1. 学校教育と qc - 統計局ホームページ†論的問題解決法...
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平成 23 年度統計指導者講習会資料 平成 23 年 7 月 25 日
東京学芸大学附属国際中等教育学校
高橋 広明
QC 的問題解決の中に統計教育を位置づける指導の試み
1. 学校教育と QC
知識基盤社会の現代において,問題解決力はますます重要な役割を果たすものである.ここでの問題
解決とは,単に与えられた問題を解決することではなく,自ら問題を見出し,解決のための計画を立て,
分析・考察し,結果を解釈する一連の過程を指している.企業においては,これらの問題解決過程を通
して,常に状況の改善が図られている.企業の品質管理(Quality Control; QC)はこのような問題解決のも
とに行われ,その結果として日本は世界に誇れる高品質な製品を世に送り出し続けている.企業におけ
る問題解決過程は PDCA サイクルに代表される.すなわち,Plan – Do– Check – Action の一連のサイクル
である.学校教育においてこのような体系的な問題解決の考え方を扱うのは高等学校の情報である.新
学習指導要領において共通教科情報の「社会と情報」では,‘望ましい情報社会の構築’の中で,「問題
の発見と明確化,分析,解決策の検討,実践,結果の評価などの問題解決の基本的な流れを理解させ,
…問題を解決する方法に関する基礎的な知識と技能を習得させる」ことが明記されている.さらに「情
報の科学」では‘問題解決とコンピュータの利用’や‘情報の管理と問題解決’の中で,「問題解決の
過程で用いた方法,得られた情報及び創出した情報などを評価し,Plan – Do – Check – Action の PDCA
サイクルで解決策を改善するなどの作業を通して,他の問題解決に役立たせようとする能力や態度を育
成する」ことも明記されている.中学校段階では,QC を健康増進に役立てようとして考えられた
HQC(Health Quality Control)を保健体育の中で扱う研究があり,数学科でも PDCA サイクルから派生した
PPDAC サイクルを通して統計教育を行う研究が蓄積されつつある.しかし中学校段階ではこのような
QC 的な問題解決の流れに触れる機
会はまだまだ少ない.だが,“問題”
とは「あるべき状態や目標と,現状
との差(ギャップ)のこと」(細谷
(1989))と捉えれば,中学校段階でも
生徒の身の回りにはたくさんの“問
題”があるはずである.これを積極
的に取り上げ,その問題の解決を通
して,問題解決の考え方や手法に触
れることは大いに意義があると考え
る.
2. QC的問題解決法と QC手法
2-1. QC 的問題解決法
何らかの問題に直面した時,その問題を解決する方法として,細谷(1989)は“理論的問題解決法”と
“QC 的問題解決法”の 2 つに分類している.
図 1-1:問題の定義(細谷(1989))
◆理論的問題解決法
→演繹的アプローチとも呼ばれる.物理学,化学,経済学などの学問的理論をもって,また
は過去の似た事実から類推して問題を解決する方法
◆QC 的問題解決法
→帰納的アプローチと呼ぶことができる.問題が発生した原因へさかのぼって,なぜなぜを
繰り返して,事実に基づいて問題の原因を突き止めていく方法
この分類によると,多くの数学の授業における問題解決は理論的問題解決法に属する.数学における問
題解決は帰納的に考察しながらも,最終的には既習の数学的知識や考え方を用いて演繹的に解決するか
らである.数学に限らず,自然科学における問題解決は多くがこの理論的問題解決法によることとなろ
う.しかし,社会的なあるいは日常的な場面で問題解決を行う際には,この QC 的問題解決法によると
ころが多い.したがって学校教育の中でこのような QC 的問題解決を行うような教材を開発することが
重要である.
2-2. QC の歴史
QC はアメリカの W.A.シューハートが数理統計学の理論を適用し,品質を工程で管理するための管理
図を考案したのが始まりだと言われている.この品質管理は統計学を用いて行うため,SQC(Statistical
Quality Control;統計的品質管理)と呼ばれている.日本では 1950 年に W.E.デミング博士により SQC が
もたらされ,日本の製造業繁栄の礎を築いた.その後 QC は TQC(Total Quality Control;総合的品質管理)
と発展し,日本では組織長などをリーダーとする小グループ単位で現場の品質管理活動を担っていった
(これらは QC サークル活動と呼ばれる).その際の品質管理の手法(QC 手法)はいろいろ考えられたが,
次のような条件を備えているものが求められた.
