支援する役割をつなぐ ~急性期病院mswとの連携の必要性につ … ·...

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第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢 12-10-1 医療ソーシャルワーク(1) 支援する役割をつなぐ ~急性期病院MSWとの連携の必要性について~ 総泉病院 地域連携室 はんだ すみえ ○半田 澄枝(医療ソーシャルワーカー),入江 美沙紀,小山田 淳,佃 美帆,酒井 英之 当院は千葉市にある 353 床を有する療養型病院である。地域連携室では、5 名のスタッフが勤務し、入退院の 調整やベッドコントロール、患者・家族からの相談援助業務などを行なっている。近年、診療報酬改定や、地 域の社会資源増加を受け、急性期病院からの紹介患者はますます重症化するばかりか、早期の受け入れが求め られている。ところが発症から間もないため、患者・家族は病気や障害の理解がされていないことに加え、急 性期病院が早期退院を促進するあまり、患者・家族への十分な病状説明ができなかったと思われるケース、事 前の情報収集が不十分なまま転院に至ったケースもあり、当院は患者・家族への対応に苦労していた。 こうした状況の中、MSWは、単に患者の情報を収集するだけでなく、急性期病院から患者・家族にどのよう な説明がなされ、どのように受け入れられたかを確認することを心がけた。 また、当院が必要とする情報には、急性期病院のMSWが提供の必要性を感じていないものもあるように思え た。そこで、急性期病院向けの案内の中に入院調整時の依頼をまとめて掲載するなど、療養型病院側は「どん な情報」が「なぜ必要なのか」を発信していった。 地域包括ケアシステムの考え方のもと、患者を自院のみではなく、他院も含めた地域全体で支えていく必要が あると考えている。患者を受け入れる際、自院の機能という枠で患者を捉えるのではなく、患者の状態、地域 のニーズに対応し、ときには自院の機能の枠を広げる必要性を感じている。MSWには急性期病院のMSWと の連携と密にし、患者・家族を支える役割をつなぐことが必要である。また、患者・家族の感情に寄り添い信 頼関係を構築していくこと、社会制度や自院の機能だけでなく、医学的な知識や理解を深め、患者の病状や治 療について必要時には適切な説明や意向の確認をすることも求められていると感じた。

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第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢12-10-1 医療ソーシャルワーク(1)支援する役割をつなぐ ~急性期病院MSWとの連携の必要性について~

総泉病院 地域連携室

はんだ すみえ

○半田 澄枝(医療ソーシャルワーカー),入江 美沙紀,小山田 淳,佃 美帆,酒井 英之

当院は千葉市にある 353 床を有する療養型病院である。地域連携室では、5 名のスタッフが勤務し、入退院の調整やベッドコントロール、患者・家族からの相談援助業務などを行なっている。近年、診療報酬改定や、地域の社会資源増加を受け、急性期病院からの紹介患者はますます重症化するばかりか、早期の受け入れが求められている。ところが発症から間もないため、患者・家族は病気や障害の理解がされていないことに加え、急性期病院が早期退院を促進するあまり、患者・家族への十分な病状説明ができなかったと思われるケース、事前の情報収集が不十分なまま転院に至ったケースもあり、当院は患者・家族への対応に苦労していた。こうした状況の中、MSWは、単に患者の情報を収集するだけでなく、急性期病院から患者・家族にどのような説明がなされ、どのように受け入れられたかを確認することを心がけた。また、当院が必要とする情報には、急性期病院のMSWが提供の必要性を感じていないものもあるように思えた。そこで、急性期病院向けの案内の中に入院調整時の依頼をまとめて掲載するなど、療養型病院側は「どんな情報」が「なぜ必要なのか」を発信していった。地域包括ケアシステムの考え方のもと、患者を自院のみではなく、他院も含めた地域全体で支えていく必要があると考えている。患者を受け入れる際、自院の機能という枠で患者を捉えるのではなく、患者の状態、地域のニーズに対応し、ときには自院の機能の枠を広げる必要性を感じている。MSWには急性期病院のMSWとの連携と密にし、患者・家族を支える役割をつなぐことが必要である。また、患者・家族の感情に寄り添い信頼関係を構築していくこと、社会制度や自院の機能だけでなく、医学的な知識や理解を深め、患者の病状や治療について必要時には適切な説明や意向の確認をすることも求められていると感じた。

