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2015/9/24 1 1 栄養ケア・マネジメント 2. 日本人の食事摂取基準 2015年 応用栄養学 第2-3回講義 1. 栄養評価の意義 1.1栄養アセスメントの歴史 1.2 栄養スクリーニング 1.3 栄養アセスメントの分類 1.3.1 静的栄養アセスメント 1.3.2 動的栄養アセスメント 1.3.3 予後推定のためのアセスメント 1.4 アセスメントの方法 1.1.1 中心静脈栄養法(total parenteral nutritionTPNTPNという栄養補給法が1967年にDudrikにより開発され,高カロリー 輸液が用いられるようになった。 短期間で栄養状態を改善することができるようになったことから,栄 養状態の良否を把握する必要性が認識されるようになった。 19741976年にBistrianBistrian は栄養状態を把握するための身体計測について提案し,院患者の4050%に低栄養状態の者がいることを報告した。 1977年にBlackburnによる栄養代謝指標 身体計測,臨床検査,食事療法を中心にした29項目を整理して栄養 代謝の指標を示し,栄養アセスメントの有用性を報告した。 1979年にBuzby血清アルブミン(Alb),上腕三頭筋部皮下脂肪厚(TSF),血清トラン スフェリン(Tf),遅延型皮膚過敏反応(DCH)などを用いて,初めて多 変量解析により術前の栄養状態から術後の栄養状態が予測できる ことを報告した。 Buzbyらの予後栄養指数(予後判定指数)の発表により,栄養アセス メントの重要性がさらに高まった。

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Page 1: 2015 応用栄養学 第1-2講義 栄養アセスメント・日 … 01 nutritional...2015/9/24 2 1987年Roubenoffら • チームアプローチの重要性が認識され,医師,看護師,薬剤師,登

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1 栄養ケア・マネジメント2. 日本人の食事摂取基準

2015年 応用栄養学 第2-3回講義

1. 栄養評価の意義

• 1.1栄養アセスメントの歴史• 1.2 栄養スクリーニング• 1.3 栄養アセスメントの分類

• 1.3.1 静的栄養アセスメント• 1.3.2 動的栄養アセスメント• 1.3.3 予後推定のためのアセスメント

• 1.4 アセスメントの方法

1.1.1 中心静脈栄養法(total parenteral nutrition:TPN)

• TPNという栄養補給法が1967年にDudrikにより開発され,高カロリー輸液が用いられるようになった。

•短期間で栄養状態を改善することができるようになったことから,栄養状態の良否を把握する必要性が認識されるようになった。

1974〜1976年にBistrianら

• Bistrian は栄養状態を把握するための身体計測について提案し,入院患者の40〜50%に低栄養状態の者がいることを報告した。

1977年にBlackburnによる栄養代謝指標

•身体計測,臨床検査,食事療法を中心にした29項目を整理して栄養代謝の指標を示し,栄養アセスメントの有用性を報告した。

1979年にBuzbyら

•血清アルブミン(Alb),上腕三頭筋部皮下脂肪厚(TSF),血清トランスフェリン(Tf),遅延型皮膚過敏反応(DCH)などを用いて,初めて多変量解析により術前の栄養状態から術後の栄養状態が予測できることを報告した。

• Buzbyらの予後栄養指数(予後判定指数)の発表により,栄養アセスメントの重要性がさらに高まった。

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1987年Roubenoffら

• チームアプローチの重要性が認識され,医師,看護師,薬剤師,登録栄養士による栄養補給チーム(nutrition support team:NST)が誕生した。

栄養マネジメント

1 臨床栄養学の基礎

2 栄養ケア・マネジメント

3 傷病者の栄養アセスメント

4 栄養ケア計画と実施

5 食事療法,栄養補給の方法

6 傷病者の栄養教育

7 モニタリングと評価

8 薬と栄養,食物の相互関係

9 栄養ケアの記録

A 栄養ケア・マネジメントの概念

a 栄養ケア・マネジメントの定義"b 栄養ケア・マネジメントの過程

(スクリーニング、アセスメント、

計画・実施、

モニタりング、

評価、

フィードバック)

B 栄養スクリーニング

• A 栄養リスクの判定• 栄養ケアを行うべきか、栄養リスクを自覚症、他覚的所見で、判別し、高リスクの対象について、評価を行う。

•評価はA:身体所見、B:臨床生化学、C:臨床所見(臨床診査)、D:食事調査、E:運動状態で行う。

C 栄養アセスメント

a 栄養アセスメントの意義と目的b 静的アセスメントと動的アセスメントc 問診、観察d 身体計測e 臨床検査f 栄養食事調査g 健康・栄養問題(課題)の抽出と決定.

D 栄養ケア計画の実施.モニタリング、評価、フィードバック

a PDCAサイクル(Plan,Do,Check,Act)b 栄養補給c 栄養教育d 多領域からの栄養ケアe 短期目標、中期目標、長期目標f 評価とフィードバック

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栄養ケア・マネジメント(栄養管理)とは,

• 個人または集団の健康度を高めていくヘルスケア・サービスの一環

• 身体状況や栄養状態に応じた最適栄養ケアを,効率的かつ系統的に行うシステム

• 栄養マネジメントの目標は,対象者の栄養状態を改善し,生活の質(QO)を向上させること

•【参考書】Nブックス 改訂応用栄養学、p1.

A 栄養ケア・マネジメントの過程

• 栄養スクリーニング• 栄養アセスメント• 栄養ケアプラン• 栄養ケア実施• 栄養モニタリング• 栄養評価

主観的包括的評価(SGA)

客観的栄養評価(ODA)

栄養ケアプラン・実施

モニタリング

効果の評価(再評価)

栄養療法実施

栄養アセスメント

栄養ケア・マネジメント 栄養スクリーニングはSGAとODAに分類

• 主観的包括的評価(SGA)は対象者の記録• 食物摂取状態の変化• 消化器症状(吐き気、嘔吐、下痢、便秘、食欲不振)• 活動性(日常生活の可能性)• 疾患との関連性• 疾患の有無:疾病と食行動との関連性

SGAの概略

• SGAは1987年にDetskyらによって提唱された。•問診と病歴、簡単な身体症状によって栄養状態を評価できる。•特殊な測定器具などを必要としない。•迅速かつ簡易に栄養状態が評価できるだけでなく、検‘査デー夕を用いた客観的栄養評価(ODA)では得ることのできない患者さんの生の情報を得ることができる。

•各評価項圏の設定意図を十分理解して実施することで、客観的栄養評価(ODA)との相関が高い評価を行うことができる。

•繰り返し実践することで、実施者聞の誤差が小さく再現性の高い結果が得られるため、優れた栄養状態の初期評価法

SGA(主観的包括的評価)

•病歴•食物摂取によける変化•消化管症状•機能性•疾患、疾患と栄養必要量•身体スコア(皮下脂肪、筋肉、浮腫)•主観的包括的評価

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主観的包括的評価 (1)

1)体重の変化率(エネルギーバランス:1Kgは7,000Kcalに相当する• 過去6か月で10%以上の減少がある場合には慢性の栄養障害• 過去2週間で2%以上の変化があれば急性の栄養障害• 体重減少率=(健常児体重ー測定時体重)x100 /(健常時体重)• 標準体重 = 22 X 身長(m) x 身長(m) • BMI

主観的包括的評価 (2)

2) 食物摂取状態の変化• 変化の有無:食欲低下はどの程度で、どの期間続いているのか

• どのようなものがたべられるのか

• 食事回数はどの程度であるのか

• 食べ物の変化 (摂食・嚥下機能)• 食べ物の固さの変化(摂食機能)• 飢餓状態

主観的包括的評価 (2)

3) 消化器症状• 吐き気、嘔吐、下痢、便秘、食欲不振

4) 活動性• 日常生活の可能性 (ADL)• バーセルインデックス(バーセル )

• Berthel(http://j-chears.org/method/datas/JCHEARS-over65.pdf#search='baseru‘)• NYHA(心臓),

http://www.jhf.or.jp/a&s_info/guideline/post.html• Hugh-Jones:

5) 疾患との関連性• 疾患の有無:

NYHA 分類心不全_重症度、NYHA(心臓)

<ahref="http://www.jhf.or.jp/a&s_info/guideline/post.html">心不全分類</a>

心不全の重症度分類==

NYHA(New York Heart Association)分類

Ⅰ度 心疾患はあるが身体活動に制限はない。

日常的な身体活動では著しい疲労、動悸、呼吸困難あるいは狭心痛を生じない。

Ⅱ度 軽度の身体活動の制限がある。安静時には無症状。

日常的な身体活動で疲労、動悸、呼吸困難あるいは狭心痛を生じる。

Ⅲ度 高度な身体活動の制限がある。安静時には無症状。

日常的な身体活動以下の労作で疲労、動悸、呼吸困難あるいは狭心痛を生じる。

Ⅳ度 心疾患のためいかなる身体活動も制限される。

心不全症状や狭心痛が安静時にも存在する。わずかな労作でこれらの症状は増悪する。

(付) Ⅱs度身体活動に軽度制限のある場合

Ⅱm度身体活動に中等度制限のある場合

心不全の重症度分類

栄養アセスメント

• 以下の項目について、栄養状態を分析し、判定・評価する。客観的栄養評価OGA

1. 身体計測2. 血液生化学的所見3. 尿検査4. 免疫能5. 臨牀検査6. 食生活調査

1. 食行動2. 食態度3. 食環境の調査

身体計測

•身体(スコアで表示:0=正常,1+=軽度,2+=中等度,3+=高度)• (1)皮下脂肪の喪失(三角筋,胸部)• (2)筋肉喪失(四角筋,三角筋)• (3)くるぶし部浮腫• (4)仙骨浮腫• (5)腹水• (6)その他のSGA物理的要因

• ·口,歯,歯肉の障害• ·阻噛,嘩下の障害

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1. 身体計測

•人類学的計測値• 身長,体重,BMI,体脂肪率,健常時体重,体重変化率,膝下高

•脂肪と筋肉• 肩甲骨下部皮下脂肪厚,上腕三頭筋部皮下脂肪厚,上腕周囲長,上腕筋囲,下腿周囲など

• ウエスト周囲長 :メタボリック症候群• 男性:85cm、女性:90cm以上

•安静時エネルギー消費量:• 間接熱量測定法、心拍数、など

栄養の過不足の評価

•栄養の過不足は栄養摂取量により知ることができる。•栄養の過不足は身体症状に反映される。

• 長期の栄養過多:身長、体重、皮下脂肪• マラスムス型、Kwashiokor型、混合型

•栄養の過不足は、血液に反映される。•栄養状態は、尿に反映される。

試験問題

次郎さんが長期間静脈栄養を受けた時、口や肛門の周囲に皮疹を生じ、亜鉛欠乏が疑われた。

正解

我が国のメタボリックシンドロームの診断においてはウエスト周囲径として、最も細い部分を測定する。

誤り

呼気分析での呼吸商(RQ)から、体内で主に燃焼しているエネルギー源を推定することが可能である。

正解

基礎代謝の測定には、二重エネルギーX線吸収法(DEXA)が用いられる。誤り骨密度は、二重エネルギーX線吸収法(DEXA)によって測定できる。 正解

桃子さん(55歳の女性)のある日の食事調査をしたところカルシウム摂取量が650mg/日であったので、「骨粗鬆症の心配はない」といわれた。

誤り

ODAObjective Data Assessment

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1.身体計測的指標

• 1. %理想体重(%ideal body weight:%IBW)• %IBW =実測体重ノIBW x 100• (IBW =身長〔m)2×22)

