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2020力学.問.0.1
� �★★★★ 以下の演習問題のいくつかをレポート課題とする予定です。 ★★★★
提出期限:各問題に記載。
提出場所:manaba コース 「力学」
提出ファイルについて:
提出ファイルの名前には学籍番号とレポート課題番号をいれてください,例えば,
tyy00zz report1.拡張子,
などのように。
注意 ! ファイル名が変更できない場合は本文中に,学籍番号と氏名,レポート課題番号,複
数ファイルの場合はその順番,を記入しておいてください。
(1) 手書きの場合:スキャナーで読み込みんだファイル,あるいはスマートフォンでとった写真をアッ
プロードしてください。写真が複数になる場合は,
tyy00zz report1-1.拡張子,tyy00zz report1-2.拡張子,
など,順番がわかるようにお願いします。
(2) ワード や TEXを使う場合:pdfをアップロードしてください。ワードの場合は docxファイルで
も構いません。
質問・希望など:manaba の掲示板か,[email protected] まで,お願いします。レポートに書いても
らっても結構です。� �
2020力学.問 1.1
� �力学 演習問題 No.1
単振動の復習
★★★★ レポート課題1 ★★★★
出題:4月 7日 (火),提出期限:4月 11日 (土)∗
∗ manaba の登録が間に合わない場合は,[email protected] まで送ってください。
配点:小問各3点� �問題 1-1 x 軸上をばね定数 k = 18のばねの力を受けて運動する質量m = 2の質点の運動方程式は
2d2x
dt2= −18x (p1.1)
となる。ここで x(t) は時刻 tでの質点の座標を表し,x = 0のとき,ばねの長さが自然長になるように x軸
の原点をとった。
(1) 初期条件
x(0) = 3 ,dx
dt(0) = 6 (p1.2)
に対して x(t) を求めなさい。
(2) (1)で与えた初期条件について,質点の座標 x(t)の最大値 xmax と,最小値 xmin を求めなさい。
(3) (1)で与えた初期条件について,質点の速さ (速度の絶対値
∣∣∣∣dxdt (t)∣∣∣∣)の最大値 vmax と,最小値 vmin を
求めなさい。
� �力学 演習問題 No.1 の予備知識� �
dx
dt= αx の一般解は x(t) = Aeαt , (p1.3)
d2x
dt2= −ω2x の一般解は x(t) = A cos(ωt) +B sin(ωt) . (p1.4)
sin(α+ β) = sin(α) cos(β) + cos(α) sin(β) , cos(α− β) = cos(α) cos(β) + sin(α) sin(β) . (p1.5)
2020力学.問 1.2
� �力学 演習問題 No.1 略解� �
解 1-1
(1) 運動方程式は (p1.4)で ω = 3の場合なので,一般解は以下となる:
x(t) = A cos(3t) +B sin(3t) . (p1.6)
dx
dt(t) = −3A sin(3t) + 3B cos(3t) (p1.7)
なので,
x(0) = A ,dx
dt(0) = 3B (p1.8)
より A = 3 , B = 2となる。従って解は以下となる:
x(t) = 3 cos(3t) + 2 sin(3t) . (p1.9)
(2)解を x(t) = C cos(3t− θ)の形に書き換える。(p1.5)の第 2式より
C cos(3t− θ) = C cos(3t) cos θ + C sin(3t) sin θ (p1.10)
と (p1.9)を比較して C と θは次の等式,
C cos θ = 3 , C sin θ = 2 (p1.11)
を満たせばよい。
C =√32 + 22 =
√13 (p1.12)
より
x(t) =√13 cos(3t− θ) (p1.13)
となる。ただし θ は
cos θ =3√13
, sin θ =2√10
(p1.14)
を満たす角度となる。以上より,質点は
−√13 ≤ x(t) ≤
√13 (p1.15)
の範囲を運動することがわかり,
xmax =√13 , xmin = −
√13 (p1.16)
となる。
(3) (p1.13)よりdx
dt(t) = −3
√13 sin(3t− θ) (p1.17)
となる。従って,質点の速度,dx
dt(t),は−3
√13から 3
√13の範囲で変化する。質点の速さは
∣∣∣∣dxdt (t)∣∣∣∣
なので,
vmax = 3√13 , vmin = 0 (p1.18)
となる。(p1.7)に A = 3 , B = 2を代入して
dx
dt(t) = −9 sin(3t) + 6 cos(3t) =
√92 + 62 cos(3t− θ′)
= 3√13 cos(3t− θ′) , cos θ′ =
2√13
, sin θ′ = − 3√13
(p1.19)
を用いてもい。
2020力学.問 2.1
� �力学 演習問題 No.2
力学的エネルギーの保存 (1次元運動)
★★★★ レポート課題2 ★★★★
出題:4月 14日 (火),提出期限:4月 18日 (土)
配点:小問各3点� �問題 2-1 次の微分方程式,
2d2x
dt2= −4x3 + 4x , (p2.1)
について,初期条件
x(0) = −√
3
2,
dx
dt(0) =
1
2(p2.2)
を満たす解 x(t) を考える。
(1) 0 ≤ t < ∞での x(t)の最大値 xmax と最小値 xmin を求めなさい。
(2) 0 ≤ t < ∞で∣∣∣∣dxdt (t)
∣∣∣∣ が最大になるときの値 vmax と,その時の質点の位置を求めなさい。
� �力学 演習問題 No.2 の予備知識� �
・力 F (x)と位置エネルギー (力のポテンシャル)U(x)の関係
F (x) = −dU
dx(x) . (p2.3)
・力学的エネルギーの保存
x軸上を力のポテンシャル U(x)から導かれる力 F (x) = −dU
dx(x) のみを受けて運動する質量 m の質点を
考える。このとき,力学的エネルギーm
2v(t)2 + U(x(t)) (p2.4)
が保存する ((p2.4)の値が tによらず一定となる)。
2020力学.問 2.2
� �力学 演習問題 No.2 略解� �
解 2-1 (p2.1)は x軸上を力 F = −4x3 + 4x を受けて運動する質量 m = 2 の質点の運動方程式とみなすことが
できる。力のポテンシャル (位置エネルギー) U(x) は (7.1) と同じ,
U(x) = x4 − 2x2 + 1 = (x2 − 1)2 (p2.5)
となるが,ここでは少し一般的に C を定数として,
U(x) = (x2 − 1)2 + C = x4 − 2x2 + 1− C (p2.6)
として考えてみる。以下に見るように,C の値は答に関係しない。
(1) 初期条件 (p2.2)より,力学的エネルギー E は
E =m
2
(dx
dt(0)
)2
+ U(x(0))m=2=
2
2
(1
2
)2
+ U
(√3
2
)=
1
2+ C (p2.7)
となる。力学的エネルギーが保存するので,質点の速度を v(t) =dx
dt(t)とすると,任意の時刻 t で
2
2v(t)2 + U(x(t)) =
1
2+ C (p2.8)
が成り立つ。2
2v(t)2 ≥ 0なので,質点の位置 xは次の不等式,
U(x) ≤ 1
2+ C , (p2.9)
を満たす。(p2.9)を満たす領域は:
(x2 − 1)2 + C ≤ 1
2+ C ⇒ (x2 − 1)2 ≤ 1
2⇒ − 1√
2≤ x2 − 1 ≤ 1√
2(p2.10)
より,
1− 1√2≤ x2 , すなわち x ≤ −
√1− 1√
2または
√1− 1√
2≤ x (p2.11)
かつ
x2 ≤ 1 +1√2, すなわち −
√1 +
1√2≤ x ≤
√1 +
1√2
(p2.12)
となる。『(P または Q) かつ R = (P かつ R) または (Q かつ R)』なので,(p2.9)を満たす領域は
−
√1 +
1√2≤ x ≤ −
√1− 1√
2, (p2.13)
または √1− 1√
2≤ x ≤
√1 +
1√2, (p2.14)
となる。質点が運動するのは x(0) = −√
3
2を含む (p2.13)となる。以上より
xmin = −
√1 +
1√2= −
√2 +
√2
2, xmax = −
√1− 1√
2= −
√2−
√2
2(p2.15)
が得られる。
2020力学.問 2.3
(2) (p2.8)より,v(t)2が最大となるのは U(x(t))が最小となるときである。質点が運動する領域 (p2.13)内で,位
置エネルギーは x = −1で最小値 U(−1) = C となる。従って質点が位置 x = −1を通過するときに v(t)2
が最大値1
2をとり
vmax =1√2
(p2.16)
となる。
尚,x = xmin と x = xmax で質点の運動エネルギーは 0となり,速度は 0となるので,0 ≤ t < ∞での∣∣∣∣dxdt (t)∣∣∣∣ の最小値 vmin は
vmin = 0 (p2.17)
となる。
また,質点はx = xminとx = xmaxの間を振動するので,x = 1を通過するときの質点の速度は±vmax = ± 1√2
となる。
注意 ! (p2.1)の両辺を 2で割った方程式
d2x
dt2= −2x3 + 2x (p2.18)
を考え,この微分方程式を x軸上を力 F = −2x3 + 2x を受けて運動する質量 m = 1 の質点の運動方程式
とみなすこともできる。この場合の力のポテンシャル (位置エネルギー) U(x)は
U(x) =1
2U(x) =
1
2(x2 − 1)2 (p2.19)
となる。(定数 C の値は答に関係しないので C = 0 とした。)
初期条件 (p2.2)より,この場合の力学的エネルギー E は
E =m
2
(dx
dt(0)
)2
+ U(x(0))m=1=
1
2
(1
2
)2
+1
2U
(√3
2
)=
1
2E =
1
4(p2.20)
となる。
力学的エネルギー保存則より得られる不等式
U(x) ≤ E (p2.21)
は1
2(x2 − 1)2 ≤ 1
4(p2.22)
となるが,これは (p2.14)と同じになる。
vmax の値も1
2v2max = E − U(−1) ⇒ 1
2v2max =
1
4(p2.23)
となり,(p2.16)と同じになる。
2020力学.問 3.1
� �力学 演習問題 No.3
力学的エネルギーの保存 (1次元運動)
★★★★ レポート課題3 ★★★★
出題:4月 21日 (火),提出期限:4月 25日 (土)
配点:小問各3点� �問題 3-1 質量 m = 2 の質点が,x 軸上を力のポテンシャル
U(x) = x3 − 11x2 + 24x (p3.1)
による力を受けて運動する。
(1) 位置 x にある質点に働く力 (の x 成分)F (x) を求めなさい。
(2) この質点にはたらく力の大きさが 0 となる位置を全て求めなさい。
時刻 t = 0 での初期条件が x(0) = 8,v(0) = 0 である場合の,質点の t > 0での運動を考える。
(3) 質点は x 軸上のどの範囲を運動するかを答えなさい。ただし,U(x)− U(8) = x(x− 3)(x− 8) という
関係がある。
(4) 質点の速さ (速度の大きさ) |v(t)|の最大値,vmax,を求めなさい。また,速さが最大になるときの,質
点の位置を求めなさい。
時刻 t = 0 での初期条件が x(0) = 8,v(0) = −v0 , (v0 > 0) である場合の質点の t > 0での運動を考える。
(5) v0 がある値 vminより小さければ,質点が x = 8に戻ってくる時刻 t > 0が存在する。一方,v0 が vmin
より大きければ,時刻 t > 0で質点の位置は x = 8 とならない。vmin を求めなさい。
� �力学 演習問題 No.3 の予備知識� �
・力 F (x)と位置エネルギー (力のポテンシャル)U(x)の関係
F (x) = −dU
dx(x) . (p3.2)
・力学的エネルギーの保存
x軸上を力のポテンシャル U(x)から導かれる力 F (x) = −dU
dx(x) のみを受けて運動する質量 m の質点を
考える。このとき,力学的エネルギーm
2v(t)2 + U(x(t)) (p3.3)
が保存する ((p3.3)の値が tによらず一定となる)。
2020力学.問 3.2
� �力学 演習問題 No.3 略解� �
解 3-1
(1)(p3.2)より
F (x) = −dU
dx(x) = − d
dx
(x3 − 11x2 + 24x
)= −3x2 + 22x− 24 . (p3.4)
