のための カリオロジーof caries lesions:a literature review. int j dent, 2010. 2)...

CONTENTS Chapter3 28 デンタルハイジーン別冊 歯科衛生士のためのカリオロジー カリエスマネジメント C h a p t e r 3 35 初期齲蝕病変の治療 (再石灰化の促進) 初期齲蝕病変の再石灰化を促進するために,従来よりフッ化物が用いられてきま した.近年では,それ以外の製品も応用されるようになってきています(AB). キシリトール キシリトールには,ミュータンスレンサ球菌の抑制以外にも,唾液分泌量の増加 とそれに伴う緩衝能の強化,歯質の再石灰化の促進の効果があるといわれています. しかし,キシリトールの抗齲蝕作用の本質はプラークのpHを低下させない (齲蝕原性細菌に利用されない)ことであり,唾液分泌量の増加や緩衝能の向上 は,おそらくガム咀嚼を継続的に行うことによる唾液腺機能の増強によるもので あると考えられます.そして,再石灰化の促進も唾液分泌量の増加がもたらした もので,キシリトール自体には初期病変を再石灰化させる力はないといえます. したがって,キシリトールを使って初期病変の再石灰化を狙うのであれば,ガ ム咀嚼ができる患者さんが対象であると考えています. カルシウムイオン,リン酸イオン 歯面の再石灰化に必要なカルシウムイオン(Ca )やリン酸イオン(PO)を 効率的に供給する特徴をもった,下記のような製品がいくつかあります.これら は,カリエスリスクを軽減するというよりも,初期病変の非侵襲的治療に特化し たものだと考えています. POs-Ca(リン酸化オリゴ糖カルシウム) リン酸基によってカルシウムが安定化されることと,オ リゴ糖部分が高い親水性を有していることにより,カル シウムイオンを効率的に唾液中に供給することができる. CPP-ACP(リカルデント) CPPとは牛乳由来のタンパク質の分解物で,ACPは非結 晶性リン酸カルシウムのことである.CPPにより,リン酸 カルシウム(ACP)は口腔内で溶けやすい状態を保つことが できる.牛乳由来の成分が入っているため,牛乳や乳製品 に対するアレルギーをもった患者さんには使用できない. TCP(リン酸三カルシウム) TCPに有機物を配合することで,フッ素イオンとカルシ ウムイオンが結合してフッ化カルシウムになってしまわ ないようにした歯磨剤が開発されている.フッ化カルシ ウムになってしまうと,フッ素イオンもカルシウムイオン もそれぞれの働きをはたすことができなくなってしまう. See ! 3 - 26 キシリトールによるミュータン スレンサ球菌抑制のメカニズム 参考文献 1Makinen KKSugar alcohols, caries incidence, and remineralization of caries lesionsa literature review. Int J Dent, 2010. 2Reynolds ECRemineralization of enamel subsurface lesions by casein phosphopeptide-stabilized calcium phosphate solutions. J Dent Res, 769):1587-1595, 1997. 3田中美由紀ほか:リン酸オリゴ糖カルシウム(POs-Ca)配合ガ ム咀嚼後のエナメル質初期う蝕の再石灰化効果および結晶構造 の変化.日歯保存誌,526):5345422009Ca POCa Ca POオリゴ糖 CPP 唾液 プラーク ペリクル エナメル質 POsCa (リン酸化オリゴ糖カルシウム) fTCP (リン酸三カルシウム) リカルデント (CPPACP) 唾液・プラーク中にカ ルシウムイオン(Caやリ酸イオン(POとして供給される A 初期齲蝕病変の再石灰化を促進するための製品 C 初期齲蝕病変の再 石灰化促進の実際 ホームケアの向上,フッ化物, キシリトールなど,さまざまな 要因がプラスに働いて,白斑病 変は改善しつつある 14 歳・男性 長期にわたって口腔内の健康を守るためには,歯周治療に おけるメインテナンス・SPT と同様に,継続的に齲蝕病変の 発生・進行を防ぎ,ライフステージに応じて患者さんととも に齲蝕を管理していくことが必要です. 本別冊では,齲蝕の原因や成り立ちといった基礎知識から, 初期齲蝕病変の検出・評価方法,カリエスリスクの考え方,予 防プランの立案の仕方まで,最新のカリオロジーの知識とカリ エスマネジメントを行うために必要なポイントを体系的にまと めました. これからの時代に求められる「齲蝕予防」「カリエスマネジ メント」の実践のために必読の一冊です. AB 版/128 頁/オールカラー  定価 (本体 3,200 円+税) 注文コード:390560 ライフステージに応じた 『齲蝕予防』 カリエスマネジメント実践 のために! 40 のポイントを学んで 最新カリオロジをアップデ トしよう! 113-8612 東京都文京区本駒込1-7-10 TEL03-5395-7630 FAX03-5395-7633 http://www.ishiyaku.co.jp/ 伊藤 中 Chapter1 齲蝕とはいかなる疾患 なのか Chapter2 齲蝕の成り立ち(病因論) Chapter3 カリエスマネジメント Chapter4 症例から学ぶ カリエスマネジメントの実践 理解が 必要な用語を ていねいに解説! 1つの項目が 見開き2ページで 学べる! 関連項目が 一目でわかる! カリオロジー 歯科衛生士のための 40 知っておきたい    のポイント 写真とイラストで わかりやすく 図解!

