分子病理研究会吉野シンポジウム(2013) 報告書 

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世代を超えて受けがれる分子病理学研究 世代を超えて受けがれる分子病理学研究 世代を超えて受けがれる分子病理学研究 世代を超えて受けがれる分子病理学研究“魂” “魂” “魂” “魂” The P The P The P The Passion assion assion assion for Molecular Pathology Succeeded to the Next Generation for Molecular Pathology Succeeded to the Next Generation for Molecular Pathology Succeeded to the Next Generation for Molecular Pathology Succeeded to the Next Generation 第 32 32 32 32 回分子病理研究会に参加して 回分子病理研究会に参加して 回分子病理研究会に参加して 回分子病理研究会に参加して 吉田剛(博士課程 3 年) 慶應義塾大学医学部先端医科学研究所遺伝子制御研究部 E-mail: mail: mail: mail: [email protected] [email protected] [email protected] [email protected] .jp .jp .jp 会期平成 会期平成 会期平成 会期平成 25 25 25 25 年 7 月 20 20 20 20 日(土)21 21 21 21 日(日) 会場奈良県吉野郡吉野町吉野山 会場奈良県吉野郡吉野町吉野山 会場奈良県吉野郡吉野町吉野山 会場奈良県吉野郡吉野町吉野山 竹林院群芳園 竹林院群芳園 竹林院群芳園 竹林院群芳園 会奈良県立医科大学 会奈良県立医科大学 会奈良県立医科大学 会奈良県立医科大学 分子病理学教室 分子病理学教室 分子病理学教室 分子病理学教室 國安弘基教授 國安弘基教授 國安弘基教授 國安弘基教授

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Page 1: 分子病理研究会吉野シンポジウム(2013) 報告書 

世代を超えて受け継がれる分子病理学研究世代を超えて受け継がれる分子病理学研究世代を超えて受け継がれる分子病理学研究世代を超えて受け継がれる分子病理学研究“魂”“魂”“魂”“魂”

The PThe PThe PThe Passionassionassionassion for Molecular Pathology Succeeded to the Next Generationfor Molecular Pathology Succeeded to the Next Generationfor Molecular Pathology Succeeded to the Next Generationfor Molecular Pathology Succeeded to the Next Generation

第第第第 32323232 回分子病理研究会に参加して回分子病理研究会に参加して回分子病理研究会に参加して回分子病理研究会に参加して

吉田剛(博士課程 3 年)

慶應義塾大学医学部先端医科学研究所遺伝子制御研究部門

EEEE----mail: mail: mail: mail: [email protected]@[email protected]@yahoo.coooo.jp.jp.jp.jp

会期/平成会期/平成会期/平成会期/平成 25252525 年年年年 7777 月月月月 20202020 日日日日((((土土土土))))~~~~21212121 日日日日((((日日日日))))

会場/奈良県吉野郡吉野町吉野山会場/奈良県吉野郡吉野町吉野山会場/奈良県吉野郡吉野町吉野山会場/奈良県吉野郡吉野町吉野山 竹林院群芳園竹林院群芳園竹林院群芳園竹林院群芳園

会長/奈良県立医科大学会長/奈良県立医科大学会長/奈良県立医科大学会長/奈良県立医科大学 分子病理学教室分子病理学教室分子病理学教室分子病理学教室 國安弘基教授國安弘基教授國安弘基教授國安弘基教授

