2 我が国のイノベーションの創出に向けた課題 · 2018-11-16 ·...

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世界経済フォーラム(WEF)が毎年発表している 国際競争力指標によれば、日本のイノベーションラン キングは 2016-2017 年版の報告書では、2015-2016 年 版の 5 位から順位を下げて 8 位となっている。「企業 の研究開発投資」、「科学者・技術者の有用性」及び「特 許協力条約に基づいた特許申請」では高い順位となっ ている一方、「イノベーション能力」及び「研究開発 における産学連携」が上位 10 か国と比較して低い順 位となっている(第Ⅱ-3-2-1-1表)。 「イノベーション能力」の指標が低い理由について は、以前は企業に対して「自前の研究開発能力」が問 われていたが、2013-2014年版以降は、「イノベーショ ン能力の保有」が問われるように変更されたことの影 響が指摘されるとともに、日本の企業経営者の自国へ の評価が低下した可能性や、研究開発の成果を社会的 価値につなげる力やオープン・イノベーションに対す る日本の弱みが示された可能性があるとも指摘されて いる 90 我が国のイノベーションの課題としては、①顧客価 値の獲得に関する環境変化への対応の遅れ、②自前主 義に陥っている研究開発投資、③企業における短期主 義、④人材や資金の流動性の低さ、⑤グローバルネッ トワークからの孤立が挙げられており、これらの課題 を解決し、イノベーション創出をしていくためには、 オープン・イノベーションの推進が重要だとされてい るが、自社単独のみで研究開発する企業の割合は 61%となっており、半数以上の企業で 10 年前と比較 してオープン・イノベーションが活性化していないと の分析もされている 91 。このことは、第Ⅱ-3-2-1 図に おいて「研究開発における産学連携」の順位が相対的 に低いことにも表れていると考えられる。 これまで蒸気機関の発明から動力を獲得した第 1 次 産業革命、電力・モーターによる動力が革新した第 2 次産業革命、コンピュータの発明・発展による自動化 が進む第 3 次産業革命に続き、我々は大量の情報を基 我が国のイノベーションの創出に向けた課題 1.我が国のイノベーション能力に関する国際的な評価 2.イノベーションを生み出す新たな産業社会の実現に向けた 3 つの課題 -3-2-1-1 表 WEF イノベーションランキング 2016-2017 年版 イノベーション ランキング イノベーション 能力 科学技術 調査機関の質 企業の研究 開発投資 研究開発にお ける産学協業 先進技術に対 する政府調達 科学者・技術者 の対応領域と数 PCT 国際出願 件数 スイス 1 1 1 1 1 28 14 3 イスラエル 2 4 3 3 3 9 8 5 フィンランド 3 6 8 7 2 26 1 4 米国 4 2 5 2 4 11 2 10 ドイツ 5 5 11 5 8 6 16 7 スウェーデン 6 3 7 6 12 23 20 2 オランダ 7 10 4 14 5 21 21 9 日本 8 21 13 4 18 16 3 1 シンガポール 9 20 10 15 7 4 9 13 デンマーク 10 18 16 16 14 53 37 8 備考:PCT 出願とは、特許協力条約に基づいた特許申請。 資料:WEF”The Global Competitiveness Report (2016-2017 年版)から経済産業省作成。 90 内閣府(2017)「世界経済フォーラム(WEF)国際競争力レポートにおけるイノベーションランキングの現状の分析について」、矢野(2016) 「国際競争力後退の要因は何か」みずほ総合研究所 91 産業構造審議会 産業技術環境分科会 研究開発・イノベーション小委員会(2016)「イノベーションを推進するための取組について」 通商白書 2017 233 第2節 我が国のイノベーションの創出に向けた課題

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Page 1: 2 我が国のイノベーションの創出に向けた課題 · 2018-11-16 · イノベーションに向けた取組が重要となってくる。さ らに3つ目として、より高度な知識・経験を持った人

 世界経済フォーラム(WEF)が毎年発表している国際競争力指標によれば、日本のイノベーションランキングは 2016-2017 年版の報告書では、2015-2016 年版の 5 位から順位を下げて 8 位となっている。「企業の研究開発投資」、「科学者・技術者の有用性」及び「特許協力条約に基づいた特許申請」では高い順位となっている一方、「イノベーション能力」及び「研究開発における産学連携」が上位 10 か国と比較して低い順位となっている(第Ⅱ-3-2-1-1 表)。 「イノベーション能力」の指標が低い理由については、以前は企業に対して「自前の研究開発能力」が問われていたが、2013-2014 年版以降は、「イノベーション能力の保有」が問われるように変更されたことの影響が指摘されるとともに、日本の企業経営者の自国への評価が低下した可能性や、研究開発の成果を社会的価値につなげる力やオープン・イノベーションに対す

