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  • 昭和44年9月30日 第三種郵便物認可 禁無断転載 Ⓒ海事プレス社2019 日刊、但し土・日・祝日は休刊

    医薬品物流特集毎日6800人を航空輸送が救うバイオ医薬物流は世界166億ドル市場へ

    プロダクト編

    アイ・ティ・イー大隅物流バキュテック・ジャパン航空編

    成田国際空港会社全日本空輸カーゴルックス航空

    OLT編

    平野ロジスティクス物流企業編

    日本通運近鉄エクスプレス西濃シェンカーワコン日陸ユニトランス

    2019

    KIX Pharmaコミュニティ日本初、「チーム空港」でCEIV認証関西エアポート/CKTS/日航関西エアカーゴ・システムボロレ・ロジスティクス/郵船ロジスティクス

    KIX Pharmaコミュニティ

    Transport & Logistics NewsKAIJI PRESS CO.,LTD.

    2019年7月3日

  • 医薬品物流特集2019 第3種郵便物認可 2019年7月3日(水)2

    毎日6800人を航空輸送が救うバイオ医薬物流は世界166億ドル市場へ

    会社、上屋・ハンドリング会社、運輸会社に徐々に拡大、浸透。6月下旬時点では、日本地点、日系企業も含めて合計258件の認証がアクティブになっている。  同認証 の 有効期間は3年。GDPなど規制内容は変化する。都度変更された規制内容を反映させた「再試験」を繰り返すことで、SCの品質水準を常に更新して向上する仕組みとなっているのも同認証の特長だ。

    客観的評価がトレンド

     一般的に「輸送コストも品質も高い」というのが航空輸送のイメージだろう。しかしこの品質、どのように客観的に証明することができるのか。欧州連合(EU)、世界保健機関(WHO)などによるGDP(医薬品の適正流通基準)を中心に、第三者目線での“品質保証”が世界のスタンダードとなってきている。日本では厚生労働省が昨年末に「GDPガイドライン」を発

    出。もはや海外のトレンドにはとどまらない。 航空貨物業界では、IATAが独自に作成した医薬品輸送品質認証「CEIVファーマ」が世界で広がりを見せている。IATAのハンドリング基準に加え、WHO、EUなどのGDPや各国レギュレーションを反映させた内容となっており、現状、医薬品国際航空輸送における世界で唯一の国際水準だ。14年に認証プログラムが始動してから現在まで、世界の物流会社、航空

     厳格な温度管理など繊細な取り扱いが求められる医薬品の国際輸送は、その速度と効率性の高さから航空利用の比率が高い。国際航空運送協会(IATA)によると、特に航空依存度が高いのがワクチンで、航空輸送により毎日およそ6849人、年間250万人の命が救われているという。 温度管理バイオ医薬品物流に投じられる費用は、世界で年間134億ドル(約1兆4472億円、1ドル=108円換算)。これが2021年までには年間166億ドル(1兆7928億円)の巨大市場に拡大すると試算されている。

  • 医薬品物流特集20192019年7月3日(水) 第3種郵便物認可 3

    「日本の医薬品物流の要衝として」関西エアポートグレゴリー・ジャメ専務

     ―まだ参加していない企業が多くある。 ジャメ CEIVファーマ認証のネッ トワーク構築という観点では、もっとグランドハンドリングを巻き込んでいく必要がある。まずはグラハン会社が取得することが重要だ。当空港では貨物取扱量でトップシェアの日航関西エアカーゴ・システム

    (JALKAS)を筆頭に、ANA Car go、CKTS、スイスポートジャパン―の4社が拠点を構えている。大手フレイトフォワーダーでもまだ未取得のところがある。そういう企業を対象に、コミュニティの輪を拡大していきたい。 ―医薬品の分野では国際的な業界団体にも参加している。 ジャメ そうだ。昨年3月に国際 的な医薬品航空輸送の独立協会「フ ァーマ・ドット・アエロ(Pharma.Aero)」に加盟している。主な構成員は世界の空港、航空会社、物流会社。そしてジョンソン・エンド・ジョンソン、MSDおよびファイザーが会員となっている。世界大手製薬メーカーが、グローバルな航空輸送に対する率直な意見を聞く場でもあり、海外の他空港と情報交換をする場にもなっている。

     ―なぜ、「KIX Pharmaコミュニティ」なのか。 ジャメ さまざまな航空輸送品目のうち、医薬品は、最も運用が厳格なルールに縛られているからだ。同時に、高付加価値をもたらすもの。エアカーゴ・ビジネスの上で、非常に重要だ。医薬品は、重量ベースでは当空港発着貨物全体の1%だが、金額ベースでは6.5%を占める。過去数カ月、荷動きの悪さは続くが、当空港発着の医薬品トレードにその陰りはない。高齢化社会の世の中だ。製薬セクターの産業が大きい関西圏を後背地に抱え、この数字はますます大きくなるだろう。 関西空港に付加価値を付け、より魅力的にする。そのためには、とにかくイノベーションこそが重要と考えている。コミュニティベースの取り組みは、その一部だ。ニーズがあれば、医薬品以外でも展開していく。 ―コミュニティでKAPが担う役割は。 ジャメ 「KIX Pharmaコミュニ ティ」は、一つの産業に焦点を当て、空港を軸とする貨物コミュニティとして日本初のものだ。この取り組みにおいて当空港は事務局となり、

    促進役を担う。(国際航空運送協会<IATA> の 医薬品輸送品質認証

    「CEIVファーマ」は)世界に拡大される必要がある。国際空港の一つ、関空で同認証を取得することは、事業者にとり、新しいサービス開発など様々な活用につながる。 コミュニティではコンペティター同士がともに取り組む必要がある。これを働きかけ、アレンジすることができるのは空港だけだ。 ―多様な展開を考えている。 ジャメ そうだ。すでに認証取得支援だけでなく、インターフェックスジャパン(7月3~5日東京ビッグサイト、リードエグジビションジャパン主催)への共同出展など、プロモーション活動支援も展開している。啓もう活動も拡大していきたい。今のところ、製薬企業など向け荷主セミナーは大阪での開催にとどまっているが、今後は全国に活動範囲を広げる。 また、厚生労働省が昨年末に発出した「GDP(医薬品の適正流通基準)ガイドライン」の動向も見ながら、しかるべきタイミングで必要な対応をしていく。空港会社として、施設などインフラ投資もしっかり行う。

     「KIX Pharmaコミュニティ」(4~7頁に詳細)発足から2年。関西エアポート(KAP)のグレゴリー・ジャメ専務執行役員最高商業責任者

    (航空担当)はその動機について「多くの製薬会社の本社が集積する関西圏で、日本の医薬品国際物流における要衝となり、リーダーシップをとってきたという自負がある」と説明する。業種を横断して構成するコミュニティの成功には、空港側の主体的な働きかけが必須だという考えを強調する。 (文中敬称略)

  • 医薬品物流特集2019 第3種郵便物認可 2019年7月3日(水)4

    びKIX-Medica庫内作業も含め、自社展開の恰好。今年4月に関西エアカーゴセンター(KACC)と合併したことで、従来、同社に委託していた現場業務が自社展開となったことで、均一さを担保しやすい体制となった。 KIX-Medica の 概要 は、床面積750平方メートル、管理温度帯は①プラス20度(床面積約650平方メートル)②プラス5度(約100平方メートル)―の2区画。取扱最大容量は月間約1200トン。

      関西空港 の 医薬品専用共同定温庫「KIX-Medica」を管理・運営するCKTSは6月1日付でIATAのCEIVファーマ認証を取得。同倉庫では、基本営業時間8~24時のすべての時間帯に、IATAによる研修を受けた医薬品取り扱い担当8人のうち4人が顧客との貨物情報管理、4人が現場作業従事者として常に対応可能な体制をとる。「今後は専任者を配置することで、医薬品ハンドリング専任として単独組織化したい」(入江佳津夫関西空港オペレーションセンター・カーゴオペレーション部長)とする。 温度管理を必要とする医薬品の輸出入需要は今後、増加していくと見ている。「医薬品取扱比率は8対2で輸入が多い。しかし、手元では輸出も増えている」という。現在、KIX-Medicaを利用しての医薬品の温度管理

