寄付研究部門の活動概要報告

人工物工学研究センター価値創成イニシアティブ（住友商

事）寄付研究部門　 武田 英明

概要• 名称：価値創成イニシアティブ（住友商

事）寄付研究部門– Value Creation Initiative (VaCI)

• 期間： 4 年 4 ヶ月（当初計画より 1 年延長）– 2005 年 12 月～ 2010 年 3 月

• スタッフ（枠）：教授１，准教授１，助教４

スタッフ2005.12 2006.4 2007.4 2008.4 2009.4 2010.3

教授　　武田 英明

准教授　藤井 信忠

助手／准教授　　　　　　竹中　毅准教授　石井正道

助教　森下壮一郎 助教　福原 知宏

助教　鈴木 正昭

助教　鬼頭 朋見

助教　藤井 秀樹

客員研究員　　　　歌原昭彦

2007.9

2007.12

2008.5 2008.8

2009.5

研究活動の概要

設立目的：価値創成イニシアティブ• 21 世紀初頭の現在、国や地域を超えた地球規模での経済活動、い

わゆるグローバリゼーションの進行に伴い、価値観が多様化し固定的な価値観に基づく活動は変更を余儀なくされている。そして、価値がいまや操作対象となり、いかに新しい価値観を生み出すかが経済活動のひとつとして認められつつある。

• このような価値観の流動化は人工物の設計、生産、利用と深い関わりをもつ一方で、価値観は存在する人工物や組織といった環境の中での人々の活動によって形作られる。すなわち、存在する人工物の体系が価値観を育み、人工物の多様化は価値の多様化と相互に関係している。

• 人々の作る組織も同様な関係をもっている。現在、組織構造は旧来の階層的かつ固定的構造から自律分散かつ動的なネットワーク構造へと急速に変化を遂げている。多様な価値を許容しうる構造が必要であり、またそのような構造がまさに新しい価値観を導いている。

• 以上のような見地から、価値を人工物の体系、人々の関係構造、そしてその両者を結びつける設計、生産、利用という活動と相互依存のものと位置づけ、新たな価値創成が可能なシステムを見出すことを目指す。

設立記念シンポジウム資料より

価値創成イニシアティブのビジョン（まとめ）• ゴール

– 多様な価値体系から新たな価値体系発見• 対象

– 組織－デジタル組織－デジタル人工物－人工物• 方法論

–オントロジー，ネットワーク分析，ネットワーク創発，設計学，創発的シンセシス，共創

設立記念シンポジウム資料より

人工物の関係性

実体，属性

機能

もの

社会

物理世界

地球社会

人

持続可能性

物理性

社会性

連携研究の位置づけ (H18)

実体，属性

機能

もの

社会

物理世界

地球社会

人

持続可能性

物理性

社会性

価値・技術・制度の共進化プロセス：環境イノベーションの創成メカニズムの分析

信頼度を導入した相互診断型自己修復センサネットワーク

多階層ネットワークの可視化による社会制度の時系列データ解析

メタモデルを用いた製品開発のプロセスガイド・システムの構築

情報通信技術 (ICT) の環境効率指標の開発　―　 ICT の価値の定量化への挑戦

サービスにおける顧客価値評価手法の導入

プラスチックリサイクルにおける品質情報連鎖に基づいた価値の評価

オンデマンドバスを実例とした大衆サービスから個別サービスへの展開手法の研究

水害軽減機能を有する都市構造の整備による価値創成に関する研究

水素社会のための材料設計

問題解決のためのポータルサイト　 - 基礎技術としての知識共有システムとコミュニケーションシステム

情報コモンズからの価値創成

人工物価値定量化のための生体インタフェースの研究

社会共創と知識創造

人工物と人間の安全保障

エネルギー・環境政策の戦略的価値創成と経済性分析

連携研究の位置づけ (H19)

実体，属性

機能

もの

社会

物理世界

地球社会

人

持続可能性

物理性

社会性

関係資源からの価値創造メカニズムの考察

主観的データによる価値創成－顔イラストへの表情付けシステムを通して

サステイナビリティ・イノベーション創成へ向けたグローバル情報コモンズのデザイン

オンデマンドバスの個別サービスへの展開とそのサービス評価手法の研究

情報通信技術 (ICT) の価値指標創出

プラスチックリサイクルにおける品質情報連鎖に基づいた価値の評価

社会共創とイノベーション

多階層ネットワークの可視化による社会制度の時系列データ解析

地方自治体の数理的な行政サービス評価

不確実性下におけるエネルギー・環境政策の評価と価値創成

コンテンツビジネスにおける企業の能力形成に関する研究

情報コモンズによる新パラダイム創成

インターネット上のコミュニティシステムの構築とリアル社会とのインタラクションの研究

製品・サービス設計のための提供価値の構造化

連携研究の位置づけ (H20)

