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The world leader in serving science エレメンタルセミナー2018 サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社 分科会2-A パネルディスカッション: 元素分析のサンプル前処理~あなたならどうする?後半~

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The world leader in serving science

エレメンタルセミナー2018 サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社

分科会2-A パネルディスカッション: 元素分析のサンプル前処理~あなたならどうする?後半~

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• このセッションでは、食品や金属試料にフォーカスし、AAやICP発光測定に適した試料前処理方法をご紹介するとともに、測定時の留意点に対してディス カッションします。

ディスカッションテーマ ~イントロダクション~ 試料溶解方法について(参考資料) ① 酸分解処理における試薬の選択と処理条件の決定方法について ② 測定値の信頼性 ③ ヒートブロック処理とマイクロウェーブ処理 ④ 分子認識樹脂を使用した前処理した前

本講演の内容

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① どのような分解方法があるの? ② 密閉分解と開放分解、使い分け方は? ③ 主に使用する器具や試薬は? ④ 注意点や問題点は?

イントロダクション:試料溶解方法について(参考資料)

キーワード:乾式分解、湿式分解(密閉、開放)、溶融法

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試料分解方法

乾式分解(乾式灰化) バーナー直接加熱、電気加熱炉、マイクロ波アシスト乾式灰化システム(石英るつぼ)

湿式分解(湿式灰化) 開放系還流分解 ホットプレート+コニカルビーカー+時計皿 ヒートブロック+分解チューブ+時計皿 ケルダール分解装置 密閉系加圧分解 ステンレスジャケット式テフロン密閉分解容器 ポリプロピレンジャケット式テフロン密閉分解容器 マイクロ波アシスト自動加圧分解容器

融解法 白金、グラファイトるつぼを用いた溶融、バーナーによる直接加熱、電気加熱炉

引用:ジーエルサイエンス様 JAIMA2006 新技術説明会

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衛生試験法の中の 食品汚染物質試験法で採用

乾式分解(乾式灰化)

酸(試薬)を使わずに、酸素と熱で有機物を分解

試薬なし 試薬あり

電気加熱炉 マイクロ波加熱 数時間処理 数分処理

対象元素 Zn、Cd、Cr、Co、Cu、Pb など

揮発しやすい元素は、500℃までゆっくりと加温する必要がある

引用:ジーエルサイエンス様 JAIMA2006 新技術説明会

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湿式分解(湿式灰化)

酸(試薬)と熱で

マトリックスを分解 目的元素の測定を 妨害しない

目的元素を溶液化

定量精度を下げてしまう原因 ・揮発、沈殿、加水分解 ・操作ブランク

引用:ジーエルサイエンス様 JAIMA2006 新技術説明会

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融解法

酸分解法

不溶化難分解物生成

加圧密閉分解が困難

酸化物PbO、BaTiO3 など

難溶性沈殿物

鉱石、セラミック など

融点が高い試料

白金るつぼ グラファイト

溶融剤

酸性融解

アルカリ融解

400~1200℃

引用:ジーエルサイエンス様 JAIMA2006 新技術説明会

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• 試薬の選択と処理条件の決定方法における特徴と注意点を解説します。 ① 分解に使用する酸の種類と特徴は? ② 酸を扱う際の注意点は? ③ 分解容器の材質の選択方法は? ④ 効率良く分解するためのノウハウは?

ディスカッションテーマ1:試薬の選択と処理条件の決定方法について

キーワード:塩酸、硝酸、フッ化水素酸、金属元素との相性、沈殿、揮発、不溶解

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酸分解における酸の働き

酸の種類 酸化力 特徴 塩酸 (HCl) -

酸化力はない。Hよりイオン化傾向が高い物を溶解。 還元力を有す。Clが金属と錯体形成。Sn、Sb、Te安定

硝酸 (HNO3) ○

多くの金属溶解に適している。Al、Crは不動態化。 Sn、Sb、Teなどは加水分解により沈殿生成。

硫酸 (H2SO4) △

濃硫酸は酸化力があるが、希硫酸は酸化力がない。 高温での濃硫酸は極めて強力。粘性が高い。沸点が高い。

過塩素酸 (HClO4) ◎ 常温では酸化力はないが、高温下で極めて強い酸化力を有する。

グラファイトの分解。爆発性があり危険。硝酸存在下で使用する。

フッ酸 (HF) -

ガラスなどのケイ酸化合物の分解に有効。酸化力はないので、硝酸と併用する。Fが金属と錯体を形成する。 W、Mo、Ti安定

王水 ◎ 市販の濃塩酸と濃硝酸の混合液。塩酸:硝酸=3:1 酸化力が強い。貴金属の溶解に適している。

引用:ジーエルサイエンス様 JAIMA2006 新技術説明会

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開放系湿式分解における最適温度、分解容器と取扱い注意点

酸の種類 沸点 (℃)