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第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢12-10-2 医療ソーシャルワーク(1)受診・受療援助を通して在宅支援を考える

天心堂志田病院

なかお めぐみ

○中尾 愛(医療ソーシャルワーカー),石橋 幸治,大石 浩隆,志田 知之

【はじめに】 当院外来に定期通院中の患者に、通院中断となったケースが散見された。医療ソーシャルワーカー業務指針の一つに、“ 受診・受療援助 ” がある。通院が中断した患者にとって、何が受診・受療の妨げになったのかを知り、予防策について検討した。また、そこから医療ソーシャルワーカーとしてどのような支援が行えるのかを考察したため、報告する。 【方法】 平成 27 年 4 月 1 日~平成 28 年 3 月 31 日のうち、当院に通院した 40 歳以上の患者 1278 名(小児科、予約制である整形外科、健診や胃内視鏡検査のための受診患者は除外)のうち、定期通院を中断した患者 12 名を対象とした。 調査方法は、通院を中断した患者について、年齢、性別、基礎疾患等の基本情報を診療録より収集。また、電話にて患者及び家族より聴き取りを行い、通院を中断した理由、同居家族の有無等の情報を収集した。 【結果】 平均年齢は 62.1 歳 ( ± 13.7 歳 ) で、基礎疾患として①高血圧症、②糖尿病、③高コレステロール血症、④アルツハイマー型認知症があった。通院中断の理由は①体調が良いため(自己判断)、②仕事が多忙であるため、③転勤し転医したため等であった。また、対象者の全てに同居家族がおり、家族も通院を中断していることを知っているケースが多かった。 【考察】 自覚症状がなければ確実な定期通院に結びつかないケースも多く、患者にとって病院とは「体調が悪い時に行くもの」であるというイメージが強いのだと思われる。今後の課題となるのは、通院中断した患者の把握と受診勧奨であり、現在当院システム開発スタッフと恊働し、受診勧奨システムを作成中である。また、患者自身にいかにして通院の重要性の理解を得るのか、患者に関わるスタッフ一人ひとりがそれを意識する必要があると考える。

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第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢12-10-3 医療ソーシャルワーク(1)在宅生活継続における自宅訪問の役割―MSWが係わった自宅訪問に着目して―

1 永井病院 地域連携室,2 永井病院 看護部,3 永井病院 診療情報管理室,4 永井病院 院長

いのうえ じゅんこ

○井上 純子(社会福祉士)1,岡田 萌 1,市川 賀子 1,島田 真歩 1,山田 理絵 2,小松 聖偏 3,市川 徳和 4

【目的】 当院では、 入院前から退院後にかけて MSW が自宅訪問の日程調整を行い、 多職種で自宅訪問を実施している。 在宅支援の強化を図るため、 在宅生活継続における自宅訪問の役割を明らかにする。

【方法】 H27 年度に MSW が自宅訪問に係わり、退院後 1 ヵ月以上在宅生活を継続した事例 107 件を対象とした。①入院前②入院中③退院後の訪問回数を集計し、 在宅生活の問題点及び自宅訪問の内容について質的分析を実施。

【結果】[ 訪問回数 ]① 18 回 ② 92 回 ③ 100 回 ( うち退院時 73 回 )[ 問題点 ]①医療ケア ・ 介護力が不足 48 件 ,ADL 低下 46 件 , 自宅環境不整備 17 件 , 病状・栄養状態悪化 29 件 , 当事者の不安 8 件②病状・栄養状態不安定 27 件 ,ADL 低下 24 件 , 意見の相違 7 件 , 治療 ・ 介護の理解度不足 9 件 , 当事者の不安8 件③服薬 ・ 栄養管理困難 6 件 ,ADL 低下 6 件 , 治療 ・ 介護の理解度不足 7 件 , 当事者の不安 2 件[ 自宅訪問 ]①受診の補助 18 件 , 生活状況の確認 9 件②当事者の意向と不安の聞き取り 21 件 , 本人の状態の共有 10 件 , 入院前の生活状況把握 30 件、 介護方法の検討 29 件 , 自宅環境の検討 72 件 , 治療 ・ 栄養管理方法を検討 23 件③生活状況の確認 41 件 , 介護方法の再検討 19 件 , 家族不在に対応 80 件 , 自宅環境の再検討 44 件 , 治療 ・ 栄養管理方法を再検討 21 件