る日本の弱みが示された可能性があるとも指摘されている 90。 我が国のイノベーションの課題としては、①顧客価値の獲得に関する環境変化への対応の遅れ、②自前主義に陥っている研究開発投資、③企業における短期主義、④人材や資金の流動性の低さ、⑤グローバルネットワークからの孤立が挙げられており、これらの課題を解決し、イノベーション創出をしていくためには、オープン・イノベーションの推進が重要だとされているが、自社単独のみで研究開発する企業の割合は61%となっており、半数以上の企業で 10 年前と比較してオープン・イノベーションが活性化していないとの分析もされている 91。このことは、第Ⅱ-3-2-1 図において「研究開発における産学連携」の順位が相対的に低いことにも表れていると考えられる。

 これまで蒸気機関の発明から動力を獲得した第 1 次産業革命、電力・モーターによる動力が革新した第 2

次産業革命、コンピュータの発明・発展による自動化が進む第 3 次産業革命に続き、我々は大量の情報を基

我が国のイノベーションの創出に向けた課題第2節

1.我が国のイノベーション能力に関する国際的な評価

2.イノベーションを生み出す新たな産業社会の実現に向けた 3つの課題

第Ⅱ-3-2-1-1 表 WEF イノベーションランキング 2016-2017 年版

イノベーションランキング

イノベーション能力

科学技術調査機関の質

企業の研究開発投資

研究開発における産学協業

先進技術に対する政府調達

科学者・技術者の対応領域と数

PCT 国際出願件数

スイス 1 1 1 1 1 28 14 3

イスラエル 2 4 3 3 3 9 8 5

フィンランド 3 6 8 7 2 26 1 4

米国 4 2 5 2 4 11 2 10

ドイツ 5 5 11 5 8 6 16 7

スウェーデン 6 3 7 6 12 23 20 2

オランダ 7 10 4 14 5 21 21 9

日本 8 21 13 4 18 16 3 1

シンガポール 9 20 10 15 7 4 9 13

デンマーク 10 18 16 16 14 53 37 8備考:PCT 出願とは、特許協力条約に基づいた特許申請。資料:WEF”The Global Competitiveness Report(2016-2017 年版)から経済産業省作成。

�90 内閣府(2017)「世界経済フォーラム(WEF)国際競争力レポートにおけるイノベーションランキングの現状の分析について」、矢野(2016)

「国際競争力後退の要因は何か」みずほ総合研究所91 産業構造審議会 産業技術環境分科会 研究開発・イノベーション小委員会(2016)「イノベーションを推進するための取組について」

第3章

第Ⅱ部

通商白書 2017 233

第2節我が国のイノベーションの創出に向けた課題

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に人工知能が自ら考えて最適な行動を取ることが可能となる第 4 次産業革命を迎えている。この第 4 次産業革命により、①実社会のあらゆる事業・情報が、データ化・ネットワークを通じて自由にやりとりが可能になる(IoT)、②集まった大量のデータを分析し、新たな価値を生む形で利用可能になる(ビッグデータ)、③機械が自ら学習し、人間を越える高度な判断が可能となる(人口知能(AI))、そして④多様かつ複雑な作業についても自動化が可能となる(ロボット)。こうした一連の変化が同時期に生じることでこれまで実現不可能と思われていた社会の実現が可能になるが、同時に産業構造や就業構造が劇的に変わる可能性もある。 こうした技術のブレークスルーは、①これまでの大量生産・画一的サービスから、個々のニーズに合わせたカスタマイズ生産・サービスへのシフト(例、個別化医療や即時オーダーメイド服、各人の理解度に合わせた教育)、②社会に眠っている資産と個々のニーズをコストゼロでマッチング(例、Uber や Airbnb 等のシェアリングエコノミーサービス)、③人間の役割、認識・学習機能のサポートや代替(例、自動走行、ドローンによる施工管理・配送)、④新たなサービスの創出、製品やモノのサービス化、データ共有によるサプライチェーン全体での効率性の飛躍的向上を可能とするなど、第 4 次産業革命の技術は全ての産業における革新のための共通の基盤技術であり、様々な分野における技術革新・ビジネスモデルと結びつくことで、

全く新しいニーズの充足が可能になる。 さらに、こうした様々なものがつながることで新たな付加価値が創出され、従来独立・対立関係にあったものが融合し、変化することで、サイバー空間とフィジカル空間が高度に融合し、人々が快適で活力に満ちた質の高い生活を送ることのできる、人間中心の超スマート社会、「Society 5.0」の実現が期待される。 これらの第四次産業革命という技術革新をきっかけとする革命を、最終的な未来社会像である Society 5.0へとつなげていくためには、産業のあり方を変革していく必要がある。平成 29 年 3 月に開催されたドイツ見本市(CeBIT)では、我が国が目指すべき産業の在り方として新たに「コネクテッド・インダストリーズ」の概念を世界に向けて発信した。「コネクテッド・インダストリーズ」とは、データ、技術、人、組織等が様々なもの・ことのつながりによって新たな付加価値創出と社会課題解決がもたらされるような産業のあり方であり、その概念図が第Ⅱ-3-2-2-1 図となる。 こうした新たな産業社会の実現に向けて、通商政策の観点からは、大きく分けて以下の 3 つの課題がある。1 つ目は第 4 次産業革命の中で個人がより人材としての能力・スキルを絶え間なく向上させていくこと、人的投資を個人レベル、企業レベルさらに社会レベルでのシステムを構築していく必要がある。2 つ目は個人と個人、企業と企業あるいは産業と産業間の交流を促進してイノベーション創出力を高めるためにオープン