(2) F (x) = 0を満たす x を求める:
−3x2 + 22x− 24 = 0 ⇒ −3
((x− 11
3
)2
−(11
3
)2)
− 24 = 0 ⇒(x− 11
3
)2
=
(11
3
)2
− 8 =49
9
⇒ x =11± 7
3⇒ x =
4
3, x = 6 . (p3.5)
(3) 質点の力学的エネルギー E は
E =m
2v(0)2 + U(x(0))
m=2= v(0)2 + U(x(0)) = U(8) = 0 (p3.6)
となる。となる。運動する範囲は U(x) ≤ E なので,U(x) ≤ U(8) より
0 ≤ U(8)− U(x) = −x(x− 3)(x− 8) (p3.7)
から
3 ≤ x ≤ 8 , −∞ < x ≤ 0 (p3.8)
が得られる。最初の質点の位置は x = 8 なので,質点の動く範囲は
3 ≤ x ≤ 8 (p3.9)
となる。
(4) 力学的エネルギーの保存:
m
2v(t)2 + U(x(t)) =
m
2v(0)2 + U(x(0)) = E (p3.10)
より
v(t)2 =2
m
(E − U(x(t))
)m=2= E − U(x(t)) (p3.11)
が成り立つ。(この問題の場合は E = 0。) 従って,|v(t)|が最大になるのは,U(x(t))が最小になるときで
ある。dU(x)
dx= 3x2 − 22x+ 24 = (3x− 4)(x− 6) (p3.12)
より,U(x)は x = 4/3 で極大値,x = 6 で極小値をとる。これより,質点の運動する範囲,3 ≤ x ≤ 8,で
の U(x)の最小値は U(6) = −36となる。以上より |v(t)|は質点の位置が
x = 6 (p3.13)
のときに,以下の最大値をとる:
vmax =
√− 2
mU(6) =
√36 = 6 . (p3.14)
2020力学.問 3.3
(5) (4) より,U(x)は x =4
3で極大値,x = 6 で極小値をとる。質点は x = 8 から x軸の負の向きに動くので,
−∞ < x ≤ 8の範囲を考えると,U(x) の最大値は U
(4
3
)=
400
27となる。質点の力学的エネルギー E が
E > U
(4
3
)=
400
27の場合,質点の運動エネルギーは
m
2v(t)2 = E − U(x(t)) ≥ E − U
(4
3
)> 0 (p3.15)
となり,t > 0 で常に正なので,v(t) = 0である。v(0) = −v0 < 0なので,t > 0 で常に v(t) < 0となり,質
点は x = 8 に戻ることはない。
一方,E < U
(4
3
)=
400
27の場合,U(x1) = E となる
4
3< x1 < 3が存在する。質点は最初 x軸の負の向き
に動くが,x = x1に到達したとき運動エネルギーが 0,すなわち,速度が 0となる。その後,速度は正とな
り質点は x軸の正に向きに動きだし,x = 8 の位置に戻ってくる。従って,
m
2v2min + U(8) =
400
27(p3.16)
より,
vmin =20
3√3
(p3.17)
となる。尚,v0 = vmin の場合, limt→∞
x(t) =4
3となる。
x
( )U x
1x4
33 6 8
400
27 40027
E<
40027
E>
図 3.1 U(x)
2020力学.問 4.1
� �力学 演習問題 No.4
終端速度,力のポテンシャル (3次元運動)
★★★★ レポート課題4 ★★★★
出題:4月 28日 (火),提出期限:5月 9日 (土)
配点:小問各3点� �問題 4-1 鉛直上向きを x軸の正の向きとする。x軸上を運動する質量 m の質点に一定の大きさ重力と速さの 2
乗に比例する空気抵抗がはたらく場合の運動方程式は
mdv
dt(t) = −mg − b′|v(t)|v(t) (p4.1)
となる。ただし v(t) は時刻 t 質点の速度,g は重力加速度の大きさ,b′ は空気抵抗の比例定数とする。
(1) 質点の終端速度,v∞ = limt→∞
v(t) を書き表しなさい。
(2)
m = 1.4× 10−1 kg , b′ = 8.9× 10−4 kg/m , g = 9.8 m/s2 (p4.2)
の場合に終端速度の数値を求めなさい。これらの数値は硬式野球のボールを想定しています。
問題 4-2 位置 r = (x , y , z)T にある質量 m の質点に働く力,
F (r) =(− 4x− ay2 − 2z , −6y − 4xy , −bx− 10z
)T(p4.3)
を考える。ただし,aと b は定数である。
(1) F (r) が保存力になるように a,b を定めなさい。
(2) (1) で決めた a,b に対して,力のポテンシャル U(r)を求めなさい。力のポテンシャルは U(0) = 0
となるように定めなさい。
� �力学 演習問題 No.4 の予備知識� �
・力 F (r)と位置エネルギー (力のポテンシャル)U(r) の関係
Fx(r) = −∂U
∂x(r), Fy(r) = −∂U
∂y(r), Fz(r) = −∂U
∂z(r) . (p4.4)
関係式 (p5.2) を満たす U が存在するような力 F を保存力と呼ぶ。質点に保存力のみが働く場合,質点の
力学的エネルギー,
E(t) =1
2m|v(t)|2 + U(r(t)) (p4.5)
は保存される。((p5.3)の値が運動の過程で一定の値をとる。)
・位置 r の関数である力 F (r) が力のポテンシャルを持つための必要十分条件:
∂Fx
∂y(r) =
∂Fy
∂x(r),
∂Fy
∂z(r) =
∂Fz
∂y(r),
∂Fz
∂x(r) =
∂Fx
∂z(r) . (p4.6)
2020力学.問 4.2
� �力学 演習問題 No.4 略解� �
解 4-1
(1) 質点が終端速度に達したときには重力と空気抵抗がつりあうので,(p4.1)より
0 = −mg − b′|v∞|v∞ (p4.7)
となる。v∞ < 0なので,v∞ = −|v∞| より b′|v∞|2 = mgから
v∞ = −√
mg
b′(p4.8)
となる。
limt→∞
v(t) = v∞ は式 (p4.1)の右辺をmで割った式を v に対して描いた下の図 4.1 よりわかる;
v
'b dvg v vm dt
− − =
g−
v∞
( )v t ( )v t
O
図 4.1 v(t)の時間依存性
(参考) 実は微分方程式 (p4.1)の解 v(t) は次の様に初等関数で表すことができる。時刻 t = 0 に, 速度 v0(< 0)
で物体を落下させる場合の解を求めてみよう:問題の運動では, 常に v(t) < 0 であるので, (p4.1)は
dv(t)
dt= −g +
b′
mv(t)2 =
b′
m
(v(t)2 − mg
b′
)= A
(v(t)2 −B2
)(p4.9)
となる。ここで
A =b′
m, B =
√mg
b′= −v∞ (p4.10)
とおいた。上の微分方程式は 変数分離形 (�� ��三宅微積 p.159 )となっているので,まず
1
v(t)2 −B2
dv(t)
dt= A (p4.11)
と変形してから両辺を t について,t = 0から t = t1 まで積分すると∫ t1
0
1
v(t)2 −B2
dv(t)
dtdt = A
∫ t1
0
dt = At1 (p4.12)
となる。左辺の積分は積分変数を t から v に変えると∫ v(t1)
v0
1
v2 − b2dv (p4.13)
となる。さらに,被積分関数を
1
v2 −B2=
1
(v −B)(v +B)=
1
2B
(1
v −B− 1
v +B
)(p4.14)
2020力学.問 4.3
と 部分分数展開 (�� ��三宅微積 p.62 ) すると,∫ v(t1)
v0
1
v2 −B2dv =
∫ v(t1)
v0
1
2B
(1
v −B− 1
v +B
)dv =
1
2B
[log |v −B| − log |v +B|
]v=v(t1)
v=v0
=1
2Blog
∣∣∣∣ (v(t1)−B)(v0 +B)
(v(t1) +B)(v0 −B)
∣∣∣∣ (p4.15)
となる。以上より,1
2Blog
∣∣∣∣ (v(t1)−B)(v0 +B)
(v(t1) +B)(v0 −B)
∣∣∣∣ = At1 (p4.16)
が得られる。
以下,(p4.16)で t1を tに置き換えて,v(t) = · · · の形に変形していく:v(t)−B < 0,v0−B < 0であり,v(t)+B
と v0 +B は同符号なので,(v(t)−B)(v0 +B)
(v(t) +B)(v0 −B)= e2ABt (p4.17)
より,
v(t) = −Bv0 −B + (v0 +B)e−2ABt
v0 −B − (v0 +B)e−2ABt, B =
√mg
b′, AB =
√b′g
m(p4.18)
が得られる。(p4.18)より確かに
limt→∞
v(t) = −B = v∞ (p4.19)
が成り立つことがわかる。
(2) (p4.2)の数値を代入すると以下の値が得られる:
v∞ ≈ −39 m/s ≈ −140 km/h . (p4.20)
(参考) 速さの 2乗に比例する空気抵抗の比例係数 b′ は
b′ =CD
2ρS
�� ��佐本 (8.25)’ (p4.21)
と表される。ρは空気の密度,S は空気抵抗を受ける物体の断面積,CD は 抗力係数 と呼ばれ,近似的には定
数とみなされるが,正確には図 4.2に示すように物体の速さによって変化する。
30 40 50 60 70 m/s
100 150 200 250km/h
図 4.2 硬式野球のボールにおける CD の速さ依存性
G.S. Sawicki and M. Hubbarda,“How to hit home runs”, Am. J. Phys. 71,1152 (2003)
の Fig.3 を転写の上,横軸を追加した。
2020力学.問 4.4
(p4.2)に与えた b′ の数値は
CD = 0.35 , ρ = 1.23 kg/m3 , S = πR2 = π(3.63× 10−2)2 m2 (p4.22)
として計算した。
なお,v(t)が v∞ に近づく時間のスケール1
2ABの数値は
1
2AB=
1
2
√m
b′g≈ 2.0 s (p4.23)
となる。
解 4-2
(1)
∇× F (r) =
(∂(−bx− 10z)
∂y− ∂(−6y − 4xy)
∂z,
∂(−4x− ay2 − 2z)
∂z− ∂(−bx− 10z)
∂x,
∂(−6y − 4xy)
∂x− ∂(−4x− ay2 − 2z)
∂y
)= (0 , −2 + b , −4y + 2ay) = (0 , −2 + b , 2(a− 2)y) . (p4.24)
より,
a = 2 , b = 2 . (p4.25)
(2) a = 2 , b = 2の場合に,F に対する力のポテンシャル U(r)を求めればよいが,ここでは a,bに値を代入
せずに計算してみる。
まず,∂U
∂x= 4x+ ay2 + 2zを xについて積分する:
U =
∫(4x+ ay2 + 2z) dx = 2x2 + axy2 + 2xz + C1(y, z) (p4.26)
が得られる。ここで,C1(y, z)は xの積分に対する積分定数なので,yや zの関数である可能性がある。
次に,上式を∂U
∂y= 6y + 4xyの左辺に代入する:
2axy +∂C1(y, z)
∂y= 6y + 4xy . (p4.27)
これより,C1(y, z)が満たすべき条件
∂C1(y, z)
∂y= 6y + 2(2− a)xy (p4.28)
が得られる。C1は yと zの関数であり,(p4.28)の右辺に変数 xは現れてはいけないので,a = 2 が得られ
る。(p4.28)を yについて積分して
C1(y, z) =
∫6y dy = 3y2 + C2(z) (p4.29)
2020力学.問 4.5
が得られる。C2(z)は yの積分に対する積分定数なので,zの関数である可能性がある。さらに,得られた
結果 U = 2x2 + 2xy2 + 2xz + 3y2 + C2(z) を∂U
∂z= bx+ 10zの左辺に代入すると
2x+dC2(z)
dz= bx+ 10z (p4.30)
より,C2(z)が満たすべき条件dC2(z)
dz= 10z + (b− 2)x (p4.31)
が得られる。C2 は z の関数であり,(p4.31)の右辺に変数 xは現れてはいけないので,b = 2 が得られる。
(p4.31)を zについて積分して
C2(z) =
∫10z dz = 5z2 + C3 (p4.32)
が得られる。以上より,力のポテンシャルは
U(r) = 2x2 + 2xy2 + 2xz + 3y2 + 5z2 + C3 (p4.33)
となる.(C3 は定数。) U(0) = 0の条件より,C3 = 0なので,
U(r) = 2x2 + 2xy2 + 2xz + 3y2 + 5z2 (p4.34)
となる.
