2007050084 aric86 .{..(3)マイクロハビタット用木炭槽(写真-4参照)...

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1.はじめに 自然循環方式水処理システムは、木炭を始めとする天 然素材を材料とするろ材を基本として配置し、自然に水 中に生息する微生物の働きにより汚濁有機物を分解する 生物処理の接触酸化浄化技術である。薬剤等は一切使用 せず浄化を行うため、環境に優しく安全である。自然循 環方式水処理システムは、 (図-1)に示すように3つ のシステムからなる。 2.河川浄化の場合 (1)ろ材配置 一般的に(図-2)に示すように、プラスチック接触 ろ材とセラミック複合木炭の配置とする。 短時間に多量に浄化処理する場合で、BOD除去を主 とし、滞留時間は3.5時間程度である。なお、セラミッ ク複合木炭は、杉材などの間伐材を木炭化し、粘土(バ インダ-)と混合して再焼成したものであり、BOD除去に付加してアンモニア性窒素が除去できる付加価値 を有している。 (2)浄化能力 処理量        1050,000m 3 /(実績最大処理量 大柏川浄化施設36,000m 3 /日) SS 90%以上除去 アンモニア性窒素   95%以上除去 滞留時間       34時間 BOD 3mg/ι以下 3.BOD、窒素、リンを除去する場合 (1)ろ材配置 BODと併せて、全てではないが、窒素(TN40程度)、リン(TP50%程度)が除去できる。 自然循環方式水処理システム 鈴木 輝彦 鉄建建設株式会社 会員コーナー 【環境対策】 河川浄化の場合 (BOD 、アンモニア性窒素 NH 4 -N を除 去する場合) ・BOD ≦3mg/ι以下まで浄化 ・アンモニア性窒素 NH 4 -N を 90 ~ 100% 除去 BOD、窒素、リンを除去する場合 (水路浄化、池の浄化、3次処理等) ・BOD ≦5mg /ι以下まで浄化 ・全窒素 T - N 40% 程度、全リン T - P 50% 程度除去 畜産排水処理の場合 ・凝集沈澱処理技術と BOD 、窒素、リ ン を 除去 する 場合 の 浄化技術 を 組 み 合わせて適用 自然循環方式水処理システム (図-1)自然循環方式水処理システムの適用分類 流入 放流 セラミック複合木炭 接触ろ材 散気管 セラミック複合木炭 接触ろ材 (マリモボ-ル) (図-2)河川浄化の場合のろ材配置 セラミック複合木炭 木質ろ材 接触(マリモボ-ル) 散気管 減菌器 流入 放流 3.7m 長さ 16.2 ホスカット ニトロライト リン 去装置 ホスカット ニトロライト 幅 2.5m ニトロライト (図-3)窒素、リン除去のろ材配置例 41

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1.はじめに

自然循環方式水処理システムは、木炭を始めとする天然素材を材料とするろ材を基本として配置し、自然に水中に生息する微生物の働きにより汚濁有機物を分解する生物処理の接触酸化浄化技術である。薬剤等は一切使用せず浄化を行うため、環境に優しく安全である。自然循環方式水処理システムは、(図-1)に示すように3つのシステムからなる。

2.河川浄化の場合

(1)ろ材配置

一般的に(図-2)に示すように、プラスチック接触ろ材とセラミック複合木炭の配置とする。短時間に多量に浄化処理する場合で、BOD除去を主

とし、滞留時間は3.5時間程度である。なお、セラミック複合木炭は、杉材などの間伐材を木炭化し、粘土(バインダ-)と混合して再焼成したものであり、BODの除去に付加してアンモニア性窒素が除去できる付加価値を有している。

(2)浄化能力

処理量        10~50,000m3/日(実績最大処理量 大柏川浄化施設36,000m3/日)

SS 90%以上除去アンモニア性窒素   95%以上除去滞留時間       3~4時間BOD 3mg/ι以下

3.BOD、窒素、リンを除去する場合

(1)ろ材配置

BODと併せて、全てではないが、窒素(T-N:40%程度)、リン(T-P:50%程度)が除去できる。

自然循環方式水処理システム

鈴木 輝彦鉄建建設株式会社

会員コーナー【環境対策】

河川浄化 の 場合 (BOD 、 アンモニア 性窒素 NH 4- N を 除 去 する 場合 ) ・ BOD≦ 3mg/ι 以下 まで 浄化 ・ アンモニア 性窒素 NH 4-N を 90 ~ 100% 除去

