囲内のロサルタンの累積静脈内投与により、用量依存的
に血圧が低下した。フロセミド処置による同様の降圧効果の増強は、カプトプリル 0.3 mg/kg
の静脈内投与でも観察された(図2.6.2.2.5-1)。
b) フロセミド処置イヌにおいて、ロサルタン(1、3 mg/kg、静脈内;10、30 mg/kg、経口)投
与により血圧が低下した。E-3174(0.1~1 mg/kg、静脈内;3、10 mg/kg、経口)投与によっ
ても、同様の持続的な降圧効果が示された(図2.6.2.2.5-2)。ロサルタン及び E-3174は心
拍数に影響しなかった[4.2.1.5及び 4.2.1.6]。
0 20 40 60 80 100 120 140 160 180
40
60
80
100
120
140
対照群
フロセミド処置群
(分)
投与前
値に対
する
変化
率(%) ロサルタン, mg/kg cum iv
0.3 1.0 3.0 カプトプリル, 0.3mg/kg,iv
図 2.6.2.2.5-1 フロセミド処置覚醒イヌの血圧に及ぼすロサルタン累積静脈内投与の影響
(平均±標準誤差) 対照イヌ群:n=4、フロセミド処置イヌ群:n=3
2.6.2 薬理試験の概要文 - 6 -
投与
前値に
対する
変化率
(%)
投与
前値に
対する
変化率
(%)
投与
前値に
対する
変化率
(%)
投与
前値に
対する
変化率
(%)
図 2.6.2.2.5-2 フロセミド処置覚醒イヌにおけるロサルタン及び E-3174(カルボン酸体)の降
圧効果
(分散分析、Duncan の多範囲検定、オーバーオール比較、平均±標準誤差、
*p<0.05 vs 溶媒)
2.6.2.2.6 フロセミド処置イヌにおけるロサルタンの血行動態に及ぼす影響
[方法]ロサルタンの血行動態に及ぼす影響をフロセミド処置した麻酔イヌを用いて評価した。雌
雄の雑種イヌ(9~13 kg)にフロセミド(10 mg/kg)をロサルタン投与の 18及び 2時間前に筋
肉内投与し、フロセミド初回投与以後絶食・絶水した。実験当日にペントバルビタールで麻酔
後、人工呼吸を施し、平均血圧、左心室 dP/dt max、心拍数、心拍出量、冠動脈、腎動脈及び腸
骨動脈血流量測定のための手術を施した。手術後 45分に、ロサルタン(1、3 mg/kg)を 5分間、
静脈内に持続注入し、血行動態パラメータを 1時間測定した。
[成績]ロサルタン(3 mg/kg)静脈内投与は、平均血圧及び総末梢血管抵抗を顕著に低下させたが、
心拍数、心拍出量(図2.6.2.2.6-1)、左心室 dP/dt max、冠動脈、腎動脈及び腸骨動脈血流量
にはほとんど影響しなかった[4.2.1.5]。
2.6.2 薬理試験の概要文 - 7 -
0 10 20 30 40 50 60
60
80
100
120
140
160
(分)
投与前値に対する変化率(
%)
平均血圧
心拍数
心拍出量
総末梢血管抵抗
ロサルタン(3 mg/kg,iv)
* * * ** * *
* ** * * * *
図 2.6.2.2.6-1 フロセミド処置麻酔イヌにおける平均血圧、心拍数、心拍出量及び総末梢血管
抵抗に及ぼすロサルタンの影響
(分散分析、Duncan の多範囲検定、平均±標準誤差、*p<0.05 vs 対照群、n=6)
2.6.2.2.1項の試験結果より、ロサルタンの降圧効果は、HCTZの併用投与により増強されるこ
とが明らかになった。2.6.2.2.2及び 2.6.2.2.3項の試験結果からは、ロサルタンの降圧効果は、