    荷役業務にあたる4人は、隣接する輸入部門の所属で、需要に応じて輸出にも対応する。輸入貨物ハンドリングの通常業務に加えて、医薬品に対応している。 医薬品では、指示担当者、作業現場と担当を分けているが、現場作業が集中すると、スムーズな荷役に支障が出る可能性がある。「医薬品専任チームとして人員を配置することで、現場の負担を低減し、スムーズで迅速な対応力の安定化につながる」とする。「現状に満足せず、良かれを実現していく」という精神のもと、変化する環境への対応力をつけていく考えだ。 CEIVファーマ認証では、サプライヤー(業務委託先)による作業も含め、IATA水準の確保、管理が求められる。CKTSでは、輸出入上屋およ

    KIX-Medica担当を独立組織へ■CKTS

    入江佳津夫部長

    日本初、「チーム空港」でCEIV認証 「KIX Pharmaコミュニティ」立ち上げから2年。ついに参加企業6社すべてが、関西空港で、国際航空運送協会(IATA)の医薬品輸送品質認証「CEIVファーマ」を取得した。コミュニティベースのアプローチでは日本初の事例となった。昨年9月15日付で郵船ロジスティクスが

    取得したのを皮切りに、今年3月31日付でボロレ・ロジスティクス・ジャパン、4月30日付で三菱倉庫、6月1日付で日航関西エアカーゴ・システム、阪急阪神エクスプレス、CKTSと続いた。 コミュニティ形成のメリットは、複数社が合同で研修を開

    KIX Pharmaコミュニティ

  • 医薬品物流特集20192019年7月3日(水) 第3種郵便物認可 5

    月かけて、IATA研修終了社員によるトレーニングを実施した。 施設面では、輸出上屋には医薬品専用庫(プラス5度)35平方メートル、輸入上屋に同(プラス20度)162平方メートルを整備。輸入では冷蔵庫(プラス5度)380平方メートル内にも一部、医薬品専用区画を確保。24時間体制で運用し、アクティブ・コンテナにも対応している。

     日航関西エアカーゴ・システム(JALKAS)は6月1日付で、日本 の航空会社上屋として初めてIATAのCEIVファーマ認証を取得した。川原育也企画総務部部長(医薬品輸送担当)は「同認証取得は必須だった。荷主企業が同認証取得済みフォワーダー、エアラインを起用しても、航空会社上屋としてのグランドハンドラーが取得していなければ意味がなくなってしまう」と意義を強調する。 医薬品物流サプライチェーン(SC)で担う役割は小さくない。貨物ハンドリング業務を受託する航空会社数は合計32社と国内最大規模。すでに同認証取得済みの顧客もあり、JALKASが取得することで、高水準の医薬品輸送SC拡大に大きく寄与する。「特に関西圏には大手製薬メーカーの拠点が多い。高度な医薬品ハ

    ンドリングサービスは高付加価値となり、差別化につながる」と事業拡大余地にも期待感を示す。 川原部長は「IATAによる全世界調査では、医薬品の航空輸送途上で生じる温度逸脱事故のうち、57%が空港周辺で発生していると言われている。今回のCEIVファーマ認証取得に関しては、当社の業務範疇での事故発生を完全に抑制すべく、貨物の取り扱い体制をゼロベースで作り上げた」とする。上屋運営管理、輸出入貨物のハンドリングと、受託から搬出まで、担当業務範囲が広範にわたることで、認証取得のためのチェック項目は290を超えた。 最も時間をかけた作業の一つが従業員研修だ。上屋内荷役や温度管理など、業務委託先サプライヤーも含め、合計500人以上を対象に、3カ

    航空会社上屋で日本初取得■日航関西エアカーゴ・システム

    (写真手前・左から)企画総務部の青木洋係長(医薬品輸送担当)、川原育也部長(同)、(奧)影林和樹氏(同)

    催するなど、認証取得プロセスの合理化、効率化、認証取得コスト低減にある。同認証取得フェーズは、大きく①準備(Preparation)②評価、ギャップ分析(Assessment)③検証(Validation)、の4段階。これら一連のプロセスと同時進行で、IATAのトレーナーによる従業員トレーニングが必要だ。評価、検証段階では、いずれも、IATAの指定する第三者検証機関(インディペンデント・バリデーター)による対象企業ごとの個別評価、検証がなされる。 「KIX Pharmaコミュニティ」の例では、参加企業が同認証を取得する過程すべてで、関西エアポートがIATAお

    よび6社間のコミュニケーションで仲介役を担うなど支援を行っていた。 同認証取得支援を目的とするコミュニティは、これまで海外で先行して進んでいた。ブリュッセル空港で2014年に形成されたのが世界初。現在までに、シンガポール、アムステルダム、香港などで、世界20例以上ある。日本では関空が初だが、成田空港でも成田国際空港会社(NAA)が中心となり、同様の取り組みを進めていく(13頁に詳細)。 ここでは、「KIX Pharmaコミュニティ」参加企業の医薬品物流への取り組みを紹介する。

  • 医薬品物流特集2019 第3種郵便物認可 2019年7月3日(水)6

    発を行っている。さらに同様の拠点をシンガポールに設ける計画もあるという。アジア特有のニーズを考慮したサービスや顧客サポート体制を構築する狙いで、2020年をめどに開設したいとの意向だ。 日本法人も独自にニーズへの対応を図っていく。直近では小ロットの輸送ニーズが増加しており、温度管理についても従来のアクティブ型から少量の貨物で利用できるパッシブ型の容器や梱包ソリューションが、より求められているという。パートナーと連携しながら顧客ニーズに対応できるサービスラインナップを拡充していく。

     ボロレ・ロジスティクスの日本法人ボロレ・ロジスティクス・ジャパンは3月に国際航空運送協会(IATA)の医薬品輸送品質認証「CEIVファーマ」の認証を関西国際空港で取得した。日本での医薬品の取り扱いを目的に2拠点目の認証拠点として羽田での取得も予定しており、年内の取得を目指す意向だ。 ボロレ・ロジスティクスは医薬品の取り扱いが多く、医療医薬関連のヘルスケア部門が売り上げの9%を占めており、日本法人も同等の割合となっている。特にヘルスケアは市場成長とシェア拡大が見込めることから、グループとして先行投資が大きい分野の1つとなっている。 強化策の一貫として、グループでCEIVファーマの取得を進めている。医薬品の輸送では温度管理をはじ

    め、厳格な品質管理が求められる。同社はヘルスケア関連の需要が多いすべての主要都市で同認証を取得し、エンド・ツー・エンドでの品質管理ニーズに応える方針だ。現在、パリ、ブリュッセル、フランクフルト、リスボン、シンガポール、上海、ソウル、メルボルン、そして関西の9拠点で取得。さらに年内にグローバルで取得拠点を10カ所増やす計画で、そのうち1つが羽田となっている。 CEIVファー マを ベ ー スにしたGDP対応の輸送オペレーションに加え、高度化する顧客ニーズに対応していく。昨年6月には、フランス・リヨンに研究開発(R&D)拠点「ヘルスケア・コンピタンス・センター」を開設。5人の専任チームにより、市場や規制の動向調査、グループの知見・ノウハウを集約したソリューションの開

    羽田でもCEIV認証取得予定■ボロレ・ロジスティクス

    藤河達也大阪支店長㊧と梅澤吾郎営業部長

     商品価額が億単位になることもあるという。航空輸送される医薬品輸送では、細かい輸送条件、取り扱い基準が設定されることが通例だ。責任の所在明確化は、CEIVファーマ認証でも強く求められる要素の一つ。一連の医薬品物流サプライチェーンの中でイレギュラーが生じた際、どこに責任を問うことができるのか。 グローバルな動きで一つ興味深いのは、今年4月

