平成16年度 特許出願技術動向調査報告書 インク …...第1章...

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平成16年度 特許出願技術動向調査報告書 インクジェット用インク (要約版) 平成17年3月 <目次> 第1章 インクジェット用インク分野の特許出願 動向と特徴............................ 1 第2章 政策動向 ............................. 18 第3章 産業活動の現状と市場動向 ............. 22 第4章 研究開発動向 ......................... 25 第5章 詳細解析 ............................. 29 第6章 提言 ................................. 37 問い合わせ先 特許庁総務部技術調査課 技術動向班 電話:03-3581-1101(内線2155)

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Page 1: 平成16年度 特許出願技術動向調査報告書 インク …...第1章 インクジェット用インク分野の特許出願動向と特徴 第1節 インクジェット用インクの技術俯瞰図

平成16年度 特許出願技術動向調査報告書

インクジェット用インク (要約版)

平成17年3月

特 許 庁

<目次>

第1章 インクジェット用インク分野の特許出願

動向と特徴............................ 1

第2章 政策動向 ............................. 18

第3章 産業活動の現状と市場動向 ............. 22

第4章 研究開発動向 ......................... 25

第5章 詳細解析 ............................. 29

第6章 提言 ................................. 37

問い合わせ先 特許庁総務部技術調査課 技術動向班 電話:03-3581-1101(内線2155)

Page 2: 平成16年度 特許出願技術動向調査報告書 インク …...第1章 インクジェット用インク分野の特許出願動向と特徴 第1節 インクジェット用インクの技術俯瞰図

第 1 章 インクジェット用インク分野の特許出願動向と特徴

第 1 節 インクジェット用インクの技術俯瞰図

インクジェットプリンターはパーソナルユースのコンピュータ、ネットワーク等のデジタ

ル情報用の低廉な印刷機として 1980~1990 年代に急速に発展した。最近では日本だけで年間

約 600 万台が生産され、家庭用印刷機として定着している。オフィス用印刷機では進展の著

しいレーザープリンター、産業用では長い歴史のある製版印刷技術に比較して、印刷速度、

画質の面で競合する。これらの技術と、用途(応用分野、新規分野)、目的で棲み分けを行い

つつ、インクジェット印刷技術が発展した。技術面では印刷速度の向上、高画質化、プリン

ト信頼性、画質保存性の改善などがある。これらは染料、顔料色材の改良や、インク調合技

術の向上とともに、インクの吐出と記録媒体への浸透・乾燥に関する研究成果と、それを背

景とした記録媒体技術の向上に負うところが大きい。画質とその耐久性では 2003 年になって

それまで開発目標としてきた銀塩写真の画質に接近または凌駕したとするインクジェットプ

リンターが開発された。写真プリント、美術工芸品の複製などで完成度の高さにはすばらし

いものがある。

こうした特性を一層活かす用途として、インクジェットプリンターとスキャナー、Fax、通

信などの機能を組み合わせた複合機が登場、メーカー各社の競争が始まっている。また大型

フォーマットのインクジェット印刷技術が進展し、ビル壁の広告媒体の製造、電車、航空機

など、大型移動体(三次元)表面への印刷など、プリンター、コンピュータ両面の進展に伴

い新しい利用分野が成長しつつある。

図-1 インクジェット用インクの技術俯瞰図

情報記録(特にデジタル型)

高画質化 ドット径調節、吹出インキ量調節 ドット配列/色調階層化、真円性、多色化着弾精度、色域、ΔE値 色再現性

高速印刷化 印刷性(10kHz→50kHz or higher) ワイドヘッド化、多ノズル化 送紙速度・安定性、低騒音性速乾性インク(ゲルなど)

高機能印刷用インク 有機ELディスプレイパネル、パターニング 大判カラーパネル印刷 (Wide, Large Format Printing) 屋外耐光性表示材料 デザイン業界、テキスタイル 産業用マーキング UV硬化インク印刷、機能性インク

プリント信頼性 インク物性(粘度、表面張力、濡れ性) 目詰まりのない組成(短期、長期放置) ヘッドコゲーション回避 インク安定性(接触材料、長期保存)

 

分散・配合ミル精密濾過

添加剤  分散性、安定性、耐久性改善

色素(顔料)  カーボンブラック  有機顔料  表面処理

樹脂溶液  堅牢性  分散性  色素安定性  UV硬化性

色素(染料)  吸収スペクトル  水溶性、油溶性

溶媒  分散性、物性  精製

塗工紙製造  塗工材  サイジング剤  表面サイジング剤  パルプ素材

商業印刷媒体  機能性画面  ワイド画面  プラスチックス  専用材料  ダンボール  布帛  食品 車体

電子写真方式固体トナー液体トナー

感熱方式熱転写感熱発色

節電エレクトログラフィー方式イオン

マグネトグラフィー方式磁気ヘッド+熱磁気記録

光記録方式銀塩+CRT、レーザー、LED、FOT

インクジェット方式(オンディマンド方式、コンティニアス方式)

インクジェット用インク、インクセット(基本色:CMYB)

プリンター用ヘッド ノズル構成材料   無機系(セラミックス、金属など)   有機系(感光性樹脂、フッ素系樹脂など)   その他、表面被覆材 ノズル径、ノズル配列 汚染防止 カートリッジ一体型

インクジェット記録方法 記録信号→力学的エネルギー変換方式 機械変換方式   圧電効果(ピエゾ)式ヘッド 気泡発生圧方式   抵抗発熱ジェット式ヘッド   誘導加熱、放電加熱方式   電磁波熱変換方式 プリンターシステム   プリンターヘッド、ノズル駆動周波数、波形   インク導管   用紙位置決め、制御、給紙   吹出速度、飛翔特性、紙間距離

高画質化、耐久性 印字適性 細孔特性 液体浸透性 裏面反射率 耐油性 親水性 乾燥時間

インクジェット用記録用紙  塗工紙、非塗工紙  (専用紙)(光沢紙)  OHPシート

応用分野フィス利用

 ネットワーク印刷機D出力刷校正

商業印刷 見本、美術作品印刷 ラージフォーマット印刷 ワイドフォーマット印刷

デジタル写真サービス軽印刷セキュリティ印刷

工業用途 狭幅文字印刷 レジストの印刷

塗布捺染、染色加工

家庭、オ

 CA 印

新規分野商業印刷 デジタル捺染 広幅パッケージ印刷オンディマンド書籍印刷

工業用途 精密噴霧・注入装置 精密塗布装置

インク水性、油性、固体、ゲル、特殊機能性インク

カートリッジ

半導体、プリント基盤PDP、ディスプレイパネルDNAチップ

画像保存性 耐水性、耐オゾン性 耐擦過性 耐光・耐候性、変退色性 暗退色、色軌跡

用途

目的

印刷方式

技術体系

- 1 -

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インクジェット印刷技術は世界のネットワーク情報の他、デジタルカメラ、スキャナーな

どで発信されるカラー情報の簡便な印刷手段として利用されているが、耐久性、色情報の信

頼性、数値化、国際規格などに関して、なお多くの課題を抱えている。色彩学の発展で百万

色以上の表現が可能という宣伝も登場しているが、現在の色材で表現可能な色空間はなお限

界がある。インクジェット印刷技術が一層発展するには、クリアすべき課題が多いといえよ

う。こうしたインクジェット用インクに関する技術俯瞰図を図-1 に示した。

第2節 インクジェット印刷技術の市場規模とインク技術開発の全体像

インクジェットプリンターは米 Hewlett-Packard、Lexmark、および日本のキヤノン、セイ

コーエプソンが世界三極(日本、米国、欧州)の四大メーカーであり、大きなシェアを有す

るのが市場の特徴である。世界のインクジェット用インク需要に関する統計データはないが、

印刷機台数に比例して増加しているものと思われる。日米欧三極の特許出願件数および論文

数を含めて図-2 に示した。インクジェット技術開発の初期(1960~1980 年代)から、研究開

発の主力が企業にあったこともあり、特許出願件数に比較して論文数が極めて少ない。そう

した中で、日本への特許出願件数が三極の中で圧倒的に多く、また 1994、1998、2002 年とな

お増加傾向にある。一方論文数は少なく、年次推移として大きな増減はない。

図-2 インクジェット用プリンター市場規模とインク技術開発状況

注)プリンター市場は 2003 年のデータ

出典:(社)電子情報技術産業協会「プリンタに関する調査報告書」(平成 16 年 3 月)

第3節 インクジェット用インク技術の歴史と状況

インクジェット印刷技術は歴史的には、1867 年に L Kelvin がインク粒子への荷電実験を

行ったのが最初とされる。1879 年に L Rayleigh は現在の連続吐出の基礎となる液滴生成理

論を発表している。1930 年代にファクシミリへの応用が試みられたが、実用化には至らなか

った。本格的にインクジェット印刷が検討され始めたのは 1950 年代以降である。Siemens の

57

45

797

1,302

2,022

1994年

1998年

2002年

25

28

79

200

96

1994年

1998年

2001年 142

421

42545

35

1994年

1998年

2001年

6

円グラフ 外円:金額       内円:出荷台数棒グラフ     :特許出願件数

          :論文数

 単機能機1,385万台70%

 複合機580万台30%

 単機能機2,231億円55%

 複合機1,843億円45%

単機 能機500万台78%

 複合機138万台22%

 単機能機1,213億円76%

 複合機391億円24%

 複合機1,070万台42% 単機能機1,508万台58%

 複合機2,289億円49%

 単機能機2,335億円51%

84

- 2 -

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Dr Rune Elmquist により 1951 年に公開された特許で液圧送、ノズル吐出による連続吐出プ

リンターが提案されたが、実用化研究は 1960 年代に入って本格化した。1962 年に C R Winston

による電界制御方式(間欠吐出、US 3060429)、1963 年に R G Sweet(US 3373437)、1968 年

に C H Hertz(US 3416153)により荷電制御方式(連続吐出)が提案された。また 1970 年代

に入ってから圧電効果(ピエゾ効果)を用いた E L Kyser(US 3946398, Kyser 方式)、S I Zoltan

(US 3683212, Gould 方式)、N G A Stemme(US 3747120, Stemme 方式)等によってオンディ

マンド方式が発明された。さらに 1980 年代に入り、新しいタイプのオンディマンド方式であ

るバブルジェット、シンクジェットなどのサーマル(加熱型)方式、スパークジェット(放

電型)、スリットジェット(静電型)などが開発された。

1960~1980 年代に開発された技術の中の一部が使用目的に合わせて改良され、また 1980

年以降の発明に基づいて現在のインクジェット印刷技術が構成されている。日本を代表する

インクジェット印刷機メーカーはオンディマンド型の中で抵抗発熱(バブルジェット)方式

(キヤノン)、積層ピエゾ方式(セイコーエプソン)を採用している。

インクジェット用インクはこうしたインク吐出方式、さらにノズル特性に合わせて組成、

分散媒、粘度、表面張力、比重などの物性を制御する必要があり、このマッチングが不良で

あると、正常な印刷に支障が生じる。通常のコンピュータ出力用インクジェットプリンター

で使用するインクは、水溶性染料を水系溶媒に溶解した水性染料インクである。水溶媒で無

臭であり、有機溶剤の揮発は少ないことから、平版、グラビア印刷などの一般的印刷インク

に対して環境適合性が良好である。しかしこうしたインクで印刷された場合、耐光性、耐酸

化性、耐水性など、耐久性に問題が発生した。このため 1990 年頃から、色材面、インク組成

面での最適化や改良が進められた。

インクジェット用インクでは、染色用などに開発されてきた多くの色材の中から、主とし

て耐光性に優れた色材だけが選択され使用される。さらに耐水性(水溶性)、耐酸化性を改善

するため、染料分子の置換基構造の改良が進んだ。耐光性の解決が困難であった黒インクに

塗料などで一般化していたカーボンブラックの採用が検討され、次いでカラー印刷を行うた

めの有機顔料の採用が検討され、2000 年以降は水性顔料インクが実用化されている。顔料自

体は水に不溶であるから、水性媒体にこれを高分散させるための多様な技術が開発されてき

た。これらに合わせて、画質向上を目的とした記録媒体技術の改良が一貫して進められたの

も大きな特徴といえる。インクの研究開発ではインクジェット印刷機メーカーまたはこれと

提携した色材、化学、インク、塗料メーカーが大きな貢献を果たしてきた。一方記録媒体の

改良では、インクジェット印刷機メーカーとともに、製紙会社、化学メーカーが研究開発を

担ってきた。画質向上はインクジェット印刷の大きな課題であり、銀塩写真の画質を目指し

て多色化が進んでいるが、さらに耐久性改良、色空間拡大も可能とする色材開発、記録媒体

の改良は今後とも継続すべき課題である。

水性インクは記録媒体が液吸収性のある紙では有効であるが、プラスチック、金属、セラ

ミックスなどの媒体に印刷することはできない。そこで一般印刷と同様の有機溶媒をベース

とする溶剤・油性インク、常温で固体であるが、加熱溶融状態で吐出するソリッド(固体、

相変化ともいう)インク、さらには紫外線、電子線などの電磁波照射で媒体表面に着弾する

と同時に硬化させる UV 硬化(紫外線、電子線、放射線などの電磁波を用いる硬化全般を含む)

