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キャピラリー電気泳動を用いた 健康食品および違法ドラッグの成分分析 2014 赤 松 成 基

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キャピラリー電気泳動を用いた

健康食品および違法ドラッグの成分分析

2014 年

赤 松 成 基

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目次 序論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 第1章 キャピラリー電気泳動概説 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 第1節 キャピラリー電気泳動法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 第2節 キャピラリー電気泳動質量分析法 ・・・・・・・・・・・・・・・ 5 第2章 In-capillary 誘導体化法を用いた健康食品中のグルコサミン定量法

の開発 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 第1節 緒言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 第2節 実験方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 第1項 試薬および試液 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 第2項 試料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 第3項 装置および測定条件 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8 第4項 試験溶液の調製方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8 第3節 結果および考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10 第1項 OPA 誘導体化法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 第2項 泳動液の検討 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11 第3項 In-capillary 誘導体化法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12 第4項 分析性能 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16 第5項 実試料への応用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16 第4節 まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18 第3章 CE/MS を用いたローヤルゼリー含有健康食品中の遊離アミノ酸定量法 の開発 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19 第1節 緒言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19

第2節 実験方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20 第1項 試薬および試液 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20

第2項 試料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20 第3項 装置および測定条件 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20 第4項 試験溶液の調製方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 第3節 結果および考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23 第1項 分析条件の検討 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23

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第2項 前処理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24 第3項 分析性能 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25 第4項 実試料への応用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26 第4節 まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29

第4章 CE/MS を用いた痩身用健康食品中の医薬品成分定量法の開発 ・・・ 第1節 緒言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30

第2節 実験方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32 第1項 試薬および試液 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32

第2項 試料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32 第3項 装置および測定条件 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 33 第4項 試験溶液の調製方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35 第3節 結果および考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 36 第1項 泳動液の検討 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 36 第2項 シース液の検討 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38 第3項 前処理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 39 第4項 分析性能 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40 第5項 実試料への応用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 43

第4節 まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45 第5章 MEKC/MS を用いた植物系違法ドラッグ中の合成カンナビノイド定量法

の開発 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46 第1節 緒言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46

第2節 実験方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 48 第1項 試薬および試液 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 48

第2項 装置および測定条件 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 48 第3項 試験溶液の調製方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 50 第3節 結果および考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 51 第1項 泳動液の検討 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 51 第2項 分析性能 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 53 第3項 実試料への応用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 54

第4節 まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 55 第6章 総括および結論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 56

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引用文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 58 謝辞 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 63 付記 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 64

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略語表 APFOA:ammonium perfluorooctanoate

CE:capillary electrophoresis CGE:capillary gel electrophoresis CID:collision-induced dissociation CMC:critical micelle concentration CZE:capillary zone electrophoresis EOF:electroosmotic flow ESI:electrospray ionization FDA:Food and Drug Administration GABA:γ -aminobutyric acid GC:gas chromatography GlcN:glucosamine HILIC:hydrophilic interaction chromatography I.D.:internal diameter IS:internal standard LC (HPLC):liquid chromatography (high performance liquid chromatography) LOD:limit of detection LOQ:limit of quantitation MEKC:micellar electrokinetic chromatography MPA:3-mercaptopropionic acid MRM:multiple-reaction monitoring MS:mass spectrometry OPA:o –phthalaldehyde PFOA:perfluorooctanoic acid RJ:royal jelly Rs:resolution RSD:relative standard deviation SD:standard deviation SDS:sodium dodecyl sulfate SIM:selected ion monitoring S/N:signal-to-noise UV:ultraviolet 10-HDA:10-hydroxy-2-decenoic acid

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序論

近年,健康志向の高まりから国民の健康食品への関心は高く,その効率的な栄養補給や

疾病予防効果等を期待して,数多くの健康食品が市場に流通している。健康食品とは食品

衛生法上の定義はなく,広く健康の保持増進に資する食品として販売・利用されるもの全

般を指している 1,2)。また,「いわゆる健康食品」とは特定保健用食品を含む保健機能食品

を除いたもので,一般食品の一部とされている。健康食品は特定保健用食品を除き,販売

の際に行政による承認や許可が不要であるため,特に「いわゆる健康食品」において虚偽

誇大な広告のほか,服用による健康被害事例も報告されている 3)。たとえば,痩身効果を

高めるための医薬品成分が違法に添加された製品(無承認無許可医薬品)がダイエット目

的の「健康食品」として流通することがあり,これによる意識障害等の健康被害が国内に

おいても発生している。

一方,違法ドラッグの一種である「脱法ハーブ」は,乾燥植物に化学物質を添加してい

るもので,「合法ハーブ」などと称して販売されている。しかし,この「脱法ハーブ」の摂

取が原因と思われる救急搬送や自動車事故等が急増し,兵庫県内でも健康被害が発生して

いる。

これら健康食品や違法ドラッグによる健康被害を未然に防ぐためには,市販流通品のモ

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ニタリング監視体制を強化し,違反製品を流通させないことが重要である。この目的のた

め,含有成分および添加成分の簡易迅速分析法の開発が強く求められている。さらに,被

害の未然防止だけでなく,健康被害が発生した場合においても,簡易迅速分析法は原因成

分の特定および治療法の選択に有効となる。

これまで健康食品や違法ドラッグの分析には,ガスクロマトグラフィー質量分析法

(GC/MS: gas chromatography / mass spectrometry)や液体クロマトグラフィー質量分

析法(LC/MS: liquid chromatography / mass spectrometry)等が利用されてきた。しか

し,誘導体化等の前処理が煩雑であること,分析対象物質により移動相や分析カラムの交

換が必要等の問題点もあり,代替法または補完法の開発が求められている。一方,キャピ

ラリー電気泳動(CE)はその独特な分離メカニズムにより高分解能を有し,試料や試薬消

費量が少ないほか,装置のウォームアップ時間が短いという特長から,スクリーニング分

析法として有用で,食品や法科学分野においても近年注目されている。本研究では,分析

条件等の詳細な検討を行い,CE を用いた健康食品や違法ドラッグの簡易迅速分析法を確

立した。

健康食品としては,メディア等においても度々取り上げられているグルコサミン(GlcN),

含有サプリメント,ローヤルゼリー(RJ)の 2 種の健康食品について,含有成分の調査を

行った。GlcN は,グルコースにアミノ基が付いた代表的なアミノ糖で,動物の皮膚や軟

骨,甲殻類の殻に含まれており,骨関節炎等に有効と言われている物質である 4-9)。RJ は,

若い働き蜂の唾液腺などから分泌される乳白色のクリーム状の物質 10)で,美容等を目的と

して健康食品や化粧品に用いられている。痩身用健康食品としては,12 種の痩身用健康食

品および 3 種の市販医薬品を対象に,CE/MS による 20 種の医薬品成分の一斉分析法を検

討した。違法ドラッグとしては,植物系違法ドラッグから検出される合成カンナビノイド

に注目し,CE の一種であるミセル動電クロマトグラフィー(MEKC: micellar

electrokinetic chromatography)と MS を組み合わせた 12 種の合成カンナビノイドの一

斉分析法を開発した。

これらの分析法により,前処理の簡略化,有機溶媒の使用量削減が達成できたほか,

GC/MS や LC/MS の結果を支持または補完するデータが得られた。本研究の成果は,行政

による健康食品や違法ドラッグの監視指導に活用でき,消費者の安全安心の確保に寄与で

きると考える。

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第1章 キャピラリー電気泳動概説 第1節 キャピラリー電気泳動法 電気泳動は分析化学における重要な分離手法の一つであり,古くからイオン性物質の分

離に用いられてきた。ポリアクリルアミドやアガロースゲルを用いたスラブゲル電気泳動

に加え,1970 年代後半に内径 100 μm 以下のキャピラリーを用いるキャピラリー電気泳動

(CE)が開発された 11,12)。

CE の大きな特徴は,ジュール熱の影響を減少できる点である。キャピラリーは電気抵

抗が大きいため,高電圧を印加しても電流は小さく,熱の発生を抑えられるほか,内容積

に対して表面積の比率が大きく,熱を効率よく放散できる。これにより,高電圧の印加が

可能で,高い分離効率が得られ,分析時間が短縮できる。また,キャピラリーの内径が細

いため,必要試料量が少なく,試薬や有機溶媒の消費量も少ないことが利点として挙げら

れる。一方,注入試料量が微量であることから,検出濃度感度や再現性が低いことが問題

点となる。

CE による分離は,電場中での溶質の移動度の差に基づいている。電気泳動移動度μは,

以下の式で表される 13,14)。

= (1)

q:イオンの電荷,η:溶液の粘度,r:イオン半径

つまり,イオン半径が小さく,高電荷のイオンは高い移動度を示し,イオン半径が大き

く,低電荷のイオンは低い移動度であることがわかる。

各溶質の泳動時間は,この電気泳動移動度のほか,キャピラリー内の泳動液全体の流れ

である電気浸透流(EOF: electroosmotic flow)の速度によって決まる。EOF は,キャピ

ラリー内壁に固定されたイオン(シラノール基のイオン化によるもの等)とその対イオン

による電気二重層に電圧を印加した際に発生する,流速分布が一様な栓流である。すなわ

ち,一般的な溶融シリカキャピラリーにおいては,陽極側から陰極側に EOF が流れる。

陽イオンは,電気泳動の方向と EOF の方向が同じため,速く泳動する。一方,陰イオン

は電気泳動の方向は EOF と異なるが,EOF の速度がイオンの電気泳動移動度よりも 1 桁

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以上大きいため,陰イオンも陰極側に押し流される。また,中性物質は互いの移動度に差

がないため,分離されずにすべて EOF と同じ速度で泳動する。従って,陽イオン,中性

物質,陰イオンの順に陰極側に泳動することになる。

CE の分離モードは,上述したように電気泳動移動度の差で分離するキャピラリーゾー

ン電気泳動(CZE: capillary zone electrophoresis)が最も一般的なモードであるが,この

他にミセル動電クロマトグラフィー(MEKC)15-17),キャピラリーゲル電気泳動(CGE:

capillary gel electrophoresis)18)など数種類存在する。なかでも MEKC は,電気泳動と

クロマトグラフィーを組み合わせた分離モードを有し,イオン性物質のみならず中性物質

の分離も可能であることが大きな特徴である。泳動液に界面活性剤を加えて形成されるミ

セルを擬似固定相とし,各溶質との疎水性相互作用および静電的相互作用の違いにより分

離する。

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第2節 キャピラリー電気泳動質量分析法 検出法として質量分析法(MS)を用いることは,CE の欠点である低感度を克服し,成

分の構造情報が得られる非常に強力な分析手法である。本研究に使用した MS 装置は,タ

ンデム型 MS(MS/MS)計であり,MS 装置を 2 台直列に配置したものである。一般的に

使用される多重反応モニタリング(MRM: multiple-reaction monitoring)モードでは,

第 1 MS 装置で選択したイオンをプリカーサーイオンとして,その後に不活性ガスと衝突

誘起解離(CID: collision-induced dissociation)し,生じたイオン(プロダクトイオン)

を第 2 MS 装置で検出する 19,20)。MS 装置1台で,特定のイオンを検出する選択イオンモ

ニタリング(SIM: selected ion monitoring)モードと比較すると,選択性がさらに向上し,

高感度測定が可能である。MS/MS は,分子構造解析のほか,定量分析にも用いられる。

Fig. 1-1. Schematic of CE/MS.