    に、スイスの温調コンテナ・プロバイダーのスカイセルが、輸送時の商品損失に対する包括保険を導入すると発表したことだ。医薬品向け温調コンテナ利用での航空輸送時に発生するロスを補填することが目的で、コンテナ当たり最大400万ドル(約4億4400万円、1ドル=111円換算)を保証する内容。同社によると、医薬品向け温調コンテナで同種の保険サービスは世界初だった。

    責任所在明確化、コンテナ保険も

  • 医薬品物流特集20192019年7月3日(水) 第3種郵便物認可 7

    の提案に役立てている。 そのほか、医薬品輸送において近年はコスト削減のために航空から海上輸送への移行を要望する声も増えている。海上輸送においても、航空輸送と同様の温度管理を提供している。医薬品品質管理チームでは、船社と品質保持契約を結び、コンテナのメンテナンス状況などを監査するとともに、原則的に利用開始から数年以内のコンテナに利用を限定するなど対策を講じている。

     郵船ロジスティクスは高度な品 質管理が求められる医薬品輸送に おいて自主的な管理基準「Yusen Global GDP(医薬品の適正流通基準) Standard」を設けて対応している。同基準は欧州版GDPを基本として、オペレーションを文章に落とし込んだものを取り入れて構成した。同社は今年度中を目標に世界20拠点以上でGDPに準拠する拠点の確立を目指しており、グローバルでの高品質な医薬品輸送を展開している。 同社では自主基準に基づいたオペレーション体制の構築を推進している。例えば、欧州では、オランダ、イギ リス、ベルギー、ドイツなど実績のある拠点に加えて、イタリアや、フランスなどこれまで同地域の中では比較的医薬品の取り扱いが少なかった拠点でも同基準に基づいた品質管理体

    制を目指してトレーニングを開始。先月からは南米(ブラジル、ウルグアイ)の拠点でもGDP準拠に向けた品質管理体制の構築を開始している。 輸送品質の高さを証明するため、第三者機関のGDP認証も取得してきた。昨年10月には関西国際空港で国際航空運送協会(IATA)の医薬品輸送品質認証「CEIVファーマ」を取得。同認証の取得は日系フォワーダーでは国内初だった。 サービス面では、あらゆるリスクを最小限にとどめるべく、輸送プランを策定し、高度な医薬品輸送ソリューションを提供している。昨年からは輸送ルートや経由地などで予測される温度逸脱、盗難などのリスクを試算するシステムを導入した。同システムに自主基準に基づいて評価した監査結果などを反映させ、最適なルート

    自主GDP基準で品質管理■郵船ロジスティクス

    写真左からグローバルヘッドクオータービジネスデベロップメントグループ1ヘルスケアチームの増子浩チーム長、同チームの上甲絵梨氏、東日本第二営業本部産業第二支店医薬品営業課宇田川貴司課長

  • 医薬品物流特集2019 第3種郵便物認可 2019年7月3日(水)8

    ▶プロダクト編◀

    高まる「パッシブ」人気

    リー・システム」は、マイナス35度~プラス25度 の 温度に設定可能な蓄冷プレートを使うもの(9頁に関連記事)。一方、バキュテック製品には、真空断熱パネルと潜熱蓄熱材

    (PCM)を組み合わせたシステムが採用されている(11頁に関連記事)。ともに、蓄冷プレート、PCMの種類で設定温度を調整する仕組みだ。 温度管理を要する医薬品輸送での利用を想定したツールでは、超小型インジケーターや、ブルートゥース搭載ロガーなど、さまざまな技術が商品化されてきている。

     同ガイドラインでは、これまで国内になかった、医薬品の市場出荷後、薬局、医薬品販売、医療機関にわたるまでの医薬品の仕入れ、保管および供給業務の品質管理基準が示されている。日本製薬団体連合会(日薬連)品質委員会によれば、温度管理と、トレーサビリティを含む偽造医薬品の対策―の二つが大きなポイントとなる。国際輸送を網羅する内容ではないが、同ガイドライン発出を契機に荷主企業の物流基準明確化、より一層の厳格化を求める意識は高まってきているようだ。

     医薬品の温度管理航空輸送を支えるツールは多岐にわたる。温度管理輸送容器では、スウェーデンのエンバイロテイナー製「RKNe1」(LD3航空コンテナ型)に代表されるような、電源を利用する「アクティブ」、電源を使用しない「パッシブ」の大きく2つに分類される。パッシブでは近年、航空ULD(ユニット・ロード・デバイス)規格ではないものが増えてきた。航空パレットに積み付けて使用するコンテナ型から小さなボックス型ま

    日本でもGDP、貿易量は増加基調

     医薬品貿易は緩やかながらもプラス基調にある。財務省貿易統計によると、2018年(1~12月)の医薬品(概況品コード507に属する)の貿易額 は 前年比11.3 % 増 の2兆9432億円。重量で見ると、輸入は前年比0.9%増の10万2110トン、輸出は0.7%増の4万3205トンで、いずれも3年連続プラスで過去最高を更新している(グラフ参照)。 そのうち、主要空港では、成田空港の輸出が6.7%増の2357トン、関西空港が29.8%増の1576トン。比較的規模が大きい輸入では、関空が昨年9月の台風被害の影響もあり16.4%減の5114トンとなったが、成田では29.2%増の7967トンだった。世界的に少子高齢化の傾向にあ

    で、今や選択肢はさまざま。輸送中、蔵置中の電源設備を気にせず使用できる点や、容器サイズの多様さが魅力で、近年パッシブの人気が増しているようだ。 テクノロジーは日進月歩。温度管理技術もさまざまだ。アクティブの例を見ると、「RKNe1」では電気式温冷空調システムにより、ゼロ度~プラス25度の任意の設定温度を維持する。ほかにも、米シーセーフの「CSafe RKN」、独DokaSchの「Opticooler」などがアクティブ式航空コンテナとして有名だ。いずれも、コンセント設備さえあれば、時間を気にしなくてもよいというメリットがある。 パッシブでは、メーカーによりさまざまな温度管理システムが存在する。アイ・ティ・イーの「アイスバッテ

    り、さらにこの数字は拡大していくと見込まれる。 需要拡大も手伝い、流通、輸送品質への注目度はますます高まる。厚生労働省が昨年末に発出した「GDPガイドライン」の分担研究者を務める、金沢大大学院の木村和子医薬保険学総合研究科特任教授・薬学博士は、医薬品サプライチェーンにおける物流セクターの役割について「(医薬品の)有効性、安全性―これをそのまま保持することだ」(6月に大阪で開催した「KIX Pharmaコミュニティ」の会見で)と述べている。

    バキュテック製品はいわゆる「パッシブ」。近年ではボックス型の需要が強いという(同社提供)

    「RKNe1(LD3型)」は「アクティブ」の代表的な温調航空コンテナだ(写真・エンバイロテイナー)

    過去10年の医薬品貿易重量推移(財務省貿易統計。概況品コード507で抽出)

    2040

    60

    80

    100120

    2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018(年)

    (千トン)

    輸出(全国分)

    輸入(全国分)

    (千トン)

    輸入(全国分)輸入(全国分)輸入(全国分)輸入(全国分)輸入(全国分)輸入(全国分)輸入(全国分)

    輸出(全国分)輸出(全国分)輸出(全国分)輸出(全国分)輸出(全国分)輸出(全国分)輸出(全国分)輸出(全国分)

  • 医薬品物流特集20192019年7月3日(水) 第3種郵便物認可 9

    持続できる設計だ。 ガルグ社長兼CEOは「単なる保冷システム・メーカーの枠を超え、食品、医療の定温物流ノウハウを生かして、新しい市場を開拓する。コンサルタントのような存在も目指す」とビジョンを述べる。「IBシステムは電気を使用せず、環境負荷が小さい。世界では7割が停電多発地域というのが現状。インフラが未熟な土地でも安心して使用可能で、無限の可能性がある製品だ」と自信を示す。