第Ⅱ-3-2-2-1 図 コネクテッド・インダストリーズ

第 1 次産業革命動力を取得

(蒸気機関)

第 2 次産業革命動力が革新

(電力・モーター)

第 3 次産業革命自動化が進む

(コンピュータ)

狩猟社会 農耕社会 工業社会 情報社会

〈社会の変化〉

〈技術の変化〉

〈産業の在り方の変化〉

Connected IndustriesConnected Industries

もの × もの人間 × 機械・システム

企業 × 企業人間 × 人間

(知識や技能の継承)生産 × 消費

もの × もの人間 × 機械・システム

企業 × 企業人間 × 人間

(知識や技能の継承)生産 × 消費

日本の現場力 × デジタル多様な協働

日本の現場力 × デジタル多様な協働

新たな社会を形成

人間中心課題解決型

新たな社会を形成

人間中心課題解決型

個々の産業ごとに発展個々の産業ごとに発展

・様々なつながりによる新たな付加価値の創出・従来、独立・対立関係にあったものが融合し、変化 →新たなビジネスモデルが誕生

・様々なつながりによる新たな付加価値の創出・従来、独立・対立関係にあったものが融合し、変化 →新たなビジネスモデルが誕生

第 4 次産業革命自律的な最適化が可能に

大量の情報を基に人工知能が自ら考えて最適な行動をとる

Society 5.0超スマート社会

サイバー空間とフィジカル空間が高度に融合

資料: 経済産業省作成。

234 2017 White Paper on International Economy and Trade

第3章 イノベーションを生み出す新たな産業社会の創造に向けた取り組み

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イノベーションに向けた取組が重要となってくる。さらに 3 つ目として、より高度な知識・経験を持った人材や企業を日本国内に取り組むため、内なる国際化として高度人材の受入や対内直接投資拡大もさらに進めていく必要がある。以降、それぞれの課題についてふれていきたい。

(1)人的投資の現状と課題 技術革新から社会まで含めた変化が見込まれる中、こうした変化に対応していくためには当然ながら人材・雇用面でも大きな変化が求められてくる。 目指すべき将来像としては以下が考えられる。 まず、個人に注目すれば、付加価値の源泉の変化に対応し、「人生 100 年時代」に能力・スキルを生涯アップデートし続け、ひとりひとりがプロフェッショナルとしての価値を身につける必要が出てくる。その前提として、市場環境やライフステージの変化に対応しつつ、常に自身のキャリアをリデザインし続ける「キャリア・オーナーシップ」を持つことが求められる。 企業の側から見れば、競争力のコアが「知の源泉たる人材」に移行したとの認識に立ち、多様な能力・スキルを持った人材を惹き付け、プロジェクト・ベースで付加価値を生み出すシステムを企業活動の中心に据えることが求められる。そのためには、人材のニーズに応じて時間・場所・契約形態等にとらわれない柔軟かつ多様な「働き方」を取り入れるとともに、職務内容を明確化し、「仕事の内容」や「成果」に応じた評価・処遇を徹底する必要があろう。 さらに社会全体として、「知の源泉たる人材」を獲得・育成・最適配置するエコシステムを、国全体として構

築していく必要がある。企業が人材教育や保障の多くを提供していた時代が現実には過去のものとなる中、第 4 次産業革命やグローバリゼーションの影の側面を最小化させるためにも、社会保障制度等の社会システムの刷新も必要となる。 こうした時代の変化に適応した人材を創出・育成していくために必要な施策については、第 3 部で紹介することとし、本節では、人材投資に関する現状と課題及び全体戦略について概観したい。

① 人材投資・人材育成の抜本拡充 前節では、我が国のグローバル企業は高い生産性を示しているにもかかわらず、価格決定力に不安を抱えていることが明らかになったが、収益力の改善のためには、生産性の上昇に注目するだけではなく、価格決定力の強化にも注目・対応する必要があると考えられ、また、人材育成投資の減少を反転・増加させることが収益力の改善につながることも指摘している。 企業にとって人材確保から人材教育への人的資本投資の流れが、イノベーションを創出し、それが生産性上昇と価格決定力強化を通じて、収益力改善に結びつくことが期待されている。 人材確保や人材教育を考える際、第 4 次産業革命下で求められる人材像(能力・スキル)や人材需給の把握・見える化を進めていくことが政策の柱となる。 とりわけ重要となる IT やデータを扱うスキルについては、経済産業省の委託で実施した「IT 人材最新動向と将来設計に関する調査結果」によれば、IT 人材の人材不足は今後ますます深刻になると予測されている。IT 人材全体として 2030 年に約 59 万人(中位