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Page 1: のための カリオロジーof caries lesions:a literature review. Int J Dent, 2010. 2) Reynolds EC:Remineralization of enamel subsurface lesions by casein phosphopeptide-stabilized

C O N T E N T S

Chapter3

28 29デンタルハイジーン別冊 歯科衛生士のためのカリオロジー The Journal of Dental Hygiene EXTRA ISSUE

カリエスマネジメント

Cha

pter

3 35 初期齲蝕病変の治療 (再石灰化の促進)

初期齲蝕病変の再石灰化を促進するために,従来よりフッ化物が用いられてきました.近年では,それ以外の製品も応用されるようになってきています( A ,B ).

●❶キシリトールキシリトールには,ミュータンスレンサ球菌の抑制以外にも,唾液分泌量の増加

とそれに伴う緩衝能の強化,歯質の再石灰化の促進の効果があるといわれています.しかし,キシリトールの抗齲蝕作用の本質はプラークのpHを低下させない

(齲蝕原性細菌に利用されない)ことであり,唾液分泌量の増加や緩衝能の向上は,おそらくガム咀嚼を継続的に行うことによる唾液腺機能の増強によるものであると考えられます.そして,再石灰化の促進も唾液分泌量の増加がもたらしたもので,キシリトール自体には初期病変を再石灰化させる力はないといえます.

したがって,キシリトールを使って初期病変の再石灰化を狙うのであれば,ガム咀嚼ができる患者さんが対象であると考えています.

●❷カルシウムイオン,リン酸イオン歯面の再石灰化に必要なカルシウムイオン(Ca 2+)やリン酸イオン(PO4

3−)を効率的に供給する特徴をもった,下記のような製品がいくつかあります.これらは,カリエスリスクを軽減するというよりも,初期病変の非侵襲的治療に特化したものだと考えています.

POs-Ca(リン酸化オリゴ糖カルシウム)• リン酸基によってカルシウムが安定化されることと,オリゴ糖部分が高い親水性を有していることにより,カルシウムイオンを効率的に唾液中に供給することができる.

CPP-ACP(リカルデント)• CPPとは牛乳由来のタンパク質の分解物で,ACPは非結

晶性リン酸カルシウムのことである.CPPにより,リン酸カルシウム(ACP)は口腔内で溶けやすい状態を保つことが

できる.牛乳由来の成分が入っているため,牛乳や乳製品に対するアレルギーをもった患者さんには使用できない.