• 2. %健常時体重(%usual body weight 】%UBW)• %UBW =実測体重ノUBW x 100

• 3.肥満指数(body mass index) 】体脂肪を反映する。• BMI =体重kgノ身長(m) 2 標準体重BMI = 22,痩せ<18.5,肥満>25

• 4.上腕三頭筋部皮下脂肪厚(4 triceps skinf old thickness 】TSF)• :体脂肪(皮下脂肪蓄積量)を反映する。• 利き腕でない腕の肩峰と尺骨頭の中間点で測定する。

• 5. 上腕筋囲(midupper arm muscle circumference : AMC)• :筋蛋白量の消耗程度の指標

2.血液生化学的所見• エネルギー状態

• 蛋白質:• 血清総蛋白質,血清アルブミン,血清ブレアルブミン,レチノール結合蛋白質,血清トランスフェリン

• 脂質:• 血清総コレステロール,中性脂肪,リボ蛋白質など

• 糖質:• 血糖,HbA1,フルクトサミンなど

• ミネラル:鉄,亜鉛鉄:ヘモグロビン,ヘマトクリット,血清鉄、血清フェリチン,トランスフェリン結合能

• ビタミン(脂溶性ビタミン、水溶性ビタミン)• 免疫能総リンパ球数,CRP,遅延型皮膚過敏反応,リンパ球幼若化反応など• 炎症:白血球数,CRP

静的アセスメント

•短時間では変化しない栄養評価項目により、一時点での栄養状態栄養を評価する。

•静的栄養指標は種々の因子の変動に影響されにくく、測定時付近の平均的栄養状態を反映するが、短期間の栄養状態の変化を評価することは困難である

• 初回の身体計測• 身長

• 免疫能

• 血清アルブミン

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静的アセスメント

•身体計測としての%IBW, TSF, AMCなど•血清総蛋白,アルブミンなど• コレステロール,• コリンエステラーゼ• クレアチニン身長係数(尿中クレアチニン)•血中ビタミン·ミネラル•免疫能としての総リンパ球数,遅延型皮膚過敏反応

1.3.1 静的栄養アセスメント

•個人あるいは集団の栄養状態を評価して摂取栄養素の過不足,疾患特有の栄養状態の異常を判定するもの

• Blackburnの栄養アセスメントがこれにあたる。指標は身体計測,免疫能,代謝回転の遅い(生物学的半減期が長い)臨床検査などで,低栄養状態の判定や低栄養状態のタイプを判定する。

静的指標の測定項目

•身体指標:Body mass index(BMI)、皮厚、上腕筋囲、体脂肪率•血漿蛋白:血清総蛋白、アルブミン、コレステロール、尿中クレアチニン、血中ビタミン、微量元素

•免疫学:末梢血リンパ球数

動的アセスメント

• 短時間で変化する栄養評価項目により、少なくとも二回以上の検査により栄養状態を判定する。

•動的栄養指標は短期間、リアルタイムの代謝、栄養状態の評価が可能である。

• トランスサイレチン:動的アセスメント、半減期:2-3日• 血清レチノール結合タンパク:動的アセスメント、半減期 12-14時間• トランスフェリン:半減期 7-10日• 遅延型皮膚反応:免疫能の変化

• フィッシャー比

1.3.3 予後推定のためのアセスメント

•術前の栄養状態の改善により術後のリスクを軽減できることをBuzbyらが報告した。

•術前の栄養状態の評価の重要性が認識され,手術効果を事前に予測する指数がその後

•次々と報告されている。日本でも,胃がんや食道がん,大腸がん患者を対象とした予後判定の指数が発表されている。

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Buzbyの予後判定指数(prognostic nutritional index : PNI)• PNI=158-(16.6×Alb)-(0.78×TSF)-(0.22×TFN)-(5.8×DCH)• Alb:血清アルブミン(g/dl),TSF:上腕三頭筋部皮厚(mm),• TFN:血清トランスフェリン(mg/dl),• DCH:遅延型皮膚過敏反応(0;反応なし,1;5 mm以下,2;5 mm以上)

•評 価:PNI≧50:ハイリスク,40≦PNI<50:中等度,PNI<40;低リスク

1.4 アセスメントの方法

• 1.4.1 臨牀診査• 1.4.2 身体計測• 1.4.3 臨牀検査• 1.4.4 栄養食事調査

A 栄養過不足の評価

• 1)エネルギー過不足• たんぱく質の過不足•脂質の過不足•糖質の過不足• ビタミンの過不足• ミネラルの過不足

2. 臨牀検査・症状と疾病

• 2.1 血液生化学検査• 2.2 尿・便検査• 2.3 生理機能検査• 2.4 内分泌検査• 2.5 免疫機能検査• 2.6 体組成測定• 2.7 臨牀症状と疾患

2.1 血液生化学検査

• 2.1.1 基準値、基準範囲• 2.1.2 血液一般検査• 2.1.3 血清たんぱく• 2.1.4 血糖、ヘモグロビン、フルクトサミン• 2.1.5 血清脂質• 2.1.6 非たんぱく性窒素• 2.1.7 電解質• 2.1.8 ビリルビン• 2.1.9 血清酵素• 2.1.10 酸塩基平衡

2.1.1 基準値、基準範囲

•基準値および基準範囲は,疾患異常がない多数人の測定値の「平均値±2標準偏差」

•健常人集団の95%の範囲の人をカバーするものであり,絶対的なものではない。

•測定値はつねに一定ではなく,個人間変動(個人差,性差,人種差,地域差,食習慣,職業,年齢など)や個人内変動(日内,日差,季節,食事,体位,運動,性周期,妊娠など)といった生理的変動の影響を受ける。

•測定方法などによっても値が大きく異なる場合がある

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2.1.2 血液一般検査

•赤血球数(RBC),ヘモグロビン(Hb),ヘマトクリット(Ht),血小板数(Plt),白血球数(WBC)などが測定される。

• RBC,Hb,Htなどの赤血球系検査は貧血や赤血球増加症の診断,Pltは凝固線溶系機能の指標,WBCは炎症性疾患や血液疾患の診断に有用である。

栄養摂取基準の基礎

•策定の対象とするエネルギー及び栄養素• 健康増進法に基づき、厚生労働大臣が定めるものとされている図

2 に示した熱量及び栄養素について策定の対象とする。

イ 国民の栄養摂取の状況からみてその欠乏が国民の健康の保持増進に影響を与えているものとして厚生労働省令で定める栄養素

• ロ 国民の栄養摂取の状況からみてその過剰な摂取が国民の健康の保持増進に影響を与えているものとして厚生労働省令で定める栄養素

●エネルギーの指標

• エネルギーの指標は、エネルギー摂取の過不足の回避を目的とする指標を設定する。

栄養素の指標

• 栄養素の指標は、三つの目的からなる五つの指標で構成する。

•1)具体的には、摂取不足の回避を目的とする3 種類の指標

•2)過剰摂取による健康障害の回避を目的とする指標、

•3)生活習慣病の予防を目的とする指標から構成する

推定平均必要量、推奨量、目安量

•摂取不足の回避を目的として、• 「推定平均必要量」(estimated average requirement:EAR)を設定する。推定平均必要量は、半数の人が必要量を満たす量である。

•推定平均必要量を補助する目的で「推奨量」(recommended dietary allowance:RDA)を設定する。推奨量は、ほとんどの人が充足している量である。

• 十分な科学的根拠が得られず、推定平均必要量と推奨量が設定できない場合は、「目安量」(adequate intake:AI)を設定する。一定の栄養状態を維持するのに十分な量であり、目安量以上を摂

取している場合は不足のリスクはほとんどない。

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耐容上限量

•過剰摂取による健康障害の回避を目的として、「耐容上限量」(tolerable upper intake level:UL)を設定する。十分な科学的根拠が得られない栄養素については設定しない。

目標量

•「生活習慣病の予防のために現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量」として「目標量」(tentative dietary goal for preventing life-style related diseases:DG)を設定する。

年齢区分

•乳児については、「出生後6 か月未満(0~5 か月)」と「6 か月以上1 歳未満(6~11 か月)」の二つに区分する

•1~17 歳を小児、

•18 歳以上を成人とする。

•高齢者を成人から分けて考える必要がある場合は、70歳以上を高齢者とするが

推定平均必要量(estimated average requirement:EAR)•対象集団において測定された必要量の分布に基づき、母集団(例えば、30~49 歳の男性)における必要量の平均値の推定値を示すものとして「推定平均必要量」を定義する。

•当該集団に属する50% の人が必要量を満たす

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推奨量

•ある対象集団において測定された必要量の分布に基づき、母集団に属するほとんどの人(97~98%)が充足している量として「推奨量」を定義する。

•推奨量=推定平均必要量×(1+2×変動係数)=推定平均必要量×推奨量算定係数

•目安量

•特定の集団における、ある一定の栄養状態を維持するのに十分な量として「目安量」を定義する。

•十分な科学的根拠が得られず「推定平均必要量」が算定できない場合に算定するものとする。

•実際には、特定の集団において不足状態を示す人がほとんど観察されない量として与えられる。

耐容上限量

•健康障害をもたらすリスクがないとみなされる習慣的な摂取量の上限を与える量として「耐容上限量」を定義する。これを超えて摂取すると、過剰摂取によって生じる潜在的な健康障害のリスクが高まると考える。

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目標量

•生活習慣病の予防を目的として、特定の集団において、その疾患のリスクや、その代理指標となる生体指標の値が低くなると考えられる栄養状態が達成できる量として算定し、現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量として「目標量」を設定する。

•これは、疫学研究によって得られた知見を中心とし、実験栄養学的な研究による知見を加味して策定されるものである。

栄養と代謝

1)エネルギー過不足の評価

•肥満とやせ(マラスムス、クワシオコル)•栄養素と• 1Kgについて7000Kcal• 1Kgで腹囲1cm

たんぱく質栄養評価

血清総蛋白質

•正常成人で6.5g/dlー8.0g/dl• タンパク質泳動により5つの分画

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血清蛋白質○高蛋白血症(全患者の約7%)