第Ⅱ-3-2-2-2 図 IT 人材不足の推測

170,700170,700 194,608194,608 218,976218,976 243,805243,805 268,655268,655 293,499293,499 320,638320,638 347,611347,611 374,564374,564 401,843401,843 429,611429,611 461,087461,087 492,983492,983 524,562524,562 555,873555,873 586,598586,598

892,511892,511 899,266899,266 905,408905,408 910,492910,492 915,052915,052 918,921918,921 921,082921,082 922,491922,491 923,094923,094 923,273923,273 923,002923,002 919,924919,924 916,447916,447 912,370912,370 907,878907,878 902,789902,789 893,863893,863 884,368884,368 875,018875,018 865,744865,744 856,845856,845

0

16

14

12

10

8

6

4

2

18(10 万人)

(年)2010 2029202820272026202520242023202220212020201920182017201620152014201320122011 2030

人材不足数(人)

高位シナリオ供給人材数(人)

中位シナリオ(数値は 2015 年を 100 としたときの市場規模)

低位シナリオ

■2015 年の人材不足規模:約 17 万人■2030 年の人材不足規模:約 59 万人(中位シナリオ)⇒ IT 人材不足は、今後ますます深刻化

100.0100.0 102.4102.4 104.8104.8 107.1107.1 109.4109.4 111.6111.6 113.9113.9 116.0116.0 118.1118.1 120.2120.2 122.3122.3 124.4124.4 126.4126.4 128.4128.4 130.5130.5 132.5132.5

約 79 万人(高位シナリオ)

約 59 万人(中位シナリオ)

約 41 万人(低位シナリオ)

2030 年の人材不足数

現在の不足数現在の不足数

人材供給は2019 年をピークに減少

人材供給は2019 年をピークに減少

IT ニーズの拡大により市場

規模は今後も拡大

今回の推計では、将来の市場拡大見通しによって低位・中位・高位の 3 種のシナリオを設定。低位シナリオでは市場の伸び率を 1%程度、高位シナリオでは市場の伸び率を 2~4%程度(アンケート結果に基づく将来見込み)、中位シナリオはその中間(1.5~2.5%程度)と仮定した。さらに、低位・中位・高位の各シナリオにつき、今後の労働生産性に変化がない場合と、労働生産性が毎年 1%及び 3%向上する場合の 3 種類の推計結果を算出した。資料:経済産業省委託事業(みずほ情報総研)「IT 人材最新動向と将来設計に関する調査結果(2016)」から引用。

第3章

第Ⅱ部

通商白書 2017 235

第2節我が国のイノベーションの創出に向けた課題

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シナリオ)が不足、最大約 79 万人(高位シナリオ)まで不足するとの調査結果が出ている(第Ⅱ-3-2-2-2 図)。 さらに、第 4 次産業革命下では、人工知能、ビッグデータ、ロボットや IoT の専門家が重要となることから、こうした先端 IT 人材についても 2020 年までに約 5 万人が不足するとの推計が出されている(第Ⅱ- 3-2-2-3 図)。 他方、同じ調査では、「新しい技術を活用して業績や顧客満足度の向上を目指す、顧客志向の先端的なIT 投資(または IT 利活用)」(以上、「攻めの IT 投資」と定義)の重要性は広く認識されているものの、実際に「攻めの IT 投資」を実現できていると回答している企業は半分程度しかいないとしている。また、「攻めの IT 投資」を促進する人材については 8 割を越える回答者が「大幅に不足している」「やや不足している」と回答し、「攻めの IT 人材」の不足が深刻であることが明らかになっている。 さらに、「攻めの IT 人材」を確保、育成していくためには、各社の IT 人材の個人のスキルアップが重要となってくるものの、日本の IT 人材は、会社の教育・研修制度や自己研鑽支援制度に対する満足度が、国際的に比較した場合、満足度がかなり低いようだ(第Ⅱ-3-2-2-4 図)。加えて給与・報酬に対しても同様に満足度は低いとの回答が多い(第Ⅱ-3-2-2-5 図)。

② 柔軟かつ多様な働き方の実現 第 4 次産業革命の下で量・質の両面にわたっていかに人材を確保・育成していくかが鍵となるところ、終身雇用、職務無限定、年功序列、メンバーシップ型といった特徴を有するとされる「旧来の日本型雇用システム」について、職務内容を明確化し、それを達成するためのスキル・コンピテンシーを強化することができるシステムへと進化させ、労働時間や在勤年数による評価だけでなく、成果に基づく評価を重視し、時間、場所、契約にとらわれない柔軟な働き方を促進するとともに、自ら転職・再就職しやすい環境を整備していくことが重要となってくる。