最適 分解温度

(℃)

最適 分解容器 沈殿元素 揮発元素

HCl 110 80以下 PP、テフロン ガラス、石英 Ag、Hg As、Sn、Se

HNO3 120 80~120 PP、テフロン ガラス、石英 Cr、Ti

H2SO4 320 230以上 ガラス、石英 Ba、Pb、Cr

HF 70 95以下 PP、テフロン Y、Al Ge、Si

HCl/HNO3 200 95~110 PP、テフロン ガラス、石英 Nb、W、Mn

H2SO4/HNO3 1st 200以上 2nd 80~120 ガラス、石英

HNO3/HClO4 145~200 ガラス、石英

引用:ジーエルサイエンス様 JAIMA2006 新技術説明会

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• サンプル:ケイ酸アルミニウム(Al2SiO5) • 酸試薬の選択:H2SO4 + H2O + HBF4

• ケイ酸塩はHFに可溶、Al2O3成分は希硫酸に可溶 →ただし、共存Al成分がAlF3となり沈殿を生じる・・・ • HBF4にてAlF3の生成を回避できる チタン酸バリウム(TiBaO3)、ケイ酸カルシウム(Ca2SiO4)の完全溶解にも有効な手段

酸試薬の組み合わせ

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• ろ過、定容操作の前に…サンプルの分解度合いをチェック!

• 未分解残渣(固体)がないこと*沈殿物・浮遊物などある場合 →多量の場合には、処理条件を再検討する(温度条件、サンプル量過多) →酸試薬が適していない(不溶性塩の生成、添加量不足) →複数の化合物を含むサンプルへの対応(混酸の使用 ex:HNO3+HF)

• 分解液に高粘度・懸濁がないこと →特に高分子有機化合物(プラスチック、ゴム、製剤など)で生じやすい →注入直後・定容後の静置で白濁・白色沈殿が生成

酸分解処理後の完全溶解の見分け方

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• 酸の選択や添加量以外にも…サンプルの微細化が重要!

• 溶出や溶解は、試料と酸が接触する面積と時間によって差が生じる →微細化、均質化することで完全溶解を可能にし、分析値のばらつきを抑制する

• 均質化や微細化に適した手法や器具は?

• サンプル量と酸の添加量の関係性は?

固体試料の分解ノウハウ

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キーワード:コンタミネーション・操作ブランク・物理干渉・添加回収試験

• 測定値の正確性に自信ありますか?真値の求め方、確認方法について解説します。 ① 操作ブランクの役割は? ② 添加回収試験のタイミングと回収率からわかることは? ③ 認証標準物質について

ディスカッションテーマ2:測定値の信頼性

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前処理操作に用いる器具類からの汚染

試薬添加 MW分解 定容操作 溶液保存 試料採取 測定装置

容器洗浄

いろいろなところに、汚染原因は潜んでいます

操作環境 分析者

• 操作からの汚染 • サンプリング、試薬の採取、ピペットの取扱い、メスアップ、容器の管理 etc.

• 器具・試薬からの汚染 • 薬さじ、薬包紙、マイクロピペット、ピペットチップ、MW容器、ビーカー、メスフラスコ、試薬純度、試薬ボトル、純水瓶、保存瓶 etc.

• 分析者/服装からの汚染 • 白衣・手袋などの保護具、靴、髪の毛・皮膚、呼気、たばこ、化粧品、アクセサリー etc.

• 設備/雰囲気からの汚染 • MW装置、電子天秤、純水製造装置、クリーンルーム、ドラフト設備、試薬庫 etc.

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• 保存容器からの元素溶出の度合い (1)新品の状態 (2)超純水に21日間浸漬後

器具からの汚染

出典 : R.C.Richter, J.A.Nóbrega, C.Pirola THINK BLANK p.35 (2016)

単位:ng/L

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サンプル酸分解処理後の反応容器からの汚染

加熱温度220℃で繰り返し使用した PFA樹脂製容器の劣化事例

TFM容器内壁に付着した 未分解残渣(樹脂試料)

TFM樹脂製容器 : 高い耐酸性・耐熱性を有する (使用最高温度 250℃) ※セグメンテッド高圧ローター HPR-1000/10の場合

⇔繰り返し使用に伴う汚染の蓄積・劣化の恐れ

⇔サンプルの未分解残渣由来のメモリ

⇔汚染によるブランクの高値または不安定化

繰り返し使用に伴い、 酸試薬が吸着されたTFM容器

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• 試料に既知濃度の標準試料を添加し、同様の操作で試料前処理、測定を行い、回収率をもって分析の妥当性を評価、担保する方法。

