淋菌のβ-lactamase産...

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77 淋 菌 の β-lactamase産 生の有無および抗菌薬感受性に関する検討 札幌医科大学泌尿器科(主 任:熊 本悦明教授) 西村 昌宏 熊本 悦明 広瀬 崇興 酒井 塚本 泰司 東京総合臨床検査センター (平成2年5月16日 受付) (平成2年7月10日 受理) Key words : Neisseria gonorrhoeae, ƒÀ- lactamase production, MIC 1980年 か ら1989年 ま で の10年 間 に 札 幌 に お い て 分 離 し た 淋 菌 を 対 象 に,β-lactamase産 生能 お よび各 種 抗 菌 薬 に 対 す る感 受 性 に つ い て 検 討 し以 下 の 結 果 を 得 た. 1. β-lactamase産 生 淋 菌(PPNG)の 分 離 頻 度 は1980年 代 前 半,徐 々 に 増 加 傾 向 を示 し,1985年 23.9% (61/255)と ピ ー ク を 認 め た.し か し,そ の 後 減 少 傾 向 に 転 じ,1989年 に は6.3%(2/32)で た. 2. ペ ニ シ リン 系 抗 菌 薬 に 対 す る 感 受 性 で は,PCG, ABPC, AMPCに 対 し て はnon-PPNGよ PPNGの 方 が 約7段 階MIC 90が 高 か った.CVA/AMPC,SBTPCに 対 し て は比 較 的 良 好 なMIC90を した.ま たPPNGのAMPCに 対 す る 感 受 性 は,1984年 を 境 に,そ の 後MIC分 布が若干低 くなる傾向を 認 め た. 3. モ ノバ ク タ ム 系 の 注 射 薬 で あ るAZTに 対 し て はnon-PPNG, PPNGと も に 低 いMIC分 布を示 し,SPCMに 対 し て は 両 者 と も3.13~25μg/mlと 比 較 的 高 いMIC分 布 を 示 した. 4. セ フ ェ ム系 抗 菌 薬 に 対 す る感 受 性 で は,CZXな どの 第3世 代 注 射 薬 お よ びCFIX, CFTM-PIな の新 しい経 ロセ フ ェム薬 に対 して,特 に低 いMIC分 布 を 示 した. 5. テ トライサ イク リン系 お よびマ ク ロライ ド系 抗菌 薬 に対 して は比較 的高 いMIC分 布 を 示 した. 6. ニ ュ ー キ ノ ロ ン 系 抗 菌 薬 に 対 して はnon-PPNG, PPNGを 問 わ ず 低 いMIC分 布 を示 した. 7. 新 し い セ フ ェ ム 系 抗 菌 薬 お よ び ニ ュ ー キ ノ ロ ン系 抗 菌 薬 は,PPNGを 含 め 淋菌 に対 して優 れた 抗 菌 力 を 有 し,淋 菌 感 染 症 の 治 療 に 有 用 な 抗 菌 薬 で あ る と考 え ら れ た. は じめ に 淋 菌 感 染 症 は 有 史 以 来,病 原菌の明らかな性感 染 症(Sexually transmitted diseases: STD)の 一つとして現在に至るまで流行し続けている .淋 菌 に 対 し て は従 来,ペ ニシリン系抗菌薬が治療の 第 一選 択 薬 と して 用 い られ,優 れた治療成績が得 ら れ て い た.し か し1976年 にペニシリンを加水分 解 す るpenicillinase producing Neiseria hoeae(以 下,PPNG)が 欧 米 に お い て 報 告1)2)さ れ, ま た1979年 に は本邦 に お い て もPPNGが 報 告3) され て以 来,そ の 動 向 が 注 目され て い る.こ れら PPNGに よ る感 染 症 に対 し て は従 来 の ペ ニ シ リ ン系 抗 菌 薬 が 無 効 で あ り,そ の結果淋菌感染症に 対するペニシリン系抗菌薬の有効性が低下しつつ あ る.こ の よ うな淋 菌 感 染 症 の現 状 を ふ ま え,淋 菌 感 染 症 に対 す る細 菌 学 的 検 討 と して,札 幌にお 別刷 請 求先: (〒060)札 幌市 中央 区 南1条 西16丁 目 札幌医科大学泌尿器科 西村 昌宏 平 成3年1月20日

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77

淋 菌 の β-lactamase産 生 の有 無 お よび抗 菌 薬感 受 性 に関す る検 討

札幌医科大学泌尿器科(主 任:熊 本悦明教授)

