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平成 19 年度 学位論文 小学校算数における 小数を含むかけ算・わり算文章題の 解決過程に関する研究 《要旨》 主任指導教官 兵庫教育大学大学院 教科・領域教育専攻 M 05242 I 学校教育研究科 自然系コース

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平成 19 年度

学位論文

小学校算数における

小数を含むかけ算・わり算文章題の

解決過程に関する研究

《要旨》

主任指導教官

﨑 谷 眞 也

指 導 教 官

國 岡 高 宏

兵庫教育大学大学院

教科・領域教育専攻

M 0 5 2 4 2 I

学校教育研究科

自然系コース

福 永 康 彦

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小学校算数における

小数を含むかけ算・わり算文章題の

解決過程に関する研究

教科・領域教育専攻

自 然 系 コ ー ス

M0 5 2 4 2 I

福 永 康 彦

1.研究の目的

多くの研究者によって、文章題の解決過程に

関する研究は行われている。それらの研究から、

文章題を解決する際に児童がつまずくのは、問

題文中の数量関係を把握する、「統合過程」であ

ることが明らかになっている。

それに加えて、問題文中の数値や、問題構造

が問題の難易度に影響することも明らかにされ

ている。

しかし、それらの結果に対して、どのような

指導が有効であるかまで述べられたものは尐な

い。

そこで本研究では、まず、4 年生以降で最初

に、学習する文章題、特に小数を含むかけ算・

わり算文章題について、小数のかけ算・わり算

が既習である小学校6年生を対象に調査を行い、

その結果をもとに、以下のことを明らかにする。

・ 文章題を解決する過程の中で、どの過程

で児童はつまずくのか。

・ 文章題の問題の難易度には、どのような

要因が影響しているのか。

調査の結果から、明らかになった児童のつま

ずきを解決するには、どのような指導法が有効

か、教科書の指導法を参考にしながら考察する。

2.論文の概要

第 1 章では、児童の算数に対する意識につい

ての現状を述べた。

日本数学教育学会算数・数学意識調査委員会

の調査から、平成 10 年から平成 17 年の 7 年間

で、算数を「できるようになりたい」と思う児

童の割合が減尐していることがわかった。この

意欲の低下が、「理数離れ」の進行を表している

可能性があるといえる。

国立教育研究所の調査からは、小学校 2 年生

と小学 4 年生以降で、算数の好きな児童と、算

数の嫌いな児童の数に差ができることが示され

ている。さらに、小学校の中学年、高学年の半

分以上の児童が、文章題を嫌いなことも明らか

になっている。

第 2 章では、本研究に関連する先行研究を概

観した。

1 節では、児童は小数の乗法で、乗数が小数

になった場合であっても、整数の場合と同じよ

うに同数累加で考えることができると思ってい

る児童が約半数いることが明らかになった。

2 節では、文章題の解決過程は、問題理解過

程と解決実行過程の 2 つに大きく分けることが

でき、それぞれの過程を変換過程、統合過程と

プラン化過程、実行過程の 2 つずつ、計 4 つの

解決過程に分けられることが明らかになった。

3 節では、文章題の解決には、問題文中の数量

関係を把握する「統合過程」が重要であること

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がわかった。

4 節では、文章題を問題構造の違いと、問題

文中の数値の違いにより、解決過程のどこで児

童のつまずきが発生するかを調査、分析してい

る先行研究について述べる。この先行研究より

・ 余分な解決過程や、過剰な情報を追加する

ことで、児童の正答率は低下する

・ 問題構造の違い、数値の違いにより、児童

のつまずく箇所に違いが出る

の 2 点が明らかにされた。

第 3 章では、小学校 6 年生を対象とした調査の

結果と分析を述べた。

1 節では、調査の目的について述べた。調査

の目的は、次の 2 点である。

「文脈の違い」、「数値の違い」、「問題

構造の違い」の 3 点が、文章題の難易

度にどのような影響を与え、正答率に

どのような変化を生じさせるのか

解決過程の 4 つの下位過程のどこで児

童はつまずくのか

2 節では、調査で用いた調査問題について述

べた。調査問題は 1 節で述べた 3 つの違いの組

み合わせにより全 10 種類の問題が完成した。1

つの問題に対し 3 つの設問があり、それぞれ「変

換過程」「統合過程」「プラン化・実行過程」に

対応している。

3 節では、調査の方法について述べた。調査

は 2006 年に 6 年生 46 名を対象に行った。

4 節では、調査の結果を分析した。まず、全

体的な傾向を見た後、「文脈の違い」、「数値の違

い」、「問題構造の違い」の 3 点でどのような違

いがあったのかを分析する。この調査の結果か

ら明らかになったことは、次の通りである。

・ 第 1 用法の問題は、割合の値に関わらず、

「プラン化過程(立式)」の過程で正答率を

下げる。

・ 第 2 用法・第 3 用法の問題は、割合が 1 以

上のときには「プラン化過程(立式)」で、

割合が 1 未満のときには「統合過程」で正

答率が下がる。

・ 文脈が液量や長さの問題に比べて文脈が生

産の問題は、難易度が高い(児童の正答率

が低い)。

第 4 章では、「統合過程」でのつまずきに対

処するための指導法を考案する。

1 節では、現行の教科書では児童に対してど

のような指導が行われているのかを、次の 2 つ

の観点から見ていく。

・ 2 つの数量関係を表す図や、立式を補助

する図には、どのような図が用いられて

いるのか。

・ 教科書で扱われている問題文脈には、ど

のような問題文脈があるのか。

2 節では、児童のつまずきを解消するには、

どのような指導が有効かの手立てを提案する。

まず、児童が数量関係をとらえやすいように

「線分図」の提示方法を工夫することである。

次に、教科書では、問題文中に立式を思いつか

せるような言葉が含まれていたり、同じ文脈が

多かったりする。そこで児童が、きちんと問題

文を理解して問題を解決したのかを確認するた

めの問題を 3 題提案した。

主任指導教官 﨑 谷 眞 也

指 導 教 官 國 岡 高 宏

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平成 19 年度

学位論文

小学校算数における

小数を含むかけ算・わり算文章題の

解決過程に関する研究

兵庫教育大学大学院

教科・領域教育専攻

M 0 5 2 4 2 I

学校教育研究科

自然系コース

福 永 康 彦

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はじめに

「計算問題はできるが文章題はできない」ということをよく耳にする。現場の経験のな

い自分はそんなことを聞いても「自分で問題文を読み、式を作って答えを出すのだから当

たり前ではないのか」ぐらいとしか思っていなかった。

しかし、大学院に進学し、算数・数学教育についていろいろなことを学んでいくうちに、

文章題には解決の過程があることや、その中の過程で児童がつまずくことをはじめて知っ

た。この文章題の解決過程について研究をすることで、文章題解決のことを学び、児童は

文章題のどのようなところを難しく感じているのか知ることは、これから現場に出た際の

算数・数学の授業全般で役に立つと考え文章題解決の研究を行った。

そして、大学院への進学が決まってから、ぜひ研究してみたいテーマとして、最初から

興味のあったものの 1 つに「小数・分数」があった。「小数・分数」の計算ができないのは、

児童に限らず自分の周りにも多数いた。大人でもできない人がいることを、児童が学ぶの

だから当然難しいものだろうとは思っていた。

この児童にとっては難しい「小数・分数」と「文章題」の二つを組み合わせた「小数の

文章題」は児童にとっても難しく、教える教師にとっても難しいものだと考えた。

そこで私は、「小数の文章題」の中でも、より児童の苦手とする「割合」を扱う問題に着

目した。「小数を含む割合の文章題」の難しさの要因を明らかにすることは、自分が将来現

場に出たとき必ず役に立つと考え「小学校算数におけるかけ算・わり算文章題の解決過程

の研究」というテーマで研究を行った。

2008 年 2 月

福 永 康 彦

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目 次

はじめに

第 1章 児童の算数に対する意識と本研究の目的 ________________________ 1

第 1 節 児童の算数の好き嫌い _______________________________________ 1

第 2 節 計算問題と文章題に対する児童の成績 _________________________ 5

第 3 節 本研究の目的 _______________________________________________ 8

第 2章 本研究に関わる先行研究 ______________________________________ 9

第 1 節 演算の意味の拡張 ___________________________________________ 9

第 2 節 文章題解決の過程 __________________________________________ 13

第 3 節 計算力と文章題解決力の関連 ________________________________ 16

第 4 節 文章題解決でのつまずき発生の箇所 __________________________ 19

(1)坂本(1993)の研究 _________________________________________ 19

(2)坂本(1998)の研究 _________________________________________ 24

第 3章 小数を含むかけ算・わり算文章題の 解決過程についての調査 _____ 32

第 1 節 調査の目的 ________________________________________________ 32

第 2 節 調査問題 __________________________________________________ 33

第 3 節 調査の方法 ________________________________________________ 38

第 4 節 調査の結果 ________________________________________________ 40

(1)各問題の正答率 _____________________________________________ 40

(2)問題構造の違いによる比較 ___________________________________ 43

(3)数値の違いによる正答率の比較 _______________________________ 50

(4)問題文脈の違いによる正答率の比較 ___________________________ 57

(5)調査結果のまとめ ___________________________________________ 59

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第 4章 文章題指導の現状と指導への示唆 _____________________________ 60

第 1 節 小数を含むかけ算・わり算文章題の現行の指導方法 ____________ 60

(1)教科書で扱われている数量関係を表す図 _______________________ 60

(2)教科書で扱われている問題文脈 _______________________________ 66

第 2 節 小数を含む文章題指導での改善点 ____________________________ 71

(1)線分図に関する改善点 _______________________________________ 71

(2)問題文脈に関する改善点 _____________________________________ 75

おわりに __________________________________________________________ 80

引用・参考文献 ____________________________________________________ 82

引用文献 __________________________________________________________ 82

参考文献 __________________________________________________________ 84

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第 1章 児童の算数に対する意識と本研究の目的

第 1 節 児童の算数の好き嫌い

「理数離れ」が騒がれる最近、児童の算数に対する意識は、どのように変容してきてい

るのだろうか。日本数学教育学会算数・数学意識調査委員会(2006)は、平成 17 年に小学

校児童の算数に対する興味・関心や態度について調査を行っている。その際、平成 10 年に

行った同様の調査の結果と比較させて、児童の意識の変化について調べている。【図 1】【図

2】はそれぞれ、「好きな科目」と「嫌いな科目」に算数をあげた児童の割合の変化を表し

たものである。

0%

20%

40%

60%

80%

100%

1年生 2年生 3年生 4年生 5年生 6年生

平成10年 平成17年

【図 1:好きな科目に算数をあげる児童の変容】

0%

20%

40%

60%

80%

100%

1年生 2年生 3年生 4年生 5年生 6年生

平成10年 平成17年

【図 2:嫌いな科目に算数をあげる児童の変容】

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平成 10 年から平成 17 年の 7 年間で、児童の意識が大きく変化しているのは、小学 4 年

生で嫌いの割合が減尐していることである。しかし、全体的に見て、7 年間で算数に対する

児童の好き嫌いの傾向はそれほど変化していない。算数が好きな児童はどの学年も 20%前

後なのに対して、嫌いな児童は 30%前後である。この 7 年間で、算数が嫌いな児童は増加

しなかったが、好きな児童も増加しなかった。

この調査と同時に、どのぐらいの児童が、算数を「大事だ」と思っているか、また、ど

のくらいの児童が、算数を「できるようになりたい」と思っているのかも調査されている。

その結果を、次の【図 3】【図 4】に示す。

0%

20%

40%

60%

80%

100%

1年生 2年生 3年生 4年生 5年生 6年生

平成10年 平成17年

【図 3:算数を大事だと思う児童の変容】

0%

20%

40%

60%

80%

100%

1年生 2年生 3年生 4年生 5年生 6年生

平成10年 平成17年

【図 4:算数をできるようになりたいと思う児童の変容】

算数を大事だと思っている児童が、2年生以降で 6割近くいることは 7年間で変化ないが、

できるようになりたいと思っている児童は 7 年前から明らかに減尐し 4 割前後となってい

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る。この 7 年間で、児童にとっての算数の重要性には差はできなかったが、算数に対する

意欲の低下は、「理数離れ」の進行を表している可能性がある。

次に、どの学年を境にして、算数が好きな児童と嫌いな児童の数に差が生まれるのであ

ろうか。国立教育研究所が 1995 年に行った調査によると、児童・生徒の算数・数学に対す

る意識は、次の【図 5】のように変容している。(実際の調査では、小学校 1 年生~高校 2

年生まで調査を行っているが、ここでは、小学生の部分のみを示している。)

