マイニング探検会#20...
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レファレンス・サービスの 「ネクスト」を考えるためのヒント
株式会社ネクスト 技術基盤本部 リッテル研究所 所長
東京大学情報基盤センター 特任講師 清田 陽司
2012年1月20日 マイニング探検会#20 @日比谷図書文化館
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図書館分野に関わっている理由
• 「ユーザのあいまいな情報要求をどうやって具体化していくか?」が一大研究テーマ
• 図書館におけるレファレンスサービスはこのテーマに重要な知見を与えてくれる – レファレンスサービスの価値が世の中でなかなか
理解されないのはなぜ?
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東京大学附属図書館における レファレンスサービス業務分析
國安結(東京大学大学院学際情報学府) 清田陽司(東京大学情報基盤センター) 綾部輝幸(東京大学附属図書館)
ー自動レファレンスサービスシステムの実現を目指してー
2006年10月 日本図書館情報学会研究大会 @九州女子大学
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情報探索とWebサーチエンジン
• 情報探索の中心的役割 – 昔:図書館→現在:Web
• 多くの人が、まず始めにWebサーチエンジン(Google,Yahoo!・・・etc)を使用 – 検索対象は世界中のページ – 使いやすいインタフェース
Webサーチエンジンは情報探索のポータル的役割
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• 適切な検索キーワードを選ぶことが難しい • 莫大な検索結果の中から有益な情報を見つけにくい
⇒図書館員による補助、レファレンスブック • 信頼性に欠ける情報が少なくない
⇒一次資料等で検証された信頼できる情報 • 古い情報が入手困難
⇒過去の情報の蓄積
Webサーチエンジンの問題点と図書館
図書館の利用によってWebサーチエンジンの欠点を補完可能
図書館における情報探索のポータル的役割 ⇒レファレンスサービス
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• 利用者と図書館員の対話 – 質問者は調べたい対象や探索したい事実が不明確
• (例)靖国神社についてレポートを書きたいのですが、何をしたらいいのでしょうか?
– 漠然とした情報ニーズを徐々に具体化
レファレンスサービスのポイント
靖国神社のどの問題について調べたいのですか?
どこまで調査は進んでいますか?
新聞記事のリストアップは必要ですか?
アジアの歴史に関する入門書は読みましたか?
関連法案についてどのくらいご存知ですか?
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レファレンスサービスの例 (東京大学附属図書館における分類)
• 利用案内 – 判例時報はどこに置いてありますか – OPACの使い方を教えてください
• 所蔵調査 – 「歌舞伎登場人物辞典」は図書館にありますか
• 文献調査 – 江戸時代の農民一揆に関する本を探したい – 昭和20年代の東大の雰囲気を知ることができる資料が欲しい
• 事項調査 – 大学いもの「大学」は東京大学のことを指しているのですか – 日本における英語教育制度の始まりについて知りたい
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OPAC 図書館利用ガイド
雑誌目次検索システム e-‐Journal
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窓口の役割
図書館のシステムにも必要?
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レファレンスサービスの現状
ある ない 無回答
13.8% 78.4% 7.8%
Q:レファレンスサービスを利用したことがあるか?
• 有効活用されていない – 図書館来館者へのアンケート調査 [富山県 1995]
図書館における情報探索のポータル的役割を果たしていない
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デジタルレファレンスサービス(DRS)
両者の長所を併せ持ったDRSがポータル的役割?