西 村 昌宏 熊 本 悦 明 広 瀬 崇興

酒 井 茂 塚 本 泰 司

東京総合臨床検査センター

出 口 浩 一

(平成2年5月16日 受付)

(平成2年7月10日 受理)

Key words : Neisseria gonorrhoeae, ƒÀ- lactamase production, MIC

要 旨

1980年 か ら1989年 までの10年 間 に札 幌 にお いて分離 した淋菌 を対 象 に,β-lactamase産 生能 お よび各

種 抗 菌薬 に対す る感 受性 につ い て検討 し以 下の結 果 を得た.

1. β-lactamase産 生 淋菌(PPNG)の 分離 頻度 は1980年 代前 半,徐 々に増 加傾 向 を示 し,1985年 に は

23.9% (61/255)と ピー クを認め た.し か し,そ の後 減少傾 向に転 じ,1989年 には6.3%(2/32)で あ っ

た.

2. ペ ニ シ リン系 抗菌 薬 に対 す る感 受 性で は,PCG, ABPC, AMPCに 対 して はnon-PPNGよ りも

PPNGの 方 が約7段 階MIC 90が高 か った.CVA/AMPC,SBTPCに 対 して は比 較 的良好 なMIC90を 示

した.ま たPPNGのAMPCに 対 す る感受 性 は,1984年 を境 に,そ の後MIC分 布 が若 干低 くなる傾 向を

認 め た.

3. モ ノバ クタ ム系 の注射 薬 で あ るAZTに 対 して はnon-PPNG, PPNGと もに低 いMIC分 布 を 示

し,SPCMに 対 しては両者 とも3.13~25μg/mlと 比 較的 高 いMIC分 布 を示 した.

4. セ フ ェム系 抗菌 薬 に対す る感 受性 で は,CZXな どの第3世 代注 射薬 お よびCFIX, CFTM-PIな ど

の新 しい経 ロセ フ ェム薬 に対 して,特 に低 いMIC分 布 を示 した.

5. テ トライサ イク リン系 お よびマ ク ロライ ド系 抗菌 薬 に対 して は比較 的高 いMIC分 布 を示 した.

6. ニ ューキ ノロン系抗 菌薬 に対 して はnon-PPNG, PPNGを 問わ ず低 いMIC分 布 を示 した.

7. 新 しいセ フェム系抗 菌薬 お よび ニ ューキ ノ ロン系 抗菌 薬 は,PPNGを 含 め 淋菌 に対 して優 れた 抗

菌 力を 有 し,淋 菌 感染 症 の治療 に有 用 な抗菌薬 で あ る と考 え られた.

は じめ に

淋 菌 感 染 症 は 有 史 以 来,病 原 菌 の 明 らか な 性 感

染 症(Sexually transmitted diseases: STD)の

一 つ と し て現 在 に 至 る ま で流 行 し続 け て い る.淋

菌 に 対 し て は従 来,ペ ニ シ リン系 抗 菌 薬 が 治 療 の

第 一選 択 薬 と して 用 い られ,優 れ た 治 療 成 績 が 得

られ て い た.し か し1976年 に ペ ニ シ リンを 加 水 分

解 す るpenicillinase producing Neiseria gonorr-

hoeae(以 下,PPNG)が 欧 米 に お い て報 告1)2)され,

ま た1979年 に は 本 邦 に お い て もPPNGが 報 告3)

され て以 来,そ の 動 向 が 注 目され て い る.こ れ ら

PPNGに よ る感 染 症 に対 し て は従 来 の ペ ニ シ リ

ン系 抗 菌 薬 が 無 効 で あ り,そ の結 果 淋 菌 感 染 症 に

対 す る ペ ニシ リン系 抗 菌 薬 の 有 効 性 が 低 下 しつ つ

あ る.こ の よ うな淋 菌 感 染 症 の現 状 を ふ ま え,淋

菌 感 染 症 に対 す る細 菌 学 的 検 討 と して,札 幌 に お

別刷請求先: (〒060)札 幌市 中央区南1条 西16丁 目

札幌医科大学泌尿器科 西村 昌宏

平成3年1月20日

78 西村 昌宏 他

いて分離 された淋菌のβ-lactamase産 生の有無

および各種抗菌薬に対する感受性について検討を

行 った.