0%10%20%30%40%50%60%70%80%90%

100%

小学1年 小学2年 小学3年 小学4年 小学5年 小学6年

好き 嫌い

【図 5:児童の算数の好き・嫌いの割合】

2 年生と、4 年生以降で好きと嫌いの割合に差が生まれている。この調査は 3 月上旬に行

われたので、該当学年の内容は、ほぼ終わっていると考えられる。つまり、4 年生の内容の

中の何かに、児童が嫌いになる原因となる単元があるのではないかと考えられる。

小学 4 年生以降で算数が嫌いな児童は増加するのだが、児童は算数のどのような内容が

嫌いなのだろうか。先ほどの調査と同時に小学校の中学年、高学年の好きな内容、嫌いな

内容も調査されている。その結果が、次の【表 1】である。

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【表 1:児童の単元の好き嫌い】

好き 嫌い

3 年 4 年 5 年 6 年 3 年 4 年 5 年 6 年

1.計算 56.8% 45.5% 39.8% 42.9% 27.7% 37.4% 42.5% 38.1%

2.図形 32.8% 37.5% 48.0% 55.8% 27.9% 27.3% 24.3% 18.7%

3.長さや面積 12.6% 21.0% 28.4% 22.4% 40.8% 38.8% 32.9% 38.9%

4.表やグラフ 46.9% 53.4% 46.7% 51.5% 19.3% 13.9% 18.7% 17.1%

5.文章題 21.1% 20.1% 19.2% 13.6% 53.0% 51.3% 58.6% 70.7%

6.その他 25.3% 18.0% 14.0% 9.5% 7.5% 9.1% 8.0% 9.9%

おおまかに結果をみると、児童の好きな単元内容は、「表やグラフ」→「計算」→「図形」

→「長さや面積」→「その他」→「文章題」と続く。特に、文章題を嫌いな児童は全学年

で 50%を超えている。この結果からも児童が文章題を嫌いなことがわかる。

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第 2 節 計算問題と文章題に対する児童の成績

第 1 節より、多くの児童は文章題が嫌いなことがわかった。では、「文章題が嫌い」なの

は、「文章題が苦手」だからなのだろうか。

三浦ら(1993)は、小学校の算数の教科指導が全て終わった時点で、基礎計算能力を把

握するための試験を行っている。そこでは、次のような結果が述べられている。次頁【表 2】

は「計算問題」の正答率を、【表 3】は「文章題」の正答率を表している。

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【表 2:計算問題の正答率】

乗法 除法

32×123 89.9% 397÷7 93.8%

7×716 81.9% 200÷5 97.3%

62×518 75.8% 2117÷29 81.3%

204×60 89.1% 18.2÷13 76.6%

0.2×0.3 70.6% 600÷1.2 76.6%

24÷6÷2 89.4%

【表 3:文章題の正答率】

文章題 式 正答率

62 円切手 5枚と 41円はがき 2枚を買って 1000 円出す

とおつりはいくらでしょう。

1000-(62×5+41×2) 75.8%

55 人乗りのバスがあります。全校児童 523 人が遠足に

行くには、何台必要ですか

523÷55 76.0%

由美ちゃんは 5000 円の貯金があります。これから毎月 300 円ずつ

貯金していくと、6 ヶ月後には貯金はいくらになるでしょうか。

5000+300×6 74.4%

いちごが 800 個あります。一箱に 30 個つめて市場に出

荷するとしたら、出荷できるものは何箱になりますか。

800÷30 66.5%

600 粒入りのビタミン剤があります。家族 5 人が 1 日 3

粒ずつのむと、何日でなくなりますか。

600÷(5×3) 83.7%

3 本 200 円のえんぴつは、12 本でいくらでしょう。 200×(12÷3) 80.4%

時速 60 キロで 1 時間 30 分走ると、何キロ走るでしょ

う。

60×1.5 57.9%

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全体的に見て、文章題の正答率の方が低い。しかしそれは、文章題を解くために必要な

計算が難しかったためかもしれない。そこで、問題が要求する計算の複雑さに着目したい。

除法の「2117÷29」と文章題の「55 人乗りのバスがあります。全校児童 523 人が遠足に行

くには、何台必要ですか(523÷55)」の 2 題は、両方ともほぼ同じ計算の複雑さと思われ

る。計算式だけに着目ずれば、除法の問題は「4 桁÷2 桁」なのに対し、文章題は「3 桁÷2

桁」である。計算式だけで見れば、文章題の方が簡単かもしれない。それにも関わらず文

章題の正答率の方が低いのは、児童は計算問題よりも文章題を苦手としているからだとい

えると考えられる。

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第 3 節 本研究の目的

これまでのことより、以下のことがわかった。

・ 算数を「好き」と答える児童よりも、「嫌い」と答える児童が多い。

・ 小学校 4 年生以降で算数が嫌いになっていく児童が増える。

・ 「算数をできるようになりたい」と思う児童が尐なくなっている可能性がある。

・ 児童の過半数以上が、文章題を嫌いである。

・ 児童は、計算問題より文章題の方が苦手である。

そこで、本研究では、まず、4 年生以降に学習する文章題、特に小数を含むかけ算・わり

算文章題について、以下のことを明らかにする。

・ 文章題を解決する過程の中で、児童は何につまずいているのか。

・ 文章題の問題の難易度には何が起因しているのか。

このために、小数のかけ算・わり算が既習である小学校6年生を対象に調査を行い、そ

の結果をもとに、児童のつまずきの原因を明らかにする。

調査の結果から、明らかになった児童のつまずきを解決するには、どのような指導法が

有効か、教科書の指導法を参考にしながら考察していく。

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第 2章 本研究に関わる先行研究

第 1 節 演算の意味の拡張

算数・数学では、正の整数から始まり、小数、分数、中学校では負の数と徐々に数の範

囲が拡張されていく。その数の拡張に伴い、演算の意味も拡張されていく。その意味を児

童がどのように理解しているのか、浅田(2006)は、かけ算で扱われる数が整数から小数に拡

張されるとき、特に乗数が小数になるときに、児童は演算の意味をどのように理解してい

るのかを調査している。調査結果の分析の際、同様の目的で行われた中島(1968)の研究にお

ける調査の結果との比較が行われている。調査問題は全部で 4 題で、各問の設問意図は以

下のとおりである。

ここでは、児童が演算の意味をどのように認識しているかを調べている(問 1)、(問 2)

を紹介する。(【表 4】)

(問 1):乗数が整数から小数になるときに意味の拡張の必要を感じているか。具体的には、乗数

が整数から小数に変化しても同数累加で考えることができると思っているかを質問し

ている。

(問 2):小数の乗法の意味をどのように認識しているのかを質問している。

(問 3):倍の考えを発展させ、割合の考えや、「1 とみる」考えと結びつけて考えることができ

るかを質問している。

(問 4):小数乗法の問題作りができるかを質問している。

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【表 4:浅田の調査問題(問 1)】

問 1 は児童が「7×2.4」を同数累加で考えることができるかを質問している。その結果

は次の【表 5】の通りであった。

【表 5:拡張の必要性の認識】

昭和 42 年 平成 17 年

同じように考えられる 46.2% 36.7%

同じように考えられない 45.8% 52.7%

どちらともいえない 8.0% 10.7%

【表 5】の通り、中島(1968)の調査のときよりは、同数累加では考えることができな

いと思っている児童は増加している。それでも半分である。まだまだ児童は意味の拡張の

必要性を感じているとはいえない。

(問 1)

2 年生で『「かけざん」は「同じ大きさのもの」が「いくつかある」とき、その「ぜんたい

の大きさ」を求める計算である』と学習してきました。

たとえば、7×4 は「7 が 4 つあつまった大きさ」を表していて、たし算で 7+7+7+7 と書

くことができます。

次に、7×2.4 という、かける数が小数になっているかけ算を考えてみましょう。上で言っ

ていることと同じように考えられるでしょうか?

自分が正しいと思うもの1つの□に○をつけましょう。

□ ①同じように考えられる

□ ②同じように考えられない

□ ③どちらとも言えない

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次に問 2 では、児童が小数の乗法の意味をどのように認識しているのかを調査している。

この調査問題を【表 6】に示す。

【表 6:浅田の調査問題(問 2)】

問 2

7×2.4 のように、かける数が小数のかけ算は、どのように考えているといえますか?①

~⑤で、自分がもっともよいと思うもの 1 つだけに○をつけましょう。また、他の考え

方の人は右上の⑥に書きましょう。

□ ① 7 を 2.4 回たすと考える。

□ ② たて 7cm、よこ 2.4cm の長方形の面積を表すと考える。

2.4cm

7cm

□ ③ (もとにする大きさ)×(倍)の式で「もとにする大きさ」が 7、「倍」が 2.4

と考える

□ ④ 下の図のように、7 の大きさを 1 目もりにして数直線をかいたとき、2.4 の目も

りのところになる大きさを表すと考える。

0 7 14 □ 21

0 1 2 2.4 3

□ ⑤ 7×2.4 は、7 を 1 とみたとき、2.4 にあたる大きさを表すと考える。

□ ⑥ その他の考え

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次の【表 7】は(問 2)の結果を表わしている。

【表 7:乗法の意味理解】

昭和 42 年 平成 17 年

①2.4 回(同数累加) 22.8% 4.4%

②長方形の求積 16.6% 42.3%

③倍の考え ― 24.8%

基準×割合 14.2% ―

④数直線図 18.5% 19.7%

⑤「1 とみる」考え 23.5% 6.0%

拡大 4.3% ―

⑥その他 ― 2.2%

無解答、複数解答 ― 0.6%

教科書には数直線を多く用いているが、この結果から、児童はあまり数直線や「1 とみる」

考えを情報の意味とは考えていない。これは教科書では多くの数直線図を使っていても、

「~を 1 とみて…」といった記述がなされないことから、児童にはこのようなものは乗法

の意味として理解されていない。

その逆に、長方形の求積の解答が非常に多い。これより、児童は乗法の意味を考えるの

ではなく「たて×よこ」といった公式に当てはめることに慣れてしまっているようである。

また、問 1 では 4 割近い児童が「7×2.4」を同数累加で考えることができると思ってい

た。しかし、問 2 では 4.4%の児童しか同数累加を解答していない。このことから、児童は

同数累加で考えることには違和感を覚えているといえる。

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第 2 節 文章題解決の過程

石田・多鹿(1993)では、Lewis&Mayer(1987)の研究を引用しながら文章題の解決

過程を、文章題を理解する過程(問題理解過程)と、それを解く過程(解決実行過程)と

に区分している

・ 問題理解過程・・・一文ずつの意味内容を理解することから始まり文間の関係を

理解することからなる。

・ 解決実行過程・・・理解した内容に即して立式を構成して、構成した式を計算す

ることからなる。

さらに、これら2つの過程は、次のような下位過程に分けられたる。

①変換過程:与えられた文を読み理解する 問題理解過程 ・・・

②統合過程:読み終えた文章内容をスキーマに照らして理解する

③プラン化過程:理解した内容にあった式を立てる 解決実行過程 ・・・

④実行過程:立てた式を解く

ここに示した文章題の解決過程を図に表すと、次のようになる。

【図 6:文章題の解決過程】

文章題

答え

解決実行過程

プラン化過程

実行過程

問題理解過程

変換過程

統合過程

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先に示した各解決過程でどのような思考

が用いられているか具体的な文章題を用い

て考えてみる。(【図 7】)

まず問題を読み、そこで、「聞かれている

こと」と「わかっていること」を抜き出す。

この問題であれば、「聞かれていること」は

「金魚 1 匹の値段」であり、「わかっている

こと」は「買った金魚は 6 匹、払ったお金

が 1000 円、おつりは 430 円」である。こ

こまでが変換過程である。

統合過程では、変換過程の数量を問題内

容に即して関係付けることとなる。この場

合はたとえば、「払ったお金-金魚 1 匹の値

段×買った金魚の数=おつり」という関係

になるので、

1000-□×6=430

が、一つのアウトプットとなる。

【図 7:問題理解過程】

文章題

金魚を 6 ぴき買って 1000 さつを出すと、

おつりは 430 円でした。

金魚は 1 ぴきいくらでしょうか。

問題理解過程

変換過程

聞かれていること・・・金魚 1 匹の値段

わかっていること・・・買った金魚は 6 匹

払ったお金が 1000 円

おつりは 430 円

統合過程

払ったお金-金魚 1 匹の値段×買った金魚の数=おつり

1000-□×6=430

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解決実行過程では、問題理解過程でわか

ったことをもとにして、問題の解答を導い

ていく。

プラン化過程では、問題理解過程で読み

取ったことをもとに、解決に向けての方法

を考える。おつりと払った金額がわかって

いるので、「1、払ったお金からお釣りをひ

いて、使った金額を求める」といった計画

を立てる。次に、買った金魚の数もわかっ

ているので、「2、使った金額を金魚の数で

割って金魚 1 匹の値段を求める。」といった

計画を立てる。

実行過程では、これらの計画をもとに、

次のような計算を実行することになる。

①使った金額=1000-430

=570

②金魚 1 匹の値段=570÷6

=95

【図 8:解決実行過程】

解決実行過程

プラン化過程

1. 払ったお金からお釣りをひいて、

使った金額を求める

2. 使った金額を金魚の数で割って、

金魚 1 匹の値段を求める

実行過程

金魚 1 匹の値段=(1000-430)÷6

金魚 1 匹の値段=95 円

答え

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第 3 節 計算力と文章題解決力の関連

文部省による達成度調査(1995)は、小学生は計算力に比べて、算数文章題の成績が悪

いことを報告している。では、計算力と文章題解決力はどのように関連しているのだろう

か。石田・多鹿(1993)は、計算力の高い児童と低い児童では、文章題の解決過程のどこ

でつまずきやすいのかに違いがあるのかを調べている。

彼らの調査の概要は、次のとおりである。

目的:計算問題の得点の高い子どもと低い子どもが、3 つの下位過程(変換、統合、プラン

化)に対応するように構成された文章題を解くときに、どの種類の問題タイプで誤

答が多いのかを調べる。

方法:対象は公立の小学 5 年生。

計算問題と文章題 2 種類のテスト課題があり、計算問題は例題 1 題、本テスト 15 題

からなり、文章題は例題 3 題本テスト 18 題からなっていた。

計算問題が実行過程、文章題の例題 3 題がそれぞれ、変換・統合・プラン化過程に

対応しており、計算問題が本テスト 15 題、文章題が各過程 6 題の計 18 題となって

いる。計算問題の中には、6 年生で習う分数のかけ算・わり算も含まれている。使用

された問題例は、次ページの【表 8】の通りである。

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【表 8:石田・多鹿の調査問題例】

変換「つぎの文を式にあらわすと、どの式が正しいでしょうか」

はるお君の犬の体重はたかし君の犬よりも 6kg 重い。

a.はるお君の犬の体重=6+たかし君の犬の体重

b.はるお君の犬の体重+6=たかし君の犬の体重

c.はるお君の犬の体重+たかし君の犬の体重=6

d.はるお君の犬の体重=6

統合「どのような数字を使えば、つぎの問題がとけるでしょうか」

5 本 1 組の鉛筆のねだんは 59 円です。たろう君は 3 組買って 200 円はらいました。

たろう君は何本鉛筆を買いましたか。

a.5,59,3,200

b.59,3,200

c.5,59,3

d.5,3

プラン化「どのような計算をすれば、つぎの問題がとけるでしょうか」

200 人の子どもが学校からバスで遠足にいきます。

1 台のバスに 50 人乗ることができます。バスは何台必要ですか。

a.わりざんをしてからたしざんをする

b.ひきざんだけでよい

c.かけざんだけでよい

d.わりざんだけでよい

実行「左がわの計算をすると、どの答えが正しいでしょうか」

32815

a.556

b.656

c.656 あまり 1

d.その他

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調査結果を分析する際に、まず計算問題の結果で上位群(【表 9】)と下位群(【表 10】)