     温度管理システム「アイスバッテリー(以下、IB)システム」を開発、製造す るアイ・ティ・イー(本社=東京都千代田区)は、商品ラインアップ、サービス 拡充を進めている。昨年には、ブルートゥース搭載の温度ロガーを開発、商品化。対象貨物の位置情報、温度な どをオンラインで可視化し、トレーサビリティが強化された。パンカジ・ガルグ代表取締役社長兼CEOは「従来 アナログでやっていたことをデジタル化する。低コストで便利な、どこでも使えるようなツールを標準化していくことが必要だ」という考えを示す。 今年夏には、IBを搭載する売り切り の保冷ボックス「IBトレース」を商品化できる見込みだ。世界規模でGDP

    (医薬品の適正流通基準)が拡大していることを背景に、自社商品すべて

    に共通するSOP(標準作業手順書)整備や、GDPで示されるプラス15~25度のIB商品開発も進めている。 基本商品であるIBシステムは、マイナス35度~プラス25度の温度に設定可能な蓄冷プレートだ。設定温度持続時間は、外気温25度で約4日、同40度で約2日間と長いのが特長。IB専用ボックスは8~64リットルの6種、100リットルの折り畳み式を展開。専用保冷カート3種、陸・海上コンテナ(20フィート)、航空コンテナ(LD3)もある。 これらを従来はリース形式で販売してきたが、新商品「IBトレース」では繰り返し利用可能な売り切り商品として展開する。梱包サイズは16、32リットルの2種類で、重さは約4キロ。各種温度帯をおよそ48時間

    今夏新商品、ブルートゥースロガーも■アイ・ティ・イー

    パンカジ・ガルグ社長兼CEO㊧と高野智彦執行役員営業本部商品ソリューション部

  • 医薬品物流特集2019 第3種郵便物認可 2019年7月3日(水)10

    物流基準)ガイドライン」発出を受け、温度 ロ ガ ーの 売 れ 行 きが好調だ。特に シ ング ルユースの「リベロCB」では、マイナス30度に対応温度を拡大し、内部メモリも大幅に増強。輸送期間が比較的長い海上コンテナでも使用することができるようになった。 また、昨年にリリースした温度インジケーター「リベロITS」を日本でも販売開始。5月から複数の国内医薬品メーカーが採用し始めている。本体は30×30ミリで、厚さは約3ミリ。本体のボタンを操作することで、貨物が温度逸脱を起こしているかどうかを都度確認できる、単純な仕組みが好評だという。

      大隅物流( 本社=茨城県稲敷市 )は今月にも、加温機能付き保温1トン車両を導入する。乗用車をベースに開発された車両で、エンジン停止時に外部電源をとることができる仕様となっており、フェリーを利用する長距離輸送のニーズへの対応を狙いとする。山川栄明代表取締役は「比較的小ロットが多い医薬品の温度管理輸送需要に合致する」とニーズ拡大に期待感を示す。 大隅物流が保有する温調車両は現在、3トン、4トン、10トン車がそれぞれ5台。導入予定の1トン車両も含め、①マイナス15度以下②プラス15~25度③プラス2~8度 ―の3つの温度帯を設定できる。3~10トン車では、パレット単位の輸送がメインだが、近年では原薬、治療

    薬、検体や細胞などを、ケース、カートン単位と小規模に輸送するニーズが増えているという。都心部のビル街など、駐車スペースに制約のある場所に車両をつけることも多いため、小回りの利く1トン車の需要は増しそうだ。 医薬品温度管理輸送の分野では、多岐に業務を展開。温調システム・メーカーの独va-Q-tec(バキュテック)との提携では、茨城県稲敷市に、コンテナ拠点を構えている。「バキュテック製品の取り扱いはかなり増えている。輸入は大幅増、輸出も徐々にオーダーが増えている」という。 また、同社が日本正規代理店を務める、スイスの環境計測機器販売メーカーELPRO(エルプロ)は、昨年末の日本版「GDP(医薬品の適正

    加温機能付き保温1トン車両導入■大隅物流

    山川栄明代表取締役

  • 医薬品物流特集20192019年7月3日(水) 第3種郵便物認可 11

    関西(大阪府茨木市、同ユニトランス)―の3つ。茨城、東京ではコンテナ型各種のリースに対応。関西では、温調ボックス各種のレンタルおよび使い切り(シングルユース)温調ボックスの販売、オペレーション拠点とし、常時各種合計500個をストックしている。コンテナ型は、航空パレットに積み付けて使用するもの。ユーロパレット1~2枚、USパレット1~2枚の4サイズを基本ラインアップとしている。

     温度管理ソリューションを開発・製造する独バキュテックの日本法人、バキュテック・ジャパンでは昨年、シングルユース・パッケージの需要が前年比10倍ほどに増加した。真空断熱パネル(VIP)と潜熱蓄熱材(PCM)を組み合わせた温度管理航空コンテナおよび輸送ボックスの「導入が手軽で安全な」温調システムが受けている。日本法人では今春に営業担当者を増員。シングルユース、マルチユースともに商品在庫数を前年比10倍以上に拡大して備えている。 高崎武裕カントリーマネジャーは

    「世界の医薬品市場は140兆円(販売価格ベース)とも言われる。各種医薬品の処方条件には必ず温度条件が付いてくる。温調ボックス、コンテナのニーズはまだ伸びるだろう」とさ

    らなる需要増を確信する。今年も営業担当者を増員予定。拡大するニーズへの対応力を強めていく。 「世界各国における医薬品輸送に係る規制の厳格化で、医薬品の温度管理輸送ニーズが増加している。今まで温度管理が不要だった医薬品でも今後は求められるようになると考えるメーカーも多い」とする。昨年12月に厚生労働省が「GDP(医薬品の適正流通)ガイドライン」を正式に発出したことで、日本でも荷主の意識が高まっていると分析している。同社の医薬品輸送用商品はすべて欧州連合(EU)のGDPに対応している。 同社の日本国内拠点は、成田向けの茨城(稲敷市、オペレーションは大隅物流に委託)、羽田向けの東京(江東区新木場、同TNTエクスプレス)、

    需要急増に在庫、陣容拡大で備え■バキュテック・ジャパン

    遠藤定美セールスマネジャー㊧と高崎武裕カントリーマネジャー

  • 医薬品物流特集2019 第3種郵便物認可 2019年7月3日(水)12

    ▶航空編◀

    50%以上は空港内で温度逸脱完全無欠の高品質SCへ、横連携で 50%超 ―国際航空輸送のサプライチェーン

    (SC)における医薬品の設定温度逸脱事例の半数以上は、貨物が航空会社の責任下、あるいは空港におけるハンドリング中に起こっているという。航空貨物SCには航空会社、フォワーダー、グランドハンドリング会社、運輸会社はじめ、実に多くのステークホルダーの手が介在している。 いかに、この複雑なSC全体を保証するのか。前項で詳述した国際航空運送協会(IATA)の医薬品輸送品質認証「CEIVファーマ」では、国際貨物を取り扱う航空会社、グランドハンドリング業者、フォワーダー、運輸会社―の4業種をターゲットとしている。しかし医薬品の取り扱いで業務委託先(サプライヤー)があれば、そこにも

    航空貨物サプライチェーン上の温度逸脱リスク

    (KIXPharmaコミュニティ資料より独自に作成)

    運輸会社

    運輸会社 運輸会社

    航空会社 航空会社グランドハンドリング会社

    グランドハンドリング会社

    規制当局

    荷主(荷送人)

    荷主(荷受人)