型インクなどが開発されてきた。これらのインクはインクジェット印刷の高速化に寄与する。

- 3 -

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第4節 インクジェット用インク分野での特許出願状況と出願件数の推移

インクジェット印刷技術は 1960 年代から実用化を目指して本格的な研究が開始されてお

り、長い歴史がある。この調査では最近の研究開発の進展に注目して優先権主張年として

1990 年以降の特許出願について調査した。特許出願件数とその日米欧三極での分布および、

1992 年、2001 年の 10 年間における変化を図-3、また出願件数の推移を図-4 に示した。画質

の向上、高速印刷化などを目指してインクジェット用インクの技術開発はなお継続されてお

り、特許出願件数は一貫して増加傾向が続いている。地域別では三極へ出願された特許の中、

日本への出願件数が 71%を占めており、その割合も増加傾向にある。

図-3 インクジェット用インク関連特許出願件数と日米欧三極の件数分布

2001年

欧州への出願318件13%

米国での登録240件10% 日本への

出願1,840件77%

1990年~2002年

欧州への出願2,709件14%

米国での登録2,970件15% 日本への出願

14,114件71%

1992年

日本への出願533件68%

米国での登録146件18%

欧州への出願108件14%

19,793件787件 2,398件

図-4 日米欧出願人国籍別のインクジェット用インク関連特許出願件数の推移

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002

優先権主張年

出願件数

日本 米国 欧州 全世界

出願人国籍

図-5 には日米欧三極間の特許出願件数を整理した。欧米への出願(米国は登録)件数の 40%

以上が日本からであり、また米国からの出願もそれに近いレベルである。欧州からの出願は

欧州域内でも 20%程度である。

日米欧三極へのインクジェット用インク関連特許出願について、出願人の国籍を解析する

と図-6 のようになる。国籍別では日本が突出しており、次いで米国、ドイツ、スイス、英国

の順となっている。

- 4 -

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図-5 日本、米国、欧州へのインクジェット用インク関連特許出願(米国は登録)における日米

欧出願人国籍別出願動向(1990~2002 年)

日本への出願 1990年~2002年

米国での登録1990年~2002年

欧州への出願 1990年~2002年

1990年~2002年

その他22件0.5%未満

日本12,422件88%

米国1,161件8%

欧州509件4%

14,114件 1992年

その他0件0%

欧州22件4%米国

48件9%

日本463件87%

533件 2001年

その他4件

0.5%未満

日本1,676件91%

米国135件7%

欧州25件1%

1,840件

1990年~2002年

欧州425件14%

米国1,223件41%

日本1,295件44%

その他27件1%

1992年

その他1件1%

日本87件59%

米国41件28%

欧州17件12%

146件 2001年

その他5件2%

欧州13件5%

米国149件62%

日本73件31%

240件

1990年~2002年

その他19件1% 日本

1,126件41%

米国1,004件37%

欧州560件21%

2,709件 1992年

その他0件0%

欧州21件19%

米国25件23%

日本62件58%

108件 2001年

日本118件37%

米国141件44%

欧州58件18%

その他1件

0.5%未満

318件

2,970件

図-6 日米欧三極へのインクジェット用インク関連特許の出願人国籍の解析

3,388

585

430

347

45

32

24

19

19

16

15

10

14,843

0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000

日本

米国

ドイツ

スイス

イギリス

オランダ

イタリア

フランス

イスラエル

オーストラリア

フィンランド

台湾

韓国

出願人国籍

出願件数

10,000 15,000

- 5 -

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日米欧三極以外では中国、韓国への特許出願に注目し、1996~2002 年の出願について特許

件数を比較した。結果は図-7 に示したように、三極に比較して少ないものの、1996 年以降の

出願件数は多い。図-8 によれば中国では中国国内からよりも三極から中国への出願が大部分

で、また増加傾向にある。図-9 に示したように韓国でも状況は類似しているが、三星電子な

ど、韓国企業の出願件数が増加傾向にある。

図-7 インクジェット用インク関連の中国、韓国特許出願件数の比較(1996 年~2002 年)

10,497

2,032

1,973

502

121

0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000

日本

米国

欧州

中国

韓国

出願先

出願件数

図-8 中国へのインクジェット用インク関連の特許出願件数の推移

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002

優先権主張年

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

(全

日本 米国 欧州 中国 台湾 韓国 全世界

出願人国籍

図-9 韓国へのインクジェット用インク関連の特許出願件数の推移

0

5

10

15

20

25

1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002

優先権主張年

日本 米国 欧州 韓国

出願人国籍

- 6 -

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日米欧の三極における出願構造を、出願人の国籍別に解析することは、出願人による市場

戦略の動向を見る上で重要である。その解析結果を図-10 に示しているが、日本への特許出

願件数を出願人の国籍別にみると、日本国籍出願人からの出願が 88%(12,422 件)と圧倒的

で、米国、欧州からの出願はそれぞれ 8%(1,161 件)、4%(509 件)である。一方、米国へ

の特許出願件数を出願人の国籍別にみると、日本と米国がそれぞれ約 40%で同程度を占めて

おり、また、欧州への特許出願件数を出願人の国籍別にみると、日本と米国がそれぞれ約 40%

で、欧州からの出願は 20%程度にすぎない。

図-10 日本、米国、欧州へのインクジェット用インク関連特許(米国は登録)における日米欧

三極出願構造(1990 年~2002 年)

12,422

1,295 1,126

1,161 1,223 1,004

509 425 560

22 27 19

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

出願件数

日本 米国 欧州

その他

欧州

米国

日本

出願先国

出願人国籍

日本への出願(14,114件)

日本12,422件88.0%

欧州3.6%

米国8.2%

その他0.2%

米国での登録(2,970件)

日本43.6%

その他0.9%欧州

14.3%

米国1,223件41.2%

欧州への出願(2,709件)

欧州560件20.7%

米国37.0%

日本41.6%

その他0.7%

1,295件

1,161件

1,126件

509件

1,004件

425件

- 7 -

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第5節 特許出願上位企業と出願件数の推移

特許出願人別の件数を上位出願人について解析したのが図-11 である。日米欧三極のいず

れかに出願された合計件数でみると、キヤノンが最も出願件数が多く、続いてセイコーエプ

ソン、コニカミノルタホールディングスと日本企業が上位を独占している。

日米欧三極、および日本、米国、欧州への出願件数上位の出願人について 1990 年~2002

年の間での出願件数の推移を解析した。この解析結果を図-12、図-13、図-14、図-15 に示し

た。

キヤノンが三極全体で出願件数が最も多いが、1993 年をピークとして出願件数の大きな増

減は見られなくなっている。セイコーエプソンでは緩やかな出願件数の増加傾向が続いたが

1999 年以降やはり一定レベルに達している。それに反してコニカミノルタホールディングス、

富士写真フイルムは 2000 年頃から特許出願が急増しており、インクジェット事業強化方針の

反映といえよう。米国、欧州でもキヤノンが首位であるが 1995 年以降は縮小傾向にある。

図-11 日米欧三極へのインクジェット用インク関連の特許出願件数上位企業と出願件数

2,705

1,567

1,226

1,013

926

915

638

540

513

498

0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000

キヤノン(株)

セイコーエプソン(株)

コニカミノルタホールディングス(株)

富士写真フイルム(株)

三菱製紙(株)

Eastman Kodak Co

Hewlett-Packard Co

(株)リコー

王子製紙(株)

Xerox Corp

出願人

出願件数

- 8 -

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図-12 日米欧三極への特許出願件数上位企業と出願件数推移

24 39 35 27 35 38 35 88 60 49 28 24

36 27 39 68 67 68 61 40 43 24

24 41 33 34 44 67 62 49 92 68

54 30 22 39 55 53 63 81 111 93

38 70 55 53 39 72 78 128 115 166 99

74 34 88

62 59 101 43 64 99 114 126 137 212 201 177 172

171 125 220 170 192 181 171 186 197

1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002

Xerox Corp16

王子製紙(株)18 11 11

(株)リコー6 128

Hewlett-Packard Co61120

37 31 42 137 129 175 208 131Eastman Kodak Co72277

三菱製紙(株)6 7

361174富士写真フイルム(株)3 2 7 6 14 23

227

42 69 66 90 117 427143コニカミノルタ

ホールディングス(株) 5 3 2 6 3253

セイコーエプソン(株)

268296319209キヤノン(株)

1990

優先権主張年

出願

図-13 日本への特許出願件数上位企業と出願件数推移

26 28 34 18 31 28 32 32

35 54 54 61 50 35 43 23

30 39 60 55 40 79 67

26 62 48 51 36 65 68 123 101 162 99

60 28 72 148 336

59 55 86 35 44 61 78 83 104 151 144 153 172

115 95 112 180 178 187 164 110 126 120 97 160 188

1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002

252731333718810132 6 9

25富士ゼロックス(株)

1413151415三菱化学(株)

637159474919143 2 12

283

Eastman Kodak Co

11 91731 24王子製紙(株)

10724 38 32

5(株)リコー

56三菱製紙(株)

19721136523

富士写真フイルム(株)

40812710377575736 23416135

コニカミノルタ

ホールディングス(株)

セイコーエプソン(株)

キヤノン(株)

1990

優先権主張年

- 9 -

Page 11: 平成16年度 特許出願技術動向調査報告書 インク …...第1章 インクジェット用インク分野の特許出願動向と特徴 第1節 インクジェット用インクの技術俯瞰図

図-14 米国への特許出願件数上位企業と出願件数推移

11 10

12 19

10 8

14 12 23 12

8 11 21 18 21 14 25 23 11

18 18 20 23 23 16

21 18 38 35 36 23 11

31 18 71 48 33 35 41 31 37 9

1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002

452 2 217 8

2DuPont Co

3 5 21 1444

Imperial Chemical

Industries

9 6 9 910

611 31

コニカミノルタ

ホールディングス(株)

5 7 5 5 4214 3 33M Co

5211富士写真フイルム(株)

321セイコーエプソン(株)

28151043

107

Hewlett-Packard Co

11141015167

Xerox Corp

176852104 5

142 1

5943Eastman Kodak Co

7554キヤノン(株)

1990

優先権主張年

図-15 欧州への特許出願件数上位企業と出願件数推移

9 11

8 7 11 12 9

7 5 11 5 10 18 11 5

22 19 36 34

7 11 15 16 19 29 37

25 12 47 33 23 25 25 30 37 17

1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002

31 1 42518富士写真フイルム(株)

3 4 36

45

15

4DuPont Co

5 6 1343 3

1831

コニカミノルタ

ホールディングス(株)

31115

1 33M Co

121717127 1422 2

Clariant International

3 3 198XEROX Corp

21318179

57

2セイコーエプソン(株)

4014

8175Hewlett-Packard Co

5136974

6911 2 3

5739Eastman Kodak Co

96443キヤノン(株)

1990

優先権主張年

- 10 -

Page 12: 平成16年度 特許出願技術動向調査報告書 インク …...第1章 インクジェット用インク分野の特許出願動向と特徴 第1節 インクジェット用インクの技術俯瞰図

第6節 技術分野別の特許出願動向

インクジェット用インク関連で検索した全特許を技術分類軸で内容を分類し、技術内容別

の出願件数、研究機関の特徴、技術開発の流れの解析を試みた。1 件の特許に複数の技術分

類が付されるので、技術分類の割合は特許件数そのものの割合とは異なる。1990 年~2002

年に出願された全特許の技術分類結果を図-16 に示した。各技術分類の割合(%)は出願特

許に対して付された複数の技術分類の合計に対する当該技術分類合計数の割合を示している。

同様に三極に出願された全特許について、技術分野ごとの地域分類を行った結果を図-17

に示した。件数では日本からの出願件数がいずれの技術分野でも 50%以上と多いので、50~

100%の部分のみを表示している。インク生産技術、インクジェット駆動方式、写真印刷、商

業印刷分野では欧米企業の割合が高く、インクの保存安定性などは日本からの出願比率が顕

著に高くなっている。

図-16 インクジェット用インク技術分野別の日米欧三極全特許の分類

1 インク組成物

1G 物性10%

1C 顔料色材8%

1B 染料色材10%

1A インク形態30%

2 生産技術

2A 分散技術68%

2Cの他13%

3 インクセット

3Bインクセット

 濃淡色・中間色併用系43% 3A インクセット

CMYK系57%

2B 色材精製19%

1

F 添加物16%

1E 溶媒・ベヒクル15%

1D バインダー樹脂11%

4 インクジェット記録方式

4C コンティニアス方式4%

4D その他の駆動方式3%

4E UV照射法8%

4F 乾燥促進法13%

4G 多段印刷34%

4H 制御技術19%

4B オンディマンド(サーマル)方式

15%

4A オンディマンド(ピエゾ)方式

4%

5 記録媒体

5A記録媒体・基材35%

5B 表面処理塗工

24%

5D 物性19%

5C 層構造・表面構造22%

7 用途・目的など

7A 家庭・オフィス利用

1%7B 写真印刷0.5%未満7G

高速印刷性7%

7F インクの保存安定性11%

7E 高画質化、高信頼性化68%

7D 工業産業分野

8%

7C 商業印刷5%

6 インクジェットプリンター

6C カ-トリッジ32%

6D その他5%

6B ノズル材質11%

6A ヘッド構造52%

- 11 -

Page 13: 平成16年度 特許出願技術動向調査報告書 インク …...第1章 インクジェット用インク分野の特許出願動向と特徴 第1節 インクジェット用インクの技術俯瞰図