BOD、 窒素 、 リン を 除去 する 場合 (水路浄化 、 池 の 浄化 、 3 次処理等 ) ・ BOD≦ 5mg/ι 以下 まで 浄化 ・ 全窒素 T-N 40% 程度 、 全 リン T- P 50% 程度除去

畜産排水処理 の 場合 ・ 凝集沈澱処理技術 と BOD、 窒素 、 リ ン を 除去 する 場合 の 浄化技術 を 組 み 合 わせて 適用

自然循環方式水処理 システム

(図-1)自然循環方式水処理システムの適用分類

流入 放流

セラミック 複合木炭

接触 ろ 材

散気管

セラミック 複合木炭

接触 ろ 材 ( マリモボ - ル )

(図-2)河川浄化の場合のろ材配置

セラミック 複合木炭 木質 ろ 材 接触 ろ材

( マリモボ - ル )

貯留 槽

木質

散気管

リン

除去資材

返送

ポンプ

減 菌 槽

減菌器

流入 放流

3.7m

長 さ 16.2 m

接触

接触

接触

セラミック

複合木炭

ホスカット ニトロライト

リン 除去装置 ホスカット ニトロライト

幅 2.5m

セラミック

複合木炭

ニトロライト

(図-3)窒素、リン除去のろ材配置例

41

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42―ARIC情報№86ー2007

汚濁原水は、(図-3)のろ材配置例では、

貯留槽 →接触ろ材槽 →接触ろ材槽 →木質ろ材槽→リン除去資材槽 →セラミック複合木炭槽 →接触ろ材槽 →セラミック複合木炭槽 →返送ポンプ槽 →減菌槽

を通過して処理し、放流する。なお、使用するろ材とろ材配置は現地の水質特性に併せて決定する。本システムではエアレ-ションを使用するため施設内

に散気管を配管してあるが、散気管はエアレ-ションの他、メンテナンスでろ材の目詰まりを解消するとき、瞬間曝気(逆洗浄)に使用する。

(2)浄化能力

処理量    8~3,000m3/日(実績最大処理量 我孫子市中峠水路浄化施設2,400m3/

日)滞留時間   10~15時間BOD 5mg/ι以下程度まで浄化SS 90%以上除去総リンT-P 50%以上除去総窒素T-N 40%以上除去

4.畜産排水処理の場合

畜産農場の豚895頭の例で、し尿液は凝集沈澱処理等の固液分離後、浄化施設で処理する。この場合の浄化施設の概要は以下のとおりである。・畜舎洗浄排水肥育豚895頭×4.5(ι/頭・日)=4,028(ι/日)・溶け込み糞量最大糞量 1,093(kg/日)×1/3 = 364(kg/日)・日汚水量 = 最大尿量+最大糞量+畜舎洗浄水

= 2,387(kg/日)+ 364(kg/日)+ 4,028(ι/日)= 6,779(ι/日)冬場において積雪等により特に気温の低下が著しい地

域では、処理槽内の微生物活性に少なからず影響が考えられる。このため処理対象計画汚水量は1.2倍見込んで8m3/日とした。施設概要は以下のとおりである。

汚泥貯留槽:汚泥を貯留BOD、COD除去槽:BOD、COD除去沈澱槽:浮遊物質の沈降脱色・脱臭槽:脱色、脱臭硝化槽:アンモニア性窒素の硝化清水槽:大腸菌等の除去脱窒槽:硝酸、亜硝酸態窒素の除去減菌槽:大腸菌等の除去脱リン槽:リンの除去

5.自然循環方式水処理システムの各ろ材の働き

(1)接触ろ材(写真-1参照)

主にBODおよびSSの除去を行う。再生プラスチック接触ろ材(マリモボ-ル)は、流入水の髪の毛等の雑物を絡ませてろ材表面に微生物の付着を促し、微生物が有機物を取り込み分解するために配置するろ材(主にSSを除去)である。再生プラスチックABS樹脂をリサイクル利用したものでφ100mmのボ-ル状の表面には繊維長 1~1.5mmの吸水性アクリル繊維を電気植毛加工し、さらに表面の多数の小孔により、内部(中空)と通水性を持たせてある。

(2)セラミック複合木炭(写真-2参照)