高い コスト 低い
容易 レファレンス インタビュー
困難
制約あり 利用可能時間 24時間
チャット (テキスト・音声・映像)
サービス形態 電子メール
Web上の質問フォーム
同期型 非同期型
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本研究の目的
n レファレンスサービスの現状を分析 q 利用者から寄せられる質問の傾向分析 q 図書館員が回答の際に頻繁に使用するリソース
n システムが満たすべき条件の考察
• 利用者とのインタラクションが可能な自動レファレンスサービスシステムの実現へ向けて
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カウンターにおける質問応答
• 平成17年度統計(本郷キャンパス総合図書館)
6,630 (100.0%) 合計
20 (0.3%) その他
233 (3.5%) 事項調査
718 (10.8%) 文献調査
1,675 (25.3%) 所蔵調査
3,984 (60.1%) 利用案内
総数 質問区分
⇒詳しく調査
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カウンターでの質問傾向
• 図書館員が即答可能な質問が多い – 本の所蔵場所を問う質問 – OPACの検索結果の見方に関する質問 – パソコンのトラブルやアカウントに関する質問 – 学内他館の利用に関する質問
現状:同じ類の質問が繰り返し何度もなされている
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文書を介した質問応答
• 平成17年度統計
1,990 (100.0%) 合計
90 (4.5%) その他
170 (8.5%) 事項調査
175 (8.8%) 文献調査
1,550 (77.9%) 所蔵調査
5 (0.3%) 利用案内
総数 質問区分
回答の際に使用されるリソースを調査
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回答の際に使用されるリソース
• 所蔵調査 – OPAC・全学総合目録カード・NACSIS Webcat
• 文献調査・事項調査 – レファレンス情報源
• 百科事典、人物レファレンス辞典、Japan Knowledge・・・
使用されるリソースは一般の人も利用できるオンラインサービスが多い
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• FAQが大半を占めている – 図書館利用ガイドやWeb等に掲載 – 利用者に知られていない
カウンター・文書での質問応答の問題点
情報がバラバラに提供
n 既存のオンラインリソースが有効活用されていない q サービス間の連携が良くなく、各々が独立している
問題点①:図書館が提供している情報やリソースが利用者に分かり易い形で整備されていない
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ASKサービス
• 東京大学附属図書館が 行っている非同期型DRS
– 質問をWebから申し込み、 メールで回答を得る – 東京大学の図書館の中から、
最も適した図書館が回答 – これまでの質問の検索も可能 – 2005年3月より運用開始
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ASKサービスにおける質問応答
• 統計(2005年3月~2006年8月)
272 (100.0%) 合計
9 (3.3%) その他
12 (4.4%) 事項調査
11 (4.1%) 文献調査
21 (7.7%) 所蔵調査
219 (80.5%) 利用案内
総数 質問区分
⇒質問内容でさらに分類
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ASKサービスにおける質問応答
• 利用案内に関する質問の詳細
219 (100.0%) 合計
18 (8.2%) その他
11 (5.0%) OPACトラブル
21 (9.6%) 資料の取り寄せ・複写
169 (77.2%) 電子ジャーナルトラブル
総数 質問内容
現状:電子ジャーナルのトラブルシューティング用の窓口
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• トラブルシューティング以外の質問がほとんどない – 利用者が質問を文章の形で明確化する必要がある
• レファレンスインタビュー機能がないASKサービス
• 質問の種類が制約されてしまう
ASKサービスの問題点
問題点②:インタビュー機能を持つDRSが整備されていない
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目次
• 背景・目的 • 東京大学附属図書館レファレンスサービス現状分析
– カウンターにおける質問応答 – 文書を介した質問応答 – ASKサービス
• 考察・まとめ
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問題点のまとめと解決策
• 浮き彫りになった2つの問題点 – 情報やリソースが分かり易い形で整備されていない
cf.パスファインダー事業 →人手で作成されているため、網羅している範囲が狭い
– インタビュー機能が無いDRS
既存の知識やリソースの体系的整備
対話型インタフェースを備えたシステム
先行研究:京大レファレンスシステム [平田ら 2000] ダイアログナビ [清田ら 2003]
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必要とされているシステム
n システムが満たすべき条件 q 図書館の利用方法に関する体系化された知識の保持 q 聞き返しが容易なインタフェースの保持
パスファインダーのオンデマンド生成
資料等を利用者の情報要求に沿って自動的に整理し、対話的に示すシステム
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システム実現に向けて
• 情報探索や図書館利用に関するメタ知識の整備 – 図書館利用ガイドブック – 質問タイプ別の情報探索戦略 – レファレンス事例の集積
• cf.レファレンス協同データベース事業
• 図書館内外のオンラインリソースの統合的利用 – OPAC、各種辞典、Webサーチエンジン、BSH、NDC・・・ – Wikipedia
• 既存の百科辞典より項目数が多い • 最新の項目も収録
情報爆発サーチシステム群の合同評価
検索エンジン基盤 TSUBAKI (黒橋,新里)
WebClustering (黒橋,原島)
鳥式 (鳥澤,風間)
意見分析システム OpinionReader (藤井)
みんなの経験 (乾,阿部)
質問応答システムMinerVA (森)
リサーチ・ナビ (中川,清田)
100人×7システム×1時間のユーザビリティ評価
リサーチ・ナビ (国立国会図書館) • サマリーからヒントが得られたか? • どの情報源が最も有用だったか? • GoogleやYahooなどでは得られな
い情報が得られたか? • テーマグラフは有用だったか?
• その他の意見 • 信頼できる情報にたどりつき易い • 意外な観点がたくさんみつかる • 情報源別にタブにわかれていて便利 • GoogleやYahoo!の方が知りたいこと
にすばやくたどり着く
肯定的意見 86% 図書館の調べ方 64% 蔵書・雑誌 24% Wikipedia 22%
はい 78%
はい 84%