実体，属性

機能

もの

社会

物理世界

地球社会

人

持続可能性

物理性

社会性

顧客価値の向上に向けたサービスの改善方法の分析

インターネット上のコミュニティシステムがリアル社会のインタラクションに与える影響の研究

国際共創のための情報コモンズ

人工物保全に必要な最新技術の社会的受容性向上に関する調査研究

潜在価値発見のための多角的行動分析手法の開発

多階層ネットワークの可視化による社会制度の時系列データ解析

社会共創のビジネス展開：コンテンツ産業の国際化への提案

社会的価値創成のためのプラスチック循環利用のシステム設計

利用者サイドからみた情報通信技術サービスの価値定量化

オンデマンドバスを実例としたサービス評価・設計手法の研究

サステイナビリティ・イノベーションによる価値創成メカニズム：太陽電池におけるビジネス・モデルと制度設計

不確実性のグリッドメタコンピューティング

インターネット上のコミュニティシステムと社会参加の関係に対して、地域の物理的要因が及ぼす影響の検討

認知的価値創出のための設計手法構築に関する研究

連携研究の位置づけ (H21)

実体，属性

機能

もの

社会

物理世界

地球社会

人

持続可能性

物理性

社会性

共同生産者としての顧客特性の構造化による高実現性サービスの設計支援

科学技術情報の価値のライフサイクルに関するプロセス設計

人工物保全に必要な最新技術の社会的受容性向上に関する調査研究

価値創成のためのサービス認知分析

宇宙開発が人類にもたらす価値

プラスチックリサイクルの社会的価値の評価とシステム設計

ソーシャルネットワークの時系列可視化によるコミュニティ参加者の属性分析

産業創造に果たす技術パラダイムの役割：ロボットの事例

環境調和型品質機能展開 (QFDE) を適用した衣服の価値評価と環境調和型製品設計

水資源のサステイナビリティに向けた学融合：イノベーションを通じた社会的価値の創成

連携研究の位置づけ (全体 )