図-17 インクジェット用インク関連技術分野ごとの日米欧三極出願人国籍別解析

72%

67%

72%

68%

72%

68%

76%

69%

76%

60%

82%

83%

87%

92%

77%

56%

80%

85%

77%

80%

82%

79%

81%

88%

92%

91%

85%

94%

72%

61%

67%

78%

82%

87%

73%

16%

17%

23%

19%

23%

17%

19%

9%

22%

15%

14%

11%

8%

19%

41%

13%

7%

18%

16%

11%

16%

14%

9%

7%

5%

7%

6%

18%

27%

25%

11%

14%

9%

25%

9%

17%

8%

8%

8%

12%

15%

17%

2%

3%

1%

3%

1%

6%

7%

4%

4%

7%

5%

5%

3%

3%

8%

0%

10%

11%

7%

11%

4%

4%

2%

2%

1%

18%

1%

6%

10%

0.5%未満

1%

0.5%未満

1%

1%

1%

1%

1%

0.5%未満

0%

1%

0.5%未満

0%

1%

0%

1%

0.5%未満

0.5%未満

1%

0.5%未満

0.5%未満

0.5%未満

0.5%未満

0.5%未満

0.5%未満

1%

0.5%未満

0%

0.5%未満

1%

0.5%未満

0.5%未満

0.5%未満

0.5%未満

50% 55% 60% 65% 70% 75% 80% 85% 90% 95% 100%

インク形態

染料色材

顔料色材

バインダー樹脂

溶媒・ベヒクル

添加物

物性

分散技術

色材精製

その他

インクセット CMYK系

インクセット 濃淡色・中間色併用系

オンディマンド(ピエゾ)方式

オンディマンド(サーマル)方式

コンティニアス方式

その他の駆動方式

UV照射法

乾燥促進法

多段印刷

制御技術

記録媒体・基材

表面処理塗工

層構造・表面構造

物性

ヘッド構造

ノズル材質

カ-トリッジ

その他

家庭・オフィス利用

写真印刷

商業印刷

工業産業分野

高画質化、高信頼性化

インクの保存安定性

高速印刷性

日本 米国 欧州 その他

第7節 注目出願人の特許出願動向

インクジェット用インク関連の主要企業について、日米欧三極全体への出願の技術分野を

比較したのが図-18 である。この図では各技術分野で世界 10 位以内の出願件数のある場合

(◎)、11~20 位(○)、21~30 位(□)、31~40 位(△)を付して、特に注力している技術

分野の抽出を試みている。キヤノン、セイコーエプソン、コニカミノルタホールディングス

などの国内の出願件数上位企業ばかりでなく、Eastman Kodak、Hewlett-Packard などの米国

企業も色材、インク、インク吐出技術、記録媒体、応用分野にいたる広い範囲で特許出願し

ていることが理解できよう。その点、Clariant、Avecia などの欧州企業は色材、インク技術、

応用分野に特化しているように見受けられる。なお選択した企業は規模でいうと全て大手企

業に該当する。

1インク組成物

2生産技術

3インクセット

ンクジェット

5記録媒体

クジェット プリンター

7用途・ 目的など

4イ 記録方式

6イン

出願人国籍

- 12 -

Page 14: 平成16年度 特許出願技術動向調査報告書 インク …...第1章 インクジェット用インク分野の特許出願動向と特徴 第1節 インクジェット用インクの技術俯瞰図

図-18 三極の主要特許出願企業の技術分野解析結果

出願人

技術分類

キヤノン(株)

セイコーエプソン(株)

コニカミノルタホールディングス(株)

富士写真フイルム(株)

(株)リコー

三菱化学(株)

ブラザー工業(株)

富士ゼロックス(株)

大日本インキ化学工業(株)

日本化薬(株)

Eastman Kodak Co

Hewlett-Packard Co

◎ 世界10位以内 ○ 11位~20位 □ 21位~30位 △ 31位~40位

1A インク形態 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ○ □ ◎ ◎

1B 染料色材 ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ◎ ○ ○ △ ○ ◎ ◎

1C 顔料色材 ◎ ◎ ◎ ○ ◎ ◎ ○ ○ ◎ □ ◎ ◎

1D バインダー樹脂 ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ○ ○ ○ ◎ ◎ ◎

1E 溶媒・ベヒクル(Vehicle) ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ◎ ◎ ○ ○ ◎ ◎

1F 添加物 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ○ ○ ○ △ ◎ ◎

インク組成物

1G 物性 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ◎ ◎ ○ ○ ◎

2A 分散技術 ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ○ ◎ □ ◎ ◎ ○

2B 色材精製 ◎ ◎ ◎ □ △ ◎ ◎ ◎ □ ◎ □

生産技術 2C その他 ◎ ◎ ◎ ○ ○ ○ ◎ ◎ ○

3A インクセット CMYK 系 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ◎ ◎ ○ □ ◎ ◎ イン

セット 3B インクセット 濃淡色・中間色併用系 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ○ ◎ □ ○ ◎ ◎

4A オンディマンド(ピエゾ)方式 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ◎ ◎

4B オンディマンド(サーマル)方式 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ □ ◎ ◎ ◎

4C コンティニアス方式 ◎ ○ ◎ ◎ ○ □ ◎ ◎ ◎

4D その他の駆動方式 ◎ □ ◎ ◎ ◎ □ ○ ◎ ◎

4E UV 照射法 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ □ ◎ ◎

4F 乾燥促進法 ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ○ △ ○ □ ○

4G 多段印刷 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ △ □ ○ ◎ ◎

インクジェ

記録方式

4H 制御技術 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ◎ ◎ ◎

5A 記録媒体・基材 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ○ □ ○ □ ◎ ○

5B 表面処理塗工 ◎ ◎ ◎ ◎ ○ △ ○ △ ◎ ○

5C 層構造・表面構造 ◎ ◎ ◎ ◎ ○ □ △ △ ◎ ○

記録媒体

5D 物性 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ □ □ △ ◎ ○

6A ヘッド構造 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ◎ □ ◎ ◎

6B ノズル材質 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ □ ○ ◎ ◎ ○

6C カ-トリッジ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ □ ◎ ◎ ○ □ ○ ◎

インクジェ

ット

プリンター 6D その他 ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ◎ ◎ ◎ ◎

7A 家庭・オフィス利用 ◎ ◎ ◎ ○ ◎ ○ ○ ◎ △ □ ◎ ◎

7B 写真印刷 ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ○ ◎ ◎

7C 商業印刷 ◎ ◎ ◎ ◎ ○ □ △ □ △ ◎ ◎

7D 工業産業分野 ◎ ◎ ◎ ◎ ○ □ ◎ ◎ ○

7E 高画質化、高信頼性化 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ○ ○ □ ◎ ◎

7F インクの保存安定性 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ○ ○

用途・目的など

7G 高速印刷性 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ○ ◎ ◎ ◎

注目出願人として日本のキヤノン、セイコーエプソン、米国の Hewlett-Pack

欧州の Clariant International の 5 社について、特許出願件数の推移と技術分

た結果を図-19(a)、(b)、(c)、(d)、(e)に示した。

- 13 -

空白:41位以下

Xerox Corp

Clariant International

Avecia Ltd

Agfa-Gevaert NV

◎ ○ ○

◎ ◎ ◎

○ ○ □ △

◎ ○ △

◎ □ □

◎ □ □ □

◎ □ □

◎ □ ○

□ ◎ ◎

◎ □

○ □ △

◎ □ ○ □

□ □

○ □ ○

◎ △

○ △ □ △

□ ○

□ ○

○ ◎ □

◎ ○ ○

○ ○

◎ ○ □

○ △ △

□ △

ard、Xerox、

野を解析し

Page 15: 平成16年度 特許出願技術動向調査報告書 インク …...第1章 インクジェット用インク分野の特許出願動向と特徴 第1節 インクジェット用インクの技術俯瞰図

図-19 インクジェット用インク分野における注目出願人の特許出願件数推移と出願技術分野

(a) キヤノン(株)

0

100

200

300

400

500

600

700

800

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002

優先権主張年

出願件数

0

400

800

1200

1600

2000

2400

2800

3200

出願件数

(累計

(b) セイコーエプソン(株)

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

1A インク形態

1B 染料色材

1C 顔料色材

1D バインダー樹脂

1E 溶媒・ベヒクル

1F 添加物

1G 物性

2A 分散技術

2B 色材精製

2C その他

3A インクセット CMYK系

3B インクセット 濃淡色

・中間色併用系

4A オンディマンド(ピエゾ)方式

4B オンディマンド(サーマル)

方式

4C コンティニアス方式

4D その他の駆動方式

4E UV照射法

4F 乾燥促進法

4G 多段印刷

4H 制御技術

5A 記録媒体・基材

5B 表面処理塗工

5C 層構造・表面構造

5D 物性

6A ヘッド構造

6B ノズル材質

6C カ-トリッジ

6D その他

7A 家庭・オフィス利用

7B 写真印刷

7C 商業印刷

7D 工業産業分野

7E 高画質化、高信頼性化

7F インクの保存安定性

7G 高速印刷性

分類

0

100

200

300

400

500

600

700

800

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002

優先権主張年

出願件数

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

出願件数

(累計

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1A インク形態

1B 染料色材

1C 顔料色材

1D バインダー樹脂

1E 溶媒・ベヒクル

1F 添加物

1G 物性

2A 分散技術

2B 色材精製

2C その他

3A インクセット CMYK系

3B インクセット 濃淡色

・中間色併用系

4A オンディマンド(ピエゾ)方式

4B オンディマンド(サーマル)

方式

4C コンティニアス方式

4D その他の駆動方式

4E UV照射法

4F 乾燥促進法

4G 多段印刷

4H 制御技術

5A 記録媒体・基材

5B 表面処理塗工

5C 層構造・表面構造

5D 物性

6A ヘッド構造

6B ノズル材質

6C カ-トリッジ

6D その他

7A 家庭・オフィス利用

7B 写真印刷

7C 商業印刷

7D 工業産業分野

7E 高画質化、高信頼性化

7F インクの保存安定性

7G 高速印刷性

分類

- 14 -

Page 16: 平成16年度 特許出願技術動向調査報告書 インク …...第1章 インクジェット用インク分野の特許出願動向と特徴 第1節 インクジェット用インクの技術俯瞰図

(c) Hewlett-Packard Co

0

50

100

150

200

250

300

350

400

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002

優先権主張年

出願件数

0

200

400

600

800

出願件数

(累計

0

50100

150

200250

300

350

400450

500

1A インク形態

1B 染料色材

1C 顔料色材

1D バインダー樹脂

1E 溶媒・ベヒクル

1F 添加物

1G 物性

2A 分散技術

2B 色材精製

2C その他

3A インクセット CMYK系

3B インクセット 濃淡色

・中間色併用系

4A オンディマンド(ピエゾ)方式

4B オンディマンド(サーマル)

方式

4C コンティニアス方式

4D その他の駆動方式

4E UV照射法

4F 乾燥促進法

4G 多段印刷

4H 制御技術

5A 記録媒体・基材

5B 表面処理塗工

5C 層構造・表面構造

5D 物性

6A ヘッド構造

6B ノズル材質

6C カ-トリッジ

6D その他

7A 家庭・オフィス利用

7B 写真印刷

7C 商業印刷

7D 工業産業分野

7E 高画質化、高信頼性化

7F インクの保存安定性

7G 高速印刷性

分類

(d) Xerox Corp

0

50

100

150

200

250

300

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002

優先権主張年

出願件数

0

100

200

300

400

500

600

出願件数

(累計

0

50

100

150

200

250

300

350

400

1A インク形態

1B 染料色材

1C 顔料色材

1D バインダー樹脂

1E 溶媒・ベヒクル

1F 添加物

1G 物性

2A 分散技術

2B 色材精製

2C その他

3A インクセット CMYK系

3B インクセット 濃淡色

・中間色併用系

4A オンディマンド(ピエゾ)方式

4B オンディマンド(サーマル)

方式

4C コンティニアス方式

4D その他の駆動方式

4E UV照射法

4F 乾燥促進法

4G 多段印刷

4H 制御技術

5A 記録媒体・基材

5B 表面処理塗工

5C 層構造・表面構造

5D 物性

6A ヘッド構造

6B ノズル材質

6C カ-トリッジ

6D その他

7A 家庭・オフィス利用

7B 写真印刷

7C 商業印刷

7D 工業産業分野

7E 高画質化、高信頼性化

7F インクの保存安定性

7G 高速印刷性

分類

- 15 -

Page 17: 平成16年度 特許出願技術動向調査報告書 インク …...第1章 インクジェット用インク分野の特許出願動向と特徴 第1節 インクジェット用インクの技術俯瞰図