対象とするモデル動物における血圧維持に寄与する RAAS の割合に依存していることが示唆された。
また、2.6.2.2.4及び 2.6.2.2.5項の試験においては、利尿薬であるフロセミドを処置した動物に
おいてロサルタンの降圧効果が検討され、ロサルタンの降圧効果は RAAS 活性化の程度と関連し
ていた。また、2.6.2.2.6項の試験結果より、心拍数及び心拍出量にほとんど影響なく総末梢血管
抵抗の低下に伴い血圧が低下したことから、ロサルタンは AIIによる末梢血管収縮作用に拮抗する
ことにより降圧効果を発現することが示唆された。
2.6.2 薬理試験の概要文 - 8 -
2.6.2.3 副次的薬理試験
2.6.2.3.1 ロサルタン及びその代謝物の一般薬理作用
ロサルタン及び E-3174 を用いて、一般薬理試験を実施した。その結果、臨床上特に問題にな
ると予想される変化はみられなかった(表 2.6.2.3.1-1)[4.5.1]。
表2.6.2.3.1-1 ロサルタン及びE-3174の一般薬理試験成績(その1)
投与量:mg/kg
(適用経路)
試験項目
動物種
(動物数/群)
ロサルタン E-3174
試験成績
雄マウス
(n=5)
13,25,50,100
(経口) 100mg/kg で眼瞼下垂
(2/15)及び軽度の散瞳。
雄マウス
(n=8)
10,30,100
(経口) 影響なし。
一
般
症
状
及
び
行
動
一般症状及び行動に及ぼす影響
(Irwin 法)
雄ラット
(n=5)
13,25,50,100
(経口) 影響なし。
自発運動量に及ぼす影響
(Animex 自発運動量測定装置)
雄ラット
(n=8)
10,30,100
(経口) 影響なし。
睡眠時間に及ぼす影響
(バルビツール酸ナトリウム誘発)
雄マウス
(n=8)
10,30,100
(経口) 影響なし。
痙攣/抗痙攣作用
(痙攣誘発/ストリキニーネ,ペンテトラ
ゾール及び電撃刺激)
雄マウス
(n=8)
10,30,100
(経口) 影響なし。
鎮痛作用
(酢酸 Writhing 法)
雄マウス
(n=7-8)
10,30,100
(経口) 影響なし。
体温に及ぼす影響 雄マウス
(n=10)
13,25,50,100
(経口) 影響なし。
自発脳波に及ぼす影響 雄ラット
(n=6)
1,3,10,25,50, 100
(皮下)
3,10mg/kg でα波の振幅
を増大、3mg/kg 以上でθ
波の振幅を減少。
学習能力に及ぼす影響
(遅延反応)
雄マウス
(n=7)
0.6,3
(経口) 影響なし。
雄ラット
(n=10)
10,30
(皮下) 10,30mg/kg でスコポラミン
の学習障害を改善。
(条件回避,電撃刺激)
雄ラット
(n=4-8)
1,3,10
(皮下) 3mg/kg でスコポラミンの学
習障害を改善。
(レバープレス法) 雄ラット
(n=12-24)
0.3,1,3,10,30
(経口) 1mg/kg 以上で有意に向
上
中
枢
神
経
系
食欲に及ぼす影響 雄マウス
(n=5)
0.6,3
(経口,皮下) 影響なし。
自律神経系
及び平滑筋
摘出回腸に及ぼす影響
(自発収縮並びにアセチルコリン,ヒス
タミン,セロトニン及びバリウム収縮:
Magnus 法)
雄モルモット
(n=3)
10-6,10-5,10-4 M
(in vitro)
10-6,10-5,10-4 M
(in vitro)
影響なし。
麻酔
雌雄イヌ
(n=3)
30
(十二指腸内)
1,3,10
(静脈内) 影響なし。
麻酔
雌雄イヌ
(n=3)
10
(静脈内)
10
(静脈内) ロサルタン、E-3174 とも血