1.血液濃縮,脱水症

2多クローン性高γグロブリン血症,慢性肝障害,慢性感染症,膠原病,リンパ増殖性疾患,など

3.単クローン性高γグロブリン血症,多発性骨髄腫,マクログロプリン血症,など

○低蛋白血症(全患者の約14%)1.血液希釈,水中毒症,妊娠2.低アルブミン血症

ネフローゼ症候群,蛋白漏出性胃腸症,悪液質,重症肝障害,など

蛋白分画

蛋白漏出

1.選択性蛋白漏出型 selectiveprotein-losing Typeaネフローゼ症候群

2 非選択性蛋白漏出型non-selectiveprotein-losing typea.尿中への漏出 萎縮腎,慢性腎不全

b.胃腸管への漏出 蛋白漏出性胃腸症

c.皮膚からの漏出 滲出性皮膚疾患(熱傷水萢症など)d.肺への漏出 滲出性肺疾患旨1(肺壊疽,大葉性肺炎な

ど)

e. 失血f.リンパ漏,乳靡尿g.胸水・腹水穿刺

2)たんぱく質栄養評価

• 蛋白栄養状態の判定:• レチノール結合蛋白、トランスフェリン、プレアルブミン

• レチノール結合蛋白の半減期は12時間• プレアルブミンは3-4日• トランスフェリンは7日• アルブミンの低値は:長期間の栄養状態低下時の指標となる。

1)レチノール結合蛋白(retinal-binding protein:RBP)• レチノール結合蛋白は肝で合成される•分子量2.2万、半減期16時間の糖蛋白• RBPは血中でレチノール(ビタミンA)を結合し、運搬する。•血中半減期が短く、栄養状態変動を感度よく表すため、入院期間中、術前術後など短期の栄養状態の指標

• RBPは肝胆道系疾患で減少する。•糸球体濾過能の低下疾患では増加する。• たんぱく栄養障害病態把握にも利用される。

レチノール結合たんぱく

•基準範囲:22.0~40.0mg/dl•高値を示す疾患:

• 腎不全、ネフローゼ症候群、甲状腺機能亢進症•低値を示す疾患:

• 栄養摂取不足、術後栄養不良、重症肝障害、感染症、悪性腫瘍、妊娠

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2)トランスサイレチン(transthyretin:TTR)

• プレアルブミンとも呼ぶ• TTRは肝細胞で合成される分子量5.5万の4量体蛋白•血中ではサイロキシン(T4)の一部と結合し、これを輸送する•血中のT4の10~15%がTTRと結合している•甲状腺ホルモンの生理活性は、T3の方が強いが、血液を循環する甲状腺ホルモンのほとんどはT4である

•血中の半減期は1.9日と短く、蛋白の摂取状況を鋭敏に反映する。•急性炎症(火傷)や感染症で減少。

トランスサイレチンの基準値

•基準範囲:2.8~7.6mg/dl•高値を示す疾患:

• 腎不全、脂肪肝、高脂血症•低値を示す疾患:

• ビタミンA欠乏症、吸収不良症候群、重傷肝障害、閉塞性黄疸、甲状腺機能亢進症、感染症、外傷

3)トランスフェリン(transferrin:Tf)

• Tfは分子量約8万の糖蛋白である。•血中における鉄イオンの運搬に関連• Tf自体は肝で産性される血漿蛋白で栄養指標として利用する場合、半減期が7日と短い。

• く、重篤な栄養障害で減少するので有用性は高い。しかし、鉄欠乏で増加するなど、

•鉄代謝の影響が大きく、炎症、感染

トランスフェリン

•基準範囲:190~320mg/dl•高値を示す疾患:

• 鉄欠乏性貧血、真性多血症(妊娠)•低値を示す疾患:

• 先天性無トランスフェリン血症、栄養障害、重症肝障害、感染症、

4)アルブミン

• Albは肝で合成され、体蛋白の消耗を補うアミノ酸の供給源でもある•腎疾患で尿中に漏出しやすいなど、肝疾患、腎疾患の影響を受けやすい。

•血清アルブミンは内臓蛋白の指標となり、半減期は17~21日•低アルブミン血漿は3.1-3.5g/dlを軽度、3.0-2.5を中程度、2.5g以下は高度であり、浮腫が出現

アルブミンの基準値

•基準範囲:4.0~5.0g/dl•高値を示す疾患:

• 脱水症•低値を示す疾患:

• 吸収不良症候群、ネフローゼ症候群、炎症性疾患、熱性疾患

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5)C-反応性蛋白(C-reactiv protein:CRP)

•栄養アセスメントにおける動的指標として利用されるRBPやTTRやTfは炎症時に低下するため、これらの低下が低栄養によるものか、炎症によるものかを鑑別するためにCRPを栄養指標と同時に測定は有効である。

2.1.6 非たんぱく性窒素

• 2.1.6.1 尿素• 2.1.6.2 クレアチニン• 2.1.6.3 尿酸

尿素

尿素窒素

化合物 物質量(mg/dl) 含有窒素量(mg/dl)尿素 18-42 8-18尿酸 2-7 0.8-2.3クレアチン 0.2-0.6 0.06-0.2クレアチニン 0.5-1.2 0.2-0.5アミノ酸 32-55 3.5-5.0アンモニア 0.012-0.036 0.01-0.0NPN - 25-32

2.1.6.1 尿素

•尿素はアミノ酸の最終代謝産物であり,腎糸球体で自由に濾過された後,約50%が尿細管で再吸収され排泄される。

• したがって,尿素窒素(BUN)は腎糸球体の濾過能や腎尿細管での再吸収能の指標のひとつとして繁用される。

• ただし,たんぱく質摂取量,たんぱく異化,消化管出血,尿素合成能などの影響を受けるので,ほかの指標との併用が必要である。

尿素回路

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1.たんぱくの異化亢進

• 1.組織蛋白の異化亢進体内でのNH3生成が増加し,尿素合成量が増加する。

• たとえば1kgの筋肉が崩壊したとすれば,約1,400mMの尿素(尿素窒素として約40gに相当)が生成される。

蛋白の異化亢進状態

•外科的大手術,体内への出血,異型輸血悪性腫瘍,飢餓時,高熱,高度火傷,アジソン病のクリーゼ,糖尿病性アシドーシス,甲状腺機能尤進症,膵臓壊死,重症感染症などでみられ,またTC系抗生剤の投与によっても蛋白異化亢進が起こる。

クレアチンとクレアチニン

クレアチンの合成

• アルギニンとグリシンから、グリシンアミジノトランスフェラーゼ(EC 2.1.4.1)、グアニジノ酢酸-N-メチルトランスフェラーゼ (EC 2.1.1.2) 、クレアチンキナーゼ (EC 2.7.3.2)の作用により、クレアチンリン酸として合成される。

• この反応は腎臓と肝臓にて行われる。• クレアチンリン酸は筋肉のように瞬時に多量にエネルギーを消費する器官において、高エネルギーリン酸結合の貯蔵物質として働く。急激な運動により筋肉組織にてATPが不足した場合、

• クレアチンリン酸 + ADP → クレアチン + ATPとなりATPが補給される。

クレアチンよりクレアチニンへ

• ここで生じたクレアチンはクレアチンキナーゼにより再びリン酸化され、クレアチンリン酸として再利用されるか、非可逆的な非酵素的脱水を経てクレアチニンになる。クレアチニンは最終的には腎臓にて尿中に排泄される

クレアチニンの生理

• Crは主に筋肉で作られて血中に入り、糸球体で濾過された後、殆ど再吸収されず速やかに尿中に排出される。

•意義[編集]• Crは主に筋肉で作られるので、血清中のCr濃度(以下、血清Cr値)は筋肉のスクリーニング検査に用いられる。また、Crは腎臓から速やかに尿中に排出されるので、血清Cr値は腎臓のスクリーニング検査に用いられる。また、血清Cr値は尿中Cr濃度と併せて腎機能検査に用いられる。

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2.1.6.2 クレアチニン

• クレアチニン(Cr)は,腎糸球体で自由に濾過され,大部分が尿細管で再吸収されずに排出される。

•尿細管での分泌もほとんどないため,Cr濾過量と尿中排泄量はほぼ等しい。腎糸球体機能低下により尿中への排泄量が減少し,血清Crが高値を示す。

• Cr総量は体筋肉量を反映しているので、体筋肉率の多い男性の方が正常値も高い。

•正常値は施設によって若干異なるが概ね以下の通り。

クレアチニンクリアランス(Ccr)

•腎障害の程度の評価,経過観察時に糸球体濾過値(GFR)を知る簡便な方法として利用される。1分間に濾過できる血漿Cr量で表される。

• Ccr=[( 尿中Cr値mg/dl×尿量ml/分)/血清Cr値mg/dl]×[1.73/体表面積m2]

•血清Cr値:男性で0.6~1.2mg/dl、女性で0.4~1.0mg/dl•尿中Cr濃度:男性で20~26mg/kg/日、女性で14~22mg/kg/日

尿酸(Uric Acid)

2.1.6.3 尿酸

•尿酸は核酸のプリン塩基の最終代謝産物であり,腎糸球体で濾過された後尿細管から再吸収される。尿酸の産生過剰,腎臓からの排泄低下などにより血清尿酸の増加がみられるが,高尿酸血症であることが必ずしも痛風とは限らない。

プリン環 尿酸合成(デノボ経路とサルベージ経路)

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尿酸の血液中飽和

•尿酸は1日に500~800mg合成されて,体液中に放出され,正常の体内プールとしては約1,130mg程度

•体液中の尿酸は,pH6.5よりアルカリ側にあって主として尿酸Na塩として存在

•尿酸Naの溶解度は,pH7.4の正常血清中では7.0mg/dlといわれ,尿酸にすると6.4mg/dl

尿酸の排せつ

• 尿酸の体内プールの約80%は尿中に排泄

• 腎糸球体から濾過された尿酸は一部尿細管上皮から再吸収される。

• 1日に300~750mgの尿酸が尿に排泄

• 尿のpHが6.5以下と酸性側に傾くと尿酸塩から尿酸となり,その溶解度か著しく低いため,しばしば低温で淡紅色の沈殿を生ずる。

高尿酸血症

•日本プリン・ピリミジン代謝学会では7mg/dl以上を高尿酸血症,2mg/dl以下を低尿酸血症とするよう提案している。

•痛風、食事性高尿酸血症、細胞破壊性高尿酸血症、Lesch-Nyhan

食品中の100グラム当たりのプリン体含有量[1]種別 mg

肉類

鶏肉のレバー 312牛肉のレバー 219

鶏もも肉 122

魚介類

煮干し 746カツオ 211

クルマエビ 195

野菜・穀物

マイタケ 98.5大豆 172

納豆 113

脂質の栄養評価

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高脂血症

高脂血症の診断・経過観察

総コレステロール,トリグリセリド(TG),HDL-コレステロール,LDL-コレステロール

続発性高脂血症の鑑別

尿検査,血液生化学検査,血糖,甲状腺機能検査など

総コレステロール

コレステロールの構造 コレステロールの合成

アセチルCoA+アセチルCoA

アセトアセチルCoA+アセチルCoA

HMG-CoA

メバロン酸

コレステロール

HMG-CoA還元酵素

フィードバック抑制

コレステロールの合成・利用・排泄

生体活性物質 胆汁酸

ビタミンD

ステロイドホルモン

構造 生体膜

輸送 LDLコレステロール

HDLコレステロール

排泄 一次胆汁酸として腸管へ腸管で二次胆汁酸胆汁酸の98-99%は腸管循環

コレステロールの輸送腸管吸収

腸管でB48,Aで未熟性CM未熟性CM+HDLのC,Eが付与されるCM=C+TG+B46,+A+C+ECMはLPLでTGが分解され、CMレムナントCMレムナントは肝臓CM受容体で肝臓に運搬