    フォワーダー

    フォワーダー

    発着地

    着地

    低リスク 中リスク 高リスク

    グランドハンドリング会社

    同認証の基準に沿ったオペレーションの教育が必要となる。このため、特定のトレードレーンで前述の4業種すべてが同認証を取得している場合、そこには途切れない医薬品温度管理輸送SCが存在することになる。 裏を返せば、同4業種のどこかに同認証が欠けていれば、認証で保障されたSCとはならないわけだ。業界一丸で横断的に取り組んでこそ大きな成果が出る。それこそが、関西空港の「KIX Pharmaコミュニティ」やそれを追う成田空港のようなコミュニティ化の動きが出てくる理由のひとつとなっている。

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    年初には国際空港上屋(IACT)が成田で初となる「成田空港温度管理専用上屋」を稼働。同上屋は全室で空調対応が可能で、医薬品専用の薬品庫を備えるなど、成田の医薬品の取り扱い体制を支える。 NAAは21年度までに、新たに取得した拡張用地で新上屋の建設を開始する計画。完成後の新上屋に上屋事業者の移転を促し、老朽化した既存上屋を順番に建て替える。既存上屋や路面の修繕なども適宜実施し、貨物地区全体の環境を改善して医薬品の取り込みにつなげていく考えだ。

     成田国際空港会社(NAA)は、成田空港で国際航空運送協会 (IATA) の医薬品輸送品質認証「CEIVファーマ」の取得を目指す航空貨物関連企業を支援する。NAAが主体となり、コミュニティ方式でIATAの研修やトレーニングを合同開催するなどして、認証取得にかかる1社当たりの費用負担を軽減する。今後、空港内の関連企業に参加意思を確認。一定数の希望があれば、年度内にもコミュニティを立ち上げ、2020年度には認証取得を目指したい考えだ。 昨年末に厚生労働省が日本版の

    「GDP(医薬品の適正流通基準)ガイドライン」を出すなど、国内でも医薬品の流通基準が厳格化されようとしている。NAAでも、19年度から 21年度までの現行中期経営計画で、

    高付加価値貨物の取り込みに 向けた具体策としてCEIVファ ーマの取得支援を明確に掲げた。貨物営業部の本吉透次長は「CEIVファーマは欧米だけでなく、アジアの主要空港でも取得に向けた動きが活発化している。世界有数の医薬品の航空物流拠点として、この趨勢に立ち遅れるわけにはいかないと判断した」と話す。かねて空港としての取り組みを求める声もあり、年度内のコミュニティ立ち上げを目指す。 成田が医薬品の貿易港として圧倒的な存在感を示す背景には、国内随一の欧米線、貨物便の充実が挙げられる。今後もインセンティブ制度の活用などを通じて航空輸送ネットワークの拡充を継続する。設備面でも、18

    CEIVファーマ取得支援へ■成田国際空港会社

    医薬品の取り込みに本腰を入れる(成田空港の貨物地区)

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    成長を続けている。特に、全日空が唯一、日本との直行便を運航するブリュッセル発の伸びが大きい。全日空は2017年10月に成田空港で国際航空運送協会(IATA)の医薬品輸送品質認証「CEIVファーマ」を取得しており、この点も同認証の認知度が高い欧州発で評価された。今後は欧米に限らず、インドやアジア地域発着の医薬品の取り込みも目指す考え。成田以外の国内主要空港でのCEIVファーマ認証の取得を検討するなど、サービス、品質の両面で医薬品の取り扱い体制を強化していく。

      全日本空輸 は 今夏、高付加価値サービスの「PRIO」シリーズをリニューアルする。医薬品向けの温度管理輸送 は「PRIO PHARMA」のブランド名に統一。温度管理施設での蔵置や頻繁な温度チェックなど、より手厚いハンドリングを提供するほか、新たに独バキュテックの温度管理コンテナ「バキュテイナー」を選べるようにして訴求力を高める。 全日空の温度管理輸送は従来、エンバイロテイナー社の電源式コンテナを使用する「PRIO PHARMA」、自社コンテナに高機能保冷剤「アイスバッテリー」を使用する「PRIO IB」、ドライアイスを使用する「PRIO COOL」の3種を展開。いずれも、顧客のニーズに応じて、医薬品や化学品など温度管理が必要な貨物に向

    けて提供してきた。 バキュテイナーは電源を使わないパッシブ型のコンテナで、欧米系航空会社などで多くの導入実績がある。摂氏30度以下の輸送条件で、同2~8度帯の温度設定なら120時間の長時間利用が可能。欧米など主要国に多く拠点を構えることから、路線によっては片道利用が可能など柔軟性も高い。ANA Cargoグローバルマーケティング部の後藤知也氏は

    「バキュテイナーは、顧客の製造拠点までコンテナを届けられるといった利便性もある。輸送機器は今後も拡充を検討したい」と話す。 全日空の医薬品の取扱量は昨年以降、エンバイロテイナーを使う現在の

    「PRIO PHARMA」だけで見ても、欧米発の輸入を中心に前年比2倍の

    「PRIOファーマ」に新コンテナ■全日本空輸

    後藤知也氏

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    委託先企業 によ る 医薬品専用施設がある。輸出では、後背地に製薬メーカーが多い関西、個別対応がしや す い 小松で受託するケースが多いという。 現在、プロダクト別構成比(輸送量ベース)で医薬品は4%。輸入需要の方が強い日本は3.8%。「日本における課題は、就航地点間のOLT(保税運送)において、医薬品の温度管理が可能な長距離混載トラックがないこと。混載可能な温調OLTサービスの実現に向けて調整し、商品化を目指したい」とする。また「プラス5~10度の温度帯など、定温ニーズは冷やすだけではない。航空機内のように、外気温よりも温める車両が冬場は特に必要だ」と考えを示した。

     カーゴルックス航空(CLX)の神谷 靖日本地区総支配人は「(保有機であ る)B747-8F型機、B747-400F 型機の一番の売りは、運航機内の温度管理が可能で、温調コンテナを使用せずとも途切れないクールチェーンを提供できること。パッシブ機器を使用したサービスに実績があること」とする。CLXは2014年1月に、 航空会社として初の欧州連合(EU)・GDP(医薬品の適正流通基準)認証 ホルダーとなった。ハブとするルクセンブルクの上屋業務委託先、ルクスエアーカーゴも同認証を同時取得。世界に先駆けて国際水準の輸送サービスを展開してきた。 05年から医薬品の温度管理輸送に本腰を入れて取り組み始めた。ロガーを使用して、航空機、上屋内の

    温度変化分析や、デュポンとサーマルカバー共同開発などを展開してきた。ルクスエアーの医薬品専用庫では温度管理可能なブレークダウン・ビルトアップ専用スペース、温調車両専用トラックドックまで設備が充実。特に特徴的なのは、ランプサイドの搬出入口に医薬品専用蔵置スペースを設け、ULDが外気に接触する時間を最大限減らしている点。このため、パッシブ容器でも荷主ニーズに合う水準の厳格な温度管理を実現している。 「大事なのは、航空機搭降載と上屋間で、いかにクールチェーンを途切れさせないかだ」と強調する。日本では小松、成田、関西(子会社のカーゴルックス・イタリア航空便)と、3つの就航地点いずれにもハンドリング

    機内、搬出入口にも温調機能■カーゴルックス航空

    神谷靖日本地区総支配人

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    ▶OLT編◀

    ラストワンマイル保証

    制、教育、人材育成、車両改良を含め て日々、品質に磨きをかけており、 田中支店長 は「 輸送温度帯 や 輸送 方法の根拠などをしっかりとわれわれから説明できるところまで医薬品、関連輸送に対する理解度を高めることが重要」と語る。 ドライバーの教育も重要な取り組み。例えば、渋滞などに際してのイレギュラー対応に関しては、ドライバーの柔軟かつ的確な判断が求められる。ドライバーが、輸送している医薬品への理解度を高めることが品質につながるとの認識のもと、教育には万全の体制を敷いている。例えば、病院に直接、医薬品を搬入するケースもあるため、医薬品に関する知識、安全を保証するための取り扱い方法の確立、ノウハウの蓄積に努めている。 平野ロジスティクスはAEO特定保税運送者の認証を取得済み。医薬品専用車両にはGPSも完備。セキュリティバンドの活用を含めて、保安についても万全の体制を確保している。関西支店の西端純一支店長代理は「車両などのハード面から、社内体制やドライバーをはじめとした人材、社内独自のGDPなどソフト面に至るまで、常に品質を意識して事業に取り組むことが重要」と説明。「日本国内、そして世界的に見ても、求められる品質は日を追うごとに高まっている。その上を行く品質を常に提供できるように、各種施策を進めていきたい」としている。