TCP(リン酸三カルシウム)• TCPに有機物を配合することで,フッ素イオンとカルシウムイオンが結合してフッ化カルシウムになってしまわないようにした歯磨剤が開発されている.フッ化カルシウムになってしまうと,フッ素イオンもカルシウムイオンもそれぞれの働きをはたすことができなくなってしまう.

See ! ➡ 3-26キシリトールによるミュータンスレンサ球菌抑制のメカニズム

参考文献 1) Makinen KK:Sugar alcohols, caries incidence, and remineralization

of caries lesions:a literature review. Int J Dent, 2010. 2) Reynolds EC:Remineralization of enamel subsurface lesions by

casein phosphopeptide-stabilized calcium phosphate solutions. J

Dent Res, 76(9):1587-1595, 1997. 3) 田中美由紀ほか:リン酸オリゴ糖カルシウム(POs-Ca)配合ガム咀嚼後のエナメル質初期う蝕の再石灰化効果および結晶構造の変化.日歯保存誌,52(6):534~542,2009.

 

Ca2+ Ca2+

Ca10(PO4)6(OH)2

Ca2+

Ca2+

Ca2+

Ca2+

Ca

HPO42-

HPO42-

HPO42-

HPO42-

HPO42-

PO4 Ca CaPO4

オリゴ糖 CPP

唾液

プラーク

ペリクル

エナメル質

POs-Ca(リン酸化オリゴ糖カルシウム)

fTCP(リン酸三カルシウム)

リカルデント(CPP-ACP)

唾液・プラーク中にカルシウムイオン(Ca2+)やリ酸イオン(PO4

2-)として供給される

A 初期齲蝕病変の再石灰化を促進するための製品

C 初期齲蝕病変の再石灰化促進の実際

ホームケアの向上,フッ化物,キシリトールなど,さまざまな要因がプラスに働いて,白斑病変は改善しつつある

緩衝能

唾液量 ミュータンスレンサ球菌の数(SM スコア)

ラクトバシラス菌の数(LB スコア)

0

02.0 以上

1.2~2.0

0.7~1.2

~0.7黄

即青

1

1

22

3

30

0

0

0

0

1

1

1

1

2

2

2

2

33

3

36 回~ 5 回 4 回 3 回

3 回以上

2 回

1 回

飲食回数

プラークの蓄積量(歯垢)

ブラッシング回数

キシリトール

フッ素

1・2 回朝しない事もある

1日 1回は噛む

歯磨剤のみ

その他の危険因子 ・薬剤(-) ・歯列矯正(-) ・無随歯(-) ・口呼吸(+) ・全身疾患など 鼻炎5年7カ月経過

14 歳・男性

20歳(メインテナンス時)

•長期にわたって口腔内の健康を守るためには,歯周治療におけるメインテナンス・SPTと同様に,継続的に齲蝕病変の

発生・進行を防ぎ,ライフステージに応じて患者さんととも

に齲蝕を管理していくことが必要です.

•本別冊では,齲蝕の原因や成り立ちといった基礎知識から,初期齲蝕病変の検出・評価方法,カリエスリスクの考え方,予

防プランの立案の仕方まで,最新のカリオロジーの知識とカリ

エスマネジメントを行うために必要なポイントを体系的にまと

めました.

•これからの時代に求められる「齲蝕予防」「カリエスマネジメント」の実践のために必読の一冊です.

■ AB版/128頁/オールカラー ■ 定価 (本体 3,200円+税) 注文コード:390560

ライフステージに応じた『齲蝕予防』『カリエスマネジメント』の実践のために!40のポイントを学んで

最新のカリオロジーをアップデートしよう!