木炭と粘土との複合体であり、混合により粒子間に二次的に細孔が形成される。このため木炭が本来有する微細孔に加えて微生物のマイクロハビタットとして有効な幅広い細孔分布(写真-3参照)が確保される。また、吸着能力にも優れているため水中の残留塩素、硫化水素ガス、アンモニアガスなどの除去効果が期待できる。

(図-4)養豚場排水処理施設のろ材配置例

(写真-1)接触ろ材(マリモボール)

(写真-2)セラミック複合木炭

(写真-3)木炭の微細孔性状と微生物付着状況

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(3)マイクロハビタット用木炭槽(写真-4参照)

木炭とキト酸の複合体であり、木炭の多孔性は微生物にとって良好な住みかを提供する。また、キト酸は海老や蟹の甲羅に含まれる成分で、有機物を凝集させる働きがある。COD、BODの除去およびLAS(陰イオン界面活性剤)を除去する。

(4)木質ろ材(写真-5参照)

木質ろ材(シイタケのホダ木などの腐朽材で炭素系有機物とも言う)は、嫌気状態において有機物をエネルギー源として脱窒菌がHNO3(硝酸)を分解する。

C6H12O6(糖)+4HNO3(硝酸)→2N2(窒素ガス)+6H2O(水)+6CO2(炭酸ガス)

pH(水素イオン濃度)5.5以下、水温10℃以下では脱窒反応は遅くなる。pH6以上では反応が速くなるため生成ガスの大部分はN2(窒素ガス)になる。この反応にあやからなかったHNO3(硝酸)は還元さ

れてNH3(アンモニア)となる。残りの硝酸体窒素は微生物自身の細胞膜構成のC/N比が約10倍になるように水中の窒素を積極的に取り込むので水中の窒素濃度は低下する。貯留槽~接触ろ材槽までの過程で、窒素は減少する環

境になるが、木質ろ材はC/N比が大きいため、微生物が窒素を取り込み易い状況を作り出し、脱窒素の手助けを行う。

(5)リン除去資材(写真-6参照)

リン除去資材槽では弱曝気を行う。有機態リンは曝気を行うことによりリン酸態リンまで酸化される。リン除去資材は、汚濁水中のリンの除去を行い、リン酸吸収係数は3,000mg

/100g以上である。

無機素材で強固に結合され、強アルカリ、強酸以外の通常条件で使用する。なお、最近はリン除去資材の替わりに鉄材を使用して鉄イオンとリン酸イオンを結合することにより、不溶塩として除去を行う方法を採用している。千葉県土木部大津川浄化機能調査では、実際にリン除去資材としてリン除去装置(写真-7参照)を使用した。

(6)水処理材

ニトロライト(写真-8参照)は木質ろ材および木炭の上部にろ材の浮き上がり防止を兼ねて配置するゼオライト系鉱物で強い吸着性を持つ水処理用ろ材である。陽イ オ ン 交 換 容 量150meq/100gの大きなイオン交換性を持ち、アンモニアを吸着除去するとともに、炭素系有機物の浮き上がりを抑える。ホスカット(写真-9参照)は、鉱物系無機質の水処理用接触ろ材である。木炭槽の上部に設置し、木炭の浮き上がりを押さえ、かつ処理水への空気の取り込みによってCOD、BODの除去、有機体窒素の無機化およびアンモニア性窒素の硝化を助長する。

以上に、自然循環方式水処理システムで使用する各種のろ材について述べたが、次にBODの除去性能の向上とアンモニア性窒素の除去を図った浄化技術に関する実証実験(鶴見川浄化実験)の概要と大柏川浄化施設(処理量36,000m3/日)や岡崎ゴルフ倶楽部浄化施設、茨城県高浜地区生活排水路浄化施設などいくつかの施工事例について紹介する。

6.BODとアンモニア性窒素を除去する河川浄化技術(鶴見川浄化実験)

技術開発の目的は、浄化機能を向上させるとともに、

(写真-4)マイクロハビタット用木炭

(写真-7)リン除去装置

(写真-8)ニトロライト

(写真-9)ホスカット

(写真-5)木質ろ材(炭素系有機物)