キャピラリー電気泳動質量分析(CE/MS)装置のインターフェースには,エレクトロス

プレーイオン化(ESI: electrospray ionization)が広く用いられ,シース液とネブライザ

ーガスを導入できるネブライザーに分離キャピラリーを挿入したものが一般的である

(Fig. 1-1)。シース液とは,キャピラリー終端の流量不足を補い,電流が流れなくなるこ

とを防ぐほか,安定なスプレーを形成する役割を担い,イオン化効率や検出感度に影響を

与える。また,キャピラリー終端でシース液がキャピラリー内に一部流入することによっ

て(ionic boundary の形成)21),シース液は CE の分離や泳動時間にも影響を与えること

が知られている。

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第2章 In-capillary 誘導体化法を用いた健康食品中のグルコサミ

ン定量法の開発 第1節 緒言 グルコサミン(GlcN)は,グルコースの 2 位の炭素にアミノ基が付いた代表的なアミノ

糖であり(Fig. 2-1),主に N-アセチル体として動物の皮膚や軟骨,甲殻類の殻に含まれて

いる。骨関節炎や変形性関節症等に有効と言われ 4-9),世界中で健康食品が市販されている。

しかし,GlcN の服用により,血糖値上昇の報告 22)や,抗血栓薬のワルファリンとの併用

によるワルファリンの作用増強の報告 23)もある。

これまで GlcN の定量には,HPLC 等が利用されており,(財)日本健康・栄養食品協会

の品質規格基準 24)には比色法(協会法)が採用されている。GlcN は,UV 高波長領域に

吸収を持たないために,試料マトリックスと分離し,より正確かつ高感度に検出するため

には,誘導体化することが一般的である。一方,この誘導体化等の前処理が煩雑であるこ

とが,これまでの分析法のデメリットとして挙げられる。本章では,誘導体化と分離を同

時に行う In-capillary 誘導体化法を用いた CE による GlcN の簡便かつ迅速な定量法を検

討し,協会法による結果と比較した。

Fig. 2-1. Chemical structure of glucosamine.

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第2節 実験方法 第1項 試薬および試液

1-1 In-capillary 誘導体化法

GlcN 標準溶液:グルコサミン塩酸塩(東京化成製)100 mg を秤量し,水に溶解して

100 mL としたもの(本液は,グルコサミン塩酸塩として 1000 μg/mL)を用時希釈して用

いた。

100 mM 四ホウ酸ナトリウム溶液:四ホウ酸ナトリウム(無水物,関東化学製)2.01 g

を秤量し,水に溶解して 100 mL とした。

泳動液:o-フタルアルデヒド(OPA,東京化成製)33.5 mg をエタノール(和光純薬製)

1 mL に溶解し,3-メルカプトプロピオン酸(MPA,東京化成製)22 μL,100 mM 四ホウ

酸ナトリウム溶液 10 mL を加えて水で 50 mL とした。

水:Milli-Q(メルクミリポア製)で精製した超純水を用いた。

エタノールは HPLC 用を用いた。その他の試薬は,市販の特級品を用いた。

1-2 協会法

0.25 M 炭酸ナトリウム水溶液:炭酸ナトリウム(和光純薬製)2.65 g を秤量し,水に溶

解して 100 mL とした。

アセチルアセトン試薬:アセチルアセトン(和光純薬製)1.0 mL を 0.25 M 炭酸ナトリ

ウム水溶液 50 mL に溶解したものを用いた。

Ehrlich 試薬:p-ジメチルアミノベンズアルデヒド(和光純薬製)1.6 g を 30 mL の

96 %(v/v)エタノールと 30 mL の濃塩酸(和光純薬製)の混液に溶解したものを用いた。

第2項 試料

平成 22 年 10 月から 11 月に国内で販売されていた 16 製品を用いた。16 製品の内訳は,

錠剤型 13 製品,カプセル型 2 製品,粉末型 1 製品であった。ブランク試料は,同時期に

国内で販売されていた健康食品で,高分子であるコンドロイチン硫酸およびヒアルロン酸

を含むが,GlcN を含まないものを用いた。

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第3項 装置および測定条件

3-1 In-capillary 誘導体化法

CE 装置:CAPI-3300(大塚電子製)

キャピラリー:溶融シリカ(75 μm I.D.,全長 92 cm,有効長 80 cm)

印加電圧:25 kV

温度:30 ℃

注入法:加圧注入(50 mbar,5 s)

泳動液:5 mM OPA および 5 mM MPA を含む 20 mM ホウ酸溶液(pH 9.2)

検出:フォトダイオードアレイ検出器(340 nm)

各サンプル測定後には,キャピラリー内を 0.1 M NaOH で 3 min,続けて水で 2 min,

その後泳動液で 3 min 洗浄した。

3-2 協会法

装置:分光光度計 UV-2400PC(島津製作所製)

検出波長:530 nm

第4項 試験溶液の調製方法

4-1 In-capillary 誘導体化法

錠剤型試料はミキサー等で粉砕し,カプセル型試料はカプセルの中身を取り出し均一化

した。均一化した試料 100 mg を秤量し,水 10 mL を加えて室温で 5 min 超音波抽出した

後,10000 rpm で 5 min 遠心分離した。得られた上澄液を水で 10 倍希釈して試験溶液と

した。

4-2 協会法

(財)日本健康・栄養食品協会の品質規格基準 24)に従い,調製した。一般に

Rondle-Morgan 法 25)と呼ばれ,アミノ基が置換されていない GlcN をアルカリ性下でアセ

チルアセトンと加熱縮合させた後,塩酸酸性下で Ehrlich 試薬と反応させると赤紫色を呈

することを利用したものである。4-1と同様に,試料を水で抽出した抽出液を遠心分離

し,不溶物を除去した。試料溶液および標準溶液(GlcN 濃度:10−50 μg/mL)1 mL をそ

れぞれ試験管にとり,アセチルアセトン試薬 1 mL,水 1 mL を加え,100 ℃水浴中で 20

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min 加熱した。水冷後,エタノール 6 mL,Ehrlich 試薬 1 mL を加えて十分に混合し,70 ℃

水浴中で 10 min 加熱した。室温まで水冷したものを試験溶液とし,同様に水 1 mL で調

製したブランク溶液を対照液として,波長 530 nm の吸光度を測定した。

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第3節 結果および考察 第1項 OPA 誘導体化法

HPLC分析において,第一級アミンの誘導体化法として一般的にOPAが用いられる 26-28)。

Fig. 2-2 に示すとおり,OPA と第一級アミン,チオール化合物による反応は,室温で容易

に進行する 27,28)。また,OPA は 230 nm のみに極大吸収を持つのに対し,反応生成物は,

230 nm のほかに 340 nm にも極大吸収を持つ。すなわち,340 nm でモニターすれば未

反応の OPA や第一級アミンの妨害ピークがなく,反応生成物のみを選択的に検出できる。

このため,OPA を In-capillary 誘導体化法に用いて検討した。

Fig. 2-2. Mechanism of OPA reaction with glucosamine.

H

O

H

O

+ R-NH2NR

SR'

R'-SH

r.t.

OPA R = C6H11O5

R’ = (CH2)2COOH

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第2項 泳動液の検討

2-1 チオール化合物の選択

CE による分離は,電場中での溶質の移動度の差に基づいている。陽イオンや陰イオン

は,それぞれの移動度が異なるが,中性物質は互いの移動度に差がないため,分離されず

にすべて EOF と同じ速度で泳動する。

このことから,目的成分である GlcN の反応生成物を,他の試料マトリックス成分と分

離するためには,反応生成物に電荷を持たせることが必要となる。しかし,GlcN 自身は

pH 9 付近では電荷を持たないため,チオール化合物のアルキル基に電荷を持つものを選択

することが要求される。

一般に,チオール化合物には 2-メルカプトエタノールやエタンチオール等を用いるが 28),

今回は弱アルカリ性下で負電荷を帯びるカルボン酸基を持つ MPA をチオール化合物とし

て用いた。

なお,第一級アミンについて,MPA を加えずに OPA のみで誘導体化し,妨害ピークの

多い 230 nm で測定した報告 29)があった。GlcN において,同様に MPA を含まない泳動

液で確認したところ,反応生成物は 340 nm で UV 吸収を示さなかった。このことから,

MPA は測定対象物質の分離だけでなく,OPA の誘導体化反応においても重要な役割を担

っていることがわかった。

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2-2 OPA および MPA 濃度

Fig. 2-2 に示すとおり,GlcN と反応する OPA 量は,MPA と等量(物質量として)であ

ることから,加える OPA 濃度と MPA 濃度を同濃度に固定して,OPA 濃度の感度への影

響を評価した。

CE では,検出部においてどの溶質も等速で運ばれる LC とは異なり,溶質の滞留時間

によって,ピーク面積が変化する。つまり,泳動時間の長い溶質は,ピーク面積が大きく

なる。これを補正するため,感度の評価指標として,反応生成物のピーク面積を泳動時間

(min)で除した値(Area/time value)を用いた。

Fig. 2-3 に示すとおり,5 mM から 20 mM の間では,感度に大きな変化は見られなかっ

た。しかし,15 mM 以上ではエレクトロフェログラム上にノイズが多く見られた。そこで,

OPA および MPA 濃度は 5 mM に設定した。

Fig. 2-3. Effect of OPA concentration on area/time value of glucosamine-OPA adduct.

The concentration of glucosamine was 100 μg/mL. The concentration of MPA was the

same as that of OPA. The concentration of borate buffer was 20 mM.

6

7

8

0 10 20

Area

/ tim

e va

lue

OPA concentration (mM)

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2-3 四ホウ酸ナトリウム濃度

一般に,緩衝液濃度が高いと,キャピラリー内壁面の有効電荷が減少するため,溶質と

壁面との静電的相互作用が減少し,溶質のキャピラリーへの吸着が軽減される。しかし,

濃度が高くなるほど,キャピラリー内での発熱や EOF の減少が顕著になる。

Fig. 2-4 に四ホウ酸ナトリウム濃度の感度への影響を示す。20 mM を超えると感度の減

少が著しくなることがわかった。また,高濃度では EOF の減少により,泳動時間が長く

なった。このため,緩衝液濃度は 20 mM に設定した。

Fig. 2-4. Effect of borate concentration on area/time value of glucosamine-OPA adduct.

The concentration of glucosamine was 100 μg/mL. The concentrations of OPA and MPA

were each 5 mM.

