ピタゴラス数直角を挟む2辺の和、差の考察 ででき...
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ピタゴラス数直角を挟む2辺の和、差の考察
=A,B,A+B,A-Bのいずれかは7倍数=
長崎県立小浜高校 山 本 文 隆
1.はじめに
A +B =C を満たす最小の整数の組み合わ2 2 2
せ、すなわち既約なピタゴラス数において、直角
を挟む2辺のどちらかは3の倍数、偶数辺は4の
倍数、3辺のいずれかは5の倍数であることは有
名だが、今回あらたに直角を挟む2辺A,B、も
しくは二辺の和A+B、二辺の差|A-B|のい
ずれかは7の倍数であることを見出した。
さらに直角を挟む2辺A,Bを縦横の軸に取る
グラフ(仮称ピタゴラス数ネット)の全象限上で
の分布は2辺の和、差とも180度の回転対称性
、 。を示し 両者は回転方向が逆であることも判った
斜辺が素数であるものの分布が全ての象限にA
軸、B軸を挟んで線対称であることと比較しても
面白い特徴を示している。
2.既約ピタゴラス数の完全解
既約ピタゴラス数の完全解としてはユ-クリッ
、 ( )ド ディオファンタスの解 以下ユ-クリッド解
2-1A=M -N B=2MN C=M +N2 2 2 2、 、 ・
(① M>N>0、② MとNに約数はない
③ M、N どちらか奇数ならどちらか偶数)
、 、が有名であるが 全ての面でこの式をM=m+n
N=mで置き換えた次の新解が便利である。
A=n(n+2m 、B=2m(m+n))
2-2C=(n+2m (m+n)-mn) ・・・
(①nは奇数 、②mとnに約数はない)
これらの式はまた
A=n +2mn、B=2m +2mn2 2
2-3C=n +2mn+2m2 2・・・・・・・・
とも表せ、全てが和の形を取る。そしてその項の
数はA3項、B4項、C5項であり、最小のピタ
ゴラス数が(A,B,C)=(3,4,5)であ
ることも簡単に理解できる。
3.既約以外のピタゴラス数
ユークリッド解も新解も2変数の2次の項の和
でできており約数があると平方されて現れる。
m’=mr,n’=nrとして2
A=n’(n’ 2m’)=n(n 2mn)r+ +2
B=2m’(m’ 2n’)=2m(m 2n)r+ +2 2 2 2 2
C=n’ 2m’n’ 2m’ =(n 2mn 2m )r+ + + +
また新解においてnが偶数のときは、A,Bの
偶奇は入れ替わるものの新解の2倍数を表す。
n=2p、m=qとして
A=2p(2p+2q)=2(2p(p+q ))
B=2q(q+2p)=2(q(q+2p ))
C=4p 4pq 2q =2(2p 2pq q )2 2 2 2
+ + + +
従って、既約の条件を含まない新解は、既約の
平方数倍(r )または平方数の2倍(2r )の2 2
解までを含むことになる。逆にこれ以外の倍数は
含まないので全てのピタゴラス数という場合は新
解を任意の整数倍しなければならない。
4.AまたはBは3倍数
A、Bはm、n、m+n、n+2mの成分から
成る。nもしくはmが3倍数のときは、Aまたは
Bは3倍数。n、mともmod3が等しければ3
項から成るn+2mは3倍数。またmod3が異
なるときは一方が1のとき他方は2なのでn+m
は3倍数。従ってAまたはBは常に3倍数。
5.偶数辺Bは4倍数
既約の解は約数を持たないことから2 2 2 2 2 2奇数 +偶数 =奇数 、奇数 +奇数 =偶数
2しかし奇数の2乗は8倍数+1( 2w+1)(
=4w(w+1)+1、w(w+1)は連続数で
あるからどちらかが偶数)となることから、後者
は 2(4倍数+1)=偶数 となり存在でき2
ない。そこで前者を考えると
8倍数+1+(偶数) =8倍数+12
すなわち (偶数) =8倍数 となりこれを2
満たす偶数は4倍数でなければならない。
新解においてもB=2m(m+n)でnは奇数
であるからm(m+n)はmまたはm+nのいず
れかが偶数となりBは4倍数であることが解る。
6.A,B,Cのいずれかは5倍数2A,B,Cは m,n,m+n,n+2m、n
+2mn+2m の5つの成分から成るがnまた2
はmが5倍数のときはAまたはBは5の倍数。
そこでm=5k+p、n=5h+q(p、qは
それぞれにmod5)と置いたときp=qならば
5項から成るCは5の倍数。また2p=qのとき2 2 2 2は C mod 5=4p 4p 2p =10p+ +
さらにm=5k-p 、n=5h-q’でも同じ’