に分けている。そして、それぞれの群ごとで、文章題の問題に対する正答率の上位群と下

位群に分けている(【表 9】【表 10】中の左の「条件」の欄)

【表 9:計算問題上位群の文章題正答率】

条件

全体

問題タイプ

変換 統合 プラン化

文章題上位群 0.90 0.91 0.92 0.88

文章題下位群 0.51 0.51 0.41 0.62

【表 10:計算問題下位群の文章題正答率】

条件

全体

問題タイプ

変換 統合 プラン化

文章題上位群 0.74 0.68 0.89 0.65

文章題下位群 0.41 0.42 0.36 0.45

これらの調査結果から、石田・多鹿は、以下のことをまとめている。

この石田・多鹿の研究から、文章題解決の成功にとっては、統合過程が重要であること

が示唆されているといえる。

・ 計算能力の良し悪しに関わらず、文章題の成績の良い児童は統合過程の成績がよく、文

章題の成績の悪い児童は統合過程の成績が悪い。

・ 文章題解決には計算力だけではなく、問題状況全体を正しく把握することも大切である。

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第 4 節 文章題解決でのつまずき発生の箇所

(1)坂本(1993)の研究

坂本(1993)は、文章題解決の際に、児童がどこでつまずくのか、文章題の難しさは何

が起因しているのかを解明するために、調査を行なっている。この調査の特徴と工夫がな

されている点は、文章題の解決過程を複数の下位過程に分け、その各過程に対応する設問

を作成しているところである。それらの設問への正答率を調べることによって、文章題解

決過程のどの段階において、児童の誤答が発生するのかを調べようというのが、この調査

の概略である。

[実験 1]では、【表 11】に示すような文章題が用いられた。同一の構造と状況(たとえ

ば、【表 11】の問題はすべて、構造は 20×12、状況は「ジョギング」である)の問題に対

して、「過剰な情報」有り・無し、「単位変換」有り・無しの 4 パターンの問題が作られた。

ここで、「過剰な情報」有りの問題とは、【表 11】の「1 日に走る距離は 3kmです。」のよ

うに問題を解決する際に必要が無い一文を含む問題のことであり、「単位変換」有りの問題

とは、「分」と「時間」の換算が要求される問題のことである。

調査の対象は和歌山市立の小学校 4年生 55名、調査は 1991年 9月上旬に行われている。

【表 11:坂本が用いた調査問題例】

通常問題(単位変換なし) 通常問題(単位変換あり) 過剰問題(単位変換あり)

ゆたかさんは、毎朝 20 分間ジョ

ギングをしています。

今日で 12 日走りました。全部で

何分間走ったことになりますか。

ゆたかさんは、毎朝 20 分間ジョギ

ングをしています。

今日で 12 日走りました。全部で何

時間走ったことになりますか。

ゆたかさんは、毎朝 20 分間ジョギ

ングをしています。

1 日に走る距離は 3kmです。

今日で 12 日走りました。全部で何

時間走ったことになりますか。

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坂本は、各設問での解答を分析し、解決過程の各段階(A~G)で誤答した被験者の人数

を、次の【表 12】のように表している。【表 12】の問題のタイプは上段が「通常問題」と

「過剰問題」の違いを、下段が単位変換を「単位変換なし」「単位変換重さ」「単位変換長

さ」の 3 つに分けて表している。

【表 12:実験 1での問題ごとの誤りの位置(人数)】

問題のタイプ

解決過程

通常 過剰

なし 重さ 長さ なし 重さ 長さ

A 求答事項選択 3 1 2 2

A’ 求答事項選択(数値正解) 4 1

B 数値選択 15 3 17 9 7

B’ 数値選択(演算正解) 1 1 6 4 8

C 演算選択 2 2 15 7 5 3

D 立式 2 2 1

E 演算実行 2 4 4 3 9 1

F 単位変換 25 20 15 20

G 解答 1 1 1 1

この[実験 1]では、坂本の関心が、解決過程での誤答の発生箇所よりも、「過剰な情報」

「単位変換」といった問題要素の変化がもたらす影響にあったようで、分析結果は、次の

ようにまとめられている。

(ⅰ)正答率について

(ア) 「過剰な情報」問題の方が、正答率は低い。

(イ) 「単位変換」有りの問題では、長さと重さの問題の正答率が低い。

(ⅱ)誤り発生の位置について

(ウ) 「単位変換」無しの問題では、「B:数値選択」での誤答が多い。「単位変換」有

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りの問題では、「F:単位変換」での誤答が多い。

(エ) 長さ問題では。「C:演算選択」での誤答も多い。

次の[実験 2]では、通常問題でのつまずきが「B:数値選択」に集中しているという[実

験 1]の結果を詳しく確認するために、この「B:数値選択」を独立した設問としている。

以下の【表 13】が、その調査問題の一部である。

調査の対象は和歌山市立の小学 4年生 145名、調査は 1991年 11月上旬に行われている。

【表 13:実験 2の調査問題の例】

通常問題 1 問目

<問題文>

夜店で金魚を 6 ぴき買って 1000 円さつをだすと、おつりは 430 円でした。金魚 1 ぴきはいくらで

しょうか。

<求答事項選択での質問と選択肢>

「聞かれていることは何ですか。番号で一つ選んでください。」

① 金魚 1 ぴきのねだん

② 金魚ぜんぶのねだん

③ おつりの金額

<数値選択での質問と選択肢>

「問題を解くのに使う数字を○でかこんでください。」

6・1000・430

<演算選択での質問と選択肢>

「問題を解くのに使う計算を○でかこんでください。」

たし算・ひき算・かけ算・わり算

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次の【表 14】は、調査問題ごとに、解決過程の各段階(A~G)で誤答した被験者の人数

を表している。

【表 14:実験 2での問題ごとの誤りの位置(人数)】

問題のタイプ

解決過程

通常 過剰

1 2 3 4 1 2 3 4

A 求答事項選択 3 3 1 1 5 13 8 3

A’ 求答事項選択(数値正解) 2 6 3 1 3 2

A’’ 求答事項選択(演算正解) 6 1 1

B 数値選択 16 5 17 5 45 8 43 28

B’ 数値選択(演算正解) 1 9 3 7 12

C 演算選択 25 11 36 9 8 9 16 5

D 立式 7 6 3 4 3 1 4 1

E 演算実行 10 14 13 4 3 11 6

G 解答 6 1 1 1 3 2

次頁の【図 9】は、「通常問題」と「過剰問題」ごとに、解決過程の各下位過程(A~G)で

の平均正答率をグラフに表している。

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2.542.62.872.83

3.623.82

2.152.22.32

2.492.42

2.99

2

2.5

3

3.5

4

求答事項選択 数値選択 演算選択 立式 演算実行 解答

解決過程

平均正答数

通常

過剰

【図 9:下位過程の推移に伴う条件別平均正答率の変化】

以上、坂本の行った 2 つの調査結果から、文章題解決の困難性の原因、特に、解決過程の

どの段階でつまずきが発生しているのかに関して、以下のことが明らかになっている。

(ア) 「過剰な情報」(必要な情報の選択を惑わす要因)や「単位変換」(余分な処理過程を

要求する要因)が加わると、通常の問題に比べて、文章題は難しくなる。

(イ) 文章題のつまずきは、その大半が演算選択まで、すなわち、文章題解決過程の前半部

分である、問題理解過程において、発生する

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(2)坂本(1998)の研究

坂本(1998)は、(1)の調査とおなじような目的のもとに調査を行っている。ただし、(1)の

調査で使用された文章題が、「過剰な情報」と「単位変換」の 2 要素について操作されたの

に対し、(2)では、「問題構造」と「数値」が操作されている。

ここでの文章題の「問題構造」とは、次に示す「比の三用法」のことを指している。か

け算・わり算の文章題に対して、3 つの用法のどれを用いて解決できるかは、この「問題構

造」によって決まってくる。

第 1 用法: 割合 = 比較量 ÷ 基準量

第 2 用法:比較量 = 基準量 × 割合

第 3 用法:基準量 = 比較量 ÷ 割合

また、「数値」とは、文章題の中で使用される数値のことを指し、ここでは、この調査で

は使用されている小数が「1 以上、1 以下」ということに限定される。

「問題構造」が 3 種類、「数値」が 2 通りなので、それらの組み合わせは全部で 6 通りに

なる。このうち、坂本(1998)の調査では、「問題構造」から 2 種類(第 2 用法・第 3 用法)

のみが選ばれ、「数値」はそのまま 2 通り(小数が 1 以上・1 未満)で、以下の 4 パターン

の文章題が作成された。

① 第 2 用法・小数が 1 以上

② 第 2 用法・小数が 1 未満

③ 第 3 用法・小数が 1 以上

④ 第 3 用法・小数が 1 未満

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この 4 パターンの問題の例を、次に示す。

(1)の調査では、「過剰な情報」「単位変換」といった要因が操作されていた。これは、あ

えて問題を難しくすることで、文章題解決過程でのつまずきが発生しやすいようにしたも

のと思われる。そのため、教科書などで扱われる標準的な文章題とは、かなり違った文章

題になってしまっていた。

① 第 2 用法・小数が 1 以上の例

・サイダーが 1.5 リットルあります。

コーラの量は、サイダーの量の 1.6 倍にあたります。

コーラは何リットルありますか。

② 第 2 用法・小数が 1 未満の例

・サイダーが 1.5 リットルあります。

コーラの量は、サイダーの量の 0.6 倍にあたります。

コーラは何リットルありますか。

③ 第 3 用法・小数が 1 以上の例

・コーラが 2.4 リットルあります。

コーラの量は、サイダーの量の 1.6 倍にあたります。

サイダーは何リットルありますか。

④ 第 3 用法・小数が 1 未満の例

・コーラが 2.4 リットルあります。

コーラの量は、サイダーの量の 0.6 倍にあたります。

サイダーは何リットルありますか。

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一方、(2)の調査では、「問題構造」と「数値」の二つの要素を操作して実験を行っている。

これらの 2 つの要素は、文章題解決の困難性に関する過去の研究においても、問題の難易

に影響を与える要因として挙げられているものである。「問題構造」の 3 種類はそれぞれ、

「割合」(第 1 用法)、「倍の意味のかけ算」(第 2 用法)、「単位当たりの量」(第 3 用法)と

いった算数科の指導内容に直結するものであり、これらに相当する文章題は、当然、教科

書でも扱われている。また「数値」に関しても、「1 より大きい小数」、「1 より小さい小数」

は、文章題のみならず計算指導においても、十分な配慮がなされていることがらである。

したがって、調査問題において、これらを変化させても、標準的な文章題とそれほど違っ

たものになることはない。

要するに、(1)の調査問題が、「情報過多」「処理の複雑度」といった要素に視点をあてた

心理学的な実験課題として作成され、児童に馴染みの尐ないものであったのに対して、(2)

の調査問題は、「問題構造」「数値」といった数学的概念に焦点をあてた算数的課題になっ

ており、しかも、児童に馴染みのある標準的な問題となっているのである。

調査の対象は小学 5 年生 82 名で、小数の乗除算および割合の文章題の解き方は学習済み

であった。

[調査問題(質問)の工夫]

(1)の調査において、文章題解決におけるつまずきの多くは、演算実行ではなく、それ以

前の段階にあることが明らかとされた。そこで、この調査では、演算実行の前段階、すな

わち変換過程、統合過程、プラン化過程の 3 過程に対応する質問が、作成されている。

次頁に、調査問題の例を示す。

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コーラが 2.4リットルあります。

コーラの量は、サイダーの量の 1.6倍にあたります。

サイダーは何リットルありますか

(1):聞かれていることはなんですか。

次の中から 1つ選んで、記号を○でかこんでください。

(わからない時は?マークに○をします。)

ア、 コーラは何リットルか

イ、 サイダーは何リットルか

ウ、 コーラの量はサイダーの量の何倍か

(2):次の文のうち、問題の内容にあっているのはどれですか。

正しい文を 1つ選んで、記号でかこんでください。

(わからない時は?マークに○をします。)

ア、 コーラの量はサイダーの量の 2.4倍

イ、 サイダーの量はコーラの量の 2.4倍

ウ、 コーラの量はサイダーの量の 1.6倍

エ、 サイダーの量はコーラの量の 1.6倍

(3):問題を図にしてみます。

コーラの量を下のような線で表すことにすると、

サイダーの量はどの位の長さで書けばいいですか

( )

( )

( )

( )?