4

6

8

0 20 40 60 80

Borate concentration (mM)

Area

/ tim

e va

lue

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第3項 In-Capillary 誘導体化法

CE においてキャピラリー内で誘導体化する方法は,試料や反応試薬が少量でよいうえ,

反応生成物が不安定な物質においても外気等の影響を受けずに即座に測定できるため有用

である。この In-Capillary 誘導体化法として,①キャピラリー入口において試料と試薬を

積層して導入した後,泳動によって試料に試薬ゾーンを通過させる方法 26,30)と,②試薬を

含有させた泳動液を用いる方法 29,31)が考えられる。①においては,泳動液と反応液の組み

合わせを選択することで様々な分析条件が設定できる。しかし,試料導入に関して,複数

回注入可能なプログラム機能付きの装置が必要となる。一方,②においては,あらかじめ

泳動液中に試薬が含まれているため,試料のみの導入となり操作が簡便である。また,導

入された試料が常に試薬と接触するため高い誘導体化率が得られ,検出感度が高いことも

特徴である。このため,本研究では②の方法により In-Capillary 誘導体化を行った。

Fig. 2-5 に試料とブランク試料の 340 nm におけるエレクトロフェログラムを示す。ま

た,Fig. 2-6 に試料と標準品の GlcN 反応生成物の UV スペクトルを示す。Fig. 2-6 におい

て両者の UV スペクトルは一致し,340 nm 付近にも吸収ピークが確認されたことから,

Fig. 2-5のエレクトロフェログラムでの11 min付近のピークは反応生成物に由来すると結

論した。また,8 min 付近のピークは EOF によるものと推測されることから,EOF より

も遅く泳動している反応生成物は陰イオンとして挙動し,EOF と共に泳動する中性物質と

は分離されて検出できていることがわかった。なお,エレクロトフェログラム(Fig. 2-5)

に見られる幅広でリーティングしたピーク形状は In-Capillary誘導体化法に特徴的なもの

で,GlcN と反応生成物の移動度の違いによるものである 29)。すなわち,GlcN のゾーンが

常に反応生成物のゾーンより先行するため,キャピラリーへの試料注入後早い段階で誘導

体化されたものは遅く,遅い段階で誘導体化されたものは早く検出されるためと考えられ

る。

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- 15 -

Fig. 2-5. Electropherograms of (A) glucosamine sample (No.16 powder in Table 2-2)

and (B) blank sample containing no glucosamine. Conditions: capillary, fused-silica (75

μm I.D., 80 cm effective length); electrophoretic solution, 20 mM borate buffer

containing OPA (5 mM) and MPA (5 mM); applied voltage, 25 kV; injection, 50 mbar ×

5 s; analytical wavelength, 340 nm.

Fig. 2-6. UV spectra of glucosamine-OPA adduct (GlcN-OPA) in the sample and

standard. UV spectrum was obtained with a PDA detector. Solid line: glucosamine

sample (No.16 powder in Table 2-2). Broken line: glucosamine standard.

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- 16 -

第4項 分析性能

4-1 定量性および検出感度

GlcN 標準溶液を希釈して調製した検量線用標準溶液を用いて,GlcN 濃度とピーク面積

との関係をプロットした検量線は,10−1000 μg/mL の範囲において良好な直線性が見られ

た(r > 0.999)。検出下限値(LOD,S/N = 3)は,ブランク試料のエレクトロフェログラ

ムのノイズ高さから評価したところ,1.3 μg/mL であり,試料中濃度に換算すると 1.3 mg/g

であった。この LOD は,これまでに Volpi らによって報告された 2-アミノ安息香酸誘導

体化法(33 μg/mL)32)や,Chen らの OPA 誘導体化法(22 μg/mL)26)に比べて,1 桁以

上低い濃度であった。

4-2 添加回収試験

ブランク試料にGlcNを50 mg/gおよび100 mg/gとなるように添加した試料を調製し,

添加回収率を求めた。試験は,1 日に 5 試行を 3 日間実施した。Table 2-1 に,平均回収率,

併行精度,室内(日間)精度を示す。平均回収率は 95.1−104.3 %,精度も相対標準偏差(RSD)

4.1−6.5 %と良好であった。この結果から,本法が GlcN の定量試験法として適当であるこ

とがわかった。

Table 2-1. Accuracy and Precision of the proposed method

a) the mean value; n = 15 (5 × 3)

第5項 実試料への応用

本法を用いて市販健康食品 16 種の GlcN 含有量を分析した。前処理は簡便で,試料導入

時においても煩雑な操作を行う必要がないため,多数の試験溶液(16 種)の調製に要した

時間はわずか 1 時間程度であった。また,定量の妨害となるピークは認められなかった。

一方,協会法ではこれら 16 試料の前処理に 1 日以上要した。

Spiked level (mg/g)

Recovery (%)a RSD (%)

Intraday Interday 50 95.1 5.4 6.5

100 104.3 4.1 4.7

)

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- 17 -

Table 2-2 に本法と協会法による定量結果を示す。本法によって求められた GlcN 含有量

は,109−705 mg/g であった。これらの含有量の表示量(製品包装等に記載)に対する割

合は,88.8−124 %となった。したがって,試験に供した 16 種の市販健康食品については,

GlcNを概ね表示量どおりに含有していると考えられ,表示量を偽装した製品はなかった。

また,本法と協会法による定量結果には有意な差は認められなかった(r 2 = 0.989,p <

0.01)。本法は,協会法では困難と考えられる着色・高濃度マトリックス試料においても,

その形態(錠剤型等)に関わらず,GlcN の定量に有効であると期待できる。

Table 2-2. Determination of glucosamine concentration in commercial products

a) The mean value , n = 3 b) Detected glucosamine contents / labeled value

Sample No. Form CE Rondle-Morgan

glucosamine (mg/g) a

Glucosamine (mg/g) a

Detected / labeled (%) b

1 tablet 704.8 101.5 653.9 2 tablet 638.6 99.8 588.1 3 tablet 443.4 96.8 452.6 4 tablet 540.2 99.7 514.6 5 tablet 643.5 100.2 606.0 6 tablet 543.8 102.0 532.0 7 tablet 290.2 100.0 284.5 8 tablet 447.4 100.7 444.1 9 tablet 424.3 101.0 410.2

10 tablet 619.7 103.3 579.0 11 tablet 582.8 123.6 540.8 12 tablet 494.4 98.9 463.3 13 tablet 538.5 107.7 468.2 14 capsule 695.9 102.7 637.4 15 capsule 253.7 88.8 274.4 16 powder 108.6 101.3 120.4

) ) )

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- 18 -

第4節 まとめ 市販健康食品中の GlcN の定量法として,OPA と MPA を含む泳動液での In-Capillary

誘導体化による CE 分析法を開発した。

1)電気泳動前に誘導体化を行う分析法や試料導入時に試料と試薬を積層する分析法に

比べ,操作が簡便で,特殊な注入プログラム付き CE 装置が不要であった。

2)GlcN は,キャピラリー内で泳動中に OPA および MPA と室温で反応した。誘導体

化された GlcN は泳動液中で陰イオンとして挙動し,試料中のマトリックス成分か

ら分離できた。また,誘導体化された GlcN は,340 nm に選択的に極大吸収をも

つため,未反応試薬との識別が可能で,定量が容易である。

3)検出感度が高く,従来の CE 法よりも微量の GlcN を正確に測定できる。また,協

会法によって得られた測定値と有意な差はなく,偽装表示や不正表示を見抜くため

に実施される市販製品中の GlcN 含有量調査のためのルーチン検査法としても利用

できる。

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第3章 CE/MS を用いたローヤルゼリー含有健康食品中の遊離ア

ミノ酸定量法の開発 第1節 緒言 ローヤルゼリー(RJ)は,若い働き蜂の唾液腺などから分泌される乳白色のクリーム状

の物質で 10),美容等を目的として健康食品に用いられている。

RJ は,糖類,ビタミン,アミノ酸のほか多種類の有機酸を含有しており,その一種の

10-hydroxy-2-decenoic acid(10-HDA)は,RJ 製品の識別マーカーとして利用され,RJ

の品質検定の指標となっている。このため 10-HDA の薬効および HPLC 等による分析法

は,これまでに多数報告されてきた 33-35)。一方,アミノ酸については,タンパク質の構成

要素としてだけでなく,品質や味においても重要な役割を担っているにも関わらず,あま

り報告されていない。遊離アミノ酸の組成解析は,特に食品科学分野では近年注目されて

おり,産地や保管期限の識別に利用されている 36,37)。それゆえに,市販のローヤルゼリー

含有健康食品の品質評価を行う上で,RJ 中の遊離アミノ酸の信頼性の高い定量法の開発

は重要である。

アミノ酸の分離分析には,これまで HPLC 38-40),GC/MS 41,42)および LC/MS 43-46)が利

用されてきた。HPLC や GC/MS では誘導体化等の煩雑な前処理が必要であり,LC/MS

はイオンペア試薬や親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC: hydrophilic interaction

chromatography)カラムを用いるため,装置の平衡に時間がかかり,全体として分析に

時間を要した。RJ においても,未加工の生 RJ について誘導体化試薬を用いた HPLC が

報告されているが 38),前処理が煩雑であるのに加え,添加物等が含まれた市販加工製品で

は妨害ピークが出現し,定量が困難となる可能性もある。一方,CE は,高極性でイオン

化しやすい物質であるアミノ酸にとって適した分析法であると言える 47,48)。そこで本研究

では,CE/MS による RJ 含有健康食品中の遊離アミノ酸の簡便な定量分析法を開発し,市

販健康食品に適用した。また,その遊離アミノ酸組成について,はちみつとの比較を行っ

た。

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第2節 実験方法 第1項 試薬および試液

アミノ酸標準品:L-アラニン(Ala),L-アルギニン塩酸塩(Arg),L-アスパラギン酸(Asp),

L-グルタミン酸(Glu),グリシン(Gly),L-ヒスチジン塩酸塩(His),L-イソロイシン (Ile),

L-ロイシン(Leu),L-リジン塩酸塩(Lys),L-メチオニン(Met),L-フェニルアラニン (Phe),

L-プロリン(Pro),L-スレオニン (Thr),L-チロシン(Tyr),L-バリン(Val)は,協和発酵工

業より, L-システイン(Cys),L-セリン(Ser),γ-アミノ酪酸(GABA)は和光純薬よりそれ

ぞれ購入した試薬を用いた。

アミノ酸混合標準溶液:アミノ酸標準品を 0.1 M 塩酸に溶解して 50 mM 溶液を調製し

た。0.1 M 塩酸で用時希釈して用いた。

水:Milli-Q(メルクミリポア製)で精製した超純水を用いた。

メタノールおよびエタノールは HPLC 用を用いた。その他の試薬は,市販の特級品を用

いた。

第2項 試料

国内で販売されていた RJ 含有健康食品 17 製品およびハチミツ 3 製品を用いた。前者

17 製品の内訳は,錠剤型 8 製品,カプセル型 5 製品,粉末型 1 製品,液体型 1 製品,未

加工の生 RJ が 2 製品であった。

第3項 装置および測定条件

3-1 CE

装置:Agilent 7100(アジレント製)

キャピラリー:溶融シリカ(50 μm I.D.,全長 100 cm)

印加電圧:30 kV

温度:20 ℃

注入法:加圧注入(50 mbar,5 s)

泳動液:1 M ギ酸溶液(pH 1.8)

シース液:50 %(v/v)メタノール,8 μL/min

各サンプル測定後には,キャピラリー内を水で 2 min,0.1 M NaOH で 3 min,再度水

で 2 min,その後泳動液で 3 min 洗浄した。

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3-2 MS

装置:Agilent 6410(アジレント製)

キャピラリー電圧:4 kV(positive)

ネブライザーガス:10 psi N2

乾燥ガス:10 L/min N2,300℃

その他の最適化した SIM および MRM パラメータを Table 3-1 に示す。

Table 3-1. Optimized MRM parameters for each amino acid in positive ion mode

a) SIM by single MS mode

Amino

acid

Transition

(m/z)

