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44 写真 : 桜井 健雄 8 Chapter 70 96 使使Development of an Integrated Low Beam / LED Array ADB Headlamp

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44

8Chapter

写真 : 桜井 健雄

8Chapter

(株)小糸製作所

配光可変

ハイビームで

より多くの

クルマを安全に

歩行者の交通死亡事故は70%が夜間に発生している︒

しかも横断歩行者の事故の96%がロービーム使用時だという︒

ハイビームは対向車を眩しくさせるため、

つい使用を控えてしまう人が多い︒

だがロービームでは歩行者を捉えきれない︒

そのジレンマを解消するのが配光可変ハイビーム︵ADB︶だ︒

前方車にはロー、その周りをハイビームにする技術である︒

今回小糸は、このハイ/ロービームを1灯で可能にし、

小型化と低コストを実現した︒

Developm

ent of an Integrated Low B

eam /

LED

Array A

DB

Headlam

p

ロービーム一体LEDアレイ式

ADBヘッドランプの開発と商品化

45 AUTO TECHNOLOGY 2018

ハイとロービームを

1灯で

 

自動車メーカーは、世界的に事故ゼロを目指した取り

組みを強化している。そのうち、国内においては、歩行

者の交通死亡事故が多い傾向にあり、なおかつその70%

が夜間に起きている。さらに、2015年の全国におけ

る横断歩行者の夜間死亡事故の96%が、ロービームでの

走行中であったと警察庁は発表している。

 

そこで、できるだけハイビームでの照射を活用すべく

ADB(A

daptive Driving Beam

)の開発が進められて

きた(図1)。小糸製作所は、シャッターで遮光する機

械式のADBを2012年に、さらにLEDをアレイ状

に配置し光源とするADBも続けて商品化してきた。今

回の開発は、従来、ロービームとハイビームの2灯で実

現してきたADBを、ハイ/ローを一組にした1灯で成

立させることにより、原価低減も視野に、より小型車へ

の普及を達成した点が評価されている。

 

小糸製作所技術本部静岡設計部の主管である諏訪聡男

は、

「どの自動車メーカーも、ライトを明るくしたいという

のはもちろん第一ですが、自動車のデザインとの両立も

求められるようになってきました。ヘッドライトに瞳を

思わせる意匠にこだわり、丸いライトであることを求め

るようになると、ハイ/ローを2灯で使い分けることは

できません。もちろん、自動車メーカーによってデザイ

ンの方向性はそれぞれですから、すべてが1灯というこ

とではなく、小さく並べたいという要望もあります」

 

新車の価値としてデザインの重要性は年々高まってお

り、自動車の顔つきを左右するヘッドライトへのデザイ

ンとのかかわりは一層重要度を増している。

 

今回、従来は2灯式であったLEDアレイ式ADBを

1灯化するために、光を制御するレンズのハイ/ロー共

通化が不可欠となった。小糸製作所技術本部製品開発部

の河合宏樹は、

「レンズの共通化が、今回の大きな課題の一つでした。

ロービームは、余分な光を水平線より上へ照射しないよ

うにするカットラインをくっきり結像させるため、表面

が滑らかでツルツルしたレンズを使います。それに対し、

LEDアレイ式のハイビームでは、間隔をあけて横に並

んだ複数のLEDの光をレンズで拡散して均一な照射に

するために、レンズ表面が波打っています。これを、今

回は一つのレンズで成立させなければならなかったわけ

です」

 

それを実現するため、今回の開発ではレンズ表面に細

かいステップと呼ばれる菱形の模様が刻まれている。

「上下の垂直方向は結像性を維持させつつ、

左右の横方向は光を拡散させる機能を備え

ています。この菱形が特徴で、ステップ一

つひとつについて、上下方向は曲率を小さ

くすることによって拡散が少ない形状にし、

左右は曲率が大きく光がより拡散する形状

になっています(図2)。

 

レンズのステップ技術自体は、少し前か

らありましたが、それはゴルフボールの

ディンプルのような丸い形状です。それで

すと、ロービームの際に上下方向へ光が拡

散し、結像性が損なわれるので、光を拡散

させないためにこの菱形を開発しました。

 