肝臓 産生CとCMよりのコレステロール肝臓より、VLDLとともに、末梢に運搬されるB100とAで、VLDLはHDLよりC.Eが渡され、B100+ACEVLDLからIDLさらに末梢LPLによりより小さいLDLLDLのアポB100を認識するLDL受容体により細胞内取り込み

HDL HDLは小腸で合成される、アポAを持つが血液中でCEを摂取HDL末梢のコレステロールを奪取し、LCATの働きでコレステロールエステル化

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腸管でのコレステロール吸収

1) 腸管でB48,Aで未熟性CMが産生2) 未熟性CM+HDLのC,Eが付与される3) CM=C+TG+B46,+A+C+E4) CMはLPLでTGが分解され、CMレムナント5) CMレムナントは肝臓CM受容体で肝臓に運搬

肝臓とコレステロール

肝臓 産生CとCMよりのコレステロール肝臓より、VLDLとともに、末梢に運搬されるB100とAで、VLDLはHDLよりC.Eが渡され、B100+ACEVLDLからIDLさらに末梢LPLによりより小さいLDLLDLのアポB100を認識するLDL受容体により細胞内取り込み

HDLの合成

HDL HDLは小腸で合成される、アポAを持つが血液中でCEを摂取HDL末梢のコレステロールを奪取し、LCATの働きでコレステロールエステル化

血液中のコレステロール

肝性中性脂肪リパーゼ(HTGL)レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)はHDLでコレステロールエステルを作る

コレステロールエステル転送たんぱく(CETP)でHDLコレステロールのコレステロールがLDLに受け渡される。

トリグリセリド

トリグリセリド代謝

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トリグリセリドの生体内運搬

• モノアシルグリセロールの形で腸管吸収される。• B48,Aアポプロテインに取りこまれ、キロミクロンとなる。• キロミクロンはリンパ管より血液へ•血液中のキロミクロンはリポプロテインリパーゼにより脂肪組織へ、•脂肪組織の脂肪はホルモン感受性リパーゼにより、FFAとグリセロール

FFA(遊離脂肪酸)の体内移動

• FFTはアルブミンにより運搬される。• FFTは心筋、骨格筋、腎臓に運搬• アシルカルニチンによりミトコンドリアに移動• Β酸化により、アセチルCoAに変化

遊離脂肪酸の分類

•飽和脂肪酸• 1価不飽和脂肪酸•多価不飽和脂肪酸

• αリノレン酸(n3)• リノール酸(n6)• アラキドン酸

必須脂肪酸

• リノール酸• Γリノレン酸を経てアラキドン酸へ

• アラキドン酸• アラキドン酸カスケード• シクロオキシゲナーゼ(プロスタグランディン)• リポキシゲナーゼ(ロイコトリエン)

• リノレン酸(αリノレン酸:ω3)• DHA,EPA• 細胞膜の流動性

N6およびn3より生理活性物質

エイコサノイドの代謝

プロスタグランディン

トロンボキサン

ロイコトリエン

C) 脂質の栄養評価

• コレステロール、トリグリセリド空腹時の採血で、次のA)~C)のいづれかを満たす状態を脂質異常症といいます。

B)LDLコレステロ-ル:140mg/dl以上・・・・高LDLコレステロ-ル血症

C)HDLコレステロ-ル:40mg/dl未満・・・・低HDLコレステロ-ル血症

D)中 性 脂 肪 :150mg/dl以上・・・・高トリグリセライド血症

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血清脂質の基礎

• コレステロール,中性脂肪(トリグリセライド:TG)などの脂質は,血液中ではリポたんぱく質として存在する。

• カイロミクロン,VLDL,LDL,HDLはそれぞれ含有するコレステロール,TG,リン脂質の比率が異なる。

•通常,総コレステロール,HDLコレステロール,LDLコレステロール,TGの三者が測定される

•病型分類や脂質異常症の病態・病因を検討する場合,リポたんぱく質分析やアポたんぱく質測定による精査が行われる。

Friedwaldの計算式(TG値が400mg/dl未満の場合)

LDLコレステロ-ル=(総コレステロ-ル)-(HDLコレステロ-ル)-(中性脂肪)×0.2

NON-HDLコレステロ-ル=総コレステロ-ル - HDLコレステロ-ル

糖質の栄養評価

糖質の栄養障害

•高血糖•低血糖

•糖質• ブドウ糖、フルクトース、ガラクトース

• グリコーゲン

2.2.3 尿糖

•尿糖は,血糖が180 mg/dl 以上になると尿細管の再吸収量を超えて検出される。糖尿病の全体像把握に利用される。

• ただし尿糖が検出されただけで糖尿病と判定されるわけではない。尿細管機能障害を伴う腎疾患では,尿細管での糖質再吸収が障害される(腎性糖尿)。

2.2.4 ケトン体

• ケトン体は,インスリン作用不足などにより脂肪がエネルギー源として利用され続けたときに血中に増加し,その結果尿中に検出される。糖質の利用不足状態を知ることができる。

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2.1.4 血糖、ヘモグロビン、フルクトサミン

•血糖は血液中に含まれる糖質量,ヘモグロビンA1c(HbA1c)はヘモグロビンに糖が結合したグリコヘモグロビンの安定型

• フルクトサミンは血清たんぱくのリジン残基に糖が結合した血清糖化たんぱく質。

•糖尿病の診断には空腹時血糖(≧126mg/dl),ブドウ糖負荷試験(2時間値≧200 mg/dl),随時血糖(≧200 mg/dl)。

•血糖値は測定日の数日前,フルクトサミンは2週間程度,HbA1c は1〜2か月程度の状態を反映

糖尿病の管理と診断

合併症の診断・管理

●網膜症:眼底検査

●腎症:尿検査,尿中微量アルブミン,Ccr,尿中N-アセチル-β-D-グルコサミニダーゼ(NAG),尿中β2-ミクログロブリン

●神経症:末梢神経伝導速度,心電図,R-R間隔変動係数

●動脈硬化:総コレステロール,トリグリセリド(TG),HDL-コレステロール

経過観察

●血糖コントロール状況:血糖,HbA1c,フルクトサミン,1,5-AG

●尿検査:尿糖,尿ケトン体

ビタミン栄養評価

ビタミンの栄養評価

•水溶性ビタミン• ビタミンB1,B2,B6,B12、ビタミンC,葉酸

•脂溶性ビタミン• ビタミン A

• ビタミン D

• ビタミン E

• ビタミン K

ビタミン欠乏

• ビタミンA:血清レチノール• ビタミンC:血清アスコルビン酸• ビタミンB1:赤血球トランスケトラーゼ• ビタミンB2:赤血球グルタチオン還元酵素活性

ビタミン A

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ビタミンAの定義

• ビタミンA は、レチノイドといい、その末端構造によりレチノール(アルコール)、レチナール(アルデヒド)、レチノイン酸(カルボン酸)に分類される

• 。経口摂取した場合、体内でビタミンA 活性を有する化合物は、レチノールやレチナール、レチニルエステル、並びにβ─カロテン、α─カロテン、β─クリプトキサンチンなどおよそ50 種類に及ぶプロビタミンA カロテノイドが知られている

生理作用

• レチノールとレチナールは、網膜細胞の保護作用や視細胞における光刺激反応に重要な物質である。

• レチノイン酸は、転写因子である核内受容体に結合して、生物活性を発現するものと考えられる。

• ビタミンA が欠乏すると、乳幼児では角膜乾燥症から失明に至ることもあり、成人では眼所見として暗順応障害が生じ、夜盲症になる。

•角膜上皮や結膜上皮の角質化によって角膜や結膜が肥厚し、ビトー斑という泡状の沈殿物が白眼に現れる。

•皮膚でも乾燥、肥厚、角質化が起こる。

• 1.ビタミンA別名、レチノール(retinol)。淡黄色、脂溶性ビタミンで、酸化されやすい。

11-シス-レチナールは、視細胞で、オプシンと結合して、ロドプシンを構成する。光のエネルギーを吸収すると、11-シス-レチナールは、トランス-レチナールに変化する。そうすると、視細胞の膜透過性が変化し、電気インパルスが生じる。

•植物に含まれるカロテノイド(プロビタミンA)は、小腸でビタミンAに転換され、吸収され、カイロミクロンと結合して、リンパ管を経て、血中に輸送され、カイロミクロンレムナントとして肝臓に取り込まれる。ビタミンAは、肝臓で加水分解され、レチノールとなり、肝臓の類洞の肝星細胞(伊東細胞)にレチノールエステルとして、貯蔵される。ビタミンAが欠乏すると、暗順応(暗調応)が低下し、夜盲症になる。また、皮膚や粘膜の角質化や、易感染性が生じる。

ビタミンAの病態

• ビタミンA の典型的な欠乏症として、乳幼児では角膜乾燥症から失明に至ることもあり、成人では夜盲症を発症する。

•成長阻害、骨及び神経系の発達抑制もみられ、上皮細胞の分化・増殖の障害、皮膚の乾燥・肥厚・角質化、

•免疫能の低下5)や粘膜上皮の乾燥などから感染症にかかりやすくなる。

• 18 歳以上の成人男性のビタミンA の推定平均必要量は550~650 μgRAE/日、18 歳以上の成人女性は450~500 μgRAE/日とした

•ビタミンAが欠乏すると、感染症の罹患率や死亡率が高くなる。皮膚や粘膜は、微生物の侵入を防ぐ、最初の防波堤だが、ビタミンAは、皮膚や粘膜の上皮細胞のケラチン生成を促進させる。

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• ビタミンAは、結核菌抗原に対するIL-2産生を増幅させる。しかし、βラクトグロブリンや旋毛虫に対するIL-2産生を抑制する。ビタミンAが欠乏すると、IL-2やIFN-γ産生は、増強される。ビタミンAが欠乏するとNK細胞数やNK細胞活性は、低下する。ビタミンAが欠乏すると、好中球数は減少しないが、遊走能、粘着能、貪食能、殺菌能(活性酸素やカテプシンGの産生能)は、低下する。

•過剰摂取による臨床症状の多くは、レチノイン酸によるものと考えられている22)。

• ビタミンA の過剰摂取による臨床症状では頭痛が特徴である。急性毒性では脳脊髄液圧の上昇が顕著であり、慢性毒性では頭蓋内圧亢進、皮膚の落屑、脱毛、筋肉痛が起こる。

•成人では肝臓へのビタミンA の過剰蓄積による肝臓障害25)を指標にし、最低健康障害発現量を13,500 μgRAE/日とした。不確実性因子を5 として耐容上限量は2,700 μgRAE/日とした。

• β─カロテン、α─カロテン、クリプトキサンチンなどのプロビタミンA カロテノイドからのビタミンA への変換は厳密に調節されているので、ビタミンA 過剰症は生じない。

• ビタミンA に変換されなかったプロビタミンA カロテノイドやリコペン及びルテイン、ゼアキサンチンなどのビタミンA にはならないカロテノイドの一部は体内にそのまま蓄積する。