圧及び心拍数を低下。
呼
吸
・
循
環
器
系
心循環機能に及ぼす影響
(血圧、血流量、心拍数及び心電図)
雄ラット
(n=6)
10
(経口) 影響なし。
2.6.2 薬理試験の概要文 - 9 -
表2.6.2.3.1-1 ロサルタン及びE-3174の一般薬理試験成績(その2)
投与量:mg/kg
(適用経路)
試験項目
動物種
(動物数/群)
ロサルタン E-3174
試験成績
雄ラット
(n=5)
1→3→10→30→100(静脈内)
影響なし。
雄ラット
(n=8)
10: 7 日間連投
(静脈内)
平均動脈圧低下。
雄ラット
(n=4-5)
0.3,1,3,10
(経口) 影響なし。
心循環機能に及ぼす影響
(血圧、血流量、心拍数及び心電図)
雄ラット
(n=5)
0.1,0.3,1
(静脈内) 影響なし。
呼
吸
・
循
環
器
系 呼吸器機能に及ぼす影響
(呼吸数、最大呼気量、一回換気量、
コンプライアンス、肺内圧、気道抵抗)
麻酔
雌雄イヌ
(n=3)
10
(静脈内)
10
(静脈内) ロサルタンで呼吸数増加。
雌マウス
(n=10)
10
(皮下) 影響なし。 腸管内輸送能に及ぼす影響
雄マウス
(n=10)
10,30,100
(経口) 影響なし。
雌イヌ
(n=3)
10
(胃内) 影響なし。
雄ラット
(n=14-15)
3,30
(経口) 30mg/kg で胃液,酸分泌を抑
制。
消
化
器
系
胃液分泌に及ぼす影響
雄ラット
(n=10)
10,30,100
(経口) 影響なし。
雌イヌ
(n=3)
3
(経口) 血漿レニン活性,尿流量,Na+
排泄量増加,K+排泄量,腎血
漿流量は僅かに上昇。
水
及
び
電
解
質
代
謝
腎機能、電解質代謝に及ぼす影響
雄ラット
(n=7)
10,30,100
(経口)
10,30,100
(経口) ロサルタン,E-3174 とも尿量,
尿中 Na+,Cl-及び K+排泄
量並びにクレアチニンクリア
ランスに影響なし。
抗炎症作用
(カラゲニン誘発)
雄ラット
(n=10)
2
(腹腔内) 影響なし。
麻酔雄ラット
血液
0.1,0.25,0.5,1mM
1mM でアラキドン酸凝集を
阻害。ADP 凝集に影響な
し。
雄ラット血液 0.25,0.5,1mM
1mM でアラキドン酸凝集を
阻害。ADP 凝集に影響な
し。
血小板凝集に対する作用
(アラキドン酸及び ADP 凝集)
雄ラット血液
(ex vivo)
10,100
(経口) 100mg/kg でアラキドン酸凝
集を阻害。ADP 凝集に影響
なし。
飲水量に及ぼす影響 雄ラット
(n=10)
30
(経口) 影響なし。
そ
の
他
抗真菌活性 C.albicans, A.fumigatus
∼100μg/mL 影響なし。
2.6.2.3.2 HCTZの一般薬理作用
HCTZ の一般薬理試験では、300 又は 1000 mg/kg 等の高用量の経口投与、さらに摘出臓器を用
いた試験においては 30 µM という高濃度においても臨床上問題になると予想される変化がないこ
とが報告されている[4.5.13~4.5.16]。
第Ⅰ相反復投与試験(No.111)[5.3.3.2.1]において MK-954H(L50/H 12.5 mg)を投与した際
2.6.2 薬理試験の概要文 - 10 -
の HCTZの Cmaxは約 0. 4 µM(Cmax約 130 ng/mL:分子量 297.74)であったことから、HCTZ の一
般薬理試験で用いられた用量・濃度は、臨床における用量・濃度に比べ十分高いものであることが
確認された。
