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1 1 ストレートラジオの製作 古橋 1.1 組み立て 1.2 調整 本稿の Web ページ http://mybook-pub-site.sakura.ne.jp/Radio_note/index.html

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Page 1: 1 ストレートラジオの製作 - さくらのレンタルサーバmybook-pub-site.sakura.ne.jp/Radio_note/chap1.pdf図1.1.1 はブレッドボード上に製作したストレートラジオである.確実に動作する回路であ

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第 1 章 ストレートラジオの製作

古橋 武

1.1 組み立て

1.2 調整

本稿の Web ページ

http://mybook-pub-site.sakura.ne.jp/Radio_note/index.html

Page 2: 1 ストレートラジオの製作 - さくらのレンタルサーバmybook-pub-site.sakura.ne.jp/Radio_note/chap1.pdf図1.1.1 はブレッドボード上に製作したストレートラジオである.確実に動作する回路であ

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I.ストレートラジオの製作

ストレートラジオとは受信した周波数のまま増幅・復調する回路方式のラジオをいう.スト

レートラジオはトランジスタラジオの基本形であり,日本のどこに居てもほぼ確実にラジオ放

送を聞くことができるラジオである.

最も構成の簡単なラジオは鉱石(ゲルマニウム)ラジオであるが,ラジオ放送が聴けるかど

うかはラジオを置く場所の電波の強弱に大きく依存し,また,大きなアンテナを必要とするこ

とが多い.ストレートラジオは小さなバーアンテナさえあればほぼ間違いなくラジオ放送を聞

くことができる.鉄筋のビル内でも,窓際にラジオを持って行けば放送局を一つは捉えられる

ことが多い.大学の筆者の居室では NHK 第一(729kHz)を聴くことができる.木造の自宅では

さらに NHK 第二(909kHz),CBC ラジオ(1053kHz),東海ラジオ(1332kHz)を容易に捉えるこ

とができる.

1.1 組み立て

図1.1.1 (a) ストレートラジオ(組み立て図)

電池ボックス単3×4

イヤフォンジャック選局ダイアル

バー

アンテナ

Page 3: 1 ストレートラジオの製作 - さくらのレンタルサーバmybook-pub-site.sakura.ne.jp/Radio_note/chap1.pdf図1.1.1 はブレッドボード上に製作したストレートラジオである.確実に動作する回路であ

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図 1.1.1 はブレッドボード上に製作したストレートラジオである.確実に動作する回路であ

る.図 1.1.1(a)はラジオ全体の写真である.同図(b)はブレッドボードの部分を拡大したもので

ある.写真より部品配置の実際をおおむね知ることができる.ただし,写真からは部品同士の

配線の詳細が分かりにくいので,図 1.1.2 にこのラジオの立体配線図を示す.ポリバリコン C1

は図 1.1.1 の写真では選局ダイアルの陰になって見えていない部品である.図 1.1.3 に回路図を

示す.このストレートラジオは同調回路,高周波増幅回路,復調回路,低周波増幅回路からな

っている.個々の回路の組み立ての詳細は,個別の回路の章の組み立ての説明を参照されたい.

図 1.1.4はブレッドボードの外観写真と穴同士のつながりの様子を示す.図中の□が穴であり,

黒い線で結ばれた穴同士はボードの内部でつながっていることを意味する.図 1.1.2 では部品

同士のつながりを示すために多くの配線が描かれているが,これらの配線の多くはブレッドボ

ードの穴同士のつながりを利用すればよい.図 1.1.1 の製作例では,必要とした配線は 9 本だ

けであった.ハンダ付け作業はバーアンテナとバリコンの端子,可変抵抗の端子,イヤフォン

ジャックおよび電池ボックスの端子にどうしても必要であった.ブレッドボードの良さは,回

路変更が容易なことである.「こうしたらどうかな?」という考えをすぐ試すことができる.回

路変更に対する心理的ハードルが低い.

図1.1.1 (b) ストレートラジオ(組み立て図)

D1

R8

R9

C6 C8

Tr2

C7R2

R1 R3

R4

C2 C4

Tr1

Rx

R5

C5

R6

C1

L1

イヤフォンジャック選局ダイアル

バー

アン

テナ

音量調節

C3 R7

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Rx

図1.1.2 ストレートラジオの立体配線図

R7

D1

R8

R9

C6

C8

Tr2

C7

R2

R1 R3

R4

C2

C4

Tr1

C3

R5

C5

R6

C1

L1

Vdd

GND

3~12VE

イヤフォンジャック

選局 音量調節

バーアンテナ,ポリバリコン,トランジスタ,ゲルマニウムダイオード,ブレッドボード,電池

ボックス(ケース)などいずれもネットショップから購入できる.表 1.1.1 は(平成 21 年 10

月時点の)筆者の購入先である.表の購入先に限らず多くのネットショップがある.値段と送

料との相談です.イヤフォンは,iPOD や Walkman のような携帯音響機器で使われている普

通のイヤフォンを使用できる.