1. 対象および方法

1. 対象淋菌

1980年 から1989年 までの10年 間に札幌において

分離 された淋菌を検討の対象とした.淋 菌が分離

された症例はすべてSTDで あ り,男子尿道炎,女

子子宮頚管炎 と診断され,Table1に 示 したメン

バーで構成 される札幌STD研 究会(以 下我々の)

の医療機関において治療を受けた症例である.尿

道および子宮頚管分泌物などの臨床検体は,塗 抹

グラム染色標本にてグラム陰性双球菌の存在を確

認 した.ま た同時に1988年 まではTransgrow培

地(Difco),そ れ以後は淋菌用輸送兼保存培地(コ

スモノミイオ)に 塗布 した後,札 幌第一臨床検査セ

ンターに輸送した.同 センターで淋菌の分離培養

を行 うとともに生化学的性状か ら淋菌の同定を

行った.淋 菌 と同定されたた株は活性炭入 りゼラ

チンディスク半流動体保存用培地 に浮遊 させ,-

70℃ にて凍結 した後,東 京総合臨床検査センター

にて β-lactamase産 生能 および各種抗菌薬 に対

す る感受性を検討した.β-lactamase産 生能を検

討 し得た淋菌は,1980年 から1989年 に分離された

1,401株 であ り,その うち1981年 以降に分離された

淋菌中1,197株 ではamoxicillin (AMPC)に 対す

る感受性を検討した.他 の抗菌薬に対する感受性

はすべての株では検討 し得なかった.

Table 1 Sapporo Clinical Research Group for

STD

Department of Urology, Sapporo Medical

College (Director : Prof.Y.Kumamoto)

Sapporo Urology Clinic (Chief : Dr.T.Gohro)

Inoke Clinic (Chief : Dr.T.Inoke)

Sanjukai Hospital (Chief : Dr.H.Tanda)

Tabata Clinic (Chief : Dr.S.Tabata)

Henmi Clinic (Chief : Dr.I.Henmi)

Kohsei Urology Clinic (Chief : Dr.H.Kamito)

Ikegaki Clinic (Chief : Dr.S.Ikegaki)

Yoshio Clinic (Chief : Dr.H.Yoshio)

Department of Urology, Self-Defense

Force Sapporo Hospital (Chief : Dr.J.Tatsuki)

2. β-lactamase産 生 能 の検 討

淋 菌 の β-lactamase産 生 能 に 関 す る検 討 は,

β-lactamase detection paper (Oxoid)を 用 い た

Acidometry法,お よ びCefinase disk (BBL)を

用 い たChromogenic cephalosporin法 に よ り

行 った.

3. 抗 菌薬 感 受 性 の 検 討

各 種 抗 菌 薬 に 対 す る感 受 性 の検 討 は,日 本 化 学

療 法 学 会 標 準 法4)に よ る寒 天 平 板 希 釈 法 に よ り最

小 発 育 阻 止濃 度(MIC)の 測 定 を 行 った. MICの

測 定 は接 種 菌 量106CFU / mlに て 行 い,使 用 培 地 は

Thayer-Martin培 地(ニ ッス イ)を 用 い, 37℃,

24~42時 間,ロ ウ ソ ク培 養 に て 行 った.感 受 性 を

検 討 し た 抗 菌 薬 は 注 射 薬 と し て penicillin G

(PCG), cefotiam (CTM), ceftizoxime (CZX),

ceftriaxon (CTRX), aztreonam (AZT),

spectinomycin (SPCM)の6抗 菌 薬 で あ り,経 口

薬 と して,

(1) ペ ニ シ リン系 抗 菌 薬

ampicillin (ABPC), AMPC, augmentin (CVA/

AMPC), sultamicillin (SBTPC)の 4薬

(2) セ フ ェム系 抗 菌 薬

cephalexin (CEX), cefaclor (CCL), cefixime

(CFIX), cefteram-pivoxil (CFTM - PI),

cefetamet - pivoxilの5薬

(3) テ トラサ イ ク リン系 抗 菌 薬

doxycycline (DOXY), thiamphenicol (TP)

の2薬

(4) マ ク ロ ラ イ ド系 抗 菌 薬

erythromycin (EM), josamycin (JM),

midecamycin (MDM), TE-031の 4薬

(5) ニ ュー キ ノ ロン系 抗 菌 薬

norfioxacin (NFLX), ofloxacin (OFLX),

enoxacin (ENX), ciprofloxacin (CPFX),

lomeHoxacin (LFLX), AT-4140の6薬, 計21薬

で あ る.

