1.墨付け(2011.4.23修正・補充)4...

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1 異方性四方転び(振れ隅)胴付きの墨付けと加工(加工方法増補 2011.11.20) 椅子の後脚が前方に開き、笠木が前後に傾いた接合部の枘組みの墨付けと加工で採用して いる方法です。(応用例→http://www.mokkou-atorie-y.com) 柱建てについても、上記サイトへ別報を公開しました。2014.6.1] 1.墨付け(2011.4.23 修正・補充) 上端胴付き角 ݐ ߴ= 1 ݏ ߙݐ ߚ(α=βの時は規矩術の短玄の勾配の転びになる) 向こう胴付き角 ݐ ߴ= 1 ߙݏݐ ߚ(α=βの時は規矩術の長玄の勾配の転びになる) ݐ ߴ= ݐ ߙcos ߚݐ ߴ=1/ ݐ ߙ ߚݏt板厚 1+ ݏ ߙݐ ߚw板幅 1+ ݏ ߙݐ ߚから計算する。 :詳細は上記ウェブサイトの資料「規矩術の数学」参照 数式に従い電卓で手計算するか、またはCADを使う。 2.加工(2011.11.20 次頁以下増補) 右図の2種角度の 木製治具の向きを前後 左右変えて重ね合わせて 使い、鋸刃を定盤に 直角に立てた鋸盤で、 四方胴付き面はyz面内、 胴付き面に直立する枘は xz面内で切削。 (柱建て異方性四方ころびも同じ治具で加工出来るが、この場合は予め、部材の柱の断面 の隅角を b a b a J tan tan / tan tan 1 tan 2 2 1 + + = (とその補角)に成形しておく(:クセ を取る)。柱建てについても、上記サイトへ別報を公開しました。2014.6.1]

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Page 1: 1.墨付け(2011.4.23修正・補充)4 四方ほぞの各部の面に下図の記号をつける。 以下の加工図は鋸刃を傾けた場合である。同じ効果をもたらすテーブル傾斜でも同様であ

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異方性四方転び(振れ隅)胴付きの墨付けと加工(加工方法増補 2011.11.20)

椅子の後脚が前方に開き、笠木が前後に傾いた接合部の枘組みの墨付けと加工で採用して

いる方法です。(応用例→http://www.mokkou-atorie-y.com)

[柱建てについても、上記サイトへ別報を公開しました。2014.6.1]

1.墨付け(2011.4.23 修正・補充)

上端胴付き角 =−1 ⁄ (α=βの時は規矩術の短玄の勾配の転びになる)

向こう胴付き角 = 1 ⁄ (α=βの時は規矩術の長玄の勾配の転びになる)

= cos⁄

=1/ t=板厚 x 1 + w=板幅 x 1 + から計算する。 :詳細は上記ウェブサイトの資料「規矩術の数学」参照

数式に従い電卓で手計算するか、またはCADを使う。

2.加工(2011.11.20 次頁以下増補)

右図の2種角度の

木製治具の向きを前後

左右変えて重ね合わせて

使い、鋸刃を定盤に

直角に立てた鋸盤で、

四方胴付き面はyz面内、

胴付き面に直立する枘は

xz面内で切削。

(柱建て異方性四方ころびも同じ治具で加工出来るが、この場合は予め、部材の柱の断面

の隅角を  babaJ tantan/tantan1tan 221 ++= (とその補角)に成形しておく(:クセ

を取る)。[柱建てについても、上記サイトへ別報を公開しました。2014.6.1]

Page 2: 1.墨付け(2011.4.23修正・補充)4 四方ほぞの各部の面に下図の記号をつける。 以下の加工図は鋸刃を傾けた場合である。同じ効果をもたらすテーブル傾斜でも同様であ

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以下増補 2011.11.20

一組の部材のうち、枘穴を掘る方を部材A(前頁の上図の「脚」)、枘を挽く方を部材B

(同図の「笠木」)、とする。

[部材Aの加工]

前頁に従って胴付き面の四辺形を墨付けする。この四辺形の上下の辺(=部材Aの長手方

向(繊維方向)に近い辺)に平行で、両端はこの辺に直角の矩形の枘穴を、板表面に垂直

に掘る。(角鑿盤で板をθ 傾けて自然に掘った状態。)

この説明では胴付き面の四辺形が部材Aの長手方向に長くなっているが、じょうご形構造

のように胴付き面の四辺形が部材Aの長手に直角方向に長い場合(下図)も、枘穴の長手

方向は同じで、角鑿盤での加工も上記に全く同じ。ただし枘は多数枚になる。

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[部材Bの加工]