① やさしくて,簡単に作成できる――むずかしい計算や作図のための道具を必要としないで,数時
間の勉強で修得できる.
② すぐにわかる――眼で眺められるもので,理解が容易に得られる.
③ みんなが使える――QC サークル活動で,みんなが協力して使うことができる.
これらの条件にかなうものとして,QC 七つ道具(通称 Q7 と呼ばれる)が開発された(細谷(2010)).
2-3. QC 七つ道具(Q7)と新 QC七つ道具(N7)
QC 七つ道具は主として数値データを解析するときに使う手法で,以下の 7 つの手法をさす(細谷
(2010)).
q1) パレート図:不良品や欠点などの品質をはじめ,生産性,コスト,安全などの不具合件数や損失
金額について,その原因や現象別に分類して,大きさの順に並べて書いた図
q2) 特性要因図:品質特性,不良項目などと要因との相互の関係を魚の骨のような体系図にまとめた
もの
q3) グラフ:データを集めて,数量の大小関係,時間的な変化や内訳を示した図
q4) チェックシート:簡単にチェックするだけで情報が集められるように様式化された用紙
q5) ヒストグラム:データの存在する範囲をいくつかの区分に分け,各区分に入るデータの数を数え
て,この度数を高さとして作った図
q6) 散布図:硬度と抗張力,温度と収率,気孔率と絶縁耐力などのように,対になった 2 組の特性値
をヨコ軸とタテ軸にとり,データを打点して作られた図
q7) 管理図:ヨコ軸に時間を,タテ軸に特性値をとって,データを打点したものであるが,折れ線グ
ラフと異なり,管理限界線が記入されている
製造過程においてはこれらの QC 手法は非常に有効であるが,事務部門や営業部門においては数値デ
ータを解析して解決するような問題はあまりなく,新技術開発や新製品開発,新規市場の開拓などの取
り組みに対する新しい手法が求められるようになってきた.その新しい QC 手法として,主に言語デー
タを図式化する手法である新QC七つ道具(通称N7)が開発された.それが以下の7つである(二見(2002)).
n1) 親和図法:言語データを親和性に基づいて統合することによって問題を明らかにしたり,全体像
をつかんだり,発想を得たりする手法
n2) 連関図法:原因と結果や目的と手段の関係が複雑に絡み合っている場合に,これらの相互の関係
を明らかにすることによって,不良や不具合の原因を探索したり,問題構造を明らかにした
り,目的を達成するための手段を得たりする手法
n3) 系統図法:問題を着眼点で枝分かれさせながら考えていくことによって,問題を解決するための
実施可能な方策を得たり,改善対象の中身を明らかにしたりする手法
n4) マトリックス図法:問題にとって着目すべき事象や事柄の要素を行の項目と列の項目に配し,要
素と要素の交点で互いの関連の有無や関連の度合いをとらえることによって問題解決の着
眼点を得る手法
n5) PDPC (Process Decision Program Chart) 法:事態が流動的で予測や予見が困難な場合に,その実施
過程での事態の進展に合わせて,計画を逐次充実していくことによって目標を達成する手法
n6) アローダイアグラム法:プロジェクトを進めていくのに必要な作業の順序関係を矢線と結合点で
表して最適な日程計画をつくり,進度管理上の重点を明らかにし,計画の進度を効率よく管
理する手法
n7) マトリックスデータ解析法:個々の指標や特性といったものを変数としてとらえ,変数ごとに多
くのサンプルについて採取した数値データから,変数がもつ情報を要約した総合指標を求め,
この総合指標で変数がもつ特性を把握するとともに,個々のサンプルを評価する手法(多変
量解析法の主成分分析法)
問題解決や課題達成のツールとして,これらの QC 七つ道具や新 QC 七つ道具は企業での改善活動に
生かされている.
3. 統計教育における PPDACサイクル
中学校数学では新学習指導要領において統計的領域である「資料の活用」領域が新設されたが,中学
校における統計教育も,一連の問題解決過程に位置づけ指導されるべきであると主張されている(渡辺
(2007,2009),新井(2009)).この PPDAC サイクルは QC における PDCA サイクルを統計教育に転用した
ものと言われている.それは次のようなステップを踏むものである(Frankcom G. (2008)).