II. 結 果

1. 札 幌 に お け るPPNG分 離 頻 度 の 年 次 推 移

(Fig.1)

男 子 淋 菌 性 尿 道 炎 由来 株 のPPNG分 離 頻 度 の

年 次 推 移 をFig.1に 示 した.PPNGの 分 離 頻 度

感染症学雑誌 第65巻 第1号

PPNG年 次推移お よび淋菌の抗菌薬感愛性 79

Fig. 1 Isolation rate of PPNG (Male urethritis)

(Sapporo Medical College, 1990)

は1980年 代 前 半 徐 々 に増 加 し,1985年 に は23.9%

(61/255)とpeakを 示 した.し か しそ の後 は 徐 々

に減 少 し,1989年 に は6.3%(2/32)の 分 離 頻 度 で

あ った.

2. 淋 菌 の 各 種 抗 菌 薬 に 対 す る感 受 性(Fig.2

~6)

淋 菌 の 各 種 抗 菌 薬 に対 す る感 受 性 を,接 種 菌 量

106CFU/mlに よ るMIC累 積 曲 線 に よ りFig.2

~6に 示 した. Fig.2は 注 射 薬 で あ る6抗 菌 薬 の

も の で あ る. PCGのMIC90はnon- PPNGで は,

1.56μg/ml, PPNGで は100μg/ml以 上 と約7段

階 の差 が あ った.セ フ ェ ム系 注 射 薬 のMIC90は,

第2世 代 のCTMの0.39μg/mlよ り も 第3世 代

のCZXやCTRXの 方 が0.0125μg/mlと, non-

PPNG,PPNGを 問 わ ず 優 れ た 抗 菌 力 を 示 した .

モ ノバ ク タ ム系 注 射 薬 で グ ラ ム陰 性 桿 菌 に対 して

Fig. 2 Sensitivity (MIC) distribution of N. gonorrhoeae (106CFU/ml)

平成3年1月20日

80 西村 昌宏 他

Fig. 3 Sensitivity (MIC) distribution of N. gonorrhoeae (106CFU/ml)

優 れ た 抗 菌 力 を 示 すAZTのMIC90も non-

PPNG,PPNGを 問 わ ず0.05μg/mlと 良好 な 抗 菌

力 を 示 した.ま たSPCMのMIC90は non-PPNG,

PPNGを 問 わ ず,と もに12.5μg/mlと 比 較 的 良 好

な 抗 菌 力 を示 した.

Fig.3は4種 の ペ ニ シ リ ン系 経 口抗 菌 薬 の も

の で あ る.penicillinaseに よ り 分 解 さ れ る

ABPC,AMPCで はPCGと 同 様 に non-PPNG

よ り もPPNGの 方 が 約7段 階MIC90が 高 か っ

た.こ れ に対 してpenicillinase inhibitor を 含 有 す

るCVA/AMPC,SBTPCのMIC90は, PPNG で

もnon-PPNGよ り も3段 階 高 くな る の み で あ っ

た.

Fig.4 は5種 の セ フ ェム 系 経 口抗 菌 薬 の も の

で あ る.CEXのMIC90は12.5μg/ml, CCL で は

1.56μg/mlと 比 較 的 良 好 な 抗 菌 力 を 示 し た の に

対 し て,新 し い セ フ ェ ム 系 経 口 抗 菌 薬 で あ る

CFIX,CFTM-PI,Cefetamet-pivoxilの MIC90 は

い ず れ も0.05μg/mlと さ らに 強 い 抗 菌 力 を 示 し

た.

Fig.5 は2種 の テ トラサ イ ク リン系 と,4種 の

マ ク ロ ライ ド系 経 口抗 菌 薬 の もの で あ る. DOXY

のMIC90はnon-PPNGで は6.25μg/ml, PPNG

で は25μg/mlと2段 階 の 差 を 認 め た. TP の

MIC90はnon-PPNGで は12.5μg/ml, PPNG で

は100μg/ml以 上 と4段 階 の 差 を 認 め た.ま た マ

ク ロ ラ イ ド系 のEM,JM,MDM,TE-031 で は

non-PPNGよ り もPPNGの 方 が2~4段 階 抗 菌

力 が 弱 か った.

Fig.6 は6種 の ニ ュー キ ノ ロ ン 系 経 口 抗 菌 薬

の も の で あ る.い ず れ の 抗 菌 薬 に 対 し て も non-

PPNG,PPNGを 問 わ ず 良 好 な抗 菌 力 を 示 した.