2020力学.問 5.1
� �力学 演習問題 No.5
中心力
★★★★ レポート課題5 ★★★★
出題:5月 12日 (火),提出期限:5月 16日 (土)
配点:小問各3点� �問題 5-1 位置 r = (x , y , z)
T にある質量 m の質点に働く力のポテンシャル U が
U(r) =A
r12− B
r6(p5.1)
で与えられている。ここに,r = |r| =√x2 + y2 + z2 は原点から質点までの距離,A と B は正の定数である。
(1) U から得られる力が 0 < r < r0 では斥力,r0 < r < ∞では引力となった。r0 を Aと B を用いて表しな
さい。
図 5.1に A = 10 , B = 1の場合の U(r)を示す。
(2) (1)で求めた r = r0 を表す点は図 5.1の a,b,c,d,eのどれかを答えなさい。
(3) 質点の原点からの距離が図 5.1の点 a,b,c,d,eである場合に質点にはたらく力の大きさをそれぞれ |F a|,|F b|,|F c|,|F d|,|F e|,とする。これらの力の大きさを大きい順に並べなさい。例えば,
|F a| > |F b| > |F c| > |F d| > |F e|
のように書いてください。
r
( )U r
Oab c d e
図 5.1 A = 10 , B = 1の場合の U(r)
(参考) 電気的に中性な原子や分子の間にはたらく力のポテンシャルを近似的に表す関数として (p5.1)のような形
が用いられ,レナード-ジョーンズ (Lennard-Jones)ポテンシャルと呼ばれている。
2020力学.問 5.2
� �力学 演習問題 No.5 の予備知識� �
・力 F (r)と位置エネルギー (力のポテンシャル)U(r) の関係
Fx(r) = −∂U
∂x(r), Fy(r) = −∂U
∂y(r), Fz(r) = −∂U
∂z(r) . (p5.2)
関係式 (p5.2) を満たす U が存在するような力 F を保存力と呼ぶ。質点に保存力のみが働く場合,質点の
力学的エネルギー
E(t) =1
2m|v(t)|2 + U(r(t)) (p5.3)
は保存される。((p5.3)の値が運動の過程で一定の値をとる。)
・中心力�� ��高木 I (6.1)
�� ��戸田 (3.144)�� ��佐本 p.136
位置の関数である次のような力
F (r) = f(r)r
r=(f(r)
x
r, f(r)
y
r, f(r)
z
r
)T, r =
√x2 + y2 + z2 (p5.4)
は,向きは常に原点と質点の位置(r)を結ぶ直線に沿っており,大きさは原点までの距離 r だけで決まる。
このような力を中心力,原点を力の中心と呼ぶ。f(r) > 0の場合は力は質点を力の中心から遠ざける向きに
働く斥力となる。f(r) < 0の場合は力は質点を力の中心の方に近づける向きに働く引力となる。中心力は保
存力であり,力のポテンシャルは
U(r) = −g(r) (p5.5)
で与えられる。ここに,g(r) はdg
dr(r) = f(r) を満たす関数である。rが増加するとき U(r)が減少する場
合は斥力,増加する場合は引力となる。つまり,力は U(r)が減少する向きに働く。
2020力学.問 5.3
� �力学 演習問題 No.5 略解� �
解 5-1
(1) (17.1),(17.2)より
F (r) = −dU
dr
r
r=
6
r13(2A−Br6
) rr
(p5.6)
なので,2A−Br6 > 0 で斥力,2A−Br6 < 0 で引力となる。従って
r0 =
(2A
B
)1/6
. (p5.7)
(2) r = r0 でdU
dr(r0) = 0 , (p5.8)
すなわち U(r)のグラフの傾きが 0になるので,図 5.1より点 cとなる。
(3)
F (r) = −dU(r)
dr
r
r(p5.9)
なので,力の大きさは
|F (r)| =∣∣∣∣dU(r)
dr
∣∣∣∣ , (p5.10)
すなわち U(r)のグラフの接線の傾きの絶対値となる。従って図 5.1より
|F a| > |F b| > |F d| > |F e| > |F c| (p5.11)
となる。特に |F c| = 0である。
2020力学.問 6.1
� �力学 演習問題 No.6
万有引力とクーロン力,運動エネルギーと仕事の関係
★★★★ レポート課題6 ★★★★
出題:5月 19日 (火),提出期限:5月 23日 (土)
配点:小問各3点� �問題 6-1
�� ��長岡洋介,“電磁気学 I” (岩波 1982) p.11 問題 1
質量を持った物体の間にはたらく万有引力 (重力) と電荷を持った物
体の間にはたらくクーロン力は,ともに物体間の距離の 2乗に反比
例するが,その大きさは著しく異なる。大きさの比較をするために水
素原子を考えよう。水素原子は電荷 eを持つ陽子と,そのまわりを運
動する電荷−eを持つ電子から成る (図 6.1)。ここで eは 電気素量
と呼ばれ,その値は
e ≈ 1.6× 10−19 C (p6.1)
となる。また,陽子の質量M と電子の質量mの値はそれぞれ
M ≈ 1.7× 10−27 kg , m ≈ 9.1× 10−31 kg (p6.2)
である。陽子と電子の間の距離が rであるときに,電子にはたらく
万有引力の大きさ |FG| とクーロン力の大きさ |FC | の比|FG||FC |
を求
めなさい。
(参考) r は答には現れないが,水素原子の半径は
r ≈ 5.3× 10−11 m (p6.3)
と見積もられ ボーア (Bohr)半径 と呼ばれる。
図 6.1 水素原子の概念図
原子核は一つの陽子から成る。
k0 =1
4πε0�� ��「物理」(数研出版),2018
問題 6-2�� ��原康夫,“基礎物理学” (学術図書 2000) 演習問題 2-22 を一部変更
投手が投げた時速 144 km のボール (質量 0.15 kg)を捕手が捕球するとき,ミットが 0.2 m 動いた。このとき,
ミットからボールにはたらく力の大きさを概算しよう。捕球の際に,ボール及びミットが x軸方向に運動し,ミッ
トからボールにはたらく力が一定で x軸方向にはたらく,と考えてこの力の大きさを求めなさい。
(参考) 実際にはたらく力は一定ではないので,上で
計算する力の大きさは図 6.2に示すような,平均の
力の大きさ,F と考えられる。
O x
ℓ
F
F
図 6.2 ボールにはたらく力の概念図
2020力学.問 6.2
� �力学 演習問題 No.6 の予備知識� �
・万有引力 (重力):原点に固定された質量m2[kg]の物体が,位置 rにある質量m1[kg]の物体に及ぼす万有引力
(重力),FG は
FG = −Gm1m2r
r3(p6.4)
となる。ここで r = |r|は物体間の距離,
G ≈ 6.7× 10−11 m3/(kg sec2)�� ��高木 I (5.7)
�� ��戸田 (4.50)�� ��佐本 (10.2) (p6.5)
は万有引力定数と呼ばれる。
・クーロン力:原点に固定された電荷 q2[C]を持つ物体が,位置 rにある電荷 q1[C]を持つ物体に及ぼすクーロ
ン力,FC は
FC =q1q24πε0
r
r3(p6.6)
となる。ここで,r = |r|は物体間の距離,
ε0 ≈ 8.9 · · · × 10−12 C2 sec2/(kg m3) (p6.7)
は真空の誘電率と呼ばれる。
・運動エネルギーの変化分と仕事
K(t)−K(t0) = W (t) (p6.8)
が成り立つ。ここで,K(t) =m
2|v(t)|2 は時刻 tの質点の運動エネルギー,
W (t) =
∫ t
t0
F (s) · v(s)ds�� ��高木 I (5.4)
�� ��戸田 (3.130)�� ��佐本 (6.22) (p6.9)
は時刻 t0 から t までの間に質点に力 F がした仕事である。単位時間あたりになされる仕事
dW
dt(t) = F (t) · v(t)
�� ��高木 I (5.9)�� ��佐本 (5.33) (p6.10)
を仕事率という。
力 F が一定の場合の仕事は,
W (t) = F · (r(t)− r(t0)) = |F ||r(t)− r(t0)| cos θ (p6.11)
となる。ここで,θは F と r(t)− r(t0) のなす角である。
2020力学.問 6.3
� �力学 演習問題 No.6 略解� �
解 6-1
|FG| =GMm
r2, |FC | =
e2
4πε0r2(p6.12)
より|FG||FC |
=4πε0GMm
e2(p6.13)
となる。数値を代入すると以下が得られる:
|FG||FC |
=4× 3.1× 8.9× 10−12 × 6.7× 10−11 × 1.7× 10−27 × 9.1× 10−31
(1.6× 10−19)2
=4× 3.1× 8.9× 6.7× 1.7× 9.1
1.6× 1.6× 10−43 ≈ 4.5× 10−40 . (p6.14)
従って,水素原子の構造を考える際には万有引力の影響は無視できると考えられる。
解 6-2 時刻 t0 にボールとミットが接触し,時刻 t でボールが静止したとする。この間のボールの移動距離を
ℓ = 0.2 m とする。ミットからボールにはたらく力の大きさを F とすると,力の向きはボールの動く向きと逆
(θ = −π)なので,(p6.4)よりこの力がボールにした仕事は
W = −F |r(t)− r(t0)| = −F ℓ (p6.15)
となる。
捕球前のボールの速さを
v0 = 144 km/h =144× 1000
60× 60m/sec = 40 m/sec (p6.16)
とすると,(p13.8)で
K(t) = 0 , K(t0) =m
2v20 (p6.17)
なので,
F =m
2ℓv20 =
0.15× 40× 40
2× 0.2= 6× 102 N (p6.18)
となる。重力加速度の大きさを 9.8 m/sec2 とすると,この力の大きさは
6× 102
9.8≈ 61 kgの質量の物体を持つと
きに必要な力の大きさと同じになる。
注意 ! ボールの運動方程式の解からも同じ結果が得られる。ボールの捕球時に,ボールの加速度の x成分はF
mなので,ボールの速度の x成分と x座標は
v(t) = −v0 +F
m(t− t0) , x(t) = x(t0)− v0(t− t0) +
F
2m(t− t0)
2 (p6.19)
となる。v(t) = 0より t = t0 + v0m
Fなので,
ℓ = x0 − x(t) =mv202F
(p6.20)
より,(p6.18)が得られる。
2020力学.問 7.1
� �力学 演習問題 No.7
角運動量
★★★★ レポート課題7 ★★★★
出題:5月 26日 (火),提出期限:5月 30日 (土)
配点:小問各3点� �問題 7-1 質量 m = 1 の質点の位置ベクトルが