Problem (問題):問題を理解・明確化し,その問題に答えるためにどうすべきか考える
Plan (計画):測定すべきものは何かを考え,設計・記録・収集の方法を考える
Data (データ) :データの収集・管理・クリーニングを行う
Analysis (分析) :データを分類し,表やグラフを作成し,パターンを見つけ,仮説を立てる
Conclusion (結論) :解釈したり,結論付けたり,新しいアイデアを出したり,コミュニケーシ
ョンをとったりする
4. QC的問題解決を実現するための教材例
中学校数学において QC 的問題解決を扱うことを考えたとき,統計領域での指導が現実的であろう.
そのためには教材を開発する必要があるが,開発に際しては題材の選び方として次の点を大切にしたい.
(1) 生徒にとって身近であり,問題意識を共有でき,QC 的な問題解決が図れるもの.
(2) 分析結果,あるいは考察結果によって改善することができるようなもの.
これらの観点を踏まえた教材例を以下に示す.その際に PPDAC サイクルの各段階においてどのような
活動が可能か,さらに有効な QC 手法があればそれをあわせて記す.
教材例 1
i) Problem
学校生活の中での落し物に焦点を当てて次のような問題を考える.
学校での落し物が多い.改善することはできないだろうか.
ii) Plan → チェックシート
実際にどのような落し物があるのかを把握するためにデータを取らなくてはならない.落し物は担当
の教員に届けられるため,その教員にデータを記録してもらうことになるが,記録のためにどのような
項目が必要か,記録用紙はどのような様式にするのかを考える必要がある.それがチェックシートであ
る.
iii) Data
作成したチェックシートを担当教員に渡し,記録をお願いする.一定期間後,その記録用紙を回収し,
データをスプレッドシートなどに記録する.
iv) Analysis → パレート図 層別
集めたデータを集計し分析する.このときの分析に役立つのはパレート図である(左下図).パレー
ト図を作成することにより状況を把握することができる.また,特定の項目のデータ数が多いときはそ
の項目だけを取り上げて,多段階のパレート図にすることも考えられる(右下図).
上は収得した品目別のパレート図を作成したが,収得した場所別でのパレート図を作成すると,さら
に分析が可能になろう.このような層別による分析も大切にしたい.
v) Conclusion → パレート図
iv)での分析結果を解釈し,そこから改善に向けての対策案を探る.そして得られた改善策を実際に実
行してみて,その効果を探る.しかし検証には一定期間が必要なので,数学の授業の中で,あるいは同
一の学年内でその効果を探るのは困難かもしれない.効果の有無は再びパレート図を作成すると分かり
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落し物(品目別)N=142
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累積比率
データ数
文具落し物N=85
やすい.
教材例 2
i) Problem
本校では火および木曜日は 7 時間目まで授業があるため,その日は清掃を行わず,月・水・金曜日の
週 3 日間清掃を行っている.清掃時間は 13:05~13:20 で,13:20 から各学級で SHR が行われる.しかし
時間的にゆとりがなく,清掃が SHR の時間に食い込んでしまうことが多い.清掃が早く終了すれば 13:20
を待たずに,生徒がそろい次第 SHR を始めることができる.この状況をもとに,次のような問題を考
える.
SHR の開始時刻が遅くなることが多い.どうすれば改善することができるだろうか.
ii) Plan → 連関図法(新 QC 七つ道具) チェックシート
SHR の開始時刻が遅くなる要因を探るために,連関図あるいは特性要因図を作成する.
連関図法を用いて,問題に対する原因として主要であると考えられる要因が特定できればその要因が
本当に問題に対する原因で
あるのかをデータをとって
分析しなければならない.そ
の場合は,データの分析は原
因であるとの仮説が妥当で
あることを補強する役割と
なる.一方で,例えば上の例
で,清掃の開始時刻に遅れれ
ば SHR の開始時刻が遅くな
ることは必然であるかもし
れない.したがって本来なら
ば清掃の開始時刻に遅れる
要因をさらに特定していか
なければならないが,確たる
仮説が立てられないことも
考えられよう.そのときは,
後に層別できるようにいくつかの項目のからなるデータを収集し,そのデータを分析することで要因を
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累積比率
データ数
落し物(品目別)対策後N=77
導き出すことになる.この場合は,要因を特定するためにデータを分析することになる.