Page 2: 分子病理研究会吉野シンポジウム(2013) 報告書 

【はじめに】

分子病理学研究会は 1988 年に発足され今年で 32 回目を迎える歴史ある研究会であ

る。今年は奈良県立医科大学部分子病理学講座の國安弘基教授が会長となって奈良県の

世界遺産吉野山にて開催された。毎年、生命科学の研究に携わる大学院生をはじめとす

る若手研究者 20 名ほどが参加している。それぞれの研究内容をポスタープレゼンテー

ションしつつ自由な雰囲気でディスカッションをしながら、極めて幅広い研究分野に対

する論理的な思考力を磨くことで、ブレインストーミングをすることができる絶好の機

会といえる。

【世界遺産と研究会】

「吉野山こぞの枝折の道かへて まだ見ぬかたの花を尋ねむ」(石碑:写真 1 左)とは

平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて活躍した歌人である西行が吉野山で詠んだも

のである。吉野山には観光名所として有名な西行庵があるが、西行は常に新しい道を歩

いては異なる風景を楽しんでいたらしい。開会式で國安教授が仰ったように、常に新し

い perspective を見出そうとする西行の精神は、研究者の必要条件としても該当するだ

ろう。

今回の研究会は、奈良県の吉野の古風な旅館「竹林院群芳園」にて開催された。美し

い庭園(写真 1 右)だけでなく、旅館内には吉野山観桜時に使われたとされる純金の茶弁

当や鹿のおきもの(剥製!?: 写真 2 右)などさまざまな歴史記念物が飾られていた。

実際、吉野山を含む「紀伊山地の霊場と参詣道」は、2004 年に、ユネスコの世界遺産

に認定されたことで有名である。吉野山は山全体が世界遺産として登録されており、吉

野水分神社・金峯神社・金峯山寺・吉水神社などの世界遺産の建造物を徒歩で回れるこ

とも魅力的とされている。今回の研究会では 1 泊 2 日の缶詰(笑)で生命医科学の議論を

交わしたため、残念ながらゆっくりと世界遺産を楽しむ時間はなかったが、人工 RNA

酵素「フレキシザイム」を用いた非リボソーム系によるペプチド創薬の大家であられる

東京大学理学系研究科生物有機化学教室の菅裕明教授を囲んで若手研究者 5 人で夜中

の 2 時まで語り合った。また、早朝に旅館の奥に広がる庭園を散歩した。「この季節に

まさか桜の木か?」と思い写真をとったが、旅館の方に聞いたところサルスベリだった

らしい。(写真 2 左)

本研究会は若手研究者の一般演題の発表にとどまらない点が特記に値する。7 名もの

著名な先生がたった 2 日間の間に、生化学的な創薬システムの内容から、細胞死や動脈

硬化の病態解明、そして基礎研究から臨床現場へと応用されつつあるトランスレーショ

ナルリサーチについて幅広い講演内容であった。

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【一般演題 =若手研究者からのメッセージ=】

今回の研究会では、ポスター一般演題のプレゼン・質疑応答時間が実質的に無制限に

なったため、ほかの若手研究者と自由に議論することが十分にできた。いずれの研究内

容も非常にレベルが高く、多くの参加者が熱心にポスター会場で盛り上がっていた。参

加者全員に投票用紙が配布され、翌日の閉会式にて最優秀演題として広島大学大学院分

子病理学教室の後藤景介先生の『CAST 法による前立腺癌予後不良タンパクの同定と機

能解析に関する研究』が、優秀演題として奈良県立医科大学分子病理学教室の『癌細胞

と筋組織の HMGB1(high mobility group box 1)を介した代謝のクロストーク』、筆者の

『3D 培養による皮脂腺の炎症応答性の検討』の計 3 演題が表彰された。(写真 3)

CAST(Escherichia coli ampicillin secretion trap)法のような網羅的遺伝子探索を用い

た研究から TGFβシグナルによる上皮間葉転換(epithelial-mesenchymal transition; EMT)

のメカニズムに至るまで広範な内容であった。広島大学大学院分子病理学講座の安井弥

教授の研究室で精力的に行われてきた CAST 法とは、診断・治療標的分子として最適な

タンパク質を網羅的に解析する方法である。具体的には、EcoRI と BamHI サイトを組み

込んだ cDNA を、シグナルシーケンスが欠損したβ-ラクタマーゼ遺伝子を有する pCAST

ベクターに組み込みアンピシリンで選択することによって、シグナルシーケンス、膜貫

通ドメインを持つ遺伝子を同定する遺伝子技術である

1111

。今回の発表では、前立腺癌や

スキルス胃癌の早期診断や治療標的となりうる候補分子を同定し、small-interfering

RNA(si-RNA)などの手法を用いて分子機能を解明している。本研究室の安井弥教授は日

本病理学会でも非常に御高名で、本研究会で間近にお話しすることができたことは光栄

だった。安井教授が病理医になった契機は、開業医だったお父様の姿を見て「たった 1

人の臨床医ができることには限界がある」と感じ、病理学なら基礎研究に取り組む一方

で病理診断を通じて臨床を行なうことができる(“clinicalclinicalclinicalclinical----oriented pathologyoriented pathologyoriented pathologyoriented pathology”)と考え、