【考察】 自宅訪問には、「医療に繋ぐ役割」「ADL 評価によって在宅生活を検討する役割」「問題点を察知し迅速に対応する役割」があり、 入院が頻回な患者でも役割を実践することにより、 在宅生活継続に繋げられると考えた。入院前の自宅訪問の少なさ、入院前から退院後の類似した問題点の発生が課題であり、「外来患者の異変をケアマネジャー等に伝え地域高齢者の生活状況の情報源となる関係を構築すること」「申し送り等を活用して自宅訪問内容を多職種と共有し問題点の解決法を検討すること」が必要と考える。

【結語】 自宅訪問の役割の実践により、 地域住民の在宅生活継続を支援し、慢性期医療に貢献していく。

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第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢12-10-4 医療ソーシャルワーク(1)慢性期病院での生前・死後事務委任契約の活用について

新札幌パウロ病院 地域医療連携室

まつもと ただゆき

○松本 忠幸(医療ソーシャルワーカー)

【はじめに】慢性期病院では、患者よりキーパーソンの家族が先に亡くなる場合が見られる。また身寄りのない高齢者も増加傾向にある。このような状況に対し当院では生前・死後事務委任契約制度の説明を行い、了承を得た上で契約を締結している。契約後は行政書士が介入し金銭管理、病状説明時の同席、意思決定の代理、死去後の事務手続き等を行っている。今回この取り組みを踏まえ、成年後見制度と比較し、生前・死後事務委任契約をどのように活用すれば有効なのか報告する。

【方法】生前・死後事務委任契約を締結した A さんの事例を検討し、成年後見制度と比較した場合にどのような有効性があるのか、またどのような問題点があるのか考察する。

【事例】対象者:A 氏(80 歳代)家族構成:夫は既に死去、子供なし 主たる介護者:道内在住妹の子供(姪)と本州在住姪の娘二人共になかなか連絡が取れない。二人共本人と関わりが薄く、金銭管理は社協の担当者が行っていた。入院前は生活保護受給、入院後は入院基準となり現在は年金のみで生活。

【結果、考察】本人の今後の事で姪、姪の娘に連絡するも、連絡が取れない状態であった。そこで本人同意を得て行政書士面談を実施し、生前・死後事務委任契約を締結した。以降行政書士が後見人となり、金銭管理、病状説明時の同席、家屋の引き払いを行った。また緊急連絡先に関しても後見人が窓口となり、連絡もスムーズになった。金銭管理は社協より引継ぎを行った。市営住宅賃貸契約を継続していたが、自宅復帰は困難な状態であり、市営住宅の解約、私財の整理も行った。また A 氏が死去した際、事務手続き、埋葬、家族への連絡、残った金銭の整理等多岐に渡り関わってもらい、問題無く退院となっている。 【結論】家族の関わりが少なく、成年後見制度申請において市町村長申し立てを待つ時間がない場合、死後の身元保証を行う必要がある場合は生前・死後事務委任契約が有効である。

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第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢12-10-5 医療ソーシャルワーク(1)身寄りのない患者のソーシャルワーク支援

みずほ病院

そのたに じゅん

○園谷 準(医療ソーシャルワーカー),猪谷 友果梨,石崎 ゆかり,虎谷 栞奈,広瀬 修一,前寺 奈美恵

【はじめに】 当院は入院患者の約 9 割が透析治療を行っている医療療養病院である。近年 SW の支援は身寄りがいないもしくは家族関係が希薄な患者への支援が増えてきた。特に入院・施設入所時の身元引受・連帯保証人が不在、亡くなった後の支援をしてくれる人がいない。そのため「身寄りがない」事を理由に療養・退院支援に時間がかかる要因となっている。患者の抱える問題を明確にし、その解決方法や SW の支援について考察していきたい。