いずれにしても,連関図法を行った後はデータの収集が必要になる.したがって,データ収集用の記
録用紙であるチェックシートの作成が伴ってくる.
iii) Data
チェック用紙をもとにデータを収集し,スプレッドシートにまとめる.
本校では前述の通り週 3 回しか清掃がなく,各種行事の日や長期休業中は清掃がない.年間では約 70
日ほどであるため,上のようなデータとなる.
iv) Analysis → ヒストグラム(箱ひげ図) 層別
集めたデータを分析する.どのような項目でデータを収集したかによるが,時間などの間隔尺度以上
のものを扱うときにはヒストグラムが必要である.また,項目による層別も大切である.層別すること
により見えなかった要因が見えていることも考えられるからである.この教材はそのことを狙ったもの
である.また,層別することにより複数のヒストグラムを比較することになるが,分布を持つ複数のデ
ータの比較に際しては箱ひげ図を用いることもある.QC 七つ道具には含まれていないが,箱ひげ図で
比較しようとする考え方も認めたい.
ヒストグラム
全データのヒストグラム
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天気で層別したヒストグラム
晴れの日 曇の日 雨の日
曜日で層別したヒストグラム
月曜日 水曜日 金曜日
箱ひげ図
天候別の箱ひげ図 曜日別の箱ひげ図
v) Conclusion →ヒストグラム
iv)においてデータを分析したことで得られた知見をもとに,改善策を練る.場合によってはその分析
結果をもとに,ポスターなどを作成して,注意を喚起するような啓蒙活動も改善策として提案されるこ
とも考えられる.そのようなときは美術科と教科間連携をし,美術の授業でポスターの作成などを行う
ことも考えられる.このような何らかの改善活動をした後,その効果を測定するために再びデータを取
り,そのデータを分析することも必要となる.その際には同じ条件でヒストグラムを作成し,比較する
ことによって効果の有無が判断できる.
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5. 実際の学習指導
5-1.教材について
本教材は,4.において教材開発にあたり大切にしたいこととして挙げた 2 点を実現でき,実際の生
徒の問題意識から生じたものをもとにした教材である.
2 学期の期末考査後,生徒に学習の姿勢について 2 学期の振り返りを行わせた.その中で,次のよう
な記述がみられた.
これらの記述のように,家庭での学習時間をしっかり確保できなかったという反省が多くみられた.そ
の要因はいろいろあるであろうが,その主要な要因の一つとして部活動をしているため,なかなか時間
が確保できないと考えている生徒が多いことが予想される.実際に先の振り返りの中には,次のように
勉強と部活動との両立について記述した生徒も存在した.
そこで,実際に全生徒対象に行ったアンケート調査を分析し,部活動を行うと家庭での学習時間に影響
を及ぼすのかを考察することを目標とする.結論的には,部活動に所属しているグループと所属してい
ないグループとで層別して分析した結果,家庭での学習時間の分布は両グループで大きな差がないこと
が分かる.したがって,数学的に分析した結果に基づくと,家庭での学習時間がしっかりとれていない
要因を部活動に求めるべきではないと判断することができる.したがって学習時間の目標の設定と個人
での時間管理の改善が重要かつ必要であることを理解させることが目的である.
5-2. 本教材で主張したい点
生徒の現実の身の回りにある問題をもとに QC 的問題解決を行わせることが目的であるが,その際に
以下の点を主張したい.
●従来の数学の授業では触れられることが少なかった帰納的アプローチによる問題解決法,すなわち
QC 的問題解決法に触れることにより,状況を分析することを通して,より最適な状況へ改善するこ
とができるようになるという経験をさせたい.
●統計教育は統計的知識や技能を培うことが目的ではなく活用できるようにすることが目的であるが,
何のために活用するのかまで考えなくてはならない.本教材では状況を分析する,あるいは状況を判
断するために統計を活用することが目的である.また,統計を用いて状況を分析したり判断したりし
た結論をもとに,物事を改善していこうとする態度を養いたい.