菱形形状は、縦横比と山の凹凸比を様々

試験して、最適な調和を探していきました。

それは膨大な試行錯誤となったのですが、

まずシミュレーションで当たりを付け、20

〜30に絞り込んだあとに2〜3の候補を選

び、レンズを試作して実験しました。する

とシミュレーションと実物とで誤差があり、

それを調整して合わせていくというフィー

ドバックを1ヵ月半ほどかけて行い、その

作業を数回繰り返して完成度を高めていき

ましたので、延べ半年くらいの時間を要しました。

 

その際のレンズ設計のソフトウェアは、研究所にお願

いしました。私は入社直後に研究所へ配属されていまし

たので、当時の上司に菱形のステップを設計するための

ソフトウェア開発を依頼し、そのおかげでこれが設計で

きたのです」

ほかに例を見ない

繊細な凹凸レンズ設計

 

実際、レンズ表面にステップの模様を見ることはでき

るが、その出っ張りはわずか数ミクロンメーターという

配光可変ハイビームでより多くのクルマを安全に―(株)小糸製作所―

歩行者の交通死亡事故は70%が夜間に発生している︒

しかも横断歩行者の事故の96%がロービーム使用時だという︒

ハイビームは対向車を眩しくさせるため、

つい使用を控えてしまう人が多い︒

だがロービームでは歩行者を捉えきれない︒

そのジレンマを解消するのが配光可変ハイビーム︵ADB︶だ︒

前方車にはロー、その周りをハイビームにする技術である︒

今回小糸は、このハイ/ロービームを1灯で可能にし、

小型化と低コストを実現した︒

【配光イメージ】 【光学原理】

先行車LEDアレイ式ADB

対向車

レンズ

LEDアレイロービーム

図1 LEDアレイ式ADBの配光イメージと光学原理

従来レンズロー

ロー

ハイ

フラット型

ハイにスジ、不均一 ローのカットオフラインがぼける ロー、ハイともに良好問題点

高さ数μm

凹凸型波型

外観

配光

ハイ ロー+ハイ開発レンズ

図2 ロービームとハイビームの配光を両立するレンズステップ

46

8Chapter

微細なもので、指で触れても凹凸

は分からないほどだ(図3)。そ

れほど繊細なステップを施したレ

ンズ設計はほかに例がないのでは

ないかと、河合は言う。

 

設計に苦労する河合の様子を、

開発当時に同じ製品開発部に所属

していた、小糸製作所 技術本部

豊田設計部Uグループの担当員で

ある藤吉貴智は、次のようにねぎ

らう。

「試作の段階では、レンズを切削

加工で作るので、狙った設計通りのステップを刻むこと

ができますが、量産になると金型で成型するので、ステッ

プの付き方が微妙に違ってきます。そこを考慮して設計

する難しさもあったと思います」

 

レンズ表面のステップの設計についてはほかに、光の

色の調整の難しさもあった。システム全体のまとめを

担った小糸製作所システム商品企画室主管補である杉本

篤が話す。

「試作品の段階では、当初、青とか赤とかの色が出てし

まい、白い光にならなかったので、本当にできるのだろ

うかと思うような開発の出だしでした」

 

また光の色の問題について河合は、

「レンズの屈折力は光の波長によって異なり、青はよく

曲がり、赤は曲がりにくいといった特性があります。こ

れによってプリズムのような現象が起こり、色が分離し

てしまいました。そこを、ステップの設計を変えること

によって拡散し、そしてまた光を混ぜ合わせることによ

り、白くする制御を行いました。ヘッドライトの色は商

品性にも大きくかかわることですから、シミュレーショ

ンを使って光の波長による分散性を考慮しながら、実験

も織り交ぜて試行錯誤していきました」と振り返る。

 

そのうえで、杉本は、

「デザイン的な見栄えとしては、やはりヘッドライトの

レンズですので

表面の凹凸は見

せず、透明感の

あるレンズの印

象は残したいと

思いました」と、

話す。

 