r(t) =(3 + cos(5t) , 1 + 2 sin(5t) , 1 + 2 sin(5t)
)(p7.1)
で与えられている。
(1) この質点の時刻 t での原点 O = (0, 0, 0) に関する角運動量 LO(t)を求めなさい。
(2) 時刻 tで,この質点にはたらく原点 O に関する力のモーメントNO(t) を求めなさい。
(3) この質点の時刻 t での点 A = (3, 1, 1) に関する角運動量 LA(t)を求めなさい。
(4) 時刻 tで,この質点にはたらく点 A に関する力のモーメントNA(t) を求めなさい。
� �力学 演習問題 No.7 の予備知識� �
・角運動量と力のモーメント
質量 m の質点の位置ベクトルを r(t),速度を v(t)とするとき,空間に固定された点 r0に関する角運動量は
L(t) = m(r(t)− r0)× v(t) (p7.2)
となる。質点にはたらく力を F (t)とすると,角運動量の時間変化は
dL
dt(t) = N(t) , N(t) = (r(t)− r0)× F (t) (p7.3)
となる。N は点 r0 に関する力のモーメントまたはトルクと呼ばれる。
・ベクトルの外積 Ax
Ay
Az
×
Bx
By
Bz
=
Ay Bz −Az By
Az Bx −Ax Bz
Ax By −Ay Bx
(p7.4)
2020力学.問 7.2
� �力学 演習問題 No.7 略解� �
解 7-1
(1)
LO(t) = mr × dr
dt=(3 + cos(5t) , 1 + 2 sin(5t) , 1 + 2 sin(5t)
)×(− 5 sin(5t) , 10 cos(5t) , 10 cos(5t)
)=
(0 , −10− 5 sin(5t)− 30 cos(5t) , 10 + 5 sin(5t) + 30 cos(5t)
). (p7.5)
(2)
NO(t) =dLO
dt(t) =
(0 , −25 cos(5t) + 150 sin(5t) , 25 cos(5t)− 150 sin(5t)
). (p7.6)
なお,質点にはたらく力は
F (t) = md2r
dt2(t) = −25
(cos(5t) , 2 sin(5t) , 2 sin(5t)
)(p7.7)
なので,
NO(t) = r(t)× F (t) = −25(3 + cos(5t) , 1 + 2 sin(5t) , 1 + 2 sin(5t)
)×(cos(5t) , 2 sin(5t) , 2 sin(5t)
)= −25
(0 , cos(5t)− 6 sin(5t) , − cos(5t) + 6 sin(5t)
)(p7.8)
となり,(p7.6)と同じ結果となる。
(3)
LA(t) = m(r − (3, 1, 1)
)× dr
dt=(cos(5t) , 2 sin(5t) , 2 sin(5t)
)×(− 5 sin(5t) , 10 cos(5t) , 10 cos(5t)
)= (0 , −10 , 10) . (p7.9)
(4)
NA(t) =dLA
dt(t) = (0 , 0 , 0) . (p7.10)
なお,(p7.7)を用いて力のモーメントを求めると
NA(t) = −25(cos(5t) , 2 sin(5t) , 2 sin(5t)
)×(cos(5t) , 2 sin(5t) , 2 sin(5t)
)= (0 , 0 , 0) (p7.11)
となり,(p7.10)と同じ結果となる。
2020力学.問 8.1
.
� �力学 演習問題 No.8
単振り子の運動方程式
★★★★ レポート課題8 ★★★★
出題:6月 2日 (火),提出期限:6月 6日 (土)
配点:小問各3点� �問題 8-1
�� ��高木 I §6 演習問題 [5]’
長さ ℓ の伸び縮みしない質量の無視できる棒の先端に質量 m の質点が取り付けられている。棒の他端は回転軸に
取り付けられ,棒と質点は鉛直面内を摩擦なく回転できるとする。このように,質量が棒の先端に集中している
と理想化した振り子を 単振り子 と呼ぶ。(なお,棒の質量も考慮する場合は 実体振り子 と呼ばれる。)
θ
m
x
y
z
gFr
TFr
ℓ
vr
O
図 8.1 単振り子
図 8.1では,y 軸を鉛直上向きにとり,z軸を回転軸としている。質点と棒は x-y 平面内を運動する。時刻 t での
鉛直下向きからの棒の角度を θ(t) とする。
(1) 時刻 t の質点の x座標と y座標を θ(t)を用いて表しなさい。なお,質点の z座標は 0になる。
(2) 原点 Oに関する質点の角運動量 L(t)を求めなさい。L(t)の式にはdθ
dt(t)が現れる。
(3) 質点にはたらく原点 Oに関する力のモーメントN(t)を求めなさい。質点には y 軸の負の向きに大きさ mg
の重力 (g は重力加速度の大きさ)と,棒の方向に棒からの力 F T がはたらく。
(4) θ(t)の満たす微分方程式を求めなさい。
� �力学 演習問題 No.8 の予備知識� �
・角運動量と力のモーメント
質量 m の質点の位置ベクトルを r(t),速度を v(t)とするとき,空間に固定された点 r0に関する角運動量は
L(t) = m(r(t)− r0)× v(t) (p8.1)
となる。質点にはたらく力を F (t)とすると,角運動量の時間変化は
dL
dt(t) = N(t) , N(t) = (r(t)− r0)× F (t) (p8.2)
となる。N は点 r0 に関する力のモーメントまたはトルクと呼ばれる。
・ベクトルの外積 Ax
Ay
Az
×
Bx
By
Bz
=
Ay Bz −Az By
Az Bx −Ax Bz
Ax By −Ay Bx
(p8.3)
2020力学.問 8.2
� �力学 演習問題 No.8 略解� �
解 8-1
(1)
x(t) = ℓ sin(θ(t)) , y(t) = −ℓ cos(θ(t)) . (p8.4)
(2) 質点の位置ベクトルと速度は
r(t) = (ℓ sin(θ(t)) , −ℓ cos(θ(t)) , 0)T, v(t) =
(ℓ cos(θ(t))
dθ
dt(t) , ℓ sin(θ(t))
dθ
dt(t) , 0
)T
(p8.5)
なので,角運動量は
L = r(t)×mv(t) = m
ℓ sin(θ(t))
−ℓ cos(θ(t))
0
×
ℓ cos(θ(t))dθ(t)dt
ℓ sin(θ(t))dθ(t)dt
0
=
0
0
mℓ2 dθ(t)dt
(p8.6)
となる。
(3) 質点には重力
F g = (0 , −mg , 0)T
(p8.7)
と棒からの力
F T = (−T (t) sin(θ(t)) , T (t) cos(θ(t)) , 0)T
(p8.8)
がはたらく。ここで,T (t) は棒方向の力の成分を表す。(T < 0の場合,図 8.1と力の向きが逆になる。 )
r(t)× F T = 0 なので力のモーメントは
N = r(t)× F g =
ℓ sin(θ(t))
−ℓ cos(θ(t))
0
×
0
−mg
0
=
0
0
−mgℓ sin(θ(t))
(p8.9)
となる。
(4) 等式 (p8.2)の z成分よりこの系の運動方程式,
mℓ2d2θ(t)
dt2= −mgℓ sin(θ(t)) ,
�� ��戸田 (3.45)’ (p8.10)
あるいは両辺をmℓ2 で割って
d2θ(t)
dt2= −g
ℓsin(θ(t))
�� ��高木 I (4.22)’�� ��戸田 (3.46)
�� ��佐本 (4.47)’ (p8.11)
が得られる。
2020力学.問 8.3
(参考)質点の運動方程式からの (p8.11)の導出
質点の座標を r(t) = (x(t) , y(t) , 0) とすると,質点の運動方程式
md2r(t)
dt2= F g + F T (p8.12)
の x,y 成分は
md2x(t)
dt2= −T (t) sin(θ(t)) , m
d2y(t)
dt2= −mg + T (t) cos(θ(t)) (p8.13)
となる。一方,
x(t) = ℓ sin(θ(t)) , y(t) = −ℓ cos(θ(t)) (p8.14)
より
d2x(t)
dt2= ℓ
(cos(θ(t))
d2θ(t)
dt2− sin(θ(t))
(dθ(t)
dt
)2)
, (p8.15)
d2y(t)
dt2= ℓ
(sin(θ(t))
d2θ(t)
dt2+ cos(θ(t))
(dθ(t)
dt
)2)
(p8.16)
となるので,(p8.13) は
mℓ
(cos(θ(t))
d2θ(t)
dt2− sin(θ(t))
(dθ(t)
dt
)2)
= −T (t) sin(θ(t)) , (p8.17)
mℓ
(sin(θ(t))
d2θ(t)
dt2+ cos(θ(t))
(dθ(t)
dt
)2)
= −mg + T (t) cos(θ(t)) (p8.18)
となる。(p8.17)× cos(θ(t))+ (p8.18)× sin(θ(t))より (p8.11)が得られる。また,− (p8.17)× sin(θ(t))+ (p8.18)× cos(θ(t))
より
T (t) = mg cos(θ(t)) +mℓ
(dθ(t)
dt
)2
(p8.19)
が得られる。
【注】この問題では質点は糸ではなく質量の無視できる棒で支点につながれているので,T (t) < 0の場合も意味が
ある。糸でつながれた場合は T (t) ≥ 0の場合の解しか意味がない。
【注】(p8.10)に対応する力のポテンシャルは
U(θ) = mgℓ(1− cos(θ)) (p8.20)
であり,θ = 0の位置を基準とした質点の重力による位置エネルギーになる。力学的エネルギー
E =m
2
(ℓdθ
dt(t)
)2
+ U(θ) (p8.21)
が E < 2mgℓの場合は,質点は θ = 0を中心として振動し,E > 2mgℓの場合は,支点のまわりを一方向に回転
し続ける。E = 2mgℓの場合は limt→∞
θ(t) = ±πとなる。
θ
( )U θ
2mgℓ
2E mg> ℓ
2E mg< ℓ
ππ− 0
図 8.2 単振り子の位置エネルギー
2020力学.問 9.1
� �力学 演習問題 No.9
慣性力
★★★★ レポート課題9 ★★★★
出題:6月 9日 (火),提出期限:6月 13日 (土)
配点:小問各3点� �問題 9-1
時速 300 km で走行しているのぞみに非常ブレーキをかけるとする。非常ブレーキをかけてから 1 分後に停止す
る場合に発生するみかけの力は重力の何倍であるかを計算しなさい。ただし,ブレーキをかけている間,速度は
時間の 1 次式で表されると仮定して計算しなさい。また重力加速度の大きさを g = 9.8 m/s2 とする。
問題 9-2 ジェットコースターの乗客が感じる慣性力を計算してみよう。コースの一部分が図 9.1のように