(写真-6)リン除去資材

43

■会員コーナー

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44―ARIC情報№86ー2007

水生生物に悪影響を与えると言われているアンモニア性窒素の除去である。プラスチック接触ろ材と新たに開発したセラミック複合木炭を組み合わせて、浄化機能を検証した。

(1)実験概要

実験施設(写真-10参照)は、(図-5)に示すろ材配置とした。実験では浄化機能の

比較を行うため、セラミック複合木炭とマイクロハビタット用木炭の系列の浄化機能、物性(強度、摩耗度など)、および処理コストについて調査した。

実験期間:平成13年8月~14年8月まで約1年実験場所:横浜市都筑区川向町川向ポンプ場裏

鶴見川左岸フィ-ルド実験管理:(財)河川環境管理財団実験施設:幅 1.80m×長さ6.398m

×高さ 2.19m(ろ槽部深さ 1.60m)流量:2系統合計 約87m3/日(1系統43m3/日)

滞留時間 3.6時間実験施設の浄化目標値(2系列とも)・流入水質 BOD 9.5mg/ι → 目標水質BOD 3mg/ι以下(BOD容積負荷 0.114kg-BOD/m3)・大腸菌群数 流入水質 3.9×104 MPN/100mι →

1000MPN/100mι以下・透視度 流入水質 29.1cm → 50 cm以上・アンモニア性窒素 流入水質 3.16mg/ι → 0.5mg/ι以下

(2)実験結果

実験期間を通じて、2系統、すなわちセラミック複合木炭とマイクロハビタット用木炭の浄化能力は、ほとん

ど遜色がなかった。平成13年9月から11月にかけては、原水の汚濁は

BOD 5mg/ι程度で比較的水質は良好な状態であったが、12月に入り汚濁は急激に増加し、BODは 10mg/ι以上となり、平成14年3月には最大23mg/ιとなっていた。その後、平成14年6月頃から再び前年と同様にBOD 5mg/

ι程度に減少した。また、SSは、平成14年3月~5月にかけて汚濁が増加したが、他の時期は平均してSS7.5mg/ι程度であった。アンモニア性窒素NH4-Nについては、年間を通じて十

分に除去されていたが、硝酸性窒素NO3-Nは、浄化施設を通過後、逆に増加する傾向を示した。これは、アンモニア性窒素NH4-Nの分解が十分進んだ結果生じたもので、木質ろ材における脱窒菌の働きにより分解されたことを示すものである。その他、透視度は50cmから100cm~200cmまで改善されていた。臭気度に対しては若干の改善は見られたが、色度につ

いてはほとんど変化が見られなかった。大腸菌群数は、浄化目標が1,000MPN/100mι以下であるが、実験開始当初はかなりバラツキがあったものの、平均2,500MPN/

100mι程度で目標を達成できなかった。この原因は、本システムだけでどの程度まで除去が可

能か把握するため、減菌装置を取り付けなかったことによる。

(写真-10)鶴見川実験施設

流入

放流 接触化 ろ 材

6.4m

1.6m

0.7m 2.3m ホス カ ット

1.8m

SS除去 BOD、COD除去 脱臭・脱色

マイクロ ハ ビ タット用特殊木炭 OR セ ラ ミック 複合木炭

接触酸化 ろ 材

ホス カ ット

0.5ι/sec

0.5ι/sec

1.0ι/sec セラミック複合木炭

マイクロハビタット用 特殊木炭

脱臭・脱色用 特殊木炭

脱臭・脱色用 特殊木炭

脱臭・脱色用 特殊木炭

(図-5)ろ材配置

(写真-11)木炭層の浄化状況(上部には木炭の浮き上がり防止のためホスカットを敷設エアレーション稼働中)

BOD

0

5

10

15

20

25

9月 19日

9月 29日

10月 9日

10月 19日

10月 29日

11月 8日

11月 18日

11月 28日

12月 8日

12月 18日

12月 28日

1月 7日

1月 17日

1月 27日

2月 6日

2月 16日

2月 26日

3月 8日

3月 18日

3月 28日

4月 7日

4月 17日

4月 27日

5月 7日

5月 17日

5月 27日

6月 6日

6月 16日

6月 26日

7月 6日

7月 16日

7月 26日

8月 5日

8月 15日

測定日

BOD (mg/l)