600µ

150pmax0.01µ

20k

220p20k

1SS106

10µ

47µ5k

2k

2SC1815

47µ50k

0.01µ100k

5k

2k

2SC1815

0.01µ

50k

低周波増幅回路同調回路 高周波増幅回路 復調回路

R7

R6 R8

R9

R2

R1

R3

R4

Rx

C2C1

C8

C7

C5

C6

D1

C3

C4

Tr1 Tr2

図1.1.3 ストレートラジオの回路図

3~12VE

Vdd

GND

イヤフォンへ

R5

50k

+

+

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1.2 調整

このラジオでは可変抵抗器を多用している.後の様々な回路変更を容易に試せるようにする

ためである.ただし,初めてラジオを作る人にとっては,こんなにたくさんの調整要素があっ

ては戸惑ってしまうであろう.可変抵抗器上面の十字の溝のある黄色いつまみを回すことで,

抵抗値を変えられる.十字の溝の一つは矢印の形状をしている.図 1.2.1 は各部の抵抗値と直

流電圧の調整例である.電源電圧 Vdd = 5 [V]のときの値である.これらの値は厳密である必要

はなく,この辺りとなるように各抵抗値を調整すればよい.音量調節用の可変抵抗器(ボリュ

ーム)R5のつまみを真ん中辺りとし,イヤフォンをつなぎ,選局ダイアルを回せばラジオ放送

が聞こえてくるはずである.図 1.1.1(b)の写真の矢印の位置に各抵抗値を合わせることでもよ

い.いったん音が聞こえれば,後はそれぞれの抵抗値を音が大きくなる方へと少しずつ変えて

いくことでラジオの感度を上げることができる.

可変抵抗器の抵抗値を変える上での注意事項は,以下の可変抵抗器のペアのつまみを同時に

時計方向一杯に回さないことである. R1と R2

R3と R4

R6と R7

R8と R9

図 1.1.1 の配線では,可変抵抗器の抵抗値はつまみを時計方向一杯に回したときに最小で

あり,R1と R2 のペア,もしくは R6 と R7 のペアの抵抗値を同時に最小とすることは電源を短

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絡させてしまう.また,R3と R4のペア,R8と R9のペアの抵抗値を同時に最小とすることは,

トランジスタが抵抗を介さずに直接電源につながることとなり,トランジスタを壊してしまう

こともあり得る.

これらの抵抗値のどれ一つをゼロとしてもラジオの放送は聞こえなくなるので,上記の調整

手順を守れば,電源短絡やトランジスタの破壊を招くことはない.

表1.1.1 部品の定格と購入先

部品 型式・定格 単価 数量 購入先

バーアンテナSL-55X600±20µH

320 1 電子パーツ通販KURAhttp://www.kura-denshi.com/

ポリバリコン 2連, 150pF+70pF 250 1 〃

2SC1815 100(20個入り) 2秋月電子通商http://akizukidenshi.com/catalog/default.aspxマルツパーツ,KURA

2SK241 200(5個入り) 1 秋月電子通商

ショットキーバリヤ1SS106 31 2 マルツパーツ館

https://www.marutsu.co.jp/user/index.phpショットキーバリヤ1SS108 200(10個入り) 2 秋月電子通商

ゲルマニウム1N60

25 2 KURA

シリコン1N4148

100(50個入り) 2 秋月電子通商

220p 1 秋月電子通商、マルツパーツ,KURA0.01µ 310µ 1

電解コンデンサ 47µ 2 秋月電子通商、マルツパーツ,KURA100k 1 秋月電子通商、マルツパーツ,KURA50k 320k 15k 22k 2

イヤホンジャック ステレオ, 3.5mmφ 50 1 秋月電子通商http://akizukidenshi.com/catalog/default.aspx

ブレッドボードボードサイズ:165.1mm×54.6mm×8.5mm

441 1 マルツパーツ館https://www.marutsu.co.jp/user/index.php

耐熱電子ワイヤー(KQE電線)(配線用)

KQE 0.5mmφ 861 2m×6色 マルツパーツ館https://www.marutsu.co.jp/user/index.php

すずメッキ線 0.5mmφ 262 10m マルツパーツ館https://www.marutsu.co.jp/user/index.php

電池ボックス(電池ケース)

単三×4本 150 1 秋月電子通商,

トランジスタ

ダイオード

可変抵抗器

積層セラミックコンデン

600µ

150pmax0.01µ

220p 50k

1SS106

10µ

47µ

2SC1815

47µ

2SC1815

低周波増幅回路同調回路 高周波増幅回路 復調回路

R7

R6 R8

R9R2

R1

R3

R4

R5

C2C1

C8

C7

C5

C6

D1

Tr1 Tr2

図1.2.1 ストレートラジオの調整

3~12VE

Vdd

GND

イヤフォンへ

30k

60k3.3k

1.6k

1 [V]

5 [V]

3.2 [V]

1.66 [V]

18k

50k1k

300

0.64[V]

3 [V]

1.3 [V]

選局 音量調節

20k

0.01µ

Rx

C3

C40.01µ

+

+

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2010 年 1 月

著者:古橋 武

名古屋大学工学研究科情報・通信工学専攻

furuhashi at nuee.nagoya-u.ac.jp

本稿の内容は,著作権法上で認められている例外を除き,著者の許可なく複写することはでき

ません.