• これらカロテノイドの作用としては、抗酸化作用、免疫賦活作用などが想定されている。

ビタミン B1

ビタミン B1

• ビタミンB1は、体内でリン酸化され、チアミンニリン酸(TDP、又は、TPPと略記)になる。

• ビタミンB1は、糖質代謝に重要:ビタミンB1は、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、2-オキソグルタル酸デヒドロゲナーゼ(α-ケトグルタル酸脱水素酵素:KGDH)、トランスケトラーゼ(ペントースリン酸回路)の補酵素になる。

• Pyruvate dehydrogenaseは、ミトコンドリア内膜に存在し、TCA回路を制御• ビタミンB1が不足すると、ピルビン酸が、ピルビン酸デヒドロゲナーゼにより、アセチル-CoAに変換されず、ビルビン酸血液中に増加し、乳酸アシドーシスを来たす。

• pyruvate carboxylaseによりピルビン酸がオキサロ酢酸に変換される

ビタミンB1の病態

• ビタミンB1が欠乏すると、疲れ易くなったり、脚気、Wernike脳症(ウェルニッケ脳症)を起こす。

• Wernike脳症では、眼球運動麻痺、歩行運動失調、意識障害を伴い、アルコール依存症で、ビタミンB1不足だと発症するが、高カロリー輸液投与時に、ビタミンB1を添加しないで発症したWernike脳症では、後遺症として、記憶障害が問題になっている。

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• ビタミンB1 は、補酵素型のTDP として、グルコース代謝と分枝アミノ酸代謝に関与している。

• ビタミンB1 欠乏により、神経炎や脳組織への障害が生じる。ビタミンB1 欠乏症は、脚気とウェルニッケ- コルサコフ症候群がある。

• ビタミンB1 過剰症では、頭痛、いらだち、不眠、速脈、脆弱化、接触皮膚炎、かゆみなどの症状が現れる1)。

ウェルニッケ脳症

• ウェルニッケ脳症(Wernicke's encephalopathy)では、眼球運動障害、運動失調、意識障害などの症状が現れる。

• ウェルニッケ脳症では、MRI検査を行うと、FLAIR横断像で、橋下部被蓋部、中脳周囲は左右対称性に高信号を呈する。

食事摂取基準

•推定平均必要量の値をチアミンとして0.35 mg/1,000 kcal と算定した(図3 の矢印)。

• チアミン塩酸塩量としては0.45 mg/1,000kcal となる。• この値を1~69 歳の推定平均必要量算定の参照値とし、対象年齢区分の推定エネルギー必要量を乗じて推定平均必要量を算定した。

•妊婦のビタミンB1 付加量(推定平均必要量)を、妊娠後期のエネルギー要求量の増大から算定された0.2 mg/日とした。

•推奨量は、推奨量算定係数1.2 を乗じると0.24 mg/日となるが、丸め処理を行い、0.2 mg/日とした。

耐用上限量

• 通常の食品で可食部100 g 当たりのビタミンB1 含量が1 mg を超える食品は存在しない。通常の

•食品を摂取している人で、過剰摂取による健康障害が発現したという報告は見当たらない。

ビタミンB2

概要

•別名、リボフラビン(riboflavin)。黄色の結晶。リボフラビンは、既に1879年に、凝乳(カード:乳が固まって豆腐状になった物)を分離した牛乳中に存在する、黄緑色の水溶性の蛍光色素として、見出されていた。ビタミンB2は、体内で、フラビンヌクレオチドである、FMN(flavin

mononucleotide)と、FAD(flavin adenine dinucleotide)の一部となり、酸化還元反応で、水素(還元電子)の運搬体になる。ビタミンB2は、脂質代謝に関与する。

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ビタミンB1の代謝

• 食品中のビタミンB2(リボフラビン)は、小腸(回腸下部)で、Na依存性に吸収される。

• 吸収されたビタミンB2は、大半が、小腸粘膜でリン酸化されFMNとなり、血液中を血漿アルブミンや血漿グロブリンと結合し、肝臓や腎臓に輸送され、FADに変換される。

• ビタミンB2から誘導されるFMNやFADは、TCA回路や、電子伝達系を構成する

• ビタミンB2が不足すると、エネルギー生成障害が生じる。

• グルタチオンペルオキシダーゼ-グルタチオン還元酵素系は、過酸化脂質を処理する。

• FADは、グルタチオン還元酵素の補酵素なので、ビタミンB2(リボフラビン)不足だと、過酸化脂質処理能が低下する。

• ビタミンB2欠乏では、グルタチオン還元酵素活性が低下し、血中過酸化脂質が上昇

ビタミンB2を含む食品と病態

• ビタミンB2は、八目ウナギ、強化米、乾燥酵母、レバー、糸引納豆、鶏卵(卵黄)、のりなどに、多く含まれている。

• ビタミンB2(リボフラビン)の代謝は、甲状腺ホルモン、アルドステロン、ACTH等、ホルモンにより、調節されている。

• 甲状腺機能低下症の患者では、肝臓のビタミンB2(リボフラビン)、FMN、FADが、減少している。

症状

• ビタミンB2は、皮膚での、炭水化物や蛋白質の代謝に関与する。

• ビタミンB2が欠乏すると、口唇糜爛(びらん)、口角炎、口唇炎、口内炎、舌炎などの症状が現れる。

•甘い物(糖分)を食べ過ぎると、糖分の分解の為、ビタミンB2が消費され、皮脂の分泌量が増加する。

• ビタミンB2の欠乏は、過酸化脂質の増加を来たすという。

食事摂取基準

• 1~69 歳のエネルギー摂取量当たりの推定平均必要量を算定するための参照値は、0.50 mg/1,000 kcal となる。

• この値に、対象年齢区分の推定エネルギー必要量を乗じて推定平均必要量を算定した。

•推奨量は、推定平均必要量に推奨量算定係数1.2 を乗じた値とした。•妊婦のビタミンB2 付加量(推定平均必要量)は、妊娠後期のエネルギー要求量の増大から算定された0.23mg/日を丸め処理した0.2 mg/日とした。

•推奨量は、推定平均必要量に推奨量算定係数1.2 を乗じると0.27 mg/日となり、丸め処理を行い、0.3 mg/日とした。

ナイアシン(ビタミンB3)

ニコチン酸アミド

• ニコチン酸のアミド(ニコチンアミド)は、NAD+(nicotinamide adenine dinucleotide:ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)、NADP+

(nicotinamide adenine dinucleotide phosphate:ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)の一部となり、酸化還元反応で、補酵素として、水素(還元電子)を運搬する。

• ニコチン酸は、生体内では、必須アミノ酸である、トリプトファン(Trp)から合成され、腸内では、腸内細菌から合成されるので、通常、ニコチン酸の欠乏を来たさない。

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ニコチン酸と糖質代謝

• ニコチン酸が欠乏すると、ペラグラ(pellagra)を呈する。• ペラグラは、皮膚炎、下痢、痴呆を3徴候とする。• トウモロコシを主食としていると、トリプトファンが不足し、ペラグラになりやすい(トウモロコシが寄生したカビにより、ニコチン酸を分解され、ニコチン酸が欠乏する)。

• ミトコンドリアで、ピルビン酸を代謝するピルビン酸デヒドロゲナーゼ(ビタミンB1が補酵素)は、NAD+を必要とするので、ニコチン酸が欠乏すると、ブドウ糖の代謝に障害が生じ、乳酸が蓄積して、疲労しやすくなるという説もある。

• ニコチン酸及びニコチンアミドは、体内でピリジンヌクレオチドに生合成された後、アルコール脱水素酵素やグルコース─6─リン酸脱水素酵素、ピルビン酸脱水素酵素、2─オキソグルタル酸脱水素酵素等、酸化還元反応の補酵素として作用する。

• ATP 産生、ビタミンC・ビタミンE を介する抗酸化系、脂肪酸の生合成、ステロイドホルモンの生合成等の反応に関与している。NAD+は、ADP- リボシル化反応の基質となり、DNA の修復、合成、細胞分化に関わっている。

ニコチン酸とニセリトロール

• ニコチン酸は、米ぬか(米糠)、乾燥酵母、魚(ブリ、サバ、アジなど)、タラコ(明太子は、水溶性であるニコチン酸の含量は、減少する)、レバーなどに多く含まれている。

• ニコチン酸の誘導体のニセリトロール(薬剤名:ペリシッド錠)は、血清リポ蛋白異常を改善する:総コレステロール、VLDL-コレステロール、LDL-コレステロール、トリグリセリド(中性脂肪)、遊離脂肪酸27.8%を低下させ、HDL-コレステロールを上昇させる。

パントテン酸(B5)

パントテン酸

•パントテン酸は、CoA(コエンザイムA:補酵素A)の構成成分で、脂質、糖質、アミノ酸代謝に重要。

•パントテン酸が欠乏すると、エネルギー生成不全により、成長が停止したり、皮膚や毛髪が障害される。

•パントテン酸(pantothenic acid)を投与して、細胞内のCoA量を増加させると、活性酸素の障害から生体を守る、グルタチオンの濃度が高まる。

ピリドキシン

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• ピリドキサールリン酸として、AST(GOT)などの補酵素として、働き、アミノ酸代謝や、各種物質代謝に関与する:ビタミンB6は、蛋白質代謝に関与する

• ビタミンB6 はアミノ基転移反応、脱炭酸反応、ラセミ化反応などに関与する酵素の補酵素、ピリドキサール5─́リン酸(PLP)として働いている

• 必須脂肪酸や、ビタミンB6(ピリドキシン)や、ビタミンB5(パントテン酸)が欠乏すると、肝臓に脂肪蓄積が起こる(脂肪肝)。アルコール常飲者では、ビタミンB6が欠乏し易い。アルコール常飲者では、ビタミンB1やビタミンA等のビタミンも、欠乏し易い。

脱炭酸反応

• ビタミンB6は、グルタミン脱炭酸酵素の補酵素であり、グルタミン酸(Glu)を、中枢神経の抑制性物質であるγ-アミノ酪酸(GABA)に脱炭酸する。

• γ-アミノ酪酸(GABA)は、同じように、ビタミンB6(PALP)を補酵素とするGABAトランスアミナーゼにより分解され、succinic semialdehyde(SSA)となる。

• グルタミン酸(Glu)は、グルタミン酸脱水素酵素(GDH)により、α-ケトグルタル酸とアンモニアとから生成される

•中枢神経系では、succinic semialdehyde(SSA)も、グルタミン酸脱水素酵素(GDH)により、コハク酸に変換される

パントテン酸不足

•パントテン酸が不足すると、細胞内のCoA 濃度が低下するため、成長停止や副腎傷害、手や足のしびれと灼熱感、頭痛、疲労、不眠、胃不快感を伴う食欲不振などが起こる。