(4):問題をとく時に使う計算を○でかこんでください

たし算、ひき算、かけ算、わり算

【図 10:坂本(1998)の調査問題(第 3用法、割合 1以上)】

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(1)、(2)の質問が、変換過程に対応する。(1)では、問題文中で聞かれていることの理解を

確認し、(2)では、問題文に述べられている数量関係の理解を確認する。なお、この(1)、(2)

の質問を、坂本は、それぞれ「求答事項選択課題」、「関係文選択課題」と呼んでいる。

(3)の質問が、統合過程に対応する。(3)は、問題中の量が線分図で表されており。その中

から正しい大きさを表しているものを選択させる課題となっている。この質問を、坂本は、

「見積もり課題」と呼んでいる。

(4)の質問が、プラン化過程に対応する。(4)では、解決に必要な演算がわかっているかを

確認する。これを「演算選択過程」と坂本は呼んでいる。

[調査結果の分析]

調査結果について、坂本は、次の 3 つの観点から分析を行っている。

ⅰ) 全体的傾向

ⅱ) 小数のタイプによる正答率の違い

ⅲ) 問題構造による正答率の違い

ⅰ) 全体的傾向

【図 11】は、各問題の正答率を表したグラフである。

0%

20%

40%

60%

80%

100%

質問文理解 関係文理解 情報の統合 解決のプラン

第2用法小数1以上 第2用法小数1未満

第3用法小数1以上 第3用法小数1未満

【図 11:解決過程に対応させた課題の正答率】

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全体的傾向として、以下のことが明らかにされている。

ⅱ) 小数のタイプによる正答率の違い

【図 12】のグラフは、各質問への正答率を、数値の違い(小数が 1 以上、小数が 1 未

満)ごとで表している。

0

0.5

1

1.5

2

質問文理解 関係文理解 情報の統合 解決のプラン

小数1以上 小数1未満

【図 12:数のタイプによる解決過程の遂行】

① 質問文理解は全ての問題で正答率が高い

② 関係文理解では、小数が 1 未満のものが成績を下げる。なお、このときの誤答

のほとんどが、倍関係を逆に把握し、「aはbのx倍」の場合に「bはaのx

倍」を選ぶ誤答である。

③ 情報の統合では、全ての問題でつまずきが見られた。特に、小数が 1 以上のも

のはここで大きくつまずいている。

④ 解決のプランでは第三用法、特に小数 1 未満が正答率を下げている。

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数値の違いによる正答率の変化から、坂本は、以下のような分析を行っている。

この結果は、文章題に使用される数値の違い、すなわち、小数が 1 以上か 1 未満かの違

いによって、児童のつまずきが発生する段階が異なってくることを示している。

ⅲ) 問題構造による正答率の違い

【図 13】のグラフは、各質問への正答率を、問題構造(第 2 用法、第 3 用法)ごとで表

している。

0

0.5

1

1.5

2

質問文理解 関係文理解 情報の統合 解決のプラン

第2用法 第3用法

【図 13:問題の構造による解決過程の遂行】

① 小数 1 未満の文章題では、関係文理解の段階でつまずきが生じる。

② 小数 1 以上の文章題では、情報の統合の段階でつまずきが生じる。

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31

問題構造の違いによる正答率の変化から、坂本は、以下のような分析を行っている。

この調査からも、(1)の結果と同様に文章題のつまずきの多くは、その解決過程の前半部

分(情報の統合過程まで)で生じていることが明らかにされている。さらに、問題構造や

数値といった文章題の構成要素を変化させると、つまずきの頻度や発生する段階に違いが

見られることも明らかにされている。文章題を最後まで解かせて、その正答率を測定した

り、あるいは、解決に必要な式を作らせ、その立式の正誤を調べることで、問題構造や数

値という構成要素と文章題の難易度の関連を調査している研究は、これまでにも成されて

きている。しかし、児童が文章題解決に失敗するとき、「解決過程のどの段階でつまずいて

いるのか」に焦点を当てたところに、(1)・(2)にあげた坂本の研究の独創性がある。

ただし、調査に使用された文章題の数と種類が尐なく、問題構造、数値、あるいは、文

脈(問題の状況)といった要素の何が、どれほど、つまずきの発生に影響しているのかが、

まだ明らかとされていない。そこで、次の第 3 章では、この坂本の調査方法をもとにしな

がら、文章題の構成要素(問題構造、数値、文脈)を体系的に変化させた調査問題を用意

し、このことについて明らかにしていくこととする。

① 関係文理解までは正答率に違いが見られないことから、問題構造(第 2 用法か第

3 用法)が、質問文理解、関係文理解に影響することはない。

② 第 2 用法の文章題では、情報の統合よりも、その後の過程である解決のプランで

の正答率が高くなっている。これは、かなり多くの児童が、数量関係を正しく答

えている(解決プランで、かけ算を選択する)ことを意味する。

③ 第 3 用法の文章題では、関係文理解から情報の統合にかけての段階で、正答率に

おおきな落ち込みが見られる。これより、第 3 用法の文章題の難しさは、統合過

程以降にあると考えられる。

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第 3章 小数を含むかけ算・わり算文章題の

解決過程についての調査

第 1 節 調査の目的

小数を含む文章題において「文脈の違い」(液量、長さ、生産)、「数値の違い」(割合が 1

以上、1 未満)、「問題構造の違い」(比の三用法)が、文章題の難易度にどのような影響を

与え、正答率にどのような変化が生じるのかを調べる。その際、前章で紹介した坂本(1998)

の先行研究と同様に、文章題の解決過程を、以下の 4 つの下位過程に分けて、調査を行っ

た。なお、「文脈の違い」の 3 つの文脈は、次のような理由で選択した。液量問題は、坂本

(1993)の結果と比較をするために、長さ問題は教科書でよく扱われる典型的な問題として、

生産問題は教科書で扱われないタイプの問題としてである。

① 変換過程

質問文理解・・・問題文中で聞かれていることが理解できているか

② 統合過程

情報の統合・・・問題文中の未知量と既知量の大小関係が理解できているか

③ プラン化過程

立式・・・解決に必要な演算を選択できているか

④ 実行過程

解答・・・③で選択した演算を正しく実行できているか

この結果を、「文脈の違い」、「構造の違い」、「数値の違い」の 3 つの点から分析する。

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第 2 節 調査問題

坂本(1998)では、文脈が液量の問題のみで調査を行っていた。本調査では問題文脈の

違いの影響をみるために、液量、長さ、生産の 3 種類の問題文脈を作成した。そのうち、

液量問題において、問題構造の違いの影響をみるために、第 1 用法、第 2 用法、第 3 用法

の 3 種類すべての問題を作成した。長さ問題、生産問題は、第 1 用法のみの問題を作成し

た。その結果、【表 15】に示すような 5 種類の問題ができあがった。

【表 15:本調査で使用した調査問題の種類】

文脈 構造 問題文

液量問題

第 1 用法 サイダーが B リットルあります。コーラは A リットルあります。コーラはサイダーの何

倍の量がありますか。

第 2 用法 サイダーが B リットルあります。コーラはサイダーの P 倍あります。コーラは何リット

ルありますか。

第 3 用法 コーラは A リットルあります。これはサイダーの P 倍の量です。サイダーは何リットル

ありますか。

長さ問題 第 1 用法 青いリボンの長さは Bmです。赤いリボンの長さは Amです。赤いリボンは青いリボンの

何倍の長さでしょうか。

生産問題 第 1 用法 1 時間に Bmの針金を生産できる機械があります。この機械で Amの針金を生産するには

何時間かかりますか。

(注:問題文中の B は基準量、A は比較量、P は割合を示す)

さらに、上の 5 種類の問題に対して、割合Pの値が1以上の問題と1以下の問題の 2 種

類を作成した。数値を決定する際、プラン化過程での立式や実行過程での計算において難

易の差が出ないように、基準量・比較量・割合それぞれの数値を【表 16】に示すように統

一した。

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【表 16:本研究で使用した数値】

B(基準量) A(比較量) P(割合)

小数大

10.5 1.4

小数小 4.5 0.6

【表 15】【表 16】に示すように問題 5種類×数値 2種類の合計 10種類の問題を作成した。

作成した調査問題の文脈を【表 17】に示す。

ここで、たとえば、【表 17】の左上の問題は、文脈が「液量」、構造が「第 1 用法」、割合

が「P>1」の問題になっている。この問題を以下では、「液量第一(P>1)」のように表す

ことにする。

7.5

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【表 17:本調査で使用した問題文】

第 1 用法 第 2 用法 第 3 用法

液量

問題

P>1

サイダーが 7.5 リットルありま

す。コーラは 10.5 リットルあり

ます。コーラはサイダーの何倍の

量がありますか。

サイダーが 7.5 リットルありま

す。コーラはサイダーの 1.4 倍

あります。コーラは何リットルあ

りますか。

コーラは 10.5 リットルありま

す。これはサイダーの 1.4 倍の

量です。サイダーは何リットルあ

りますか。

液量

問題

P<1

サイダーが 7.5 リットルありま

す。コーラは 4.5 リットルあり

ます。コーラはサイダーの何倍の

量がありますか。

サイダーが 7.5 リットルありま

す。コーラはサイダーの 0.6 倍

あります。コーラは何リットルあ

りますか。

コーラは 4.5 リットルありま

す。これはサイダーの 0.6 倍の

量です。サイダーは何リットルあ

りますか。

長さ

問題

P>1

青いリボンの長さは 7.5mです。

赤いリボンの長さは 10.5mで

す。赤いリボンは青いリボンの何

倍の長さでしょうか。

長さ

問題

P<1

青いリボンの長さは 7.5mです。

赤いリボンの長さは 4.5mです。

赤いリボンは青いリボンの何倍

の長さでしょうか。

生産

問題

P>1

1 時間に 7.5mの針金を生産でき

る機械があります。この機械で

10.5mの針金を生産するには何

時間かかりますか。

生産

問題

P<1

1 時間に 7.5mの針金を生産でき

る機械があります。この機械で

4.5mの針金を生産するには何時

間かかりますか。

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次頁【図 14】は、本調査で使用した調査問題の例である。以下に各問の説明を示す。

(1)の設問は、変換過程に対応しており、この問題で聞かれていることを問う「質問文

理解」の課題である。

(2)の設問は、統合過程に対応しており、未知量と既知量の大小関係を問う「情報の統

合」の課題である。この設問は坂本の調査問題形式と大きく異なる。坂本の調査問題では

液量の問題に対して抽象的な線分図で大小関係を質問していたが、本調査では、児童がイ

メージしやすいように具体的な液量を表す図を用いるようにした。なお、長さ問題と生産

問題でも、児童のイメージのしやすさを考慮した図(テープ図)を用いている。

(3)の設問は、プラン化過程、実行過程に対応しており、実際に立式し、答えを求める

「立式」「解答」の課題である。この設問も坂本の調査問題形式とは異なる。坂本は、数値

選択と演算選択を調査の対象としていた。そのため実行過程は調査の対象には含まれてい

なかった。しかし本調査では、実際に立式させ、演算させることで、プラン化過程だけで

なく、実行過程のつまずきについても調べることにした。

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次の問題を読んで(1)~(3)の質問に答えてください。

問題:サイダーが 7.5 リットルあります。コーラは 10.5 リットルあります。コーラはサイ

ダーの何倍の量がありますか。

(1):聞かれていることは次のア~エのうちどれですか。

ア~エに○をつけてください。

ア、 コーラの量

イ、 サイダーの量

ウ、 コーラはサイダーの何倍か

エ、 サイダーはコーラの何倍か

(2):サイダーの量を次のように表わすとコーラの量は次のア~ウのうちどれですか。

ア~ウに○をつけてください。

サイダー コーラ

ア イ ウ

(3):この問題をとくための式をつくり、答えを出してください。

式:

答え

【図 14:本研究で使用した調査問題の例】

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第 3 節 調査の方法

調査は 2006 年 7 月中旬に、名古屋市の公立小学校 6 年生 46 名を対象に行った。調査問

題は、児童一人にかかる時間を考慮に入れ、作成した 10 題のうち 5 題を児童に解かせる

ことにした。【表 18】は、5 題の組み合わせ(A、B、C、D の4つ)と、それぞれの組み

合わせに答えた人数を示している。【表 19】は、それぞれの問題に解答した人数を示して

いる。なお、A~D の 4 つの組み合わせにしたのは、同じ児童が、たとえば液量第一(P>

1)と液量第一(P<1)を解くと、学習効果が生じてしまうので、この危険性を避けるためで

ある。

解答時間は、児童が全部の問題を解き終わるだけに十分な時間をとった。

【表 18調査問題の組み合わせ】

第一問 第二問 第三問 第四問 第五問 解答人数

組み合わせ

液量第一

P>1

液量第二

P>1

液量第三

P>1

長さ問題

P<1

生産問題

P>1

11人

組み合わせ

液量第一

P<1

液量第二

P<1

液量第三

P<1

長さ問題

P<1

生産問題

P>1

12人

組み合わせ

液量第一

P<1

液量第二

P<1

液量第三

P<1

長さ問題

P>1

生産問題

P<1

12人

組み合わせ

液量第一

P>1

液量第二

P>1

液量第三

P>1

長さ問題

P>1

生産問題

P<1

11人

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【表 19:調査問題の種類と被験者数(人)】

構造 文脈 液量 長さ 生産

第 1

用法

P>1 22 23 23

P<1 24 23 23

第 2

用法

P>1 22

P<1 24

第 3

用法

P>1 22

P<1 24

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40

第 4 節 調査の結果

(1)各問題の正答率

調査結果の各下位過程での正答者数と正答率を、【表 20】に示す。また、P>1 とP<1

に分けた正答率のグラフを【図 15】、【図 16】に示す。

【表 20:全体の正答者数(正答率)】

液量問題 長さ問題 生産問題

第 1 用法 第 2 用法 第 3 用法 第 1 用法 第 1 用法

P>1 P<1 P>1 P<1 P>1 P<1 P>1 P<1 P>1 P<1

1,

質問文理解

21

(95)