Fragmentor

voltage (V)

Collision

energy (eV)

Ala a 90.1 50 Arg 175.2 → 70.1 100 25 Asp 134.1 → 74.1 70 10

GABA 104.1 → 87.2 70 5 Glu 148.1 → 84.1 100 10

Gly a 76.1 70 His 156.2 → 110.1 50 10

Leu, Ile 132.2 → 86.1 50 5 Lys 147.2 → 84.1 50 25 Met 150.2 → 133.1 70 5 Phe 166.2 → 120.1 70 10 Pro 116.1 → 70.1 100 10 Ser 106.1 → 60.2 70 5 Thr 120.1 → 103.1 150 15 Tyr 182.2 → 136.0 70 5 Val 118.2 → 71.9 50 5

Cys (IS) 122.1 → 75.9 70 15

)

)

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第4項 試験溶液の調製方法

錠剤型試料はミキサー等で粉砕し,カプセル型試料はカプセルの中身を取り出し均一化

した。均一化した試料 1 g を秤量し,75 %(v/v)エタノール 9 mL を加えて室温で 5 min 超

音波抽出した後,3000 rpm で 5 min 遠心分離した。得られた上澄液 0.9 mL に 1 M 塩酸

0.1 mL を加え,0.1 M 塩酸溶液とした。最後に,内標準として 1 mg/mL Cys の 0.1 M 塩

酸溶液を 0.1mL 加え,0.45 μm のメンブランフィルターを通過させたものを試験溶液と

した。

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第3節 結果および考察 第1項 分析条件の検討

CE/MS の遊離アミノ酸の一斉分析法を開発するにあたり,分析対象物質が電荷を持つ

ことが望まれる。アミノ酸の等電点は 2.5 以上であることから 47),1 M ギ酸(pH 1.8)を

泳動液とし,陽イオンとして泳動させた。

シース液には,一般的にギ酸やギ酸アンモニウム等の揮発性物質が添加される。これら

の物質は電流値の安定やシグナル強度の再現性を保つために用いられるが,十分な洗浄が

なければ,スプレーヤーの腐食を引き起こす可能性もある。本研究では,揮発性物質を添

加しても測定結果に顕著な変化が見られなかったため,50 %(v/v)メタノールを用いた。

Fig. 3-1 にアミノ酸の標準溶液と錠剤型試料から得られたエレクトロフェログラムを示

す。Gly と Ala は,分子量が小さいため m/z 50 以上の適度な強度のフラグメントイオン

を生成せず,プリカーサーイオンのみの SIM モードで測定した。Ile と Leu は,完全に分

離しなかったため,合計値として定量した。

内標準(IS)は,RJ およびはちみつの両者に含まれないアミノ酸の Cys を選択した。

Cys は,酸性溶液では安定で,2 量体シスチンに変化しなかった。そのため,Cys は測定

直前に 0.1 M 塩酸溶液に添加した。

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Fig. 3-1. CE-MS/MS electropherograms of (A) mixed standard solution (each 0.5

μmol/mL) and (B) a RJ product sample solution (Tablet No.1 in Table 3-3). Condition:

uncoated fused-silica capillary, 50 μm I.D. × 100 cm; electrolyte, 1 M formic acid;

sheath liquid, 50 % methanol at 8 μL/min; voltage, 30 kV; injection, 50 mbar × 5 s.

Cys was spiked as IS. Ala and Gly were monitored in SIM mode. The numbers in figure

indicate the maximum peak abundances in the respective electropherograms (a The

peak abundances of impurities).

第2項 前処理

操作を簡便にするために,過去の報告 49,50)を参考に抽出液は 75 %(v/v)エタノールとし,

除タンパク効果も兼ねた。また,MS/MS により十分な検出感度が得られることから,前

処理時の濃縮は省略した。さらに,GC/MS や HPLC において必須であった誘導体化も不

要であった。

8 10 12 14 16 18 20Migration time (min)

8 10 12 14 16 18 20Migration time (min)

(A) (B)

Ala Ala

Arg Asp

GABA

Glu

His

Gly

Ile Leu

Lys

Met

Phe

Pro Ser

Thr

Tyr

Val

IS(Cys) IS(Cys)

Val

Tyr

Thr

Ser Pro

Phe

Lys

Ile Leu His

Gly

Glu

GABA

Asp Arg

4096

9150 1694

6685

2669

2882

9557 14400

5432

4125

660

11816 3672

6017

3070

10065

1642

408a

840 160

160

234

224a

232 173

223

311

23383 111

151

74

159

1916

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第3項 分析性能

3-1 定量性および検出感度

アミノ酸混合標準溶液を希釈して調製した検量線用標準溶液を用いた検量線は,0.01−1

μmol/mL の範囲において良好な直線性を示した(r > 0.999)。0.5 μmol/mL の標準溶液を

連続 5 回測定した時の IS 補正後の泳動時間とピーク面積の相対標準偏差(RSD)は,そ

れぞれ 0.02−0.68 %,0.9−3.8 %であった。LOD(S/N = 3)は,0.61−10.5 μg/g であった。

各アミノ酸に対する詳細なデータを Table 3-2 に示す。

Table 3-2. Limit of detection, accuracy and precision of the proposed method

a) The mean value, n = 15. b) Leu and Ile

Amino

acid

LOD

(μg/g)

Tablet Liquid drink Raw material

Recovery

(%) a

RSD (%) Recovery

(%) a

RSD (%) Recovery

(%) a

RSD (%)

Intraday Interday Intraday Interday Intraday Interday

Ala 2.58 99.8 4.0 9.1 91.6 4.7 9.9 95.9 4.1 6.9 Arg 1.14 99.0 5.2 5.2 89.9 2.5 9.7 95.4 6.5 6.1 Asp 1.36 91.1 2.9 9.2 95.0 3.3 6.6 92.6 3.6 7.2

GABA 0.84 103.6 4.7 5.8 89.7 2.8 9.2 92.4 5.3 6.8 Glu 2.13 96.3 4.1 9.4 93.2 3.2 9.0 90.2 4.9 4.2 Gly 1.17 92.1 4.3 8.6 89.2 4.8 3.9 94.6 7.6 9.5 His 0.61 94.3 3.4 4.2 92.5 2.3 9.6 90.4 3.0 7.1

Leu b 0.83 106.6 3.5 4.4 95.5 3.2 5.9 91.6 4.9 5.2 Lys 10.5 93.1 3.4 4.6 95.7 3.7 8.8 89.0 4.8 6.2 Met 1.36 100.1 3.2 7.8 96.4 3.4 9.7 90.0 4.2 9.0 Phe 1.12 105.8 4.4 4.8 92.3 4.1 9.1 93.1 4.0 8.7 Pro 9.08 108.6 6.2 6.6 94.7 2.9 8.9 93.2 6.2 9.4 Ser 0.67 95.1 4.2 5.9 92.5 2.4 7.6 91.0 3.4 5.6 Thr 0.80 102.8 5.1 4.7 93.2 2.7 8.3 88.3 4.2 5.6 Tyr 1.81 108.1 4.8 4.4 93.5 4.1 9.1 92.1 5.2 8.4 Val 1.00 104.1 3.8 3.7 90.1 4.0 9.6 89.2 3.9 5.8

)

) ) )

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- 26 -

3-2 添加回収試験

典型的な RJ 製品として,錠剤型,液体型および未加工の生 RJ を 1 製品ずつ選択し,

測定対象のアミノ酸すべての標準物質を添加した。添加濃度は,Pro と Lys は 10 μmol/g,

Glu と Asp は 2 μmol/g,その他のアミノ酸は 0.5 μmol/g である。添加回収率は,添加前

と添加後の測定値の差から求めた。試験は,1 日に 5 試行を 3 日間実施した。Table 3-2

に,回収率,併行精度,室内(日間)精度を製品形態ごとに示した。平均回収率は,100.0 %

(錠剤型,91.1−108.6 %),92.8 %(液体型,89.2−96.4 %),92.8 %(生 RJ, 88.3−95.9 %)

であった。併行精度が 4.2 %(錠剤型,2.9−6.2 %),3.4 %(液体型,2.3−4.8 %) ,4.7 %

(生 RJ,3.0−7.6 %)であり,室内精度は 6.2 %(錠剤型,3.7−9.4 %),8.4 %(液体型,

3.9−9.9 %),7.0 %(生 RJ,4.2−9.5 %)であった。これらの結果から,本法が生 RJ だけ

でなく,他の RJ 製品においても定量試験法として適当であることがわかった。

第4項 実試料への応用

本法を用いて市販 RJ 含有健康食品 17 種と市販はちみつ 3 種中の 16 種類の遊離アミノ

酸含有量を調査した(Table 3-3)。前処理は簡便で,多数の試料測定においても問題はな

かった。また,いずれの製品形態においても,定量の妨害となるピークは認められなかっ

た。

生RJは,Limingらの報告 38)と同様,Proが最も高濃度に含まれていた(3.2−3.5 mg/g)。

Pro に続いて Lys(2.2−2.4 mg/g),Glu(0.59−0.60 mg/g),Arg(0.34−0.37 mg/g),Asp

(0.23 mg/g)の順に多く含まれていた。一方,生 RJ を除く加工製品では,製品ごとにア

ミノ酸の濃度や割合が異なっていた。これは,特定の栄養素を高めて付加価値をつけるた

めに,分岐型アミノ酸(Ile,Leu および Val)などのアミノ酸が製品に添加されているこ

とが要因と考えられる。16 種の遊離アミノ酸組成が完全に一致する製品はなく,RJ 製品

間の識別に有用であることが示唆された。

GABA は血圧低下やストレス軽減効果のため,健康食品として利用される物質である

51,52)。試料 No.14(全量 1.5 g/包)には,GABA が 42 mg/g 含まれているが,Kajimoto ら

53)によれば 80 mg/日を 12 週間摂取しても副作用は見られないことから,健康被害を生じ

る量ではないと判断した。また,フェニルケトン症患者にとって食品中の Phe 含有量は重

要であるが 54),今回の調査では製品によって差があり(0.002−1.2 mg/g),含有量の表示

は必要であると思われる。Met は,Liming らの報告 38)同様,生 RJ では検出されなかっ

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たが,一部の加工製品では検出された。

上述のように加工された製品では,遊離アミノ酸濃度の割合に一定の傾向が見られなか

ったため,はちみつとの比較は生 RJ を用いた。はちみつの 16 種アミノ酸の総含有量は,

生 RJ の約 1/3 未満であり,各アミノ酸の組成も RJ と大きく異なった。はちみつでは,

Pro よりも Phe が多く含まれており,Thr についても,対 Pro 比で RJ の約 40 倍であっ

た。なお,はちみつにおいても Met は検出されなかった。

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Table 3-3. Free amino acid contents in RJ and honey products by CE-MS/MS with MRM and SIM mode (μg/g) a)

a) The mean value, n = 3. b) ND = Not detected. c) Leu and Ile.