●QC 七つ道具や新 QC 七つ道具はあくまでも分析や思考の整理をするためのツールである.したがっ
て学校教育の中で扱おうとするとき,それらのツールを一つひとつ教えるのが目的ではなく,必要な
時に必要なツールに触れられればよいと考える.また,それらのツールそのものではなく,そのツー
ルの見方や考え方に触れる程度でもよいだろう.例えば,管理図は学校教育の中では授業として用い
ることはなかなか考えられないが,並びのくせに注目して工程の状況を見取り判断するという考え方
は学校教育の授業の中でも触れることはできる.例えば,時系列データを折れ線グラフで表したとき,
特別に変動が大きかった時あるいは極端に変動が少なかった時,そこには何があったのか,という見
方をし,分析することはできるであろう.
●グループごとの状況を知りたいときはグループに分類して分析しなければならない.これが層別であ
る.一見すると特徴がなかったり,あるいは明らかに不自然な状況を指し示したりしているデータに
対しては,層別することにより状況をより正確に分析することもできる.この層別の考え方は重要で
あるにもかかわらず,教科書等に明記されてはいない.そこで層別して分析する場面を与え,そのよ
さや大切さを感得させたい.
●分布を調べるために相対度数を用いる必要性のある状況を提供し,相対度数の考え方やよさを感得さ
せたい.
5-3. 本教材の扱い方
i) Problem
5-1.で述べたように,家庭学習の時間が少ないと考えている生徒が約半数に上る.生徒の記述から,
そのことを反省事項とし,改善したいと考えていることがうかがえる.そこで次のような問題を考える.
家庭での学習時間が少ない.どうしたらよいだろうか?
ii) Plan → 特性要因図
特性要因図を作成し,主要な要因を特定する.ここではその主要な要因として「部活動があるので家
庭学習の時間が少なくなってしまう」ことを想定する.
iii) Data → アンケート調査
実際にデータの収集を行う.今回はデータの収集にはアンケートを用いる.本来は特性要因図から導
かれた要因が真の要因であるのかを分析する必要がある.したがってその分析のためにはどのようなデ
ータが必要か,アンケートを行う上ではどのような項目が必要かを考えなければならない.今回は予め
行ったアンケート結果をもとに分析を行うこととする.アンケートは 1 年生から 4 年生までの全生徒に
対して,2 学期の終了直前に実施した.その項目は以下の通りである.
・学年,性別
・部活動に加入しているか[いいえ・はい(運動系・文化系・両方)]
・テスト 1 週間前(11/29(月)~12/5(日))の 1 日の平均学習時間[約 分]
・テスト直前の 12/5(日)の学習時間[約 分]
・普段の平日の平均学習時間[約 分]
・普段の週末土日の平均学習時間[約 分]
収集したデータはスプレッドシートに記録する.今回はすでにスプレッドシートに記録したデータを
生徒に与え,それを分析することとする.下はそのデータの一部である.
図 5-1:アンケートの収集結果
iv) Analysis → ヒストグラム 層別
興味の対象は部活動に加入していることにより家庭学習の時間に影響を及ぼしているかどうかであ
るので,部活動の加入・非加入により層別する必要がある.そのヒストグラムは図 5-2 のようになる.
図 5-2:部活の加入・非加入で層別したヒストグラム
2 つを比較すると,似たような傾向にあることが見て取れるが,これをより比較しやすくするにはどう
したらよいかを考えさせたい.それにより相対度数の考え方を引き出し,相対度数をもとにヒストグラ
ムをかくと,2 つの分布の様子が比較しやすいことに気付かせたい.相対度数のヒストグラムは図 5-3
のようになる.
学年 性別 部活加入 運動部加入 文化部加入テスト前平日学習時間
テスト前土日学習時間
平日学習時間
週末学習時間
1年 男 入っている 入っている 入っている 120 180 30 201年 男 入っている 入っている 入っていない 50 5 0 01年 女 入っている 入っている 入っている 120 240 50 501年 女 入っている 入っている 入っていない 120 420 120 2401年 女 入っている 入っている 入っている 240 300 60 60
図 5-3:部活の加入・非加入で層別した相対度数のヒストグラム
このヒストグラムから,多少ばらつきはあるが,部活動に加入している生徒と加入していない生徒とで
は傾向としては大きな差はないと判断できそうである.下は,週末の学習時間についてのヒストグラム
(図 5-4)と,それを相対度数で表したヒストグラム(図 5-5)である.