実体，属性

機能

もの

社会

物理世界

地球社会

人

持続可能性

物理性

社会性

価値・技術・制度の共進化プロセス：環境イノベーションの創成メカニズムの分析

信頼度を導入した相互診断型自己修復センサネットワーク

多階層ネットワークの可視化による社会制度の時系列データ解析

メタモデルを用いた製品開発のプロセスガイド・システムの構築

情報通信技術 (ICT) の環境効率指標の開発　―　 ICT の価値の定量化への挑戦

サービスにおける顧客価値評価手法の導入

プラスチックリサイクルにおける品質情報連鎖に基づいた価値の評価

オンデマンドバスを実例とした大衆サービスから個別サービスへの展開手法の研究

水害軽減機能を有する都市構造の整備による価値創成に関する研究

水素社会のための材料設計

問題解決のためのポータルサイト　 - 基礎技術としての知識共有システムとコミュニケーションシステム

情報コモンズからの価値創成

人工物価値定量化のための生体インタフェースの研究

社会共創と知識創造

人工物と人間の安全保障

エネルギー・環境政策の戦略的価値創成と経済性分析 関係資源からの価値創

造メカニズムの考察

主観的データによる価値創成－顔イラストへの表情付けシステムを通して

サステイナビリティ・イノベーション創成へ向けたグローバル情報コモンズのデザイン

オンデマンドバスの個別サービスへの展開とそのサービス評価手法の研究

情報通信技術 (ICT) の価値指標創出

プラスチックリサイクルにおける品質情報連鎖に基づいた価値の評価

社会共創とイノベーション

多階層ネットワークの可視化による社会制度の時系列データ解析

地方自治体の数理的な行政サービス評価

不確実性下におけるエネルギー・環境政策の評価と価値創成

コンテンツビジネスにおける企業の能力形成に関する研究

情報コモンズによる新パラダイム創成

インターネット上のコミュニティシステムの構築とリアル社会とのインタラクションの研究

製品・サービス設計のための提供価値の構造化

顧客価値の向上に向けたサービスの改善方法の分析

インターネット上のコミュニティシステムがリアル社会のインタラクションに与える影響の研究

国際共創のための情報コモンズ

人工物保全に必要な最新技術の社会的受容性向上に関する調査研究

潜在価値発見のための多角的行動分析手法の開発

多階層ネットワークの可視化による社会制度の時系列データ解析

社会共創のビジネス展開：コンテンツ産業の国際化への提案

社会的価値創成のためのプラスチック循環利用のシステム設計

利用者サイドからみた情報通信技術サービスの価値定量化

オンデマンドバスを実例としたサービス評価・設計手法の研究

サステイナビリティ・イノベーションによる価値創成メカニズム：太陽電池におけるビジネス・モデルと制度設計

不確実性のグリッドメタコンピューティング

インターネット上のコミュニティシステムと社会参加の関係に対して、地域の物理的要因が及ぼす影響の検討

認知的価値創出のための設計手法構築に関する研究

共同生産者としての顧客特性の構造化による高実現性サービスの設計支援

科学技術情報の価値のライフサイクルに関するプロセス設計

人工物保全に必要な最新技術の社会的受容性向上に関する調査研究

価値創成のためのサービス認知分析

宇宙開発が人類にもたらす価値

プラスチックリサイクルの社会的価値の評価とシステム設計

ソーシャルネットワークの時系列可視化によるコミュニティ参加者の属性分析

産業創造に果たす技術パラダイムの役割：ロボットの事例

環境調和型品質機能展開 (QFDE) を適用した衣服の価値評価と環境調和型製品設計

水資源のサステイナビリティに向けた学融合：イノベーションを通じた社会的価値の創成

人工物の価値に関わる要素

実体，属性

機能

もの

社会

物理世界

地球社会

人

持続可能性

物理性

社会性

価値の３つの側面 [Ueda09]

Value

Systems of Society Systems of Humans

Systems of Artifacts

cost

price SatisfactionEconomyPoliticsPublicCultureCommunity

Cognition/ActionIntelligenceBrain

DesignManufacturingProduct Lifecycle

Function

Market Emotion

Interface/Interaction

Utility Function

Network effectBounded rationality

脱物質的人工物

価値の３つの側面 [Ueda09]

Value

Systems of Society Systems of Humans

Systems of Artifacts

cost

price SatisfactionEconomyPoliticsPublicCultureCommunity

Cognition/ActionIntelligenceBrain

DesignManufacturingProduct Lifecycle

Function

Market Emotion

Interface/Interaction

Utility Function

Network effectBounded rationality

脱物質的人工物

人工物とサービス

人工物

相互作用のプロトコル

（狭義の）人工物［物質的人工物］

サービス プ･ロバイダー

（産業 商品としての）サービス･

（狭義の）

人工物

（広義の）人工物

デジタル人工物

デジタル人工物

（狭義の）サービス

相互作用のプロトコル

プロトコルは人工物より自

明

プロトコルが主プロバイダ

は従

プロトコルを含めて人工物

プロトコルは主人工物は従

脱物質的人工物の価値への取り組み• ユーザと社会の関係性に着目して分析

–ライフスタイルという視点–適応型サービスを対象とした分析

脱物質的人工物

Value

Systems of Society Systems of Humans

Systems of Artifacts

cost

price SatisfactionEconomyPoliticsPublicCultureCommunity

Cognition/ActionIntelligenceBrain

DesignManufacturingProduct Lifecycle

Function

Market Emotion

Interface/Interaction

Utility Function

Network effectBounded rationality

• ライフスタイルとは：日常行動や余暇行動，価値観，パーソナリティ，情報機器への接触態度など，様々な人間的要素の総和として捉えられる．ただし，それぞれの要素は独立ではなく，相互依存的な関係がある．

ライフスタイルとは何か？

余暇志向 消費意識

計画性生活時間

職業性別

年齢 コミュニティ

パーソナリティ

社会におけるある価値の選択

社会的相互作用

創発論的アプローチ

個人のライフスタイル

消費者消費者

ライフスタイル調査の結果例－日常行動の背景にある隠れた相関－

第１軸：行動の計画性

第２軸

：情

報機器

への

依存性

ネット依存気味

単独行動派

社会的な良識派

外向的な行動派

情報活用・こだわり派

2007 年 1 月に携帯電話を使って，約 8000 人を対象として行われた調査

• 携帯電話に関するアンケート： 2008 年 8 月に行った調査では，利用している携帯電話会社，通話やメールの頻度，携帯電話料金，よく利用している携帯電話機能やサービスなど，携帯電話に関する質問項目とともに，携帯電話に限らず，日常の一般的な消費傾向（衝動性，計画性，合理性，他人からの影響，自己意識）に関する 25個の質問項目を用いた．