Amino

acid

Royal jelly Honey

Tablet Capsule Powder Liquid

drink

Raw

material

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 1 2 3

Ala 9.1 5.8 253 12 170 12 179 6.3 19 6.1 25 1020 11 82 ND b) 30 29 9.9 12 7.3

Arg 50 32 507 103 77 98 380 34 36 26 186 568 66 281 7.1 378 342 5.3 4.8 3.9

Asp 32 25 268 76 62 64 236 31 25 24 120 215 63 86 6.0 231 226 16 61 12

GABA 6.7 1.7 14 9.5 13 8.7 12 3.3 1.9 1.9 20 70 5.2 42000 2.4 101 86 4.9 4.4 3.5

Glu 40 29 272 125 141 98 189 41 29 11 220 1180 64 224 9.0 595 594 8.5 12 7.2

Gly 5.0 11 31 7.9 14 3.7 26 2.4 24 5.5 8.1 200 5.3 14 1.4 32 27 4.3 4.9 3.6

His 10 7.3 88 12 20 14 45 12 7.3 5.0 25 119 17 27 2.4 116 110 3.0 3.8 2.7

Leu c) 3.6 8.8 2260 6.3 10 3.2 1790 4.7 11 4.4 7.6 45 5.9 28 1.2 27 27 8.5 7.0 5.0

Lys 19 17 295 156 63 97 133 32 12 13.6 309 544 47 775 23 2210 2380 18 14 ND

Met ND ND 30 ND ND ND 1.5 ND ND ND ND 2.7 ND ND ND ND ND ND ND ND

Phe 10 5.8 1150 12 20 11 1109 7.4 13 11 25 52 13 29 1.5 92 47 293 956 261

Pro 871 630 1400 1260 1080 1690 1310 1040 503 712 3210 3450 2170 1710 51 3500 3210 275 312 213

Ser 5.7 3.6 131 6.7 7.3 4.9 92 2.6 5.7 3.5 8.1 52 3.0 28 1.0 24 23 8.0 8.9 7.2

Thr 7.4 4.2 822 7.7 14 8.0 806 5.5 9.3 7.8 18 37 9.4 21 1.2 67 32 210 663 193

Tyr 5.7 3.4 1260 9.2 15 7.3 1000 5.4 10 5.6 17 66 8.3 17 ND 34 27 19 41 14

Val 4.8 4.3 669 5.6 14 5.7 735 4.4 8.8 6.7 15 60 8.9 70 ND 35 32 8.9 8.5 6.1

-28-

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- 29 -

第4節 まとめ 市販 RJ 含有健康食品中の遊離アミノ酸の定量法として,CE/MS 分析法を開発した。

1)試料の前処理において,煩雑な誘導体化処理や濃縮工程が不要であり,簡便に測定

ができた。

2)生 RJ だけでなく,これまで検討されていなかった錠剤型やカプセル型のような加

工 RJ 製品中の遊離アミノ酸も測定したが,定量を妨害するピークはなかった。

3)加工 RJ 製品では,製品ごとに遊離アミノ酸の組成割合が異なるため,製品間の識

別に有用であった。また,生 RJ とはちみつにおいてもアミノ酸組成割合が異なり,

識別が可能であった。これにより,10-HDA だけでなく遊離アミノ酸を含めた総合

的な判断が可能で,識別の正確さが増すことが考えられる。

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- 30 -

第4章 CE/MS を用いた痩身用健康食品中の医薬品成分定量法の

開発 第1節 緒言 健康食品は幅広い年代に利用されており,痩身用健康食品はその代表例といえる。一方

で,違法に医薬品成分が添加された製品(無承認無許可医薬品)の服用による健康被害も

報告されている 55-57)。特に,個人輸入された「ホスピタルダイエット」では,死亡に至っ

たケースもある 58)。また,違法添加の医薬品成分は多岐にわたり,下剤のほか,向精神薬

や利尿剤等の検出例がある 59)。

これまで CE/MS の分野においても類似構造をもつ医薬品成分の分析法は開発されてき

た 60-63)。しかし,異なる化学構造で異なる作用を持つ複数の医薬品成分の一斉分析法はな

く,スクリーニングの観点から様々な作用機序をもつ医薬品の分析法の開発が望まれてい

る。本研究では,CE/MS を用いて,違法添加のおそれのある利尿剤や下剤,向精神薬等

を含む 20 種の医薬品成分(Fig. 4-1)の一斉分析法を開発した。また,この分析法を用い

て 12 種の痩身用健康食品および 3 種の市販されている一般用医薬品を分析した。

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- 31 -

Fig. 4-1. Chemical structures of the analytes. (1) furosemide, (2) trichlormethiazide,

(3) hydrochlorothiazide, (4) triamterene, (5) spironolactone, (6) acetazolamide, (7)

dioctyl sulfosuccinate, (8) bisacodyl, (9) sennoside A, (10) sennoside B, (11) picosulfate,

(12) phenolphthalein, (13) phentermine, (14) sibutramine, (15) N-

didemetylsibutramine, (16) fenfluramine, (17) N- nitrosofenfluramine, (18) mazindol,

(19) fluoxetine, (20) diazepam. Glc: glucose.

1 2 3 4

5 6 7

8 9 10

11 12 13

14 15 16 17

18 19 20

SNH2

O

ON N

S NH

O

SONa

O

O

O

O

O

O

C4H9

C4H9

N

O O

O O

O O OH

COOH

COOH

O O OHGlc

Glc

H H

O O OH

COOH

COOH

O O OHGlc

Glc

H H

N

O OS

OS

O

O OONa ONa

OH

O

OH

O

NH2

ClN

ClNH2

CF3

HN

CF3

NON

NNClOH

ONH

CF3

NN

O

Cl

O

SO

O

O

H

H H

N

N

N

N NH2

NH2

NH2NHCl

SSNH2

O

O

NH

O O

NHCl

SSNH2

O

O

NH

O O

Cl

ClO

NHCl

O

OH

SNH2

O

O

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- 32 -

第2節 実験方法 第1項 試薬および試液

標準品:トリクロルメチアジド,トリアムテレン,スピロノラクトン,フェノールフタ

レイン,フェンテルミン塩酸塩,(±)-フェンフルラミン塩酸塩,マジンドール,ジアゼパ

ムは,Sigma-Aldrich 製の試薬を用いた。フロセミド,スルホコハク酸ビス(2-エチルヘキ

シル)ナトリウム(ジオクチルスルホサクシネート),フルオキセチン塩酸塩は,東京化成

製である。センノシド A,センノシド B,脱 N-ジメチルシブトラミンクエン酸塩,N-ニト

ロソフェンフルラミンは,和光純薬製である。ヒドロクロロチアジド,アセタゾラミド,

ビサコジル,ピコスルファートナトリウム,シブトラミン塩酸塩は,それぞれ日本公定書

協会製,Alfa Aesar 製,Fluka 製,U.S.Pharmacopeial Convention 製,Enzo Life Sciences

製である。

各 1 mg/mL 標準溶液:各標準品をメタノールに溶かして調製した。センノシド A のみ,

メタノール・0.1 %炭酸水素ナトリウム水溶液(5:1)に溶かして調製した。

混合標準溶液:各成分のピーク強度を考慮して 1 mg/mL 標準溶液をメタノールで希釈

して調製した。

0.5 mg/mL 内部標準溶液:4-アミノピリジン(東京化成製)5 mg をメタノールに溶か

して 10 mL としたものを用いた。

水:Milli-Q(メルクミリポア製)で精製した超純水を用いた。

メタノールおよびアセトニトリルは HPLC 用を用いた。その他の試薬は,市販の特級品

を用いた。

第2項 試料

兵庫県内で健康被害の訴えのあった,個人輸入の健康食品 2 製品(錠剤型,粉末型各 1

製品)を用いた。このほか国内で販売されている痩身目的の健康食品 10 製品を用いた。

10 製品の内訳は,錠剤型 4 製品,カプセル型 2 製品,粉末型 3 製品,ビスケット 1 製品

であった。分析性能の確認に用いたブランク試料は,医薬品成分を調査後の粉末型 1 製品

およびカプセル型 1 製品(ソフトカプセル)を用いた。

一般用医薬品 3 製品は,国内の薬局およびドラッグストアで販売されているものを用い

た。

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- 33 -

第3項 装置および測定条件

3-1 CE

装置:Agilent 7100(アジレント製)

キャピラリー:溶融シリカ(50 μm I.D.,全長 90 cm)

印加電圧:30 kV

温度:40 ℃

注入法:加圧注入(50 mbar,30 s)

泳動液:20 mM ギ酸アンモニウムを含む 20 %(v/v)アセトニトリル溶液(pH 8.0)

シース液:5 mM ギ酸アンモニウムおよび 0.1 %(v/v)ギ酸を含む 50 %(v/v)メタノール,

8 μL/min

各サンプル測定後には,キャピラリー内をメタノールで 3 min,0.1 M NaOH で 3 min,

水で 2 min,その後泳動液で 5 min 洗浄した。

3-2 MS

装置:Agilent 6410(アジレント製)

キャピラリー電圧:4 kV(positive),3.5 kV(negative)

ネブライザーガス:10 psi N2

乾燥ガス:10 L/min N2,300℃

その他の最適化した MRM パラメータを Table 4-1 に示す。

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- 34 -

Table 4-1. Optimized MRM parameters for the analytes

a) The upper and lower lines for each compound respectively indicate the quantification

and confirmation ion transition.

Therapeutic category Compound ESI

modeTransition a)

(m/z)Fragmentorvoltage (V)