結果的に、透

明感のあるレン

ズに仕上がって

いるが、設計をした河合は、

「透明感を意識するというより、機能、性能ありきの視

点で、緻密な光の制御をするために細かいステップとな

るよう設計していきました」と、答える。

 

機能美という言葉があるが、性能優先で開発されたス

テップを表面に持つレンズは、透明感のある見栄えに仕

上がっている。

部品メーカーに頼み込んだ

ナイフエッジのシェード

 

次に、一つのランプユニットの中に、ロービームとハ

イビーム二つの光源を設ける苦労もあった。ロービーム

ヘッドライトの配光を可変にし、よりハイビームを使う

 LED を横に複数並べ、ヘッドライトの配光を可変にする配光可変型ヘッドランプ(ADB:Adaptive Driving Beam)は、対向車や前走車の運転者を眩惑せずに遠くを見通せるヘッドライトとして注目を集めている。これまでは2灯式の上級車種への採用が中心であったが、横断歩行者の夜間死亡事故件数の 96%がロービームで起きているとの警察庁の調査もあり、普及拡大が望まれる。この開発は、2灯式で成立していたADB を1灯で実現するため、ロービームとハイビームのそれぞれの機能を満たすレンズ開発や、ハイビーム用の光源となる LED の配置に制約が生じるのを、ロービーム用のシェードとハイビーム用のリフレクタを一体化するなど構造の工夫で解決した。また、LED は光に熱はないものの、LED 自体が熱を帯びるため、ロー/ハイビーム両方の LED の熱を逃がすヒートシンクの開発にも苦労があった。これにより軽自動車や小型車へも ADB 採用の道筋ができた。

ハイ用LEDをレンズ焦点下側に配置

光学構造

配光

ローシェード

ローとハイの配光が分離する ローとハイの配光がつながる

ローシェード兼小型リフレクタ

ロー用LED

ロー

ハイ用LED

ハイ

ロー

ハイ

ハイ用LEDロー用LED

(開発品)ハイ用LEDの上方にリフレクタを配置

図3 �レンズの表面にステップと呼ばれる菱形の模様がある。光の上下には拡散を少なく、横方向には拡散させる効果を持つ

図4 ロービームとハイビーム配光を両立する光学構造と配光

47 AUTO TECHNOLOGY 2018

のLEDをレンズ焦点の中

心に据えると、ハイビーム

用のLEDはどうしても中

心からずれてしまう。それ

によって、ロービームとハ

イビームの光が混ざり合っ

たとき、真ん中に影ができ

てしまうという難問が生じ

た(図4)。その解決策を、

藤吉が説明する。

「ロービームのカットライ

ンを作るシェードの下に、

ハイビームを反射するリフ

レクタを設けることで、レ

ンズの中心近くをハイビー

ムの光が通るようにしまし

た。シェードとリフレクタ

を一体化することで、ハイ

ビームの照射範囲を下へ広

げ、ロービームとの隙間を

無くしたのです(図5)」

 

とはいえ、一体化された

シェードとリフレクタを作

るのに一苦労することにな

る。杉本は、

「単純に一体化するだけでは、シェードの厚みがあるた

め、結局、ロービームとハイビームの間にわずかな隙間

が残り、そこが陰になってしまいます。それを解決する

ためには、シェードの先端を鋭く、ナイフエッジのよう

に薄く仕上げなければなりません」と、課題を説明する。

配光可変ハイビームでより多くのクルマを安全に―(株)小糸製作所―

杉本 篤 Atsushi SUGIMOTO

株式会社小糸製作所システム商品企画室主管補

「弊社での受賞はこれが 5 回目であり、周りに受賞した人がいる一方、自分には縁がないのではないかと思っていました。今回、私が代表で申請することになり、開発内容をまとめて論文を提出しましたが、すでに 3 年連続で受賞していたこともあってプレッシャーを感じていました。それが受賞出来て嬉しかったです。また、受賞したことで記録に残る仕事ができたのではないかと考えています」

諏訪 聡男 Akio SUWA

株式会社小糸製作所技術本部 静岡設計部主管

「普段仕事の話は家でしないのですが、置いてある楯を見て、嫁さんが凄いねと。それが嬉しかったです。それから、私はここにいる4人とは畑違いで、開発のためのコーディネイト的な役割でしたので、一緒に受賞の仲間に入れてくれて有り難うという気持ちです」