24

(100)

21

(95)

23

(96)

21

(95)

24

(100)

22

(96)

21

(91)

21

(91)

23

(100)

2,

情報の統合

21

(95)

22

(92)

19

(86)

15

(63)

20

(91)

15

(63)

21

(91)

21

(91)

16

(70)

17

(74)

3,

立式

16

(73)

15

(63)

20

(91)

21

(88)

14

(64)

15

(63)

15

(65)

14

(61)

11

(48)

6

(26)

4,

解答

14

(64)

13

(54)

20

(91)

19

(79)

14

(64)

14

(58)

11

(48)

11

(48)

6

(26)

5

(22)

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41

0%

20%

40%

60%

80%

100%

1.質問文理解 2.情報の統合 3.立式 4.解答

液量第一 液量第二 液量第三 長さ問題 生産問題

【図 15:全体の正答率比較P>1】

P>1 の場合、以下のような特徴が見られた。

① 「液量第二」を除く全ての問題で、下位過程が進むにつれ正答率が下がる。

② 「3,立式」の過程で、正答率が大きく下がる。

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42

0%

20%

40%

60%

80%

100%

1.質問文理解 2.情報の統合 3.立式 4.解答

液量第一 液量第二 液量第三 長さ問題 生産問題

【図 16:全体の正答率比較P<1】

P<1 の場合、以下のような特徴が見られた。

このような全体の傾向を踏まえた上で、以下では

・ 構造の違い(第 1 用法・第 2 用法・第 3 用法の違い)

・ 数値の違い(P>1・P<1 の違い)

・ 文脈の違い(液量・長さ・生産の違い)

の 3 点に着目して結果を考察する。

① 「液量第二」を除く全ての問題で、下位過程が進むにつれ正答率が下がる。

② 「液量第二」「液量第三」は、「2,情報の統合」で正答率が下がる。

③ 第 1 用法の問題は、「3,立式」で正答率が下がる。

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(2)問題構造の違いによる比較

(A)全体の正答率の違い

【図 17】は、構造の違い(第 1 用法・第 2 用法・第 3 用法)による各下位過程での正答

率の変化を表わす。

0%

20%

40%

60%

80%

100%

1質問文理解 2情報の統合 3立式 4解答

液量第一 液量第二 液量第三

【図 17:構造別比較】

このグラフから、第 1 用法は「3,立式」、第 2 用法、第 3 用法は「2,情報の統合」で多く

の児童が最初につまずいていることがわかる。この結果は、先行研究の結果と比較しても

おなじような結果といえる。

ここで注目したいのが、「2,情報の統合」から「3,立式」の過程における、正答率変化

のパターンでの第 2 用法と第 3 用法の違いである。第 2 用法は「2,情報の統合」でつまず

いたあと、「3,立式」の過程で正答率を大きく上昇させ、第 3 用法は「2,情報の統合」で

つまずいたあと、「3,立式」の過程で正答率を低下させている。この違いが何なのか児童

の誤答をもとに、この後検討していく。

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(B)P>1 の正答率の違い

ここからは先ほどの結果を割合Pの値に着目し、P>1、P<1に分けて検討する。

まずはP>1 の場合である。【図 18】は、液量問題P>1 の問題の正答率の変化を表して

いる。

0%

20%

40%

60%

80%

100%

1.質問文理解 2.情報の統合 3.立式 4.解答

液量第一 液量第二 液量第三

【図 18:構造別比較P>1】

P>1 の場合、第 1 用法、第 3 用法は「3,立式」の過程で、最初につまずいている児童

が多い(【図 18】の(ア)の部分)。このときの誤答の傾向を見ると、第 1 用法は様々な

誤答があり、特に多い誤答の傾向というものは見られなかったが、第 3 用法では乗法を

用いて解こうとしている児童が多かった。第 3 用法の問題では、「3、立式」の過程で誤

答した 8 名のうち 4 名がかけ算で立式していた。この 4 人の解答をみると、4 人とも「2,

情報の統合」は正解している。つまり、「3,立式」以前からつまずいているのではなく、

この「3,立式」の過程で初めてつまずいている。この原因を問題文に着目し、以下のよ

うに考えた。

(ア)

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つまり、児童の多くは、

「~倍」→増える→かけ算

と考えて立式しているのではないだろうか。【表 21】に示すように、どの問題構造も問題文

の中に「~倍」という言葉がある。特に、第 2 用法、第 3 用法は具体的な数で「1.4 倍」と

ある。この言葉が、児童にかけ算を連想させるのではないかと思われる。

【表 21:液量問題(P>1)の問題文】

文脈 構造 問題文

液量問題

第 1 用法 サイダーが 7.5 リットルあります。コーラは 10.5 リットルあります。コーラはサイダーの

何倍の量がありますか。

第 2 用法 サイダーが 7.5 リットルあります。コーラはサイダーの 1.4 倍あります。コーラは何リ

ットルありますか。

第 3 用法 コーラは 10.5 リットルあります。これはサイダーの 1.4 倍の量です。サイダーは何リ

ットルありますか。

しかし、問題文中にかけ算を連想させる言葉が含まれていても、実際にかけ算で立式す

るのは第 2 用法だけである。そのため、「3,立式」過程において、第 2 用法は正答率をあ

げ、第 3 用法は正答率を下げているのだと考えられる。

コーラは 10.5 リットルあり

ます。これはサイダーの 1.4

倍の量です。サイダーは何リ

ットルありますか。

(第 3用法)

1.4

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(C)P<1 の正答率の違い

0%

20%

40%

60%

80%

100%

1.質問文理解 2.情報の統合 3.立式 4.解答

液量第一 液量第二 液量第三

【図 19:構造別比較p<1】

P<1 では、第 2 用法、第 3 用法ともに「2,情報の統合」で大きくつまずいている(【図

19】のイの部分)。

このつまずきをP>1 の場合と同じように「~倍」だから増えると児童が考えたと仮定す

ると、次のようになる。【図 20】は第 2 用法の問題を、【図 21】は第 3 用法の問題を示して

いる。

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47

【図 20:液量第二】

児童が「~倍→増える」と考えたとすると、量の多いコーラの図を選択して、不正解に

なる(調査問題と合致する)。

【図 21:液量第三】

しかし、液量第二と同じように液量第三でも「~倍→増える」と考えたとすると、量の

多いサイダーを選択して正解となってしまう(調査結果と食い違う)。

P<1 の場合にP>1 と同じように誤答したと考えると、「液量第二」は不正解するが、「液

(2):サイダーの量を下のように表わすと、コーラの量はア~

ウのうちどれですか。ア~ウに○をつけてください。

サイダー コーラ

サイダーが 7.5 リットルあります。コーラはサイダー

の 0.6倍あります。コーラは何リットルありますか。

(2):コーラの量を下のように表わすと、サイダーの量はア~

ウのうちどれですか。ア~ウに○をつけてください。

コーラ サイダー

コーラは 4.5リットルあります。これはサイダーの 0.6

倍の量です。サイダーは何リットルありますか。

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48

量第三」は正解することになる。しかし、P<1 の場合は、両方とも正答率が下がっている。

つまり、児童は単純に「~倍→増える」と考えているのではないことがわかった。そこ

で、「2,情報の統合」での児童の誤答に着目した。すると、「2,情報の統合」で誤答した

児童は、第 2 用法、第 3 用法ともに 9 人であった。そのうち、第 2 用法で量の多い方の図

を選択したのは 5 名、第 3 用法で量の尐ない方の図を選択したのは 7 名であった。

これは児童が、「サイダー<コーラ」と考えていることを、示しているのかもしれない。

第 2 用法の演算は「サイダー×割合=コーラ」で表される。そのため児童は、被乗数であ

る「サイダー」は、かけ算の結果である「コーラ」より値が小さくなると考えているので

はないだろうか。

つまり、児童は「基準量×割合=比較量」の関係で表されるものは、「基準量<比較量」

の関係になると考えているのではないだろうか。そのように考えると、今回は「サイダー

×割合=コーラ」となるので、間違った考え方をしている児童は「サイダー<コーラ」と

考えるので、第 2 用法で量の多いコーラ図を選択し、第 3 用法では量の尐ないサイダーの

図を選択して不正解になるのだと考えられる。

増える

量の多い方の図を選択

第 3 用法

正解

第 2 用法

不正解

~倍

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- - 49

このように考えると、児童が「2,情報の統合」でつまずいた理由が説明できる。

さらに、児童がこの考え方でいるならば、第 2 用法は「サイダー×割合=コーラ」とな

ることがわかっているので、「2,情報の統合」で数量関係が把握できていなくても、「3,

立式」で「7.5(サイダーの量)×0.6(割合)」と正しく立式でき、正答率を上げたのだと

考えられる。

基準量

尐ない

比較量

多い

~倍・かけ算

増える

サイダーが 7.5リットルあります。コーラはサイダー

の 0.6倍あります。コーラは何リットルありますか。

液量第二

コーラは 4.5 リットルあります。これはサイダーの

0.6倍の量です。サイダーは何リットルありますか。

液量第三

第二用法

多い図選択

不正解

第三用法

尐ない図選択

不正解

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(3)数値の違いによる正答率の比較

次に、問題文中の数値の違いが、正答率に与える影響について考える。【表 22】は、本調

査で使用した問題文中の数値である。

【表 22:本研究で使用した数値】

B(基準量) A(比較量) P(割合)

数値の組み合わせ①

10.5 1.4

数値の組み合わせ② 4.5 0.6

数値の組み合わせ①、②ともに基準量は、7.5 で同じである。割合の値を①のように 1.4

とした場合は、「基準量<比較量」、割合の値を 0.6 とした場合は、「基準量>比較量」とな

る。この 2 組の数値の違いが与える影響について検討していく。

【図 22】は、問題全体での①と②の数値の違いによる各下位での過程正答率の変化を表

している。

0%

20%

40%

60%

80%

100%

1.質問文理解 2.情報の統合 3立式 4解答

① ②

【図 22:数値の違いによる比較】

7.5

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このグラフから、次のようなことが読み取れる。

・ 数値の組み合わせ②は、「2,情報の統合」、「3,立式」での正答率が①よりやや低い。

・ 数値の組み合わせ①、②ともに、下位過程が進むにつれ正答率を下げていく。

この結果をさらに問題構造(第 1 用法・第 2 用法・第 3 用法)ごとに分析していく。

(第 1 用法)

第 1 用法のみは「液量問題」、「長さ問題」、「生産問題」の 3 つの文脈について調査を行

っているので、それぞれの文脈ごとに数値の組み合わせ(①、②)による正答率の違いを

見ていく。

【図 23】は「液量問題」の正答率を、【図 24】は「長さ問題」の正答率を、【図 25】は

「生産問題」の正答率を、数値の組み合わせ(①,②)別に示したものである。

0%

20%

40%

60%

80%

100%

1.質問文理解 2.情報の統合 3立式 4解答

① ②

【図 23:数値の違いによる比較(液量問題)】

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0%

20%

40%

60%

80%

100%

1.質問文理解 2.情報の統合 3立式 4解答

① ②

【図 24:割合の値による比較(長さ問題)】

0%

20%

40%

60%

80%

100%

1.質問文理解 2.情報の統合 3立式 4解答

① ②

【図 25:割合の値による比較(生産問題)】

上の 3 つのグラフに共通して見られる特徴は、①と②のグラフに大きなずれが生じてい

ないことである。これは、第 1 用法の問題構造においては、数値の違い(①、②)による

下位過程での正答率の変化が、どの文脈でも(異なる文脈でも)生じていないことを示す。

すなわち、第一用法では、数値の違いによる正答率の変化が下位過程で生じないといえる。

3 つのグラフを見ると、第 1 用法の問題は全て「3,立式」の過程でつまずいている。こ

れは数値が違っても変わらないが、児童の誤答には数値が違うことによって、誤答の種類

に違いが出ていた。

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【表 23】は第 1 用法の問題での児童の誤答の種類をまとめたものである。

【表 23:第 1用法の誤答一覧】

液量問題 長さ問題 生産問題

数値の組み合わせ① 空白 2 人

言葉の式 1 人

かけ算 1 人

小数点 1 人

ひき算 1 人

かけ算 3 人

空白 2 人

逆 1 人

ひき算 1 人

たし算 1 人

空白 11 人

かけ算 1 人

数値の組み合わせ② かけ算 4 人

空白 2 人

逆 1 人

ひき算 1 人

たし算 1 人

空白 4 人

逆 3 人

かけ算 2 人

空白 6 人

逆 5 人

かけ算 3 人

ひき算 2 人

たし算 1 人

(表中の「逆」は除数と被除数を逆に立式したものを表す)

数値の組み合わせ①では、かけ算と空白が 3 つの文脈に共通してみられる誤答である。

問題構造別での比較でも述べたように、この原因は「何倍」という単語からかけ算を連想

したのだと考えられる。

数値の組み合わせ②になると、除数と被除数を逆にする誤答が 3 つの文脈で見られるよ

うになる。この「逆」の誤答をした児童の解答をみると、数値の組み合わせ①の場合は他

の第一用法では正解していて、数値の組み合わせ②になると逆に解答をしていることが確

認できた。「被除数>除数」の場合は正解して、「被除数<除数」の場合は逆に立式して不

正解になっているのである。言い換えると、「大きい数÷小さい数」なら立式できるが、「小

さい数÷大きい数」なら逆に立式して、誤答することが増えるのである。これは、わり算

は必ず「大きい数÷小さい数」になると思っている児童がいる可能性を表していると考え

られる。

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(第 2 用法)