症状

• ビタミンB6 の欠乏により、ペラグラ様症候群、脂漏性皮膚炎、舌炎、口角症、リンパ球減少症が起こり

• ビタミンB6 は、セロトニンの合成を含めトリプトファン代謝産物の生成量に深く関わっている

•成人では、うつ状態、錯乱、脳波異常、痙攣発作が起こる。• ピリドキシンを大量摂取すると、感覚性ニューロパシーを発症する。

• 1997 年に初めて、ビタミンB6 が大腸がんの予防因子であることが報告され

ビタミン B12

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概略

• コバラミン(coblamin)。コバルト(Co)を含み、赤色を呈する。シアンと結合していて、シアノコバラミンとも呼ばれる。

• ビタミンB12は、胃粘膜から分泌される内因子(糖蛋白)と、複合体を形成し、回腸から吸収され、血中を、トランスコバラミンと呼ばれる蛋白と結合して輸送される。

ビタミンB12の代謝

• ビタミンB12 は、奇数鎖脂肪酸やアミノ酸(バリン、イソロイシン、トレオニン)の代謝に関与するアデノシルB12 依存性メチルマロニルCoA ムターゼとして機能する

• 5─メチルテトラヒドロ葉酸とホモシステインから、メチオニンの生合成に関与するメチルビタミンB12 依存性メチオニン合成酵素の補酵素として機能する。

ビタミンB12の吸収

•食品中のビタミンB12 はたんぱく質と結合しており、胃酸やペプシンの作用で遊離する。

•遊離したビタミンB12 は唾液腺由来のハプトコリンと結合し、次いで十二指腸においてハプトコリンが膵液中のたんぱく質分解酵素によって部分的に消化される。

•ハプトコリンから遊離したビタミンB12は、胃の壁細胞から分泌された内因子へ移行する。

•内因子-ビタミンB12 複合体は腸管を下降し、主として回腸下部の刷子縁膜微絨毛に分布する受容体に結合した後、腸管上皮細胞に取込まれる。

•正常な胃の機能を有した健康な成人において、食品中のビタミンB12 の吸収率はおよそ50% とされている。

•食事当たり2μg 程度のビタミンB12 で内因子を介した吸収機構が飽和する

•胆汁中に排泄される真のビタミンB12 の半数は腸肝循環により再吸収され、残りは糞便へ排泄される。

•胎児の肝臓中のビタミンB12 量から推定して、胎児は平均0.1~0.2μg/日のビタミンB12 を蓄積する

•授乳婦の付加量(推定平均必要量)は、母乳中の濃度(0.45μg/L)に泌乳量(0.78 L/日)を乗じ、吸収率(50%)を考慮して算出(0.45μg/L×0.78 L/日÷0.5)すると0.702μg/日となり、丸め処理を行って0.7μg/日とした。

•中高齢者の多くは、胃酸分泌量は低下していても内因子は十分量分泌されており、遊離型のビタミンB12 の吸収率は減少しない

• ビタミンB12が欠乏すると、悪性貧血(巨赤芽球性、大赤血球性の貧血に、知覚異常、しびれ感などの神経症状)を呈する。ビタミンB12欠乏は、内因子欠損が原因の場合が多い。

• ビタミンB12 の欠乏により、巨赤芽球性貧血、脊髄及び脳の白質障害、末梢神経障害が起こる。

• ビタミンB12は、肉類、レバー、鶏卵、魚、貝など、動物性食品に多く含まれている。しかし、ビタミンB12は、植物性食品には、含まれていない

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葉酸

•葉酸は、抗貧血作用があり、ほうれん草から抽出された。•葉酸は、体内で代謝され、還元型の5,6,7,8-テトラヒドロ葉酸(FH4)になり、核酸のプリン合成、ピリミジン塩基合成、アミノ酸代謝などに作用する。

•葉酸は、細胞増殖に必須のビタミン。•葉酸は、赤血球の成熟やプリン体及びピリミジンの合成に関与している。葉酸の欠乏症は、巨赤芽球性貧血(ビタミンB12 欠乏症によるものと鑑別できない)である。

食品中の葉酸

• 。食品は、ポリグルタミン酸鎖と一炭素単位を結合した種々の還元型葉酸を含んでいる。

• ポリグルタミン酸は空腸の冊子縁膜に存在するコンジュガーゼによって加水分解を受け、モノグルタミン酸型となった後、特異的なトランスポータによって、能動的に吸収されて、粘膜細胞内ではモノグルタミン酸型として存在する。

• コンジュガーゼは亜鉛を補欠分子族とする酵素である。• この酵素活性を阻害する化合物を含む食品として、オレンジジュースとバナナが有名である。

葉酸と食事摂取基準

•食事性葉酸の値に換算すると200μg/日(100÷0.5、相対生体利用率を50% とした3,82))となり、これを妊娠時の付加量(推定平均必要量)とした。

•付加量(推奨量)は推奨量算定係数1.2 を乗じて、240μg/日とした。

葉酸と疾患

•葉酸摂取量と脳卒中、心筋梗塞など循環器疾患発症率との関連は観察研究、特にコホート研究での報告が複数あり116─119)、そのうちの幾つかは有意な負の関連を認めている116,118)。

• そのため、葉酸のサプリメント(プテロイルモノグルタミン酸)を用いた介入試験(無作為割付比較試験)が相当数行われている

• プテロイルモノグルタミン酸の摂取は、妊婦において生まれてくる子どもの神経管欠損症を予防することが、これまでの疫学実験で示されている

ビタミン C

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機能

•強い還元力を有する:酸化され、デヒドロアスコルビン酸になる。• コラーゲン合成の際に、プロリンやリシン残基の水酸化に必要。•欠乏すると、壊血病、皮下出血、易感染などを呈する。•好中球の機能を高め、好中球の機能の異常を改善。•鉄の吸収に必要:鉄は、2価鉄となって吸収されるが、鉄を2価鉄の状態に保つのに、ビタミンCが必要。

•水溶性で強い還元能力を有し、スーパーオキシド(O2-)、ヒドロキシラジカル(・OH)、過酸化水素(H2O2)などの活性酸素類を消去する

• ビタミンEの再生機能がある。

•生体異物を代謝するシトクロムP450の活性化、チロシンからノルアドレナリンへの代謝(ドーパミンヒドロキシラーゼ)、

•脂肪酸の分解に関与するカルニチンがリジンから生合成される過程のヒドロキシ酵素の補酵素

• コレステロールをヒドロキシ化し7α-ヒドロキシコレステロールを経た胆汁酸の合成

• ビタミンCは、グルコーストランスポーターGLUT1を介してデヒドロアスコルビン酸が輸送され、還元され、フリーラジカルの大部分が生成される場所であるミトコンドリアに蓄積される。

ビタミンCと尿酸オキシダーゼとの関連性

•尿酸が抗酸化物質として部分的にビタミンCの代用となるためである•成人では,ビタミンC を1 日6~12 mg 摂取していれば壊血病は発症しない。

食事摂取基準

•日本人の母乳中のビタミンC の濃度として、50 mg/L を採用した

ビタミンD

ビタミンDの合成

• アセチル-CoAから、コレステロールが生成される• コレステロール生成の最終段階で生成される、7-デヒドロコレステロール(プロビタミンD3)が、光(紫外線)にあたると、ステロールのB環が開裂して、コレカルシフェロール(ビタミンD3)となる。

• ビタミンD3(カルシフェロール)は、肝臓で、C-25位が水酸化されカルシジオールとなり、腎臓(近位尿細管細胞のミトコンドリア)で、C-1α位が水酸化され、活性型の(生理活性を有する)カルシトリオール、つまり、1,25-ジヒドロキシカルシフェロール、1,25-(OH)2ビタミンDとなる。

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ビタミンDとビタミンD受容体(VDR)

• 1α,25─ジヒドロキシビタミンD は、標的細胞の核内に存在するビタミンD 受容体と結合し、ビタミンD 依存性たんぱく質の遺伝子発現を誘導する。

• ビタミンD の主な作用は、ビタミンD 依存性たんぱく質の働きを介して、腸管や腎臓でカルシウムとリンの吸収を促進し、骨の形成と成

長を促すことである。

• カルシトリオールは、対象細胞の細胞核内に主に所在するビタミンD受容体(VDR)と結びついてその生体効果を発現する[13]。

ビタミンDと腸管でのカルシウム結合

• カルシトリオールとビタミンD受容体(VDR)との結びつきは、腸内でカルシウム吸収に関わっている

• ビタミンD受容体が(TRPV6(腸内でのカルシウム吸収の第一段階をつかさどる膜カルシウムチャンネル)やカルビンディン(腸及び腎臓でのビタミンD依存型のカルシウム結合タンパク質として初めて発見されたカルシウム結合タンパク質)のような)輸送タンパク質の遺伝子発現を調節する転写因子として作用させることである。

ビタミンDと副甲状腺

• ビタミンD受容体は、ステロイド/甲状腺ホルモンの核内受容体の一群に属している。脳、心臓、皮膚、生殖腺、前立腺及び乳房を含むほとんどの臓器の細胞で作用している。

•腸、骨、腎臓及び副甲状腺の細胞でのビタミンD受容体の活性化は、(甲状腺ホルモン及びカルシトニンの補助により)血中のカルシウム及びリン酸の濃度の維持及び骨密度の維持を司っている

ビタミンDと免疫

• ビタミンDは免疫システムにも影響を及ぼしているし、ビタミンD受容体は、単核白血球、活性化T細胞及びB細胞を含むいくつかの白血球で作用している[15]。

• ビタミンD受容体以外の様々なメカニズムの作用が知られている。これらの作用のうち重要なものの一つとして形態形成に関わるホルモンなどシグナル伝達経路によるシグナル伝達の天然の酵素阻害剤としての作用がある

日光浴とビタミンD

•両手・顔を晴天日の太陽光に露出したと仮定した場合、紫外線の弱い冬の12月の正午では、那覇で8分、つくばでは22分の日光浴で必要量のビタミンDを生成することができるものの、緯度の高い札幌では、つくばの3倍以上の76分日光浴をしないと必要量のビタミンDを生成しないことが判りました。

ビタミンD欠乏

• ビタミンD が欠乏すると、腸管からのカルシウム吸収の低下と腎臓でのカルシウム再吸収が低下し、低カルシウム血症となる。

• これに伴い二次性副甲状腺機能亢進症が惹起され、骨吸収が亢進し、小児ではくる病、成人では骨軟化症が惹起される

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食品とビタミンD

• ビタミンDは、魚類(マグロ、カツオ、サバ、ブリ、サンマ、イワシ、サケ、シラス干し、メザシの順に多い)に多く含まれている。

• ビタミンDは、レバー、乳製品、卵黄などにも、含まれている。• キノコ(シイタケなど)やカビなどの菌類は、エルゴステロール(プロビタミンD2)を含んでいて、紫外線に当たり還元されると、エルゴカルシフェロール(ビタミンD2)、さらには、コレカルシフェロール(ビタミンD3)となる。

ビタミンDの目安量・耐容上限量

•日本人の食事摂取基準(2010 年版)1)における目安量を変更すべきとする積極的な科学的根拠はないと判断し、5.5 μg/日を目安量とした。

• 250 μg/日未満では高カルシウム血症の報告はみられないため、これを健康障害非発現量とし、アメリカ・カナダの食事摂取基準に準拠して、不確実性因子を2.5 として、耐容上限量を100 μg/日とした41)。