図 5-4:週末の学習時間 図 5-5:週末の学習時間の相対度数
テスト 1 週間前になるとすべての部活動は原則として活動が中止となる.テスト 1 週間前の平日および
週末の家庭学習時間を,相対度数をもとにしたヒストグラムで表したのが下のグラフである.
図 5-6:テスト 1 週間前の平日の学習時間 図 5-7: テスト 1 週間前の週末の学習時間
今回の目的は部活動の加入の有無と家庭学習の時間との関連を分析することであるが,アンケートを
とる際に,収集できるデータがあれば項目として用意しておくと,いろいろな観点で層別でき,別の分
析が可能となり得ることも理解させたい.例えば,今回のアンケートでは学年や性別にも答えてもらっ
ている.したがって学年ごとに部活動の加入の有無で層別するなど,多段階の層別が可能となる.下の
4 つのヒストグラムは,平日の学習時間について,学年ごとに部活動の加入の有無によって層別したも
のである.
図 5-8:第 1 学年
図 5-9:第 2 学年
図 5-10:第 3 学年
図 5-11:第 4 学年
部活動に加入していない生徒の数がかなり少ない学年もあるため,これを相対度数で表すと少ないデー
タが強調されすぎてしまう.その場合は相対度数よりも度数をそのまま用いた方が適切である.したが
って図 5-8~図 5-11 は度数をもとにしたヒストグラムで示している.
v) Conclusion → q5) ヒストグラム
分析した結果を解釈し,判断する場面である.平日の家庭学習時間について部活動の加入の有無によ
って層別したヒストグラム(図 5-3)から,部活動に加入している場合と加入していない場合とで,その分
布の傾向に大きな差はないと判断できそうである.したがって,部活動に加入しているから家庭学習の
時間が確保しづらいとは一概には言えなさそうである.逆にテスト 1 週間前の様子を比較すると,平日
も週末もどちらかというと部活動に加入している生徒の方が,学習時間が多い傾向にあるように判断で
きそうである.ではなぜ平素家庭での学習時間が少ないと感じているのだろうか.一つの解釈としては,
先の分析の通り,テスト 1 週間前は部活動に加入している生徒の方が家庭学習の時間が長い傾向にある
ことから,平素も時間があればもっとできるはずなのにと感じていることが考えられる.そこでそれを
確かめるために,テスト 1 週間前と通常の日とで家庭学習の時間の差を考察することが考えられる.下
は平日と週末のそれぞれについて,家庭学習の時間の差をヒストグラムで表したものである.
図 5-12:平日の学習時間の差 図 5-13:週末の学習時間の差
これらのヒストグラムから,部活動に加入している生徒の方が,テスト 1 週間前と平常時での学習時間
の差が大きい傾向にあることが読み取れる.したがって,部活動に加入していても時間があればその時
間を無駄にせず,学習時間に充てられることが予想できる.これらのことから,平常時について 1 日の
時間の活用の仕方をもう一度見直し,有効に活用できる時間を洗い出し,実際に有効活用するように改
善すべきと結論付けることができる.
また,学年別で多段階に層別したヒストグラム(図 7~図 10)からは,学年が進むにつれ,学習時間の
ばらつきが大きくなり,ほとんど学習しなくなる生徒の割合が大きくなる傾向が読み取れる.まさしく
中だるみの状況である.一般に中等教育学校は 3,4 学年頃から中だるみの傾向を示すようになると言わ
れているが,まさにその状況が実際のデータからもうかがうことができる.したがって一般論ではなく
現実問題として中だるみが存在することをしっかり認識し,将来の自分たちの行動の改善にもつなげて
もらいたい.
5-4. 学習指導計画および目標
本教材は数学の授業だけでなく,総合的な学習の時間を活用しながら実施する計画である.
i) 問題解決とは何かを理解し,特性要因図をかく. 1 時間(★)
ii) 特性要因図から主要な要因を特定し,検証に向けてのアンケートを作成する. 1 時間(★)
iii) 収集したデータを数学的に分析し,特定した要因が主要な要因であるかを考える. 1 時間
iv) 別の要因を考え,検証方法を考える. 1 時間
(★)は総合的な学習の時間に行う
本教材を扱う授業の目標は以下のとおりである.