2.6.2.3.3 ロサルタンとHCTZの併用投与によるTK評価
ラット及びイヌにおける反復経口投与毒性試験において、TK評価を実施した。併用投与におい
ても、ロサルタン、E-3174及び HCTZの全身曝露量は、各単剤投与時と比較して十分維持されてい
たが(反復投与毒性試験におけるロサルタン、E-3174及び HCTZのラット及びイヌへの全身曝露量
は、推定臨床用量 MK-954H(L50/H12.5 mg)における日本人へのそれ[5.3.3.2.1]と比較すると、
それぞれラット;184倍、77倍及び 27倍、イヌ;139倍、0.96倍及び 38倍)(表 2.6.2.3.3-1~
2)、新たな毒性所見及び問題となる毒性学的相互作用はみられなかった[4.4.2.1及び
4.4.2.2]。
表 2.6.2.3.3-1 ラットの 27週間経口投与毒性試験におけるTK評価
動物種・系統・週齢 ラット・Crl:CD(SD)BR・約6週齢 投与経路 強制経口投与・投与回数(♂; 182回:♀; 183回)
ロサルタン HCTZ ロサルタン・HCTZ 投与量 (mg/kg/day) 対照 135 33.75 L15・H3.75 L45・H11.25 L135・H33.75
動物数 ♂20 ♀20 ♂20 ♀20 ♂20 ♀20 ♂20 ♀20 ♂20 ♀20 ♂20 ♀20 ロサルタン AUC0-24hr(μg・hr/mL)
67.05 - 8.05 19.22 113.6
Cmax (μg/mL) 37.31 - 1.98 10.48 53.68 E-3174 AUC0-24hr(μg・hr/mL)
263.38 - 25.79 77.10 268.25
Cmax (μg/mL) 37.50 - 2.67 19.10 53.91 HCTZ AUC0-24hr(μg・hr/mL)
- 11.64 1.04 6.29 24.23
TK 試験
Cmax (μg/mL) - 1.88 0.39 1.12 2.86
表 2.6.2.3.3-2 イヌの 27 週間経口投与毒性試験における TK 評価
動物種・系統・週齢 イヌ・ビーグル・41~50週齢
投与経路 強制経口投与・投与回数(♂; 182回:♀; 183回)
ロサルタン HCTZ ロサルタン・HCTZ 投与量 (mg/kg/day) 対照
125 31.25 L5・H1.25 L25・H6.25 L125・H31.25
動物数 ♂4 ♀4 ♂4 ♀4 ♂4 ♀4 ♂4 ♀4 ♂4 ♀4 ♂4 ♀4 ロサルタン AUC0-24hr
(μg・hr/mL) 82.36 - 0.82 5.73 85.67
Cmax (μg/mL) 35.59 - 0.79 3.09 36.01 E-3174 AUC0-24hr
(μg・hr/mL) 3.42 - 0.03 0.06 3.36
Cmax (μg/mL) 1.58 - 0.02 0.05 1.52 HCTZ AUC0-24hr
(μg・hr/mL) - 19.34 1.39 9.31 33.87
TK 試験
Cmax (μg/mL) - 5.42 0.86 2.62 8.9
2.6.2 薬理試験の概要文 - 11 -
2.6.2.3.1~2.6.2.3.2項の結果から、ロサルタン及びHCTZ各単剤を用いた一般薬理試験におい
て臨床上問題になると予想される薬理学的作用がみられないこと、また、2.6.2.3.3項の結果から、
ラット及びイヌにおける毒性試験において本配合剤の十分な曝露量が維持されている場合において
も、新たな毒性作用の発現及び問題となる毒性学的相互作用はみられなかったことから、両剤の併