(e) Clariant International

0

20

40

60

80

100

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002

優先権主張年

出願件数

0

50

100

150

200

出願件数

(累計

0

20

40

60

80

100

120

1A インク形態

1B 染料色材

1C 顔料色材

1D バインダー樹脂

1E 溶媒・ベヒクル

1F 添加物

1G 物性

2A 分散技術

2B 色材精製

2C その他

3A インクセット CMYK系

3B インクセット 濃淡色

・中間色併用系

4A オンディマンド(ピエゾ)方式

4B オンディマンド(サーマル)

方式

4C コンティニアス方式

4D その他の駆動方式

4E UV照射法

4F 乾燥促進法

4G 多段印刷

4H 制御技術

5A 記録媒体・基材

5B 表面処理塗工

5C 層構造・表面構造

5D 物性

6A ヘッド構造

6B ノズル材質

6C カ-トリッジ

6D その他

7A 家庭・オフィス利用

7B 写真印刷

7C 商業印刷

7D 工業産業分野

7E 高画質化、高信頼性化

7F インクの保存安定性

7G 高速印刷性

分類

- 16 -

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インクジェット用インク技術分野で出願件数、出願人数(同一出願人は出願件数によらず

1 とカウントする)、および出願件数上位 3 社を整理して表-20 に示した。

表-20 インクジェット用インク関連特許における出願件数および主要出願人

分類 件数 **

出願人数 上位 3 社(件数)

水性染料インク 4,613 243 キヤノン(株)(870)、セイコーエプソン(株)(478)、富士写真フイルム(株)

(338)

シアン色材 776 90 キヤノン(株)(108)、富士写真フイルム(株)(106)、セイコーエプソン(株)

(90)

マゼンタ

色材

1,034 88 富士写真フイルム(株)(130)、キヤノン(株)(110)、セイコーエプソン(株)

(99)

黄色色材 718 78 富士写真フイルム(株)(109)、キヤノン(株)(94)、セイコーエプソン(株)

(84)

黒色色材 815 88 キヤノン(株)(132)、セイコーエプソン(株)(87)、三菱化学(株)(79)

*

染料色材

中間色色材 198 38 キヤノン(株)(54)、セイコーエプソン(株)(17)、Clariant International

(17)

染料インク製造 301 58 ブラザー工業(株)(41)、セイコーエプソン(株)(29)、コニカミノルタホー

ルディングス(株)(25)、Xerox Corp(25)

水性顔料インク 4,155 220 キヤノン(株)(670)、セイコーエプソン(株)(613)、コニカミノルタホール

ディングス(株)(243)

シアン色材 478 60 セイコーエプソン(株)(104)、キヤノン(株)(60)、Eastman Kodak Co(25)

マゼンタ

色材

500 57 セイコーエプソン(株)(90)、キヤノン(株)(55)、Clariant International

(37)

黄色色材 453 55 セイコーエプソン(株)(97)、キヤノン(株)(47)、東洋インキ製造(株)(24)、

Eastman Kodak Co(24)

黒色色材 1,109 101 キヤノン(株)(232)、セイコーエプソン(株)(151)、三菱化学(株)(64)

*

顔料色材

中間色色材 253 49 セイコーエプソン(株)(53)、コニカミノルタホールディングス(株)(25)、

Cabot Corp(22)

顔料インク製造 473 63 セイコーエプソン(株)(66)、東洋インキ製造(株)(52)、大日本インキ化学

工業(株)(38)

溶剤・油性インク 1,041 176 富士写真フイルム(株)(202)、セイコーエプソン(株)(62)、コニカミノル

タホールディングス(株)(43)

溶 媒 ・ ベ ヒ ク ル

(Vehicle)

638 118 富士写真フイルム(株)(114)、セイコーエプソン(株)(52)、Hewlett-Packard

Co(29)

UV 硬化インク 564 102 コニカミノルタホールディングス(株)(181)、キヤノン(株)(50)、東洋イ

ンキ製造(株)(23)

UV 硬化重合成分 415 71 コニカミノルタホールディングス(株)(122)、キヤノン(株)(53)、大日本

インキ化学工業(株)(25)

UV 硬化色材結合型

重合成分

77 30 コニカミノルタホールディングス(株)(12)、富士写真フイルム(株)(11)、

キヤノン(株)(10)

重合開始剤

297 58 コニカミノルタホールディングス(株)(76)、キヤノン(株)(30)、セイコー

エプソン(株)(20)

ソリッド型 622 85 Xerox Corp(105)、ブラザー工業(株)(102)、Tektronix Inc(50)

ワックス 343 55 ブラザー工業(株)(83)、Xerox Corp(53)、Tektronix Inc(27)

長鎖脂肪酸塩 100 27 Xerox Corp(26)、Tektronix Inc(18)、Markem Corp(9)、日立工機(株)(9)

その他 160 28 Xerox Corp(38)、ブラザー工業(株)(36)、日立工機(株)(10)

*染料、顔料は、色材合成および各種インクジェット用インクへの使用を含む

**出願人数とは調査期間(1990 年~2002 年)において、当該技術分類で特許出願を行った出願人の数である。同一出願人が複数の出願を行っても一人としてカウントする。

- 17 -

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第2章 政策動向

インクジェット印刷技術、およびそこで使用されるインクの技術は、長い技術開発努力の

結果、および企業間の激しい技術開発競争の中で商品化されてきた。インクジェット印刷技

術が本格的に市場に登場したのは 1984 年で、現在も世界のプリンター市場を 4 分する米

Hewlett-Packard、Lexmark、日本のキヤノン、セイコーエプソンが相次いで市場投入した。

高性能のパーソナルコンピュータが急速に普及したのに合わせて、その有効性が急速に認識

されるようになった。やがて低廉なインクジェットカラープリンターが開発され、その普及

が加速された。当初は染料色材の水溶液をインクに使用しており、耐光性、耐水性など、印

刷物の耐久性、信頼性が大きな課題としてクローズアップされたが、特に政策的な規制、規

格化推進などの大きな動きはなく、メーカー独自の検討で徐々に改良されてきた。政策関連

の事項を整理すると、表-21 のようになる。

表-21 インクジェット用インク関連の政策関連事項

政策分野 担当省庁 内 容 インクジェットインク技術との関連

経済産業省

JBMIA, JEITA

ISO/IEC SC-28(オフィス機器)の中に複写機・複合

機(プリンターを含む)で、日本が中心となってカ

ラーマネージメント関連規格作成中。

ISO: 国際標準化機構、IEC:国際電気標準会議が共同

検討

色彩標準化関係、非公開

JBMIA: (社)ビジネス機械情報システム

産業協会

JEITA:(社)電子情報技術産業協会

写真の品質規格、試験法規格化

国際競争力

経済産業省 不正貿易対策 コピー商品輸入の水際防止

(民間・行政機関の提携)

経済産業省 産業技術力強化法(2000 年制定)

新規産業創出型産業科学技術研究開発制度

ナノテクノロジー基盤技術として、超微

細液滴技術:(独)産業技術総合研究所

研究促進

文部科学省 第2期科学技術基本計画(2001 年)

大学等技術移転促進法

医療分野(ティシューエンジニアリング

等)における大学研究支援

環境省 大気汚染防止法(1968 年)改正が中央環境審議会で

審議中

印刷小委員会、塗装小委員会、測定方法専門委員会

(VOC 排出抑制基準改正案 2004)

揮発性有機化合物(VOC)排出抑制

印刷工場などにおける溶剤・油性インク

微小粉塵、ミストとその環境影響評価

大気環境

業界自主規制 印刷業界に有害大気汚染物質(HAP)自主規制計画

(ジクロロメタンの削減、トリクロロエチレン、

テトラクロロエチレンの全廃)

インクジェットインクでは HAP を使用し

ない

水質環境 環境省 水質汚濁防止法(1970 年) 捺染工場、染料工場排水規制

インクジェット捺染の促進

化学物質

規制

(安全性)

経済産業省

厚生労働省

環境省

化学物質の審査および製造等の規制に関する法律

(1973 年)

(改正:1975, 1983, 1986, 1990, 1993, 1999 年)

インク色材、添加物等の毒性による規制

新規化学物質に関する審査および規制

(有害性) 環境省 特定化学物質の環境への排出量の把握等および管理

の改善の促進に関する法律(PRTR 法, 1999 年)

インク色材、添加剤成分の安全性

(溶剤、界面活性剤等)

米国 TSCA(有害物質規制法)、州法による安全性規制 Negative List 規制(FDA)

紫外線照射印刷機規制(FDA)

欧州 EINECS(欧州既存化学物質リスト)

REACH(Registration, Evaluation, Authorisation

and Restrictions of Chemicals)

化合物の安全性

(海外)

独、蘭、仏 独:日用品規則第5次改正令(1997 年 4 月)一部ア

ゾ染料の禁止

蘭、仏は独と同じ対応

労働安全衛生法(1972 年) 有機溶剤等の有害物に関する規制 労働省

食品衛生法(1947 年) 食品(卵など)への可食性インク

労働環境

農林水産省 トレーサビリティーシステム(食品、牛肉、鶏肉等)食品への可食性マーカーインク

偽造防止 警視庁など 紙幣、有価証券、パスポートなどの偽造防止 US Secret Service による発表あり

その他 デジタル印刷した紙類のリサイクル

家電リサイクル法、グリーン購入法等

INGEDE (International Assoc Deinking

Industry) 1989 設立、検討開始

- 18 -

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第1節 国際競争力の維持拡大

1.標準化政策

インクジェット印刷およびインクで、政策の関係する現在の大きな課題は、カラー印刷を

中心とした色彩学指標に基づく標準化の問題である。種々のカラーテレビ、テレビカメラ、

デジタルカメラ、スキャナーなど、カラーの電子データがネットワークを介して大量に流通

するようになった結果、低廉なカラー印刷手段として定着しつつあるインクジェット印刷で

も、表示手段としての他の手段と同等の色彩を表現する、いわゆるカラーマッチングが強く

要求されるようになった。色彩学の中でも減法混色に関する発見は 19 世紀に行われ、CIE 表

色系は 1930 年代に見出されていたが、信頼性の高い測定手段、表現手段が開発されたのは比

較的最近のことである。ISO/IEC JTC1 SC-28 が中心となって事務機器関係、ISO/TC130 で印

刷関係の標準化作業が進められており、カラーマッチング(sYCC)の標準化、拡張色空間も

その中で検討されている。図-22 に示したように日本の実作業はビジネス機械情報システム

産業協会(JBMIA)、電子情報技術産業協会(JEITA)が作業部会を設けて行っており、経済産

業省はこれと協力し、全体を指導する立場にある。

図-22 インクジェット関連製品を含むカラーマッチング標準化作業の推進体制

CIE ISO ISO/IEC JTC1 IEC ITU通信・放送

ICC

TC 36映画

TC 42写真

TC 130印刷

SC 28オフィス機器

SC 29マルチメディア

TA 2カラー

JCIE日本照明委員

CIPAカメラ映像機器工業会

JSA日本規格協会

ITSCJ情報規格調査会

CIAJ情報通信ネットワーク産業協

TTC情報通信技術委員会

CIE第8部会国内委員会

INSTACカラー

マネジメント

分科会

カラーマネジメ

ント標準化委員会

標準化センターカラーマネジメン

トプロジェクト

標準化センターカラーマネジメント

標準化委員会

SC 28国内委員会

国際

国内

TC 100マルチメディア

ISO/TC42/WG 18国内委員会

SC 29国内委員会

JEITA電子情報技術産業協会

JBMIAビジネス機械・

情報システム産

業協会

2.模倣品対策・品質保証政策

インクジェット印刷で政策が関与する別の課題は、中国等の東アジアを中心とする模倣品

対策である。知的財産権に対する認識が歴史的に脆弱な諸国ではこれまでもイミテーション

商品の製造・販売で市場を混乱させ、先行メーカーに多大の損害を与えてきた。インクジェ

ットプリンターはヘッドが高級技術であることもあってこうした問題の発生が少ないが、イ

ンクは技術のブラックボックス化が困難で、色材、溶媒等の原材料等が入手できれば、容易

に模倣品が製造可能である。しかし実際にはインク物性が吐出条件やヘッド特性と密接にマ

ッチングされており、模倣品では印刷不良や操作不安定化を誘発、トラブルの原因となる。

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Page 21: 平成16年度 特許出願技術動向調査報告書 インク …...第1章 インクジェット用インク分野の特許出願動向と特徴 第1節 インクジェット用インクの技術俯瞰図

先行するキヤノンは模倣品対策としてこうした諸国への特許出願を積極的に推進するほか、

不正商品の輸出入を防止すべく、税関等の行政機関との連携による水際作戦をとって成功し

ている。図-23 にキヤノンがインクジェット関連製品の不正貿易を防止するために行ってい

る摘発件数の推移を示した。同社はこうした不正貿易抑止の目的で、特許出願国の拡大、明

細書記載の明確化など、自主的な特許戦略も展開している。

品質保証政策では ISO/TC42/WG5 など、カラーマッチング、デジタルフォトプリントの保存

性など複数の規格が作成され、また審議段階にある。

図-23 キヤノン(株)によるトナー・インクカートリッジの摘発件数推移

0

50

100

150

200

250

300

350

400

2000 2001 2002 2003 2004.10

摘発件数

欧州・東欧

中南米

東・南アジア

中国

出典:田中信義、IS&T NIP-20, Panel Discussion

第2節 研究促進(科学技術政策)