流入水 処理水 (マイクロハヒ ゙ タット )処理水 (セラミック 木炭 )目標値

(図-6)鶴見川浄化水質 BOD

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ふん便性大腸菌群数は、原水に対してバラツキはあるもののかなり除去されたが、さらに除去するためには大腸菌と同様に除菌装置を設置すれば対応できる。なお、鶴見川は都市部を流れる河川であり、生活系雑排水による下水放流が60%を占めるため、主にBODと下水に含まれるアンモニア性窒素(水生生物に悪影響を与えると言われている)による汚濁処理が課題としてあげられている。したがって、自然循環方式水処理システムは、一般的な河川浄化の他に、下水放流の多い都市河川の水質浄化や下水処理施設の老朽化などに対する補助施設として活用できると考えられる。アンモニア性窒素は、冬場が多くなる傾向があるが、

平成6年度の大柏川浄化実験では水温10℃程度でプラスチックろ材で1~2mg/ι/hrの硝化速度が確認されている。鶴見川浄化実験では4.56 mg/ι/hrの硝化速度であり、セラミック複合木炭を使用することで約3倍の硝化性能を有することが確認された。

アンモニア性窒素NH4-Nは、生物に対して毒性があり、水産用水基準では0.2 mg/ιを河川水の望ましい値とされている。また、浄水処理では0.3 mg/ι以下があげられている。鶴見川では平均3.16mg/ιで、ピークには約7mg/ιと高濃度になる場合もある。このような場合に対しても、本技術は年間を通じて水質を安定的に改善する技術としてあげられる。

7.河川浄化施設の例

(1)大柏川浄化施設

大柏川は、千葉県市川市内を流れ、下流域では真間川に合流する一級河川であり、上流部は下水道整備が遅れ、河川水質は平均BOD35mg/ιと汚濁し、河川環境を著しく害していた。このため、千葉県が水質改善の取り組みとして大柏川浄化施設を設置したものである。

取水は、本川に設置された可動堰の上流側から平常時の河川流量の全量を大柏川浄化施設に取り込み、浄化処理後、可動堰の下流側に放流する構造となっている。処理量は36,000m3/日で、6レ-ンの浄化槽で構成し、それぞれ2レーンづつに対し、3系列の浄化方式が適用されている。

NH4-N

0123456789

9月 19日

9月 29日

10月 9日

10月 19日

10月 29日

11月 8日

11月 18日

11月 28日

12月 8日

12月 18日

12月 28日

1月 7日

1月 17日

1月 27日

2月 6日

2月 16日

2月 26日

3月 8日

3月 18日

3月 28日

4月 7日

4月 17日

4月 27日

5月 7日

5月 17日

5月 27日

6月 6日

6月 16日

6月 26日

7月 6日

7月 16日

7月 26日

8月 5日

8月 15日

測定日

NH4-N(mg/l)

流入水 処理水 (マイクロハヒ ゙ タット )処理水 (セラミック 木炭 )目標値

透視度

020406080100120140160180200

9月 19日

9月 29日

10月 9日

10月 19日

10月 29日

11月 8日

11月 18日

11月 28日

12月 8日

12月 18日

12月 28日

1月 7日

1月 17日

1月 27日

2月 6日

2月 16日

2月 26日

3月 8日

3月 18日

3月 28日

4月 7日

4月 17日

4月 27日

5月 7日

5月 17日

5月 27日

6月 6日

6月 16日

6月 26日

7月 6日

7月 16日

7月 26日

8月 5日

8月 15日

測定日

透視度 (cm)

流入水 処理水 (マイクロハヒ ゙ タット )処理水 (セラミック 木炭 )目標値

(図-7)鶴見川浄化水質 NH4-N

(図-8)鶴見川浄化水質 透視度

ろ 材 滞留時間 (hr)

BOD負荷 (kg/m3/ 日 )

曝気風量 (ι /min)

硝化速度 (mg/ι hr)

セラミック 複合木炭 1.4 0.039 270 4.56

フ ゚ ラスチック ろ 材 3.97 0.105~ 0.184

240~ 480

1.11~ 1.91

(表-1)ろ材の硝化速度

系統 自然循環方式

( 系列 1 )

プラスチッ ク 形成体材 (系列 2 )

ひも 状集合 体懸架方式 ( 系列 3 )

浄化施設 の 規模 RC 長 さ 58.8m× 幅 29.8m× 深 さ 8.2m 6槽 処理水量 36,000m3/日 (1 系統 12,000m3/日 ) 処理前水質 BOD (mg/ι ) 35 mg/ι 35 mg/ι 35 mg/ι