感染症学雑誌 第65巻 第1号

PPNG年 次推移および淋菌 の抗菌薬感愛性 81

Fig. 4 Sensitivity (MID) distribution of N. gonorrhoeae (106CFU/ml)

non-PPNGで はNFLX, OFLX, ENX, LFLX の

MIC90は そ れ ぞ れ,0.1, 0.05, 0.39, 0.05μg/ml

で あ り,PPNGで は3.13, 0.2, 6.25, 0.2μg/ml

で あ つた.ま たCPFXとAT-414oのMIC90 は そ

れ ぞ れnon-PPNGで は0.025μg/ml, 0.0125μg/

ml以 下 で あ り,PPNGで は両 者 と も0.025 μg/ml

とさ らに 抗 菌 力 が優 れ て いた.

3.AMPCに 対 す る感 受 性 の 年 次 推 移 (Fig.7

~8)

1981年 か ら1989年 ま でMICを 測 定 し 得 た

AMPCに つ い て,感 受 性 の 年 次 推 移 を 検 討 した.

Fig.7に 示 す よ うにnon-PPNGは 各 年 度 で 感 受

性 の 変 動 は ほ とん ど認 め られ な か った.一 方 Fig.

8に 示 す よ うに,PPNGは1984年 を境 に そ れ 以前

よ りも若 干MIC分 布 が 低 くな って い た.

III. 考 察

従 来,淋 菌 は ペ ニ シ リン系 抗 菌 薬 に 対 し て 良好

な 感 受 性 を示 す た め に,淋 菌 感 染 症 に 対 す る化 学

療 法 に広 く用 い られ て きた.と ころ が1960年 代 に

は 淋 菌 の ペ ニ シ リン に対 す る感 受 性 が 徐 々 に低 下

して い る事 が報 告5)さ れ た.一 方,1976年 にPhilips

ら1)がLondonで,ま たAshfordら2)が California

で 検 出 し た ペ ニ シ リ ン 高 度 耐 性 淋 菌 が β-

lactamaseを 産 生 して い る事 を報 告 し て 以 来,世

界 各 地 で β-lactamase産 生 淋 菌(PPNG) の 動 向

が 注 目 され て きた.

Fig.9 に 本 邦 に お け るPPNGの 年 次 別 分 離 状

況6)~10)を示 した.全 国 的 に1980年 代 前 半 ま で は

PPNGの 分 離 頻 度 が増 加傾 向 を示 して い た が,そ

の後 は 漸 減 傾 向 に 転 じ,1988年 に は10~14%,札

平成3年1月20日

82 西村 昌宏 他

Fig. 5 Sensitivity (MIC) distribution of N. gonorrhoeae (106CFU/ml)

幌 で は1989年 に は6.3%と さ ら に 分 離 頻 度 が 低 く

な って い た.こ れ は一 般 臨 床 の場 に お い て PPNG

に対 して も強 い 抗 菌 力 を有 す る ニ ュー キ ノ ロン系

抗 菌 薬 や β-lactamaseinhibitorを 含 有 す る 抗 菌

薬 が 広 く用 い られ る よ うに な り,こ の た め PPNG

が 殺 菌 さ れ,か つinduceさ れ る率 が低 くな るた め

で は な い か と考 え られ る.ま たFig.10に 諸 外 国

のPPNG分 離 状 況11)~26)を示 した.ア メ リカ24), イ

ギ リス22)23),オ ラ ン ダ20),ス ペ イ ン21),ス イ ス18) な

ど の 欧 米 諸 国 で はPPNGの 分 離 頻 度 は 数 %~10

数%で 推 移 し て い る が,ア ジ ア16),東 南 ア ジ

ア11)~15),アフ リカ17)諸国 で は1980年 代 後 半 も増 加

傾 向 を 示 し,30数%~50%前 後 の 高 い 分離 頻 度 を

示 して い る地 域 が あ る.こ の よ うに ア ジ ァ, 東 南

アジア といった我々と近接 した地 域 にお いて

PPNGが 高頻度に推移 している現状を考えると,

今後 も本邦 におけるPPNGの 動向を見守って行

く必要がある.