事がいえ q’=5-q=2p’=10-2p
すなわち 2p=5+q のときも5の倍数。
またp+q=5ではm+nを含むBが5の倍数
q+2p=5ではn+2mを含むAが5倍数
になる。表1にその関係を示すが3辺のいずれか
は5倍数である。
m n 5倍数成分 5倍数辺
5k m B
5h n A
5k+1 5h+1 Cn +2mn+2m2 2
5k+1 5h+2 Cn +2mn+2m2 2
5k+1 5h+3 n+2m A
5k+1 5h+4 m+n B
5k+2 5h+1 n+2m A
5k+2 5h+2 Cn +2mn+2m2 2
5k+2 5h+3 m+n B
5k+2 5h+4 Cn +2mn+2m2 2
5k+3 5h+1 Cn +2mn+2m2 2
5k+3 5h+2 m+n B
5k+3 5h+3 Cn +2mn+2m2 2
5k+3 5h+4 n+2m A
5k+4 5h+1 m+n B
5k+4 5h+2 n+2m A
5k+4 5h+3 Cn +2mn+2m2 2
5k+4 5h+4 Cn +2mn+2m2 2
表1 ピタゴラス数は3辺いづれか5倍数
7.A,B,A+B,A-Bのいずれかは7倍数
項の数を見るとA+B(下の式参照)は7項か
らなる。従ってm、nの mod 7が等しければ
A+Bは常に7倍数である。このことと斜辺の5
倍数から類推して規則性が予想される。
そこで表2のように分類し2 2A+B=n +4mn+2m
A-B = n -2m に入れてみるとどの辺| | | |2 2
組が7の倍数かが解る。分析するとn、mがそれ
ぞれ7倍数のときはA(イ 、B(ア)がそれぞ)
。 、 ( 、れ7倍数 またm=7k+p n=7h+q p
qはそれぞれにmod7)と置いたとき、余りが
等しいとき、すなわちp=qの場合、7項ある
m n 7倍数成分 7倍数辺組
ア 7k m B
イ 7h n A
ウ 7k+1 7h+1 A+Bn +4mn+2m2 2
エ 7k+1 7h+2 A+Bn +4mn+2m2 2
|n 2m | | |オ 7k+1 7h+3 - A-B2 2
|n 2m | | |カ 7k+1 7h+4 - A-B2 2
キ 7k+1 7h+5 n+2m A
ク 7k+1 7h+6 m+n B
|n 2m | | |ケ 7k+2 7h+1 - A-B2 2
コ 7k+2 7h+2 A+Bn +4mn+2m2 2
サ 7k+2 7h+3 n+2m A
シ 7k+2 7h+4 A+Bn +4mn+2m2 2
ス 7k+2 7h+5 m+n B
|n 2m | | |セ 7k+2 7h+6 - A-B2 2
ソ 7k+3 7h+1 n+2m A
|n 2m | | |タ 7k+3 7h+2 - A-B2 2
チ 7k+3 7h+3 A+Bn +4mn+2m2 2
ツ 7k+3 7h+4 m+n B
|n 2m | | |テ 7k+3 7h+5 - A-B2 2
ト 7k+3 7h+6 A+Bn +4mn+2m2 2
ナ 7k+4 7h+1 A+Bn +4mn+2m2 2
|n 2m | | |ニ 7k+4 7h+2 - A-B2 2
ヌ 7k+4 7h+3 m+n B
ネ 7k+4 7h+4 A+Bn +4mn+2m2 2
|n 2m | | |ノ 7k+4 7h+5 - A-B2 2
ハ 7k+4 7h+6 n+2m A
|n 2m | | |ヒ 7k+5 7h+1 - A-B2 2
フ 7k+5 7h+2 m+n B
ヘ 7k+5 7h+3 A+Bn +4mn+2m2 2
ホ 7k+5 7h+4 n+2m A
マ 7k+5 7h+5 A+Bn +4mn+2m2 2
|n 2m | | |ミ 7k+5 7h+6 - A-B2 2
ム 7k+6 7h+1 m+n B
メ 7k+6 7h+2 n+2m A
|n 2m | | |モ 7k+6 7h+3 - A-B2 2
|n 2m | | |ヤ 7k+6 7h+4 - A-B2 2
ユ 7k+6 7h+5 A+Bn +4mn+2m2 2
ヨ 7k+6 7h+6 A+Bn +4mn+2m2 2
表2 のいずれかは7倍数A,B,A+B,A-B
A+B=7p (ウ、コ、チ、ネ、マ、ヨ) であ2
りA+Bは7倍数。2p=qで
A+B=4p +8p +2p =7(2p )2 2 2 2
これはp=-3、-2、-1,1,2,3
で成り立つ (エ、シ、ト、ナ、ヘ、ユ 、。 )
またp+q=7ならば m+n=7倍数(ケ、
ス、ツ、ヌ、フ、ム 、2p+q=7、14なら)