非接触(ノンインパクト)で微小液滴を目標位置に正確に着弾させるインクジェット印刷

技術の特徴を活かして、DNA チップの製造、生殖細胞試験などが 1990 年頃から盛んに検討さ

れるようになった。またインクジェット印刷技術は、液晶パネル、プラズマディスプレイパ

ネルなど、フラットパネルディスプレイ(FPD)の材料製造やプリント配線基盤製造などの産

業用ナノテクノロジー分野で利用が始まっている。これらの分野は文部科学省、経済産業省、

農林水産省などの推進する基礎科学強化に関わる科学技術政策の中でも基幹技術となるもの

である。1999 年に拡充された新規産業創出型産業科学技術研究開発制度、2000 年制定の産業

技術力強化法、2001 年に発表された第二期科学技術基本計画などの関連で大学、民間企業、

産業技術総合研究所などの公的機関が支援を受けてこうした研究開発を推進している。

第3節 環境政策

1.大気・水質環境

インクジェット印刷手法は平版、スクリーン、グラビアなどの汎用印刷と異なり、水性イ

ンクで画像形成に必要な最小量のインクを記録媒体に供給する環境適合性の高い印刷技術で

あると認識されてきた。1960 年代から大気、水質などの公害対策と環境政策が行われてきた

国内外の政策の中で、インクジェット印刷技術は殆ど無風の状態で技術開発と改良が行われ

てきたといえる。最近インクジェット印刷手法の欠点であった印刷速度の向上や大判印刷を

可能とするために、溶剤・油性インク、UV 硬化インクが開発され、採用されるようになった。

- 20 -

Page 22: 平成16年度 特許出願技術動向調査報告書 インク …...第1章 インクジェット用インク分野の特許出願動向と特徴 第1節 インクジェット用インクの技術俯瞰図

この場合は、内容、規模によっては既存の印刷技術と同様の揮発性有機化合物(VOC)の規制、

労働環境規制の対象になる可能性がある。印刷業界では法規制以外にも自主規制で対応して

いる部分がある。各種の環境規制時期とインクジェット用インク関連の国内特許出願件数の

推移を比較して図-24 に示した。こうした規制が特許出願件数に顕著な影響を及ぼした事実

は認められない。一方、水質規制に関して、インクジェット印刷法で布帛への捺染を行うこ

とにより、染料排水発生の抑制が可能となる。インクジェット捺染に関する技術開発はこの

印刷技術が開発された 1970 年代当初から行われてきたが、現時点では生産技術としてよりは、

標本作製などを中心に利用が進んでいる。

図-24 国内特許出願件数の推移と主要環境政策導入時期との関係

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002優先権主張年

大気汚染防止法

改正(2004)

米政府刊行物への大豆

油インク採用 (1994)

米国大気浄化

法改訂(1990)

環境基本法

(1994)

PRTR 法

(1999)

ISOIEC SC-28

規格化の検討

開始

願件

2.化学物質安全性と規制

1990 年代に入ると、化学物質の審査および製造等の規制に関する法律(化審法、1973 年)

と生命科学に関する関心の高まりの中で、インク製造に使用される一部原料に突然変異毒性

が懸念され、また内分泌攪乱作用、いわゆる環境ホルモン毒性が指摘され、その都度、政策

的、あるいは業界の自主規制が行われてきた。海外でも TSCA(米・有害物質規制法)、EINECS

(欧州・既存化学物質リスト)、独・蘭・仏の日用品規則などで、インクジェット用インクに

使用される物質の規制が開始されている。

第4節 その他の政策関連事項

複写機、テレビジョンなどの各種画像機器については家電リサイクル法、グリーン購入法

など、いくつかの法規制が開始されているが、オフィス用のインクジェットプリンターにつ

いては顕著な動きはないようだ。

食品、牛肉、鶏肉などの生産地、育成記録などを生産から店頭の段階まで記録するトレー

サビリティーに関する規制が検討されている。従来、食品の品質管理の観点から、菓子類、

果実、鶏卵などに生産日時をインクジェット印刷などで表示する手段が採用されてきたが、

今後このような管理に小型で耐汚染性に優れた IC チップとの併用が進むと考えられる。

- 21 -

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第3章 産業活動の現状と市場動向

第1節 インクジェット印刷関連市場の全体動向

1980 年代以降、ビデオ、テレビジョン、カメラ、コンピュータ、スキャナー、ファックス

などの分野でデジタル情報、デジタルカラー情報が溢れるようになり、ネットワークの発展

で短時間の中にこうした情報が普及するようになった。インクジェットプリンターはこうし

た中で、デジタル情報の簡便な記録手段として急速な発展をしてきた。2003 年で世界のイン

クジェットプリンター数は約 7,500 万台、日本では複合機を含めて 600 万台強が販売されて

いる。さらにポスター、宣伝広告看板、バナー、CAD などの印刷を行う大型インクジェット

プリンターが開発されてきたが、生産台数としては、家庭・オフィス用の印刷機数に比較す

ると 1/100 以下となお極めて少ない。図-25 に電子情報技術産業協会が発表している日本と

世界のインクジェットプリンター台数の推移と 2007 年までの予測を示した。

図-25 世界と日本のインクジェットプリンター数の市場推移

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000

9,000

10,000

1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007

(万台)

日本 世界

予測

出典:(社)電子情報技術産業協会「プリンタに関する調査報告書」(平成 16 年 3 月)、他

地域別にインクジェットプリンター市場を解析した 2003 年度の結果を図-26 に示した。日

本は出荷台数で 9%、金額では 20%を占めている。

図-26 世界のインクジェット

プリンター市場の地域別解析

注)北米:米国、カナダ 西欧:EU 加盟 15 ヵ国および、スイス、ノルウェー、 リヒテンシュタイン、アンドーラ、サンマリノ、

その他2,289万台31%

西欧1,965万台26%

北米2,578万台34%

日本638万台9%

その他3,176億円24%

西欧4,074億円23%

北米4,624億円33%

日本1,604億円20%

外円:金額(億円)内円:出荷台数(万台)

バチカン、マルタ、キプロス

出典:(社)電子情報技術産業協会「プリンタに関する調査報告書」(平成 16 年 3 月)

- 22 -

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一方インクジェット印刷機メーカーとしては専用のインク、記録媒体が大きな収益源であ

り、本調査ではこれらの市場規模を把握する必要がある。しかし印刷機用インクと異なり、

こうした国内外の資料は全く公表されていないのが実状である。そこでインクジェット用イ

ンク用の色材に関して、国内市場規模を調べた。図-27 に解析結果を示したが、国内市場は

順調に拡大している。

図-27 インクジェット印刷用染料系色材市場の推移

0

100

200

300

400

500

600

700

1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003

(t/年)

出典:(社)日本化学会編、化学便覧6版応用化学編 丸善

インクジェットプリンターの台数は家庭・オフィス用が、主として商業印刷に使用される

ラージフォーマット印刷機や産業用印刷機に比較して圧倒的に多いが、インクの使用量とし

ては表-28 に示すようになる。家庭・オフィス用では水性インクの使用が多いのに対し、商

業用、産業用では油性、UV 硬化型インクの使用割合が高いとみられるが、詳細は不明である。

表-28 米国のインクジェット用インクの消費構造

(単位:kL)

1993 1996 2001 年平均成長率

(1996-2001)

デスクトップ 1,135 5,530 11,280 15%

ワイドフォーマット - 580 3,925 47%

工業用 - 5,500 9,695 12%

合計 - 11,610 24,900 16%

出典:(ex SRI International CEH Report 1997, Imaging Chemicals and Materials),(SRI International CEH Report 2000, Imaging Chemicals and Materials), E Cunningham, American Inkmaker, 77(2) p36(1999),Frost & Sullivan Research Report, The Global Inkjet Ink Market, June 20, 2003.

第2節 メーカー動向

インクジェット用インクおよび原材料を供給しているメーカーを表-29 に示した。インク

の生産はプリンターメーカーが主体であるが、この他に多くの独立メーカーが存在する。印

刷機メーカーでは米 Hewlett-Packard が 1993 年までインクを独自生産していたが、同年

DeskJet 1200C の発売に合わせて DuPont が開発したカーボンブラックインクを初めて採用し

た。インクジェット用インクは印刷機用インクと製法、物性が大きく異なり、また市場規模

も小さいため、既存のインクメーカーの参入は遅れている。一方世界の一部地域では先行メ

ーカーの模倣品を製造販売しているメーカーも少なくないようである。

- 23 -

Page 25: 平成16年度 特許出願技術動向調査報告書 インク …...第1章 インクジェット用インク分野の特許出願動向と特徴 第1節 インクジェット用インクの技術俯瞰図

表-29 インクジェット用インクの主要メーカー

システムメーカー インクジェット用色材メーカー インクメーカー

国内市場

対象

・純正品カートリッジ/インク

・互換インクカートリッジ

・詰替えインク(輸入品が多い)

・各種色材(染料、顔料)

・直接染料、酸性染料

主要

メーカー

・キヤノン(株)

・セイコーエプソン(株)

・(株)リコー

・ブラザー工業(株)

・理想科学工業(株)

・富士写真フイルム(株)

・Hewlett-Packard Co

・Lexmark International

・DuPont Co

・Eastman Kodak Co

・Xerox Corp

・Kodak Versamark, Inc.

・三菱化学(株)

・日本化薬(株)

・三井化学(株)

・東海カーボン(株)

・オリエント化学(株)

・田岡化学(株)

・住友化学工業(株)

・保土谷化学(株)

・大日精化工業(株)

・BASF AG

・Bayer AG

・Cabot Cop

・Avecia Ltd(旧Zeneca Ltd)

・DyStar Textilfarben GmbH

・Clariant International

・Agfa-Gevaert NV

・Ciba Specialty Chemicals Inc

・Degussa AG

・大日本インキ化学工業(株)

・東洋インキ製造(株)

・大日本塗料(株)

・サカタインクス(株)

・Sun Chemical Corp

・Flint Ink

・Pelikan Hardcopy AG

特徴 ・ヘッド特性、吐出方式や条件に合

わせてインクが開発される他、特

許制約もあってインクメーカー、

色材メーカーが独自にインクを

生産することはない

・顔料分散径は 50~200nm

・黒色インクはカーボンブラック

系が主流(1993年 DuPont)

・プリンターメーカーでインク用

色材を生産することはない

・多色化が進んでいる

・カラーマッチングが重要

・非色材系インクの開発も進んで

いる

・OEM方式によるインク製造。

インクジェット用インクの色材では Avecia Ltd が国内市場(数量ベース)の 40%を占め

て一位であり、以下、三菱化学、日本化薬と続いている。図-30 にこれを示した。

図-30 インクジェットインク用色材の主要メーカーシェア

出典:日刊工業新聞(2004/11/05)等を参考に推定 日本化薬(株)13%

その他27%

三菱化学(株)20%

Avecia Ltd40%

第3節 将来動向

インクジェット印刷技術は家庭用、オフィス用を中心に技術が成熟しつつあるというのが

一般的な見方である。オフィス用では印刷速度の大きいレーザープリンターと競合関係にあ

るが、価格面で有利なインクジェットプリンターを多数導入するなど、今後とも需要は漸増

傾向が続くと思われる。デジタルカメラ、複合機型でまたラージフォーマット印刷が高い伸

び率で増加しており、商業印刷も新たな需要開拓で拡大が続くと思われる。インクジェット

印刷機では PDP、カラーフィルター、プリント配線や集積回路形成など、新たな用途が期待

されており、図-31 に示すように市場は今後とも拡大していくと推定される。

- 24 -

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図-31 インクジェット印刷市場の将来予測

第4章 研究開発動向

インクジェット印刷の基本原理は 1878 年の L Rayleigh の研究によるとされ、Dr R G

Sweet(Stanford Univ)、Prof C H Hertz (Lund Institute)等の特許に基づいてコンティニュ

アス方式のインクジェット方式の開発が進んだ。しかし S I Zoltan (Clevite Corp)、E L Kyser

and S B Sears (Silonics)、N G E Stemme (Chalmers Univ)によりピエゾ素子を用いたオン

ディマンド方式が提案(1972~1976)されると一転し、Siemens (1977)、Silonics (1978)、

セイコーエプソン(1983)がピエゾ方式を開発、さらにキヤノンのバブルジェット方式、

Hewlett-Packard のサーマルジェット方式の開発(1978~1979)があって、実用化に向けて

大きく前進した。こうしたインクジェット印刷技術の開発は企業の技術者の研究に負うとこ

ろが大きく、研究成果は特許および企業による製品発表の形で行われてきた。従って学術誌

に掲載された論文数は必ずしも多くはなく、件数は特許出願件数の 1/10 に充たない。しかし

論文数は増加傾向にある。図-32 に世界および地域別の論文数推移を示した。

1990年 1995年 2000年 2005年 2010年

商業印刷(ラージフォーマット)(デジタル捺染)(セキュリティー印刷)