【図 26】は、「液量第二」の正答率を数値の組み合わせ①,②別に示したものである。

0%

20%

40%

60%

80%

100%

1.質問文理解 2.情報の統合 3立式 4解答

① ②

【図 26:割合の値による比較(液量第二)】

このグラフに見られる特徴は、「2,情報の統合」での正答率の差である。数値の組み合

わせ②は、「2,情報の統合」で大きく正答率を下げている。これは、割合 P が 1 未満にな

ると「2,情報の統合」で児童は未知量と既知量の大小関係がわからなくなるということを

あらわしている。

「2,情報の統合」では、第 2 用法「B×P=A」のBとAの大小比較をさせている。そ

の際、P>1(①の場合)とP<1(②の場合)の違いで、B と A の大小を判断するのに難

易度の差が生じる。

しかし、前節で述べたように第二用法は問題文から、「~倍→かけ算」と考えることで、

立式の方法がわかるため、「3,立式」以降の過程では,それ程正答率に差はできていない。

グラフから「2,情報の統合」過程をのぞく、その他の下位過程においては、数値の違い

による難易度への影響は確認されない。次頁の【表 24】は「液量第二」での「2,情報の統

合」「3,立式」での誤答の一覧を示している。

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【表 24:第 2用法での誤答一覧】

2,情報の統合 3,立式

数値の組み合わせ① 同じ 2 人

小さい 1 人

たし算 1 人

小数点 1 人

数値の組み合わせ② 多い 5 人

同じ 3 人

空白 1 人

わり算 1 人

空白 1 人

たし算 1 人

(注:図中の小数点は小数点の打ち間違い)

(第 3 用法)

【図 27】は、「液量第三」の正答率を数値の組み合わせ①,②別に示したものである。

0%

20%

40%

60%

80%

100%

1.質問文理解 2.情報の統合 3立式 4解答

① ②

【図 27:割合の値による比較(液量第三)】

このグラフから見られる特徴は、「2,情報の統合」での正答率の差である。数値の組み

合わせ②の方で、多くの児童がつまずいている。「2,情報の統合」では、第 3 用法「A÷

P=B」の、BとA大小比較をさせている。その際、P>1(①の場合)とP<1(②の場

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合)の違いで、B と A の大小を判断するのに難易度の差が生じる。

しかし、第 3 用法は第 2 用法と違い、問題文にわり算を連想させる言葉がないので、「3,

立式」の過程で、数値の組み合わせ①、②ともに正答率は同じぐらいになっている。

また,「液量第三」も数値の違いによって「2,情報の統合」以外の過程での難易度への

影響は見られない。

【表 25】は、「液量第三」での「2,情報の統合」「3,立式」での誤答の一覧を示してい

る。

【表 25:第 3用法での誤答一覧】

2,情報の統合 3,立式

数値の組み合わせ① 同じ 1 人

多い 1 人

かけ算 4 人

小数点 1 人

ひき算 1 人

空白 1 人

その他 1 人

数値の組み合わせ② 尐ない 7 人

同じ 1 人

空白 1 人

かけ算 6 人

たし算 1 人

空白 1 人

その他 1 人

問題構造ごとに見た、数値の違いによる問題への影響をまとめると、次のようになる。

・ 第 1 用法では、特定の下位過程に影響を与えない

・ 第 2 用法・第 3 用法では、「2,情報の統合」の過程に影響を与える

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(4)問題文脈の違いによる正答率の比較

ここでは,「液量」、「長さ」、「生産」の三種類の文脈が,正答率に与える影響について考

える。【図 28】は、文脈別の正答率のグラフである。ただし、各問題の構造は、すべて第 1

用法である。

0%

20%

40%

60%

80%

100%

1質問文理解 2情報の統合 3立式 4解答

液量第一 長さ問題 生産問題

【図 28:文脈の違いによる比較】

このグラフから,次のような特徴が見られる。

・ 「液量」「長さ」と「生産」で正答率のパターンが違う

・ 「液量」「長さ」は「3,立式」でつまずく

・ 「生産」は「2,情報の統合」で最初につまずく、その後さらに「3,立式」でつまず

この 2 つの誤答パターンの違いはどのようにして起きたのかを考えた。

第 1 用法は「割合P」を求める問題である。だから、問題文に「基準量(サイダーの量)」、

「比較量(コーラの量)」の数値は両方とも書いてある。だから、「2,情報の統合」では、

問題文中に書かれている数値を比べて解答すればよい。それでも「生産」は約 3 割の児童

が「2,情報の統合」で誤答している。誤答の人数は「空白」が 6 人、「同じ長さを選択」

が 5 人、「長い方を選択」が 1 人、「複数選択していた」のが 1 人だった。「生産」の問題は

他に比べて「空白」の解答が多かった。解答時間は、児童がすべての問題に解答できるよ

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うにとってある。それにも関わらず、「空白」の解答が多いのは、「生産」の問題が他の 2

題より難しいからだと考えられる。

浅岡(1984)や麻柄(1992)などの研究では、児童は内包量概念が乏しいことが報告さ

れている。本調査で扱った「生産問題」には「1 時間あたりの針金の生産量」という内包量

が含まれている。この問題文中に扱われている量の違いにより、「生産問題」は他の 2 題よ

りも難しくなったのではないかと考えられる。

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(5)調査結果のまとめ

ここまでの 3 つの観点からの分析により、本調査では以下のことがわかった。

・ 第 1 用法は割合の値に関わらず、「3,立式」の過程で正答率を下げる。

・ 第 2 用法・第 3 用法は P>1 では「3,立式」、P<1 では「2,情報の統合」で正答率を

下げる。

・ 「液量問題」「長さ問題」に比べて「生産問題」は時間の知識を必要とするので難易度

が高い。

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第 4章 文章題指導の現状と指導への示唆

第 1 節 小数を含むかけ算・わり算文章題の現行の指導方法

本節では、現行の教科書では、小数を含むかけ算・わり算文章題に対して、どのような

指導が行われているのかを、次の 2 つの観点からみていく。

1 つ目に、教科書で扱われている図に着目し、2 つの数量関係を表す図や、立式を補助す

る図にはどのような図が用いられているのか調べる。

2 つ目に、教科書で扱われている問題文脈には、どのような問題文脈があるのか調べる。

なお、調べる教科書は、啓林館「わくわく算数 5 上」で、単元は「小数の計算のしかた

を考えよう」と「さらに小数の計算のしかたを考えよう」の二つの単元である。

(1)教科書で扱われている数量関係を表す図

3 章の調査より、児童は「2,情報の統合」で「未知量と既知量の大小関係」が把握でき

ていないことがわかった。これは教科書で扱われている、未知量と既知量の関係を表して

いる図が、2 つの関係を児童に分かりやすく表せていないからではないかと考えた。そこで、

教科書ではどのような図を用いて、児童に「未知量と既知量の大小関係」を指導している

かを、小数を含むかけ算・わり算の指導場面を中心に、ここでは述べる。

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(A)「線分図」

小数のかけ算・わり算を指導する場合、単元全体を通して「線分図」が多く使われてい

た。次の【図 29】【図 30】は例題として扱われた文章題中の「線分図」を紹介するもので

ある。

【図 29:かけ算の場面で扱われる線分図】

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【図 30:わり算の場面で扱われる線分図】

指導書によると、整数の場合に帰着させ、小数の計算も「0.1 を単位と見る」ことが出来

れば整数と同じように考えることができることを、児童に理解させるのが、こうした「線

分図」を利用する狙いのようである。

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(B)「関係図」

線分図以外に見られた図として、「関係図」がある。「関係図」とは、文章題などの問題

の仕組みを簡単な記号と矢印などを使って表した図である。教科書には、次の【図 31】に

示すようなものが見られた。

【図 31:教科書で扱われている関係図】

A

B

C

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【図 31】の A、B、C がそれぞれ「関係図」にあたる。指導書では、B の「関係図」を

用いることによって「あゆみさんはつばささんの 1.6 倍になっていることをおさえる」とあ

る。つまり、ここで意図されている「関係図」の働きは、あゆみさんとつばささんの数量

関係を表し、解決の手立てを考えるのを補助することではなく、解決の後に、「16cm(あゆ

みさんの長さ)は 10cm(つばささんの長さ)の 1.6 にあたる」という 2 つの数量関係を確

認することである。

(C)その他の補助図(ふきだしなど)

教科書を調べていると、(A)(B)以外にも、文章題の解決を補助するさまざまな図が見られ

た。

【図 32:ふきだし図の例】

【図 32】の①は、立式を補助するために用いられた「言葉の式」である。「言葉の式」は、

問題を解決するときに扱われる演算が「小数×整数」から「小数×小数」にかわる場面か

ら多く用いられている。これは、乗数が整数から小数に拡張されても、整数のときに考え

てきたことと同じように考えることが出来ることを児童に印象付けるためだと考えられる。

②は、扱われる演算が「小数×帯小数(1 以上の小数)」から「小数×純小数(1 未満の

小数)」にかわった場面で用いられていた。乗数が 1 未満になると、計算した結果が被乗数

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よりも小さくなる。本研究の調査結果からも、「かけ算をした結果は必ず大きくなる」と思

っている児童がいることが確認されている。しかし、乗数が 1 未満になると結果は小さく

なる。このふきだしは、児童にかけ算の結果が小さくなることもあることを気づかせるた

めに用いられている。

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(2)教科書で扱われている問題文脈

本研究の調査結果では、「液量問題」「長さ問題」と比べて、「生産問題」の正答率が低く

なっていた。これは、「生産問題」という問題の状況(問題文脈)の理解が、「液量問題」「長

さ問題」のそれに比べて、困難であったからと思われる。

では、なぜこのような問題文脈は、児童には難しかったのか。ここでは、小数のかけ算・

わり算の単元で扱われている問題の文脈の種類をまとめ、どのような文脈が多く扱われて

いるのかを調べる。調べる範囲は、啓林館「わくわく算数 5 上」で、単元は「小数の計算

のしかたを考えよう」と「さらに小数の計算のしかたを考えよう」の二つの単元である。

【表 26】は、この2つの単元で、扱われている問題の数を文脈ごとに、まとめたもので

ある。(たずねられている数量の種類を、その問題の文脈とした。)

【表 26:教科書で扱われる問題数(文脈別)】

文脈 問題数

重さ 11 問

液量 6 問

お金 5 問

長さ 5 問

面積 2 問

割合 1 問

【表 26】より、教科書には重さを使う問題が比較的多いことがわかる。「生産問題」のよ

うな時間を求める問題は見られなかった。ただし、6 年生上の「単位量あたりの大きさ」の

単元で時間を求める問題を扱っている。その単元までに、時間を扱う文章題は見られなか

った。

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以下に、教科書で扱われる各文脈の問題例を示す。

「重さ」の文脈

「液量」の文脈

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「お金」の文脈

「長さ」の文脈

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「面積」の文脈

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「割合」の文脈

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第 2 節 小数を含む文章題指導での改善点

この節では、第 1 節であげた教科書での指導法をもとに、児童のつまずきを解消するた

めには、どのような指導が効果的かを考える。

(1)線分図に関する改善点

教科書では文章題の数量関係を表すために、主に、次のような線分図が用いられている。

【図 33:教科書で用いられる数量関係を表す図】

【図 33】○アでは、解決の補助に線分図を用いている。しかし、線分図から式を考えさせ

るのではなく、A の部分にあるように、「言葉の式」をもとに立式させようとしている。そ

A

B

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して、○イ では、答えが出た後に、かけ算の結果がもとの数値より小さくなっていることを

確認している(【図 33】B の部分)。つまり、線分図で数量の大小関係を把握してから立式

するのではなく、立式し答えが出た後に、数量の大小関係を確認しているのである。

児童が自分一人で問題に取り組むときには、計算した後で大小関係を確認するのではな

く、あらかじめ計算の結果がどうなるかの見通しを立てる必要がある。児童が、自力で計

算の見通しを立てられるようになるためには、最初に提示する線分図から、未知量と既知

量の大小関係を読み取ることを指導する必要がある。

【図 33】の線分図では、2m の場合は 1.2kg よりも重くなることが視覚的によくわかる

が、0.8m が 1.2kg よりも軽くなることがわかりにくい。しかし、この問題は 0.8m の場合

を質問している。だから、0.8m の場合は 1.2kg よりも軽くなるという見通しが立つような

図を考える必要がある。

そこで、以下のような改善点を提案する。

(A)線分図を分けて示す

提案の一つ目は、【図 33】では、0.8m の場合、1m の場合、2m の場合を 1 つの線分図で

表しているものを、下の図のように 3 本の線分図に分けて提示することである。

0.8m

1.2kg×0.8m

1m

1.2kg×1m

2m

1.2kg×2m

【図 34:分けて提示する線分図】

上のように提示することで、0.8m の場合が 1 番軽く、2m の場合が 1 番重くなることが

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視覚的とらえやすくなる。【図 33】の教科書の図では、0.8m の場合が見にくい図になって