用投与により新たに問題となる薬理作用あるいは臨床上問題になると考えられる変化は発現しない
ことが予測された。
2.6.2.4 安全性薬理試験
2.6.2.4.1 中枢神経系に及ぼす影響
ラット及びイヌを用いた単回及び反復経口投与毒性試験において、一般症状を観察した。単回
経口投与試験 においては、ラットではロサルタン・HCTZ(L1000 mg/kg・H250 mg/kg)、イヌでは
ロサルタン・HCTZ(L160 mg/kg・H40 mg/kg)まで、また、27 週間反復経口投与試験においては、
ラットではロサルタン・HCTZ(L135 mg/kg/day・H33.75 mg/kg/day)、イヌではロサルタン・HCTZ
(L125 mg/kg/day・H31.25 mg/kg/day)まで、中枢神経系(活動性の亢進及び減少、常同行動、よろ
めき歩行、振せん、体姿勢異常、痙攣、鎮静、過敏性、反応性鈍化、体温低下及び正向反射の消
失等)の異常は観察されなかった(表2.6.2.4.1-1)[4.4.1.1及び 4.4.1.2、4.4.2.1及び
4.4.2.2]。
2.6.2 薬理試験の概要文 - 12 -
表2.6.2.4.1-1 ロサルタン・HCTZのラット及びイヌを用いた毒性試験における一般症状
ラット及びイヌにおける単回経口投与毒性試験成績
成績 動物種・系統 投与経路
投与量 ロサルタン・HCTZ
(mg/kg) 性 死亡数/動物数
毒性所見(一般症状)
L500・H125 ♂ 0/5 ♀ 0/5 - ラット・Crj:CD(SD)IGS
L1000・H250 ♂/♀
♂ 0/5 ♀ 0/5 肛門周囲の汚れ
イヌ・ビーグ
ル
経口
L160・H40 ♂/♀ ♂ 0/1 ♀ 0/1 嘔吐、水様便
- :特記すべき所見なし
ラットにおける27週間経口投与毒性試験成績
動物種・系統・週齢 ラット・Crl:CD(SD)BR・約6週齢 投与経路 強制経口投与・投与回数(♂ 182回:♀ 183回)
ロサルタン HCTZ ロサルタン・HCTZ 投与量(mg/kg/day) 対照 135 33.75 L15・H3.75 L45・H11.25 L135・H33.75
動物数 ♂20 ♀20 ♂20 ♀20 ♂20 ♀20 ♂20 ♀20 ♂20 ♀20 ♂20 ♀20 死亡数 ♀11) 0 0 0 0 ♂22) ♀11)
一般症状 - - - - - -
-:特記すべき所見なし 1)麻酔事故による死亡 2)投与過誤による死亡
イヌにおける 27 週間経口投与毒性試験成績
動物種・系統・週齢 イヌ・ビーグル・41~50週齢
投与経路 強制経口投与・投与回数(♂ 182回:♀ 183回)
ロサルタン HCTZ ロサルタン・HCTZ 投与量(mg/kg/day) 対照
125 31.25 L5・H1.25 L25・H6.25 L125・H31.25
動物数 ♂4 ♀4 ♂4 ♀4 ♂4 ♀4 ♂4 ♀4 ♂4 ♀4 ♂4 ♀4
死亡数 0 0 0 0 0 0
一般症状 - 軟便、嘔
吐、流涎 軟便 軟便、嘔
吐、流涎 軟便、嘔
吐、流涎 軟便、嘔
吐、流涎
-:特記すべき所見なし
一般症状観察では、以下の項目を含むすべての症状の、正常からの逸脱を記録している。
活動亢進、活動減少、鎮静、過敏、反応性鈍化、運動失調、痙攣、強直性痙攣、間代性痙攣、振せん、正向反
射の消失、常同行動、よろめき歩行、ひきずり歩行、腹臥位、側臥位、仰臥位、呼吸緩徐、頻呼吸、不整呼吸、
呼吸困難(努力呼吸)、立毛、耳の蒼白、チアノーゼ、体温低下、衰弱、眼瞼下垂、流涙、流涎、鼻汁、軟便、