次に,本 邦における淋菌の抗菌薬感受性に関 し

ては金子らが 日本各地か ら分離 した淋菌について

検討 し報告27)している.そ れによると non-PPNG

のPCG,AMPC,ABPCに 対 す るMIC は

0.05~1.56μg/mlに 分布 して い る の に対 し,

PPNGは これらのペニシ リン系抗菌薬 に対 して

は3.13~100μg/ml (接種菌量106CFU/ml) と高い

MIC分 布を示 している.ま た占部 らも同抗菌薬に

対してほぼ同様 な成績を報告8)9)している.こ れら

の報告 と我 々の成績を比較すると,札 幌で分離し

感染症学雑誌 第65巻 第1号

PPNG年 次推移および淋菌 の抗―菌薬感愛性 83

Fig. 6 Sensitivity (MIC) distribution of N. gonorrhoeae (106CFU/ml)

たPPNGの11.3%は 同3抗 菌薬に対 して100 μg/

ml以 上の高度耐性株を認めるものの,全体 として

はほぼ同様なMIC分 布を示 してお り,ペ ニシ リ

ン系抗菌薬に対しては分離地域にかかわらずほぼ

同程度のMIC分 布を示 していると言える.

また今回AMPCに 対するMIC分 布を年 度別

に検討 したところ,non-PPNGは 年度別に感受性

の変動がほとんど認められなかった.こ れに対 し

て,PPNGは1984年 を境にそれ以前 よ りも MIC

分布が若干低 くなってお りPPNGの 分離頻度の

減少 とともにPPNGのAMPCに 対す る感受性

も1980年 代初期の頃に回復 してきているのかもし

れない.

さて,SPCMはPPNGに 対 しても有効であ り,

淋 菌 感 染 症 の 治 療 薬 と し て 広 く用 い られ て い る

が,欧 米 に お い て は1970年 代 か らSPCM耐 性 淋

菌 出現 の報 告28)~30)が散 見 され る.本 邦 に お い て も

山 井 らが1987年 に,SPCM耐 性 淋 菌 が グ ア ム島 で

感 染 機 会 を 有 した 淋 菌 性 尿 再 炎 の 患 者 か ら分 離 さ

れ た 事 を 報 告31)し て い る が,札 幌 に お け る我 々 の

検 討 で はSPCM耐 性 淋 菌 は認 め られ な か った.

次 に セ フ ェ ム系 抗 菌 薬 に 対 して は特 に 第3世 代

の セ フ ェ ム 系 抗 菌 薬 に 対 し て, non-PPNG,

PPNGを 問 わ ず 低 いMIC分 布 を 示 す 事 が 報 告 6) 9)

され て い る.我 々の 検 討 で もCZX, CTRX に対 し

て はnon-PPNG,PPNGを 問 わ ず 低 いMIC 分 布

を 示 し,同 様 な 成 績 で あ った.さ らに, CFIX,

CFTM-PI, cefetamet-pivoxilな どの 新 し い経 口

平成3年1月20日

84 西村 昌宏 他

Fig. 7 Annual changes in sensitivity (MIC) of non-PPNG against Amoxicillin (106CFU/ml)

Fig. 8 Annual changes in sensitivity (MIC) of PPNG against Amoxicillin (106CFU/ml)

Fig. 9 Isolation rate of PPNG (Japan)

セ フ ェ ム系 抗 菌 薬 に対 して は 第3世 代 セ フ ェム系

注 射 薬 に 対 して と,ほ ぼ 同 程 度 のMIC分 布 が 得

られ て い る.こ れ らの成 績 を 考 慮 す る と,最 近 本

邦 で も一 般 化 しつ つ あ る淋 菌 感 染 症 に 対 す る sir-

gle dose therapyに,こ れ らの 新 しい セ フ ェム系

経 口抗 菌 薬 を 用 い る こ とが で き る と考 え られ,実

際 に 我 々 の32) cefetamet-pivoxilを 用 い た 検 討 に

お い て は 良好 な 成 績 が 得 られ て い る.

テ トラサ イ ク リン系 抗 菌 薬 に 対 し て は 他 施 設 か

らの成 績8)9)と我 々 の 成 績 は ほ ぼ 同 様 で あ り,マ ク

ロ ライ ド系 抗 菌 薬 に 対 して はEM , TE-031が JM,

MDMに 対 す る よ り も1~2段 階 低 いMIC分 布

を 示 した が,大 きな 差 異 は認 め られ な か った.