藤吉 貴智 Takatomo FUJIYOSHI

株式会社小糸製作所技術本部 豊田設計部Uグループ 担当員

「小さいころからクルマが好きで、自動車業界に就職しましたが、今回、この開発の仕事をすることができ、さらに栄誉ある賞を受賞することができたことをとても嬉しく思います。また、記録に残る仕事ができたということも、今後の自分にとって大変プラスになったと思います。これからも世の中で役に立つ製品の開発を続けていきたいと思います」

井上 貴司 Takashi INOUE

株式会社小糸製作所研究所 研究1グループ技師補

「大きな賞を受賞でき、大変嬉しく思っています。仕事が評価されたことと併せて、授賞式の華やかな舞台に立てたこともいい経験になりました。また受賞できる開発をしていきたいと、強く思いました」

河合 宏樹 Hiroki KAWAI

株式会社小糸製作所技術本部製品開発部

「大きな賞をいただけたことで、会社の人だけでなく、家族や友人にも自分の開発した製品を知ってもらえるよいきっかけになりました。今後も広く社会に貢献できる開発をしていきたいです」

図5 �シェードとリフレクタを一体化しハイビームとロービームの間の光の隙間をなくした

48

8Chapter

 

藤吉は、

「通常、ナイフエッジ形状にするための材料は成型性の

良い樹脂を使用しますが、ハイビームのLEDの直ぐ近

くに配置する必要があり、樹脂ではLEDの熱の影響を

受け変形してしまう問題がありました。そこで、アルミ

ダイキャストを選び、なおかつ先端の薄いシェードとリ

フレクタの一体構造を検討しました(図6)。

 

部品メーカーに、薄いシェードをアルミダイキャスト

で作りたいと言ったところ、はじめは、そんなに薄い物

はできないとの回答でした。そこで、金型の抜きや、ア

ルミ充填の仕方を色々工夫し、将来へ向けた挑戦に協力

してほしいと言って依頼に応じてもらいました。試作

の金型で試行錯誤を繰り返しながら、ナイフエッジの

シェードとリフレクタの一体構造が出来上がったので

す」

 

物が出来上がったところで、リフレクタに光を反射さ

せるためのアルミ蒸着を施すことになる。ここでもまた

工夫が求められた。

 

杉本は、

「ハイビーム用LEDの上下にあるリフレクタ間隔が非

常に狭く、アルミ蒸着を奥の方までムラなくつける難し

さがありました」と、説明する。

 

また、諏訪は、

「アルミを気化させて飛ばす訳ですが、蒸着する部品の

置き方を工夫し、試行錯誤を繰り返して

最適な条件を見つけ出しました。また、

リフレクタの両端は光らせてはいけない

部分であり、必要なところにだけきれい

に蒸着する難しさもありました」と話す。

 

まさに、繊細かつ精密な物づくりが求

められる開発となった。

1灯でハイ/ローの

熱を逃がせるのか

 

ところで、LEDは光に熱はないが、

LED自体は熱を帯びる。その放熱も、

今回の開発で一つの課題となった。1灯

という小さな躯体の中で、ハイとローの

LEDが近くに配置され、その両方のL

EDの熱を逃がさなければならない。こ

れを担当したのは、小糸製作所研究所研

究1グループの技師補である井上貴司で

ある。

「私は、2灯のLEDアレイ式ADBの

開発にもかかわってきましたので、その

際にも熱対策の苦労を味わってきました。

そのうえで、1灯でという話が来たとき

には、正直、実現できるのだろうかと不

安になりました。2灯の開発の際に、熱

の問題は原理原則に従って解決するしか

ないと認識していたので、まずはランプ

の構成から順を追って、わずかなことで

も見逃さずに手を打って行くしかありません。熱の経路

であるLEDから基板、そしてヒートシンクに至る過程

のすべてを見直しました。そして、1〜2℃の対策を積

み上げて成立させました」

 