ばn+2m=7倍数(キ、サ、ソ、ハ、ホ、メ)
またA-B= n -2m はA+Bとの入れ子構| |2 2
造を持っており、まずn>2mでn=N+2mと
おけばN +4mN+2m となりN=n-2mの2 2
余りとmの余りが等しいとき、もしくはNの余り
( 、 、がmの余りの2倍のとき7の倍数となる オ カ
タ 。また2m>n>mではnと√2mの大小に)
かかわらず置き換えはできない最小形であるが
n -2m は7倍数となる(テ、ニ、ミ 。| |2 2 )
次にn<√2mの場合はm=M+nとおけば、
n +2Mn+2M となりM=m-nの余りとn2 2
の余りが等しいとき、もしくはnの余りがMの余
りの2倍のとき7の倍数となる(ケ、タ、ニ、ヒ
モ、ヤ 。)
8.C+A,C-Aのいずれかは8倍数
斜辺+奇数辺または斜辺-奇数辺は常に8倍数
となる。これはこれまでと比較するとC+Aの項
。の数が5項 3項=8項あることと関係している+
C+A=n +2mn+2m +n +2mn2 2 2
2=2(m+n)2また C-A=2m
ここでnは奇数であるから、m、m+nのいず
れかは偶数。2×偶数 は8倍数であるから2
C+A,C-Aのいずれかは8倍数である。
9.C+B、C-B、B のいづれかは8倍数2
C+Bには項が5項+4項=9項ある。9倍数
は3倍数と関係し、C+B=(n+2m) 、C2
-B=n とともに平方数なのでAが3倍数のと2
きはAの成分をなすC+B、C-Bいずれか9倍
数、Bが3倍数のときはB は9倍数となる。2
10.ピタゴラス数ネット
ピタゴラス数の垂直な2成分を縦軸と横軸にと
図1 ピタゴラス数ネット(放物線仕様)
ったグラフにピタゴラス数を配列すると、左右上
下に開く放物線群が見えてくる。このA軸方向へ
広がるグラフ(図1では左右のグラフ)はユーク
リッド解( 式)で、上へ広がるグラフは新解2-1
( または )式で得られる。また下へ広がる2-2 ,2-3
、 ( )式は任意整数m nを用い 全てを とする10-1
ⅰ)n>2mの場合
A=n(n-2m 、B=2m(n-m))
ⅱ)2m>n>mの場合
A=n(2m-n 、B=2m(n-m))
ⅲ)m>nの場合
A=n(2m-n 、B=2m(m-n))
のいずれかで与えられる。このとき斜辺Cは全て
C=n -2mn+2m である。2 2
これらの中の 式でMを変数Nを定数とすれば2-1
A=(1/2N) B -N → 右開きの放物線2 2 2
式でNを変数Mを定数とすれば2-1
A=N -(1/2M) B → 左開きの放物線2 2 2
式でmを変数nを定数とすれば2-2
B=(1/2n )A -n /2→上開放物線2 2 2
式でmを変数nを定数とすれば10-1
B=n /2-(1/2n )A →下開放物線2 2 2
の放物線群の式が与えられる。
11 斜辺2 (4w 1)倍のピタゴラス数ネット. +i
斜辺はユークリッド解に従えばC=M +N の2 2
奇数であるがこれを充たす素数は4v+1(vは
任意整数)で表される。これは2平方の定理であ
り、この条件を充たす素数R をピタゴラス素数0
と仮称する。
M,Nの一方は偶数、一方は奇数であり、偶数平※
方は4倍数、平方奇数は8倍数+1である。
ところでCが5倍数のピタゴラス数ネットにお
いて m =5(h+1/2 ,n =5kで表さ0 0)
れる点A n (n 2m ) B 2m (m n )0 0 0 0 0 0 0 0= + = +、
を中心に、数種の閉曲線が浮き出し、その数列か
ら逆算して最初の閉曲線として
n-n +2 m-m n-n +2 m-m /2 11-1( ) ( )( ) ( ) =5 ・0 0 0 02 2
を得る。これを図2に示す。
なお 式でn-n =X、m-m =Yとおく11-1 0 0
11-2と、 X +2XY+2Y =5/2・・・・2 2
となる。この左辺がピタゴラス数の斜辺と同じ形
図2 斜辺Cが5倍数のピタゴラス数ネット
式をとるのは興味深い。ところで図2をよく眺め
るとその外にもうひとつ閉曲線が見える。
これを描かせる関係は、右辺にさらに5を掛け
11-3X +2XY+2Y =5・5/2・・2 2
図3 X +2XY+2Y =5・5/2のグラフ2 2
ここから、いろいろな素数をV.B.で試し
11-4X +2XY+2Y =RH/2・・・・・2 2
ただし m =R(h+1/2 ,n=kR0 )
(h、kは任意整数)を得る。