(2)オープンイノベーションの現状と課題 ヘンリー・チェスブロウ 92 准教授によると、イノベーションを起こすためには、企業は海外も含めた大学や他企業との連携を積極的に活用することが有効で

第Ⅱ-3-2-2-3 図 先端 IT 人材不足数の推測

1.521.52

3.153.15

4.784.78

0

2018161412108642

(万人)

202020182016 (年)

現時点の不足数

潜在人員規模現在の人材数

資料: 経済産業省委託事業(みずほ情報総研)「IT 人材最新動向と将来設計に関する調査結果(2016)」から引用。

第Ⅱ-3-2-2-4 図 会社の教育・研修制度や自己研鑽支援制度に対する満足度

2.62.6

6.06.0

2.82.8

4.44.4

15.015.0

7.67.6

24.224.2

19.019.0

14.414.4

15.815.8

19.219.2

24.024.0

20.020.0

28.228.2

36.836.8

40.440.4

36.436.4

37.037.0

49.049.0

44.044.0

38.038.0

50.850.8

30.030.0

35.435.4

46.646.6

41.241.2

29.029.0

27.627.6

27.027.0

13.413.4

9.09.0

5.25.2

0 20 40 60 80 100(%)

日本(n=500)

韓国(n=500)

中国(n=500)

ベトナム(n=300)

インドネシア(n=500)

タイ(n=500)

インド(n=500)

米国(n=500)

満足している どちらかと言えば満足しているどちらかと言えば満足していない 満足していない

資料: 経済産業省委託事業(みずほ情報総研)「IT 人材最新動向と将来設計に関する調査結果(2016)」から引用。

第Ⅱ-3-2-2-5 図 給与・報酬に対する満足度

1.61.6

3.83.8

1.61.6

11.711.7

1.21.2

5.45.4

17.817.8

18.618.6

9.29.2

12.012.0

14.814.8

14.014.0

14.414.4

15.815.8

34.634.6

33.833.8

31.831.8

28.428.4

47.047.0

38.338.3

51.451.4

62.262.2

34.434.4

40.040.0

57.457.4

55.855.8

36.636.6

36.036.0

33.033.0

16.616.6

13.213.2

7.67.6

0 20 40 60 80 100

日本(n=500)

韓国(n=500)

中国(n=500)

タイ(n=500)

ベトナム(n=300)

インドネシア(n=500)

インド(n=500)

米国(n=500)

(%)

満足している どちらかと言えば満足しているどちらかと言えば満足していない 満足していない

資料: 経済産業省委託事業(みずほ情報総研)「IT 人材最新動向と将来設計に関する調査結果(2016)」から引用。

92 ハーバード・ビジネス・スクールの助教授で、オープンイノベーションの提唱者。

236 2017 White Paper on International Economy and Trade

第3章 イノベーションを生み出す新たな産業社会の創造に向けた取り組み

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あるとされている。我が国では、特に海外からの資金や人材の交流が少ないことから、これらの交流を増やしつつ、企業・大学・ベンチャー企業等、各プレイヤーが連携して付加価値を創出するためのオープンイノベーションを推進して行き、様々なつながりにより新たな付加価値が創出される産業である「コネクテッド・インダストリーズ」を実現して行くことが重要である。ここでは、特に我が国の研究面における他国との交流について、近年急速に共同研究が増えつつある中国と比較して分析していく。

① 我が国の研究者の国際的なネットワークにおける課題

 2003 年から 2013 年にかけて、世界全体で国際共著論文が大きく増えている。我が国の共著関係の伸びは相対的に少ない(第Ⅱ-3-2-2-6 図)。それに対して中国は 2003 年から 2013 年にかけて科学論文数も共著関係も大幅に伸びており、それ以外のドイツ、英国等の先進国においても伸びが見られ、日本はこれらの国と比較して遅れを取っている。 また、共同特許件数の推移で見ても中国は欧米との共同研究を大幅に増やしていく中、日本は減少している(第Ⅱ-3-2-2-7 図)。我が国は、2000 年は欧州、米国との共同特許件数はそれぞれ 353 件、227 件であったが、2014 年にはそれぞれ 204 件、208 件と減少して

いる。それに対して、中国では 2000 年は欧州、米国との共同特許件数が 40 件、24 件であったのが、2014 年にはそれぞれ 442 件、308 件となっており、10 倍以上にまで成長している。国際特許の件数で見ても、日本は欧米中で比較した場合に唯一減少している国である。 日米欧の間だけでなく、全世界との共同特許件数でみても、中国は 2008 年には我が国を抜いており、既に我が国よりも 2 倍程度多い。それに対して日本は他の先進国が 1999 年と比較して伸びているのに対して下がっている(第Ⅱ-3-2-2-8 図)。