○問題解決の手法および,要因分析に用いる特性要因図について理解することができる.
○仮説となる要因を特定し,それを検証するためのデータの収集方法について理解することができる.
○収集されたデータから仮説が正しいか否かを判断することができる.
○データを分析する方法として,相対度数で比較する考え方を習得することができる.
○新たな要因を考え,それを検証する方法を提案することができる.
5-5. 授業の実際
以下,実際に行った授業の概要を示す.一連の授業は平成 23 年の第 3 学期に 1 年生対象に行った.
i) 1 時間目
「問題解決の流れと手法」と題して講義を行い,問題とは何か,問題解決とはどのように行われるの
かについての理解を深めた.その後,「家庭での学習時間が少ない」という‘問題’に対する要因を分
析するために,グループでブレーンストーミングを行い,KJ 法などを用いながら要因を整理し,特性要
因図にまとめる作業を行った.
ii) 2 時間目
特性要因図を完成させ(資料 1),各グループの特性要因図を見比べる.その際に,いずれのグループ
も共通して掲げている要因はないかという視点で見比べるようにさせた.するといずれのグループも
「家庭での学習時間が少ない」という問題の要因として「部活動」をキーワードとして掲げていること
に気付いた.そこでそのことをもとに,
「どのグループも部活動を要因として挙げているが,では,部活動をやっている生徒とやっ
ていない生徒では部活動をやっている生徒の方が学習時間は少ないのだろうか」
と問うた.これに対して,「部活動をやっているかどうかは関係ない」という意見と「やはり部活動を
やっている人の方が勉強時間は少ないはずだ」という意見とが出された.そこで
「部活動をやっている人の方が勉強時間が少ないのかどうかを分析するにはどうしたらよ
いだろうか」
と問うたところ,「部活動を一時的にやめて勉強時間を比較してみる」という意見や「アンケートをと
ればよい」という意見が出された.そこで,ここではアンケートをもとに分析することを考えることに
し,分析が可能となるようなアンケートを各班で実際に作ることを課題とした.
iii) 3 時間目(この授業は公開授業であった)
前時に各班で作成したアンケートについて,ある一つの班のアンケート(資料2)を配布し,実際に
回答させた.その後,「各質問の回答は分析にどう生かすか」と問うと「部活に入っている人と入って
ない人とに分けて勉強
時間を分析する.」とい
う意見が出された.層
別して分析する考え方
はできているようであ
る.このアンケートに
ついて,例えば Q4 につ
いてはフリーアンサー
でどう分析するのか,
もし分析が困難であれ
ば,あらかじめいくつ
かのカテゴリーに分け
ておいて,選択式にす
る方法も考えられるこ
とを確認した.
図 5-14:科学の道具箱
アンケートの作成方法について確認したのち,教師側で 2 学期末に事前に収集しておいたデータを示
した(図 5-1).各班に 1 台ずつノート PC を配布しており,データはそこから確認することができる.
一通りデータを見てもらったのち,各データが質的データなのか量的データなのかを項目ごとに尋ね,
「学年」「性別」「部活動」「運動部加入」「文化部加入」が質的データで,それ以外が量的データであること
を確認した.その後,データの分析に取り掛からせた. データの分析には「科学の道具箱」(図 5-14)を用
いた.このツールはヒストグラムも簡単に作成でき,層別も行える便利なツールである.生徒は普段の
平日の学習時間やテスト 1 週間前の学習時間などを部活動の加入の有無によって層別したヒストグラム
を観察していた.層別した度数に対するヒストグラム(図 5-2)からは部活動の加入の有無によって違いが
あるかどうかについては判然としない様子であった.そこでどうすれば比較しやすくできるかを班で考
えさせた.しばらく時間をおいたが,なかなか相対度数につながる考えは出てこなかった.そのうち,
あるグループの生徒が偶然「相対度数」のチェックボタンを見つけ,それを押したところ図 5-3 のヒス
トグラムが現れた.それを発表してもらったが,そのヒストグラムが何を表しているのかまでは時間が
なく考察できなかった.それについては次時で確認した.
iv) 4 時間目
前時の続きで,「相対度数」のチェックボタンをおして現れたヒ
ストグラム(図 5-3)は何を表したものなのかを考察した.班で考え
させたところ,比較しやすいように割合で表している,という意
見がある班から発表させた.「科学の道具箱」でヒストグラムを表
示すると度数分布表も現れる(図 5-15).その度数分布表から実際に
各階級の割合を確認させた.どの班も,部活動に入っている集団
と入っていない集団とに分けて,それぞれの全体に対する各階級
の割合を正しく求めていた.これらの活動を通して,相対度数の
用語と定義をまとめた.