Collision energy

(eV)Diuretic Furosemide Neg 329.0→ 285.0 - 130 - 5

329.0→ 205.0 - 21Trichloromethiazide Neg 377.9→ 242.0 - 170 - 17

377.9→ 305.9 - 5Hydrochlorothiazide Neg 295.9→ 269.0 - 170 - 17

295.9→ 205.0 - 21Triamterene Pos 254.1→ 237.1 170 25

254.1→ 104.0 45Spironolactone Pos 341.3→ 107.1 170 33

341.3→ 91.0 55Acetazolamide Pos 223.0→ 181.0 90 9

223.0→ 163.9 21Cathartic Dioctyl sulfosuccinate Pos 440.3→ 181.0 50 17

440.3→ 71.1 13Bisacodyl Pos 362.1→ 184.1 130 25

362.1→ 167.1 55Sennoside A,B Pos 270.0→ 196.1 210 33

270.0→ 151.1 55Picosulfate Pos 438.0→ 184.1 50 33

438.0→ 358.0 13Phenolphthalein Pos 319.1→ 225.1 130 17

319.1→ 141.1 45Appetite

depressantPhentermine Pos 150.1→ 91.0 50 21

150.1→ 133.1 5Sibutramine Pos 280.2→ 125.0 50 29

280.2→ 139.0 9N-didemethylsibutramine Pos 252.1→ 125.0 50 25

252.1→ 139.0 5Fenfluramine Pos 232.1→ 159.0 90 21

232.1→ 109.0 49N-nitrosofenfluramine Pos 261.1→ 159.0 50 21

261.1→ 109.0 53Mazindol Pos 285.1→ 130.0 50 37

285.1→ 102.0 55Antidepressant Fluoxetine Pos 310.1→ 148.1 50 5

310.1→ 91.1 55Diazepam Pos 285.1→ 193.1 170 33

285.1→ 222.1 25IS 4-aminopyridine Pos 95.1→ 78.0 50 25

95.1→ 52.1 45

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- 35 -

第4項 試験溶液の調製方法

錠剤型試料はミキサー等で粉砕し,カプセル型試料はカプセルの中身を取り出し均一化

した。均一化した試料20 mgを秤量し,70 %(v/v)メタノール1.0 mLを加えて室温で10 min

超音波抽出した後,10000 rpmで 5 min遠心分離した。得られた上澄液 0.1 mLに水 0.4 mL

と 0.5 mg/mL 内部標準溶液を 10 μL 加え,0.45 μm のメンブランフィルターを通過させ

たものを試験溶液とした。

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第3節 結果および考察 第1項 泳動液の検討

1-1 pH

質量が測定できる MS を用いた分析法においても,物質の同定に関して,CE 分離にお

ける泳動時間の情報は重要である。そのため,最初に CE 条件の最適化を行った。20 mM

ギ酸アンモニウム溶液にギ酸またはアンモニア水を添加して pH を 3.0−10.0 の範囲内で

0.5 間隔になるように調整し,分析した。低い pH では EOF 速度が遅いため,泳動時間が

長く,ピークもブロードとなった。特に pH 4.0 以下では,30 min 以内にすべての成分が

検出されなかった。本研究では,対象物質のうち分子量の等しい 2 組 4 物質(センノシド

A および B,マジンドール,ジアゼパム)のエレクトロフェログラム上での分離が達成さ

れるように最適化した。

Fig. 4-2 に pH 5.0,8.0,10.0 での 4 物質のエレクトロフェログラムを示す。マジンド

ールの pKaは,2.9 および 8.6 であり 64),ジアゼパムは 3.4 のため 65),両者は pH 5.0 お

よび 8.0 においてはベースライン分離しているが,10.0 ではいずれも中性物質として同一

速度で泳動しているために分離されなかった。また,全体的に見て pH 8.0 の方が泳動時

間も短く,ピーク形状も良好なため,泳動液の pH は 8.0 とした。センノシド A および B

については,pH 8.0 では分離が不十分であったが,後述する有機溶媒の添加によって改善

された。

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- 37 -

Fig. 4-2. Effect of pH in BGE on separation of four compounds by CE-MS/MS.

Experimental conditions: analytes, 50 μg/mL of mazindol (Maz), 4 μg/mL of diazepam

(Dia), 50 μg/mL of Sennoside A (Sen A), 50 μg/mL of Sennoside B (Sen B); sample

injection, hydrodynamic injection (50 mbar × 30 s); BGE, 20 mM ammonium formate

at pH 5.0 (A), 8.0 (B), 10.0 (C); sheath liquid, 5 mM ammonium formate in 50 %(v/v)

methanol with 0.1 %(v/v) formic acid. The enlarged electropherogram in (C) shows part

of the same data.

0

1000

2000

3000

4000

0 5 10 15 20Time(min)

Abun

danc

e

0

2500

5000

7500

10000

0 5 10 15 20Time(min)

Abun

danc

e

0

1500

3000

4500

6000

0 5 10 15 20Time(min)

Abun

danc

e

(B)

(A)

(C)

m/z 270→196 m/z 285→193

m/z 285→130

Sen A+ Sen B Dia

Maz

Sen A+ Sen B Dia

Maz

m/z 270→196

m/z 285→193

m/z 285→130

m/z 270→196 m/z 285→193

Maz Dia

Sen A Sen B

m/z 285→130

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- 38 -

1-2 有機溶媒

泳動液に有機溶媒を添加することにより,分離の選択性が変化することが知られている。

本研究では,異なる濃度のアセトニトリルを用いてセンノシド A および B の分離を下式に

示す分離度(Rs)で評価した 66)。

s = 2 × (2)

tR1および tR2:ピークの泳動時間(tR2 > tR1)

W1および W2:ベースラインでのピーク幅

一般に Rsが 1.5 を超えると,2 つのピークは完全に分離しているとみなされる。アセト

ニトリル濃度が高くなれば,Rsも大きくなった。20 %を超えると,センノシド A および B

は完全に分離した。しかし,アセトニトリル濃度の上昇とともに,泳動時間は長くなり,

ピーク形状も悪化した。さらに電流値も不安定になり,再現性の低下につながる可能性が

あるため,アセトニトリル濃度は 20 %とした。

1-3 ギ酸アンモニウム濃度

ギ酸アンモニウムの濃度を 5−30 mM に変化させて評価した。ギ酸アンモニウム濃度が

高いほど,泳動時間は長くなった。これは,イオン強度の増加による EOF の減少が要因

と考えられる。また,低濃度であれば電流値が低く(10 μA 未満),不安定となったため,

ギ酸アンモニウム濃度は 20 mM とした。

第2項 シース液の検討

LC/MS分析で用いられていた移動相に準じて5 mMギ酸アンモニウムおよび0.1 %(v/v)

ギ酸をシース液中のイオン化促進剤として添加した。5 種類の異なった濃度のメタノール

溶液(10 %,25 %,50 %,75 %および 90 %(v/v))を検討した。

1-2の泳動液での検討と同様に,有機溶媒の濃度が高くなると,泳動時間は長くなっ

た。一方,検出感度については,高濃度ではシース液の揮発性が高まり,ピーク強度は強

くなった。Fig. 4-3 にポジティブイオンおよびネガティブイオンモードで測定する代表的

な物質として,それぞれマジンドールおよびフロセミドのメタノール濃度に対するピーク

面積の推移を示す。この 2 物質についてもメタノール濃度の上昇により,感度の上昇が見

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- 39 -

られた。しかし,50 %を超えるとほぼ横ばいとなったことから,メタノール濃度は 50 %

とした。

また,シース液の流量についても 3−8 μL/min の範囲で最適な条件を検討した。検出感

度に顕著な変化は見られなかったが,低流量ほど泳動時間は長くなった。そのため,シー

ス液流量は 8 μL/min とした。

Fig. 4-3. Effects of methanol content in sheath liquid on peak area of two typical

compounds. The sheath liquid was composed of 5 mM ammonium formate and

0.1 %(v/v) formic acid containing various concentrations of methanol. BGE; 20 mM

ammonium formate / 20 % acetonitrile, pH 8.0. Open circles: furosemide (negative

mode, 100 μg/mL), closed circles: mazindol (positive mode, 50 μg/mL).

第3項 前処理

健康食品は,錠剤型やカプセル型等の様々な形状のものが市販されている。健康食品中

の医薬品成分の分析には,メタノールが抽出溶媒として用いられることが多いが,センノ

シド A および B の低回収率の報告 67)もある。一方,日本薬局方のセンナ定量法の抽出溶

媒には,70 %(v/v)メタノールが用いられている 68)。本研究においても,70 %(v/v)メタノ

ールを用いた。

0

500

1000

1500

2000

0 25 50 75 100

Peak

are

a

Methanol content (%)

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- 40 -

第4項 分析性能

Table 4-2 に 20 物質のバリデーションパラメータを示す。各物質の検量線には,良好な

直線性が見られた(r > 0.98)。2 種類のブランク試料(粉末および液体)のノイズ高さか

らそれぞれ評価した LOD(S/N = 3)は,1.0−750 μg/g(試験溶液中に換算すると,0.004

– 3.0 μg/mL)であり,薬用量レベルの濃度は十分に検出できることが示された。

イオン化時におけるマトリックス効果の影響を検討した。マトリックス効果は分析対象

成分とマトリックス成分(夾雑物)がイオン源内で共存した際に,マトリックス成分の影

響により対象成分のイオン化が阻害または促進される現象であり,ブランク試料溶液を含

む標準溶液(マトリックス標準)とブランク試料を含まない同濃度の標準溶液(溶媒標準)

を比較し,各対象物質のピーク面積の比率(マトリックス標準/溶媒標準)で評価した。す

べての物質で比率は 0.87−1.18 となり,粉末型および液体型のいずれにおいてもマトリッ

クス成分の影響を受けないことを確認した。

添加回収試験として,ブランク試料に 20 種の標準試料を添加したものを分析した。Fig.

4-4 にそのエレクトロフェログラムを示す。添加濃度は,それぞれのピーク強度を考慮し

て,フェンテルミン,フェンフルラミンは 0.125 mg/g,スピロノラクトン,ジオクチルス

ルホサクシネート,ピコスルファート,フルオキセチンは 2.5 mg/g,アセタゾラミド,セ

ンノシド A,センノシド B,マジンドールは 6.25 mg/g,フロセミド,トリクロルメチア

ジド,ヒドロクロロチアジドは 12.5 mg/g,その他は 0.5 mg/g とした。8 min 付近に EOF

とともに中性物質として泳動した数種類の物質が同時に検出された。MRM モードでの測

定により,すべての物質において定量の妨害となるピークは認められなかった。5 試行の

平均回収率は,80.4−101.1 %であった。併行精度,室内(日間)精度は,それぞれ 5.8−15.6 %,

7.1−20.9 %であった。

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- 41 -

Table 4-2. Validation parameters of the proposed method for the analysis of 20

compounds

a) The mean value, n = 6. b) The mean value, n = 5. c) n = 5. d) n = 4.

CompoundLinearity

range (mg/g)

Correlation coefficient

LOD(μg/g) Matrix effectRecovery(%) b)

RSD (%)

Powder a)

Liquid a)

Powder a)

Liquid a)

Intraday c)

Interday d)

Furosemide 2.5-125 0.988 130 320 0.95 1.07 89.8 10.3 11.3

Trichloromethiazide 2.5-125 0.999 750 290 1.06 0.97 92.4 12.1 14.3

Hydrochlorothiazide 2.5-125 0.999 230 510 1.03 0.97 100.3 12.6 14.2

Triamterene 0.025-1 0.998 3.9 4.8 1.18 0.94 86.7 9.4 18.4

Spironolactone 0.25-12.5 0.989 100 75 0.95 1.02 81.3 5.8 9.0

Acetazolamide 0.31-12.5 0.995 150 100 0.98 1.09 91.4 12.4 13.8

Dioctyl sulfosuccinate 0.25-12.5 0.980 95 110 1.18 1.11 86.7 13.1 20.1

Bisacodyl 0.025-1 0.999 16 12 1.13 1.07 81.4 10.1 16.2

Sennoside A 0.25-12.5 1.000 280 160 0.87 0.81 86.6 7.1 12.4

Sennoside B 0.25-12.5 0.993 420 410 1.09 0.97 90.4 11.5 10.9

Picosulfate 0.25-12.5 0.997 11 44 1.11 0.94 91.2 7.5 20.9

Phenolphthalein 0.025-1 0.996 5.7 4.9 0.98 0.95 86.0 9.7 12.1

Phentermine 0.025-1 0.995 2.3 2.3 1.14 0.98 84.9 6.5 18.7

Sibutramine 0.05-2.5 0.990 4.4 4.7 1.14 0.96 101.1 7.4 12.3N-didemethylsibutramine 0.025-1 0.998 11 7.5 0.94 0.86 84.9 15.6 19.1

Fenfluramine 0.006-0.25 0.994 1.2 1.0 1.10 1.01 87.7 8.2 14.3

N-nitrosofenfluramine 0.025-1 1.000 11 5.8 1.08 1.03 91.6 7.0 7.1

Mazindol 0.31-12.5 0.992 220 150 1.05 0.92 84.2 12.3 15.3

Fluoxetine 0.25-12.5 1.000 84 65 0.99 0.92 89.8 10.3 11.3

Diazepam 0.025-1 0.994 19 10 0.95 1.09 80.4 11.2 15.3

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Fig. 4-4. CE-MS/MS analysis of a sample extract spiked with a mixture of 20 standard

solution. Spiked concentration; 0.125 mg/g (the analyte number 13,16 as in Fig. 4-1),

0.5 mg/g (4,8,12,14,15,17,20), 2.5 mg/g (5,7,11,19), 6.25 mg/g (6,9,10,18), 12.5 mg/g

(1,2,3). IS concentration; 10 ng/μL. BGE; 20 mM ammonium formate / 20 % acetonitrile,

pH 8.0. The numbers in figure indicate the analyte numbers (left) and the maximum

peak abundances in the electropherogram (right). Sample preparation conditions are

described in the experimental section.