第Ⅱ-3-2-2-7 図 2000 年と 2014 年における国際特許件数とそのうちの共同特許件数

備考: 欧州特許庁に出願された国際特許件数。資料:OECD Stat から経済産業省作成。

薄色は 2000 年濃色は 2014 年

193

4,901

33,15637,656

56,96452,250

19,769

18,014

40442

641

24308

227208

353204

2,6482,394

欧州欧州

中国中国

米国米国

日本日本

第Ⅱ-3-2-2-6 図 世界の研究者の国際ネットワーク(共著関係)

資料: エルゼビア社「スコーパス」に基づき科学技術・学術政策研究所作成。    中央教育審議会審議まとめ「未来を牽引する大学院教育改革」参考資料より抜粋。

ベルギー ベルギースイス スイスポーランド ポーランドスウェーデン スウェーデン

オランダオランダ オランダオランダロシアロシア ロシアロシアイタリア

イタリア

スペイン スペイン

フランスフランス

英国英国英国英国

ドイツドイツドイツドイツ

中国中国中国

米国米国

米国米国

カナダ

カナダ

豪州

豪州

ブラジル ブラジルインド

インド

台湾台湾 台湾台湾

韓国韓国

イランイラン

トルコ トルコ

フランスフランス

2003 年 2013 年

日本日本日本日本

※各国の円の大きさは当該国の科学論文(学術誌掲載論文や国際会議の発表録に含まれる論文等)の数を示す。※国間の数は、当該国を含む国際共著論文数を示しており、線の太さは国際共著論文数の多さにより太くなる。

第3章

第Ⅱ部

通商白書 2017 237

第2節我が国のイノベーションの創出に向けた課題

Page 6: 2 我が国のイノベーションの創出に向けた課題 · 2018-11-16 · イノベーションに向けた取組が重要となってくる。さ らに3つ目として、より高度な知識・経験を持った人

② 中国における国際共同研究の成長とその要因 中国が急速に共同研究を伸ばしている理由の一つとしては、留学生の存在が挙げられる。米国等に留学した中国人は帰国後も引き続き、留学をしてきた国との共同研究を行うことがあり、これによって中国は急速に共同研究を伸ばしてきたことが考えられる 93。 実際にグラフで見ても、中国の急速な共同研究の伸びは留学生の伸びと関連性があるように見受けられる

(第Ⅱ-3-2-2-9 図)。以下の上図は 2000 年から 2014年にかけての日中における米国への留学生数と共同特許件数を推移で示したものである。 これを見ると、日本は米国への留学生数及び共同特許件数が同じ 2000 年から 2010 年にかけて両方とも同じような傾向で下落していることが分かる。同様に中国においては、留学生数が急増しているのに従って共同特許件数も増加傾向となっている。 下方のグラフに関しては、中国と日本で横軸を米国への留学生数、縦軸を米国との共同特許件数にして、時系列での推移をみたものである。これを見ると、日本は 2000 年から 2014 年にかけて、留学生数が減ると共に共同特許件数も減少していることが分かる。また中国は日本とは逆に、2000 年から 2014 年にかけて、留学生数も共同特許件数も上昇している。さらに、中国人留学生の帰国比率が 2005 年の 29.5%から 2016 年には 79.4%と大幅に増加している。単純な人数の増加等も寄与しうるため、一概には言えないが、少なくとも留学生数と共同研究に関しては一定程度の関連があることが推測される。

第Ⅱ-3-2-2-8 図 共同特許件数(件数)

備考:欧州特許庁に出願された国際特許件数資料:OECD Stat から経済産業省作成。

0

6,000(件)

5,000

4,000

3,000

2,000

1,000

2014

2013

2012

2011

2010

2009

2008

2007

2006

2005

2004

2003

2002

2001

2000

1999

フランス英国

日本

(年)

中国ドイツ米国

0

50,000

40,000

30,000

20,000

10,000

0

400

300

200

100

20142012201020082006200420022000

米国における日本人留学生数と日米共同特許件数

米国における日本留学生(左軸) 日米間共同研究数(右軸)

150

400

米国への日本人留学生数15,000

米国

との

共同

特許

件数

25,000 35,000 45,000 55,000

y=0.0051x+129.87R2=0.8088

200

250

300

350

0

400,000

300,000

200,000

100,000

0

800(件) (件)

600

400

200

2014(年) (年)2012201020082006200420022000

米国における中国人留学生数と米中共同特許件数

米国における中国留学生(左軸) 米中間共同研究数(右軸)

0

700

(人)

(件)

(人)

(件)

0

100

200

300

400

500

600

100,000 200,000 300,000 400,000(人) (人)

y=0.0018x+33.066R2=0.8171

米国への中国人留学生数

米国

との

共同

特許

件数2000 年

2000 年2014 年

2014 年

資料:OECD Stat、Institute of International Education “Open Doors” から経済産業省作成。

第Ⅱ-3-2-2-9 図 米中の米国への留学生数と共同特許件数の推移

�93 アナリー・サクセニアン「最新・経済地理学」(2008)