2灯の際には、基板の真ん中にLEDがあるため、熱

を逃がす銅箔の面積を広げるなどの対策を用いることが

図6 �シェードの厚みは影を生むため、先端はナイフのエッジのように薄くした(上)。これをアルミダイキャストで実現した。下は LED

49 AUTO TECHNOLOGY 2018

できた。だが、1灯では、できるだけレンズの中心近く

にハイビーム用LEDを置きたいという光学的な要請が

あり、熱を逃がせる面積の確保が難しかった。

 

河合は、

「少しでも熱を逃がす基板の面積を得るため、通常は垂

直に立っている基板を斜めに寝かせることに挑戦しまし

た。もちろん、光学的には垂直に基板を立てた方がLE

Dの光を効率的にレンズに入れることができます」

 

杉本も、

「基板を斜めにするのは、小糸としても初めてのことで

す」と言う。

 

そのうえで、熱を空気中へ逃がすヒートシンクの検討

も行われた。井上は、

「ヒートシンクのフィンの面積をできるだけ多くとれ、

熱を逃がす面積が増えるように、いろいろな形を試して

みました。また、冷却ファンの取り付け位置など含め、

60種類ほどシミュレーションで検証してみました。しか

し、結論を言えば、シンプルにフィンが並んだ形状に

なりました。たとえば、フィンをL字型にするといった

ことも試しましたが、フィン自体の面積は増えるものの、

風の抵抗が増え、冷却ファンの風量が減少して十分に冷

えないことが分かったのです」

 

製造に際しては、基板を斜めに取り付けるヒートシン

クに、部品を取り付けるためのネジ孔やピンの精度を出

す苦労もあったという。藤吉は、

「通常は、水平な面に部品を取り付けることになります

が、斜めに基板を取り付けようとした結果、取り付けの

土台となるヒートシンクに斜面ができますから、そこに

精度よく部品を取り付けたり、LEDの取り付け精度を

確保したりする難しさがありました。生産の現場では、

製造に使う冶具も向きを変えるなどして、ネジでの組み

付けをしやすくする工夫が必要だと、諏訪から要請があ

りました」と話す。

 

今回の開発は、企画室、技術本部、研究所といった各

部署が、一体となって実現した成果であった。

ADBを小型、軽にも広げ

夜間の安全を広げたい

 

こうして、LEDアレイ式ADBを1灯で成立させる

開発は完了した。実際、このヘッドライトを採用する小

型車に試乗したが、トンネル内で先行車のさらに先の道

路の状況が明るく見えることは、運転に大きな安心を与

えた。このことは、街灯の少ない道路においても、事故

を減らすのはもちろん、日常的な夜間の運転をより安

心・安全にさせることは間違いない。

 

これによって、将来へどのような展望が見込まれるの

だろう。

 

河合は、

「これまでADBは、上級車種に採用されるものでした

が、小型車や軽自動車などへもどんどん採用してもらい、

ロービームで起きている夜間の事故を減らし、安全に役

立つ装備になっていってほしいと思いながら開発してき

ました」と、開発への想いと将来への期待を話す。

 

井上は、

「1灯にできたことで、小さく仕上がりましたから、A

DBを一気に普及させるきっかけになっていけばいいと

思っています」と期待する(表1、図7)。

 

杉本は、

「今回は11個のLEDで11分割のADB配光を作ってい

ますが、さらに配光を細かく分割し、遮光する範囲を最

少化して明るく照らす範囲を増やしていきたいと思って

います。ハイビームが点灯しているだけのように見えて

も、実は、対向車のドライバーの顔の部分だけ影をつく

れるとか、より小型にするとか、自動運転の時代になっ

たときにはカメラやセンサを使った計測や判別に役立つ

技術だと考えています」と、新たな構想を話すのである。

配光可変ハイビームでより多くのクルマを安全に―(株)小糸製作所―

従来品

外形サイズ

体積

質量

部品点数

消費電力

25,00㎥

950g

37

53W

12,70㎥(▲50%)

500g(▲48%)

23(▲35%)

45W(▲15%)

115

150

85

115 130

175

ロー

ハイ

開発品

表1 開発品と従来品との比較

図7 従来の2灯(左)と今回開発した1灯の比較