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第5項 実試料への応用

本法を用いて健康食品 12 種と一般用医薬品 3種の 20種類の医薬品成分の含有量を測定

した。市販されていた 10 製品は,医薬品成分は検出されなかったが,健康被害の生じた 2

製品は,フェンテルミンおよびシブトラミンが検出された(Table 4-3,試料 A および B)。

Fig. 4-5 に検出された医薬品成分のエレクトロフェログラムを示す。2 成分ともに国内で

は未承認の医薬品で,食欲抑制作用を有するものであった。米国 FDA データベース 69)で

は,フェンテルミンおよびシブトラミンの薬用量は,それぞれ 30 mg/日および 10 mg/日

である。試料 A は錠剤型で,1 錠の質量が 130 mg であることから,2 錠服用でほぼ薬用

量に相当するフェンテルミンを摂取することになる。また,粉末型のインスタントコーヒ

ーの試料 B においても,1 包あたりの質量が 10 g であり,1 包中に薬用量を超えるシブト

ラミンが含有されていることがわかった。

また,市販の一般用医薬品中の含有量の確認に本法を適用した。表示量に対しての定量

値の割合は,88.6−98.3 %となり,概ね表示量と一致した。

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Table 4-3. Determination of drug substances in dietary supplements and

nonprescription drugs

a) The mean value ± SD, n = 3 b) Detected contents / labeled value (%) c) Labeled value is expressed as the sum of sennoside A and sennoside B.

Fig. 4-5. CE-MS/MS electropherograms of real samples. (A) Sample A in Table 4-3;

phentermine. (B) Sample B in Table 4-3; sibutramine. Final sample concentration: (A)

20 μg sample/mL, (B) 4 mg sample/mL. The upper electropherograms: quantification

ion, lower electropherograms: confirmation ion.

Category Sample

name Compound

Content

(mg/g) a)

Detected

/ labeled

(%) b)

Dietary supplements A Phentermine 111 ± 18 -

B Sibutramine 1.4 ± 0.1 -

Nonprescription drugs C Bisacodyl 44.3 ± 4.6 88.6

Dioctyl sulfosuccinate 78.1 ± 7.4 97.6

D Picosulfate 14.8 ± 1.6 98.3

E Bisacodyl 46.0 ± 3.9 91.8

Sennoside A 22.1 ± 4.3 96.0 c)

Sennoside B 26.0 ± 2.8

150.1 → 91.0

150.1 →133.1

280.2 →125.0

280.2 →139.0

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第4節 まとめ 痩身用健康食品中の 20 種の医薬品成分の CE/MS 一斉分析法を開発した。

1)これまで国内で違法添加が確認されたものを含む 20 種の医薬品成分は,利尿剤や

下剤,向精神薬等の異なる作用機序を持つものであり,構造も多様であるが,1 回

の分析ですべてをスクリーニングできた。

2)必要試料量が少なく,装置のウォームアップ時間も短いため,LC/MS 法等の他の分

析法との同時併行での分析が可能である。また,クロマトグラフィーとは異なる分

離を示すことから,成分同定の確実性が増した。

3)実際に健康被害事例が発生した製品においても,スクリーニングとして活用できた。

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第5章 MEKC/MS を用いた植物系違法ドラッグ中の合成カンナ

ビノイド定量法の開発 第1節 緒言 違法ドラッグとは,法律で所持や使用が禁止されている麻薬や覚せい剤ではないが,こ

れらと同様に幻覚や興奮等の作用がある薬物である。特に,2009 年頃から「Spice」と称

する植物系違法ドラッグが世界中で流行し 70,71),これが原因と考えられる交通事故や事件

が発生している。

植物系違法ドラッグは,一見しただけでは人体摂取用とわからないように,「お香」や「ハ

ーブ」などと称し,乾燥植物片に大麻様の合成カンナビノイド等が添加されたものである。

添加される成分も,規制を逃れるために化学構造を少し変えたものが次々と出現しており,

厚生労働省も 2013 年 2 月から化学構造が類似した物質をまとめて規制する「包括指定」

を導入し,規制を強化している 72)。

これまで合成カンナビノイドの同定と定量には,HPLC 73),LC/MS 74-76)および GC/MS 76-78)等が用いられてきた。しかし,ますます規制対象物質が増加する中で,正確な薬物同

定を行うためには,これら通常のクロマトグラフィーのみではなく,異なる分離モードで

の分析も併用することが望ましい。この目的のために CE は有効な分離分析法と考えられ,

中でも MEKC は,合成カンナビノイドのような中性物質の分離に有効である。本研究で

は,パーフルオロオクタン酸アンモニウム(APFOA)を界面活性剤として用いた

MEKC/MS による 12 種の合成カンナビノイド(Fig. 5-1)分析法を開発し,植物系違法ド

ラッグ 2 製品に適用した。

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Fig. 5-1. Chemical structures of analytes.

N

O

R1

R2 N

O

C5H11

R1

N

OR3

R1

R2N

O

R1

N

NH

O

C5H11

NN

NH

O

C5H11

JWH-015 (R1=C3H7, R2=CH3)JWH-022 (R1=(CH2)3CH=CH2, R2=H)JWH-200 (R1=2-morpholinoethyl, R2=H)AM-1220 (R1=(1-methylpiperidin-2-yl)methyl, R2=H)

JWH-250 (R1=OCH3)JWH-251 (R1=CH3)

AM-2233 (R1=(1-methylpiperidin-2-yl)methyl, R2=H, R3=I)RCS-4 (R1=C5H11, R2=OCH3, R3=H)

UR-144 (R1=C5H11)XLR-11 (R1=(CH2)5F)

APICA APINACA

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第2節 実験方法 第1項 試薬および試液

合成カンナビノイド標準品:JWH-015,JWH-022,JWH-200,JWH-250,JWH-251,

AM-1220,AM-2233,RCS-4,XLR-11,UR-144,APICA および APINACA は,Cayman

Chemical 製を用いた。

標準原液:各標準品 1 g を 4 mL のメタノールに溶かして調製した(各 250 mg/mL)。

混合標準溶液:12 種の標準原液を混合し,メタノールで希釈して調製した。

内部標準溶液:チオ尿素(和光純薬製)40 mg を 10 mL のメタノールに溶かして調製

した(4 mg/mL)。

水:Milli-Q(メルクミリポア製)で精製した超純水を用いた。

メタノールおよびアセトニトリルは HPLC 用を用いた。その他の試薬は,市販の特級品

を用いた。

第2項 装置および測定条件

2-1 CE

装置:Agilent 7100(アジレント製)

キャピラリー:溶融シリカ(50 μm I.D.,全長 90 cm)

印加電圧:30 kV

温度:30 ℃

注入法:加圧注入(50 mbar,5 s)

泳動液:50 mM APFOA を含む 20 %(v/v)アセトニトリル溶液(pH 9.0)

シース液:5 mM ギ酸アンモニウムを含む 50 %(v/v)メタノール,8 μL/min

各サンプル測定後には,キャピラリー内をメタノールで 3 min,0.1 M NaOH で 3 min,

水で 2 min,その後泳動液で 5 min 洗浄した。

2-2 MS

装置:Agilent 6410(アジレント製)

キャピラリー電圧:4 kV(positive)

ネブライザーガス:10 psi N2

乾燥ガス:10 L/min N2,300℃

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その他の最適化した MRM パラメータを Table 5-1 に示す。

Table 5-1. Optimized MRM parameters for the analytes.

Category Compound Transition (m/z)

Fragmentor voltage

(V)

Collision energy

(eV) Naphthoyl-

indole JWH-015 328.2 → 127.0 a) 130 49 328.2 → 155.0 25

JWH-022 340.2 → 127.0 a) 50 49 340.2 → 155.0 21 JWH-200 385.2 → 155.0 a) 50 17 385.2 → 114.1 25 AM-1220 383.2 → 98.1 a) 50 33 383.2 → 112.1 17

Phenylacetyl- indole

JWH-250 336.2 → 121.1 a) 50 17 336.2 → 91.1 50

JWH-251 320.2 → 105.1 a) 50 25 320.2 → 214.1 21

Benzoyl- indole

AM-2233 459.1 → 98.1 a) 50 33 459.1 → 112.1 21

RCS-4 322.2 → 135.0 a) 50 21 322.2 → 77.0 50

Others UR-144 312.2 → 125.1 a) 50 21 312.2 → 214.1 21 XLR-11 330.2 → 125.1 a) 50 21 330.2 → 232.1 21 APICA 365.3 → 135.1 a) 210 29 365.3 → 214.1 21 APINACA 366.3 → 135.1 a) 50 21 366.3 → 107.1 49

IS thiourea 77.0 → 60.0 a) 50 21 77.0 → 43.1 41

a) The quantification ion transition.

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第3項 試験溶液の調製方法

試料(乾燥植物片)はフィンガーマッシャー(ハイテック製)で粉砕し,均一化した。

均一化した試料 20 mg を秤量し,メタノール 1.0 mL を加えて室温で 10 min 超音波抽出

した後,10000 rpmで5 min遠心分離した。得られた上澄液を適宜メタノールで希釈して,

0.45 μm のメンブランフィルターでろ過し,最後に,ろ液 1 mL に対して 4 mg/mL 内標準

溶液 5 μL を加えたものを試験溶液とした。

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第3節 結果および考察 第1項 泳動液の検討

一般的に MEKC で利用される界面活性剤は硫酸ドデシルナトリウム(SDS)である。

しかし,不揮発性物質の SDS は,MS において分析対象物質のイオン化を抑制するほか,

検出器を汚染するため適さない。すなわち,SDS 水溶液は界面活性剤としては比較的高い

表面張力を持ち(臨界ミセル濃度(CMC)以上では約 34 mN/m),高沸点(> 320 ℃)で

あるうえ,ナトリウム塩である。一方,MS に適合するパーフルオロオクタン酸(PFOA)

79)は,炭素-フッ素鎖を持つため,より低い表面張力(CMC 以上の水溶液では約 19 mN/m)

を与え,低沸点(約 190 ℃)である。PFOA の CMC は,その水溶液の表面張力の測定か

ら 12 mM と求められている 80,81)。一般的な LC/MS や CZE でも用いられる酢酸(沸点約

120 ℃)と比較しても,PFOA 濃度が 100 mM まで両者の結果に顕著な差がなかったと

の報告がある 80)。そこで本研究では,PFOA のアンモニウム塩である APFOA を界面活性

剤として用いた。

3 種の APFOA 濃度(25 mM,50 mM および 75 mM)について検討した。この APFOA

は,アンモニウムイオンの pKaである pH 9.25 付近で緩衝作用を持つことから 80,81),pH

はすべて 9.0 とした。いずれの濃度においても,12 種の完全分離は達成できなかったが,

25 mM では測定時の電流値が不安定であることや,75 mM では泳動時間が長くなること

から,50 mM に設定した。

次に,泳動液中の有機溶媒濃度について評価するため,1,5,10,20 および 30 %(v/v)