238 2017 White Paper on International Economy and Trade

第3章 イノベーションを生み出す新たな産業社会の創造に向けた取り組み

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(3)内なる国際化の現状と課題 我が国が更なるイノベーションを促進させていくためには、前述したとおり人材投資(第 1 節で説明)や内なる国際化(高度外国人材受入れや対内直接投資の増加)を推進していくことによって、企業間や企業と大学との交流が国内だけに留まらず海外とも積極的に行われていくことが重要である。ここでは、我が国が抱えている高度外国人材の流入に関する現状と課題について述べた後に、対内直接投資に関しても言及していく。

① 高度外国人材をめぐる現状と課題 まず高度外国人材について述べていくと、研究者は過去 15 年間で約 8,700 人が流出しており、研究者が 1万人近く流入した米国や中国とは大きな差がある(第Ⅱ-3-2-2-11 図)。この理由の一つとして、外国人材の日本の職場に対する否定的な見方が考えられる。日本への留学生・元留学生による日本への評価によれば、約 83%が日本で住むことについては魅力的であると評価しているが、日本で働くことに対しては約 51%が否定的な評価を下している(第Ⅱ-3-2-2-12 図)。 日本企業に対して外国人材からは、キャリアパスの明示、昇進・昇格の期間短縮、能力や成果に応じた評価に関する要望が多いため、これらを改善していくことが重要である(第Ⅱ-3-2-2-13 図)。

② 対内直接投資における現状と課題 次に、対内直接投資に関して述べていくと、第 2 章第 2 節で述べたとおり、我が国は対内直接投資が他の先進国と比較すると非常に低い値で推移している。他方で、研究開発拠点の投資先としては、近年魅力が急

0

60

50

40

30

20

10

0

90

80

70

60

50

40

30

20

10

(万人) (%)

2015(年)20142013201220112010200920082007200620052004200320022001

留学生出国者数留学生帰国比率(右軸)

留学生帰国者数

資料:中国統計年鑑 2016 から経済産業省作成。

第Ⅱ-3-2-2-10 図 中国人留学生の出国者数と帰国者数の推移

第Ⅱ-3-2-2-11 図 1999 年~2013 年の研究者の流出入数

資料: OECD, “Science, Technology and Industry Scoreboard 2015 JAPAN HIGHLIGHTS” から経済産業省作成。

-15,000 -10,000 -5,000 0 5,000 10,000 15,000

9,9949,233

7,971

-8,774-8,765

-11,551英国フランス

日本イタリア

インドドイツ

イスラエル香港

スウェーデンオランダスペインベルギー

オーストリアメキシコ

カナダデンマーク

アイルランドブラジル

台湾韓国豪州

スイス中国米国

ロシア約 8,700 人の流出超過

(年月)

(人)

第Ⅱ-3-2-2-12 図 日本への留学生・元留学生による、日本の生活及び就労魅力度の評価

資料: (一社)日本国際化推進協会による外国人留学生・元留学生へのアンケート調査から経済産業省作成。

0 80604020 100(%)

(n=819)

日本で働くことの魅力

日本に住むことの魅力

非常に魅力的 やや魅力的 中立あまり魅力的ではない 全く魅力的ではない

0.90.9

15.615.6

4.64.6

34.334.3

11.811.8

28.128.1

49.749.7

17.717.7

33.033.0

4.34.3

約83%が魅力的と評価

約51%が否定的評価

第Ⅱ-3-2-2-13 図 外国人材の定着のために日本企業が取り組むべきこと

※複数回答(あてはまるものを3つまで選択)※従業員数 300 人未満を中小企業、300 人以上を大企業と想定。資料:本調査の外国人材アンケートからから経済産業省作成。

0 10 20 30 40 50(%)

社内での英語使用

長時間労働の改善

外国籍として個性を重視

能力や成果に応じた評価

役割・仕事内容の明確化

外国人社員の幹部登用

昇格・昇給の期間短縮

キャリアパスの明示 42.414.014.0

39.040.0

30.516.016.0

27.130.0

27.127.134.0

18.516.015.315.3

26.015.316.0

大企業(n=59)中小企業

(n=50)

第3章

第Ⅱ部

通商白書 2017 239

第2節我が国のイノベーションの創出に向けた課題

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速に上がってきている(第Ⅱ-3-2-2-14 図)。この理由としては、インフラが整備されていることや市場としての魅力が挙げられている(第Ⅱ-3-2-2-15 図)。 他方で、その他の魅力については依然として低い状態である。この理由として、突出して高いのはビジネスコストの高さである。2010 年と 2015 年を比較した場合でも数%上昇しており、我が国のビジネスコストは海外企業が直接投資をする際の阻害要因になってい

ることが分かる(第Ⅱ-3-2-2-16 図)。また、ビジネスコストの内訳を見ていくと、人件費、税負担、事務所賃料の 3 つがメインであることが分かる。今後とも海外からの直接投資を増やしていくためには、外国企業が直面するビジネス上の課題の改善を行っていくことが重要である(第Ⅱ-3-2-2-17 図)。 また人材雇用面としては、外国人の雇用と日本人の雇用の両方の面においてコミュニケーションの困難性