いる。さらに、1 つの線分図に 3 つの場合をかいているために、それぞれの数量関係がつか

みにくい。

しかし、【図 34】のように分けて提示することで、児童は「0.8m の場合は 1.2kg よりも

軽くなる」という見通しが立てやすくなると考えられる。それぞれの数量関係も、比べた

い長さの線分図を比べることで、どちらの場合が重くなるのかの見通しも立てやすくなる。

そして、教科書の場合と同じように計算した後に、大小関係を確認すると、見通しを立

てていた通りになるので、かけ算で積が被乗数よりも小さくなる場合があるということも、

図と結果から指導することができる。

(B)線分図の数値の打ち方を工夫する

2 つ目の提案は、教科書のように 1 つの線分図に 3 つの場合を表すために、数値の打ち方

を工夫することである。【図 33】では、数値は 0.8m の場合の外側に 1m の場合、さらに外

側に 2m の場合と書かれている。そのため、1 番内側にくる 0.8m の場合が見にくくなって

いる。そこで、次のように線分図に数値(目盛り)を打つ。

m:0m 0.8m 1m 2m

kg:1.2kg×0m 1.2kg×0.8m 1.2kg×1m 1.2kg×2m

【図 35:数値の打ち方を工夫した図】

【図 35】のように表すことで、外側に書かれた数値が見やすく、内側が見にくいという

点は解消される。なぜなら、小さい数字を内側、大きい数字を外側に書かずに、全ての数

値を同じように書くことで、特定の数値だけがよく目につくといったことがなくなるから

である。

そして、どこまでの線が 0.8m の場合を表しているかもわかるので、0.8m の場合は 1.2kg

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よりも軽くなるという見通しも立てられる。立式の際にも、2m の場合は 1m の 2 倍の長さ

だから、重さも「1.2×2(kg)」となることが確認できる。これは、黒板に提示するときな

どは、1m の長さのテープを 2 本用意しておき、1m のテープを 2 本つなぐことでよりわか

りやすくなると思われる。

このように、1 つの線分図に 3 つの場合を書いても、数値の打ち方を工夫することで、見

やすさは大きく改善されるのである。

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(2)問題文脈に関する改善点

第 1 節より、5 年生の「小数のかけ算・わり算」の単元では、重さ、液量、お金の問題が

多かった。特に重さの問題は全体の 3 分の 1 を占めていた。このことから、学校の授業で

児童は、特定の文脈の問題に多く取り組むことになると予想される。1 つ目の問題点は、こ

の扱う問題文脈に偏りがある点である。

2 つ目の問題点は、教科書の問題には、問題文の中に解決に必要な演算を気づかせるよう

な言葉が入っていることが多い点である。【表 27】【表 28】は、本調査で扱った問題と、教

科書で扱われている問題の 1 部を表したものである。

【表 27:本研究で扱った液量問題】

第 1用法 サイダーが 7.5 リットルあります。コーラは 10.5 リットルあります。コーラは

サイダーの何倍の量がありますか。

第 2用法 サイダーが 7.5 リットルあります。コーラはサイダーの 1.4 倍あります。コーラ

は何リットルありますか。

第 3用法 コーラは 10.5 リットルあります。これはサイダーの 1.4 倍の量です。サイダー

は何リットルありますか。

【表 28:教科書で扱われる問題例(構造別)】

第 1用法 3.6m のゴムひもを 0.4m ずつに切って、ゴム輪をつくります。ゴム輪は何本で

きますか。

第 2用法 まなみさんのクラスでは、1.5kg の空きかんを集めました。学校全体で集めた重

さは、この 14 倍です。学校全体で集めた空きかんの重さは何 kg ですか。

第 3用法 10kg の米を、等分して 6 つのふくろに入れます。

1 ふくろの米の重さは何 kg になりますか。

2 つの表の問題文を比べると、教科書で扱われる問題には、「~ずつ」「~倍」「等分」の

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ような演算を想像させるような言葉が含まれている。これでは、児童は問題文を読んで、

問題構造から立式するのではなく、問題文に含まれる言葉を手がかりに立式する可能性が

ある。

この 2 つの問題点を解決するために、本研究の調査で扱った「生産問題」のような時間

と伴って変わる量の問題を使い、問題文脈の種類を増やしたり、児童に問題文の言葉から

演算を考えるのではなく、しっかりと問題構造を把握して考える練習をさせたい。

そこで教科書で扱われていない文脈を考え、児童に問題構造をしっかり把握させる練習

問題を提案したいと思う。これにより児童が、文脈が変わっても、しっかりと問題構造を

把握して解決に取り組めているかを確認できるからである。

まず扱う問題文脈は、教科書でも扱われていなかった「距離とガソリンの消費量」を扱

うことにする。そして、児童が特定の言葉から演算を予測できないようにするために、次

の点に注意する。

・ 第 1 用法:「~ずつ」「分ける」という言葉を含まない

・ 第 2 用法:「~倍」という言葉を含まない

・ 第 3 用法:「1 あたり」という言葉を含まない

この 3 点は、教科書によく用いられている表現である。だから、その表現を使わないこ

とで、児童がどれだけ問題構造を把握できているかを確認することができると思われる。

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(A)第 1 用法

第 1 用法は、次のような問題文となる。

この問題を扱う目的は、次の 2 点である

・ 第 1 用法の問題で「~ずつ」などの言葉がなくとも解答できる。

・ わり算を「小さい数(0.9)÷大きい数(4.5)」と立式することもあることに気づ

く。

そして、次の【図 36】に表すような数量関係が把握でき、立式に至ることができるかを

確認する。

0ℓ □ 1ℓ 2ℓ

0km 0.9km 4.5km 9km

【図 36:第 1用法の問題の数量関係図】

(B)第 2 用法

扱う問題は第 1 用法と同じである。未知数を距離に変えるだけである。

この問題を扱う目的は次の 2 点である。

・ 第 2 用法の問題で「~倍」などの言葉がなくとも解答できる。

・ 乗数が 1 未満の場合でも数量関係を把握し、答えることができる。

ガソリン 1ℓで 4.5km 走る車があります。この車が 0.9km 走るには、何ℓのガソリンが

必要ですか

ガソリン 1ℓで 4.5km 走る車があります。この車は、0.4ℓのガソリンで何 km 走れます

か。

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0ℓ 0.4ℓ 1ℓ 2ℓ

0km □ 4.5km 9km

【図 37:第 2用法の問題の数量関係図】

(C)第 3 用法

「1 あたり」(この場合は、「1ℓあたり」)という言葉を使わずに、第 3 用法の問題をつく

るためには、第 1 用法、第 2 用法の問題文脈とは、尐し変更する必要がある。

この問題を扱う目的は、次の 2 点である。

・ 「1 あたり」という言葉がなくても立式できる。

・ 第 2 用法と第 3 用法の関係(第 3 用法は第 2 用法の逆)を割合(倍率)が 1 より

小さい場合でも、理解できる。

なら、4.5÷3 と立式することは易しい。しかし、「0.3 倍」から 4.5÷0.3 と立式することは、

難しい。

そこで、以下のように、第 2 用法と第 3 用法の関連を考えながら、立式に導く方法もあ

る。

車 A は 4.5km 走りました。これは車 B が走った距離の 0.3 倍です。車 B は何 km 走り

ましたか。

・車 C は 4.5km 走りました。これは車 D が走った距離の 3 倍です。車 D は何 km 走り

ましたか。

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4.5km

A

B

【図 38:問題文に示された数量関係】

(式) □×0.3=4.5

□を求める計算を考えるために

×0.3

÷0.3

【図 39:関係図】

(式) 4.5÷0.3=□

問題文脈についての改善点の最終的な目的は、教科書に無いようなタイプの問題でも、

児童がそれまでに解いてきた問題をもとにして、解決できるようになることである。特定

の問題文脈だけが得意で、それ以外は苦手といったことがないように、さまざまな例題に

とりくませ、問題文を読んで、構造を理解して、立式できるようにしたい。

そのまま式にすると

4.5

「逆」の計算でよいと考えるから

×0.3

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おわりに

「小学校算数における小数を含むかけ算・わり算文章題の解決過程に関する研究」とい

テーマで研究を行った結果、小数を含むかけ算・わり算文章題の難易度に影響すること、

また児童にとって解決が困難な解決過程が明らかになった。明らかになったのは次の点で

ある。

児童がつまずいた点は、問題状況を把握する「統合過程」もしくは解決するための演算

を作る「立式」の過程が多い。「立式」までたどり着いて計算間違いをする児童の数は尐な

かった。

問題の難易度に起因する点として数値がある。割合の数値が 1 以上か 1 未満で「統合過

程」の正答率に 20%近くの差ができる。また問題構造も影響し、かけ算で解決する「第 2

用法」よりも、わり算で解決する「第 1 用法」「第 3 用法」の正答率が低い。

問題文脈も時間を扱う「生産問題」が他の 2 題より正答率が低かったが、教科書には本

研究で扱った以外の問題文も多く扱われているので、この点に関しては今後も研究する必

要があると思われる。

私はこれまでに現場の経験がなく、漠然と「計算問題より文章題の方が難しい」という

ことしかわかっていなかった。しかし、この研究を通して、かけ算・わり算の文章題が児

童にとっていかに難しいものなのか。また、値が整数から小数に変化することで、児童は

どれだけ解決が困難になるのか。そういったことを現場に入る前に知ることができた。こ

の経験をここで終わらせるのではなく、自分が現場で指導し、その結果を受け止め、さら

に発展させていきたい。

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最後に本研究を進めるにあたり、親身になって細部にいたるまで親切丁寧なご指導をし

てくださいました國岡高宏先生には、心からお礼申し上げます。また、様々な機会を通じ

て親切な示唆を与えてくださいました﨑谷眞也先生、加藤久恵先生をはじめ数学教室の先

生方に深く感謝いたします。

さらに、本研究の調査を行う際に快く引き受けて下さった、名古屋市立大磯小学校の川

下孝幸先生はじめ職員の方々、調査に協力してくださいました先生方や児童の皆さんにお

礼申し上げます。

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参考資料

調査問題

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答え

液量問題:第一用法:P>1

次の問題を読んで(1)~(3)の質問に答えてください。

問題:サイダーが 7.5 リットルあります。コーラは 10.5 リットルあります。

コーラはサイダーの何倍の量がありますか。

(1):聞かれていることは次のア~エのうちどれですか。ア~エに○をつけてください。

オ、コーラの量

カ、サイダーの量

キ、コーラはサイダーの何倍か

ク、サイダーはコーラの何倍か

(2):サイダーの量を下のように表わすと、コーラの量はア~ウのうちどれですか。

ア~ウに○をつけてください。

サイダー コーラ

ア イ ウ

(3):この問題をとくための式をつくり、答えを出してください。

式:

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答え

液量問題:第二用法:P>1

次の問題を読んで(1)~(3)の質問に答えてください。

問題:サイダーが 7.5 リットルあります。コーラはサイダーの 1.4倍あります。

コーラは何リットルありますか。

(1):聞かれていることは次のア~エのうちどれですか。ア~エに○をつけてください。

ケ、コーラの量

コ、サイダーの量

サ、コーラはサイダーの何倍か

シ、サイダーはコーラの何倍か

(2):サイダーの量を下のように表わすと、コーラの量はア~ウのうちどれですか。

ア~ウに○をつけてください。

サイダー コーラ

ア イ ウ

(3):この問題をとくための式をつくり、答えを出してください。

式:

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答え

液量問題:第三用法:P>1

次の問題を読んで(1)~(3)の質問に答えてください。

問題:コーラは 10.5 リットルあります。これはサイダーの 1.4倍の量です。

サイダーは何リットルありますか。

(1):聞かれていることは次のア~エのうちどれですか。ア~エに○をつけてください。

ス、コーラの量

セ、サイダーの量

ソ、コーラはサイダーの何倍か

タ、サイダーはコーラの何倍か

(2):コーラの量を下のように表わすと、サイダーの量はア~ウのうちどれですか。

ア~ウに○をつけてください。

コーラ サイダー

ア イ ウ

(3):この問題をとくための式をつくり、答えを出してください。

式:

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答え

液量問題:第一用法:P<1

次の問題を読んで(1)~(3)の質問に答えてください。

問題:サイダーが 7.5 リットルあります。コーラは 4.5 リットルあります。

コーラはサイダーの何倍の量がありますか。

(1):聞かれていることは次のア~エのうちどれですか。ア~エに○をつけてください。

チ、コーラの量

ツ、サイダーの量

テ、コーラはサイダーの何倍か

ト、サイダーはコーラの何倍か

(2):サイダーの量を下のように表わすと、コーラの量はア~ウのうちどれですか。

ア~ウに○をつけてください。

サイダー コーラ

ア イ ウ

(3):この問題をとくための式をつくり、答えを出してください。

式:

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答え

液量問題:第二用法:P<1

次の問題を読んで(1)~(3)の質問に答えてください。

問題:サイダーが 7.5 リットルあります。コーラはサイダーの 0.6倍あります。

コーラは何リットルありますか。

(1):聞かれていることは次のア~エのうちどれですか。ア~エに○をつけてください。

ナ、コーラの量

ニ、サイダーの量

ヌ、コーラはサイダーの何倍か

ネ、サイダーはコーラの何倍か

(2):サイダーの量を下のように表わすと、コーラの量はア~ウのうちどれですか。

ア~ウに○をつけてください。

サイダー コーラ

ア イ ウ

(3):この問題をとくための式をつくり、答えを出してください。

式:

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答え

液量問題:第三用法:P<1

次の問題を読んで(1)~(3)の質問に答えてください。

問題:コーラは 4.5 リットルあります。これはサイダーの 0.6倍の量です。

サイダーは何リットルありますか。

(1):聞かれていることは次のア~エのうちどれですか。ア~エに○をつけてください。

ノ、コーラの量

ハ、サイダーの量

ヒ、コーラはサイダーの何倍か

フ、サイダーはコーラの何倍か

(2):コーラの量を下のように表わすと、サイダーの量はア~ウのうちどれですか。

ア~ウに○をつけてください。

コーラ サイダー

ア イ ウ

(3):この問題をとくための式をつくり、答えを出してください。

式:

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答え

長さ問題:第一用法:P>1

次の問題を読んで(1)~(3)の質問に答えてください。

問題:青いリボンの長さは 7.5mです。赤いリボンの長さは 10.5mです。

赤いリボンは青いリボンの何倍の長さでしょうか。

(1):聞かれていることは次のア~エのうちどれですか。ア~エに○をつけてください。

ヘ、 青いリボンの長さ

ホ、 赤いリボンの長さ

マ、 青いリボンの長さは赤いリボンの長さの何倍か

ミ、 赤いリボンの長さは青いリボンの長さの何倍か

(2):青いリボンの長さを下のように表わすと、赤いリボンの長さはア~ウのうちどれですか。

ア~ウに○をつけてください。

青いリボン

赤いリボン

(3):この問題をとくための式をつくり、答えを出してください。

式:

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答え

長さ問題:第一用法:P<1

次の問題を読んで(1)~(3)の質問に答えてください。

問題:青いリボンの長さは 7.5mです。赤いリボンの長さは 4.5mです。

赤いリボンは青いリボンの何倍の長さでしょうか。

(1):聞かれていることは次のア~エのうちどれですか。ア~エに○をつけてください。

ム、 青いリボンの長さ

メ、 赤いリボンの長さ

モ、 青いリボンの長さは赤いリボンの長さの何倍か

ヤ、 赤いリボンの長さは青いリボンの長さの何倍か

(2):青いリボンの長さを下のように表わすと、赤いリボンの長さはア~ウのうちどれですか。

ア~ウに○をつけてください。

青いリボン

赤いリボン

(3):この問題をとくための式をつくり、答えを出してください。

式:

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答え

生産問題:第一用法:P>1

次の問題を読んで(1)~(3)の質問に答えてください。

問題:1時間に 7.5mの針金を生産できる機械があります。

この機械で 10.5mの針金を生産するには何時間かかりますか。

(1):聞かれていることは次のア~エのうちどれですか。ア~エに○をつけてください。

ユ、 1時間に生産する針金の長さ

ヨ、 生産した針金の長さ

ラ、 7.5mの針金を生産するのにかかる時間

リ、 10.5mの針金を生産するのにかかる時間

(2):1時間に生産する長さを下のように表わすと、

生産した針金の長さはア~ウのうちどれですか。

ア~ウに○をつけてください。

1時間に生産する長さ

生産した針金の長さ

(3):この問題をとくための式をつくり、答えを出してください。

式:

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答え

生産問題:第一用法:P<1

次の問題を読んで(1)~(3)の質問に答えてください。

問題:1時間に 7.5mの針金を生産できる機械があります。

この機械で 4.5mの針金を生産するには何時間かかりますか。

(1):聞かれていることは次のア~エのうちどれですか。ア~エに○をつけてください。

ル、 1時間に生産する針金の長さ

レ、 生産した針金の長さ

ロ、 7.5mの針金を生産するのにかかる時間

ワ、 4.5mの針金を生産するのにかかる時間

(2):1時間に生産する長さを下のように表わすと、

生産した針金の長さはア~ウのうちどれですか。

ア~ウに○をつけてください。

1時間に生産する長さ

生産した針金の長さ

(3):この問題をとくための式をつくり、答えを出してください。

式:

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調査結果

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組み合わせ A

液量問題 p>1 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 液量問題 p>1 正解者 全員 正答率

第一用法

1.関係文理解 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

第一用法

1.関係文理解 11 11 100

2.情報の統合 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 2.情報の統合 11 11 100

3 立式 ×言葉 ×掛け算 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ×空白 ×小数点 ○ 3 立式 7 11 63.6

3 解答 ×言葉 ×空白 ○ ×小数点 ○ ×計算違い ○ ○ ×空白 ×小数点 ○ 3 解答 5 11 45.5

第二用法

1.関係文理解 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ × ○ ○

第二用法

1.関係文理解 10 11 90.9

2.情報の統合 ×同じ ○ ○ ×小さい ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 2.情報の統合 9 11 81.8

3 立式 ×足し算 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 3 立式 10 11 90.9

3 解答 ×言葉 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 3 解答 10 11 90.9

第三用法

1.関係文理解 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ × ○ ○

第三用法

1.関係文理解 10 11 90.9

2.情報の統合 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 2.情報の統合 11 11 100

3 立式 ×引き算 ×掛け算 ○ ×掛け算 ○ ○ ○ ○ ×空白 ○ ○ 3 立式 7 11 63.6

3 解答 ×言葉 × ○ × ○ ○ ○ ○ ×空白 ○ ○ 3 解答 7 11 63.6

長さ問題 p<1 長さ問題 p<1

第一用法

1.関係文理解 ○ ○ ×空白 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

第一用法

1.関係文理解 10 11 90.9

2.情報の統合 ○ ○ ×空白 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 2.情報の統合 10 11 90.9

3 立式 ×青÷赤 ×掛け算 ×空白 ×青÷赤 ○ ×空白 ○ ○ ×空白 ○ ○ 3 立式 5 11 45.5

3 解答 ×言葉 × ×空白 × ○ ×空白 ○ ○ ×空白 ○ ○ 3 解答 5 11 45.5

生長問題 p>1 生長問題 p>1

第一用法

1.関係文理解 ○ ○ ×空白 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

第一用法

1.関係文理解 10 11 90.9

2.情報の統合 ○ ○ ×空白 ○ ○ ○ ○ ×複数選択 ○ ○ ○ 2.情報の統合 9 11 81.8

3 立式 ×空白 ○ ×空白 ×掛け算 ○ ×空白 ×空白 ×空白 ×空白 ×空白 ○ 3 立式 3 11 27.3

3 解答 ×空白 ○ ×空白 × ○ ×空白 ×空白 ×空白 ×空白 ×空白 ○ 3 解答 3 11 27.3

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組み合わせ B

液量問題 p<1 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 液量問題 p<1 正答

者 全員

正答

第一用法

1.関係文理解 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

第一用法

1.関係文理解 12 12 100

2.情報の統合 ○ ×同じ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ×同じ ○ ○ ○ 2.情報の統合 10 12 83.3

3 立式 ○ ×かけ算 ×かけ算 ○ ○ ○ ○ ○ ×空白 ○ ○ ○ 3 立式 9 12 75

3 解答 ○ × × ○ ○ ○ ○ ○ ×空白 ○ ×計算違い ○ 3 解答 8 12 66.7

第二用法

1.関係文理解 ○ ○ × ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

第二用法

1.関係文理解 11 12 91.7

2.情報の統合 ○ ×同じ ×同じ ○ ○ ○ ×多い ○ ○ ○ ×同じ ○ 2.情報の統合 8 12 66.7

3 立式 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 3 立式 12 12 100

3 解答 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ×計算違い ○ ○ ○ 3 解答 11 12 91.7

第三用法

1.関係文理解 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

第三用法

1.関係文理解 12 12 100

2.情報の統合 ○ ×同じ ○ ○ ○ ×少ない ○ ○ ×少ない ×少ない ×少ない ○ 2.情報の統合 7 12 58.3

3 立式 ○ ○ ○ ○ ○ ×かけ算 ○ ○ ×かけ算 ○ × ○ 3 立式 9 12 75

3 解答 ○ ○ ○ ○ ○ × ○ ○ × ×計算違い × ○ 3 解答 8 12 66.7

長さ問題 p<1 長さ問題 p<1

第一用法

1.関係文理解 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ×

第一用法

1.関係文理解 11 12 91.7

2.情報の統合 ○ ×同じ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 2.情報の統合 11 12 91.7

3 立式 ○ ×かけ算 ×青÷赤 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ×空白 ○ 3 立式 9 12 75

3 解答 ○ × × ○ ○ ×単位 ○ ○ ×空白 ○ ×空白 ×単位 3 解答 6 12 50

生長問題 p>1 生長問題 p>1

第一用法

1.関係文理解 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ×空白 ○ ○ ○ ○

第一用法

1.関係文理解 11 12 91.7

2.情報の統合 ×空白 ×空白 ×同じ ○ ○ ○ ○ ×空白 ○ ○ ×同じ ○ 2.情報の統合 7 12 58.3

3 立式 × ○ ○ ○ ○ ○ ○ ×空白 ○ ×空白 ×空白 ○ 3 立式 8 12 66.7

3 解答 × ○ ×計算違い ×単位 ○ ×計算途中 ×単位 ×空白 ×空白 ×空白 ×空白 ○ 3 解答 3 12 25

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組み合わせ C

液量問題 p<1 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 液量問題 p<1 正解数 全員 正解率

第一用法

1.関係文理解 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

第一用法

1.関係文理解 12 12 100

2.情報の統合 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 2.情報の統合 12 12 100

3 立式 ○ ×かけ算 ○ ×逆 ×引き算 ○ ○ ○ ×かけ算 ×たし算 × ○ 3 立式 6 12 50

3 解答 ×計算違い × ○ × × ○ ○ ○ × × × ○ 3 解答 5 12 41.7

第二用法

1.関係文理解 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

第二用法

1.関係文理解 12 12 100

2.情報の統合 ×空白 ×多い ○ ○ ×多い ○ ○ ○ ○ ×多い ×多い ○ 2.情報の統合 7 12 58.3

3 立式 ○ ×わり算 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ×たし算 ×空白 ○ 3 立式 9 12 75

3 解答 ○ × ○ ○ ○ ○ ○ ○ ×計算違い × △正解 ○ 3 解答 8 12 66.7

第三用法

1.関係文理解 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

第三用法

1.関係文理解 12 12 100

2.情報の統合 ×空白 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ×少ない ×少ない ○ ×少ない ○ 2.情報の統合 8 12 66.7

3 立式 ×かけ算 ○ ○ ○ ×かけ算 ○ ○ ×かけ算 ×かけ算 ×たし算 ×空白 ○ 3 立式 6 12 50

3 解答 × ○ ○ ○ × ○ ○ × × × △正解 ○ 3 解答 6 12 50

長さ問題 p>1 長さ問題 p>1 12 0

第一用法

1.関係文理解 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

第一用法

1.関係文理解 12 12 100

2.情報の統合 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 2.情報の統合 12 12 100

3 立式 ○ ×かけ算 ○ ○ ×引き算 ○ ○ ○ ×かけ算 ×たし算 × ○ 3 立式 7 12 58.3

3 解答 ×計算違い × ×単位 ○ × ○ ○ ×計算違い × × × ○ 3 解答 4 12 33.3

生長問題 p<1 生長問題 p<1 12 0

第一用法

1.関係文理解 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

第一用法

1.関係文理解 12 12 100

2.情報の統合 ○ ○ ○ ×空白 ○ ○ ○ ○ ×長い ○ ○ ○ 2.情報の統合 10 12 83.3

3 立式 ×逆 ×逆 ○ × ×引き算 ○ ○ ×空白 ×かけ算 ×たし算 ×空白 ×空白 3 立式 3 12 25

3 解答 × × ○ × × ○ ○ ×空白 × × × ×空白 3 解答 3 12 25

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組み合わせ D

液量問題 p>1 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 液量問題 p>1 正答数 全員 正答率

第一用法

1.関係文理解 ○ ○ ○ ○ ○ × ○ ○ ○ ○ ○

第一用法

1.関係文理解 10 11 90.9

2.情報の統合 ○ ○ ○ ○ ×少ない ○ ○ ○ ○ ○ ○ 2.情報の統合 10 11 90.9

3 立式 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ×ひき算 ○ ×空白 ○ 3 立式 9 11 81.8

3 解答 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ × ○ ×空白 ○ 3 解答 9 11 81.8

第二用法

1.関係文理解 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

第二用法

1.関係文理解 11 11 100

2.情報の統合 ○ ○ ○ ○ ○ ×同じ ○ ○ ○ ○ ○ 2.情報の統合 10 11 90.9

3 立式 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ×単位 ○ 3 立式 10 11 90.9

3 解答 ○ ○ ○ ○ ○ ×計算違い ○ ○ ○ × ○ 3 解答 9 11 81.8

第三用法

1.関係文理解 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

第三用法

1.関係文理解 11 11 100

2.情報の統合 ○ ×同じ ○ ○ ○ ×多い ○ ○ ○ ○ ○ 2.情報の統合 9 11 81.8

3 立式 ×かけ算 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ×かけ算 × ×単位 ○ 3 立式 7 11 63.6

3 解答 × ○ ○ ○ ○ ○ ○ × × × ○ 3 解答 7 11 63.6

長さ問題 p>1 長さ問題 p>1 11

第一用法

1.関係文理解 ○ ○ ○ ○ ×空白 ○ ○ ○ ○ ○ ○

第一用法

1.関係文理解 10 11 90.9

2.情報の統合 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ×短い ○ ×短い ○ ○ 2.情報の統合 9 11 81.8

3 立式 ○ ○ ○ ○ ○ ×逆 ○ × ○ ×空白 ○ 3 立式 8 11 72.7

3 解答 ○ ○ ○ ○ ○ × ×単位 ×かけ算 ○ ×空白 ○ 3 解答 7 11 63.6

生長問題 p<1 生長問題 p<1 11

第一用法

1.関係文理解 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

第一用法

1.関係文理解 11 11 100

2.情報の統合 ×同じ ○ ○ ○ ×空白 ×同じ ○ ○ ×同じ ○ ○ 2.情報の統合 7 11 63.6

3 立式 ○ ×逆 ○ ○ ×空白 ×かけ算 ×空白 ×ひき算 ×逆 ×かけ算 ×逆 3 立式 3 11 27.3

3 解答 ○ × ○ ×単位 ×空白 × ×空白 × × × × 3 解答 2 11 18.9