【調査方法】当報告では、「身寄りがない人」の定義を家族や知人が不在で、あるいはいても絶縁に近い状態、また成年後見など法的な手続きが取れていない人と規定する。患者の SW 記録をもとに「身寄りがないゆえに困った事」を3つの場面〔療養生活〕〔退院準備〕〔転院・死亡時の対応〕に分けて整理した。

【調査対象】腎機能障害に伴う透析治療を受け、身寄りがない人7名 【結果】3 つの場面と 5 つのカテゴリーに集約された。1.療養生活 7 件① 金銭管理 6 件 ② 治療の停滞 1件2.退院準備 10 件① 外出準備 5 件 ② 退院における自己決定 5 件3.転院・死亡時の対応 3 件① 引受人の不在 3 件

【考察】1.治療方針に置いては、患者自身が決定できない状態であるため、「身寄りがない事」を理由に治療が停滞しないよう提案していく必要がある。2.退院(特に施設入所)を進める場合は、後見手続きに積極的に取り組む。施設は引受人不在でも法的には断れないが、実施には消極的な施設が多いため専門機関との連携を図り、必要な対応を提案する。3.自治体や地域支援センターとの積極的な連携が必要である。4.死亡時や転院時の連絡先などを、本人と事前に話し合い院内必要部署や関係機関等と共有する必要がある。

【結論】患者の抱える問題は複雑多岐になっている。より専門機関との連携を意識した支援の必要性がある。

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第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢12-11-1 医療ソーシャルワーク(2)医療療養病棟における退院支援について ~在宅復帰に向けての取り組み ~

1 西部総合病院 医療社会福祉課,2 西部総合病院 2 階西病棟

いしばし あんり

○石橋 安里(社会福祉士)1,松永 壮子 1,中平 亜希 1,橋本 梓 1,石山 愛 1,須藤 晴香 1,細渕 朋志 2,橋本 康弘 2,宗形 美智子 2,渡邊 彰 1

【はじめに】 当院は埼玉県さいたま市の西部地区に位置するケアミックス型の病院である。急性期病棟、回復期リハビリ病棟、地域包括ケア病棟、医療療養型病棟、介護療養型病棟をもっている。 当院の医療療養病棟は医療区分Ⅱ・Ⅲの重症度の高い患者様が多く、そのため退院の多くを死亡退院が占めていた。平成 26 年度診療報酬改定により、医療療養病棟の在宅復帰機能強化加算が新設され、当院においても同加算の算定を目指していくこととなった。そこで医療療養病棟における、MSW の退院支援に関する取り組みについて報告する。

【目的】 一般病棟や回復期リハビリテーション病棟だけでなく療養病棟においても、個々の患者様の状態に合った環境への退院支援を行なっている。MSW の働きかけを知ってもらい、他職種との連携強化に繋げていきたい。

【対象及び方法】 当院の医療療養病棟は全 60 床あり、年齢を問わず重症度の高い患者様が多く入院している。その中でも病状が改善し、家族の希望などにより在宅や特養などの施設への退院が可能になる方はいる。事例を通したMSW の援助をここに報告する。

【結果】平成 27 年 4 月~平成 28 年 3 月までに医療療養病棟から、在宅(レスパイト入院含む)へ 2 件、特養へ 6 件の退院があった。

【考察】 療養病棟から在宅への退院には訪問診療・訪問看護・訪問介護・福祉用具などの調整が必要になることが多く、院内外の各部門との連携も欠かせない。 入院・退院ともになるべく迅速かつ円滑に行えるよう援助をし、在院日数・在宅復帰率など状況に応じた幅広い視点での援助も必要と考える。そのうえで、主治医や病棟看護師をはじめとして他職種との連携強化により、退院可能な患者様の生活環境や揺れ動くご家族の想いに寄り添った援助を継続していきたい。

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第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢12-11-2 医療ソーシャルワーク(2)療養病床における退院支援の事例から- MSW としてのかかわり-