資料:欧米アジアの外国企業の対日投資関心度調査、Pwc あらた監査法人(2016 年)から引用。

4

10

19

10

32

20

4346

1818

41

18

1010

4

36

13

51

2020

42

15

0

60

50

40

30

20

10

70 70 70

20152007 20132009 2011 20152007 20132009 2011 2015(年) (年) (年)2007 20132009 2011

(%)

0

60

50

40

30

20

10

(%)

0

60

50

40

30

20

10

(%)

日本 中国 シンガポール

R&D 拠点 金融拠点 物流拠点 製造拠点販売拠点 地域総括拠点 バックオフィス

第Ⅱ-3-2-2-14 図 外国企業から見てビジネス拠点タイプ別の投資先として最も魅力的なアジアの国・地域

第Ⅱ-3-2-2-15 図 日本で事業展開する上での魅力(合計)

資料:外資系企業動向調査(2010 年実績、2015 年実績)から引用。

0 80604020 100

20152010

ビジネスコスト(人件費、不動産等)が低い

優遇措置、インセンティブ等が充実している

事業規制の開放度が高い

ビジネス支援機関が充実している

その他

知的財産等の法整備が充実している

研究開発環境の質が高い

資金調達など金融環境が充実している

有能な人材の確保ができる

生活環境が整備されている

グローバル企業や関連企業が集積している

製品・サービスの流行に敏感であり、新製品・新サービスに対する競争力が検証できる

本社や管理対象国へのアクセス等、地理的要因に恵まれている

アジア市場のゲートウェイ、地域統括拠点として最適である

所得水準が高く、製品・サービスの顧客ボリュームが大きい

インフラ(交通、エネルギー、情報通信等)が充実している

(%)

第Ⅱ-3-2-2-16 図 日本で事業展開する上での阻害要因(合計)

0 80604020 100(%)

放射能汚染に対する不安

その他

地震や津波など自然災害に対する不安

ビジネスコストの高さ(人件費、税負担、不動産等)

資金調達の難しさ(融資条件の厳しさ、資金調達にあたっての制約等)

情報・支援サービス不足(市場に関する英語情報の不足、支援機関の未整備等)

優遇措置・インセンティブが不十分(税制上の特典、利用できる補助制度の不足等)

行政手続きの複雑さ(申請から認可までの期間の長さ、手続きの煩雑さ等)

規制・許認可制度の厳しさ(法的規制、商品の企画・検査等)

製品・サービスに対するユーザーの要求水準の高さ(品質、納期、価格等)

人材確保の難しさ(管理職、技術者、語学堪能者、一般労働者等)

日本市場の閉鎖性、特殊性(系列取引の存在、人的コネクション、商慣習等)

20152010

資料:外資系企業動向調査(2010 年実績、2015 年実績)から引用。

240 2017 White Paper on International Economy and Trade

第3章 イノベーションを生み出す新たな産業社会の創造に向けた取り組み

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や給与水準の高さが阻害要因となっており、その他にも日本人材に関しては労働市場の流動性に欠けること、外国人材に関しては在留資格取得の難しさが挙げられている(第Ⅱ-3-2-2-18 図、第Ⅱ-3-2-2-19 図)。

第Ⅱ-3-2-2-17 図 日本のビジネス(事業活動)コストにおける阻害要因

資料:外資系企業動向調査(2010 年実績、2015 年実績)から引用。

0 80604020 100(%)

用地リース費用

通信コスト

土地取得費用

公共料金(電気、ガス、水道等)

その他

設備費用(工場設備、情報機器・事務機械等)

物流コスト

社会保障費の負担

事務所賃料

税負担

人件費

20152010

第Ⅱ-3-2-2-19 図 外国人を雇用する上での阻害要因

0 80604020 100(%)

インターナショナルスクールの不足

配偶者の就業の困難性

その他

法定外福利費水準の高さ

永住権取得の困難性

英語の通じる病院・医師不足

住居等確保の困難性

駐在ビザ取得の困難性

給与等報酬水準の高さ

日本語でのビジネスコミュニケーションの困難性

家事使用人・ベビーシッターのビザ取得の困難性

20152010

資料:外資系企業動向調査(2010 年実績、2015 年実績)から引用。

第Ⅱ-3-2-2-18 図 日本人の人材を確保する上での阻害要因

0 80604020 100(%)

その他

人材仲介・斡旋サービス市場の未成熟

法定外福利費水準の高さ

厳格な労働規則

募集・採用コスト

労働市場の流動性不足

給与等報酬水準の高さ

20152010

英語でのビジネスコミュニケーションの困難性

資料:外資系企業動向調査(2010 年実績、2015 年実績)から引用。

第3章

第Ⅱ部

通商白書 2017 241

第2節我が国のイノベーションの創出に向けた課題