     平野ロジスティクス関西支店は医薬品専用の大型空調車(10トン車)、4トン車を中心に、関連物流に対応している。大型空調車の庫内温度はマイナス25度からプラス25度の設定。関西エアポートやCKTSによる関西空港 の 医薬品専用共同定温 庫「Kix Medica」、「CKTS」のロゴを施しており、「Medica号」と名付けて運行している。 Medica号は主に関西空港を拠点として輸出入される医薬品の全国配送を担っている。4トン空調車は医薬品輸送に際して需要の多いプラス5度および同2~8度帯を中心とした温度設定に加えて、マイナス25度~プラス25度の設定も可能だ。4トン空調車は5台を配備している。 関西空港のコミュニティが6月までに国際航空運送協会(IATA)の医薬品品質認証「CEIVファーマ」を取得した。引き続き、高品質の医薬品物流の提供に貢献するために、関係各社との連携を強化する考えだ。 平野ロジスティクスはさらに医薬品専用 の 大型空調車 を2台導入した。従来の大型空調車をバージョンアップしており、庫内の床面に新型ジョルダを採用した。製薬会社の生

    産拠点でのドック付け、積み込みや取り降ろしといった作業全般がよりスムーズになる。温度管理を万全とするために庫内の空気循環のためのサーキュレーターも完備している。 これら空調車は、定期的に専門機関による温度校正、GDP(医薬品の適正 流通基準)による庫内温度マッピング を実施。温度記録装置、警報アラームも完備しており、万が一、温度を離脱した場合には警報アラームが作動。迅速なリカバリーを可能としている。搭降載時の温度離脱、虫などの混入を防ぐためのエアカーテンも設置。庫内の素材には抗菌ステンレスを採用しており、清掃など医薬品輸送のた めの行き届いたメンテナンスが可能だ。天面結露防止加工も施している。 ハード面の充実とともに、ソフト面も特に重視している。製薬会社との直接契約のもとで工場間の医薬品輸送も実施しており、製薬会社のニーズを直接把握する機会となっている。フォワーダーや上屋会社、航空会社を含めて、さまざまな事業者のニーズを貴重なアドバイスとして取り入れて、それを品質向上のきっかけとしている。 関西支店の田中基康・西日本地区担当営業部長兼関西支店長は「お客

    さまの監査は、われわれの品質を確認していただく機会であると同時に、品質向上のための貴重なアドバイスを把握する機会。ぜひ弊社の品質を直接、確認していただければ、とお願いしてい る」と説明。得られた指摘、アドバイスをもとに社内で対策を練り、それを平野ロジスティクス独自のGDPに落とし込んでいる。 医薬品輸送に対応した社内体

    医薬品専用大型車を増強■平野ロジスティクス、独自GDPで高品質確保

    田中基康支店長㊧と西端純一支店長代理

    平野ロジスティクスのMedica号

     医薬品関連物流の品質を確保するには、陸上輸送も重要な役割を担う。厳密な温度管理が求められるため、専用空調車の導入といったハード面の充実は欠かせない。さらに社内体制の構築などソフト面の充実でラストワンマイルを保証する。

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    ▶物流企業編◀

    事業拡大にヘルスケア注力GDP対応、見える化で強化 物流企業にとって医療・医薬などヘルスケア分野は、成長が見込める有望市場の1つだ。数多くの大手物流企業が重点強化品目として戦略に掲げ、強化・拡大を図っている。温度管理などの輸送プロダクトに加え、近年ではGDP

    (医薬品の適正流通基準)対応とともに、いかに品質管理を行っていくかという点で、より高次での見える化に取り組むところも増えてきた。

    昨年12月に示された段階に過ぎず、日系製薬メーカーが要望としてGDP認証を求めることは多くないようだが、今後の展開をにらみ、物流企業にGDP対応を尋ねるケースは増えているという。 GDP 対応は各物流会社によってさまざまだ。第三者認証機関の監査 でGDP認証を取得するところが多いが、自主的な品質管理基準を設け てそれを各地に展開しているところ もある。前者については、本特集前半 で 紹介した 国際航空運送協会(IA TA)の医薬品輸送品質認証「CIEVファーマ」の取得に取り組むところが増えてきた。同認証はGDPを内包する内容となっており、DHLグローバルフォワーディング、キューネ・アンド・ナーゲル、ボロレ・ロジスティクスなど、欧州系の大手物流企業が取得を進めていた。日系企業の取得は多くなかったが、今回の「KIX Pharmaコミュニティ」の取り組みもあり、日本での動きには弾みがつきそうだ。 また、自主基準を設け、GDPをベースに自社での品質管理を確立しているところもある。各主要拠点で基準をクリアし、独自の認証ネットワークを構築。自社のサービス特性に応じた管理体制を構築することで、各拠点やグローバルでの連携を図るとともに、GDPでは対応していない事項までカバーしている。

     ヘルスケア関連は、貨物の取り扱いにおいて専門性や高い品質管理、梱包などでの特殊なケアが要求される。サービス提供や市場参入のハードルは高いが、その分、高度なサービスを提供することで対価を得ることができる。市場規模の拡大だけでなく、付加価値を提供することで収益拡大も図れるわけだ。  特に近年 の 国際輸送市場 では、サービスのコモディティ化が見られており、物流会社は新たな利ざやを求めて行く必要が生じている。グローバルでの競争激化から輸送サービスの収益性が低下し、ポート・ツー・ポートの単純な輸送では利益が確保し難くなっている。多くの物流会社が単純な物流サービスの提供から、物流面での付加価値提供、顧客の業務をサポートするソリューションの提供へ、業容を進化させようとしている。ヘルスケアはその意味において、専門性が問われる一方、拡大余地のある魅力的な市場だと言える。 だがやはり、参入障壁が高いのも事実。サービス構築に向けては、顧客の求める高いレベルでの物流管理を実行するための、人材、アセットなどへの投資が必要となる。医薬品の物流を行う人材は、温度管理や各種輸送手段の知識に加え、他法令やGDP、コンプライアンス対応などでの同分野特有の専門知識が要求され

    る。ヘルスケアの取り扱いに強みを持つ物流会社の多くが、倉庫などの現場、営業に専任担当者を配置し、品質管理、教育などを担わせている。製薬メーカーなどで品質管理担当を行っていた人材を採用する物流企業も見られるようになってきた。 投資という点で、施設の確保も重要だ。温度管理施設は自前で持つのと、パートナー企業の施設を利用するというケースがあるが、いずれにしても、他の分野と比べて衛生面やセキュリティー面で高品質・高機能なものである必要がある。温度逸脱時の対応、温度管理区域内の温度マッピングなど施設運営の管理も、高いレベルで行わなければならない。また、ラベル貼付や再梱包などの流通加工をサービスとして提供するには、「医薬部外品製造業許可(包装・表示・保管区分)」の薬事法許可が必要となる。

    GDP対応、各社さまざま

     また近年は、GDP対応がより重要度を増してきている。GDPは欧州で既に法的規制とされており、欧州系の製薬企業を中心にGDPを順守した輸送・物流管理を求める傾向が強いようだ。「入札では、GDP認証を参加要件に提示する荷主も増えてきた」(外資大手フォワーダーのヘルスケア担当)という。日本国内においては、日本版GDPのガイドラインが