個人用(PC出力)(電子写真代替)

オフィス用(ネットワーク印刷)(CAD出力)

工業用精密塗布(PDP、有機ELディスプレイパネル、LCDカラーフィルタ生産等)

工業用途が進展、市場拡大(精密注入、精密噴霧)

新規インクジェット用途全市場拡大

オンデマンド印刷適性低環境負荷省エネルギー

医療分野、遺伝子工学

市場規模

低廉カラーインクジェットプリンター上市

図-32 インクジェット用インク関連論文の世界および発表者所属機関国籍別件数の推移

14 20 22 2518

51

86

159

134

108115

128

36

249

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003

論文発表年

論文発表件数

0

50

100

150

200

250

300

論文発表件数

(全世界

日本 米国 欧州 中国 台湾 韓国 全世界

- 25 -

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論文数でも特許出願件数と同様に日本が最も多い。図-33 に示したように、1992 年および

2001 年で比較すると、日本、米国、欧州の差は縮小または逆転し、また中国、韓国からの発

表件数の増加が顕著である。

図-33 インクジェット用インク関連論文の発表者所属機関国籍別分布および推移

1990~2003年

中国2%

台湾1%

韓国2%

その他3%

欧州

米国28%

日本39%

1,165件 1992年

その他0%

韓国0%

中国0%

台湾0%

欧州36%

米国46%

日本18%

22件 2001年

日本35%

米国34%

欧州21%

台湾0%

中国4%

韓国4%

その他2%

134件

25%

論文発表機関を解析し、属性(企業、大学、公的機関)別に分類した。上位発表機関を整

理すると、表-34 のようになる。国内大学では千葉大学が多く、米国では Massachusetts

Institute of Technology が、欧州では Brunel University が首位である。

表-34 インクジェット用インク関連論文の属性別上位発表機関

日本 米国 欧州

順位 企業名 論文数 順位 企業 論文数 順位 企業名 論文数

1 セイコーエプソン(株) 38 1 Xerox Corp 18 1 Cerestar Holding BV 7

2 キヤノン(株) 31 2 MicroFab Technol. Inc 9 1 Clariant International 7

3 コニカミノルタホールディングス(株) 19 3 Eastman Kodak Co 9 3 BASF AG 6

4 大日本インキ化学工業(株) 12 4 Arkwright Inc 8 4 Science & Applications IMAJE 4

5 (株)東芝 11 5 IBM 7 4 Ciba Specialty Chemicals 4

6 ハリマ化成(株) 10 5 Cabot Corp 7 4 Institut fur Neue Materialien - INM 4

7 日立工機(株) 8 5 Scitex Digital Printing Inc 7 4 Zeneca 4

8 旭硝子(株) 6 8 Hewlett-Packard Co 5

9 富士ゼロックス(株) 6 9 Hercules Inc 4

10 ミサワセラミックス(株) 5 9 DuPont 4

10 (株)ミマキエンジニアリング 5 9 Lexmark International, Inc 4

10 東洋インキ製造(株) 5

10 富士通(株) 5

順位 大学名 論文数 順位 大学名 論文数 順位 大学名 論文数

1 千葉大学 17 1 Massachusetts Institute of Tec. 30 1 Brunel Univ 14

2 東京大学 8 2 Univ of California 13 2 UMIST 12

3 福岡工業大学 8 3 Univ of Arizona 10 3 Univ of Cambridge 10

4 山梨大学 6 4 Princeton Univ 9 3 Univ of London 10

5 九州大学 4 5 Rochester Institute Technology 6 5 Univ of Oxford 7

6 東京都立大学 4 5 Georgia Inst. Technology 6 6 Univ of Ulm 5

5 Western Michigan Univ 6 6 Lund Inst. Technol. 5

8 Univ of Missouri-Rolla 4 8 Cranfield Univ 4

8 Carnegie Mellon Univ 4

8 Clemson Univ 4

8 Stanford Univ 4

8 Univ of New Mexico 4

順位 研究機関 論文数 順位 研究機関 論文数 順位 研究機関 論文数

1 京都市染織試験場 10 1 National Renewable Energy Lab. 8 1 Royal Institute of Technology 4

2 岐阜県セラミックス技術研究所 8 2 Oak Ridge National Laboratory 4

3 栃木県繊維工業試験場 6

4 和歌山県立工業技術センター 6

5 静岡県浜松工業試験場 5

5 (独)産業技術総合研究所 5

- 26 -

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論文数と特許出願件数の推移を比較すると、図-35 に示すように世界で低廉のインクジェ

ットプリンターが相次いで上市された 1994 年以降で論文数の増加がやや顕著になっている。

しかし商品化時期と論文数増加の明瞭な関係はないといえよう。一方新製品、新技術の発表

の場として定着してきた国際会議(NIP: International Conference on Digital Printing

Technologies)での全発表件数、およびインクジェット印刷関連の発表件数の推移を NIP-16、

18、20 について解析すると図-36 のようになり、増加傾向が続いている。

図-35 インクジェット用インク関連論文発表件数、特許出願件数の推移と相関性

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003

特許出願件数

0

50

100

150

200

250

300

論文発表件数

特許 論文

図-36 国際会議(NIP)での発表件数の推移

0

50

100

150

200

250

NIP-20(2004)NIP-18(2002)NIP-16(2000)

日本 米国 欧州 その他 IJ以外の発表

論文の技術内容を、特許と同じ技術分類法で解析した結果を示すと、図-37 のようになる。

インクジェット用インク(技術分類 1A~1F)、および記録方式(同 4A~4H)に関する論文が

多く、記録媒体(同 5A、5B)に関する報告、また工業産業分野(同 7D)関係の論文が多い。

インクジェット用インク(技術分類 1A~1F)について論文数、特許出願件数の推移を比較し、

相関性を調べた結果を図-38 に示した。

- 27 -

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図-37 インクジェット用インク関連論文の技術分類と推移

5 11 11 14 8 17 25 40 43 35 44 38 62

5 11 11 20 34 40 47 51 59 108

10 13

13 26 20 19 12 17 23

9 10 10 10 11 9 12 15 19

15 13 16 10 8

23 26 31 22 35 35

18 28 36 44 43 61 70 80

7 7 9 9 5 10 14 24 39 23 30 39 43 49

1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003

9 7 18 16 12 8 19

29 42 47 58 86 68 132

31その他の用途・目的

(7A,7B,7E,7F,7G)

3521工業産業分野(7D)

6 5 66 41 1 32商業印刷(7C)

41 1 1インクジェットプリンター

(6A~6D) 1 33

1 3 3 4記録媒体 物性(5D)

61記録媒体 層構造・

表面構造(5C) 112 3 2

162310412

記録媒体 表面処理塗工

(5B) 1

53910535記録媒体 基材(5A)

インクジェット 記録方式

(4A~4H)

7 7 11インクセット(3A~3B) 1 3 2214

1990

7生産技術(2A~2C)1 2 2 2 3 55

インク組成物 物性(1G)243421

5 13 14 11 6 17 11

インクジェット用インク

(1A~1F)

論文発表年

図-38 インクジェット用インク(技術分類 1A~1F)に関する論文発表件数、特許出願件数の比

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003

特許出願件数

0

20

40

60

80

100

120

140

論文発表件数

特許 論文

インクジェット技術関連の論文で被引用度の高い重要論文を調査し、表-39 に示した。こ

の結果、重要論文の多くが記録媒体上に印字・画像形成するプリンター機能ではなく、ナノ

テクノロジー、ライフサイエンス分野へのこの技術の応用に関するものであった。

- 28 -

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表-39 インクジェット関連で被引用度の高い重要論文

被引用度 著者 文献名 内 容 所属機関

417 Wing Hung Wong Proc Nat Acad Sci USA, 98

(1) p31 (2001)

DNA アレーの製造 Univ California Los

Angeles, US

242 H Sirringhaus Science, 290 (2000)

p2123.

全有機トランジスターの

製造

Univ Cambridge, UK

97 J Bharathan Appl Phys Lett, 72(21)

p2660 (1998)

IJ 法による有機 EL 材の製

Univ California Los

Angeles, US

77 M J Heller Ann Rev Biomedical Eng, 4

(2002) p129

DNA アレー技術、装置、応

用(総説)

Univ California San

Diego, US

60 A V Lemmo Analytical Chem, 69(4)

p543 (1997)

コンビナトリアル化学合

成への応用

Glaxo Wellcome Res Inst,

US

第5章 詳細解析

第1節 全体概要

インクジェットプリンターにはデジタル信号により必要な時にのみ液滴を吐出する DOD

(Drop-on-demand)方式と、インク液滴を連続吐出し、必要な時に静電場などを作用させて記

録媒体上の所定位置に液滴を導入するコンティニュアス方式がある。前者は家庭・オフィス

のコンピュータ用などに用いられる。また後者は固定書式印刷や、大型看板などの商用を目

的とした印刷機で多用されている。こうした印刷機で採用されるインクは染料、顔料などの

色材を水に分散させた水性インク、溶剤や不揮発性溶媒に分散させた溶剤・油性インク、速

乾性を狙った UV 硬化インクなどに分類される。いずれも既存の印刷技術で使用されるインク

とは粘度、表面張力、分散顔料粒子径などに代表される物性値が異なり、色材、インク調合

面でインクジェット用インクに固有の要素がある。こうした視点で詳細解析を行った。

インクジェット用インクに使用される染料および顔料色材の構造分類を行った。この分類

では化学便覧等に記載された分類法を、また置換基については特許庁の F-ターム方式を参考

にした独自の方式で行った。染料色材の構造分類別特許出願件数の推移を図-40 に示した。

1990 年代初期までアゾ系(非金属)が主体であったが、1990 年代後半から金属錯体化アゾ、

芳香族環非アゾ、複素環非アゾ染料に関する特許出願件数が増加して現在に至っている。

図-40 染料色材の構造分類別特許出願件数の推移

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002

優先権主張年

件数

金属錯体化アゾ アゾ(非金属) 芳香族環非アゾ 複素環非アゾ その他

- 29 -

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第2節 水性染料インク

水性染料インクでは当初 Food Black 2、Acid Red 51、Acid Red 52、Acid Yellow 23、Direct

Yellow 86、Direct Yellow 132、Acid Blue 9 などの色材が使用されてきたが、いずれも耐

水性、耐候性(耐光性、耐ガス性)などの改良が必要であり、置換基の改良、金属錯体化、

新規発色団色材の採用などが進んできた。水性染料インクにおける技術開発上の大きな流れ

は耐水性、耐候性の改良である。提案されている染料色材の例を図-41 に示した。いずれも

大型分子化、さらに耐水性向上で対アニオンの有機アンモニウムへの変更、スルフォン酸基

からカルボン酸基への変更が顕著である。以上の他、メタロアゾ(金属錯体)化も耐候性の

改善に著効がある。

図-41 耐水性、耐候性の改善を目的とした染料色材分子構造の例

特開平 04-270286 (Imperial Chemical Industries)

N N

N

CH2CH2OH

SO2NH

CuPc

(SO3H)1.4

NH

NHCH2CH2OH

COOH

NC2H4

2.6

特開 2004-91632(セイコーエプソン(株)) MO3S

CN

OCH3

O HN

MO3S

HN

SO3MN

NN

HN CH2

NH

NN

N

H2N

NH

MO3S

SO3M

NH O

N

OC

SO3M

NH2

H3C

O O

(M=NH4 or Na)

特開 2004-123912(キヤノン(株))

NaO3S

O

Cl

N NNHSO2OH CH3

SO3Na

MO3SSO3M

(M=H,Li,Na,NH4,N(R8)4)

HN

N

N

N

HNOHN

MO3S

OH

SO3M

N

COOM

MOOC

N(R8)4

(M=H,Li,Na,NH4,NR4)

特開平 04-359066(Imperial Chemical Industries) 特開平 07-292303(三菱化学(株))

C

O(C2H5)2N N+(C2H5)2Cl-

CONH

COOHN N N NOH

HO3S

NH2

SO3H

HOOC

HOOC

水性染料インクに関する特許出願件数の推移を図-42に示した。件数は2000年以降も年600

件前後と高い水準である。

- 30 -

Page 32: 平成16年度 特許出願技術動向調査報告書 インク …...第1章 インクジェット用インク分野の特許出願動向と特徴 第1節 インクジェット用インクの技術俯瞰図