ニ ュ ーキ ノ ロ ン系 抗 菌 薬 に 対 し て は NFLX,

OFLX, ENX な どに お け る他 施 設 か ら の成 績 7) 33)

よ り も幅 広 いMIC分 布 を示 した が,CPFX に 対

感染症学雑誌 第65巻 第1号

PPNG年 次推移 および淋菌の抗菌薬感愛性 85

Fig. 10 Isolation rate of PPNG (various countries)

しては同様な成績であり, 新 しいニューキノロン

系抗菌薬であ るAT-4140に 対 しても非常 に低い

MIC分 布を示 していた. これ らのニューキノロン

系抗菌薬は, 前述 した淋菌感染症に対す るsingle

dose therapyに おいて優れた治療成績34)を示 し,

新しいセフェム系経 口抗菌薬 とともに淋菌感染症

の治療薬として有用であると考 えられた.

以上, 札幌で分離された淋菌を対象に, PPNG

分離頻度の年次推移, および淋菌の各種抗菌薬に

対する感受性について述べた. PPNGの 分離頻度

は減少傾向にあるとはいえ, 近接 した東南アジア

には高いPPNG分 離頻度を示す地域 があ り, 今

後もその動向に注意を払 う必要がある. また耐性

淋菌の出現を含め各種抗菌薬に対する感受性の変

化に関 しても検討を続ける必要がある.

謝辞 最後に多くの検体を御提供いただきました札幌

STD研 究会の諸先生にあらためて深甚なる謝意を表しま

す.

文 献

1) Philips, I. : ƒÀ-lactamase-producing ,

penicillinase-resistant gonococcus. Lancet, 2:

656-657, 1976.

2) Ashford, W.A., Golash, R.G. & Hemming, V.G. :

Penicillinase-producing neisseria gonorrhoeae.

Lancet, 2 : 657-658, 1976.

3) 小 野 田 洋一, 三 井 一子, 小 原 寧, 山井 志 朗, 宮

本 泰, 芦沢 正 見: 国 内で の β-lactamase産 生 淋

菌(PPNG)の 検 出 につ い て. Chemotherapy, 27:

265-268, 1979.

4) 五 島瑳 智 子, 徐 慶 一 郎, 河 喜 多龍 祥, 小 酒井 望,

三橋 進, 西 野武 志, 大 沢 伸 孝, 田波 洋: 最 小

発 育阻 止 濃 度(MIC) 測 定法 改 訂 に つ いて (1968

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A Study on the ƒÀ-Lactamase Production for Neisseria gonorroeae and the

Sensitivity to Various Antibacterial Agents

Masahiro NISHIMURA, Yoshiaki KUMAMOTO, Takaoki HIROSE,

Shigeru SAKAI & Taiji TSUKAMOTO

Department of Urology, Sapporo Medical College, Sapporo Clinical Research Group for STD

(Director: Prof. Y. KUMAMOTO)

Kouichi DEGUCHI

Laboratory Section, Tokyo Clinical Research Center

(Director: Prof. K. DEGUCHI)

During the 10-year period from 1980 through 1989 using gonococci isolated in Sapporo, we studied

β-lactamase production capacity and the sensitivity of various antibacterial agents and obtained the

following results.

1. The frequency of isolating ƒÀ-lactamase producing gonococci (PPNG) displayed a gradual

tendency to increase during the first half of the 80's and reached a peak in 1985 of 23.9% (61/255).

However, thereafter it tended to decline and in 1989 it was 6.3% (2/32).

2. The sensitivity to penicillin-type antibacterial agents was higher against PPNG than non-

PPNG against PCG, ABPC, and AMPC displaying about a 7 level MIC90 so that it was quite sensitive.

Against CVA/AMPC, SBTPC it showed a relatively favorable MIC90. Also, the sensitivity of PPNG

against AMPC with 1984 as the boundary, thereafter the MIC distribution was observed to decline

somewhat.

3. Against the monobactam-type injectable drug, AZT, both non-PPNG and PPNG showed a low

MIC distribution and against SPCM both showed a relatively high MIC distribution of 3.13-25 ƒÊg/ml.

4. In regard to the sensitivity to cephem-type antibacterial agents, against such 3rd generation

injectables as CZX, CFTM-PI, etc. it displayed a particularly low MIC distribution.

5. Against tetracycline and macrolide antibacterial agents, it displayed a relatively high MIC

distribution.

6. Against new quinolone type antibacterial agents, regardless of being non-PPNG or PPNG, it

showed a low MIC.

平成3年1月20日