病理研究医の人生を歩まれたという。

HMGB1 の受容体である TLR(Toll-like receptor)を発現している腫瘍随伴性線維芽細

胞では NFκB シグナルが活性化することで、腫瘍細胞の生存に適切な「取り巻き」を

演じることができる

2222

。また、腫瘍組織と骨格筋組織との代謝中間産物であるグルタミ

ンを介するクロストークによって、癌細胞から筋組織へ HMGB1 が分泌されてオートフ

ァジー(autophagy)が誘導されて、ますます多くのグルタミンをはじめとするアミノ酸が

流入する

3333

。このように腫瘍生物学でも、癌細胞自体ではなく、全身臓器や腫瘍間質に

着目した研究が注目されていると強く感じた。

Page 4: 分子病理研究会吉野シンポジウム(2013) 報告書 

今回筆者は、癌生物学とは全く異なる研究内容(3D 培養による皮脂腺の炎症応答性

の検討;論文投稿中))を発表した。選択的スプライシング機構によって産生される

CD44v8-10 アイソフォームは、xCT(シスチントランスポーター)の上皮系腫瘍の細胞膜

における安定性を高めることで、GSH(グルタチオン)の産生を促進することで酸化ス

トレスに対する抵抗性を獲得することを以前われわれの研究室で明らかにした

4444

が、正

常細胞における CD4v8-10 の機能に関しては未だ不明な点が多い。組織免疫染色での

自験例では、CD44v8-10 は他の上皮細胞マーカーである EpCAM、サイトケラチンなど

に対して陽性な上皮細胞よりもさらに「上皮細胞らしさ」が強い傾向の細胞で発現が高

い印象を持っていた(図 1-A)。

皮膚の表皮付属器に分類される皮脂腺(図 1-B)は、未分化な基底細胞 (basal cell)と脂

質を蓄積する分化した皮脂腺細胞 (sebocyte)という、ヘテロ不均一性の細胞集団によっ

て構成されている。皮脂腺は皮膚組織幹細胞のニッチ(niche)であるバルジ領域に隣接し

て存在するが、未分化な皮脂腺前駆細胞は毛包幹細胞や色素幹細胞とは異なる幹細胞集

団であることが知られている

5555

。骨髄での炎症性微小環境によって造血幹細胞における

β-カテニン/WntシグナルがPGE2を介して活性化されること

6666

は既に報告されているが、

他の組織型である扁平上皮や腺管においても炎症性シグナル伝達が細胞増殖に同様の

影響を及ぼすのかについては今後さらなる検証が必要である。

最近では生命倫理の観点から、動物実験と同じ結果が得られる代替的な in vitro での

実験が推奨されている。その一例として、3D 培養が挙げられる。ヨーロッパで特にそ

の傾向が強く、3R3R3R3R の原則の原則の原則の原則(「Replacement(代替)」「Reduction(削減)」「Refinement(改

善)」、特にこの場合は Replacement)