ここで R=2 (4w 1)であり、その中にi +
はピタゴラス素数(4v+1)も含まれる。また
HはRの同族で2 (4z 1) と表される。j +
さてRを決定する方法はまず 式をユ-ク11-4
リッド解に書き直すと M=m+n、N=m、
M =m +n 、N =m 、Z=X+Yとして0 0 0 0 0
11-5Z +Y =RH/2・・・・・・・・・・2 2
= - + - =2RH (2M 2M ) (2N 2N )0 02 2
2 2(2M R(2(h k) 1)) (2N R(2k 1))- + + + - +
この式をs=2(h+k)+1(奇数 、t=)
2k+1(奇数 (s>t)と置き換え展開し)、
( ) ( ( s t) ) ( ) 0R t +t -2 2 M +N +H R+4 M +N =2 2 2 2 2
これをRについて解くと、根の公式より
2(Ms+Nt)+W±√D11-6R=─────────────・・・
2 2s + t
ここで、判別式
D (2(Ms Nt) W) 4(M N )(s t )= + + - + +2 2 2 2 2
を考えると、Rが整数になるための必要条件は
D≧0で平方数である。また同じく必要条件とし
て 式の分子がs +t で割りきれねばなら11-5 2 2
ない。これをV.B.で検索して出てきた数字が
R=1,2,4,5,8,9,13、16、17
・・であり一般的(経験式)にR=2 (4w 1)i +
で表せる。以下にその例を示す。
図4 C=1w 1倍数ネット
図5 C=2w 2倍数ネット
図6 C=4w 4倍数ネット
図7
C=5W
R=5、
H=5・5
のネット
図8 C=13W R=13、H=1、5、9、13
図9C=17w、R=17、H 1、5、9、13、17=
図10 C=29w、R=29、
H=1、5、9、13、17、25、29
12.A+B、A-B=7w、17wの
ピタゴラス数ネット
A+B、A-Bの7倍数と斜辺Cの5倍数とを
対応させると似ており、ここにも素数倍を連結さ
せるピタゴラス数ネットが現れないかを確かめて
みた。予想はR=7,17,23,31・・とな
り、今のところR=8w±1を充たす素数に限ら
れそうである。7と17についてはその式も導い
てみたのでグラフとともに載せる。
(1)A+B=7倍数のピタゴラス数ネット
X +2XY+(5/3)Y =35/122 2
(11/2)X +4XY+Y =35/82 2
の2式で与えられる。ただしX=n-n 、Y=0
m-m 、n =kR、m =R(h+1/2)0 0 0
図11から明らかなように、斜辺の場合の線対
称性はなく180°の回転対称性のみである。
図11 A+B=7倍数のピタゴラス数ネット
(2) A-B =7倍数のピタゴラス数ネット| |
X -2XY+(5/3)Y =35/122 2
(11/2)X -4XY+Y =35/82 2
の2式で与えられる。ただしX、Y、n 、m は0 0
(1)に同じ。図12から明らかなように、
図12 A-B =7倍数のピタゴラス数ネット| |
図13 A -B =7倍数のピタゴラス数ネット| |2 2
図11と回転対称性の方向が逆である。二つを重
( ) 。ねたもの A -B =7倍数 を図13に示す| |2 2
(3)A+B=17倍数のピタゴラス数ネット
X +2XY+(11/5)Y =221/202 2
(29/6)X +4XY+Y =221/24の2 2
2式で与えられる。ただしX=n-n 、Y=m0
-m 、n =kR、m =R(h+1/2)0 0 0
これも180°の回転対称性のみで線対称では
ない。またほかの曲線(ピタゴラス数ネット)が
生まれる余地が十分に残されている。
図14 A+B=17倍数のピタゴラス数ネット
(4)A-B=17倍数のピタゴラス数ネット
X -2XY+(11/5)Y =221/202 2
(29/6)X -4XY+Y =221/242 2
これも回転対称性がA+Bと逆転している(図1
5 。二つを重ねたもの( A -B =17倍数)) | |2 2
を図16に示す。
図15 A-B=17倍数のピタゴラス数ネット
A -B =17倍数のピタゴラス数ネット図16 | |2 2
13.参考文献
ピタゴラス数ネット 文芸社 山本文隆
ピタゴラス数ネット 数学文化2012
日本数学協会 山本文隆
フェルマーの定理偶数乗の試証 山本文隆
http://www.geocities.jp/fumitaka125/felma.pdf