肛門周囲の汚れ、下痢、粘液便、水様便、口腔粘膜の蒼白、嘔吐、頻尿/多尿、乏尿/尿閉、腹部膨満、死亡等
2.6.2 薬理試験の概要文 - 13 -
2.6.2.4.2 心循環系に及ぼす影響
イヌを用いた 27週間反復経口投与毒性試験において、心電図検査を実施した。最高用量である
ロサルタン・HCTZ(L125 mg/kg・H31.25 mg/kg)においても、心拍数、P-R間隔、QRS間隔、Q-T
間隔に有意な変化はみられなかった(表2.6.2.4.2-1)[4.4.2.2]。
表2.6.2.4.2-1 反復経口投与毒性試験におけるロサルタン・HCTZ(L125 mg/kg・
H31.25 mg/kg)投与の覚醒イヌ心電図に及ぼす影響
投与開始前 投与 12週目 投与 24週目 心拍数(beats/min) 114±12 108±9 127±8 P-R間隔 (msec) 99±2 93±6 99±2 QRS間隔 (msec) 48±3 44±3 49±4 Q-T間隔 (msec) 188±6 185±6 184±5
平均±標準誤差、n=8(♂: n=4, ♀: n=4)
2.6.2.4.3 呼吸器系に及ぼす影響
ラット及びイヌを用いた単回及び 27週間反復経口投与毒性試験において、一般症状として呼吸
の状態を観察した。単回経口投与毒性試験において、ラットではロサルタン・HCTZ(L1000
mg/kg・H250 mg/kg)、イヌではロサルタン・HCTZ(L160 mg/kg・H40 mg/kg)まで、また、27週間
反復経口投与試験においては、ラットではロサルタン・HCTZ(L135 mg/kg/day・H33.75 mg/kg/day)、
イヌではロサルタン・HCTZ(L125 mg/kg/day・H31.25 mg/kg/day)まで、呼吸緩徐、頻呼吸、不整
呼吸及び呼吸困難等の呼吸の異常はなかった(表2.6.2.4.1-1)[4.4.1.1及び 4.4.1.2、4.4.2.1
及び 4.4.2.2]。
中枢神経系、心循環系及び呼吸器系に及ぼす影響に関しては、ロサルタンとHCTZとの併用投与
による単回及び反復経口投与毒性試験結果に基づいて、薬理学的検討を行った。当該毒性試験に使
用された用量におけるロサルタン、E-3174及びHCTZの全身曝露量は、本剤の推定臨床用量である
MK-954H(L50/H12.5 mg)における日本人でのそれ[5.3.3.2.1]を十分上回る量であったが(反
復投与毒性試験におけるロサルタン、E-3174及びHCTZのラット及びイヌへの全身曝露量は、それ
ぞれラット;184倍、77倍及び27倍、イヌ;139倍、0.96倍及び38倍。単回経口投与毒性試験で用い
た用量はさらにそれ以上)(2.6.6.3項)、中枢神経系、心循環系及び呼吸器系に対して特に臨床
上問題となる作用を示さなかった。したがって、両剤の併用投与により生命維持に関わる器官系
に対して臨床上問題になると考えられる変化は発現しないことが予測された。
2.6.2.5 薬力学的薬物相互作用試験
該当資料なし
2.6.2 薬理試験の概要文 - 14 -
2.6.2.6 考察及び結論
効力を裏付ける試験 :
ロサルタンと HCTZ の併用投与により、明らかに降圧効果が増大した。高レニン性高血圧モデル
である一側腎動脈結紮高血圧ラットにおいて、ロサルタンは用量依存的に顕著な降圧効果を示し、
10 mg/kg の静脈内投与により血圧は正常まで低下した。低レニンモデルである DOCA-食塩高血圧
ラットにおいては、10 mg/kg の静脈内投与により血圧が低下しなかったことから、ロサルタンの降