サービスの構成要素は何か？（消費者はどのようにサービスを選んでいるのか？）

携帯電話サービスにおける３つの因子第 1因子「流行や口コミへの関心度」第 2因子「携帯電話の機能への関心度」第 3因子「通話やメールの頻度」

サービスの構成要素の特定：S(f1 　 f2 　 f3)

• アンケートによる実データをもとに 800 体、 27種の消費者エージェントモデルを構築し、ネットワーク外部性を伴う仮想的なサービス市場の中でのサービスの普及に関するマルチエージェントシミュレーションを行った。

　・ Toward Value Co-creation in Manufacturing and Servicing ， CIRP Journal of Manufacturing Science and Technology, 　(2008)

ライフスタイル調査結果を用いた研究例：サービスの社会的普及に関する研究

Fig. 2 つの生産者が競合する市場でのサービスの普及と生産者、消費者の利益

0

10

20

30

40

50

60

70

d(2

22)

d(2

21)

d(2

20)

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22)

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21)

d(1

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22)

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01)

S (2 2 2)

S (1

0

10

20

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21)

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d(2

02)

d(2

01)

d(2

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d(1

02)

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02)

d(0

01)

S (2 2 2)

S (1

Fig. ネットワーク外部性が高まることで、選択されるサービスとその利用者が変化する。要求量が低い人も高い機能の製品を使ってしまう。（過剰転移）

要求量の違いによる消費者の分類（約 800 人の実データを利用）

サー

ビス

の利

用人数

21

ネットワーク外部性が高まることで、ある製品が過剰に普及する

3

2

1

321

n

n

n

nnnnnn

v

v

v

dddVDRP支払意思額＝各機能への要求量 dn×単位留保価格 Vn

Sm = Sm (f1 f2 f3)

脱物質的人工物の価値への取り組み• 適応型サービス（脱物質的人工物）を対象

とした分析–映画サービス

• 動員予測シミュレーション• 会費モデル実験

– テレビサービス• 視聴モデル• 視聴推薦

–電気自動車• 普及シミュレーション• 交通流シミュレーション

– （ビジネスプロセス）• イノベーションモデル

出演者・全チャンネル適合率

0.000.100.200.300.400.500.600.700.800.901.00

10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

平均適合率1ユーザ2ユーザ3ユーザ4ユーザ5ユーザ6ユーザ7ユーザ8ユーザ9ユーザ10ユーザ

脱物質的人工物の価値への取り組み

0 20 40 60 80

02

46

81

0

0

0

3:00前後の谷間日曜は若干減少傾向

7:30前後の出勤前のピーク平日は特にピークが顕著

20:00前後のゴールデンタイム

土休日は若干増加傾向

平日12:00-13:00のランチタイムのピーク

土休日は立ち上がりが遅い…朝がゆっくり

土休日はのんびりテレビを見る

コスト ( )

非会員価格 ( )

2000

2400

1200 1200

1600

PO

c

消費者の行動 ターン1 2 3 4 5 6

1

2

3

価格・コスト 2400

映画サービス

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

2017

2018

2019

2020

2021

2022

2023

2024

2025

2026

2027

2028

2029

2030

0

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80

100

120

Gasoline Hybrid

EV

シェ

ア [

%] 電気自動車

テレビサービス

脱物質的人工物の価値への取り組み• 共通する性質

–提供者、受容者の相互作用に依存するサービス• テレビサービス

–ユーザの生活パターンと放送パターンの相互作用–時間的に変化するサービス　～現在から未来へ

～•映画サービス

–ユーザの期待と環境からの動員変化•電気自動車

–ユーザの期待と環境からの普及変化

まとめ• 価値を総合的に研究する試み

– 物理システム、社会システム、個人 - 人間システムの 3側面

–脱物質的人工物においては社会システムと個人 - 人間システムの関係が重要

• 個人のライフスタイルに注目• 主にサービス的人工物を分析

– 様々な側面から研究は連携研究プログラムによる取り組み