• 一般的に、試料中に含有していない、または微量に含有している元素に対して有効である。高濃度に含有している元素には不向き。

添加回収試験

標準添加のタイミング 回収率からわかること 対処すべき事象 試料前処理前 前処理段階での沈殿・飛散

コンタミネーション 前処理方法の再検討

前処理終了後 定量方法の妥当性 酸濃度の影響 装置コンディショニング

定量方法の選択 装置の最適化

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• 分析機器の校正、分析方法の評価など、 化学計測における測定値を決定するために必要な正確に値付けされた試料のこと。

• 認証標準物質は、多種多様なものが頒布されているので、実試料と同じ(又は似通った)マトリクスで、且つ測定を行う元素の含有濃度が近いと予想されるものを選択し分析することで、分析手法(前処理~測定)の妥当性や技量を評価することができる。

認証標準物質

引用:計量標準総合センター(NMIJ) HPより

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ディスカッションテーマ3:ヒートブロック処理とマイクロウェーブ処理

• ジーエルサイエンス株式会社 様によるトピックス紹介 ① 食品の分解(ヒートブロックを利用する手法) ② プラスチックの分解(マイクロウェーブを利用する手法)

キーワード:食品、プラスチック、ヒートブロック、マイクロウェーブ

ジーエルサイエンス株式会社 テクニカルマーケティング課 無機分析プロダクト 古庄義明

無機分析前処理効率化に貢献する

酸分解システムのご紹介

酸分解専用装置 DigiPREP シリーズ (Jr.・MS・LS) の 特徴

PTFEコーティング型 高純度グラファイトブロック (室温~160 ℃)

ディスポーザブルPPチューブ対応

耐酸性樹脂材料採用

多段階昇温対応コントローラー

液面センサー

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高純度ポリプロピレン(PP) 製 分解チューブ DigiTUBEs

✔ 高純度PPを材料とした湿式分解用チューブ (室温~ 110 ℃まで利用可能)

✔ 15 mL ・50 mL・100 mLメスメモリ (ASTM クラスA保証)

✔ 使い捨て時計皿と併用した湿式灰化が可能 (50 mL・100 mL 用DigiTUBEs)

✔ ラックロック機能 (片手で蓋の開閉ができる機能)

✔ 保証書添付 (原材料についての保証)

✔ 洗浄してから使用しましょう (洗浄方法についての詳細は次回勉強会にて)

15 mL 50 mL 100 mL

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酸分解用容器(チューブ)ラインアップ

50 mL 100 mL

ポリプロピレン製チューブ

✔ 比較的低ブランク(原料ペレットに依存&事前洗浄方法が重要) ✔ 安価(数十円~/本:使い捨て前提) ✔ ~105 ℃以上では使用不可(塩酸・硝酸・フッ酸まで) ✔ 容器の移し替え無く分解後に定容可能(目盛り精度による)

PTFE製チューブ

✔ 低ブランク ✔ 高価(数千円~/本) ✔ ~250 ℃程度まで耐えられる(過塩素酸まで) ✔ 視認性は悪い(半透明のPFAでも作成可能(超高額))

ガラス製チューブ

✔ ブランクに注意(Si・Na・K・Bなど)。気になる場合は石英製。 ✔ 比較的高価(数千円) ✔ ~450 ℃程度まで使用可能(硫酸も可能) ✔ 割れる

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グラファイトブロックにPTFEコートをすることで、装置に対する酸の侵食が防げますし、コンタミリスクも減ります。表面の汚れも除去しやすいというメリットもあります。 (大前提は「加熱ブロック表面には金属部品が存在しない事」です。)

ヒーター

グラファイトブロック

酸 酸 酸 酸

金 金

酸分解用ヒートブロックシステムの特徴

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酸分解システム DigiPREP シリーズ

塩酸・硝酸・フッ酸が主の分解(~160 ℃:使用温度や酸の種類で、分解容器の材質を選ぶ必要があります)

過塩素酸・硫酸を用いる分解(~380 ℃)

DigiPREP HT 250 10 Position (10検体用)

高純度グラファイトブロック採用 ガラス分解チューブ 250 mL 石英分解チューブ 250 mL (オプション) タッチスクリーンコントローラー対応 (耐熱上PTFEコートはされていません)

DigiPrep 用 コントローラー

DigiPrep Jr. DigiPrep MS DigiPrep LS

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高温対応型ヒートブロックシステム

(耐熱上PTFEコートはされていません)