圧効果は、対象とするモデル動物における血圧維持に関与する RAAS 活性化の程度に依存している
と考えられた。また、薬理学的手法を用いて RAAS 活性化をコントロールした場合のロサルタンの
効果について検討した。利尿薬であるフロセミドの処置により RAAS を活性化させた状態において、
ロサルタンの降圧効果は増大したが、β受容体遮断作用を介したレニン遊離抑制作用により RAAS
活性化を抑制するプロプラノロールの処置により、ロサルタンの降圧効果は低下した。これらの結
果からもロサルタンの降圧効果に RAAS の活性化状態が密接に関わっていることが示された。
HCTZ はフロセミドと同様に利尿作用に起因する RAAS 活性化作用を有することがよく知られてい
る。したがって、RAAS を活性化する HCTZ と RAAS 活性化状態において顕著な降圧効果を示すロ
サルタンの併用投与により、優れた降圧効果がみられたものと考えられた。以上の結果から、ロサ
ルタンと HCTZの配合は科学的に合理性があると考えられた。
副次的薬理試験 :
ロサルタン及び HCTZ各単剤を用いた一般薬理試験において臨床上問題になると考えられる薬理
学的作用がみられていないこと、毒性試験において両剤併用投与後、各単剤投与時と比較し十分な
曝露量が維持されている状態においても新たな毒性作用の発現及び問題となる毒性学的相互作用は
みられなかったことから、本配合剤により臨床上問題になると予測される新たな薬理作用の発現は
ないものと考えられた。
安全性薬理試験 :
ロサルタンと HCTZとの併用投与による単回及び反復経口投与毒性試験において、両剤の併用投
与により問題となる薬理作用がみられなかったこと、また、当該毒性試験で用いた用量におけるロ
サルタン、E-3174及び HCTZの全身曝露量は、本剤の推定臨床用量である MK-954H(L50/H12.5
mg)の曝露量を十分上回る量であったことから、本配合剤は生命維持に関わる器官系(中枢神経
系、心循環系及び呼吸器系)に対して広い安全域を有し、臨床上問題となる作用を示さないもの
と考えられた。
2.6.2.7 図表
本文中に記載した。
2.6.2.8 参考文献
4.5.1 ニューロタン錠 25、50(ロサルタンカリウム)資料概要
2.6.2 薬理試験の概要文 - 15 -
4.5.13 高井 明、平井 嗣郎、平岩 徹、児玉 卓也、阿部 典生.新降圧利尿薬 6-
Chloro-3-carbomethoxy-3,4-dihydro-2-methyl-2H-1,2,4-benzothiadiazine-7-sulfonamide-
1,1-dioxide (DU-5747)の薬理学的研究(第 3 報)一般薬理作用. 応用薬理
1973;7(2):231-44.
4.5.14 白波瀬 弘明、森下 重義、斉藤 直樹、加藤 栄一、大隅 清明、北尾 和彦
他.Indapamide の一般薬理作用(第1報)-中枢神経系に及ぼす影響-. 基礎と臨
床 1982;16(3):144-52.
4.5.15 加藤 栄一、森下 重義、斉藤 直樹、臼井 八郎、白波瀬 弘明、神田 守 他.
Indapamide の一般薬理作用(第 2 報)-呼吸器および循環器系におよぼす影響-.
基礎と臨床 1982;16(5):273-83.
4.5.16 臼井 八郎、神田 守、西村 憲一、大隅 清明、北尾 和彦、赤 隆.
Indapamide の一般薬理作用(第 3 報)-平滑筋および消化器系におよぼす影響-.
基礎と臨床 1982;16(5):284-300.