y =A
2x2 (p9.1)
で表されるとする。ここで x軸を水平方向,y軸は鉛直上向きにとる。コースターは x-y平面内を運動する。
x
y
h
0xO
0t =
1t t=
( )tx
図 9.1 ジェットコースターの運動
いま,コースターの受ける空気抵抗やレールとの摩擦が無視できるとすると,コースターの力学的エネルギーが
保存する。位置エネルギー U は,重力加速度の大きさを g,コースターの質量をM とすると U = Mgyとなる。
時刻 t = 0 に高さ h にあるコースターが点(x0, h =
A
2x20
)を初速度 0 で出発した。時刻 t にコースターが点(
x(t),A
2x(t)2
)を通過するときの速度を v(t) = (vx(t), vy(t))とすると,力学的エネルギー保存則より
MgA
2x20 = Mg
A
2x(t)2 +
M
2|v(t)|2 (p9.2)
が成り立つ。コースの最下点 O でコースターの乗客が感じる慣性力を以下の手順で求めよう。
2020力学.問 9.2
(1) コースターは曲線 y =A
2x2上を動くため,速度の x成分 vx =
dx
dtと y成分 vy =
dy
dtには次の関係がある:
vy =dy
dt=
d
dt
(A
2x(t)2
)= Ax(t)
dx(t)
dt. (p9.3)
式 (p9.2)と (p9.3)より時刻 tにコースターが点(x(t),
A
2x(t)2
)を通過するときの vx(t) =
dx(t)
dtを x0,A,
g,x(t) を用いて表しなさい。
(2) (1)で得られた式を tで微分すると,コースターの加速度(d2x(t)
dt2,d2y(t)
dt2
)も x0,A,g,x(t) を用いて表
わすことができる。これらの結果を用いて,コースターに乗った質量 (体重) mの乗客がコースの最下点 O
(x = y = 0)で感じる慣性力の x成分 F inx と y成分 F in
y を求めなさい。ただし,乗客が乗ることによりコー
スターの運動は変わらないとする。
(3) x0 = h = 10 m,A =1
5m−1 のとき,コースターの乗客はコースの最下点 O で慣性力により,自分の体重
を何倍に感じるかを答えなさい。
� �力学 演習問題 No.9 の予備知識� �
・慣性力
静止している直交直線座標系 O-xyz(K系)に対して,原点O’が運動している直交直線座標系 O′-x′y′z′(K′
系)を考える。Oに関する O′ の位置ベクトルを−−→OO′ = r0(t)とすると,K系での運動方程式m
d2r
dt2(t) = F (t)
は K′ 系での位置ベクトル r′(t) = r(t)− r0(t)を用いて
md2r′
dt2(t) = F (t)−m
d2r0dt2
(t)�� ��高木 I (7.12) (p9.4)
と表され,O′ が加速度運動をしている場合には,右辺に−md2r0dt2
(t) = 0という項が追加される。加速度運
動をしている座標系で物体の運動を記述する際に現れるこのような見かけの力を 慣性力 と呼ぶ。
2020力学.問 9.3
� �力学 演習問題 No.9 略解� �
解 9-1
非常ブレーキをかける前ののぞみの速さ v0 は
v0 = 300 km/h =300× 1000
60× 60m/sec =
5
6× 102 m/sec (p9.5)
となる。時刻 t = 0に非常ブレーキがかかり,時刻 t1 = 60 sec に列車が停止したとする。ブレーキをかけている
間,速度は時間の 1 次式で表されるという仮定より,0 < t < t1 での列車の速度は,加速度を αとすると
v(t) = v0 + αt (p9.6)
となる。v(t1) = 0より,
α = −v0t1
= −25
18m/sec
2 ≈ −1.39 m/sec2
(p9.7)
となる。|α|g
≈ 0.14 (p9.8)
より,このときに発生するみかけの力の大きさは重力の約 0.14 倍(7 分の 1 以下)である。
解 9-2 問題では曲線は y =A
2x2 であるが,ここでは少し一般的に考えて,コースターが曲線 y = f(x)上を動
く場合について説明する。f(x)は x = 0で極小になるとする。この場合,力学的エネルギー保存則
Mgf(x0) =M
2|v(t)|2 +Mgf(x) (p9.9)
より
|v(t)|2 = vx(t)2 + vy(t)
2 = 2g(f(x0)− f(x(t))) (p9.10)
が得られる。
(1) この場合 (p9.3)に対応する式は
vy =dy
dt=
d
dtf(x(t)) =
df(s)
ds
∣∣∣∣s=x(t)
dx(t)
dt= f ′(x(t))
dx(t)
dt(p9.11)
となる。ここで f ′(x) =df(x)
dxは f(x)の導関数を表す。(p9.10)と (p9.11)より
2g(f(x0)− f(x(t))) =(1 + (f ′(x(t)))2
)(dx(t)
dt
)2
(p9.12)
なので,
dx(t)
dt= −
√2g(f(x0)− f(x(t)))
1 + (f ′(x(t)))2= −
√gA(x2
0 − x(t)2)
1 +A2x(t)2(p9.13)
となる。最後の等式では f(x) =A
2x2 を代入した。また図 9.1では x(t) > 0でコースターは原点 Oに近づ
いているので,符号は - をとった。
2020力学.問 9.4
(2) 時刻 tにコースターに乗っている質量mの乗客の感じる慣性力は
F in(t) = −m
(d2x(t)
dt2,d2y(t)
dt2
)T
(p9.14)
である。まずd2y(t)
dt2=
d
dt
(f ′(x(t))
dx(t)
dt
)= f ′′(x(t))
(dx(t)
dt
)2
+ f ′(x(t))d2x(t)
dt2(p9.15)
となる。f ′′(x) =d2f(x)
dx2は f(x)の 2階の導関数を表す。
次に,d2x(t)
dt2を計算する。s =
2g(f(x0)− f(x(t)))
1 + (f ′(x(t)))2とおくと
dx(t)
dt= −s1/2 なので,
d2x(t)
dt2= −ds1/2
dt= −ds1/2
ds
ds
dt= −1
2s−1/2 d
dt
(2g(f(x0)− f(x(t)))
1 + (f ′(x(t)))2
)= −1
2s−1/2 d
du
(2g(f(x0)− f(u))
1 + (f ′(u))2
)∣∣∣∣u=x(t)
dx(t)
dt
= −1
2s−1/2 d
du
(2g(f(x0)− f(u))
1 + (f ′(u))2
)∣∣∣∣u=x(t)
(−s1/2) = gd
du
(f(x0)− f(u)
1 + (f ′(u))2
)∣∣∣∣u=x(t)
= g−f ′(u)(1 + (f ′(u))2)− (f(x0)− f(u))2f ′(u)f ′′(u)
(1 + (f ′(u))2)2
∣∣∣∣u=x(t)
= −gf ′(x(t))1 + (f ′(x(t)))2 + 2(f(x0)− f(x(t)))f ′′(x(t))
(1 + (f ′(x(t)))2)2
= −gAx(t)1 +A2x2
0
(1 +A2x(t)2)2(p9.16)
となる。(p9.15)に (p9.13)と (p9.16)を代入すると
d2y(t)
dt2= g
2f ′′(x(t))(f(x0)− f(x(t))− (f ′(x(t)))2 − (f ′(x(t)))4
(1 + (f ′(x(t)))2)2
= gA2x2
0 − 2A2x(t)2 −A4x(t)4
(1 +A2x(t)2)2(p9.17)
が得られる。
時刻 t = t1 でコースターが最下点 O に達する (x(t1) = 0) とすると,f ′(0) = 0 なので,(p9.16) よりd2x
dt2(t1) = 0となり,コースターの加速度は y軸方向であることがわかる。
この結果は力学的エネルギー保存則からも導くことができる。最下点 Oで位置エネルギーが極小,すな
わち運動エネルギーが極大となるが |v(t)|2 = v(t) · v(t) が t = t1 で極大になることから
0 =d
dt|v(t)|2
∣∣∣∣t=t1
= 2v(t1) ·dv
dt(t1) (p9.18)
が得られる。これは最下点Oで加速度ベクトルが速度ベクトルと直交することを意味し,そのとき,速度ベ
クトルは x軸の負の向きなので,加速度ベクトルは y軸方向であることがわかる。
以上から,時刻 t = t1 で質量mの乗客が感じる慣性力は
F in(t1) =(0 , −2mg(f(x0)− f(0))f ′′(0)
)T(p9.19)
であり,
F inx = 0 , F in
y = −2mg(f(x0)− f(0))f ′′(0) = −mgA2x20 (p9.20)
となる。
2020力学.問 9.5
(3) x0 = 10 m,A =1
5m−1 を (p9.20)に代入すると,F in
y = −4mg となるので,質量 m の乗客は重力mgと
合わせて y軸の負の向きに 5mgの力を感じ,体重が 5倍になったように感じる。
(参考) (p9.10)と (p9.20)より,R =1
|f ′′(0)|とすると
|F in| = m|v|2
R(p9.21)
と表せるが,これは半径 Rの円周上を速さ |v|で動く質点にはたらく 遠心力 (円運動をしている座標系に現れ
る慣性力)と同じ形となる (図 9.2)。Rは点 (0, f(0))でのこの曲線の 曲率半径 ,1/Rは 曲率 と呼ばれる。
点 (0, f(0))の近くで曲線 y = f(x)は半径 Rの円と接触するようになっている (図 9.3)。
図 9.2 遠心力�� ��「物理」(啓林館),2017
v
r
a
r
図 9.3 曲線と接触円
2020力学.問 10.1
� �力学 演習問題 No.10
質点系の運動方程式
★★★★ レポート課題10 ★★★★
出題:6月 16日 (火),提出期限:6月 20日 (土)
配点:小問各3点� �問題 10-1 2017年度学力認定試験問題を一部変更
質量がそれぞれm1 = m,m2 = 2m, m3 = mの 3つの質点が,水平な一直線上 (x軸上)を,摩擦力や空気抵抗を受け
ずに運動する。それぞれの質点の時刻 tでの x座標を {xi(t), i = 1, 2, 3}とする。また,常に x1(t) < x2(t) < x3(t)
が成り立つものとする。図 10.1に示すように,質点 1と質点 2はばね定数 k1,自然長 ℓ のばねで,質点 2と質点
3 はばね定数 k2,自然長 ℓ のばねでつながれている。
1m 2m
1( )x t 2 ( )x t
1k ℓ2k ℓ 3m
3( )x t x
図 10.1 ばねにつながれた 3質点
(1) この 3つの質点の運動方程式をそれぞれ書きなさい。