このようなやり取りの後,本課題の出発点すなわち「部活動に
入っている人の方が学習時間が少ないのか」に対する判断を行わ
せた.これについては,度数分布表及びヒストグラムで確認する
と部活動に加入していてもしていなくても学習時間の分布は同じ
ような傾向にあると判断してよさそうだということがクラスとし
て合意できた.これまで「家庭での学習時間が少ない」ことの主
要な要因として「部活動に入っているから」という仮説のもと分
析を行ってきたが,この仮説の成否について改めて問うと,その
仮説は正しくなさそうだという結論に達した.
そこで,今回の問題解決の出発点である「家庭での学習時間が
少ない.どうしたらよいだろうか?」という問題に立ち戻った.
多くの生徒が,学習時間が少ない要因として部活動に加入してい
るためと考えていたが,部活動に入っている生徒と入っていない生徒の学習時間の分布には大きな違い
はなかった.これをどう解釈するのかを問うた.これについては,ある生徒が,「勉強時間は自分の問
題だから.」という趣旨の発言をした.詳しく尋ねると,「家で勉強時間が少ないと感じているのは誰か
と比べて時間が少ないと感じているわけではなく,自分自身がどう感じているかなので,あまりこのこ
図 5-15:度数分布表
ととは関係ないと思う.」という意見であった.これはもっともな意見で,そもそも学習時間が多い・
少ないというのは個人の問題である.ではこのヒストグラムは意味がないのかと尋ねると,「部活動に
入っていない人の方が学習時間は多いと思っていたけど,これを見てそうでもないということが分かっ
て少し安心した.」という感想を述べた生徒もいた.最終的に「家庭での学習時間が少ない.どうした
らよいだろうか?」の解決策としては,しっかり計画を立てて行う,目標をもって行う,などの意見が
出された.月並みな意見ではあるが,データに基づいて判断したという点では有効な活動であったと考
える.
6. おわりに
世の中には社会的に解決しなければならない問題は数多存在するであろう.しかしそれらが生徒自身
の問題意識となるかは不透明である.したがって,より身近な素材をもとに,実際に存在する問題を分
析的に解決する経験を持たせることが必要である.それらの経験を通して,問題解決の意義や必要性を
実感できるはずである.生徒にとって身近な問題は意識すればいたるところに存在するはずである.な
ぜなら,‘問題’とはあるあるべき状態や目標と,現状との差(ギャップ)であるからである.
このような問題の解決を授業の中で扱うとき,ある程度教師側のお膳立てが必要である.しかし,最
終的には生徒が自ら問題を見出し,そして数学的手法や根拠をもって解決し,状況を改善できるように
なることを目標としなければならない.そのためには,一連の問題解決過程おいてどの段階に困難性が
あるのか,その困難性はどのように解消することができるのか,これらのことを詳細に分析していく必
要があろう.
【引用・参考文献】
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清水美憲(2007)「国際機関が提起する「数学的リテラシー」概念の意味」.
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鈴木和幸(2010)「統計的問題解決法のポイントと問題解決事例」.
第 1 回「科学技術教育フォーラム」予稿集.
細谷克也(1989)『QC 的問題解決法』.日科技連
細谷克也(2010)「QC 七つ道具の原点を探る」.日本品質管理学会誌『品質』.Vol.40, No.1
渡辺美智子(2007)「統計教育の新しい枠組み- 新しい学習指導要領で求められているもの」.
数学教育学会論文誌第 48 巻.3・4 号
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Frankcom G. (2008), “Statistics Teaching and Learning: The New Zealand Experience”,
http://tsg.icme11.org/document/get/489
Watson,J,M., (1997), “Assessing Statistical Thinking Using the Media”,
http://www.stat.auckland.ac.nz/~iase/publications/assessbk/chapter09.pdf
資料1 各グループで作成した特性要因図(抜粋)
1 班
6 班
資料2 班で作成したアンケート