図-42 水性染料インク関連の特許出願件数の推移

235 230274

302336

519

468503

422

498

619 613584

0

100

200

300

400

500

600

700

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002

優先権主張年

日本 米国 欧州 全世界

出願人国籍

第3節 水性顔料インク

有機および無機の顔料は水、有機溶媒のいずれにも溶解しない色材であり、前者は通常結

晶性の微粉末として製造される。染料に比較して耐水性、耐光性は良好であり、Pigment

Yellow 128 (縮合ジスアゾ)、Pigment Red 122 (キナクリドン)、184 (不溶性 Azo)、254 (ジ

ケトピロロピロ-ル)、Pigment Blue 15:3(フタロシアニン)などが当初インクジェット用イ

ンクに使用された。小さなノズルから安定して吐出させ、貯蔵中の色材の沈降分離を抑制し、

また着色力、透明性の向上などが要求される。こうした顔料の分散化に関して多くの提案が

行われてきた。表-43 に技術内容とその影響を整理して示した。

表-43 水性顔料インクにおける高分散化技術

高分散化に付随する事象 画質への影響 インク物性への影響

粒子径微細化 色相の改善 レオロジー特性の改善

着色力、色濃度の向上(記録媒体に依存)分散性、沈降安定性の向上

透明性の向上

光沢性の改善

表面エネルギーの上昇 画質への影響は少ない 二次凝集、保存時の粒子径肥大化

インク長期保存性の低下

マイクロカプセル化による保護が必要

結晶安定性の低下 結晶変態、非晶質化に伴う色調変化

(吸収スペクトル)

工学的課題(顔料高分散)ジルコニアビーズミルなど、高エネルギー密度の磨砕機による処理が一般的

(高価、動力負荷が大、保守点検が必要)

到達粒子径は 10~200nm レベルで限界、通常 50~100nm 程度で使用

その他 顔料粒子の精製、ナノ粒子の計測

顔料色材の高分散化では、顔料表面の改質による自己分散性化と、顔料と水分散性の良好

な樹脂マトリックスを併用する方法があり、いずれも採用されている。最近の特許では顔料

色材としてカーボンブラックの他、図-44 に示したように、フタロシアニン系、キナクリド

ン系、アニリド型 monoazo 系などが定着しつつある。しかしいずれも色調の改良を達成する

ため分散技術以外にも多くの使用法上の工夫がなされている。

- 31 -

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図-44 インクジェット用インクに使用された顔料色材の例 Pigment Yellow

128

Pigment Yellow

74

Pigment Yellow 151

Pigment Yellow

110

Pigment Violet 19

(R=H)

Pigment Red 122

(R=CH3)

Pigment Red 202

(R=Cl)

Pigment Red

254

Pigment Blue 15

NH

O

Cl

O

ClNN

CH3CO CONH

Cl

F3C

NHCO COCH3

NN

Cl

NH

CF3

OO

Cl

N+O-

O

N

OCH3

N

H3C O

O

HN

OCH3

NN

O

HN

NH

HN

O OH

O

O CH3

HN

NH

RO

OR

NH

ClCl

ClCl O

N N

HN

O

ClCl

ClCl

N

N+N

N+

N

N

N

NCu2+HN

NH

Cl

ClO

O

顔料色材を用いた最初のインクジェット用インクは DuPont のカーボンブラックインクで

あった(1993)が、その後各種の顔料でも検討され、顔料だけを用いたインクセットも実用

化されている。特許出願件数の推移を図-45 に示した。

図-45 水性顔料インク関連の特許出願件数の推移

102 87144 158

254

321

439476

513

593 578636

713

0

100

200

300

400

500

600

700

800

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002

優先権主張年

出願件数

日本 米国 欧州 全世界

出願人国籍

- 32 -

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第4節 溶剤・油性インク

凸版、平版、グラビアなどの一般印刷機用インクでは溶剤または油性のインクが一般的で

あるが、大気環境保全、労働環境の改善などで、溶媒成分の制限、回収などの対策が求めら

れる。このため、印刷分野で水性インクや、環境適合性の高い植物油、乳酸エステルなどの

溶媒を用いたインク(エコインク)の利用が始まっている。インクジェット印刷では、当初

水性染料インクが使用されてきたが、樹脂、セラミックス、金属などの非吸液性媒体への記

録では水性インクの利用は困難である。また急速に拡大してきた大判印刷では、徹底した高

速印刷が必要となり、やはり乾燥性に優れた溶媒系インクが必要となった。さらに 2004 年の

話題として、理想科学工業による植物油インクを用いたオフィス用高速カラープリンターの

上市が挙げられる。溶剤・油性インクでは油性溶媒とともに油溶性染料または顔料色材を用

いる。後者の場合、水性顔料インクと同様、顔料色材の溶媒への分散性が悪いから、自己分

散性化、高分子系分散剤の併用などが必要となる。また溶媒としてはエタノール、イソプロ

パノールなどの低沸点有機溶媒、シクロヘキサノン、NMP、ジエチレングリコール誘導体など

の中沸点有機溶媒(以上を溶剤インクとして油性インクと分けるのが一般的である)、さらに

大豆油、シリコンオイルなどの非揮発性油など、幅広く利用されている。

溶剤・油性のインクジェット用インクで使用されている染料色材の例を表-46 に示した。

溶剤・油性のインクジェット用インクに関連した特許出願件数の推移を図-47 に示した。

表-46 インクジェット印刷用溶剤・油性インクに用いられた染料色材の例

色 調 CI Generic name

シアン系 Solvent Blue 2 (Triphenylmethane)

Solvent Blue 36 (Anthraquinone)

Aizen Spilon Blue GNH

マゼンタ系 Solvent Red 8 (Monoazo)

Solvent Red 81

イエロー系 Solvent Yellow 19 (Monoazo)

Solvent Yellow 61

Aizen Spilon Yellow GRH Special

ブラック系 Solvent Black 3 (Disazo)

Solvent Black 22 (Carbon Black)

図-47 溶剤・油性のインクジェット用インクに関連した特許出願件数の推移

31

51 53

22

48 49

136

117

144

159

88

53

90

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002

優先権主張年

出願件数

日本 米国 欧州 全世界

出願人国籍

- 33 -

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第5節 UV 硬化インク

UV 硬化(紫外線、電子線、放射線硬化を含む)型のインクジェット用インクは、通常 250

~365nm 程度の波長の紫外線照射で硬化するモノマー、オリゴマー成分を含有するインクで、

紫外線吸収剤(重合開始剤)と組み合わせて重合反応を促進する。樹脂、ガラス、セラミッ

クス、金属など、記録媒体を選ばずに高速印刷できるのが特徴であるが、紫外線照射専用装

置が必要になることから、印刷機は高価となる。産業用マーカー、商業用の大判印刷などに

使用されている。インクは顔料色材、ラジカル重合型のアクリレート系、またはカチオン重

合型のオキシラン系のモノマーおよび紫外線吸収剤、光重合開始剤(ラジカル開始剤)、光カ

チオン重合開始剤(酸発生剤)などで構成される。Ciba Specialty Chemicals が開発した顔

料色材の例を表-48 に示した。

表-48 紫外線硬化型インクジェット用インクに用いられる顔料色材の例

MICROLITH CI Name 分散濃度 wt% 耐候性 D max Joyce Lebel

Yellow 4G-K Pigment Yellow 151 (Monoazo) 45 7 0.100

Magenta 5B-K Pigment Red 202 (Quinacridone) 60 7-8 0.061

Blue 4G-K Pigment Blue 15:3 (Phthalocyanine) 50 8 0.039

Black C-K Pigment Black 7 (Carbon Black) 50 8 0.078

実際の特許に現れたモノマーとしては次のような例がある。

アクリレート系モノマーの例:2-Hydroxyethyl acrylate, N,N-Dimethylaminoethyl

methacrylate

ビニル系オリゴマーの例:Ethyleneglycol divinylether, 2-Hydroxyethyl vinylether

エポキシ系モノマーの例:Ethyleneglycol diglycidylether, Bisphenol A diglycidylether,

Cyclohexane epoxide

UV 効果型インクジェット用インクに関連する特許出願件数の推移を図-49 に示した。出願

件数は 1996 年以降、急速に増加している。

図-49 UV 硬化型インクジェット用インクに関する特許出願件数の推移

12 6 9 10 818 23

35

63

18

55

209

98

0

50

100

150

200

250

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002

優先権主張年

出願件数

日本 米国 欧州 全世界

出願人国籍

- 34 -

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第6節 インクセット

インクジェット用インクでは色材、溶剤、バインダー樹脂、界面活性剤、色材固定金属イ

オンなど、多様な成分が使用されており、印字の精細度、カラーマッチング、耐久性などを

確保するには、それぞれが最適の組合せとする必要がある。インク成分間、異種インク間の

組合せで、こうした点の不都合が生じないように配慮したものをインクセットと呼んでいる。

インクセットの目的を整理すると表-50 に示したようになる。

表-50 インクセットの目的と技術分類

インクセット技術の分類 内 容

インクセットの目的

相対的色調耐久性改善 CMYK を中心とする色材間褪色性差の補正

色調改善、色域再現性向上 色材の選択で色域再現性、光学濃度バランスを向上

階調性向上 濃淡インクの採用、それに伴う色材の選定などで階調性を向上

その他の画質向上 着色微粒子、色材表面処理の採用などによる色材を安定化したインクセット

カラーフィルターなど、使用目的に合わせたインクセット

技術分類

色材組合せ選択 CMYK を中心とする好適な色材の組合せ

インク構成成分最適化 色材以外のインク構成成分(溶媒、樹脂分散材など)の選択、最適化

インク添加成分選択 構成成分以外の低濃度インク添加成分の選択

インク、添加物物性の規定 色材、添加成分によるインク間の物性差を規定したインクセット

処理液併用 色材の定着促進に有効な処理液をインクと同時に吐出する併用法

インクセットに関連した特許出願件数の推移を図-51 に示した。こうした特許出願件数増

加の背景には、表-52 に示したようにカラー印刷の多色インク化傾向も関係している。

図-51 インクセットに関連した特許出願件数の推移

425

48 42

80 7893 91

256

208

67

161178

0

50

100

150

200

250

300

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002

優先権主張年

日本 米国 欧州 全世界

出願人国籍

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表-52 インクジェットインクの多色化の流れ イ ン ク 色 搭載機種 現行 改善点

登場

インク

数 C M Y K LC LM LY DY

Grey

(LK)R B G

色調改良剤(メーカー)

採用

状況

1996 6 C M Y K LC LM

DW 694C

(Hewlett-Packard Co)

PM-700C (セイコーエプソ

ン(株))

ハイライト

粒状性

1997 8 C M Y K LC LM LY P-POP BJC-700J

(キヤノン(株)) × 普通紙耐水性

2000 7 C M Y K LC LM DY PM-900C

(セイコーエプソン(株)) △ シャドー部

粒状性

2002 7 C M Y K LC LM LK PM-4000PX

(セイコーエプソン(株)) ○ グレー

バランス

2003 8 C M Y K LC LM LK,

LLK

Photosmart 7960

(Hewlett-Packard Co) ◎ グレー

バランス

2003 7 C M Y K LC LM R PIXUS 990i (キヤノン

(株)) ◎ 赤採用

2003 8(7) C M Y K R B Mat K, GOPX-G900

(セイコーエプソン(株)) ◎ 顔料インク

光沢特性

2004 8 C M Y K LC LM R G PIXUS 9900i (キヤノン

(株)) ◎ 赤、緑採用

2004 6 C M Y K LC LM

HP Disignjet 5500 インク

(Hewlett-Packard Co) ◎

ラージフォー

マット、水性油

性 UV インク

2004 7 C M Y K LC LM Wh UJF-605C(ミマキエンジ

ニアリング(株)) ◎ 無溶媒 UV

硬化インク

2002 7 C M Y K R B G 特開 2002-241661

(酒井泰三郎) ? 色再現性、

画質向上

2002 7 C M Y L R B G 特開 2002-331749

(キヤノン(株)) ? 願料インク

耐光性

2002 8 C M Y K LC LM LY LK 特開 2002-80766

(Hewlett-Packard Co) ? 画質、耐光性

向上

2003 6 C M Y K Or G US 6530986

(Ilford Imaging) ? 顔料インク

多色系

2003 6 C M Y K LC LM 特開 2003-112469

(キヤノン(株)) ? 願料インク

耐光性

LC:Light Cyan LM:Light Magenta LY: Light Yellow RGB:Red, Green, Blue

LK:Grey(Light Black) DY:Dark Yellow Wh:White

P-POP:普通紙耐水性強化剤 GO:Gloss Optimizer(光沢制御)

Or:Orange Mat K:マットブラック(マット紙、普通紙濃度アップ)