千木病院

おやなぎ まなみ

○小栁 真奈美(社会福祉士),登坂 宇津彦,中田 俊良,早川 絵里,大村 旭,平木 あかり

【はじめに】 近年、少子高齢化や核家族化が進んでいく中、身内の協力を得られない家庭も多く、高齢者のみの世帯や高齢者の独居世帯が増加を辿っている。そんな中、たとえ身体が不自由になったとしても慣れ親しんだ家に帰りたい。と望む高齢者は少なくない。今回、入院前より在宅退院の意向が強かった高齢独居患者との関わりを通して支援を行った結果をここに報告する。

【症例紹介】 77 歳女性 要介護 5 脳梗塞、妄想性障害の既往あり。自宅にて倒れているところを発見され急性期病院へ搬送、長期臥床状態から数か所の褥瘡 ADL の低下を認めた。その後当院入院。KP である娘とは関わり薄く、入院時より「緊急時以外連絡しないでほしい」との発言があった。入院中、他の入院患者とのトラブルや職員に対しての強い口調がみられた。

【経過】 入院当初は硬い表情や強い口調が目立った。本人とは毎日顔を合わせるようにし声かけを行った。面談を重ねる中で少しずつ表情の緩みや口調の変化がみられるようになり、患者本人からも「相談員に話がある」と声をかけてくださるようになった。その中で「家に帰ればできる」「早く家に帰りたい」との発言が多く聞かれた。自宅外出の機会を提示。2 度の外出を通して「家に帰る前にもう少し施設で訓練がしたい。暖かい季節になったら家に帰る」との発言に変わっていった。その後施設入所決定、退院となった。

【考察】 KP とも関わりが薄く、身内もいない中で入院当初から本人との面談を何度も重ねた。面談を重ね、関わりを持つことにより本人の希望を汲み取ることができた結果、退院に繋げることができた。MSW は本人、家族の希望を実現するための道標を灯す役割である。本人、家族にとっての「幸せ」「そのためにはどうしたらいいか」という根本的な部分を理解することで、いかによりよい支援に繋がるか、本人、家族の満足に繋げられるかということをこの事例から改めて学ぶことができた。

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第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢12-11-3 医療ソーシャルワーク(2)退院支援計画表の活用 ~回復期リハビリテーション病棟で取り組んだこと~

平成病院

こじま みずき

○小嶋 瑞生(社会福祉士),三谷 彩子,秋田 透,山本 ひとみ,片山 直弥

[はじめに]当病棟では、患者様の情報収集の量や速度に個人差があり、そのことが退院支援の遅滞等に繋がっていた。そこで、一目で情報収集ができ、各職種の連携をスムーズに図れるようにする為に情報を一覧にした退院支援計画表を作成した。各職種がどのように退院支援計画表を活用・評価しているのかを調査し、改善点を見出すことで、日々の業務の効率化を図りたいと考えた。

[方法]退院支援計画表の活用実績、活用場面、メリットに感じていること、デメリットに感じていること、改善すべき点の 5 点についてアンケート調査を行った。対象者は、当病棟の看護師 5 名、介護士 9 名、セラピスト 9 名の計 23 名。

[結果]アンケートの結果、他職種との情報共有、上司への相談時、退院支援計画の立案、サービスの見直し、調整などの活用場面が挙げられた。また、他職種との情報共有、上司と共有できフィードバックできる、情報の確認がすぐできる、各患者に適した対応ができるなどの評価が得られた。しかしながら、退院支援計画表について業務時間内になかなか更新できない、業務負担、情報量が多く見づらい、情報をどこまで入力していいのか分からないなどの反応もあった。

[考察]退院支援計画表の活用場面は大きく分けて情報収集・共有と退院調整の 2 つがあり、他職種間の横の連携だけでなく、上司・部下の縦の連携でも活用されている。しかし、多くの情報量を入力・把握することが業務負担という問題点もあった。その改善策として、退院支援計画表について不要な項目を削除・統一し、記入事項を定めるなど作成方法の見直しを行った。退院支援計画表が、患者支援の重要なツールになっている。今後新たに作成した退院支援計画表を活用し、評価・改善を重ねると共に、更に多方面から一人の患者様を支援できるよう、情報共有の仕組みについて考えていく。