のアセトニトリルで検討した。アセトニトリル濃度 20 %までは,濃度の上昇に伴いピーク

の分離は向上した。しかし,濃度の上昇とともに泳動時間も長くなることから,アセトニ

トリル濃度は 20 %とした。

Fig. 5-2 に MEKC/MS による 12 種の混合標準溶液のエレクトロフェログラムを示す。

pH や有機溶媒濃度等の泳動液条件を同一にした CZE と比較すると,分離の点で大きな違

いがあることがわかった。すなわち,CZE(Fig. 5-2 (B))では IS も含めて 12 種の合成カ

ンナビノイドがほとんど分離しなかったのに対し,MEKC(Fig. 5-2 (A))では多くのピー

クが分離した。これらの結果より,合成カンナビノイドの分離・同定に本法が有効である

ことが明らかとなった。

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Fig. 5-2. CE-MS/MS analysis of a mixture of 12 standard solution (10 μg/mL each)

using (A) a MEKC buffer and (B) a CZE buffer. IS concentration: 200 μg/mL

thiourea. BGE: (A) 50 mM APFOA / 20 % acetonitrile, pH 9.0; (B) 50 mM ammonium

formate / 20 % acetonitrile, pH 9.0. The numbers in figure (A) indicate the maximum

peak abundances in the electropherogram using quantitative MRM transition (Table

5-1). Abbreviations: TIC, total ion chromatogram; TIE, total ion electropherogram; IS,

internal standard.

(A)

(B)

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第2項 分析性能

Table 5-2 に 12 物質のバリデーションパラメータを示す。各物質の検量線は,0.1−25

μg/mL の範囲で良好な直線性が見られた(r > 0.99)。1 μg/mL の標準溶液を連続 3 回測定

した時の IS 補正後の泳動時間とピーク面積の相対標準偏差(RSD)は,それぞれ 2.8−5.2 %,

4.3−14.1 %であった。LOD(S/N = 3)および LOQ(S/N = 10)は,ブランク試料のノイ

ズ高さから評価した。LOD は,6.5−76.5 μg/g(試験溶液中に換算すると,0.13−1.5 μg/mL)

であり,違法ドラッグから検出されるレベルの濃度(%オーダー)は十分に検出できるこ

とが示された。

また,添加回収試験はすべての標準品を 0.25 mg/g になるように添加して実施した。回

収率の平均は,89.5−101.7 %であった。

Table 5-2. Validation parameters of the proposed method

a) y and x are the peak areas relative to IS and the concentration of the analytes,

respectively. b) Linear range: 0.1− 25 μg/mL c) The mean value ± S.D, n = 3.

Compound Regression equation a) Correlation

coefficient b)

LOD

(μg/g)

LOQ

(μg/g)

Recovery

(%) c)

JWH-015 y= 0.257x+0.077 0.999 21.9 72.9 94.1 ± 5.7

JWH-022 y=0.342x+0.243 0.997 19.5 64.9 100.1 ± 11.3

JWH-200 y=0.673x-0.141 0.997 6.5 21.7 101.7 ± 10.4

AM-1220 y=0.312x+0.161 0.997 25.7 85.6 89.8 ± 8.1

JWH-250 y=0.308x+0.126 0.999 11.9 39.8 94.8 ± 9.1

JWH-251 y=0.322x+0.196 0.999 23.7 78.9 92.3 ± 5.7

AM-2233 y=0.293x+0.081 0.999 24.0 79.9 99.3 ± 5.5

RCS-4 y=0.843x-0.064 1.000 11.7 39.1 91.4 ± 5.5

UR-144 y=0.288x+0.032 0.998 30.2 100.8 95.7 ± 13.3

XLR-11 y=0.260x+0.063 1.000 76.5 255.1 91.7 ± 7.8

APICA y=0.369x+0.270 0.997 13.5 45.0 93.9 ± 3.5

APINACA y=1.053x+0.154 0.999 21.6 71.8 89.5 ± 10.7

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第3項 実試料の分析

本法を用いて植物系違法ドラッグ 2 製品を分析した。事前に LC/MS 法により測定した

結果,1 製品から XLR-11,別の 1 製品から XLR-11 および UR-144 が検出されたが 82),

本法との定量値との間に顕著な違いは見られなかった(Table 5-3)。本法により得られた

エレクトロフェログラムを Fig. 5-3 に示す。いずれの薬物においても定量を妨害するピー

クは認められなかった。

Table 5-3. Determination of synthetic cannabinoids in herbal incense blends by

MEKC–MS and LC–MS

a) The mean value ± SD, n = 3.

Fig. 5-3. CE–MS/MS electropherograms of real samples (sample B in Table 5-3: (A)

XLR-11; (B) UR-144). Final sample concentration: 0.5 mg sample/mL. The upper

electropherograms, quantification ion; lower electropherograms, confirmation ion.

Sample name

Compound Content (%) a)

MEKC–MS LC–MS A XLR-11 7.8 ± 0.9 8.1 ± 0.0 B XLR-11 8.6 ± 0.8 10.4 ± 1.6 UR-144 0.49 ± 0.08 0.53 ± 0.03

330.2 → 125.1

330.2 → 232.1

312.2 → 125.1

312.2 → 214.1

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第4節 まとめ 植物系違法ドラッグ中の 12 種の合成カンナビノイドの MEKC/MS 一斉分析法を開発し

た。通常,合成カンナビノイドのような中性物質においては,CE による分析が検討され

ることは稀であるが,MEKC モードによる測定条件の最適化を行い,中性物質の分離を実

現した。規制対象物質の増加に伴い,1 種類の測定機器や分離モードのみでは分離が困難

な事例が増え,異なる分離モードでの確認が求められると予想されるが,本法は有力な選

択肢の 1 つとなりうると考えられる。

1)一般的に用いられる CZE では分離が不可能な中性物質である合成カンナビノイド

でも,APFOA を用いた MEKC では,明瞭なピーク分離が達成できた。そのため,

MRM による識別に加えて,泳動時間での識別が可能であった。

2)必要試料量が少なく装置の安定化時間が短いため(10 分程度),迅速分析が可能で

あった。

3)LC/MS 等の他の分析法と併用することにより,成分同定の確実性が高まると考えら

れる。

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第6章 総括および結論 健康食品は,メディア等においても度々登場し,老若男女問わず消費者の関心が高い。

形態についても錠剤やカプセルといった医薬品のようなものから,通常の食品のようなも

のまで様々であり,実態が正確に理解されにくい。つまり,製品が錠剤やカプセル状であ

れば,消費者は医薬品的な効能・効果を期待しやすい一方,「健康食品は医薬品とは異なり,

効果が弱く副作用はない」という全く正反対のイメージから安易に摂取し健康被害を生じ

るケースもある。また,違法ドラッグについても,麻薬や覚せい剤ではないことから,誤

った認識・情報により若者を中心に乱用が広がっており,社会問題となっている。そのた

め,行政機関は健康食品や違法ドラッグの正確な情報を消費者に提供する必要があり,な

かでも成分やその含有量の実態調査を通して監視・啓発を行うことが重要となる。本研究

では,これらの実態調査に応用可能なキャピラリー電気泳動(CE)を用いた健康食品中の

成分の簡易迅速分析法を開発した。

第1章では,本研究で用いた CE による分離・分析の概要を述べた。

第2章では,市販健康食品中のグルコサミン(GlcN)の定量法として,o-フタルアルデ

ヒド(OPA)と 3-メルカプトプロピオン酸(MPA)を含む泳動液での In-Capillary 誘導

体化による CE 分析法について述べた。GlcN をキャピラリー内で泳動中に誘導体化し,

簡易迅速かつ高感度な分析を実現した。泳動液中の誘導体化試薬や緩衝液の濃度を最適化

し,開発した分析法を市販健康食品の定量へと応用した。

第3章では,キャピラリー電気泳動質量分析法(CE/MS)による市販 RJ 製品中の遊離

アミノ酸の定量法について述べた。他のガスクロマトグラフィー(GC)や液体クロマトグ

ラフィー(LC)で必要な誘導体化や濃縮操作が省略でき,簡便な分析が可能になった。市

販ローヤルゼリー(RJ)製品の定量においても,妨害ピークはなく,製品間の識別に有効

であった。また,はちみつとの遊離アミノ酸の組成の違いについても考察した。

第4章では,CE/MS を用いた痩身用健康食品中の医薬品成分の一斉分析法について述

べた。添加が予想される利尿剤や下剤,向精神薬等の様々な作用機序を持つ合計 20 種の

医薬品成分について分析した。泳動液やシース液等の条件を最適化し,健康被害の訴えの

あった製品や市販健康食品および一般用医薬品に適用した。

第5章では,ミセル動電クロマトグラフィー質量分析法(MEKC/MS)による植物系違

法ドラッグ中の合成カンナビノイドの一斉分析法について述べた。パーフルオロオクタン

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酸アンモニウム(APFOA)を界面活性剤として用い,中性物質の分離に有用な MEKC モ

ードにより,12 種の合成カンナビノイドについて分析した。泳動液の条件を最適化し,規

制対象物質の含まれる違法ドラッグに応用した。

CE による定量法は,GC や LC 等のクロマトグラフィーと比較して,広く普及しておら

ず,一般的な分析法とは言えない。しかし,必要試薬量が少なく,分析時の廃液が少ない

等,環境への負荷が小さいクリーンな分析法で,クロマトグラフィーとは異なる選択性を

持つため,今後さらに注目されると考えられる。本研究で開発した分析法は,実用性の高

い分析法として日常分析においても活用できると結論づけた。

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謝辞

本論文は兵庫県立健康生活科学研究所における研究成果をまとめたものであり,研究の

遂行にあたり御指導と御鞭撻を賜りました前所長 山村博平博士ならびに所長 前田 盛

博士に謹んで感謝の意を表します。また,共同研究者として有益な討議と御助言を頂いた

前健康科学部長 三橋隆夫博士に深謝致します。さらに,御支援ならびに御協力を頂きまし

た当研究所の皆様に謝意を表します。

本論文をまとめるにあたり,御懇切なる御指導ならびに御高閲を賜りました徳島大学大

学院ヘルスバイオサイエンス研究部薬品分析学分野 田中秀治教授に謹んで感謝の意を表

します。

本研究の一部は大同生命厚生事業団からの補助金(地域保健福祉研究助成)を得て行わ

れたものであり,同事業団の御支援に対し厚く御礼申し上げます。

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付記

本研究は,次の論文をまとめたものである。

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determination of glucosamine in nutritional supplements using in-capillary

derivatisation with o-phthalaldehyde. Food Chem., 130, 1137-1141 (2012).

2) Akamatsu,S., Mitsuhashi, T. Development of a simple analytical method using

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royal jelly. J. Food Compos. Anal., 30, 47-51 (2013).

3) Akamatsu,S., Mitsuhashi, T. Simultaneous determination of pharmaceutical

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4) Akamatsu,S., Mitsuhashi, T. MEKC–MS/MS method using a volatile surfactant for

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