(2) この 3つの質点の時刻 t での質量中心 (重心)の x 座標を xG(t)とするとき,xG(t)の満たす運動方程式を書
きなさい。
(3) 時刻 t = 0 の質点の位置と速度が,それぞれ
x1(0) = 0 , x2(0) =ℓ
3, x3(0) = 2ℓ , (p10.1)
dx1
dt(0) = 2v0 ,
dx2
dt(0) = 0 ,
dx3
dt(0) = −v0 (p10.2)
で与えられるとする (v0 は定数)。このとき,時刻 t (> 0) での質量中心 (重心)の x 座標,xG(t),を求め
なさい。
� �力学 演習問題 No.10 の予備知識� �
・質量中心 (重心)
N 個の質点からなる質点系を考える。j 番目の質点の質量を mj,位置ベクトルを rj とするとき
rG =1
M
N∑j=1
mjrj , M =
N∑j=1
mj
�� ��高木 II (9.1)�� ��戸田 (6.15)
�� ��佐本 (12.36) (p10.3)
で定まる位置をこの質点系の 質量中心 (重心) と呼ぶ。
・質量中心 (重心)の運動方程式
質量中心の運動方程式は
Md2rGdt2
(t) =N∑j=1
F j(t)�� ��高木 II (9.10)
�� ��戸田 (6.14)�� ��佐本 (12.7) (p10.4)
となる。ここに F j は j 番目の質点にはたらく 外力 である。
2020力学.問 10.2
� �力学 演習問題 No.10 略解� �
解 10-1
(1)内力は
f21(t) = −f12(t) = k1(x2(t)− x1(t)− ℓ) , f32(t) = −f23(t) = k1(x3(t)− x2(t)− ℓ) (p10.5)
となる。外力 (の x成分)は 0なので,運動方程式は
md2x1
dt2(t) = f21(t) = k1(x2(t)− x1(t)− ℓ) , (p10.6)
2md2x2
dt2(t) = f12(t) + f32(t) = −k1(x2(t)− x1(t)− ℓ) + k2(x3(t)− x2(t)− ℓ) , (p10.7)
md2x3
dt2(t) = f23(t) = −k2(x3(t)− x2(t)− ℓ) . (p10.8)
(2)
xG(t) =m1x1(t) +m2x2(t) +m3x3(t)
m1 +m2 +m3=
mx1(t) + 2mx2(t) +mx3(t)
4m(p10.9)
なので,(1)の結果より
d2xG
dt2(t) =
1
4m
(md2x1
dt2(t) + 2m
d2x2
dt2(t) +m
d2x3
dt2(t)
)=
1
4m(f21(t) + f12(t) + f32(t) + f23(t)) = 0 (p10.10)
となる。
(3) (p10.10)より xG(t)は等速度運動 (等速直線運動)を行うことがわかる。初期条件は
xG(0) =m · 0 + 2m · ℓ
3 +m · 2ℓm+ 2m+m
=2
3ℓ , (p10.11)
dxG
dt(0) =
m · 2v0 + 2m · 0 +m · (−v0)
m+ 2m+m=
v04
(p10.12)
なので
xG(t) = xG(0) + tdxG
dt(0) =
2
3ℓ+
v04
t . (p10.13)
となる。
2020力学.問 11.1
� �力学 演習問題 No.11
質点系の質量中心 (重心)
★★★★ レポート課題11 ★★★★
出題:6月 23日 (火),提出期限:6月 27日 (土)
配点:小問各3点� �問題 11-1
一様な密度 ρ0 の厚さ d の板で作られた物体が z 軸に垂
直に 0 ≤ z ≤ dの領域内に置かれている。この物体の質
量中心の位置を求めよう。ただし,図 11.1のような 3角
形の板の質量中心の位置が(b− a
3,h
3,d
2
)T
であること
は必要なら用いてよい。
O
x
y
z
a− b
h
図 11.1 板状の物体1
(1)図 11.2の物体2の質量中心の位置を求めなさい。
図 11.3のように大きな 3角形の板の中央が小さな 3角形にくりぬかれた物体3の質量中心の位置を求めたい。
(2) 物体1の質量 M1,物体2の質量 M2,および物体3の質量 M3 を求めなさい。
(3) 図 11.1の物体と図 11.3の物体をあわせると図 11.2の物体になると考えて,物体3の質量中心の位置を求め
なさい。
O x
y
z
h−
2h
2b2a−
図 11.2 板状の物体2
O x
y
z
h−
2h
2b2a−
h
ba−
図 11.3 板状の物体3
� �力学 演習問題 No.11 の予備知識� �
・部分系の質量中心と全体系の質量中心N 個の質点 (j = 1 , · · · , N) からなる質点系を2つの部分,すなわち A グループ (j = 1 , · · · , L) と B グループ(j = L+ 1 , · · · , N)に分ける。Aグループの質量中心を rA,Bグループの質量中心を rB とすると,全体の質点系の質量中心は
rG =MArA +MBrB
MA +MB, MA =
L∑j=1
mj , MB =
N∑j=L+1
mj (p11.1)
となる。
・質量が空間に連続的に分布している場合の質量中心 (重心)
時刻 t の (質量)密度を ρ(r, t)とすると,質量中心の位置ベクトルは次の体積積分 (3重積分)
rG(t) =1
M
∫ ∫ ∫r ρ(r, t)dxdydz (p11.2)
で与えられる。
M =
∫ ∫ ∫ρ(r, t)dxdydz (p11.3)
は全質量を表す。M は時間によって変化しない。
2020力学.問 11.2
� �力学 演習問題 No.11 略解� �
解 11-1
(1) 図 11.2の物体2を y軸の正の向きに hだけ平行移動すると図 11.1で {a → 2a , b → 2b , h → 3h} と置き換
えた3角形になるので,質量中心の位置ベクトルは(2(b− a)
3, h,
d
2
)T
となる。これを y軸の負の向きに h
だけ平行移動して,物体2の質量中心の位置ベクトルが
r2 =
(2(b− a)
3, 0 ,
d
2
)T
(p11.4)
となることがわかる。
(2) 物体1と物体2は3角柱で体積はそれぞれ(a+ b)hd
2と
(2a+ 2b)3hd
2= 3(a + b)hdである。密度は ρ0 な
ので,
M1 =(a+ b)hdρ0
2, M2 = 3(a+ b)hdρ0 = 6M1 (p11.5)
となる。また,
M3 = M2 −M1 = 5M1 =5(a+ b)hdρ0
2(p11.6)
となる。
(3) 物体1および物体3の質量中心の位置ベクトルを,それぞれ r1,r3とすると,(p11.1)より,物体2の質量
中心の位置ベクトルは
r2 =M1r1 +M3r3
M1 +M3(p11.7)
と表される。(p11.5)と (p11.6)を代入した式,
r2 =r1 + 5r3
6, (p11.8)
より,以下が得られる:
r3 =1
5(6r2 − r1) =
(11
15(b− a) , − h
15,d
2
)T
. (p11.9)
2020力学.問 12.1
� �力学 演習問題 No.12
基準振動
★★★★ レポート課題12 ★★★★
出題:6月 30日 (火),提出期限:7月 04日 (土)
配点:小問各3点� �問題 12-1
演習問題 10-1で2つのばねのばね定数が等しい場合 k1 = k2 = kについて考える。
(1) 次の変数 C1,C2 の満たす微分方程式を求めなさい。
C1(t) = x3(t)− x1(t)− 2ℓ , C2(t) = x3(t) + x1(t)− 2x2(t) . (p12.1)
(2) C1 = x3 − x1 − 2ℓ,C2 = x3 + x1 − 2x2 と xG =x1 + 2x2 + x3
4を用いて x1 , x2 , x3 を表しなさい。
(3) 初期条件
x1(0) = 0 , x2(0) = ℓ , x3(0) = 2ℓ ,dx1
dt(0) = 2v0 ,
dx2
dt(0) =
v02
,dx3
dt(0) = −v0 (p12.2)
に対する解 x1(t) , x2(t) , x3(t)を求めなさい。ただし,常に x1(t) < x2(t) < x3(t)が成り立つものとする。
注意 ! 演習問題 10-1で考えた初期条件とは違うことに注意してください。
� �力学 演習問題 No.12 の予備知識� �
演習問題 10-1の内容
・(p10.6)’∼(p10.8)’ 質点の運動方程式:
d2x1
dt2(t) = ω2(x2(t)− x1(t)− ℓ) , (p12.3)
d2x2
dt2(t) = −ω2
2(2x2(t)− x1(t)− x3(t)) , (p12.4)
d2x3
dt2(t) = −ω2(x3(t)− x2(t)− ℓ) . (p12.5)
ここで,ω =
√k
mである。
・初期条件 (p12.2)に対する質量中心 xG =x1 + 2x2 + x3
4の軌道:
xG(t) = ℓ+v02
t . (p12.6)
単振動の解d2C
dt2(t) = −ω2C(t) (p12.7)
の一般解は
C(t) = A cos(ωt) +B sin(ωt) . (p12.8)
初期条件 C(0) ,dC
dt(0)に対しては
A = C(0) , B =1
ω
dC
dt(0) (p12.9)
となる。
2020力学.問 12.2
� �力学 演習問題 No.12 略解� �
解 12-1
(1) (p12.3)∼(p12.5)より
d2C1
dt2(t) =
d2x3
dt2(t)− d2x1
dt2(t) = −ω2(x3(t)− x2(t)− ℓ)− ω2(x2(t)− x1(t)− ℓ)
= −ω2(x3(t)− x1(t)− 2ℓ) = −ω2C1(t) , (p12.10)
d2C2
dt2(t) =
d2x3
dt2(t) +
d2x1
dt2(t)− 2
d2x2
dt2(t)
= −ω2(x3(t)− x2(t)− ℓ) + ω2(x2(t)− x1(t)− ℓ) + ω2(2x2(t)− x1(t)− x3(t))
= −2ω2(x3(t) + x1(t)− 2x2(t)) = −2ω2C2(t) . (p12.11)
従って,C1(t),C2(t) の一般解は
C1(t) = C1(0) cos(ωt) +dC1
dt(0)
1
ωsin(ωt) , (p12.12)
C2(t) = C2(0) cos(√2ωt) +
dC2
dt(0)
1√2ω
sin(√2ωt) (p12.13)
となる。
(参考) この問題のように,新しい変数C1,C2を用いると,連立微分方程式 (p12.3)∼(p12.5)が,独立した単
振動の運動方程式 (p12.12),(p12.13) になる場合,これらの方程式で表される単振動を 基準振動