7777

はもはや常識化しつつある。乳腺上皮正常細胞で

あるMCF10Aの3D培養を用いた多数の研究論文で有名なハーバード大学のJohn Brugge

博士を皮切りにここ 10 数年で確実に進展してきた。例えば、HER2 過剰発現 MCF10A

は足場非依存性(アノイキス)を獲得することで、3D 培養で形成された管腔内側に向かっ

て outgrowth することが報告されている

8888

。そこで今回、ヒト正常皮脂腺から樹立され

た細胞株である SZ95 細胞を 3D 培養することによって、2D 培養では決して認められ得

なかった、基底膜の誘導や腺管内部でのアポトーシス等を観察することに成功した(図

1-C)。加えて、CD44 は選択的スプライシングによって多様なアイソフォームが誘導さ

れるが、PGE2の影響によって CD44v の発現増加やβ-カテニン/Wnt シグナルの活性化

が認められた。

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【招待講演 =一流研究者からのメッセージ=】

ここでは招待講演のうち特に印象深かったものを厳選して紹介させて頂きたい。たっ

た 2 日間にわたりなんと全部で 7 名もの先生方が御講演された。「分子病理」という枠

を敢えて超越して、純粋な生化学から疾患メカニズムまでテーマやアプローチが多彩で

あり、参加者のバックグラウンドの多様性(理工学部、農学部、獣学部、医学部など)の

ニーズと合っていたと思う。

例えば、内科研修の際に心筋梗塞、動脈硬化を含むメタボリックシンドローム関連疾

患がドミノ倒しのように高血糖、高脂血症、ストレスなどが原因で多くの心血管系イベ

ントが立て続けに起こした患者さんを病棟で経験した経緯から、僕の場合は、どのよう

なメカニズムで腸管粘膜免疫システムが関与しているのか自然と興味がわいてきてし

まうのである。今回、山下智也先生(神戸大学大学院医学研究科内科学講座循環器内科

学分野)は心筋梗塞に対して、内科的治療としては侵襲性の高いステント留置やバルー

ンカテーテル挿入に代わって腸管内の常在細菌叢(腸内フローラ)を変化させ経口免疫

寛容を修飾することで、CD4+/CD25+/Foxp3+の制御性 T リンパ球の増加と成熟型樹状

細胞の減少が、結果的に、可逆的に動脈硬化巣を縮退させる点

9999

に着目し新しい治療戦

略を展開させていらっしゃる。Foxp3 陽性の制御性 T リンパ球が、コレステロールの豊

富な粥状プラーク巣に分布して動脈硬化抑制効果を発揮するという「免疫学と循環器内

科の架け橋」となる研究展望は今後も見逃せない。

また、実際に臨床現場に応用されつつある血中アミノ酸解析による癌早期診断に関す

る宮城洋平先生(神奈川県立がんセンター研究所)の講演も M.D.としては非常に刺激的

であった。「アミノインデックス技術(Amino-Index Cancer Screening;AICS)」とは多変

量解析によって、患者ごとに血中遊離アミノ酸の濃度変化に関して健常人と患者群との

差異が最大限化するスクリーニングである。早朝空腹時に採血することで 20 種類の基

本アミノ酸から化学的に不安定なグルタミン酸、アスパラギン酸、システインを除きシ

トルリン、オルニチンを加えた合計 19 種類の血中アミノ酸の濃度を解析する。「腫瘍の

本質は代謝のリプログラミングである」宮城先生の含蓄に富む表現には、「Warburg 則

による好気性解糖系の亢進は ATP 産生よりも、核酸・脂質合成に必要な代謝中間産物

の供給システム」という意味が含まれている。もちろん、癌種によって増減する血中ア

ミノ酸も異なり慢性炎症性疾患などでも非特異的に変化しうる変数であることを考慮

しなければいえない。また、がん告知を受けた患者さんが鬱状態になることで脳内トリ

プトファン代謝が変化しうる可能性などを考慮すると、前向きコホート研究が最大の命

題であると考えられる。(宮城先生は本誌 6 月号にて総説を執筆されているので詳細は

そちらを参照されたい

11110000

。)

Page 6: 分子病理研究会吉野シンポジウム(2013) 報告書 

2 日目には、『がん医療入門』『がん哲学外来』など多数の著書や市民講座などを通し

て、患者さんのサイドからも高名でいらっしゃる順天堂大学大学院分子病理病態学の樋

野興夫教授が、『山極勝三郎生誕 150 周年&吉田富三生誕 110 周年記念』の特別講演を

された。実は、樋野教授には 2012 年に著者の母校である新渡戸稲造学園(旧:東京文

化学園)で「がん哲学外来カフェ」というテーマで御講演を頂いている。分子病理病態

学研究室では mTOR シグナル活性に関与する Tsc2(Tuberous sclerosis complex 2)遺伝子

を皮切りに、腎癌発症に関わる新規遺伝子を同定するに留まらず、結節性硬化症(プリ

ングル病)や Birt-Hogg-Dube(BHD)症候群といった家族性腫瘍の治療戦略の開発にも取り

組まれている。(詳細は本誌 2013 年 1 月号第 6 回『がんモデルマウス・ラットライブ

ラリ;腎癌』を参照のこと)