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100 ℃ 200 ℃ 300 ℃ (塩酸・フッ酸・硝酸) (過塩素酸) (硫酸)

PP製

PTFE系

ガラス・石英

Jr./MS/LS/HP

HT

フッ酸×

フッ酸×

過塩素酸 硫酸 塩酸・フッ酸・硝酸

チューブと加熱装置がフォローできる温度域

沸騰させる場合 ? →

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中温対応型ヒートブロックシステム MetaPREP AT-2

✔ 最高温度 230 ℃付近 まで加熱設定可能 PTFE容器の限界温度

硫酸を用いた分解検討ができる

✔ PP・PTFE・ガラスチューブ対応 ✔ グラファイトヒートブロック + PTFEコート ✔ プログラム昇温可能

2019 リリース

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NEW DigiPREP 200 Series

• 200℃ 分解に対応 • テフロンコーティング 高純度グラファイトブロック • 酸の電子制御部への漏れこみを防止 • コーリアン耐酸性の枠を簡単に取り外し可能、メンテナンス向上

2019 リリース

NEW DigiPREP MS 240 Custom Block Digestion System

• Custom Teflon vessel ALS • 50ml PFTE DigiTUBEs

240℃ までの加熱に対応、カスタムブロックに対応 2019 リリース

高スループット! NovaWAVEは容器を開放することなく分解試料の状態を視認できますので、分解不十分な場合でも直ちに再処理を行えます。また、分解後の試料を迅速に冷却できる機構となっております。

注)PTFEチューブ使用時は目視できません。また冷却時間は室温などの影響により前後します。

分解終了試料は自動的に排出

試料の状態は視認できます

マルチメソッド対応マイクロ波アシスト自動分解システム NovaWAVE (ノバウェーヴ)

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手順1 サンプル及び酸を入れた 容器をラックにセット

手順2 安全キャップを含む 上部セクションをセット

手順3 各検体の安全キャップを 手で締めて準備終了

NovaWAVE専用サンプルラックは特別な器具を使わずに手で簡単にセットすることができるため、12本の容器でも短時間で容易に準備できます。

サンプルセットが極めて容易!

マルチメソッド対応マイクロ波アシスト自動分解システム NovaWAVE (ノバウェーヴ)

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マルチメソッド対応マイクロ波アシスト自動分解システム NovaWAVE (ノバウェーヴ)

異なる分解条件の同時分解が可能! NovaWAVEはマグネトロンを12個搭載しているため、各サンプル容器に個別のマイクロ波を照射することが可能です。全く異なる分解条件が必要な試料を1バッチで処理する事ができるため、お客様の作業効率をはるかに改善します。

Sample A-1

Sample A-2

Sample B-1

Sample B-2

Sample C-1

Sample C-2

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キーワード:固相抽出・高選択性分子認識樹脂・濃縮・マトリックス除去

• ジーエルサイエンス株式会社様 によるトピックス紹介 ① 固相抽出剤を利用した無機イオン分離とは?(どのような場面に有効か) ② 高マトリックス試料の主成分除去方法(具体例を交えて)

ディスカッションテーマ4:分子認識樹脂を使用した前処理

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• 固相分離剤の特徴 • 目的元素(成分)の抽出、濃縮 • 脱塩操作 • 形態、価数による分離

キレート樹脂固相分離剤の利用目的

目的元素(成分)の抽出、濃縮 脱塩操作(Na、K、Ca、Mg ) キレート樹脂固相

目的元素

共存塩類

キレート剤

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キレート樹脂固相抽出法を用いた前処理フロー例

試料

コンディショニング

試料通水

洗浄

溶出

定容

メタノール 硝酸 精製水 酢酸アンモニウム

酢酸アンモニウム 超純水

酢酸アンモニウム

pH 5.6

硝酸(pH 1.0) 超純水

JIS K 0102 工場排水試験法

Fe高選択性分子認識樹脂 AnaLig TE-08の適用例

鉄鋼サンプルへの手法

AnaLig TE-08 による Fe除去

AnaLig TE-081500mg/12mL

コンディショニング 1 mol L -1 HCl 50 mL

試料負荷 10mL

初めの5 mLを廃棄

以降通液をサンプル

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

1800

SUS316 分解液 TE08 通過 5-10 mL

Fe 259.940 nm

AnaLig TE-08 による Fe除去率

除去率 99.85%

SUS316分解液 TE-08 選択性

Fe以外にMoが除去された。

SUS316分解液 TE-08 添加回収

添加条件

SUS316 0.1 g /50 mL に XSTC 622 0.1 μg/mLとなるよう添加