処理後水質 BOD (mg/ι ) 10 mg/ι≦ 10 mg/ι≦ 10 mg/ι≦

除去率 (% ) 70%≧ 70%≧ 70%≧ 滞留時間 (hr) 3.45 hr 3.14hr 3.11hr

(表-2)大柏川浄化施設の仕様

(図-9)大柏川浄化施設の施設配置の概要

45

■会員コーナー

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46―ARIC情報№86ー2007

8.BODと窒素、リンを除去する場合の例

(1)岡崎ゴルフ倶楽部浄化施設

岡崎ゴルフ倶楽部では、窒素、リンを除去する浄化施設として、クラブハウスから排出する厨房雑排水、トイレ水および風呂の水を浄化して、散水等に有効利用を図っている(写真-13参照)。処理量は80m3/日である。

(2)高浜地区生活排水路浄化施設

(写真-14)は、霞ヶ浦の水質悪化に伴い「霞ヶ浦水の路クリ-ンナップ事業」により、流入河川の汚濁負荷を効率的に削減することを目的とする茨城県石岡市高浜地区生活排水路浄化施設である。処理量は、570m3/日で対象人口は約250世帯(860人)である。

(3)大津川浄化機能調査施設

手賀沼及び周辺河川は都市化の進展に伴い水質が悪化し、千葉県土木部が汚濁の改善の取組みのため大津川で浄化機能調査(H12.4

~H13.3)を実施したものである。

(写真-12)完成後の大柏川浄化施設(地中埋設)(H14施工、H18.4通水)

(写真-13)岡崎ゴルフ倶楽部浄化施設(H13.6施工)

BOD (mg/ι )

総窒素 T -P (mg/ι )

総 リン T -N (mg/ι )

浄化前 の 水質 28.3 1.02 4.96

浄化後 の 水質 5以下 0.5以下 3以下

(表-3)岡崎ゴルフ倶楽部の浄化目標水質

(写真-14)石岡市高浜地区生活排水路浄化施設(H9.7)

BOD(mg/ι) T-N(mg/ι) T- P(mg/ι) SS(mg/ι) LAS(mg/ι)

原水水質 71 13 2 21 11

浄化目標値 7 6.5 1 2.1 2.2

(表-4)石岡市高浜地区生活排水路浄化施設浄化目標水質

(写真-15)千葉県大津川浄化機能調査施設

(処理量50m3/日)

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調査結果より流入 汚 濁 水 のBOD20~110mg/

ιを5mg/ι以下、BOD、SSの除去率90~95%、総窒素T-N除去率40~50%、総リンT-P除去率50

~60%の結果を得た。冬季にはBOD

は最大で110 mg/

ιに達する場合もあったが年間を通じて安定的に浄化機能を発揮した。

9.まとめ

自然循環方式水処理システムの施工実績は既に40件を超えており、いずれの施設も優れた浄化機能を発揮している。接触酸化方式の浄化技術で木炭を使用することによりBODの除去性能が向上し、併せてアンモニア性窒素が除去できることや木質ろ材や脱リン装置を使用することにより全てではないが、窒素、リンが除去できることなどが、他の接触酸化方式の浄化技術に対して有利である。また、生物処理のため、凝集技術と比べて生態系に安全である。アンモニア性窒素の除去は、今後、要求管理項目にな

ると考えられるが、本技術はBOD除去の浄化技術で間に合うので、他の浄化技術に比べて合理的である。また、河川に面した公園等の拠点整備でジャブジャブ池などの水質改善に適用できる。今後も、メンテナンス等の簡易化、浄化コスト縮減などを課題として開発を進め、普及を図ってゆく予定である。

参考資料

1)河川浄化施設の硝化性能に関するパイロットプラント実験(土木学会環境工学研究論文集・第40巻・2003)

2)間伐材を利用するセラミック複合木炭と再生プラスチック接触ろ材による水質浄化(土木学会第40回環境工学フォ-ラム講演集;2003)

3)新水処理技術「四万十川方式」を利用した河川水質改善の概念と実施(UNEP-IETCニュ-スレタ-1997.8)

4)鶴見川水質浄化実験実験報告書(財)河川環境管理財団2003.3

流 入 水 ( 原 水 )

放 流 水 ( 処 理 水 )

(写真-16)大津川浄化機能調査の処理水

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