〒113-8612 東京都文京区本駒込1-7-10 TEL03-5395-7630 FAX03-5395-7633 http://www.ishiyaku.co.jp/

伊藤 中 著

Chapter1齲蝕とはいかなる疾患なのか

Chapter2齲蝕の成り立ち(病因論)

Chapter3カリエスマネジメント

Chapter4症例から学ぶカリエスマネジメントの実践

理解が必要な用語を

ていねいに解説!1つの項目が

見開き2ページで学べる!

関連項目が一目でわかる!

カリオロジー歯科衛生士のための

40知っておきたい   のポイント

写真とイラストでわかりやすく

図解!

Page 2: のための カリオロジーof caries lesions:a literature review. Int J Dent, 2010. 2) Reynolds EC:Remineralization of enamel subsurface lesions by casein phosphopeptide-stabilized

好評発売中 ● デンタルハイジーン 別冊

C O N T E N T SChapter 1齲蝕とはいかなる疾患なのか

1-1 齲蝕と齲窩は異なる1-2 齲蝕とは?1-3 カリエスマネジメントの 2本の柱1-4 齲蝕の疫学1-5 齲蝕病変①歯冠部齲蝕1-6 齲蝕病変②小児〜若年者,乳歯の齲蝕1-7 齲蝕病変③象牙質病変,高齢者の根面齲蝕1-8 齲蝕病変④二次齲蝕

Chapter 2齲蝕の成り立ち(病因論)

2-9 病因論の変遷齲蝕原性細菌の探索2-10 発症のしやすさ(多因子疾患)2-11 リスクの相互関連2-12 齲蝕原性細菌①ミュータンスレンサ球菌2-13 齲蝕原性細菌②ラクトバシラス菌2-14 齲蝕原性細菌③その他の酸産生菌2-15 食事2-16 唾液①唾液の働き2-17 唾液②唾液腺開口部と部位特異性2-18 唾液③口腔乾燥症・唾液減少症

  (原因と対策)2-19 社会経済的要因

2-20 歯の形態・歯質2-21 その他の状況マイクロクラック,酸蝕Chapter 3カリエスマネジメント

3-22 カリエスマネジメントの概要3-23 カリエスリスクアセスメント①

基本的な診査3-24 カリエスリスクアセスメント②

補助的な診査3-25 カリエスリスクの修正①

基本的な考え方3-26 カリエスリスクの修正②

齲蝕原性細菌に対して3-27 カリエスリスクの修正③

ホームケア,フッ化物の使用3-28 カリエスリスクの修正④

フッ化物の安全性3-29 カリエスリスクの修正⑤

食習慣3-30 初期齲蝕病変の検出①

視診,触診3-31 初期齲蝕病変の検出②

X線写真3-32 初期齲蝕病変の検出③

その他の補助的方法

3-33 初期齲蝕病変のモニタリング3-34 初期齲蝕病変の活動性3-35 初期齲蝕病変の治療

(再石灰化の促進)3-36 フィッシャーシーラント3-37 メインテナンス①メインテナンスの内容3-38 メインテナンス②メインテナンスの難しさ3-39 カリエスマネジメントの齲蝕抑制効果3-40 カリエスマネジメントの長期的効果Chapter 4 症例から学ぶカリエスマネジメントの実践4-41 母子感染4-42 EarlyChildhoodCaries4-43 家族の健康観4-44 10 歳代後半の病変多発4-45 食習慣の乱れ4-46 口腔乾燥4-47 シェーグレン症候群4-48 唾液減少症4-49 ローリスク患者の根面齲蝕4-50 最高のカリエスマネジメントColumn①齲蝕と遺伝②キシリトールは無意味なのか?

デンタルハイジーン 別冊 歯科衛生士のためのカリオロジー

医歯薬出版 ご注文承り書デンタルハイジーン 別冊 歯科衛生士のためのカリオロジー            (   )冊デンタルハイジーン 別冊 歯科衛生士のための全身疾患ハンドブック        (   )冊 

デンタルハイジーン 別冊 歯周病を治す SRP                (   )冊

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