と呼ぶ。�� ��高木 II §9.3
(2)
x1 = xG − C1
2+
C2
4− ℓ , (p12.14)
x2 = xG − C2
4, (p12.15)
x3 = xG +C1
2+
C2
4+ ℓ . (p12.16)
(3) 初期条件 (p12.2)より
C1(0) = x3(0)− x1(0)− 2ℓ = 0 ,dC1
dt(0) =
dx3
dt(0)− dx1
dt(0) = −3v0 , (p12.17)
C2(0) = x3(0) + x1(0)− 2x2(0) = 0 ,
dC2
dt(0) =
dx3
dt(0) +
dx1
dt(0)− 2
dx2
dt(0) = −v0 + 2v0 − 2
v02
= 0 (p12.18)
なので,
C1(t) = −3v0ω
sin(ωt) , C2(t) = 0 (p12.19)
となる。
(p12.14)∼(p12.16) に (p12.6)と (p12.19)を代入して以下が得られる:
x1(t) =v02
t++3v02ω
sin(ωt) , (p12.20)
x2(t) = ℓ+v02
t , (p12.21)
x3(t) = 2ℓ+v02
t− 3v02ω
sin(ωt) . (p12.22)
2020力学.問 13.1
� �力学 演習問題 No.13
はねかえり係数
★★★★ レポート課題13 ★★★★
出題:7月 07日 (火),提出期限:7月 11日 (土)
配点:小問各3点� �問題 13-1 水平な直線 (x軸)上を運動する質量mの物体と x = 0に位置する壁との衝突を考えよう。物体と壁
とのはねかえり係数を eとする。
衝突の過程を簡単に表すために,壁から物体にはたらく力を以下のように仮定する (図 13.1):
F (x) =
F1(x) = −k1x ; x > 0 , dx
dt > 0
F2(x) = −k2xn ; x > 0 , dx
dt < 0
0 ; x ≤ 0
. (p13.1)
1 1| |F k x=
2 2| | nF k x=
0x
図 13.1 物体と壁との衝突過程を模倣する力
R. Cross,“Impact of a ball with a bat or racket”,
Am. J. Phys. 67,692 (1999) の Fig.1 を転写の上,
説明を追加した。
物体は x < 0の領域から,速度 v0(> 0)で時刻 t = 0に壁と衝突した。その後,物体は時刻 t = t0で x(t0) = x0(> 0)
の位置まで壁に侵入して,(一瞬静止した後)跳ね返され,時刻 t = t1に x(t1) = 0となり壁から離れたとする。物
体にはたらく (x方向の)力は壁からの力だけとする。
(1) 時刻 t = 0から時刻 t = t0 までの間に力 F1 が物体にした仕事
W1 =
∫ t0
0
F1(x(t))dx(t)
dtdt =
∫ x0
0
F1(x)dx (p13.2)
を求めなさい。
時刻 t = t0 での物体の速度は 0なので,(p13.8)より
m
2v20 = −W1 (p13.3)
という関係式が成り立つ。
(2) 時刻 t = t0 から時刻 t = t1 までの間に力 F2 が物体にした仕事
W2 =
∫ t1
t0
F2(x(t))dx(t)
dtdt =
∫ 0
x0
F2(x)dx = −∫ x0
0
F2(x)dx (p13.4)
を求めなさい。
2020力学.問 13.2
時刻 t = t1 での物体の速度を v1(< 0)とすると (p13.8)より
m
2v21 = W2 (p13.5)
という関係式が成り立つ。
また,物体にはたらく力が,物体が折り返す時刻 t = t0 で連続だと考えると
k1x0 = k2xn0 (p13.6)
が成り立つ。
(3) (p13.3),(p13.5)と (p13.6)を用いて,はねかえり係数の関係式,
v1v0
= −e (p13.7)
が成り立つように nを eで表しなさい。
� �力学 演習問題 No.13 の予備知識� �
・運動エネルギーの変化分と仕事
K(t)−K(t0) = W (t) (p13.8)
が成り立つ。ここで,K(t) =m
2|v(t)|2 は時刻 tの質点の運動エネルギー,
W (t) =
∫ t
t0
F (s) · v(s)ds�� ��高木 I (5.4)
�� ��戸田 (3.130)�� ��佐本 (6.22) (p13.9)
は時刻 t0 から t までの間に質点に力 F がした仕事である。単位時間あたりになされる仕事
dW
dt(t) = F (t) · v(t)
�� ��高木 I (5.9)�� ��佐本 (5.33) (p13.10)
を仕事率という。
力が位置の関数 F (r)である場合,(p13.9)は時刻 t0 での質点の位置 r0 = r(t0)から時刻 t での質点の位置
r1 = r(t) までを質点の軌道に沿って結んだ経路についての F (r)の 線積分 となる:
W =
∫ t
t0
F (r(s)) · v(s)ds =∫ t
t0
F (r(s)) · dr(s)ds
ds =
∫ r1
r0
F (r) · dr . (p13.11)
この場合,W の値は,質点が経路をどのような速度で運動するかに無関係となる。
2020力学.問 13.3
� �力学 演習問題 No.13 略解� �
解 13-1
(1)
W1 = −k1
∫ x0
0
xdx = −k1
[x2
2
]x=x0
x=0
= −k12x20 . (p13.12)
なお,(p13.3)より
x0 =
√m
k1v0 (p13.13)
となる。
(2)
W2 = k2
∫ x0
0
xndx = k2
[xn+1
n+ 1
]x=x0
x=0
=k2
n+ 1xn+10 . (p13.14)
(3) (p13.3)と (p13.5)よりm
2v20 =
k12x20 ,
m
2v21 =
k2n+ 1
xn+10 . (p13.15)
また,(p13.6)よりk2k1
xn−10 = 1なので,
e2 =v21v20
=2k2
(n+ 1)k1xn−10 =
2
n+ 1. (p13.16)
以上より nを
n =2
e2− 1 (p13.17)
とすればよい。なお,図 13.1の場合は e = 0.85なので,n = 1.768 · · · となっている。
注意 ! 衝突の過程で物体が失う運動エネルギーは
m
2v20 −
m
2v21 = −W1 −W2 =
∫ x0
0
(k1x− k2xn)dx (p13.18)
となり,図 13-1の 2つの曲線に囲まれた部分の “面積”となる。
注意 ! (p13.6)と (p13.13)より,k1を定数とすると k2の値は物体の入射速度の大きさ v0に依存して変化するこ
とになる。(p13.1)の F (x)は複雑な衝突過程を模倣する仮想的な力と考えるべきである。
2020力学.問 14.1
� �力学 演習問題 No.14
慣性モーメント
★★★★ レポート課題14 ★★★★
出題:7月 14日 (火),提出期限:7月 18日 (土)
配点:小問各3点� �問題 14-1 半径 a,高さ h,密度 ρ0 の質量 M = πρ0a
2h の円柱を考える。配布資料の p.54では円柱の中心軸
が回転軸である場合の慣性モーメントを計算したが,ここでは回転軸が円柱の中心軸から角度 ϕだけ傾いている
場合の慣性モーメントを計算しよう。円柱の質量中心を座標系の原点とし,円柱の中心軸を z 軸とする。回転軸
は y-z平面にあり,z軸から ϕだけ傾いている (図 14.1)。回転軸を向く単位ベクトルは
eϕ = (0 , sinϕ , cosϕ) (p14.1)
となる。
x
y
z
O jm
jℓ
h
a
φ
図 14.1 円柱と傾いた回転軸
(1) 位置 (xj , yj , zj)にある j 番目の質点と回転軸までの距離を ℓj とする。ℓ2j を (xj , yj , zj)と ϕを用いて表し
なさい。
(2) 回転軸が円柱の中心軸から角度 ϕだけ傾いている場合の慣性モーメント Iϕ を以下の積分,
Iϕ =
∫ h/2
−h/2
∫ ∫x2+y2≤a2
ρ0f(x, y, z, ϕ)dxdydz , (p14.2)
で表す。f(x, y, z, ϕ)を求めなさい。
(3) (p14.2)の積分を計算して,Iϕ を求めなさい。必要なら積分変数 (x , y)の極座標への変換:
x = r cos θ , y = r sin θ , dxdy → rdrdθ ,�� ��三宅微積 p.118 (p14.3)
を用いなさい。
2020力学.問 14.2
� �力学 演習問題 No.14 の予備知識� �
・固定軸のまわりに回転するする剛体の慣性モーメント
変形を無視できる物体を 剛体 と呼ぶ。固定軸 (z軸とする)のまわりに角速度 ω(t)で回転する剛体の角運動量
の z成分は
Lz(t) = Iω(t)�� ��高木 II (11.3)
�� ��戸田 (7.6)�� ��佐本 (13.9) (p14.4)
となる。ここに,
I =N∑j=1
mjℓ2j
�� ��高木 II (11.4)�� ��戸田 (7.5) (p14.5)
は剛体の 慣性モーメント と呼ばれる。ℓj =√
x2j + y2j は固定軸から質点までの距離である。質量が連続的に
分布している場合は,慣性モーメントは次の体積積分,
I =
∫ ∫ ∫(x2 + y2)ρ(r)dxdydz (p14.6)
で定まる。ここに ρ(r)は質量密度である。
・ベクトルの内積と外積
2つのベクトルa = (ax , ay , az)T,b = (bx , by , bz)
T の 内積 (スカラー積) は a·bで表し, 外積 (ベクトル積)
は a× b で表す:
a · b = axbx + ayby + azbz , (p14.7)
a× b = (aybz − azby , azbx − axbz , axby − aybx)T. (p14.8)
a · b = |a| |b| cos θ , |a× b| = |a| |b| sin θ (p14.9)
となる。ここで,θは aと bのなす角度。
2020力学.問 14.3
� �力学 演習問題 No.14 略解� �
解 14-1
(1) 位置ベクトル rj = (xj , yj , zj)と回転軸との間の角度を αj(0 ≤ αj ≤ π)とすると,ℓj = |rj | sinαj とな
るので,ベクトルの外積の性質より
|rj × eϕ| = |rj ||eϕ| sinαj = |rj | sinαj = ℓj . (p14.10)
一方,rj × eϕ を成分で計算すると
rj × eϕ = (xj , yj , zj)× (0 , sinϕ , cosϕ) = (yj cosϕ− zj sinϕ , −xj cosϕ , xj sinϕ) (p14.11)
となるので,以下が得られる:
ℓ2j = |rj × eϕ|2 = (yj cosϕ− zj sinϕ)2 + x2
j cos2 ϕ+ x2
j sin2 ϕ = (yj cosϕ− zj sinϕ)
2 + x2j
= x2j + y2j cos
2 ϕ+ z2j sin2 ϕ− 2yjzj sinϕ cosϕ . (p14.12)
なお,ベクトルの内積の性質,
rj · eϕ = |rj ||eϕ| cosαj = |rj | cosαj (p14.13)
より,
ℓ2j = |rj |2 sin2 αj = |rj |2 − |rj |2 cos2 αj = |rj |2 − (rj · eϕ)2 = x2j + y2j + z2j − (yj sinϕ+ zj cosϕ)
2
= x2j + y2j (1− sin2 ϕ) + z2j (1− cos2 ϕ)− 2yjzj sinϕ cosϕ
= x2j + y2j cos
2 ϕ+ z2j sin2 ϕ− 2yjzj sinϕ cosϕ (p14.14)
と計算してもよい。
(2) (p14.5)より
Iϕ =∑j
mjℓ2j =
∑j
mj
(x2j + y2j cos
2 ϕ+ z2j sin2 ϕ− 2yjzj sinϕ cosϕ
). (p14.15)
以下の置き換え, ∑j
→∫
, mj → ρ(r)dxdydz , xj → x , yj → y , zj → z , (p14.16)
を行って
Iϕ =
∫ ∫ ∫ρ(r)
(x2 + y2 cos2 ϕ+ z2 sin2 ϕ− 2yz sinϕ cosϕ
)dxdydz (p14.17)
が得られる。従って,
f(x, y, z, ϕ) = x2 + y2 cos2 ϕ+ z2 sin2 ϕ− 2yz sinϕ cosϕ . (p14.18)
2020力学.問 14.4
(3) 極座標への変換 (p14.3)を行うと
Iϕ = ρ0
∫ h/2
−h/2
dz
∫ a
0
dr
∫ 2π
0
dθ r(r2 cos2 θ + r2 sin2 θ cos2 ϕ+ z2 sin2 ϕ− 2rz sin θ sinϕ cosϕ)
= ρ0
∫ a
0
dr
∫ 2π
0
dθ r[r2(cos2 θ + sin2 θ cos2 ϕ)z +
z3
3sin2 ϕ− rz2 sin θ sinϕ cosϕ)
]z=h/2
z=−h/2
= ρ0
∫ a
0
dr
∫ 2π
0
dθ r[r2(cos2 θ + sin2 θ cos2 ϕ)h+
h3
12sin2 ϕ
]. (p14.19)
cos2 θ =1 + cos(2θ)
2, sin2 θ =
1− cos(2θ)
2(p14.20)
を用いて,
Iϕ = ρ0
∫ a
0
dr
∫ 2π
0
dθ r[r2h
2
(1 + cos(2θ) + (1− cos(2θ)) cos2 ϕ
)+
h3
12sin2 ϕ
]= 2πρ0
∫ a
0
dr(r3h
2(1 + cos2 ϕ) + r
h3
12sin2 ϕ
)= 2πρ0
[r4h
8(1 + cos2 ϕ) + r2
h3
24sin2 ϕ
]r=a
r=0
=πρ0a
2h
12
(3a2(1 + cos2 ϕ) + h2 sin2 ϕ
)=
πρ0a4h
2
(1 +
h2 − 3a2
6a2sin2 ϕ
). (p14.21)
円柱の質量M = πa2hρ0 を用いると
Iϕ =Ma2
2
(1 +
h2 − 3a2
6a2sin2 ϕ
)(p14.22)
となる。
円柱の中心軸から回転軸を傾けると慣性モーメントは h >√3 aの場合は増加し,h <
√3 aの場合は減
少する。
2020力学.問 15.1
� �力学 演習問題 No.15
剛体の運動
★★★★ レポート課題15 ★★★★
出題:7月 21日 (火),提出期限:7月 25日 (土)
配点:小問各3点
問題の解説は 7月 28日 (火)に行います。� �問題 15-1 半径 a,高さ h,密度 ρ0 の質量 M = πρ0a
2h の円柱の粗い水平面上の運動を考える。簡単のために
円柱の高さ hの影響は無視できるとする。図 15.1に示すように,水平面上に x軸をとり,円柱の中心軸は水平面
に平行で x軸と垂直とする。時刻 tの円柱の質量中心の x座標を xG(t),円柱の時計回りの回転角を θ(t)とする。
F
a
h
0ρ
θ
x
図 15.1 粗い水平面上の円柱の運動
時刻 t = 0に円柱を回転させずに,質量中心の速度 (の x成分)が v0(> 0)となるように滑らせた:
dxG
dt(0) = v0 ,
dθ
dt(0) = 0 . (p15.1)
(1) t = 0から t = t1(t1 > 0)の間,円柱は水平面上を滑りながら転がる。この間,水平面から円柱には一定の動
摩擦力
F = (−f , 0 , 0) , f > 0 (p15.2)
が水平面との接触点にはたらくとする。質量中心の運動方程式と θの時間変化を定める方程式を
Md2xG
dt2(t) = (ア) , (p15.3)
Id2θ
dt2(t) = (イ) (p15.4)
とするとき,(ア)および (イ)に入る式を書きなさい。ここで,I =Ma2
2は円柱の慣性モーメントを表す。
(2) 時刻 t で,水平面と接触する円柱の点の速度 (の x成分)は
dxG
dt(t)− a
dθ
dt(t) (p15.5)
となる。dxG
dt(t)は減少し,
dθ
dt(t) は増加するので,時刻 t = t1 で接触点の速度は 0となり,その後は円柱
は滑らずに転がり始める。時刻 t1 を求めなさい。
(3) 円柱の運動エネルギー
K(t) =M
2
(dxG(t)
dt
)2
+I
2
(dθ(t)
dt
)2
(p15.6)
の時刻 t = 0から時刻 t = t1 までの変化量K(t1)−K(0)を求めなさい。
2020力学.問 15.2
� �力学 演習問題 No.15 略解� �
解 15-1 鉛直上向きに y軸,紙面に垂直に裏から表向きに z軸をとる。円柱の質量中心は x-y平面上を運動する:
rG(t) = (xG(t) , a , 0)T . (p15.7)
円柱にはたらく外力は円柱を構成する各質点にはたらく重力,円柱と水平面との接触点 A:(xG(t) , 0 , 0)T にはた
らく垂直抗力 FN = (0 , FN , 0)T と動摩擦力 F = (−f , 0 , 0)T でなる。
(1) 質量中心の運動方程式の x成分は
Md2xG
dt2(t) = −f (p15.8)
なので,(ア)= −f となる。
質量中心のまわりの外力による力のモーメントN ′ は
N ′ = (rA − rG)× (FN + F ) = (0 , −a , 0)T × (−f , FN , 0)T = (0 , 0 , −af)T (p15.9)
となる。質量中心のまわりの角運動量 L′ は
L′ =
(0 , 0 , −I
dθ
dt
)(p15.10)
である。θは円柱の時計回りの回転角なので,L′の z成分に−がつくことに注意。dL′
dt= N ′,(49.7)より
Id2θ
dt2(t) = af (p15.11)
が得られる。従って (イ)= af である。
なお,次に示すように円柱を構成する各質点にはたらく重力はN ′に寄与しない:j番目の質点の質量をmj,
質量中心からの相対的な位置ベクトルを r′j,重力加速度の大きさを g とすると
∑j
r′j ×mj(0 , −g , 0)T =
∑j
mjr′j
× (0 , −g , 0)T(39.3)= 0× (0 , −g , 0)T = 0 . (p15.12)
(2) 運動方程式 (p15.3),(p15.3)の初期条件 (p15.1)を満たす解は
dxG
dt(t) = v0 −
f
Mt ,
dθ
dt(t) =
af
It (p15.13)
となる。従って
t1 =Mv0f
I
I +Ma2=
Mv03f
. (p15.14)
最後の等式では I =Ma2
2を代入した。
(3)
K(0) =M
2
(dxG
dt(0)
)2
+I
2
(dθ
dt(0)
)2
=M
2v20 . (p15.15)
(p15.14)よりdxG
dt(t1) = v0
Ma2
I +Ma2=
2v03
,dθ
dt(t1) =
v0a
Ma2
I +Ma2=
2v03a
. (p15.16)
2020力学.問 15.3
従って
K(t1) =M
2
(dxG
dt(t1)
)2
+I
2
(dθ
dt(t1)
)2
=Mv202
Ma2
I +Ma2=
2
3
Mv202
. (p15.17)
以上より,
K(t1)−K(t0) = −Mv202
I
I +Ma2= −1
3
Mv202
. (p15.18)
円柱が t = 0で持っていた運動エネルギーの1
3が動摩擦力のために失われることがわかる。
注意 ! 剛体の運動エネルギーの変化と仕事の関係
運動方程式 (p15.3),(p15.4)より,
d
dtK(t) = M
d2xG
dt2dxG
dt+ I
d2θ
dt2dθ
dt= −f
(dxG
dt− a
dθ
dt
). (p15.19)
動摩擦力 F = (−f , 0 , 0)T がはたらく点 Aの速度は vA =
(dxG
dt− a
dθ
dt, 0 , 0
)T
なので,
d
dtK(t) = F · vA . (p15.20)
これより,円柱の運動エネルギーの変化が動摩擦力が円柱に行う仕事W で表されることがわかる:
K(t)−K(0) = W , W =
∫ t
0
F · vA(s)ds . (p15.21)
注意 ! 剛体の持つ力学的エネルギー
通常,質点系の力学的エネルギーは
E =
N∑j=1
mj
2|vj |2 +
∑j =k
U(|rj − rk|) +N∑j=1
Uex(rj) (p15.22)
と表される。ここで,U(|rj − rk|)は j 番目と k番目の質点間にはたらく内力の位置エネルギー,Uex(rj)は j 番
目の質点にはたらく外力の位置エネルギーを表す。
剛体の場合は,j 番目と k番目の質点間の距離 |rj − rk| は時間によって変化せず,内力の位置エネルギーは定数となるので考えなくてよい。運動エネルギーは質量中心の運動エネルギーと質量中心のまわりの回転運動の運動
エネルギーの和となる:N∑j=1
mj
2|vj |2 =
M
2
∣∣∣∣drGdt∣∣∣∣2 + 1
2ωT Iω . (p15.23)
ここで ωは角速度ベクトル,I は慣性モーメントを表す。I は一般には 3行 3列の行列となる。
外力が重力だけの場合は外力の位置エネルギーは
N∑j=1
Uex(rj) =
N∑j=1
mjgzj = MgzG (p15.24)
となり,質量中心の座標で表される。ここで z 軸を鉛直上向きにとった。従って,外力が重力だけの場合の剛体
の力学的エネルギーは以下で表される:
M
2
∣∣∣∣drGdt∣∣∣∣2 + 1
2ωT Iω +MgzG . (p15.25)