ビタミン E

定義と分類

•種のトコフェロールと4 種のトコトリエノールの合計8 種類の同族体が知られており、クロマノール環のメチル基の数により、α─、β─、γ─及びδ─体に区別されている。

• 血液及び組織中に存在するビタミンE 同族体の大部分がα─トコフェロールである。

機能

• ビタミンE は、生体膜を構成する不飽和脂肪酸あるいは他の成分を酸化障害から防御するために、細胞膜のリン脂質二重層内に局在する。

•動物におけるビタミンE 欠乏実験では、不妊以外に、脳軟化症、肝臓壊死、腎障害、溶血性貧血、筋ジストロフィーなどの症状を呈する。

•過剰症としては、出血傾向が上昇する。

ビタミン Eの生体内移動

•摂取されたビタミンE 同族体は、胆汁酸などによってミセル化された後、腸管からリンパ管を経由して吸収される。ビタミンE の吸収率は、51~86% と推定された

•吸収されたビタミンE 同族体は、キロミクロンに取り込まれ、リポプロテインリパーゼによりキロミクロンレムナントに変換された後、肝臓に取り込まれる。

•肝細胞内をα─トコフェロール輸送たんぱく質により輸送されたα─トコフェロールは、VLDL(very low density lipoprotein)に取り込まれ、再度、血流中に移行する。

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食事摂取基準

•平成22 年、23 年国民健康・栄養調査85)における性別及び年齢階級ごとの摂取量の中央値を加重平均した値を丸め、男性6.5 mg/日、女性6.0 mg/日を目安量とした。 ビタミン K

ビタミンKの機能

• ビタミンKは、肝臓での血液凝固因子(プロトロンビンなど)の生成に必要。

• ビタミンKは、腸内細菌により、合成される。• ビタミンKの欠乏は、腸内細菌叢が定着していない新生児や、抗生物質を連用している患者で起こりやすい。また、ビタミンKは、吸収に胆汁を要するので、胆道閉鎖、肝不全などでも、欠乏する。

ビタミンKとGla蛋白

• カルボキシラーゼの補酵素(補因子):カルボキシラーゼは、血液凝固因子の前駆体蛋白質や、骨形成に関与する蛋白質のグルタミン酸残基に、CO2を結合させ、γ位のCをカルボキシル(-COOH)化し、γ-カルボキシグルタミン酸残基(Gla蛋白質)に変換する。

• Gla蛋白質は、Ca2+結合蛋白。• 血液凝固因子(血液凝固蛋白質)のγ-カルボキシグルタミン酸残基にカルシウム(Ca2+:IV因子)が結合すると、血液凝固因子が血小板表面に吸着し、血液凝固反応が起こる。PIVKAとビタミンK

• ビタミンK 依存性に骨に存在するたんぱく質オステオカルシンを活性化し、骨形成を調節すること、

• さらに、ビタミンK 依存性たんぱく質MGP(Matrix Gla Protein)の活性化を介して動脈の石灰化を抑制する

ビタミンKの不足

• ビタミンKが欠乏すると、出血傾向が現れ、新生児では、新生児メレナ(下血)、頭蓋内出血など、重症な疾患を引き起こす。

•人工栄養のミルクには、ビタミンKが添加されている。しかし、母乳は、ビタミンK含有量が少ない。

•新生児には、ケイツーシロップを予防投与する(ビタミンK2シロップ 2 mg/1ml を、10倍に希釈して 、出生24時間以内、6日目、1ヶ月後に内服させる)。

•血液凝固阻止薬ワルファリンの服用者を除き、ビタミンK の栄養はほぼ充足している

納豆とビタミンK、食事摂取基準

•納豆摂取者のビタミンK 摂取は336.2±138.2 μg/日、非摂取者は154.1±87.8 μg/日との報告があり106)

•納豆非摂取者においても、明らかな健康障害は認められていないことから、これに基づいて150 μg/日を目安量とした。

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ミネラル

2.1.7 電解質

•細胞内液,細胞外液の電解質は,ホルモン,自律神経系,血管作動物質,呼吸器での酸塩基平衡調節などによって維持されている。体液管理を適切に行うための水分や電解質出納の把握,腎機能の判断のために,ナトリウム,塩素,カリウム,カルシウム,リンなどの電解質が測定される。

ナトリウム

ナトリウム

男 女

成人 134~146[異常値を示した場合に考えられる疾患,原因]

高値脱水症,原発性アルドステロン症,クッシング症候群、糖尿病,慢性腎不全,浸透圧利尿,食塩の過乳血液透析,中枢神経障害

低値

食塩欠乏,水中毒,続発性アルドステロン症,ADHの不適性分泌,無症候性低ナトリウム血症,嘔吐,下痢,利尿剤の投与(サイアザイド剤,有機水銀剤),浮腫(うっ血性心不全,肝硬変,ネフローゼ症候群)

食事摂取基準

•成人のナトリウム不可避損失量は500 mg/日以下で、個人間変動(変動係数10%)を考慮に入れても約600 mg/日(食塩相当量1.5 g/日)である。

• この考え方を根拠に600 mg/日を成人における男女共通の推定平均必要量とした。

• しかし、実際には、通常の食事では日本人の食塩摂取量が1.5 g/日を下回ることはない。

•授乳婦についても特にナトリウムを付加する必要はない。

•食塩相当量(g)=ナトリウム(g)×58.5/23=ナトリウム(g)×2.54

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ナトリウムと高血圧

•高血圧の発症・維持は遺伝要因と環境要因(生活習慣)の相互作用から成り立っている。

•事実として少なくとも6 g/日前半まで食塩摂取量を落とさなければ有意の降圧は達成できていない。

• これが世界の主要な高血圧治療ガイドラインの減塩目標レベルが全て6 g/日未満を下回っている根拠となっている

カリウム

機能

• カリウムは細胞内液の主要な陽イオン(K+)であり、体液の浸透圧を決定する重要な因子である。

•酸・塩基平衡を維持する作用がある。神経や筋肉の興奮伝導にも関与している39)。

• 健康な人において、下痢、多量の発汗、利尿剤の服用の場合以外は、カリウム欠乏を起こすことはまずない2)。

•日本人はナトリウムの摂取量が諸外国に比べて多いため5)、ナトリウムの摂取量の低下に加えて、ナトリウムの尿中排泄を促すカリウムの摂取が重要と考えられる。

低K血症の原因 1

• 1.•腎からの排泄増加•副腎機能亢進:原発性アルドステロン症,クッシング症候群,ステロイド薬長期投与

•遠位尿細管への尿量増加:利尿薬過剰(サイアザイド),浸透圧利尿(糖,マニトール)

• Na共乾する非吸収性陰イオンの増加:カルベニシリン,尿細管性アシドーシス

•低Mg血症

表178-1低K血症の原因 2

• 2.消化管からの喪失•●嘔吐,下痢,消化管瘻• 3.細胞内への移行•●アルカローシス ̄H+の細胞外への放出と交換にKが細胞内へ入る

•●糖とインスリンの同時投与,周期性四肢麻痺• 4.摂取不足•●輸液管理不良

表178-2高K血症の原因

• 1.腎からの排泄障害• 腎不全• アルドステロン分泌低下および感受性低下• 循環血漿量の減少• 利尿薬(スピロノラクトン)

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2.細胞からの放出

• 2.細胞からの放出• アシドーシス→H+の細胞内への移行と交換にKが放出される• 組織崩壊・異化亢進(溶血,筋肉崩壊,外傷)• 周期性四肢麻痺• 偽性高K血症(溶血,白血球増加、血小板増加)

• 3。K過剰投与• K薬投与,輸血

食事摂取基準

•男性では、年齢階級にかかわらず目安量を2,500 mg/日とした。•女性は、男性とのエネルギー摂取量の違いを考慮して、2,000 mg/日を目安量とした。

カルシウム

機能

•血液中のカルシウム濃度は比較的狭い範囲(8.5~10.4 mg/dL)に保たれている。

•濃度が低下すると、副甲状腺ホルモンの分泌が増加し、主に骨からカルシウムが溶け出し、元の濃度に戻す。

• したがって、副甲状腺ホルモンが高い状態が続くと、骨からのカルシウムの溶出が大きくなり、骨の粗鬆化を引き起こすこととなる。

食事摂取基準

•要因加算法によって求めたカルシウムの推定平均必要量と推奨量•体内蓄積量、尿中排泄量、経皮的損失量

カルシウムと生活習慣病

• カルシウムと生活習慣病の関連については、今回検討した、高血圧、脂質異常症、糖尿病、慢性腎臓病とは特に強い関連は認められていない。

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マグネシウム

機能

•血清中のマグネシウム濃度は1.8~2.3 mg/dLに維持されており110)

• マグネシウムが欠乏すると腎臓からのマグネシウムの再吸収が亢進すると共に、骨からマグネシウムが遊離し利用される。

• マグネシウムが欠乏すると、低マグネシウム血症となる。•低マグネシウム血症の症状には、吐き気、嘔吐、眠気、脱力感、筋肉の痙攣、ふるえ、食欲不振がある。

食事摂取基準

•食品以外からのマグネシウムの過剰摂取によって起こる初期の好ましくない影響は下痢である。

•多くの人では何も起こらないようなマグネシウム摂取量であっても、軽度の一過性下痢が起こることがある。

•通常の食品以外からの摂取量の耐容上限量を、成人の場合350 mg/日、小児では5 mg/kg 体重/日とした。

マグネシウムと疾患

• 55 歳以上の高齢者を対象としたRotterdam 研究では100 mg/日のマグネシウム摂取量増加は収縮期/拡張期血圧の1.2/1.1 mmHg の有意の降圧を伴うことが示されている

• マグネシウムの摂取量と2 型糖尿病の罹患リスクは負の相関を示し、100 mg/日のマグネシウム摂取量増加は、相対リスクを0.86 に低下させる。

•慢性腎臓病では、低マグネシウム血症(<1.8 mg/dL)を呈する患者は、死亡率が高く腎機能低下速度が速いという報告がある136)。特に糖尿病腎症の患者では血清マグネシウム値が低下しやすく、そのような患者で腎機能低下速度が速い

リン

体内分布

•成人の生体内には最大850 g のリンが存在し、その85% が骨組織に、14%が軟組織や細胞膜に、1% が細胞外液に存在する。

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機能

• リンは、カルシウムと共にハイドロキシアパタイトとして骨格を形成する

• ATP の形成、その他の核酸や細胞膜リン脂質の合成、細胞内リン酸化を必要とするエネルギー代謝などに必須の成分である

• 血清中のリン濃度の基準範囲は、2.5~4.5 mg/dL(0.8~1.45 mmol/L)と、カルシウムに比べて広く、食事からのリン摂取量の増減がそのまま血清リン濃度と尿中リン排泄量に影響する。