2.6.2 薬理試験の概要文 - 16 -
2.6.3 薬理試験の概要表
表 2.6.3.1-1 薬理試験 : 一覧表
被験物質 : losartan・hydrochlorothiazide
試験の種類
GLP/ 非 GLP 試験系
投与方法
実施施設
試験番号 記載箇所
効力を裏付ける試験 非 GLP SHR における降圧効果 経口投与 萬有製薬( ) JPT# S-0212 4.2.1.1
副次的薬理試験: (毒性試験)
GLP
ラット 27 週間反復投与毒性試験 イヌ 27 週間反復投与毒性試験
経口投与
経口投与
米国メルク社(・ ・
)
米国メルク社(・ ・
)
TT# -055-0
TT# -054-0
4.4.2.1
4.4.2.2
安全性薬理試験: (毒性試験)
GLP
ラット単回投与毒性試験 イヌ単回投与毒性試験 ラット 27 週間反復投与毒性試験 イヌ 27 週間反復投与毒性試験
経口投与 経口投与 経口投与
経口投与
萬有製薬( ) 萬有製薬( ) 米国メルク社(・ ・
)
米国メルク社(・ ・
)
TT# -9813 TT# -9815 TT# -055-0
TT# -054-0
4.4.1.1
4.4.1.2
4.4.2.1
4.4.2.2
薬力学的薬物相互作用試験 該当試験なし
2.6.3 薬理試験の概要表
- 17 -
表2.6.3.1-2 薬理試験 : 一覧表
被験物質 : losartan
試験の種類
GLP/ 非 GLP
試験系
投与方法
実施施設
試験番号 記載箇所
効力を裏付ける試験
非 GLP 腎性高血圧ラットにおける降圧効果 DOCA-食塩高血圧ラットにおける降圧
効果 フロセミド処置 SHR における降圧効
果 フロセミド処置イヌにおける降圧効果
フロセミド処置イヌにおける降圧効果
フロセミド処置イヌにおける血行動態
に及ぼす影響
静脈内投与 静脈内投与 静脈内投与 静脈内投与 経口投与 静脈内投与
/ / / / / / / / / ・メルク社 / /
-22 -100
-102
-24
NA(公表論文)
-24
4.2.1.2
4.2.1.3
4.2.1.4
4.2.1.5
4.2.1.6
4.2.1.5
副次的薬理試験
非 GLP 一般薬理試験 静脈内投与・
経口投与・皮
下投与・十二
指腸内投与・
胃内投与・腹
腔内投与
萬有製薬(/ / ・)・米国メルク社・/ / / /
NA 4.5.1
2.6.3 薬理試験の概要表
- 18 -
PBRD: Pharmaceuticals and Biotechnology Research Division
NA:該当試験番号なし
表 2.6.3.1-3 薬理試験 : 一覧表
被験物質 : E-3174(代謝物)
試験の種類
GLP/ 非 GLP
試験系
投与方法
実施施設
試験番号 記載箇所
効力を裏付ける試験 非 GLP フロセミド処置イヌにおける降圧効果 静脈内投与・
経口投与 / /・メルク社 NA(公表論文) 4.2.1.6
副次的薬理試験
非 GLP 一般薬理試験 静脈内投与・
経口投与 萬有製薬(/ /・)・米国メルク社・/ / / /
NA 4.5.1
PBRD: Pharmaceuticals and Biotechnology Research Division
NA:該当試験番号なし
2.6.3 薬理試験の概要表
- 19 -
表2.6.3.2-1 効力を裏付ける試験
「2.6.2 薬理試験の概要文」中に図を記載した。
表2.6.3.3-1 副次的薬理試験
併用投与による該当資料はないが、単剤の試験成績及び併用投与におけるTK評価成績を「2.6.2 薬理試験の概要文」中に表として記載した。
2.6.3 薬理試験の概要表
- 20 -
表2.6.3.4-1 安全性薬理試験
併用投与による該当資料はないが、併用投与による毒性試験の引用成績を「2.6.2 薬理試験の概要文」中に表として記載した。
表2.6.3.5-1 薬力学的薬物相互作用試験
該当資料なし