演題名は「過渡期の指導原理と新時代の形成力を求めて~化学・ウイルス発がんから

遺伝性がん、そして、環境発がんへ~」。21 世紀の癌哲学者が、癌研究の礎を築いた 20

世紀の癌哲学者について語るというまさにスペシャルレクチャーであった。山極勝三郎

がコールタールをウサギの耳に塗布することで扁平上皮癌の化学発癌に世界で初めて

成功した。また、吉田富三は、世界ではじめて発癌性化学物質アゾ化合物の経口投与に

よってラット肝臓内に肉腫を作ることに成功した。この肝臓癌は「吉田肉腫」と命名さ

れ、佐々木研究所を中心に研究が続行された。現在もその細胞起源(cell of origin)に関し

ては議論が交わされている。第 2 次世界大戦で生活が困難を極める状態でも、長崎医科

大学から東北大学へ転勤する際に吉田教授は必ず腹水の貯留した実験中のラットを持

ち歩き、電車の中で自分の食べる分の米粒を与えていたという伝説はあまりにも有名で

ある

11111111

。まさに研究者魂といえよう。

日本には癌細胞研究に生涯を捧げた研究者が数多く存在するが、化学発癌による腫

瘍病理の父である山極勝三郎と吉田富三の 2 人をなくしてその歴史を語ることは不可

能である。「「「「癌は癌は癌は癌は 1111 つの細胞からでも再発するつの細胞からでも再発するつの細胞からでも再発するつの細胞からでも再発する(現在でいうところの「癌幹細胞セオリ(現在でいうところの「癌幹細胞セオリ(現在でいうところの「癌幹細胞セオリ(現在でいうところの「癌幹細胞セオリ

ー」)ー」)ー」)ー」)」「」「」「」「癌細胞には個性がある癌細胞には個性がある癌細胞には個性がある癌細胞には個性がある(現在でいうところの「ヘテロ不均一性セオリー」(現在でいうところの「ヘテロ不均一性セオリー」(現在でいうところの「ヘテロ不均一性セオリー」(現在でいうところの「ヘテロ不均一性セオリー」)」を)」を)」を)」を

提唱した点は、癌研究の最先端の見据える上で「温故知新提唱した点は、癌研究の最先端の見据える上で「温故知新提唱した点は、癌研究の最先端の見据える上で「温故知新提唱した点は、癌研究の最先端の見据える上で「温故知新の精神」の精神」の精神」の精神」が如何に重要であるが如何に重要であるが如何に重要であるが如何に重要である

かを想起させる。かを想起させる。かを想起させる。かを想起させる。つい最近も、鉄含有率の高いアスベスト線維の腹腔内投与による化学

発癌モデルが報告され、過剰な鉄蓄積に伴う酸化ストレスが中皮腫の原因であることが

明らかにされた

11112222

(詳細は本誌 2013 年 2 月号第 7 回『がんモデルマウス・ラットライ

ブラリ;中皮腫』を参照のこと)。

Page 7: 分子病理研究会吉野シンポジウム(2013) 報告書 

【さいごに】

最近の傾向として、学会や研究会の数が多すぎるという理由で、合同学術集会など実

質的な数を減少させていこうという動きがある感じが否めない。だが、僭越ながら言わ

せていただければ、この分子病理研究会に限ってはその限りではないと思う。若手研究

者が同輩や一流を走ってきた研究者と腹を割って議論できる貴重な場であり、今後も継

続していくことこそが、僕たち次世代研究者の責務といえるのかもしれない。

【参考文献】

1: Cancer Res. 2005 Sep 15;65(18):8209-17.

2: Int J Biol Sci. 2010 Nov 3;6(7):675-81.

3: Oncogene. 2011 Nov 24;30(47):4687-96.

4: Cancer Cell. 2011 Mar 8;19(3):387-400.

5: Proc Natl Acad Sci U S A. 2003 Sep 30;100 Suppl 1:11830-5.

6: Cell Stem Cell. 2009 Apr 3;4(4):280-2.

7: ALTEX. 2003;20(Suppl 1):63-76.

8: Nature. 482(7385):410-3,2012

9: J Clin Invest. 2013 Mar 1;123(3):1323-34.

10: 細胞工学 2013 年 6 月号(学研秀潤社)【My Technology】血中遊離アミノ酸プロフ

ァイルの変化を利用したがん診断技術; 宮城洋平,吉田寛郎,今泉 明、

11: 『日本の科学者 吉田富三—生誕 100 年記念』(メディカルトリビューン社) 北川

知行,樋野 興夫

12: J Pathol. 2012 Nov;228(3):366-77.

【謝辞】

最後になりましたが、第 32 回分子病理研究会への参加にあたり御指導いただきました

先端研遺伝子制御部門 佐谷秀行教授ならびに教室秘書の新井邦子さん、そして今回の

素晴らしい研究会開催にご尽力された会長の奈良県立医科大学部分子病理学講座の國

安弘基教授ならびに関係者の皆様に心より感謝申し上げます。

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