Photo K:フォトブラック

出典:角谷繁明、No 57 日本画像学会技術講習会テキスト(2004/07/15-16), p25 など

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第6章 提言

インクジェット用インクに関する特許出願および研究論文の量的および質的推移の解析を

中心に、政策動向、市場動向の調査を加えてインクジェット用インク技術開発に関する動向

調査を行った。これらの結果を基に研究開発の現状と課題を整理し、また本技術関連で今後

日本が実施すべき各種の技術項目を抽出して、提言とする。

第1節 現状

1.技術発展の現状

インクジェット用インクに関する日本および世界の特許出願件数は調査期間(1990~2002

年優先権)において増加傾向であった(図-4)。特に、1990 年代に入ると電子化情報、中で

もカラー化された情報量が増加し、印字・画像の高品質化、耐久性向上、高速印刷化などの

要求が高まった。これに応えるべくインクジェットプリンター、インク、記録媒体の改良に

向けた研究開発が活発になったことが、これまでの特許出願件数の増加要因である。2000 年

代に入ると、これらの成果として銀塩写真なみの品質、耐久性を主張する製品が上市され、

印刷対象も家庭・オフィス用から、ラージフォーマット(大版)の商業用、産業用分野など

に拡大されて本格的な発展を続けている。また、紙の他に、布帛、樹脂、セラミックス、金

属など記録媒体の材質、大きさとも広範な対応が可能であり、急速に利用が拡大してきた。

さらに画質向上(耐久性、色域の拡大、カラーマッチング対応など)や、紙以外の印刷対象

の範囲拡大など、技術向上は継続されると共に、特許出願件数は今後も増加すると予測され

る(図-16)。

2.主要メーカーと技術開発状況

世界の小型インクジェットプリンター市場は日本のキヤノン、セイコーエプソンおよび米

国の Hewlett-Packard、Lexmark International の 4 社が中心となり形成され、インク関連の

特許出願は自国内、対外出願件数ともこれらの企業および色材、インクおよび記録媒体メー

カーを中心になされている。日本のメーカーは技術開発に積極的であり、製品の競争力強化

のため積極的に努力してきた(図-11、図-18、図-19)。

3.色材技術

染料はアゾ系から金属錯体化アゾ、複素環非アゾなど、採用される分子構造の範囲が拡大

しており、耐候性・耐久性や色域の拡大に向けた技術開発により、水性染料インクは光褪色

性、ガス褪色性、耐久性で世界をリードしている。顔料はカーボンブラックのインクジェッ

ト用インクへの利用技術に関する特許が 1990 年代に出願、その後に実用化された。しかし特

に 2000 年以降は有機顔料に関する特許件数も増加している。顔料特有の良好な耐候性に加え

て、染料インク並みの鮮明性、分散安定性などを求めた研究開発が積極的に行われている(図

-42、図-45)。

4.模倣品

プリンターヘッドと比較してインクの製造は色材メーカー、インクメーカーなどにとって

- 37 -

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参入が容易な技術分野である。その結果、日本企業の主力製品の模倣品が一部地域で生産、

輸出され、その結果、日本企業が有する特許権などが侵害され多額の損害を被っているだけ

ではなく、ブランドイメージの低下などの悪影響を受ける懸念もある(図-23)。

第2節 技術上の課題

1.画質向上

インクジェット用インクに用いられる色材、すなわち染料、顔料に関する特許に記載され

た色材分子構造の解析を行った(図-40、図-44)。染料色材ではアゾ系から金属錯体化アゾ、

複素環非アゾなど、分子構造の範囲が拡大しており、耐候性・耐久性や色域の拡大に向けた

技術開発競争が続いている。顔料系では印刷用インクで使用されていたカーボンブラック色

材のインクジェット用インクへの利用技術に関する特許出願が 1990 年代に開始され、実用化

された。しかし 2000 年以降は有機系顔料色材に関する特許件数も増加し、カーボンブラック

と比肩できるようになっている。耐候性を中心に顔料色材への期待は大きいが、染料インク

並みの鮮明性、分散安定性などを求めた開発競争が背景にある(表-43、図-44)。水性染料イ

ンクでは光褪色性、ガス褪色性、耐久性で世界のトップ水準に到達した。染料色材は多様性、

鮮明性などに特徴がある。顔料色材は耐候性に特徴がある。画質のグロス性、耐候性に対す

る要求レベルから色材が選択され、また両者の併用も進む。記録媒体の改良と合わせて画質

向上を目指して進められた技術開発課題を整理し、図-53 に示した。

図-53 画質向上を目的とした技術開発課題

高画質化(銀塩写真画質追求)

画質:色域、解像度、中間階調性耐久性:耐水性、耐光性、耐酸化性、耐擦過性

1.色材開発   CMY系三原色色材   黒色色材   濃淡色インク用色材   RGB、白色色材(補助用)   吸収スペクトル   光学濃度、吸光度   インクセット2.インク調合技術   添加物、顔料高分散化3.吐出安定性、保存性   添加物、組合せ4.耐久性   色材分子構造、置換基   樹脂成分等

1.ヘッド技術: 微細液滴化、着弾精度向上2.印刷モード制御:   階調性の表現(誤差関数法)         (濃淡インク選択)   液滴量の制御、液吐出モードの制御   インクセット用インクの使い分け     (インク別印字順)

インク技術

印刷制御技術・システム

1.インク受容層構成材料、物性   複層構造化             インク吸収特性    製紙用無機顔料、結着剤       溶剤親和性、ゾルゲル変換性   記録媒体色調            インク固定成分     (CIEL*a*b*値)         表面改質成分     (蛍光増白剤)         普通紙利用技術(二段印刷など)2.色調安定化技術   色材固定化成分   紫外線安定剤、酸化防止剤3.印刷後処理技術   オーバーコート技術

記録媒体技術

画質評価技術 

色域評価、分光光度計  保存安定性評価

    (光源、雰囲気など)

高速高精細度の印刷技術

   フォトショップ対応  家庭用デジタルカメラ向け   プリンター

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インクジェット技術のもう一つの課題はその利用面である。この技術は専用紙、普通紙の

他、布帛、樹脂、セラミックス、金属など記録媒体の形式、材質、大きさとも広範な対応が

可能であり、急速に利用が拡大している。画像分野、産業用応用分野で期待される今後の展

開と課題を図-54 に整理した。画像分野では印刷速度、大型印刷、記録媒体適合性などと、

高画質化、画像保存性が課題軸となっている。産業用印刷では生産速度、精細度が課題軸と

なっており、さらに年間 8,000h 連続吐出が可能な安定性、信頼性の高いインクジェット技術

も必要とされる。

2.環境適合性

インクの多くが水性染料インクであり、かつインクの使用量がより少量ですむオンディマ

ンド方式(DOD 方式)で吐出されることから、インクジェット印刷は環境適合性の高い印刷・

画像形成技術であり、従来の印刷用油性インクと比較して環境面で有利といえる。しかし吐

出安定性、画質向上、印刷速度の向上などを目的に、保湿剤、界面活性剤、殺菌剤などの有

機質添加物が添加され、一部の成分が VOC、HAPs の対象となるとともに、蓄積性、発ガン性、

変異毒性など、各成分の注意深い安全性評価が必要となっている。さらにラージフォーマッ

ト(大判)印刷では樹脂加工した記録媒体に高速で耐久性の高い画像印刷をする必要性から、

溶剤・油性インクや UV 硬化インクが採用されている。また、アパレル分野のような商品サイ

クルの速い市場ではインクジェット捺染の採用が拡大するであろう。実際に捺染用インク、

印刷技術に関する特許出願も少なくない。さらに利用範囲の拡大を図るには、より環境面で

の配慮を必要とし、年間 8,000 時間の連続吐出が可能な安定性、信頼性の高いインクジェッ

ト技術も必要とされる。

3.標準化

デジタルカメラやデジタル通信手段の進歩で、色彩情報の伝達が国際的レベルで一般化し

てきた。捺染分野、医療・ライフサイエンス分野などで、数値化された色彩表示法、再現法

が必要であり、国際的な標準化活動が推進されている。日本もカラーマッチングの分野で積

極的な貢献をしてきた。しかし、色材、記録媒体など開発競争の激化の影響を受けて、ISO/IEC

の合意が困難な場合も考えられる。

第3節 新規分野への展開

インクジェット印刷技術はこれまで家庭・オフィス用から、一般印刷機分野への拡大を指

向して発展してきた。しかしその応用が期待される範囲は図-54 に示したように極めて広い。

表-39 で明らかにしたように、被引用度の高い重要な論文はナノテクノロジー、ライフサイ

エンス分野へのインクジェット技術の応用に関するものであった。高分子インクや高分散の

金属超微粒子、導電性樹脂(PEDOT-PSSなど)を含むインクを用いて、CAD法による三次元樹

脂造形(Objet Geometries社、PolyJetTM技術など)、プリント配線基板、RFID(Radio Frequency

Identification)アンテナ等の製造まで応用範囲が拡がってきた。ピエゾヘッド技術の改良や

金属インクの安定供給が可能となり、工業的利用が開始されている。さらに液滴量を現状の

1~100plのレベルから、さらに下げる技術が産業技術総合研究所のプロジェクト(産業技術

研究開発関連事業/情報通信分野「インクジェット法による回路基板製造プロジェクト

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(P03026)」、平成 15~17 年度;「高効率有機デバイスの開発(P03000802)」、平成 14~18 年

度など)で研究され、素子や高精細度の集積回路製作まで可能性が拡大してきた。捺染、パ

ターニング、コーティング、三次元造形、表面平滑化処理など、無版で設計変更が容易、記

録媒体適用性の広さなどの特徴を活かした既存の製造技術のインクジェット印刷方式による

省力化、合理化が期待される。

図-54 インクジェット技術の画像分野、産業用分野への展開と課題

先端産業分野へのインクジェット技術の応用は、企業を中心に DNA アレー、さらに最近で

は組織工学(ティシューエンジニアリング)、再生医療の分野まで研究が進み、免疫拒絶のな

い臓器移植など医療関係で広範な応用が期待される。DNA や生細胞分散液の吐出では熱衝撃

の小さいピエゾジェット方式が専ら採用されており、25~500μm 間隔で高精度に複数回吐出

するために、MEMS 方式により製造されたヘッドが開発されている。

写真分野(vs 銀塩写真)

大画面、看板、広告、壁床材、ビルボード屋外、移動体

(UV硬化型)(溶剤・油性インク)

一 般 用 印 刷 機

写真現像

印刷速度大型印刷

記録媒体適合性

ミニラボ

高画質化、画像保存性

オフィス印刷機製版、直接印刷

(vs レーザープリンター)

家庭用

オフィス用

インクジェットPC・ネットワークプリンター

水性顔料インク水性染料インク

CTSカラーオフィス

パッケージング

FPD 生産有機ELPDP, LCD

DNAチップ

生産速度

MEMSNon-Printing応用分野

精細度

捺染

家庭用

オフィス用

インクジェットPC・ネットワークプリンター

プリント回路印刷

第4節 提言

1.特許情報を活用した権利化のための戦略の構築

日本および欧米諸国の企業によるインクジェット用インク関連の出願のうち、ほとんど全

てといってよい程の出願が日本特許庁へ出願がなされている。これは、この分野の技術を調

査する上で、日本の特許文献が極めて重要であることを意味している(図-10)。つまり、日

本企業は、この技術情報を十分に分析し技術開発方針の策定や出願戦略を構築するにあたり、

技術文献である特許文献を分析する際にはまず日本の特許文献を調査することが重要である。

そして、このように、先行技術を入念に調査して、前記の課題を解決するような技術を自社

の経営方針に適合した一群の技術として権利化し、結果的に強い競争力を有する製品の上市

が可能となるような研究開発方針や出願戦略を構築することが必要である。

また、日米欧の出願構造を比較した場合(1990~2002 年の出願の総計による)、欧米諸国

の企業は、自国内への出願件数のおよそ 90%の数を他国にも出願しているのに対し、日本国

籍の出願は、米国、欧州へそれぞれ 10%程度しか出願しておらず、国内偏重の出願構造とな

っている(図-10)。しかしながら、インクジェットプリンターおよびインクのマーケットは

国内のみならず世界レベルで急速に伸びている現状を考慮すると、日本企業は、欧米の企業

並に外国市場を見据え、より積極的に外国へも出願することが肝要である。

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このような企業行動が、環境面に配慮すると同時に画質が向上されたインクを含む、イン

クジェット印刷技術全般における日本企業の競争力強化に寄与することになるのではないか。

2.インクジェット用インクの今後の展開

今後も、画質、耐候性などの向上に加えて、印刷対象も布帛、樹脂などに拡大し、利用分

野もオフィス用や産業用などへと拡大するといえる。そして、これらの変化に対応すべく、

インクジェット用インク技術も技術開発がなされるのではないか。

このような、用途に対応して技術開発なされる場合には、汎用のインクジェット用インク

ではなく、用途に応じてきめ細かい検討がなされたインクジェット用インクであることが期

待される。

3.新規分野への展開

印刷や捺染以外のインクジェット印刷の新規分野は、現在、市場規模こそ大きくはないが、

世界レベルでみると微細液滴吐出用高精度ヘッド技術、およびそれに適したインクなどの取

り扱いは日本の企業が世界をリードする技術である。この有利性を最大限に活かして新規分

野へ積極的に展開することが望まれる。インクジェット技術の応用は新規分野に必要な要素

技術の一つとなり得る。このため、日本の各メーカーが互いに補完しながら積極的な技術開

発を進めることと、その成果である発明を最大限に強い権利として権利化できるような戦略

的な出願を行うことで、特に競争力を強化する必要がある。

4.模倣品対策

今後、特に中国国内の市場の拡大が見込まれるので、日本企業は中国への出願をより積極

的に行うと予測できるが、現在は日本企業による欧米への出願件数と比較して、中国および

韓国への出願件数は極めて少ない状況にある。現地での権利取得は模倣品対策として必要不

可欠であるという観点からも、日本企業は PCT 出願をさらに利用するなどして、中国をはじ

めとするアジア諸国への出願をより積極的に行う必要があると考えられる。

また、模倣品の存在を確認した際には、より積極的に国および関係機関との連携のもとに

対応することが必要である。

- 41 -