•血清リン濃度と尿中リン排泄量は、副甲状腺ホルモン(PTH)、線維芽細胞増殖因子23(FGF23)、活性型ビタミンD によって主に調節されている

リンと生活習慣病

• インスリンが作用するとグルコースと共にリンも細胞内に取り込まれるとされている。

•血清リン濃度と高血圧については、血清リン濃度が高いほど、血圧が低下するという報告がある。

機能

• 鉄は、ヘモグロビンや各種酵素を構成し、その欠乏は貧血や運動機能、認知機能等の低下を招く。

•月経血による損失と妊娠中の需要増大が必要量に及ぼす影響は大きい。

•鉄欠乏症として、貧血、無力感、食欲不振などが起こる。

吸収

•食品から摂取された鉄は、十二指腸から空腸上部において吸収される。

• ヘム鉄はそのままの形で特異的な担体によって腸管上皮細胞に吸収され、細胞内でヘムオキシゲナーゼにより2 価鉄イオン(Fe2+)とポルフィリンに分解される。

•非ヘム鉄は3 価鉄イオン(Fe3+)の形態ではほとんど吸収されない。• Fe3+は、アスコルビン酸などの還元物質、又は腸管上皮細胞刷子縁膜に存在する鉄還元酵素によって還元されてFe2+となり、吸収される。Fe2+が、2 価金属輸送担体1(divalent metal transporter 1)と結合して吸収されるので、この吸収は亜鉛、銅と競合する。

鉄の吸収と体内移動

•鉄の吸収率は、また、同時に摂取する食物成分により大きく変わる。• たんぱく質、アミノ酸、アスコルビン酸(ビタミンC)は鉄吸収を促進し、• フィチン酸、タンニン、シュウ酸などは抑制する。•体内鉄が減少すると、吸収率は高く、同時に排泄量は少なくなる。•腸管上皮細胞内に吸収されたFe2+は、フェロポルチンによって門脈側に移出され、腸管上皮細胞基底膜に存在する鉄酸化酵素によってFe3+に酸化される。

•過剰な鉄は腸管上皮細胞内にフェリチンとして貯蔵され、腸管上皮細胞の剥離に伴って消化管内に排泄される。

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•血液側に移行した鉄は、1 分子の血漿トランスフェリンに2 分子結合し、トランスフェリン結合鉄(血清鉄)として全身に運ばれる。

•多くの血清鉄は、骨髄において、赤芽球にトランスフェリンレセプターを介して取り込まれ、赤血球の産生に利用される。

• 120 日の寿命を終えた赤血球は網内系のマクロファージにより捕食されるが、この際に放出された鉄はマクロファージの中に留まりトランスフェリンと結合し、再度ヘモグロビン合成に利用される。

鉄の食事摂取基準

•要因加算法による値の算定に用いた諸量

•成長に伴う鉄の必要量の増加• ヘモグロビン中の鉄蓄積

• ヘモグロビン中の鉄濃度には3.39 mg/gヘモグロビン

•貯蔵鉄•月経による損失•鉄吸収率(15%)

亜鉛

•亜鉛の生理機能は、たんぱく質との結合によって発揮され、触媒作用、構造の維持作用、調節作用に大別される。

•亜鉛の恒常性は、亜鉛トランスポーターによる亜鉛の細胞内外への輸送とメタロチオネインによる貯蔵によって維持される。

•亜鉛トランスポーターは、細胞内シグナル伝達と代謝調節を介して、亜鉛の多くの生理機能の発現に関わる。

亜鉛欠乏

•亜鉛欠乏の症状は、皮膚炎や味覚障害、慢性下痢、低アルブミン血症、汎血球減少、免疫機能障害、神経感覚障害、認知機能障害、成長遅延、性腺発育障害などである52)。

•我が国の亜鉛欠乏症は、• 亜鉛非添加の高カロリー輸液施行時53)、• 吸収障害を伴う疾患に対する経腸栄養施行時54)、• 低亜鉛濃度の母乳55)• 経腸栄養剤56)での栄養管理時に報告されている。

食事摂取基準

• 日本人を対象とした亜鉛代謝に関する報告がないので、成人の推定平均必要量はアメリカ・カナダの食事摂取基準67)を参考にして算定した。

• 算定の手順は、• ①腸管以外への体外(尿、体表、精液または月経血)排泄量の算出、• ②腸管内因性排泄量(組織から腸管へ排泄されて糞便中へ移行した量)と真の吸収量との関係式(回帰式)を導く、

• ③総排泄量(腸管以外への体外排泄量に腸管内因性排泄量を加算)を補う真の吸収量の算出、

• ④総排泄量を補う真の吸収量の達成に必要な摂取量の算出、である。

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亜鉛の毒性

•亜鉛自体の毒性は極めて低いと考えられるが、多量の亜鉛の継続的摂取は、銅の吸収阻害による

•銅欠乏、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)活性の低下82)、貧血83)、汎血球減少83)、胃の不

• ─299─•快感84)などを起こす。

機能

• 銅は、約10 種類の酵素の活性中心に結合して、エネルギー生成や鉄代謝、細胞外マトリクスの

•成熟、神経伝達物質の産生、活性酸素除去などに関与している•銅の吸収は、鉄、亜鉛と競合する。•吸収された銅は、門脈を経て肝臓へ取り込まれ、銅依存性酵素やアポセルロプラスミンなどへ渡される。

•生成したセルロプラスミンは血中へ放出される。

欠乏症と過剰症

•銅過剰症のウイルソン病は、劣性遺伝疾患であり、肝臓、脳、角膜に銅が蓄積し、肝機能障害、神経障害、精神障害、関節障害、角膜のカイザー・フライシャー輪などが生じる。

• メンケス病は、伴性劣性遺伝疾患であり、血液中の銅とセルロプラスミン濃度の減少、肝臓や脳の銅量の低下が起こり、知能低下、発育遅延、中枢神経障害が生じる。

ヨウ素

生理作用

• ヨウ素を含む甲状腺ホルモンは、生殖、成長、発達等の生理的プロセスを制御し、エネルギー代謝を亢進させる。

•甲状腺ホルモンは、胎児の脳、末梢組織、骨格などの発達と成長を促す。

•慢性的なヨウ素欠乏は、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌亢進、甲状腺の異常肥大、又は過形成(いわゆる甲状腺腫)を起こし、甲状腺機能を低下させる。

•妊娠中のヨウ素欠乏は、死産、流産、胎児の先天異常及び胎児甲状腺機能低下(先天性甲状腺機能低下症)を招く。重度の先天性甲状腺機能低下症は全般的な精神遅滞、低身長、聾唖、痙直を起こす。

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セレン

• セレンは、含セレンたんぱく質の形態で生理機能を発現し、抗酸化システムや甲状腺ホルモン代謝において重要である。ゲノム解析の結果、ヒトには25 種類の含セレンたんぱく質の存在が明らかにされている186)。

• 代表的な含セレンたんぱく質は、グルタチオンペルオキシダーゼ、ヨードチロニン脱ヨウ素酵素、チオレドキシンレダクターゼなどである。

• セレン欠乏症は、心筋障害を起こす克山病(Keshan disease)187─189)、カシン・ベック病(Kashin-Beck disease)190)などに関与している。

• 完全静脈栄養中に、血漿セレン濃度の著しい低下(9μg/L)、下肢筋肉痛、皮膚の乾燥・薄片状などを生じた症例191)、心筋障害を起こして死亡した症例192)などが報告されている。

2.3 生理機能検査

• 2.3.1 循環機能検査• 2.3.2 呼吸機能検査• 2.3.3 神経機能検査 心電図

心電図検査

エッセンシャル「人体の構造・機能と疾病の成り立ち」p.229, 表14-42・p.230, 図14-26・図14-27・図14-28

心室性期外収縮(矢印)

心房細動P波がなく,QRS波が不規則に出ている. ホルター心電計の装着

心電図検査の適応となる疾患 肺機能検査

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スパイログラム(肺気量分画)

エッセンシャル「人体の構造・機能と疾病の成り立ち」p.231, 図14-29

2.3.1 循環機能検査

• 2.3.1.1 心電図検査• 2.3.1.2 心音図検査• 2.3.1.3 心臓エコー検査• 2.3.1.4 脈波検査

2.3.1.1 心電図検査

•心電図検査は,心臓に生じる電気的現象を体表面から記録するものである。

• その波形は不整脈によるリズムの乱れや虚血性変化などによって変化する。不整脈や心筋梗塞などの心疾患の診断や経過観察のみならず,全身状態や循環状態の把握にも用いられる。

2.3.1.2 心音図検査

•心音図検査では,心臓弁の開閉,心筋の緊張・弛緩,血流の変化といった心音と心雑音が記録される。心臓弁膜症,先天性心疾患などの心臓病の診断,循環系の病態生理学的評価に利用される。

アレルギー

アレルギー性疾患の検査の進め方

エッセンシャル「人体の構造・機能と疾病の成り立ち」p.224, 表14-37

アレルギーの診断

● 末梢血液検査 白血球数(WBC),白血球分画● 総IgE定量

アレルゲン確定

● 皮膚反応 皮内テスト,プリックテスト,スクラッチテスト

● パッチテスト

● アレルゲン特異的抗体測定特異的IgE測定(RAST),多項目抗原特異的IgE同時測定(MAST)など

● 誘発試験 鼻・眼粘膜誘発試験,吸入誘発試験,食物経口誘発試験

● 除去試験 食物除去試験

● 試験管内反応 ヒスタミン遊離試験,リンパ球刺激試験,沈降反応,凝集反応など

アレルギー性気管支喘息の鑑別

● 呼吸機能検査 肺気量,換気量,ガス分布,血流分布,肺の一酸化炭素拡散能(DLCO)など

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食事調査

1. 24時間思い出し法2. 食事記録法

3. 食事秤量法

4. 食事歴調査

5. 食物摂取頻度調査など

栄養ケアプラン作成・栄養計画作成

• 栄養補給(栄養法の決定、栄養補給量の設定、食品・献立作成)

• 栄養教育(行動変容、自己管理能力の育成、栄養実施者と栄養対象者との関連性)

• 多領域からの栄養ケア• 身体、精神、社会状況• チーム医療、• ソシアルケースワーカー

栄養補給

栄養ケア実施

• 食品構成の設定

• 献立、調理、配食計画、食品安全、個人衛生、食器の選定

• 栄養教育の実施

• 栄養相談の実施

臨床においては種々の栄養補給、栄養剤が用いられる。•栄養補給の方法

• 経口、経管、経腸、経静脈(抹消静脈、中心静脈栄養)• http://www.otsukakj.jp/med_nutrition/products/file/HEN.pdf#search='%E7%

B5%8C%E8%85%B8%E6%A0%84%E9%A4%8A‘

•栄養の内容の選択• ①天然濃厚流動食• ②人工濃厚流動食

•半消化態栄養剤(半消化態流動食) polymeric formula•消化態栄養剤 oligomeric formula•成分栄養剤 elemental diet(ED)

• http://www.peg.or.jp/lecture/enteral_nutrition/02.html

栄養モニタリング

•栄養ケア実施の過程で,栄養ケア計画に実施上の問題点(対象者の非同意・非協力,合併症,栄養補給方法の不適正,協力者の問題など)がなかったかを評価・判定する(フィードバック)。

•問題が見出された場合は,直ちに栄養ケア計画を修正する。• モニタリングでは,栄養状態改善の指標を用いて改善の程度を評価・判定し,目標が到達されれば,関係者で協議し栄養ケアを終了させる。