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第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢12-11-4 医療ソーシャルワーク(2)介護に問題を抱えているケースに対して SW が出来ること

金沢脳神経外科病院 地域医療福祉部医療福祉相談課

かわぐち ゆうこう

○川口 雄幸(医療ソーシャルワーカー)

【はじめに】SW は患者本人、家族の思いを尊重し支援を進めていく事が必要である。今回、患者本人、家族は自宅退院を望んでいたが家族の介護方法に問題があるケースに遭遇し、自宅退院できた事例を通し、SW の役割を考察し報告する。

【事例概要】Y 氏 71歳男性  妻、次男の3人暮らし。平成3年くも膜下出血を発症。両下肢の麻痺が残存し ADL はほぼ全介助の状態。当院には平成27年4月に慢性硬膜下血腫で入院。入院当初より妻からは自宅で生活させたいとの要望があった。主治医、病棟と方向性を確認し支援を進めていたがその経過の中で左被殻出血を発症し、経口摂取が困難となった。家族の希望もあり胃瘻を造設。吸痰の必要性も出てきたが妻の在宅生活への気持ちは変わらなかった。ケアマネジャーより入院前の自宅生活において妻の病識や介護方法に問題があり患者本人が危険な目にあうことも見られ在宅介護に対して否定的であった。SW は介護に対して非協力的であった次男に協力を得る事ができないか働きかけをして自宅での介護サービスについて検討する為にカンファレンスを2回開催。次男の参加もあり、看護師より次男への胃瘻、吸痰の指導を行う事ができた。その後は当院の宿泊体験室の利用や外泊時には次男の協力も見られ、平成28年6月に自宅退院となった。

【考察】妻は自宅退院を強く希望されていたが介護方法に問題があり妻の介護のみでは難しい状況であった。カンファレンスを開催しサービス事業所と連携を図り、次男の介護への参加を得ることで自宅退院することができたと考える。

【まとめ】SW は問題を解決する為に地域(ケアマネジャーなど)との連携や家族の介護協力も含めた生活環境を整える為の繋ぎ役としての役割はとても大きいと感じた。

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第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢12-11-5 医療ソーシャルワーク(2)療養型病院における在宅担当 MSW の役割と課題

原三信病院 香椎原病院 医療連携室

たなか すすむ

○田中 漸(医療ソーシャルワーカー),藤野 美幸

【はじめに】当院は福岡市東区に位置する 250 床の医療療養型病院である。MSW が在籍する医療連携室は在宅部門に所属しており、ケアマネジャーをはじめとした在宅スタッフとも密に情報交換を行っている。平成 27 年度より在宅担当の MSW を専任で配置して、ケアマネジャーをはじめとした在宅スタッフに同行訪問し、相談業務を行った。その取組みの中で医療連携室における今後の展開と課題が明らかとなったので報告をする。

【活動の内容】活動期間:平成 27 年 4 月 1 日から平成 28 年 3 月 31 日訪問述べ回数:31 回、新規相談患者数:15 名相談内容:入院に関する相談 10 件(59%)、在宅サービスに関する相談 7 件(41%)相談依頼元:当院在宅サービス部門 10 件(67%)、患者家族からの直接の依頼 5 件(33%)

【考察】在宅で生活する利用者にとって「入院」という出来事は予定外であることが多いゆえに不安も大きい。しかし、事前に MSW が出向き本人や家族とお会いしラポールを築いておくことで「入院」という生活を分断される出来事でも比較的スムーズに受け入れて頂けるのではないだろうか。また「在宅サービスに関する相談」では、サービス調整に関してもケアマネジャーに繋ぐまでの細かなニーズがあることがわかったこと、そういったニーズに対応していくことがサービスの質に結びついていくこと、ひいては在宅生活を継続していくことに繋がるのではないかと考える。

【まとめ】今後は、MSW が在宅に出向くことで何かあればいつでも相談ができるという、「相談員を身近に感じていただくことで安心感を持ってもらうこと」、そのためには積極的なアウトリーチの視点がこれからの当院が目指す「在宅療養を支援する病院」における MSW に求められるのではないだろうか。