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    先端技術でリスク削減

     GDPへの対応と呼応して、いかに品質管理を実行していくかという点に着目するところも増えてきた。物流やサプライチェーンの見える化を高度なレベルで行うサービスが出てきている。 1つは温度管理にも関わることだ

    が、高機能なロガーだけでなく、センサー技術を使った輸送状況の可視化サービスだ。温度・湿度・衝撃などの輸送データを収集し、顧客に提供する

    (時にリアルタイムで提供)。輸送ごとのデータを分析することで、ダメージや品質劣化のリスクが避けられる。またGDPは品質管理だけでなく、偽造薬流通防止も目的の1つとなって

    おり、トレーサビリティを強化にもつなげる。 もう1つは、ビッグデータなどを利用したルートや物流プロバイダーのリスク評価だ。輸送管理システム(TMS)の一環として、ルートアセスメントを提供するITシステムも出てきており、それらを利用し、輸送計画の立案・実行に生かしているところもある。

    提供を開始。センサータグ(子機)が、温度・湿度・衝撃・傾斜・照度などのデータを計測、トラックや倉庫内に設置されたGPS機能付きゲートウェイ

    (親機)を通し、データをクラウド上にアップロードすることで、位置情報を含め、顧客と日通の双方で輸送状況をリアルタイムに把握できる。データはドア・ツー・ドアで取得可能。また、従来型ロガーより迅速かつ簡易取得できる。 同サービスは厳格な輸送品質が要求されるすべての貨物が対象だが、医薬品分野での引き合いが多いという。毎回の出荷時の温度管理を目的とした利用のほか、取得データを活用した分析や輸送計画の立案に生かしたいとのニーズがあるという。データを分析することで、輸送ルートにおけるリスクを発見し、現場での注意喚起や対策を講じることも可能だ。各種商品に輸送過程の分析を組み合わせ、顧客に最適な物流を提供していく。

     日本通運は新たな医薬品サプライネットワークを構築する。医薬品に関するGDP(医薬品の適正流通基準)の日本導入に伴う医薬品物流の変化に対応し、国内4拠点の専用倉庫を建設し、共同物流のプラットフォーム化を進めている。 同社は原材料・製品の輸出入拠点である成田・関空で、医薬品専用施設のメディカルハブを展開してきたが、日本でのGDPの法制度化を見据えて、国内での医薬品物流基盤の強化を決定。東日本(久喜市)、西日本(寝屋川市)、九州(北九州市)、富山(富山市)に、医薬品に特化した倉庫拠点を新設する。来年9月から順次竣工する計画だ。  施設投資額 は400億 ~500億円。各施設は規範として日本版GDPガイドラインに準拠。定温、保冷の温度管理に加え、輸出入用の保税エリア、特殊医薬品エリアなどサプライチェーンのあらゆるニーズに対応する。 日本版GDPガイドラインに加え、グローバルな品質基準とされる「PIC/S」(医薬品査察協定及び医薬品査察共同スキーム)を基に、日通自社でも自主品質管理基準を策定。それら基準に基づき、各拠点で教育・管理体制を築き、高品質かつ、安全・確実

    なオペレーション体制を整えていく。 そうした品質管理に加え、各拠点を結び、医薬品物流の全体最適を実現する医薬品サプライネットワークを構築する。GDP対応や昨今のドライバー不足に伴い見込まれるコスト増加に対し、共同物流やラウンドユースの仕組みを提供することで、顧客の物流の全体最適化を実現する。 引き続き、各種輸送モードでの温度管理輸送にも注力していく。特に 国際航空輸送 で は、温度管理輸送サ ービス「TempSure Series」を展開し、各温度帯・サイズに応じた商品の開発・提供を図ってきた。今年2月に は 航空機搭載 パレット単位で、定温輸送環境を実現する

    「 NEX-SOLUTION TempSure Thermo ULD」にて特許を取得。同サービスでは、特殊な断熱材と潜熱蓄熱材を用い、大容量での定温輸送を可能としている。 そして、日通が現在強化しているのが、輸送状況の見える化だ。今年2月、インテル、日本ハネウェルとの協業のもと、最新のIoT技術を活用した新サービス「Global Cargo Watcher Advance」(GCWA)の

    国内4拠点新設、共同物流PF構築■日本通運

    東日本、西日本、九州、富山で専用施設を建設する。写真は九州の完成イメージ

    各社の取り組み

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    ティクスサービスを展開している。体外診断薬輸送では、GDP(医薬品の適正流通基準)ガイドラインへの適合を意識し、各地の医薬共配会社と連携して対応している。また、医療機器では、メーカーと開発した防振パレットで400~500キログラムクラスの分析機器や医療機器を混載輸送するなど、同社の混載輸送のネットワークを活用して荷主のコスト低減につなげている。 同社は日本と米州・欧州・東アジア・オセアニア・東南アジアの各国のヘルスケアリーダーで構成するグローバルヘルスケアチームで医療機器や医薬品分野の取り組みを強化し

     近鉄エクスプレスは、日本で輸出営業部、輸入営業部、関連会社の近鉄ロジスティクス・システムズで構成するヘルスケアプロジェクトチームを持ち、国内輸送、倉庫、梱包、国際輸送までの一貫した高品質な輸送サービスを提供している。特に日本では医薬品の輸出、医療機器やデバイスの輸入分野で豊富な経験を持ち、長年培ったノウハウを生かし、顧客ニーズに応じたオーダーメード輸送で顧客のサプライチェーンを支えている。 輸入は欧米系メーカーの医療機器・医薬品を軸に年々取り扱いを伸ばしている。通関では商品群が多岐にわたり専門性の高い知識が求められるため、ヘルスケア通関チームを配置して多種多様な案件に対応。通関に 特化したITツールも導入し、通関業務のリードタイム短縮、正確な輸入申

    告サービスを追求している。加えて、千葉県市川市原木のヘルスケアの基幹倉庫では、医療機器、医薬品、医薬部外品、化粧品などの製造業ライセンスを保有。薬剤師3人が常駐して国内市場への流通をサポートする。 輸出では高品質な定温輸送サービスを提供している。電源式保冷コンテナによるアクティブ輸送、数十種類にわたる断熱材、蓄熱材、保冷剤を組み合わせた独自の梱包によるパッシブ輸送など豊富なサービスで柔軟に対応。コストやリードタイム、温度条件や各国法規制など医薬品メーカーごとに異なる輸送ニーズや条件に細やかに対応した物流サービスの提案を強みとしている。 国内物流では医療機器(装置)、治験薬、検体輸送、体外診断薬の定期定配送コールドチェーン輸送、ロジス

    グループ連携で一貫輸送提供■近鉄エクスプレス

    ヘルスケア分野に取り組むメンバー

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     欧州でのノウハウはグローバルに展開しており、アジアでもヘルスケアの取り扱いは多い。韓国やフィリピンではマルチ温度帯のヘルスケア専用倉庫を複数運営しており、国内物流の領域でも高いシェアを持っているという。シンガポールでは医薬品専用倉庫で、ラベル貼付、説明書封入、再梱包など製造ライセンスを取得し、付加価値サービスも提供している。輸送だけでなく、コントラクトロジスティクスや保管・配送など、産業別のアプローチで培った高度なサービスが提供できるのが特色だ。

     西濃シェンカーは重点強化産業の一つにヘルスケアを掲げ、医療医薬分野の強化・拡大を進めている。欧州系の製薬・医療機器企業を中心に医療・医薬品目の取り扱いが多い同社だが、近年は日系企業を中心に営業深耕を進めている。機能面でも成田地区の拠点において昨年12月末に、GDP(医薬品の適正流通基準)認証を取得。同認証で担保されている高品質とグローバルのネットワークを生かし、日系製薬メーカーの顧客拡大と輸出入航空貨物の拡大を進めていく方針だ。 同社の最大の強みは欧州を中心とした医薬品物流ネットワーク。シェンカ ーグループの各法人にはヘルスケア担当がおり、コンプライアンスや法制