ページ1に図示した加工法に、鋸刃の傾斜、またはそれと同等のテーブルの傾斜を組合わ

せると、より単純な以下の加工法が得られる(理屈の証明は後述)。

●必要な治具

(1)角度板と部材を保持する保持定規 右図

(2)角度板 3種

角度板1=角度θ − 90 のもの:角度θ はページ1に記述の式、

角度板2=角度90 − θ3のもの:角度θ はページ1の式

角度板3=γのもの(γは下式で計算される)、

tanγ = tanβ cos : はページ1の式

角度板1=角度θ − 90 角度板2=角度90 − θ3 角度板3=角度γ

(鋸刃やテーブルを傾斜させないで、角度板で部材を傾ける場合はさらにもう 1種、

角度板4=角度δ のもの (δは下式で計算される)

tanδ = tanβ cos : はページ1の式 )

角度板4=角度δ

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四方ほぞの各部の面に下図の記号をつける。

以下の加工図は鋸刃を傾けた場合である。同じ効果をもたらすテーブル傾斜でも同様であ

るが、この場合は角度板と部材と保持治具を一緒に鋸刃の反対側に移す(下図)。

鋸刃もテーブルも傾斜させないで、保持定規の下に対応する角度板3または4を貼って部

材を傾けても同じ結果が得られるが、この場合は加工できる部材の大きさや傾き角に制約

が生じる。

●胴付き面の加工

ページ1に従って、切込線を

墨付けする。

各面の切削前に、鋸刃面と

墨付け面との一致(平行と

位置)を確認する。

胴付きzb面、およびza面

鋸刃を鉛直方向から左へ角度γ

だけ傾け、

角度板1と部材を保持定規内

に押付けながら、鋸盤定盤の

上を鋸軸に直角に前方に押す。

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胴付きyb面、およびya面

鋸刃を鉛直方向から左へ

角度δだけ傾け、

角度板2と部材を保持定規内

に押付けながら、鋸盤定盤の

上を鋸軸に直角に前方に押す。

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●枘挽き

ほぞzt、yt面

昇降盤のほぞ取り装置を使い、鋸刃は

傾斜しない。

保持定規の底に角度板3を両面テープ

で貼りつけ、角度板1と部材を保持

定規内に押付けながら、

補助テーブル上を鋸刃方向へ押し

出す。

右の各面での2つの図は、下が切削部

の図、上はそれを反対方向から見た図。

(青矢印が部材の送り方向)

ページ2のじょうご形の継ぎ手は

右図で部材の厚みが幅より大きい場合

にあたる。多数枚ほぞの最外側面とその

間の面は(間隙を含めて)右上zt面

の図で加工する。

段差のあるyt面は枘ごとにzt面に

直角に手加工する。

(胴付きya、yb面は前ページ図で

加工。)

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補足説明

直観的に納得し易いページ1に図示した加工方法と、ページ3以下の方法は原理的に同等

である。証明は下記の通り。

方向の定義

x方向:鋸軸の方向=部材Bの長手方向(繊維方向)

y方向:鋸刃の傾斜の軸=傾けるテーブルの回転軸方向=部材Bを送る方向=部材Aの長

手方向(繊維方向)

z方向:鉛直方向

x座標軸の周りに座標軸の向きに沿って見て時計まわりに だけ回転した場合、部材の各稜

を表すベクトル成分(x、y、z)は3行3列の行列 ( )をかけたものに変わる(別資料

「規矩術の数学」の p.9)。同様のy座標軸の周りの時計まわり回転βの行列を (β)で表

す(同資料)。z座標軸の周りの時計まわり回転 は

( ) = cos − sin 0sin cos 00 0 1

で与えられる。

ページ1に図示した加工法は、xy面内に寝た部材Bをx軸周りに だけ回転 → y軸周

りに−β回転 → x 軸周りに− 回転 であるので、全体を通して3つの対応行列の積 (− )・ (−β)・ ( )をかけたものに稜のベクトル成分が変わる。

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ページ3からの加工法はxy面内に寝た部材Bをz軸周りにθ−90だけ回転 → y 軸

周りに−γ回転(実際は鋸刃かテーブルを傾けているが、本質は同じ) であるので、全体

としは 2つの対応行列の積 (−γ)・ (θ − 90 )をかけたものに稜のベクトル成分が

変わる。

これら2つの行列積を計算して、θ、γ、 を既述の式で 、βに書き換えると

どちらからも

= cos − sin sin − cos sinsin sin ⁄ cos ⁄ 0cos sin cos ⁄ − sin cos ⁄

ただし C = +

が得られる。

すなわち、

(− ) ・ (−β)・ ( ) = (−γ)・ (θ − 90 )

であり、部材Bと鋸刃との位置関係は両加工法で全く同じになっている。

ちなみに α=20°、β=40°の時 θ1=106.0°→ 角度板 1=16.0°

θ3=51.7° → 角度板2=38.3°

θ4a=25.4°

θ4b=74.4°

γ=37.2°

δ=12.7° になる。