    度を順守したネットワークが構築されている。大手製薬メーカーとの取引で培った経験、検証済みの作業手順・施設が提供できるほか、顧客が求める各地の規制や法律などの情報にもすぐアクセスすることができる。専任担当者を配置することで、顧客と共通言語でコミュニケーションできることが競合他社との差別化につながっている。 日本でのGDP認証は、グローバルフォワーダーとして、日本でもヘルスケア関連のオペレーションを品質に一貫性を持たせ、顧客企業をサポートするという継続的な取り組みを証明するために取得した。成田空港外の事務所と倉庫が対象で、医薬品およびその他関連品目の航空フォワーディングオペレーションについて認証を得た。

    ネットワーク生かし、日系顧客開拓■西濃シェンカー

    グローバルのネットワークを生かし、医薬品物流をサポートする

    車両で提供する。山口耕平営業担当は「集荷後のスキームは既に確立しているため、集荷から航空会社搬入まで円滑なオペレーションが可能だ」と説明する。車両は、新たに10トントラックを購入。車両の中で荷室を分けて、複数温度帯に対応する。温度管理が必要な貨物の輸送には、3月に販売を開始した冷却ユニット「エレキング」を利用する。同ユニットを利用すれば蓄冷材、蓄熱材を使わずに定温輸送が可能だ。

     物流・梱包サービスのワコンは今夏、医薬品などを中心に成田空港から輸出する貨物の集荷サービスを開始し、温度管理サービスを拡充する。荷主から同社の成田ロジスティクスセンター(千葉県山武郡芝山町、以下成田LC)への輸送を自社のドライバー、車両で実施する。西田耕平代表取締役は「保管、梱包の前段階となる集荷で、当社が責任を持って温度管理することで途切れないコールドチェーンを実現する」と話す。 同サービスは、医薬品や化学原料などの貨物をメインとした集荷サービスだ。午前と午後の1日2便のスケジュールで、複数荷主から集荷する。

    混載便にすることで、荷主の輸送コストを下げることができる。まずは埼玉県入間市、同県坂戸市からサービスを展開し、関東一円へと拡大を目指す。 従来の路線便による輸送に比べて、リードタイムも短縮する。路線便は、複数箇所での集荷や積み替えが発生して貨物の搬入が遅くなり、輸出の申告が集荷した翌日になることが多かった。また、医薬品は貨物量が小さく、工場からの輸送にチャーター便を使う荷主は割高になる。新サービスでは、積み下ろし地は成田LCの1カ所となり、貨物の搬入も早まるため、集荷当日の輸出申告を可能とする。 新サービスは自社のドライバー、

    成田で医薬品の集荷サービス■ワコン

    ワコン所有車両

    ている。GDPは欧州を中心に6法人(アイルランド、ドイツ、ベネルクス、イタリア、英国、インド)へ拡大、年2回のグローバルミーティングで

    GDPを取得した各国のノウハウを展開し、高品質なサービスを提供できる体制を構築している。そのほか、上海では2013年に日系物流業者で初

    となる国家食品医薬品監督管理総局(CFDA)ライセンスを取得し、多くの医療関連倉庫業務を取り扱うなど、各国で力を入れている。

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    いるが、国内転送のニーズ にも対応していきたいとの 意向だ。同サ ービスを担当する第2営業部国内営業課の鈴木泉課長は「単にモノを運ぶのではなく、お客さまの物流コンサルタントとして相談に応じていきたい」と話す。 現在、取り扱っている商材では、ドライシッパー(液体窒素容器)を用いる超低温で管理するものも多い。同社としては、需要が拡大している細胞や再生医療関連、治験用医薬品体なども含むあらゆる温度管理ニーズに応えていく。まずは車両2台体制でサービスを提供しているが、ドライバーの教育を行い、規模拡大を図っていく方針だ。

    沿った仕様とし、また、5度帯、1~ 30度の冷蔵・定温管理に対応する。保税蔵置場の許可も視野に入れて、輸入貨物の保税保管のニーズにも応えていく。 医薬品関連貨物の取り扱いでは、葛生運送(千葉県成田市)とのパートナーシップも生かせる。同社は原薬・医薬品などの分野に強みを持つ。GDPに準拠し、各種温度帯への対応から、専門的な知見を備えたドライバーによる工場・研究機関への集配送まで、高品質な輸送サービスを展開している。葛生運送との連携により、サプライチェーン全体での物流ソリューションが提供できるという。

     三菱倉庫グループのユニトランスは、医薬品や細胞を対象とし、軽貨物トラックでの温度管理輸送サービスを本格展開していく。製薬企業や研究所、病院を対象とした「ホワイトグローブ」サービスを提供。知見を持った専任ドライバーが顧客のニーズや貨物の特性に合わせた輸送容器を提案し、集荷・配送を行う。当面は羽田空港近隣の本社を拠点に展開し、成田、関西にもサービス拠点を広げていく。 同社は三菱倉庫の国際航空輸送業務での医薬品の取り扱い実績を持つほか、近年は温度管理ソリューションのバキュテック(本社=ドイツ・ビュルツブルグ)の定温輸送ボックスの予冷業務を大阪・茨木のセンターを拠点に展開するなど、医薬品物流や温度

     危険物の取り扱いに強みを持つ日陸は、医薬品関連貨物取り扱いの強化・拡大を進めている。同貨物の取り扱いは千葉県市原市、同袖ヶ浦市、大阪府高石市の倉庫施設を拠点に行ってきたが、近年は製薬関連企業からのGDP対応を求める動きも相まって、高稼働状況が続いている。さらなる事業拡大を目指し、2020年6月の竣工を目指し、千葉県内に新拠点を建設する計画だ。 同社は医薬品関連でも、強みとする危険物をターゲットに取り込みを図っている。医薬品・化粧品の原料では、「消防法」危険物に分類されるものも多い。そうした貨物は、消防署への届出や、危険物専用施設での保管・取り扱いが義務付けられている。温度管理対策やコンプライアンスを順守した施設とともに、他法令対応など

    管理容器に関する知見・ノウハウを蓄積している。三菱倉庫関係の業務では、直近でエンドユーザーへの配送を担うケースも増えてきたという。そこで同社は知見・ノウハウを生かし、本格的に温度管理品医薬品 の 集配サービスを提供することを決定。メデ ィカル関係出身の人材も採用し、サービス構築と営業強化を図っている。 新サービスでは、顧客への聞き取りから、最適な温度管理容器や輸送手段を手配した上で集配を実施。出荷貨物であれば、必要に応じて予冷した容器を顧客の施設に持ち込み、施設内で梱包して、空港の上屋に搬入する。輸入であれば、再保冷などのニーズにも対応し、顧客へ手渡しでの配達を行う。 輸出入の医薬品からスタートして

    も含む危険物のノウハウ・知見を合わせて提供し、安心・安全を求める顧客の物流ニーズに応える。 前記の医薬品倉庫には管理薬剤師が常駐。医薬品関連貨物の取り扱いに関わる各種ライセンス(医薬品製 造業<包装・表示・保管>、医薬品卸売販売業、高度管理医療機器販売業、動物用医薬品製造業、動物用医薬品卸売販売業)を取得しており、保管・配送だけでなく、輸入者代行から、成分分析、検品、法定表示ラベル貼付などの流通加工まで、一貫した物流サービスを提供することができる。 来年竣工の新拠点は、そうした付帯作業や流通加工が必要な貨物を取り扱う、医薬品専用流通センターとして運用していく計画だ。約4万平方メートルの用地に、まず1期棟を整備する。施設はGDPのガイドラインに

    温度管理集配サービスを本格展開■ユニトランス

    医薬専用で、千葉に流通センター建設■日陸

    鈴木泉課長

    千葉県内に医薬品専用流通センターを建設する

  • 医薬品物流特集20192019年7月3日(水) 第3種郵便物認可 23